説明

スペクトル拡散通信システムに実装される通信方法、基地局、及びユーザ装置

【課題】ユーザ装置による正確なチャネル予測が達成すること。
【解決手段】スペクトル拡散通信システムに実装される通信方法は、一つのセルに属する複数のユーザ装置を持つ。通信方法は、データ群の送信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を基地局から各ユーザ装置に送信する過程を含む。データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含む。各ユーザ装置用の第一パイロット符号は、各ユーザ装置用のデータ群に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、スペクトル拡散システム内で動的パイロット符号構造を生成する方法に関し、特に、ユーザ装置でのチャネル予測におけるパイロット符号の使用に関する。
【0002】
本発明は、第三世代共同プロジェクト(Third Generation Partnership Project(3GPP))によって開発中の、スーパー3G(S3G))として知られている、提案された長期展開(long term evolution(LTE))などの、高速データ通信用の直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing(OFDM))を用いたスペクトル拡散通信システムでの使用に適し、よって、本発明をこの例示的アプリケーションに関連して説明するのが適切であるが、これは限定的なアプリケーションではない。
【背景技術】
【0003】
高速ダウンリンクパケットアクセス(High Speed Downlink Packet Access(HSDPA))などのパケット通信における最近の強化および高速アップリンクパケットアクセス(High Speed Uplink Packet Access(HSUPA))などの強化されたアップリンクパケット伝送技術により、3GPP無線アクセス技術は高い競合性を持つにいたった。
【0004】
この技術の競合性を長期間にわたって確実なものとするために、3GPP無線アクセス技術の長期展開(LTE)が開発中である。この新技術はスーパー3Gとして知られている。3GPP無線アクセス技術の長期展開(LTE)の重要な部分は、無線アクセス網(Radio Access Network(RAN))の待ち時間短縮、高ユーザデータレート、システム能力および範囲の改善、ネットワークオペレータ経費削減などを含む。これを達成するために、無線インターフェースおよび無線網アーキテクチャの展開が考えられている。
【0005】
この展開の目的は、高データレートで、短い待ち時間の、パケットに最適な無線アクセス技術を可能にするフレームワークを開発することである。
【0006】
現在開発中のスーパー3Gシステムは、既存の3Gを強化して、そのデータレートを10倍にし、20MHzの伝送帯域において、ダウンリンク方向の目標データレート100Mbs、アップリンク方向の目標データレート50Mbsとする。
【0007】
スーパー3Gシステムで導入されるサービスは、既存の3G高速ダウンリンクパケットアクセス(High Speed Downlink Packet Access(HSDPA))、マルチメディアブロードキャストーマルチキャストサービス(Multimedia Broadcast-Multicast Services(MBMS))および高速アップリンクパケットアクセス(High Speed Uplink Packet Access(HSUPA))と同様なものとされるが、それらよりもかなり高いデータレートであるとする。
【0008】
このような高データレートを達成するために、直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing(OFDM))として知られる新しい無線アクセス技術が、高速変調(62−QAM)、ターボまたは低密度パリティーチェック(low density parity check)符号化などの符号化スキーム、ならびに多入力多出力(Multiple Input Multiple Output(MIMO))などのその他の機能とともに導入される。
【0009】
OFDM技術は、直交副搬送波周波数でデータ符号の並列伝送を可能にする無線アクセスを提供するものとする。
【0010】
OFDMは高速データ通信に使用できる変調技術である。スーパー3G用OFDM技術は以下の利点を有すると考えられる。
【0011】
・副搬送波の周波数間隔をOFDM符号期間の逆数に等しくなるように定義することによって、副搬送波周波数を目的に合わせて選択することで、高スペクトルの効果が得られる。
【0012】
・信号空間が込み合わないので電力に関して効果がある。
【0013】
・時間領域内の連続OFDM符号間に保護期間を導入することで、マルチパス干渉に対する頑強性が得られる。
【0014】
・狭帯域干渉に対する頑強性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、OFDM技術は、相雑音、搬送波周波数オフセット、同相/直交不均衡、相歪みおよび直線性の問題などの障害に対して極めて敏感である。これらの問題は実施にあたって常に存在し、解決には、計算が複雑で費用がかかる。
【0016】
これらの問題は搬送波間干渉をまねき、信号対混信および雑音比(Signal to Interference and Noise Ratio(SINR))を下げ、システム内の各位置を取り巻く雑音のような雲の一因となる相互変調障害を発生させる。ここにあげた障害は、ついで、高レベルの変調技術および符号化技術の適用可能性に影響するので、目標データレートの達成をさらに困難にする。
【0017】
OFDM技術でのユーザ装置による正確なチャネル予測も達成するのは難しい。ユーザ装置によるチャネル予測を支援する適切なパイロットパターンに関する研究がなされたが、時速350キロメートル(Km/h)までの最高速度をもつUE移動度範囲を含む将来のスーパー3Gシステムが必要とする要求にうまく適したパイロットパターンは、今日まで開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これを考慮して、本発明のひとつの側面は、一つのセルに属する複数のユーザ装置を持つスペクトル拡散通信システムに実装される通信方法であって、データ群の送信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を基地局から各ユーザ装置に送信する過程を含み、前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と前記複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、通信方法である。
【0019】
本発明の他の側面は、一つのセルに属する複数のユーザ装置を持つスペクトル拡散通信システムで用いられる基地局であって、データ群の送信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を各ユーザ装置に送信する送信手段を含み、前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と前記複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、基地局。である。
本発明の他の側面は、基地局を持つスペクトル拡散通信システムで用いられるユーザ装置であって、データ群の受信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を基地局から受信する受信手段を含み、前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と一つのセルに属する複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、ユーザ装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ユーザ装置による正確なチャネル予測が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】データがOFDM変調技術で変調されるスペクトル拡散通信システムを構成する基地局の動作を示す概略図である。
【図2】図1に示す基地局との通信に適応するユーザ装置の概略図である。
【図3】図1および図2に示す基地局およびユーザ装置によって使用されるデータ構造内の基本パイロット符号の使用を示す概略図である。
【図4】図1および図2の基地局とユーザ装置との間の通信に使用されるデータ構造内の適応型パイロット符号および基本パイロット符号の使用を示す概略図である。
【図5】図4に示す適応型パイロット符号の分布位置を、図1および図2に示す基地局とユーザ装置との間で送信されるデータ群中の、時間領域および周波数領域の双方内において散乱形式で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例の適応型パイロット符号生成方法は、UEが移動中でフェージングチャネル追跡のためにUEが使用するパイロット符号がないためUEのチャネル予測が不十分な条件下で、ユーザ装置(User Equipment(UE))を支援することができる。
【0023】
これは、高品質なチャネル予測を目指した最近の研究で提案されたように、不必要なパイロットオーバーヘッドの送信を回避するのに役立つ可能性もある。
【0024】
さらに、実施例によっては、将来のスーパー3Gシステム用に強化HSDPAが開発される既存の広帯域符号分割多重アクセス(Wideband Code Division Multiple Access(WCDMA))システムでの既存の高速パケットアクセス(High Speed Packet Access(HSDPA))と、さかのぼって互換性を持ちうる。
【0025】
ここで、本発明を、好ましい実施例に例示されたパイロット符号生成方法を示す添付図面を参照して説明する。しかし、パイロット符号生成方法ならびに、この方法が可能となるスペクトル拡散通信システムを構成する基地局およびユーザ装置は、添付図面に示された例示としての実施例に制限されるものでない。
【0026】
図1を参照すると、直交周波数分割多重(OFDM)変調技術が使用されるスーパー3G伝送システムを構成する基地局100が全体として示されている。
【0027】
基地局100は、基地局に要求される機能を実現するための一連のデータ処理ブロック102を含む。本発明の好適な実施例では、処理ブロック102から140へのプロセスはディジタル信号処理技術を用いて実現される。しかし、本発明の他の実施例では、ハードウェアとソフトウェアとのあらゆる好ましい組み合わせも使用できる。
【0028】
図1を参照すると、基地局100は、フォワード誤り検出およびフォワード誤り訂正符号化を実行するための処理ブロック102を含む。フォワード誤り訂正の符号化率は、UEによって報告されるチャネル品質情報に基づいて、「適応符号化および変調制御」処理ブロック114によって制御される。
【0029】
102からの符号化されたデータブロック出力は、つぎに、レイヤー1H−ARQ処理ブロック104に委ねられる。このブロック104内では、物理レイヤーハイブリッド自動再送要求(Hybrid Automatic Retransmission Request(H−ARQ))の有効性を得るために、符号化されたデータブロックから選択されたデータが送信される。この処理ブロック104も、処理対象の送信データに関する情報を与える「適応符号化および変調制御」処理ブロック114の制御下にある。この処理ブロック104も、114からの制御情報にしたがって実行される機能処理110中での適応型パイロット符号の挿入用の余地を設けるために、さらにデータビットの圧縮ないしデータビットの繰返しの縮小を行う。
【0030】
処理ブロック104からのデータブロック出力は、ついで、処理ブロック106によって細分化され、異なるOFDM物理チャネル単位(T−F群)にマッピングされる。各群単位のデータはついで各周波数群のチャネル条件にしたがって、処理ブロック108によって独立変調され、これによって周波数選択的フェージングの有効性が得られる。処理ブロック110では、適応型パイロット符号が、114によって与えられる計算前のパターンにしたがって挿入されることになる。適応型パイロット挿入された変調後のデータ符号は、ついで、処理ブロック112によってOFDM物理チャネルにマッピングされる。これにより、基地局からの同時伝送のために他のUEデータと多重化される準備がなされる。各UEのための変調されたデータ単位は、ついで、周波数ならびに時間スケジュールにしたがって、処理ブロック118によって多重化される。
【0031】
各UEについては、116から共通データチャネルへの変調されたデータブロック出力の送出の前に、変調されたデータブロックに関する制御情報は、118によって多重化されエンコードされ、フォワード誤り検出ならびに訂正エンコードを120でおこない、UEでの自己検出を目的とした物理チャネルレートマッチングおよびUE IDマスキングを122でおこない、QPSKを用いた物理チャネル変調を124でおこない、OFDM物理チャネル単位へのマッピングを126でおこなって、その結果が物理共通チャネルへ送出される。伝送されたデータパケットに関する制御情報は、転送ブロックサイズ、冗長形式を含む。H−ARQ処理、各データ群単位の変調方法、各共通データ群単位の適応型パイロット情報およびUEが与えられた情報を検出するのに必要な周波数スケジュール情報は、伝送されたパケットの受信や復号ができるようになるとする。
【0032】
共通制御チャネルおよび関連する共通データチャネルでの送信とともに、UE動作に必要な共通パイロットチャネルおよび他の共通PhCHsでの送信がある。このUE動作とは、それぞれ130と132とによる、チャネル変調(128)およびインターリーブされたOFDM物理チャネルマッピングである。
【0033】
変調されたチャネルはすべて拡散され、プレスケジュール方法で時間多重化され、処理ブロック136でのOFDM変調の前に、124で個々のセル毎にスクランブルされる。OFDM変調後の各符号には、ついで、マルチパス遅延対策のための巡回プレフィックス(Cyclic Prefix(CP))とも呼ばれるガード期間(Guard interval)が付加される(138)。ディジタル信号は、ディジタルーアナログ変換およびローパスフィルタ140で処理され、搬送波周波数へのアップコンバージョンおよび他のRF処理142を経て、ついで、アンテナ144を介して送信される。
【0034】
図2は、基地局100によって送信された情報を受信し処理するためのユーザ装置200の全体的な概略図を示す。
【0035】
S3GUE側において、RF信号がアンテナ202を介して受信され、204でRF処理され、ついで206でアナログ‐ディジタル変換される。セルサーチャおよびパスサーチャから与えられるOFDM符号タイミングで、CP除去処理ブロック208は、138(図1)で各OFDMに挿入されたガード間隔を除去する。受信された変調後のOFDM符号は、ついで、離散的フーリェ変換(Discrete Fourier Transform(DFT))技術を適用して210と212でOFDM復調される。受信されたデータサンプルは、セルサーチャによって検出されたセルごとのスクランブルコードを用いて逆スクランブルされ(216)、逆スクランブル後のデータサンプルは、ついで、データ符号を検出するために逆拡散される(216)。検索されたデータ符号は、パイロット符号から分離される。このパイロット符号は、218で共通データチャネル群が処理されていれば、適応型パイロット符号をも含む。パイロット符号はついでチャネル予測に使用される(222)。チャネル予測はトランスミットダイバーシチの場合にも実施されるものとする。このTXダイバーシチの場合には、チャネル予測は各TXアンテナに対して実施される。これは、信号対雑音比(SNR)計算およびUE速度検出(232)のためにも使用される。
【0036】
チャネル予測(222)で計算されたフェージングベクトルと共に、データ符号は等化処理され、TXダイバーシチの復号と(220)、周波数復号(224)が実行される。この復号は、TXダイバーシチがその必要時に使用されたとき、空間−時間−周波数ダイバーシチを得るために送信機側で実施される符号化処理を戻すためのデータ符号シフティングを行うものである。
【0037】
当初は、共通制御チャネル上のデータ符号のみが監視され受信される。当該制御データが検出されると、226で関連する共通データチャネルの伝送ブロックサイズ情報、冗長形式情報、周波数スケジュール情報、変調方法、H−ARQ処理、適応型パイロット情報を含む上記の復号された情報を用いて、高速信号が復号され、関連する共通データチャネルを受信するための210、212、214、216および218を構成するために、230へ供給される。
【0038】
設定がすむと、レイヤー1のUEは、割当てられたチャネル情報にしたがって、上記と同様な処理で共通データチャネル受信を行う。周波数復号された共通データチャネル符号はさらに228で復号される。これには、各物理データ群に独立の物理チャネル復調(QPSK/QAM)、デインターリーブ、レイヤー1のH−ARQのレートデマッチングおよびソフトコンバイン、最終受信伝送ブロック上のチャネル解読および誤り検査が含まれる。誤り検査の結果はついで、必要であれば、再送バージョンまたは新しい送信パケットのためのフィードバック情報としてBTSへ送られる。
【0039】
232からの、計算されたSNRおよび検出された速度は、ついで、各共通データチャネル群のための適応型パイロット符号が必要であるかを決定するために使用される。この情報は、ついでCQIにマッピングされ、AMCおよび適応型パイロット符号制御のためのフィードバック情報としてBTSへ送られる。
【0040】
ユーザ装置200の期待最高速度は最小コヒーレント時間と、基地局100とユーザ装置200との間で送信される情報の最小コヒーレント帯域を決定する期待最長超過遅延の決定に、重要なパラメータである。基地局100からユーザ装置200へ送信されるパイロット符号は、ユーザ装置が転送機能の時間および周波数の変動に追従するために、互いに充分に近くに置かれていなければならないが、他方、不必要なパイロットオーバフローによるシステム悪化を避けるのに充分なだけ離れていなければならない。3GPP LTE/スーパー3Gの必要条件によれば、スーパー3Gユーザ装置には最高速度として時速350kmが要求される。この要求は、OFDMシステム用の旧来のパイロットパターンデザインをスーパー3Gシステムに適用するときには、パイロット符号によるかなりなオーバヘッドをもたらす。
【0041】
さらに、HSDPA技術を用いた既存のアプリケーションが低速ユーザ装置に適用可能であり、したがって、OFDMシステム用の最高速度に基づいた旧来のパイロットパターンまたは構造は、短期的には効果的でない。
【0042】
図3は、パイロット符号およびデータ構造300の概略図で、追加パイロット符号が、ユーザ装置でのチャネル予測を支援するために、スーパー3Gの標準データ群内に挿入されている。追加パイロット符号は、ユーザ装置200で測定され基地局100へ報告された「チャネル品質情報」にしたがって、基地局100で挿入される。この図で示されるように、適応型パイロット符号支援チャネル予測の概念は二個の主要部分を含む。第一部分では、データ符号302は整列したデータ群で、ここで、データ符号は、データ群の送信中は複数の副搬送波周波数で並列に送信され、規則的な時間的位置にある。図3の概略図では、N個の副搬送波周波数が示されている。
【0043】
各データ群の送信の始めと終わりとの間の時間間隔は送信時間間隔(Transmission Time Interval(TTI))として知られていて、データ符号は、複数の副搬送波周波数で並列に送信され、各TTIで規則的な時間的位置にある。
【0044】
基本パイロット符号は、各データ群の先頭に割当てられる。この基本パイロット符号−データ符号構造は固定されていて、すべてのチャネル上で同一である。この構造はすべてのアンテナに対してパイロット符号を含む(ただし、送信ダイバーシチまたはMIMOを使用するかによる)。パイロット符号はデータ群の先頭に割当てられ全ての副搬送波周波数に対して拡散される。固定パイロット符号は図3では参照番号304で示され、図3に示されるN個の副搬送波周波数にわたって基本符号ブロック306および 308に配列される。
【0045】
図3に示される基本パイロット符号の割当てによって、パイロット符号が周波数領域に高密度で一様に分布されるので、チャネルのコヒーレントな帯域が狭くなる効果が生じ、チャネル予測精度の低下が防がれている。停止しているまたは低速度のユーザ装置では、この構造が最良である。つまり、時間領域の変化がなく、データ群内の他の位置のチャネル予測が時間領域の線形補間だけを用いて得られるからである。
【0046】
図4に示されるパイロットデータ400では、固定パイロット符号402はデータ群404と406の先頭に割当てられている。データ群404と406のそれぞれは、この図では、データ符号402とデータ符号408を含む。しかし、基本パイロット符号402の割当てに加えて、ユーザ装置の速度にしたがって、適応型パイロット符号410が各データ群404、406のデータ符号に置き換わる。ユーザ装置100の速度が上昇するにつれて、時間領域内に存するあるデータ符号が適応型パイロット符号410に置換され、この結果として、ドップラ効果に起因する変動に対して対処するために、チャネル予測の参照情報が得られる。
【0047】
図5に示されるパイロット符号データ構造500は、単一のデータ群502内の特別な周波数領域での、基本固定パイロット符号および適応型パイロット符号の位置づけをより明確に示している。この図から明らかなように、適応型パイロット符号504は、時間領域および周波数領域において、データ群502内に一様に分布される。基本パイロット符号506はデータ群502の先頭に割当てられる。データ群502の中心副搬送波周波数508を始点として、適応型パイロット符号504は、時間間隔2xNTだけ分離されて時間領域510に挿入される。NTは以下の式で表される。
【数1】

ここで、
【数2】

はもっとも近い整数への切り捨てを示し、ここで、fDはユーザ装置においてHzで測定されたドップラ周波数であり、ここで、TSYMはデータ符号継続時間(秒)である。
【0048】
参照番号510で示される第一の適応型パイロット符号504は、中心副搬送波周波数508に、基本パイロット符号506から時間間隔NTで、挿入される。
【0049】
したがって、NTは、適応型パイロット符号が挿入されるデータ群502内の連続する二個のデータ符号列の間の時間的距離である。
【0050】
図5から明らかであるが、適応型パイロット符号は、周波数間隔NFでそれぞれ間隔を空けられた副搬送波周波数で挿入される。NFは以下の式で表される。
【数3】

ここで、
【数4】

は最も近い整数への切り捨てを示し、ここで、Δfは副搬送波帯域(Hz)であり、ここで、τmaxは最大遅延拡散(秒)である。巡回プレフィックス長をτmaxとして使用してもよい。
【0051】
データ群502内に挿入される適応型パイロット符号504の一様分布を最適化するために、連続する副搬送波周波数に挿入される適応型パイロット符号504は、時間間隔NFで時間的にオフセットされる。これは、適応型パイロット符号が挿入された連続副搬送波周波数を示す第一行512と第二行514を考えればもっとも分かりやすい。第一行512と第二行514とに挿入されたパイロット符号が間隔NFで時間的にオフセットされているということが理解される。
【0052】
適応型パイロット符号は、下記のように、ユーザ装置でのチャネル予測を支援するためにデータ群502内に挿入される。第一に、基地局100はユーザ装置200に、図2に示されるSNR計算および速度検出ブロック232によって実行された信号対雑音(SNR)計算を介して、チャネル品質情報(Channel Quality information(CQI))測定を行わせる。SNR計算は、図5に示される固定パイロットパターン符号506を含む固定パイロットパターン構造にしたがって実行される。ユーザ装置200の測定された速度にかかわらず、これらの固定パイロット符号506はつねに各データ群502の先頭に割当てられる。さらに、ユーザ装置200はSNR計算および速度検出ブロック232内でドップラ拡散予測計算を行う。
【0053】
SNRとドップラ拡散との二個の測定値は、ついで、CQIマッピングブロック234によって、基地局100で自己復号可能な所定のチャネル品質表示(Channel Quality Indicator(CQI))インデクスにマッピングされる。CQIインデクスは、ユーザ装置200用にスケジュールされたアップリンク上に送出される。
【0054】
図1を再び参照すると、ユーザ装置200からCQIインデクス値を受信時に、基地局100はCQIインデクス値を復号し、ついで、適応型変調および符号化制御ならび適応型パイロット挿入制御ブロック114において、適応型パイロット符号の挿入が必要であるか、すなわち、NTの値が送信時間間隔(Transmission Time Interval(TTI))より大きいかを決定する。適応型パイロット符号の挿入が必要である場合には、基地局100は挿入が必要とされる適応型パイロット符号の数を決定するための計算を行う。
【0055】
各データ群単位の適応型パイロット符号の数は、下記の式を用いて計算できる。この式は、上記の方法でデータ群内に挿入されるべき適応型パイロット符号の総数を与えるものである。
【数5】

ここで、
【数6】

は平均値のもっとも近い整数への切り上げを示し、ここで、
【数7】

は平均値のもっとも近い整数への切り捨てを示す。
【0056】
Tが副搬送波上でTTIあたりの符号数よりも大きければ、データ群に関するパイロット共通符号がチャネル予測に充分(すなわち、チャネルフェージングが時間領域においてTTI内では変化しない)なので、適応型パイロット挿入は不要である。また、NTが副搬送波上でTTIあたりの符号数よりも大きければ、時間領域において連続データ群からの基本パイロットは、データ符号の現時点でのデータ群でのチャネル予測を支援するのにも使用できる。
【0057】
データ群に挿入されるべき適応型パイロット符号の数が計算されると、適応型変調および制御符号化ならびに適応型パイロット挿入制御ブロック114は、OFDM−DSCHハイブリッド自動反復要求(Hybrid Automatic Repeat Request(H−ARQ))ブロック104に対して、追加の適応型パイロット符号506を挿入するための余地を得るために、データ群502内の追加の圧縮、ないしデータ符号の繰返しの縮小を指示する。
【0058】
副物理チャネル(PhCH)適応型パイロット挿入およびインターリーブブロック110では、適応型パイロット符号506が、上記のように、データ群502の希望位置に挿入される。特に、副物理チャネル(PhCH)適応型パイロット挿入およびインターリーブブロック110で、データ符号を希望位置において適応型パイロット符号で上書きすることを可能とするために、圧縮とそれに続くダミービットの挿入はブロック104でも実行できる。
【0059】
ユーザ装置200への送出のためのデータパケット処理とともに、基地局100は、ユーザ装置200がチャネル予測のために適応型パイロット符号を割当てて使用することが可能なように、データ群502内の適応型パイロット符号の位置情報を含む高速信号情報の処理も行う。ユーザ装置200がデータ群502内の適応型パイロット符号パターンの位置を同定するための情報は、基地局100とユーザ装置200との間の無線インターフェースを介して送信されるべき情報ビットの数を減少させるために、エンコードされる。高速信号は、ユーザ装置での適応型パイロット符号の検出を可能とするために、パイロット符号およびデータ群の送信の前に、共通制御チャネル(Shared Control Channel(SCCH))上に送信される。
【0060】
ユーザ装置200では、上記目的の制御情報を監視し、その制御情報が検出されると、データ群502内の適応型パイロット符号の位置を同定する情報を含む関連共通データチャネルの受信と複合を実行するための情報を検索するために、高速信号デコーダブロック226で高速チャネル信号復号が行われる。
【0061】
適応型パイロット符号の挿入に関する情報は、ついで、パイロットおよびデータ分離ブロック218によって実行されるパイロットおよびデータの分離を制御するために、制御装置230で使用される。したがって、適応型パイロット符号は、等化および送信ダイバーシチ復号ブロック220によって実行されるデータチャネル等化を改善するためにチャネル予測ブロック222で行われるチャネル予測を強化するのに使用する目的で、抽出される。
【0062】
最後に、スペクトル拡散通信システムにおいてパイロット符号を生成するための上記方法ならびにこの方法を実施するための基地局およびユーザ装置は、本発明の精神およびその範囲から逸脱することなく、数多の変形および追加が可能である。
【0063】
上記実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0064】
(付記1)
一つのセルに属する複数のユーザ装置を持つスペクトル拡散通信システムに実装される通信方法であって、
データ群の送信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を基地局から各ユーザ装置に送信する過程を含み、
前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と前記複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、
前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、通信方法。
(付記2)
(付記1)に記載の通信方法であって、
前記第一パイロット符号が時間領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、通信方法。
(付記3)
(付記1)又は(付記2)に記載の通信方法であって、
前記第一パイロット符号が周波数領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、通信方法。
(付記4)
(付記1)乃至(付記3)のいずれかに記載の通信方法であって、
前記第一パイロット符号が前記各ユーザ装置に特有であることを特徴とする、通信方法。
(付記5)
(付記1)乃至(付記4)のいずれかに記載の通信方法であって、
前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を前記基地局が前記各ユーザ装置に送信し、
前記各ユーザ装置は前記第一パイロット符号をチャネル予測に使用することを特徴とする、通信方法。
(付記6)
(付記1)乃至(付記5)のいずれかに記載の通信方法であって、
前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を、前記データ群の送信に先立って、前記基地局が前記各ユーザ装置に送信し、
前記各ユーザ装置は前記第一パイロット符号を検出することを特徴とする、通信方法。
(付記7)
(付記1)乃至(付記6)のいずれかに記載の通信方法であって、
前記基地局は前記データ群内の前記データ符号の一部を前記第一パイロット符号で選択的に置換することを特徴とする、通信方法。
(付記8)
一つのセルに属する複数のユーザ装置を持つスペクトル拡散通信システムで用いられる基地局であって、
データ群の送信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を各ユーザ装置に送信する送信手段を含み、
前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と前記複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、
前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、基地局。
(付記9)
(付記8)に記載の基地局であって、
前記第一パイロット符号が時間領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、基地局。
(付記10)
(付記8)又は(付記9)に記載の基地局であって、
前記第一パイロット符号が周波数領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、基地局。
(付記11)
(付記8)乃至(付記10)のいずれかに記載の基地局であって、
前記第一パイロット符号が前記各ユーザ装置に特有であることを特徴とする、基地局。
(付記12)
(付記8)乃至(付記11)のいずれかに記載の基地局であって、
前記各ユーザ装置が前記第一パイロット符号をチャネル予測に使用できるようにするために、前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を前記各ユーザ装置に送信することを特徴とする、基地局。
(付記13)
(付記8)乃至(付記12)のいずれかに記載の基地局であって、
前記各ユーザ装置が前記第一パイロット符号を検出できるようにするために、前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を、前記データ群の送信に先立って、前記各ユーザ装置に送信することを特徴とする、基地局。
(付記14)
(付記8)乃至(付記13)のいずれかに記載の基地局であって、
前記データ群内の前記データ符号の一部を前記第一パイロット符号で選択的に置換することを特徴とする、基地局。
(付記15)
基地局を持つスペクトル拡散通信システムで用いられるユーザ装置であって、
データ群の受信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を基地局から受信する受信手段を含み、
前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と一つのセルに属する複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、
前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、ユーザ装置。
(付記16)
(付記15)に記載のユーザ装置であって、
前記第一パイロット符号が時間領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、ユーザ装置。
(付記17)
(付記15)又は(付記16)に記載のユーザ装置であって、
前記第一パイロット符号が周波数領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、ユーザ装置。
(付記18)
(付記15)乃至(付記17)のいずれかに記載のユーザ装置であって、
前記第一パイロット符号が前記ユーザ装置に特有であることを特徴とする、ユーザ装置。
(付記19)
(付記15)乃至(付記18)のいずれかに記載のユーザ装置であって、
前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を前記基地局から受信し、前記第一パイロット符号をチャネル予測に使用することを特徴とする、ユーザ装置。
(付記20)
(付記15)乃至(付記19)のいずれかに記載のユーザ装置であって、
前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を、前記データ群の送信に先立って、前記基地局から受信し、前記第一パイロット符号を検出することを特徴とする、ユーザ装置。
(付記21)
(付記15)乃至(付記20)のいずれかに記載のユーザ装置であって、
前記基地局は前記データ群内の前記データ符号の一部を前記第一パイロット符号で選択的に置換することを特徴とする、ユーザ装置。
【符号の説明】
【0065】
100 基地局
200 ユーザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのセルに属する複数のユーザ装置を持つスペクトル拡散通信システムに実装される通信方法であって、
データ群の送信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を基地局から各ユーザ装置に送信する過程を含み、
前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と前記複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、
前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、通信方法。
【請求項2】
前記請求項1に記載の通信方法であって、
前記第一パイロット符号が時間領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、通信方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の通信方法であって、
前記第一パイロット符号が周波数領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、通信方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の通信方法であって、
前記第一パイロット符号が前記各ユーザ装置に特有であることを特徴とする、通信方法。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の通信方法であって、
前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を前記基地局が前記各ユーザ装置に送信し、
前記各ユーザ装置は前記第一パイロット符号をチャネル予測に使用することを特徴とする、通信方法。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の通信方法であって、
前記データ群内での前記第一パイロット符号の位置を同定するパイロット符号情報を、前記データ群の送信に先立って、前記基地局が前記各ユーザ装置に送信し、
前記各ユーザ装置は前記第一パイロット符号を検出することを特徴とする、通信方法。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれかに記載の通信方法であって、
前記基地局は前記データ群内の前記データ符号の一部を前記第一パイロット符号で選択的に置換することを特徴とする、通信方法。
【請求項8】
一つのセルに属する複数のユーザ装置を持つスペクトル拡散通信システムで用いられる基地局であって、
データ群の送信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を各ユーザ装置に送信する送信手段を含み、
前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と前記複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、
前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、基地局。
【請求項9】
前記請求項8に記載の基地局であって、
前記第一パイロット符号が時間領域で前記データ群内に分布されることを特徴とする、基地局。
【請求項10】
基地局を持つスペクトル拡散通信システムで用いられるユーザ装置であって、
データ群の受信中に、複数の副搬送波周波数によって、かつ、送信時間間隔内の規則的な時間的位置で、データ符号を基地局から受信する受信手段を含み、
前記データ符号は、各ユーザ装置に適応した第一パイロット符号と一つのセルに属する複数のユーザ装置に固定の第二パイロット符号とを含み、
前記各ユーザ装置用の前記第一パイロット符号は、前記各ユーザ装置用の前記データ群に挿入されることを特徴とする、ユーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−9382(P2013−9382A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168454(P2012−168454)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2008−505675(P2008−505675)の分割
【原出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】