説明

スペクトラム拡散方式のクロック伝達システム

【課題】スペクトラム拡散方式のクロック信号を伝達する技術において、新たな技術を提供すること。
【解決手段】本発明のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムは、クロック供給元システム(1)と、クロック供給先システム(2−J)(Jは1≦J≦Nを満たす整数、Nは2以上の整数)とを具備している。クロック供給元システム(1)は、クロック信号を変調周期で変調する。クロック供給先システム(2−J)は、クロック供給元システム(1)からのクロック信号に応じた第1処理と、クロック信号の変調周期(T2)に応じた第2処理とを実行する。本発明では、新規な試みである上に、クロック供給元システム(1)とクロック供給先システム(2−J)との間の信号線の削減に役立ち、クロック信号を電圧する信号線を使って情報を伝達していることを他者に知られずにクロック供給先システム(2−J)に伝達することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラム拡散方式のクロック信号を伝達するクロック伝達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトラム拡散方式のクロック信号を伝達する技術が、例えば、特開2000−101424号公報(特許文献1)に記載されている。スペクトラム拡散方式では、クロック信号を変調した場合、そのクロック信号は、例えば、中心周波数、中心周波数よりも大きい周波数である最大周波数、中心周波数、中心周波数よりも小さい周波数である最小周波数という順に周期的に変調されている。
【0003】
スペクトラム拡散方式では、クロック信号は、段階的に変化し、中心周波数を表す周期、最大周波数を表す周期、最小周波数を表す周期を含む周期群より成り立っている。例えば、周期群のうちの、最初の2周期は中心周波数を表す周期であり、次の2周期は最大周波数を表す周期であり、その次の2周期は中心周波数を表す周期であり、最後の2周期は最小周波数を表す周期であり、元の中心周波数を表す周期に戻る。この1周期分(周期群)を変調周期という。
【0004】
また、スペクトラム拡散方式において、変調周期を変化させる技術が、例えば、富士通社雑誌「FIND」Vol.24 No.6 2006 14〜18ページ(非特許文献1)に記載されている。非特許文献1によれば、変調周期を変化させるスペクトラム拡散方式では、単一の変調周期のみによるスペクトラム拡散方式よりもEMI低減効果が優れていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−101424号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】富士通社雑誌「FIND」Vol.24 No.6 2006 14〜18ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来では、スペクトラム拡散方式のクロック信号の変調周期を変化させることにより、電磁波輻射を低減している。しかし、スペクトラム拡散方式のクロック信号を伝達する技術において、更に改良する余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための形態で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムは、クロック供給元システム(1)と、クロック供給先システム(2−J)(Jは1≦J≦Nを満たす整数、Nは2以上の整数)とを具備している。クロック供給元システム(1)は、クロック信号を変調周期で変調する。クロック供給先システム(2−J)は、クロック供給元システム(1)からのクロック信号に応じた第1処理と、クロック信号の変調周期(T2)に応じた第2処理とを実行する。
【発明の効果】
【0010】
従来では、スペクトラム拡散方式のクロック信号の変調周期を変化させることにより、電磁波輻射を低減しているが、本発明では、この変調周期に情報(処理)を対応付けている点が新しい。これにより、クロック供給先システム(2−J)に対して、クロック信号に応じた処理(第1処理)に加え、その処理とは別の処理(第2処理)を実行させることができる。このように、従来では、変調周期に情報(処理)を対応付ける技術は存在せず、本発明では、まったく、新規な試みである。
【0011】
また、本発明では、クロック供給元システム(1)とクロック供給先システム(2−J)との間の信号線の削減に役立つ。即ち、第1の効果として、第1処理を実行させるためのクロック信号を伝達する信号線(クロック信号線と称する)の他に、第2処理を実行させるための情報を伝達する信号線を、クロック供給元システム(1)とクロック供給先システム(2−J)との間に配線する必要がない。
【0012】
更に、本発明では、第2の効果として、クロック信号線を使って情報を伝達していることを他者に知られずにクロック供給元システム(1)からクロック供給先システム(2−J)に伝達することが可能である。このように、情報を伝達する信号線が不要であるため、クロック供給先システム(2−J)の利用者に対して、クロック信号線を使って情報をクロック供給先システム(2−J)に伝達していることを知られないで済む。このように、本発明は、システムの動作や機能を知られたくない機密情報を扱うような機器に適している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムの構成を示している。
【図2】図2は、スペクトラム拡散方式のクロック信号の一例を示している。
【図3】図3は、図2のクロック信号における時間(横軸)−変調周波数の変調度合い(縦軸)を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムの構成を示している。
【図5】図5は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムにおけるテーブル40を示している。
【図6】図6は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムにおけるクロック変調周期解析部22の構成を示している。
【図8】図8は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムにおけるクロック変調周期解析部22の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムについて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムの構成を示している。
【0016】
本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムは、クロック供給元システム1と、複数のクロック供給先システム2−1〜2−N(Nは2以上の整数)とを具備している。
【0017】
クロック供給元システム1は、コンピュータなどの機器であり、CPU(Central Processing Unit)(図示しない)と、記録媒体である記憶部(図示しない)とを具備している。しかし、クロック供給元システム1は、コンピュータに特定するものでなく、複数のシステムより成り立っている機器セット、システム又は半導体チップであっても構わない。本実施形態ではコンピュータを例にとって説明する。記憶部には、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。CPUは、起動時などに記憶部からコンピュータプログラムを読み取って実行する。CPUは、クロック変調周期制御部11と、SSCG(Spread Spectrum Clock Generaor)送信部12とを具備している。
【0018】
クロック供給先システム2−J(Jは1≦J≦Nを満たす整数)は、コンピュータであり、CPU(図示しない)と、記録媒体である記憶部(図示しない)とを具備している。記憶部には、コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムが記憶されている。CPUは、起動時などに記憶部からコンピュータプログラムを読み取って実行する。CPUは、SSCG受信部21と、クロック変調周期解析部22と、内部回路23とを具備している。内部回路23は、CPUに内蔵されないで、CPUに接続されていてもよい。
【0019】
まず、スペクトラム拡散方式のクロック信号を伝達する方法を整理しておく。図2は、スペクトラム拡散方式のクロック信号の一例を示している。図3は、図2のクロック信号における時間(横軸)−変調周波数の変調度合い(縦軸)を示している。
【0020】
スペクトラム拡散方式では、クロック信号を変調した場合、そのクロック信号は、例えば、図3に示されるように、中心周波数、中心周波数よりも大きい周波数である最大周波数、中心周波数、中心周波数よりも小さい周波数である最小周波数という順に周期的に変調されている。
【0021】
スペクトラム拡散方式では、クロック信号は、段階的に変化し、中心周波数を表す周期、最大周波数を表す周期、最小周波数を表す周期を含む周期群より成り立っている。例えば、図2に示されるように、周期群のうちの、最初の2周期は中心周波数を表す周期であり、次の2周期は最大周波数を表す周期であり、その次の2周期は中心周波数を表す周期であり、最後の2周期は最小周波数を表す周期であり、元の中心周波数を表す周期に戻る。この1周期分(周期群)を変調周期という。
【0022】
本発明では、富士通社雑誌「FIND」Vol.24 No.6 2006 14〜18ページ(非特許文献1)に記載されているような、変調周期を変化させるスペクトラム拡散方式を採用する。例えば、複数種類の変調周期を5種類の変調周期T1〜T5とする。複数種類の変調周期T1〜T5は、変調周期T1、T2、T3、T4、T5の順で長いものとする。ここで、図3には、変調周期T1、T3、T5が記載され、変調周期T2、T4についての図示は省略されている。また、説明の都合上、変調周期を5通りの定義としたが、実際には2通り以上であればどのように定義しても構わない。
【0023】
本発明では、新たな技術として、変調周期に情報(処理)を対応付けている。これについて説明する。
【0024】
図4に示されるように、クロック供給元システム1、クロック供給先システム2−Jの記憶部は、テーブル40を備えている。図5に示されるように、テーブル40には、複数種類の指示A1〜A5と、複数種類の変調周期T1〜T5と、各々異なる処理を表す複数種類の情報とが対応付けて格納されている。
【0025】
ここで、複数種類の情報の内容については後述する。
【0026】
図6は、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムの動作を示すフローチャートである。
【0027】
クロック供給先システム2−Jは既にクロック供給元システム1からクロック信号を受信し続けていることが前提であってもいいし、クロック供給先システム2−Jに電源投入された直後との前提であってもよい。ここでは、クロック供給先システム2−Jはクロック信号を受信し続けているものとして説明する。
【0028】
複数種類の指示A1〜A5のうちの選択指示(例えば、指示A2とする)が発生したものとする(ステップS1)。
【0029】
クロック供給元システム1において、クロック変調周期制御部11は、選択指示A2に応じて、テーブル40に格納された複数種類の変調周期T1〜T5の中から、選択指示A2に対応する選択変調周期T2を選択し、SSCG送信部12に指示する(ステップS2)。
【0030】
SSCG送信部12は、クロック信号を選択変調周期T2で変調してクロック供給先システム2−Jに送信する(ステップS3)。
【0031】
クロック供給先システム2−Jにおいて、SSCG受信部21は、クロック供給元システム1からのクロック信号を受信する(ステップS4)。このとき、内部回路23は、クロック信号に応じた処理を第1処理として実行する。第1処理については、即ち、クロック信号に応じて所定の処理を行う動作については、公知であるため、その説明を省略する。
【0032】
クロック変調周期解析部22は、テーブル40に格納された複数種類の情報のうちの、クロック信号の選択変調周期T2に対応する選択情報を選択し、選択情報が表す処理を第2処理として実行する(ステップS5)。
【0033】
同時に、ステップS5において、クロック変調周期解析部22は、テーブル40に格納された複数種類の指示A1〜A5のうちの、選択変調周期T2と選択情報とに対応する選択指示A2を外部のシステムに送信する。
【0034】
上述のクロック変調周期解析部22は、例えば、図7に示されるような構成により実現される。
【0035】
クロック変調周期解析部22は、積分器31、サンプルホールド部32、累積加算器33、比較器34、計数器35、基準値格納部36、判定部37を備えている。
【0036】
積分器31にはCR積分などの積分器が用いられる。積分器31は、クロック信号(SSCGクロック)を入力する。図8に示されるように、クロック信号の変調周期は上述の周期群を含んでいるため、積分器31は、この周期群に対して周期毎に積分し、順番にその1周期分を電圧に変換して、サンプルホールド部32と比較器34とに出力する。
【0037】
サンプルホールド部32は、1周期分の電圧を保持する。
【0038】
累積加算器33は、サンプルホールド部32に保持される電圧を累積電圧として累積する。
【0039】
比較器34は、積分器31からの電圧とサンプルホールド部32に保持された電圧とを比較し、積分器31からの電圧がサンプルホールド部32に保持された電圧よりも小さい場合、減少信号(−)を出力し、積分器31からの電圧がサンプルホールド部32に保持された電圧よりも大きい場合、増加信号(+)を計数器35に出力する。
【0040】
計数器35は、減少信号(−)と増加信号(+)とを受け取る回数をカウントする。例えば、図8に示されるように、計数器35が、減少信号(−)を2回受け取り、増加信号(+)を2回受け取った場合、クロック信号の1周期を判断する。このとき、計数器35は、判定許可信号を判定部37に出力する。
【0041】
基準値格納部36は、上述のテーブル40に対応する。例えば、テーブル40に格納された複数種類の変調周期T1〜T5は、それぞれ異なる複数種類の電圧により表される。
【0042】
判定部37は、判定許可信号に応じて、クロック信号の1周期を判断したとき、累積加算器33に累積された累積電圧と、テーブル40(基準値格納部36)に格納された複数種類の電圧とを比較する。
【0043】
複数種類の電圧のうちの、累積電圧に一致する電圧が、上述の選択変調周期(例えば、変調周期T2とする)に対応する。この場合、判定部37は、テーブル40に格納された複数種類の情報のうちの、クロック信号の選択変調周期T2に対応する選択情報を選択し、選択情報が表す処理を第2処理として実行する。同時に、判定部37は、テーブル40に格納された複数種類の指示A1〜A5のうちの、選択変調周期T2と選択情報とに対応する選択指示A2を外部のシステムに送信する。
【0044】
また、判定部37は、累積加算器33に累積された累積電圧と、テーブル40(基準値格納部36)に格納された複数種類の電圧とを比較したとき、リセット信号を累積加算器33に出力する。累積加算器33は、リセット信号に応じて累積電圧をリセットし、サンプルホールド部32に新たに保持される電圧を累積電圧として累積する。
【0045】
本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、クロック供給元システム1が、クロック信号を変調周期で変調した場合、クロック供給先システム2−Jが、クロック供給元システム1からのクロック信号に応じた第1処理と、クロック信号の変調周期に応じた第2処理とを実行する。従来では、スペクトラム拡散方式のクロック信号の変調周期を変化させることにより、電磁波輻射を低減しているが、本発明では、この変調周期に情報(処理)を対応付けている点が新しい。これにより、クロック供給先システム2−Jに対して、クロック信号に応じた処理(第1処理)に加え、その処理とは別の処理(第2処理)を実行させることができる。このように、従来では、変調周期に情報(処理)を対応付ける技術は存在せず、本発明では、まったく、新規な試みである。
【0046】
本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、クロック供給元システム1は、複数種類の指示A1〜A5のうちの選択指示A2に応じて、複数種類の変調周期T1〜T5の中から、選択指示A2に対応する選択変調周期T2を選択し、クロック信号を選択変調周期T2で変調してクロック供給先システム2−Jに送信する。クロック供給先システム2−Jは、そのクロック信号を受信し、クロック信号に応じた処理(第1処理)を実行し、複数種類の情報のうちの、クロック信号の選択変調周期T2に対応する選択情報を選択し、選択情報が表す処理(第2処理)を実行する。このように、複数種類の指示A1〜A5が存在する場合、その指示の数だけ、複数種類の変調周期T1〜T5と複数種類の情報(処理)とを対応付ければよい。これを実現するために、複数種類の指示A1〜A5と複数種類の変調周期T1〜T5と複数種類の情報とが対応付けたテーブル40をクロック供給元システム1、クロック供給先システム2−J内に設定しておくことが好ましい。
【0047】
また、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、クロック供給先システム2−Jが、クロック供給元システム1からのクロック信号に応じた第1処理と、クロック信号の変調周期に応じた第2処理とを実行することにより、クロック供給元システム1とクロック供給先システム2−Jとの間の信号線の削減に役立つ。即ち、第1の効果として、第1処理を実行させるためのクロック信号を伝達する信号線(クロック信号線と称する)の他に、第2処理を実行させるための情報を伝達する信号線を、クロック供給元システム1とクロック供給先システム2−Jとの間に配線する必要がない。
【0048】
更に、本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、クロック供給先システム2−Jが、クロック供給元システム1からのクロック信号に応じた第1処理と、クロック信号の変調周期に応じた第2処理とを実行することにより、第2の効果として、クロック信号線を使って情報を伝達していることを他者に知られずにクロック供給元システム1からクロック供給先システム2−Jに伝達することが可能である。このように、第2の効果では、情報を伝達する信号線が不要である上に、その信号線が存在しないため、クロック供給先システム2−Jの利用者に対して、クロック信号線を使って情報をクロック供給先システム2−Jに伝達していることを知られないで済む。このように、本発明は、システムの動作や機能を知られたくない機密情報を扱うような機器に適している。
【0049】
(第1実施形態)
本発明の実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック伝達システムについて、具体的に説明する。ここで、第1実施形態では、上述の構成、動作と重複する説明を省略する。
【0050】
図5に示されるように、複数種類の情報は、電源電圧V1〜V5を表しているものとする。ここで、複数種類の電源電圧V1〜V5は、電源電圧V1、V2、V3、V4、V5の順で高いものとし、電源電圧V3を標準とする。また、複数種類の情報が表す処理は、電源電圧V1〜V5を設定する処理を表しているものとする。
【0051】
ステップS5において、クロック変調周期解析部22は、テーブル40に格納された複数種類の情報のうちの、クロック信号の選択変調周期T2に対応する選択情報を選択し、選択情報が表す処理を第2処理として実行する。そこで、複数種類の情報が電源電圧V1〜V5を表している場合、選択情報が表す電源電圧は電源電圧V2である。この場合、クロック変調周期解析部22は、第2処理として、現在の電源電圧を電源電圧V2に変更する。
【0052】
本発明の第1実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、新規な試みである上に、上述の第1、2の効果を実現する。特に、第2の効果では、電源電圧を表す情報を伝達する信号線が不要である上に、その信号線が存在しないため、クロック供給先システム2−Jの利用者に対して、クロック信号線を使って電源電圧をクロック供給先システム2−Jに伝達していることを知られないで済む。
【0053】
(第2実施形態)
クロック供給元システム1のSSCG送信部12が、クロック信号と共にデータを複数のクロック供給先システム2−1〜2−Nのうちの選択クロック供給先システムのSSCG受信部21に送信する場合について説明する。
【0054】
クロック供給元システム1から選択クロック供給先システムに伝達するデータについては、選択クロック供給先システムの数が多くなるにつれ、クロック供給元システム1の負荷が大きくなり、データの遅延が大きくなる。データの遅延が大きくなると、選択クロック供給先システムではデータを受信する際に誤りが発生しやすくなる。そこで、第2実施形態では、複数種類の指示A1〜A5と、複数種類の変調周期T1〜T5と、複数種類の情報としてシステム負荷数とを対応付けておくことにより、選択クロック供給先システムではSSCG受信部21のシュレッショルドレベルを変えるなどの処置を行い、データ誤りの発生を低減することができる。第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0055】
図5に示されるように、複数種類の情報は、選択クロック供給先システムの数(システム負荷数)に対応するスレッショルドレベルX1〜X5を表しているものとする(図5ではスレッショルドレベルをThレベルと表記する)。ここで、複数種類のスレッショルドレベルX1〜X5は、スレッショルドレベルX1、X2、X3、X4、X5の順でシステム負荷数が多いものとし、スレッショルドレベルX3を標準とする。また、複数種類の情報が表す処理は、SSCG受信部21がデータを受信するときのスレッショルドレベルX1〜X5を設定する処理を表しているものとする。
【0056】
ステップS5において、クロック変調周期解析部22は、テーブル40に格納された複数種類の情報のうちの、クロック信号の選択変調周期T2に対応する選択情報を選択し、選択情報が表す処理を第2処理として実行する。そこで、複数種類の情報がシステム負荷数に対応するスレッショルドレベルX1〜X5を表している場合、選択情報が表すスレッショルドレベルはスレッショルドレベルX2である。この場合、選択クロック供給先システムのクロック変調周期解析部22は、第2処理として、現在のスレッショルドレベルをスレッショルドレベルX2に変更する。
【0057】
本発明の第2実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、新規な試みである上に、上述の第1、2の効果を実現する。特に、第2の効果では、システム負荷数を表す情報を伝達する信号線が不要である上に、その信号線が存在しないため、複数のクロック供給先システム2−1〜2−Nの利用者に対して、クロック信号線を使ってシステム負荷数を選択クロック供給先システムに伝達していることを知られないで済む。
【0058】
(第3実施形態)
クロック供給元システム1のSSCG送信部12が、クロック信号と共にデータを複数のクロック供給先システム2−1〜2−Nのうちの選択クロック供給先システムのSSCG受信部21に送信する場合について説明する。
【0059】
クロック供給元システム1から選択クロック供給先システムに伝達するデータについては、選択クロック供給先システムの数が多くなるにつれ、クロック供給元システム1の負荷が大きくなり、データの遅延が大きくなる。データの遅延が大きくなると、選択クロック供給先システムではデータを受信する際に誤りが発生しやすくなる。そこで、第3実施形態では、複数種類の指示A1〜A5と、複数種類の変調周期T1〜T5と、複数種類の情報としてクロック供給数とを対応付けておくことにより、選択クロック供給先システムではSSCG受信部21のシュレッショルドレベルを変えるなどの処置を行い、データ誤りの発生を低減することができる。第3実施形態では、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0060】
図5に示されるように、複数種類の情報は、クロック信号の数(クロック供給数)に対応するスレッショルドレベルY1〜Y5を表しているものとする(図5ではスレッショルドレベルをThレベルと表記する)。ここで、複数種類のスレッショルドレベルY1〜Y5は、スレッショルドレベルY1、Y2、Y3、Y4、Y5の順でクロック供給数が多いものとし、スレッショルドレベルY3を標準とする。また、複数種類の情報が表す処理は、SSCG受信部21がデータを受信するときのスレッショルドレベルY1〜Y5を設定する処理を表しているものとする。
【0061】
ステップS5において、クロック変調周期解析部22は、テーブル40に格納された複数種類の情報のうちの、クロック信号の選択変調周期T2に対応する選択情報を選択し、選択情報が表す処理を第2処理として実行する。そこで、複数種類の情報がクロック供給数に対応するスレッショルドレベルY1〜Y5を表している場合、選択情報が表すスレッショルドレベルはスレッショルドレベルY2である。この場合、選択クロック供給先システムのクロック変調周期解析部22は、第2処理として、現在のスレッショルドレベルをスレッショルドレベルY2に変更する。
【0062】
本発明の第3実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、新規な試みである上に、上述の第1、2の効果を実現する。特に、第2の効果では、クロック供給数を表す情報を伝達する信号線が不要である上に、その信号線が存在しないため、複数のクロック供給先システム2−1〜2−Nの利用者に対して、クロック信号線を使ってクロック供給数を選択クロック供給先システムに伝達していることを知られないで済む。
【0063】
(第4実施形態)
クロック供給元システム1のSSCG送信部12が、クロック信号と共にデータを複数のクロック供給先システム2−1〜2−Nのうちの選択クロック供給先システムのSSCG受信部21に送信する場合について説明する。第4実施形態では、第1〜3実施形態と重複する説明を省略する。
【0064】
図5に示されるように、複数種類の情報は、電源電圧V1〜V5、選択クロック供給先システムの数に対応するスレッショルドレベルX1〜X5、クロック信号の数に対応するスレッショルドレベルY1〜Y5の少なくとも1つを表しているものとする。また、複数種類の情報が表す処理は、電源電圧V1〜V5を設定する処理、SSCG受信部21がデータを受信するときのスレッショルドレベルX1〜X5、Y1〜Y5を設定する処理の少なくとも1つを表しているものとする。
【0065】
この場合、ステップS5において、選択クロック供給先システムのクロック変調周期解析部22は、選択情報が電源電圧V2を表し、第2処理が電源電圧の設定を表している場合、現在の電源電圧を選択情報が表す電源電圧V2に変更する。また、選択情報がスレッショルドレベルX2、Y2を表し、第2処理がスレッショルドレベルの設定を表している場合、現在のスレッショルドレベルを選択情報が表すスレッショルドレベルX2、Y2に変更する。
【0066】
本発明の第4実施形態によるスペクトラム拡散方式のクロック供給システムでは、新規な試みである上に、上述の第1、2の効果を実現する。即ち、第1〜3実施形態における効果を実現する。
【符号の説明】
【0067】
1 クロック供給元システム、
2−1〜2−N(Nは2以上の整数) クロック供給先システム、
11 クロック変調周期制御部、
12 SSCG送信部、
21 SSCG受信部、
22 クロック変調周期解析部、
23 内部回路、
31 積分器、
32 サンプルホールド部、
33 累積加算器、
34 比較器、
35 計数器、
36 基準値格納部、
37 判定部、
40 テーブル、
A1〜A5 指示、
T1〜T5 変調周期、
V1〜V5 電源電圧、
X1〜X5 スレッショルドレベル、
Y1〜Y5 スレッショルドレベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を変調周期で変調するクロック供給元システムと、
前記クロック供給元システムからの前記クロック信号に応じた第1処理と前記クロック信号の前記変調周期に応じた第2処理とを実行するクロック供給先システムと
を具備するスペクトラム拡散方式のクロック伝達システム。
【請求項2】
前記クロック供給元システムは、
複数種類の指示と複数種類の前記変調周期とが対応付けて格納された第1テーブルと、
前記複数種類の指示のうちの選択指示に応じて、前記第1テーブルに格納された前記複数種類の変調周期の中から、前記選択指示に対応する選択変調周期を選択する制御部と、
前記クロック信号を前記選択変調周期で変調して前記クロック供給先システムに送信する送信部と
を具備し、
前記クロック供給先システムは、
前記クロック供給元システムからの前記クロック信号を受信する受信部と、
前記クロック信号に応じた処理を前記第1処理として実行する内部回路と、
前記複数種類の変調周期と各々異なる処理を表す複数種類の情報とが対応付けて格納された第2テーブルと、
前記第2テーブルに格納された前記複数種類の情報のうちの、前記クロック信号の前記選択変調周期に対応する選択情報を選択し、前記選択情報が表す処理を前記第2処理として実行する解析部と
を具備する請求項1に記載のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システム。
【請求項3】
前記第2テーブルには、前記複数種類の変調周期と前記複数種類の情報とに対応付けて前記複数種類の指示が更に格納され、
前記解析部は、
前記第2テーブルに格納された前記複数種類の指示のうちの、前記選択変調周期と選択情報とに対応する前記選択指示を外部のシステムに送信する
請求項2に記載のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システム。
【請求項4】
前記複数種類の情報は、電源電圧を表し、
前記複数種類の情報が表す処理は、電源電圧を設定する処理を表し、
前記解析部は、
前記第2処理として、現在の電源電圧を前記選択情報が表す電源電圧に変更する
請求項2又は3に記載のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システム。
【請求項5】
前記クロック供給先システムは複数存在し、前記クロック供給元システムの前記送信部は前記クロック信号と共にデータを前記複数のクロック供給先システムのうちの選択クロック供給先システムの前記受信部に送信する場合、
前記複数種類の情報は、前記選択クロック供給先システムの数に対応するスレッショルドレベルを表し、
前記複数種類の情報が表す処理は、前記受信部が前記データを受信するときのスレッショルドレベルを設定する処理を表し、
前記選択クロック供給先システムの前記解析部は、
前記第2処理として、現在のスレッショルドレベルを前記選択情報が表すスレッショルドレベルに変更する
請求項2又は3に記載のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システム。
【請求項6】
前記クロック供給先システムは複数存在し、前記クロック供給元システムの前記送信部は前記クロック信号と共にデータを前記複数のクロック供給先システムのうちの選択クロック供給先システムの前記受信部に送信する場合、
前記複数種類の情報は、前記クロック信号の数に対応するスレッショルドレベルを表し、
前記複数種類の情報が表す処理は、前記受信部が前記データを受信するときのスレッショルドレベルを設定する処理を表し、
前記選択クロック供給先システムの前記解析部は、
前記第2処理として、現在のスレッショルドレベルを前記選択情報が表すスレッショルドレベルに変更する
請求項2又は3に記載のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システム。
【請求項7】
前記クロック供給先システムは複数存在し、前記クロック供給元システムの前記送信部は前記クロック信号と共にデータを前記複数のクロック供給先システムのうちの選択クロック供給先システムの前記受信部に送信する場合、
前記複数種類の情報は、電源電圧、前記選択クロック供給先システムの数に対応するスレッショルドレベル、前記クロック信号の数に対応するスレッショルドレベルの少なくとも1つを表し、
前記複数種類の情報が表す処理は、前記電源電圧を設定する処理、前記受信部が前記データを受信するときのスレッショルドレベルを設定する処理の少なくとも1つを表し、
前記選択クロック供給先システムの前記解析部は、
前記選択情報が電源電圧を表し、前記第2処理が前記電源電圧の設定を表している場合、現在の電源電圧を前記選択情報が表す電源電圧に変更し、
前記選択情報がスレッショルドレベルを表し、前記第2処理が前記スレッショルドレベルの設定を表している場合、現在のスレッショルドレベルを前記選択情報が表すスレッショルドレベルに変更する
請求項2又は3に記載のスペクトラム拡散方式のクロック伝達システム。
【請求項8】
クロック供給元システムからクロック供給先システムにクロック信号を供給するスペクトラム拡散方式のクロック伝達方法であって、
前記クロック供給元システムが、クロック信号を変調周期で変調するステップと、
前記クロック供給先システムが、前記クロック供給元システムからの前記クロック信号に応じた第1処理を実行するステップと、
前記クロック供給先システムが、前記クロック信号の前記変調周期に応じた第2処理を実行するステップと
を具備するスペクトラム拡散方式のクロック伝達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−151609(P2011−151609A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11177(P2010−11177)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】