説明

スプール弁及びスプール弁用のストロークリミッタ

【課題】ストロークリミッタ機能を後付けで簡単にかつ低コストで追加できるようにする。
【解決手段】ストロークリミッタ21のケーシング22の一端側に雄ねじ部23を設け、この雄ねじ部23を、本来はパイロット配管9が接続される配管接続部17に着脱可能に取付ける。ケーシング22には、スプール10のストローク方向に移動しかつ先端面がケーシング外に突出してスプール10の最大ストロークを規制するロッド状のストッパ24と、外部からこのストッパ24の位置を調整する調整ねじ25と、配管接続部17に代わってパイロット配管9が接続される配管つなぎ口28と、パイロット配管9から供給されるパイロット圧を弁本体4のパイロット室6に導くパイロット通路29とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータの作動方向と速度を制御するコントロールバルブ等として用いられるスプール弁、及びこのスプール弁のスプールストロークを規制するストロークリミッタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータの作動を制御するコントロールバルブを例にとって説明する。
【0003】
図4は一般的な油圧アクチュエータ回路を示す。同図において、1は油圧アクチュエータ(油圧シリンダを例示している)、2は油圧源としての油圧ポンプで、この油圧アクチュエータ1と油圧ポンプ2との間に、油圧アクチュエータ1に対する油の流れを制御する油圧パイロット式のコントロールバルブ3が設けられる。
【0004】
このコントロールバルブ3は、弁本体(ボディ)4の両側にパイロット室5,6を備え、リモコン弁7からパイロット配管8,9を介してこの両側パイロット室5,6に選択的に加えられるパイロット圧により、弁本体4の内部でスプール10が中立位置aから両側作動位置b,cの一方側にストローク作動して弁開口面積が変化し、これにより油圧アクチュエータ1に対する圧油の供給方向と流量(アクチュエータ1の作動方向と速度)が制御されるように構成されている。
【0005】
11,11はスプール10を中立復帰させる復帰バネである。また、図4中、12はリモコン弁7の一次圧源としてのパイロットポンプ、Tはタンクである。
【0006】
コントロールバルブ3におけるスプール駆動部分の具体的構造を図5を併用して詳述する。図5では片側(図4の右側)の駆動部分のみを例示しているが、反対側も同様に構成されている。
【0007】
弁本体4の端面に筒状のケース13が固定され、このケース13内に、復帰バネ(ここでは二重バネを示す)11と、この復帰バネ11の力をバネ受け14,15を介してスプール10に中立方向への押圧力として伝えるプッシュロッド16とが設けられている。
【0008】
このプッシュロッド16の基端側に、パイロット室6と、配管接続部(雌ねじ部)17とが設けられ、パイロット配管9がこの配管接続部17にねじ込まれて接続される。
【0009】
これにより、パイロット圧がパイロット配管9からパイロット室6、さらにプッシュロッド16を介してスプール10に加えられる。
【0010】
なお、上記構造に加えて、スプール10の最大ストロークを規制するストロークリミッタを弁本体4の両側に設けたものも公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−283110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
作業機械においては、たとえばアタッチメントの一部または全体を交換して標準機から特殊機、重量機に転換する場合がある。
【0012】
また、この機種転換に際し、落下方向のアクチュエータ速度を制限するために、コントロールバルブ3の一方向のスプールストロークを規制したい場合がある。
【0013】
この場合、一般にはアクチュエータ回路にスローリターン回路を追加する等、回路の変更で対処しているが、高圧配管の変更となるため、変更作業が面倒でコストも高くなる。
【0014】
一方、特許文献1に記載された公知技術によると、コントロールバルブ3にストロークリミッタを設けているため、このストロークリミッタによってスプール10の最大ストロークを調整することが可能である。
【0015】
しかし、この公知技術では、ストロークリミッタが弁本体と一体とされ、ストロークリミッタ付きのコントロールバルブとして、通常のコントロールバルブ3とは全く別ものとして設計・製作されているため、既存の機械に適用するためにはコントロールバルブ3をそっくり取り替えなければならない。
【0016】
周知のようにコントロールバルブ3は、通常、複数のスプールが一つの弁本体(ボディ)4に並列に組み込まれたバルブブロックの一部として構成されるため、交換の必要のないスプールを含めたバルブブロック全体を取り替えるとなると、スローリターン回路を追加する以上に取替え作業が面倒でコスト高となる。
【0017】
また、機械の再度の転換等によってストローク規制が不要となった場合でも、ストロークリミッタのみを取外すことができないため、ストロークリミッタ機能が全く無駄となり、他のコントロールバルブへの転用もできないことからきわめて不経済となる。
【0018】
これらの点で、公知技術は既存の機械にとっては実用性が低いものであった。
【0019】
そこで本発明は、ストロークリミッタ機能を後付けで簡単にかつ低コストで追加することができるスプール弁、及びスプール弁用のストロークリミッタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1の発明(スプール弁用のストロークリミッタ)は、弁本体の両側にパイロット室と、このパイロット室にパイロット圧を供給するためのパイロット配管がねじ込まれる配管接続部とが設けられ、上記パイロット室に加えられるパイロット圧により弁本体内部でスプールがストローク作動して弁開口面積が変化するように構成されたスプール弁に用いられるストロークリミッタであって、一端側に設けられたねじ部により上記パイロット配管に代えて配管接続部に着脱可能に取付けられるケーシングと、このケーシング内で上記スプールのストローク方向に移動しかつ先端面がケーシング外に突出してスプールの最大ストロークを規制するロッド状のストッパと、外部からこのストッパの位置を調整する調整手段と、上記配管接続部に代わって上記パイロット配管が接続される配管つなぎ口と、上記パイロット配管から供給されるパイロット圧を上記パイロット室に導くパイロット通路とを具備するものである。
【0021】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、調整手段として、ケーシングにおけるストッパの基端側に調整ねじがねじ込まれ、この調整ねじによりストッパの位置を調整するように構成されたものである。
【0022】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、配管つなぎ口がストッパの移動方向と直交してケーシングに設けられ、この配管つなぎ口からストッパ内部を経てパイロット室に至るパイロット通路が形成されたものである。
【0023】
請求項4の発明(スプール弁)は、弁本体の両側にパイロット室と、このパイロット室にパイロット圧を供給するためのパイロット配管がねじ込まれる配管接続部とが設けられ、上記両側パイロット室に加えられるパイロット圧により弁本体内部でスプールがストローク作動して弁開口面積が変化するように構成され、かつ、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のストロークリミッタが、ケーシングのねじ部と弁本体の配管接続部とによって弁本体の少なくとも片側に着脱可能に取付けられたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のストロークリミッタによると、弁本体に対し、本来はパイロット配管が接続される配管接続部を利用して簡単に取付け、そして不要時には取外すことができる。
【0025】
そして、取付状態でパイロット圧を、配管つなぎ口に接続されたパイロット配管からパイロット通路を介してパイロット室に導き、かつ、調整手段(請求項2では調整ねじ)によるストッパの位置調整によってスプールの最大ストロークを任意に変更することができる。
【0026】
すなわち、本発明のストロークリミッタ(請求項1〜3)及びスプール弁(請求項4)によると、スプール弁に求められる基本機能を確保しながら、必要に応じてストロークリミッタ機能を簡単に低コストで後付けすることが可能となる。
【0027】
この場合、請求項3の発明によると、パイロット通路がストッパに形成されているため、パイロット通路を、ストッパ以外の部分に独立して設ける場合と比較して、加工コストが安くてすむとともに、ストロークリミッタ全体を小形化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態を図1〜図3によって説明する。
【0029】
実施形態では、従来技術の説明に合わせてコントロールバルブを例にとっている。
【0030】
この実施形態において、弁本体4にスプール10が組み込まれるとともに、弁本体4の端面にケース13が固定され、このケース13内に、復帰バネ11と、この復帰バネ11の力をバネ受け14,15を介してスプール10に中立方向への押圧力として伝えるプッシュロッド16とが設けられている点、及びこのプッシュロッド16の基端側に、パイロット室6と、配管接続部(雌ねじ部)17とが設けられている点は、図5に示す従来のコントロールバルブと同じである。
【0031】
なお、ここでは図5と同様に片側のスプール駆動部分のみを例示しているが、反対側も同様に構成される。
【0032】
このコントロールバルブにおいては、ストロークリミッタ21がケース13に着脱可能に取付けられ、このストロークリミッタ21によってスプール10の最大ストロークを規制し得るように構成される。
【0033】
ストロークリミッタ21は、本体としてのケーシング22を備え、このケーシング22の一端側に設けられた雄ねじ部23が、従来はパイロット配管専用の接続部であった配管接続部17にねじ込まれることにより、ケーシング22が弁本体側のケース13に着脱可能に取付けられる。
【0034】
ケーシング22には、中心部にロッド状のストッパ24がスプール10のストローク方向に移動可能に設けられている。
【0035】
このストッパ24は、図2,3に示すように先端部がケーシング22の先端側に突出(パイロット室6内に進入)し、スプール10のストローク作動時にプッシュロッド16の基端面がこのストッパ24の先端に当接することによってスプール10の最大ストロークが規制される。
【0036】
また、ケーシング22には、このストッパ24の基端側に調整ねじ25がねじ込まれ、この調整ねじ25が外部から締め戻し操作されることにより、ストッパ24の後限位置(先端側の突出量)が調整されて、スプール10の最大ストロークが任意に変更される。
【0037】
図中、26はケーシング22(雄ねじ部23)の配管接続部17に対するねじ込み状態を保持するためのロックナット、27は調整ねじ25のねじ込み状態を保持するためのロックナットである。
【0038】
一方、ケーシング22の中間部周壁に、配管接続部17に代わる配管つなぎ口(パイロットポート)28がストッパ24の移動方向と直交して設けられ、パイロット配管9がこの配管つなぎ口28にねじ込まれて接続される。
【0039】
さらに、ストッパ24には、配管つなぎ口28の内部とパイロット室6とを連通させるパイロット通路29が設けられている。
【0040】
このパイロット通路29は、図3に示すように、ストッパ24における先端側半部の中心部に設けられた内側通路29aと、ストッパ24の外周面に設けられた外側通路29bと、この両通路29a,29bを連通させる連絡通路29cとから成っている。
【0041】
なお、外側通路29bは、ストッパ24の位置調整にかかわらず配管つなぎ口28の内部との連通状態が保たれるように、ストッパ24の移動方向の一定長さ範囲に亘って設けられている。
【0042】
このパイロット通路29により、パイロット配管9から供給されるパイロット圧がパイロット室6に導かれる。
【0043】
このように、配管接続部17を利用して弁本体4にストロークリミッタ21を着脱可能に取付ける構成であるため、標準機から特殊機、重量機への転換時等に、既存のコントロールバルブに、何の改造を加えることなく、単なるねじ込み操作のみによってストロークリミッタ機能を付加することができる。
【0044】
また、逆転換時等にはストロークリミッタ21を取外し、配管接続部17にパイロット配管9をつなぎ変えるだけで簡単に原状に戻すことができる。
【0045】
そして、取付状態でパイロット圧を、配管つなぎ口28に接続されたパイロット配管9からパイロット通路29を介してパイロット室6に導き、かつ、調整ねじ25によるストッパ24の位置調整によってスプール10の最大ストロークを任意に変更することができる。
【0046】
すなわち、既存のどのようなコントロールバルブに対しても、同バルブに求められる基本機能を確保しながら、必要に応じてストロークリミッタ機能を簡単に低コストで後付けすることが可能となる。
【0047】
この場合、パイロット通路29がストッパ24に形成されているため、パイロット通路29を、ストッパ24以外の部分に独立して設ける場合と比較して、加工コストが安くてすむとともに、ストロークリミッタ21全体を小形化することができる。
【0048】
ところで、ストロークリミッタ21は、必ずしも弁本体4の両側に設ける必要はなく、スプールストロークを規制すべき側だけに設けてもよい。いいかえれば、後付けが可能であるため、特許文献1に記載された公知技術では不可能な、片側だけのストロークリミッタ機能の追加が可能となる。
【0049】
また、ストッパ24の位置を調整する調整手段として、上記実施形態の調整ねじ25を用いる構成に代えて、ストッパ24の基端側をケーシング22から突出させ、この突出部分を回転させることにより、配管接続部17に対して雄ねじ部23を締め戻し操作してストッパ24を直接移動させる構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態にかかるコントロールバルブのストロークリミッタ取付前の状態を示す部分断面図である。
【図2】ストロークリミッタ取付状態を示す部分断面図である。
【図3】図2の一部の拡大図である。
【図4】本発明が適用されるコントロールバルブ付きのアクチュエータ回路例を示す図である。
【図5】従来のスプール駆動部分の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
3 スプール弁としてのコントロールバルブ
4 弁本体
5,6 パイロット室
10 スプール
17 配管接続部
21 ストロークリミッタ
22 ストロークリミッタのケーシング
23 同雄ねじ部
24 ストッパ
25 調整ねじ
28 配管つなぎ口
29 パイロット通路
29a パイロット通路を形成する内側通路
29b 同外側通路
29c 同連絡通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体の両側にパイロット室と、このパイロット室にパイロット圧を供給するためのパイロット配管がねじ込まれる配管接続部とが設けられ、上記パイロット室に加えられるパイロット圧により弁本体内部でスプールがストローク作動して弁開口面積が変化するように構成されたスプール弁に用いられるストロークリミッタであって、一端側に設けられたねじ部により上記パイロット配管に代えて配管接続部に着脱可能に取付けられるケーシングと、このケーシング内で上記スプールのストローク方向に移動しかつ先端面がケーシング外に突出してスプールの最大ストロークを規制するロッド状のストッパと、外部からこのストッパの位置を調整する調整手段と、上記配管接続部に代わって上記パイロット配管が接続される配管つなぎ口と、上記パイロット配管から供給されるパイロット圧を上記パイロット室に導くパイロット通路とを具備することを特徴とするスプール弁用のストロークリミッタ。
【請求項2】
調整手段として、ケーシングにおけるストッパの基端側に調整ねじがねじ込まれ、この調整ねじによりストッパの位置を調整するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のスプール弁用のストロークリミッタ。
【請求項3】
配管つなぎ口がストッパの移動方向と直交してケーシングに設けられ、この配管つなぎ口からストッパ内部を経てパイロット室に至るパイロット通路が形成されたことを特徴とする請求項1または2記載のスプール弁用のストロークリミッタ。
【請求項4】
弁本体の両側にパイロット室と、このパイロット室にパイロット圧を供給するためのパイロット配管がねじ込まれる配管接続部とが設けられ、上記両側パイロット室に加えられるパイロット圧により弁本体内部でスプールがストローク作動して弁開口面積が変化するように構成され、かつ、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のストロークリミッタが、ケーシングのねじ部と弁本体の配管接続部とによって弁本体の少なくとも片側に着脱可能に取付けられたことを特徴とするスプール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−92905(P2007−92905A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284305(P2005−284305)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】