説明

スペーサおよび管

【課題】拡径維持部をロックリングの分割部の両端部間に挿入する際、拡径維持部がロックリングに対して位置ずれするのを防止することが可能なスペーサを提供する。
【解決手段】スペーサ30は、ロックリングの分割部の両端部間に挟み込まれる拡径維持部31と、拡径維持部31から受口開口部の外側へ連設された取っ手部32とを有し、拡径維持部31の両側部に差込溝34が形成され、差込溝34は拡径維持部31の厚さT方向において相対向する一対の案内面35bを有し、ロックリングの分割部の両端部が、管軸心方向Bにおいて、差込溝34の一対の案内面35b間に挿脱自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管を接合するために用いられるスペーサおよびこのスペーサを取り付けた管
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図13〜図16に示すスペーサ60は、一方の管61における受口62の内周に形成されたロックリング収容溝63に収容されている環状で周方向に分割部68を有するロックリング64を拡径させ、他方の管65における挿口66の外周に形成された挿口突部67をロックリング64の内側に通過させて、挿口66を受口62内に挿入することにより、一方の管61と他方の管65とを接合する際にロックリング64の拡径状態を維持するためのものである(下記特許文献1参照)。
【0003】
スペーサ60は、ロックリング収容溝63に収容された状態で拡径されているロックリング64の分割部68における周方向Aの両端部64a間に挟み込まれ且つ受口開口部72側から挿脱可能な拡径維持部69と、拡径維持部69から受口開口部72の外部へ連設された取っ手部70とを有しており、受口62内に挿口66が挿入された後に受口62と挿口66との隙間を通って受口開口部72の外部へ回収可能に構成されている。
【0004】
また、ロックリング収容溝63の受口開口部72側には、管径方向内側に突出した突部71が全周にわたりロックリング収容溝63に面して形成されている。突部71の一箇所には、ロックリング収容溝63と受口開口部72とに連通する欠損部73が形成されている。スペーサ60の拡径維持部69は欠損部73を管軸心方向Bにおいて通過可能である。
【0005】
これによると、ロックリング64の分割部68の位置を突部71の欠損部73の位置に合わせた状態で、ロックリング64をロックリング収容溝63に収容する。そして、ロックリング拡径具(図示省略)を用いて、ロックリング64の内径が挿口突部67の外径よりも大きくなるようにロックリング64を拡径する。
【0006】
この状態で、スペーサ60の拡径維持部69を受口開口部72からロックリング64の分割部68における両端部64a間に挿入し、ロックリング拡径具を取り外す。これにより、図15に示すように、拡径維持部69がロックリング64の両端部64a間に挟み込まれ、ロックリング64が拡径状態に維持される。
【0007】
上記のようにロックリング収容溝63にロックリング64を収容し、ロックリング64の分割部68にスペーサ60をセットした状態のまま、管61,65を分離した状態で出荷する。その後、施工現場での接合時において、図13に示すように、他方の管65の挿口66の挿口突部67を一方の管61の受口62内のロックリング64の内側に通過させて、挿口66を受口62内に挿入し、その後、取っ手部70を引張ってスペーサ60を受口62と挿口66との隙間から外部へ取り出す。これにより、ロックリング64が縮径して挿口66の外周面に抱き付き、一方の管61と他方の管65とが接合される。地震発生時には、挿口突部67が受口62の奥側からロックリング64に係合することで、挿口66が受口62から抜け出すのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−57728
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、図15に示すように、スペーサ60の拡径維持部69をロックリング64の分割部68における両端部64a間に挿入する際、図16の仮想線で示すように、スペーサ60の拡径維持部69が、ロックリング64に対して、径方向Cに位置ずれし易いといった問題や或は挿入方向D(図14参照)に位置ずれし易いといった問題がある。
【0010】
本発明は、スペーサの拡径維持部をロックリングの分割部における両端部間に挿入する際、スペーサの拡径維持部がロックリングに対して位置ずれするのを防止することが可能なスペーサおよび管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本第1発明は、一方の管における受口の内周に形成されたロックリング収容溝に収容されている環状で周方向に分割部を有するロックリングを拡径させ、他方の管における挿口の外周に形成された挿口突部をロックリングの内側に通過させて、挿口を受口内に挿入することにより、一方の管と他方の管とを接合する際にロックリングの拡径状態を維持するためのスペーサであって、
ロックリング収容溝に収容された状態で拡径されているロックリングの分割部における周方向の両端部間に挟み込まれ且つ受口開口部側から挿脱可能な拡径維持部と、拡径維持部から受口開口部の外側へ連設された取っ手部とを有し、
受口内に挿口が挿入された後に受口と挿口との隙間を通って受口開口部の外側へ回収可能に構成されており、
拡径維持部の両側部に差込部が形成され、
差込部は、拡径維持部の厚さ方向において相対向する一対の案内面を有し、
ロックリングの分割部における周方向の両端部がそれぞれ、管軸心方向において、差込部の一対の案内面間に挿脱自在であるものである。
【0012】
これによると、ロックリングをロックリング収容溝に収容し、スペーサの拡径維持部をロックリングの分割部における周方向の両端部間に挿入して挟み込むことにより、ロックリングが拡径状態に保たれる。この際、ロックリングの分割部における両端部がそれぞれ、管軸心方向において、差込部の一対の案内面間に挿入され、これにより、スペーサの拡径維持部がロックリングに対して径方向へ位置ずれするのを防止することができる。
【0013】
本第2発明におけるスペーサは、差込部は、ロックリングの受口開口部側の端部に挿入方向から当接してスペーサの挿入方向への移動を規制する規制面を有しているものである。
【0014】
これによると、スペーサの拡径維持部をロックリングの分割部における周方向の両端部間に挿入して挟み込む際、差込部の規制面がロックリングの受口開口部側の端部に挿入方向から当接するため、スペーサの挿入方向への移動が規制される。これにより、スペーサの拡径維持部がロックリングに対して挿入方向へ位置ずれするのを防止することができる。
【0015】
本第3発明におけるスペーサは、差込部は、拡径維持部の挿入方向側の端部と拡径維持部の両側方とが開放された差込溝である。
これによると、スペーサの拡径維持部をロックリングの分割部における周方向の両端部間に挿入して挟み込む際、ロックリングの分割部における両端部がそれぞれ、管軸心方向において、差込溝に挿入される。
【0016】
本第4発明は、上記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載のスペーサを取付けた管であって、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
ロックリングの分割部における周方向の両端部間に、スペーサの拡径維持部が挟み込まれ、
スペーサの取っ手部が受口の内部から受口開口部の外側へ露出しているものである。
【0017】
これによると、ロックリングを受口内のロックリング収容溝に収容しスペーサで拡径した状態で管を出荷し、施工現場において上記管の受口に別の管の挿口を挿入することにより、挿口の挿口突部が受口内のロックリングの内側を通過する。
【0018】
その後、スペーサの取っ手部を引張ってスペーサを受口と挿口との隙間から外部へ取り出す。これにより、ロックリングが縮径して挿口の外周面に抱き付き、管同士が接合される。
【0019】
本第5発明における管は、ロックリング収容溝の受口開口部側には、管径方向内側に突出した突部がロックリング収容溝に面して形成され、
突部に、ロックリング収容溝と受口開口部とに連通する欠損部が形成され、
スペーサは、欠損部を管軸心方向において通過可能であり、欠損部に対して周方向にずれるのを阻止するずれ止め部材を有しており、
ずれ止め部材は周方向において欠損部に係合するとともに管軸心方向において欠損部から離脱可能であるものである。
【0020】
これによると、ロックリングを受口内のロックリング収容溝に収容し、スペーサの拡径維持部をロックリングの分割部に挿入して挟み込むことにより、ロックリングをスペーサで拡径状態に保った際、ずれ止め部材が周方向において突部の欠損部に係合するため、スペーサの位置が欠損部に対して周方向にずれる(回転する)のを阻止することができる。
【0021】
この状態で受口に挿口を挿入し、その後、スペーサの取っ手部を引張ってスペーサを受口と挿口との隙間から外部へ取り出す。この際、ずれ止め部材が欠損部から離脱し、スペーサが欠損部を通過して外部へ引き出される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によると、スペーサの拡径維持部をロックリングの分割部に挿入してロックリングを拡径状態に保つ際、スペーサの拡径維持部がロックリングに対して径方向および挿入方向へ位置ずれするのを防止することができる。これにより、スペーサの拡径維持部を、位置ずれすることなく、ロックリングの分割部の正規の位置にセットすることができる。
【0023】
また、ロックリングをスペーサで拡径状態に保った際、ずれ止め部材が周方向において突部の欠損部に係合するため、スペーサの位置が欠損部に対して周方向にずれる(回転する)のを阻止することができる。これにより、スペーサを受口と挿口との隙間から外部へ確実に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態におけるスペーサを用いて接合される管同士の継手部分の構造を示す断面図である。
【図2】同、継手部分の受口内にセットされたロックリングの分割部と受口内に形成された欠損部との拡大正面図である。
【図3】同、スペーサを受口内にセットした状態で挿口を挿入したときの断面図である。
【図4】図3におけるX−X矢視図である。
【図5】(a)は図3におけるY−Y矢視図であり、スペーサをロックリングの分割部に挿入した状態、(b)はスペーサをロックリングの分割部から引き抜いた状態を示す。
【図6】同、スペーサの斜視図である。
【図7】同、スペーサの平面図である。
【図8】同、スペーサの正面図であり、ロックリングの分割部にセットされた状態を示す。
【図9】(a)はスペーサの差込溝の拡大正面図、(b)はスペーサの差込溝にロックリングの分割部端部が挿入された状態の拡大正面図である。
【図10】同、スペーサの側面図である。
【図11】同、スペーサの差込溝の拡大側面図であり、(a)はロックリングの分割部端部が差込溝から離脱した状態、(b)はロックリングの分割部端部が差込溝に挿入された状態を示す。
【図12】同、ロックリング拡径具を用いてロックリングを拡径している図である。
【図13】従来のスペーサを受口内にセットした状態で挿口を挿入したときの断面図である。
【図14】同、スペーサの側面図である。
【図15】同、スペーサの正面図である。
【図16】同、スペーサの一側端部とロックリングの分割部端部との拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明における実施の形態を図面を参照して説明する。
耐震機能を有する管の継手構造の一つとして例えば図1に示すような継手構造があり、一方の管1の端部には受口2が形成されており、受口2の内周には、シール材収容部21と、シール材収容部21よりも受口奥側に位置するロックリング収容溝4と、シール材収容部21とロックリング収容溝4との間に位置する突部22と、ロックリング収容溝4よりも受口奥側に位置する奥端面3とが形成されている。
【0026】
シール材収容部21は、受口開口部23より奥側ほど径が縮小するテーパ面21aと、テーパ面21aの奥端部から同じ径で奥側の突部22に至る円筒面21bとを有している。また、ロックリング収容溝4には、図2に示すように、周方向に一つの分割部6を有する環状のロックリング7が収容されている。尚、ロックリング7の手前側には、手前側ほど外周側へ広がるテーパー面7a(図1参照)が形成されている。
【0027】
また、上記突部22は、径方向内側に突出しており、ロックリング収容溝4に面して全周にわたり形成されている。図1,図2,図4,図5に示すように、突部22の一箇所には、ロックリング収容溝4と受口開口部23とに連通する欠損部24(切欠部)が形成されている。
【0028】
また、受口2の端部外周には径方向外側に向けてフランジ9が形成されており、このフランジ9には、周方向Aに一定間隔で管軸心方向Bの丸孔10が貫通状態で複数形成されている。
【0029】
また、他方の管12の端部には挿口13が形成されており、この挿口13の先端部の外周には挿口突部14が形成されている。尚、挿口突部14は挿口13の先端面から所定長さEだけ脱抜方向Fへずれており、挿口突部14と挿口13の先端面との間には直管部が設けられている。また、挿口突部14の先端側の外周にはテーパー面14aが形成されている。尚、挿口13は、挿口突部14がロックリング7と奥端面3との間に位置するまで、受口2内に挿入されている。また、上記ロックリング7の内径は挿口13の外径よりも若干小さく形成されており、シール材収容部21の円筒面21bは挿口13の外周面と平行である。
【0030】
シール材収容部21には、ゴム製で環状のシール材16が配置されている。尚、シール材16の受口開口部23側の一端部にはテーパ面16aが形成されている。また、挿口13における受口2に入り込まない部分の外周には、シール材16を押圧可能な環状の押輪17が配置されている。
【0031】
この押輪17には、フランジ9に形成された複数の丸孔10に対応する丸孔18が貫通状態で形成されている。フランジ9の丸孔10と押輪17の丸孔18にはT字型ボルト19が通されており、このT字型ボルト19にナット20がねじ合わされている。このT字型ボルト19とナット20との締め付け力により押輪17が管軸心方向Bに押され、挿口13の外周に配置されているシール材16を受口2の奥へ押圧してシール材収容部21に収容する。これにより、シール材16が受口2の内周面と挿口13の外周面とから受ける面圧によって水密性を発揮し、管継手におけるシール機能が付与される。
【0032】
この際、シール材16の受口奥側の端部は、突部22に接触せず、受口開口部23側へ離間している。尚、押輪17はシール材16が管1,12内の水圧によって抜け出そうとするのを防止するだけの役目を担っており、シール材16は、押輪17からの反力を受けるのみであり、押輪17と突部22とに挟まれて管軸心方向Bに圧縮されることはない。
【0033】
地震等によりこの管継手の管軸心方向Bに圧縮力が作用した場合には、挿口突部14はロックリング7の位置から受口2の奥端面3側へ移動することができる。また、引張力が作用した場合には、挿口突部14が受口2の奥側からロックリング7に係合し、受口2から挿口13が抜け出すことを確実に防止することができる。このようにして、管の継手部に耐震機能が付与されている。
【0034】
また、押輪17の表裏両端面には、シール材16の一端部が嵌まり込む円形の窪み部52と、押輪17の端面と受口2の開口端面との間に所定の間隙Sを形成する複数の間隙維持部材53とが形成されている。窪み部52は、底部に形成され且つシール材16の一端部を押圧する押圧面52aと、押圧面52aの周囲に形成され且つシール材16の一端部を拡径方向Hにおいて拘束するテーパー状の拘束面52bとを有している。尚、拘束面52bとシール材16のテーパ面16aとによって、押輪17の中心が管軸心に合うように押輪17を径方向Cへ案内する芯出し手段54が構成される。
【0035】
間隙維持部材53は、押輪17の周方向における複数箇所に形成され、押輪17の端面から管軸心方向Bにおける外向きへ突出している。尚、押輪17の端面から各間隙維持部材53の先端部までの高さは一定値Sに保たれている。
【0036】
上記一方の管1と他方の管12とを接合する際には、ロックリング7を拡径状態に維持するためのスペーサ30が用いられる。以下にスペーサ30の構成を説明する。
図6〜図11に示すように、スペーサ30は、ロックリング収容溝4に収容された状態で拡径されているロックリング7の分割部6における周方向Aの両端面7b間に挟み込まれ且つ受口開口部23側から挿脱可能な拡径維持部31と、拡径維持部31から受口開口部23側の外部へ連設された取っ手部32とを有しており、受口2と挿口13との隙間を通って受口13の開口側外部へ回収可能である。
【0037】
図8に示すように、拡径維持部31は管軸心方向Bから見て円弧形状に形成されている。拡径維持部31の幅W方向における両側部にはそれぞれ差込溝34(差込部の一例)が形成されている。差込溝34は、拡径維持部31の挿入方向D側の先端部と拡径維持部31の幅W方向における両側方とが開放されており、拡径維持部31の厚さT方向において相対向する一対の案内面35a,35bと、ロックリング7の受口開口部23側の端部7cに挿入方向Dから当接してスペーサ30の挿入方向Dへの移動を規制する規制面36と、底面37とを有している。
【0038】
ロックリング7の分割部6における周方向Aの両端部7dはそれぞれ、管軸心方向Bにおいて、差込溝34に挿脱自在である。尚、図8に示すように、ロックリング7の分割部6における両端部7dをスペーサ30の両差込溝34に挿入した場合、図9(b)に示すように、差込溝34の底面37は、ロックリング7の端面7bに対して平行な状態で、上記端面7bに面接触する。
【0039】
尚、両差込溝34の底面37は互いに平行であり、図7に示すように、両底面37の幅W方向における面間寸法Gは、挿口突部14がスムーズに挿入できるようにロックリング7を拡径できるとともにロックリング7が縮径して復元可能な範囲内に設定されている。また、図9に示すように、スペーサ30の拡径維持部31の厚さTは、ロックリング7の締付力に耐えうるように、ロックリング7の分割部6の端部7dの厚さtよりも分厚く設定され、十分な強度を有している。尚、上記拡径維持部31の厚さTを上記ロックリング7の端部7dの厚さtと同一に設定してもよい。
【0040】
取っ手部32は、受口開口部23から外部へ露出する環状の握り部39と、握り部39と拡径維持部31とを接続する接続部40とを有している。尚、図3に示すように、握り部39の径方向Cにおける外端部は、フランジ9の外周面よりも、径方向Cにおいて内側へ退入している。また、握り部39はフランジ9の開口端面に対してほぼ平行に対向する。さらに、図7に示すように、接続部40の幅W1は拡径維持部31の幅Wよりも小さく形成されている。
【0041】
また、接続部40の一端部40aは拡径維持部31に接続され、他端部40bは握り部39に接続されている。尚、接続部40の一端部の幅は拡径維持部31に向かうほど拡大し、また、図10に示すように、接続部40の厚さT1は拡径維持部31の厚さTよりも薄く形成されている。
【0042】
図4,図5に示すように、スペーサ30は、欠損部24を管軸心方向Bにおいて通過可能であり、欠損部24に対して周方向Aにずれるのを阻止するずれ止め部材42を有している。ずれ止め部材42は、接続部40の一端部40aの外周面上の両側部に一対形成され、上記一端部40aの外周面から径方向C(拡径維持部31の厚さT方向)における外側へ突出している。これら一対のずれ止め部材42は周方向Aにおいて欠損部24に係合するとともに管軸心方向Bにおいて欠損部24から離脱可能である。尚、スペーサ30の材質にはポリカーボネートが用いられている。
【0043】
以下、上記構成における作用を説明する。
管1,12を分離した状態で配管施工現場へ出荷する前に、図2に示すように、ロックリング7の分割部6の位置を受口2内の欠損部24の位置に合わせて、ロックリング7をロックリング収容溝4に収容する。そして、図12に示すように、ロックリング7の分割部6に、はさみ形状のロックリング拡径具50の先端部を挿入し、ロックリング拡径具50の一方の柄部50aに形成されているねじ孔50bにねじ合わされている、例えばT字型ボルト51を回転させ、ロックリング拡径具50を開きながらロックリング7を徐々に拡径する。このとき、ロックリング7の内径が、挿口突部14の外径よりも大きくなるように拡径する。
【0044】
この状態で、図4,図5(a)に示すように、スペーサ30の拡径維持部31を、受口開口部23から突部22の欠損部24を通過させて、ロックリング7の分割部6における両端面7b間に挿入して挟み込み、そして、ロックリング拡径具50をロックリング7から取り外す。これにより、図3,図8に示すように、ロックリング7がスペーサ30で拡径状態に維持される。
【0045】
この際、図9(b),図11に示すように、ロックリング7の分割部6における両端部7dがそれぞれ、管軸心方向Bにおいて、スペーサ30の差込溝34に挿入される。これにより、ロックリング7の両端部7dがそれぞれ差込溝34の一対の案内面35a,35b間に挿入されるとともに、差込溝34の規制面36がロックリング7の端部7cに挿入方向Dから当接する。このため、スペーサ30の拡径維持部31がロックリング7に対して径方向Cへ位置ずれするのを防止することができるとともに、スペーサ30の挿入方向Dへの移動が規制されて、スペーサ30の拡径維持部31がロックリング7に対して挿入方向Dへ位置ずれするのを防止することができる。したがって、スペーサ30の拡径維持部31を、位置ずれすることなく、ロックリング7の分割部6の正規の位置にセットすることができる。
【0046】
この際、図4,図5(a)に示すように、スペーサ30のずれ止め部材42が周方向Aにおいて突部22の欠損部24に係合するため、スペーサ30の位置が欠損部24に対して周方向Aにずれる(回転する)のを阻止することができる。
【0047】
このようにスペーサ30をセットしてロックリング7を拡径状態に保ったまま、管1,12を分離した状態で出荷する。管1,12を出荷して目的地へ運搬している際、スペーサ30の握り部39の径方向Cにおける外端部が受口2のフランジ9の外周面よりも径方向Cにおいて内側へ退入しているため、スペーサ30が損傷したり脱落するのを防止することができる。
【0048】
その後、配管施工現場において、管1,12を接合する。この際、図3に示すように、一方の管1の受口2に他方の管12の挿口13を挿入することにより、挿口突部14が拡径されたロックリング7の内側を通過する。そして、スペーサ30の握り部39を握って受口開口部23から手前側へ引っ張り、スペーサ30を受口2と挿口13との隙間から受口開口部23側の外部へ引き抜くことにより、図3の仮想線および図5(b)で示すように、拡径維持部31がロックリング7の分割部6の両端面7b間から脱抜され、ロックリング7の拡径状態が解除され、図1に示すように、ロックリング7が縮径して挿口13の外周に抱き付く。
【0049】
この際、ずれ止め部材42が欠損部24から脱抜方向Fへ確実に離脱し、スペーサ30が、欠損部24を通過して、受口2と挿口13との隙間から外部に引き出される。
上記のようにしてスペーサ30を回収した後、図1に示すように、シール材16と押輪17とを挿口13の外周の所定位置まで移動させ、丸孔10,18にボルト19を挿通し、ナット20を締め付けることにより、押輪17がシール材16を押圧してシール材収容部21に収容し、継手部がシールされ、両管1,12同士が接合され、配管施工現場における管の接合作業が完了する。
【0050】
上記のように押輪17でシール材16を押圧してシール材収容部21に押し込む際、シール材16の一端部は窪み部52の拘束面52bにより拡径方向Hにおいて拘束されているため、シール材16の一端部が窪み部52の押圧面52aに沿って拡径方向Hへ移動(変形)することを防止することができる。これにより、シール材16の一端部が押輪17と受口2の開口端面との間に挟まれることはない。
【0051】
また、ナット20を締め込むことによって押輪17が押込方向Iへ移動すると、押輪17の拘束面52bがシール材16の一端部のテーパ面16aに当接して径方向Cへ案内され、これにより、押輪17の中心が管軸心に合わせられ、自動的に押輪17が芯出しされる。
【0052】
さらに、各間隙維持部材53の先端部が受口2の開口端面に当接することで、押輪17と受口2との間隙を正確かつ容易に所定の間隙Sに保つことができる。この所定の間隙Sは押圧面52aと拘束面52bと受口2の内周面とがシール材16を適度に圧縮する大きさに設定されているため、シール材16によるシール機能が不足するといった不具合や或いはシール材16が過大な押圧力で押し付けられるといった不具合の発生を防止することができる。
【0053】
上記実施の形態では、図2に示すように、受口22内の突部22の一箇所に欠損部24を形成したが、複数箇所に形成してもよい。
上記実施の形態では、図1に示すように、ロックリング収容溝4にロックリング7のみが収容されているが、ロックリング収容溝4に、ロックリング7と、ロックリング7の外周側に配設されたロックリング芯出し用のゴム輪とが収容されているものであってもよい。
【0054】
上記実施の形態では、図1に示すように、押輪17の表裏両端面に窪み部52と間隙維持部材53とを設けたが、押輪17の表裏いずれか片方の端面にのみ設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,12 管
2 受口
4 ロックリング収容溝
6 分割部
7 ロックリング
7d 端部
13 挿口
14 挿口突部
22 突部
23 受口開口部
24 欠損部
30 スペーサ
31 拡径維持部
32 取っ手部
34 差込溝(差込部)
35a,35b 案内面
36 規制面
42 ずれ止め部材
A 周方向
B 管軸心方向
C 径方向
D 挿入方向
T 拡径維持部の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管における受口の内周に形成されたロックリング収容溝に収容されている環状で周方向に分割部を有するロックリングを拡径させ、他方の管における挿口の外周に形成された挿口突部をロックリングの内側に通過させて、挿口を受口内に挿入することにより、一方の管と他方の管とを接合する際にロックリングの拡径状態を維持するためのスペーサであって、
ロックリング収容溝に収容された状態で拡径されているロックリングの分割部における周方向の両端部間に挟み込まれ且つ受口開口部側から挿脱可能な拡径維持部と、拡径維持部から受口開口部の外側へ連設された取っ手部とを有し、
受口内に挿口が挿入された後に受口と挿口との隙間を通って受口開口部の外側へ回収可能に構成されており、
拡径維持部の両側部に差込部が形成され、
差込部は、拡径維持部の厚さ方向において相対向する一対の案内面を有し、
ロックリングの分割部における周方向の両端部がそれぞれ、管軸心方向において、差込部の一対の案内面間に挿脱自在であることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
差込部は、ロックリングの受口開口部側の端部に挿入方向から当接してスペーサの挿入方向への移動を規制する規制面を有していることを特徴とする請求項1記載のスペーサ。
【請求項3】
差込部は、拡径維持部の挿入方向側の端部と拡径維持部の両側方とが開放された差込溝であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスペーサ。
【請求項4】
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスペーサを取付けた管であって、
ロックリング収容溝にロックリングが収容され、
ロックリングの分割部における周方向の両端部間に、スペーサの拡径維持部が挟み込まれ、
スペーサの取っ手部が受口の内部から受口開口部の外側へ露出していることを特徴とする管。
【請求項5】
ロックリング収容溝の受口開口部側には、管径方向内側に突出した突部がロックリング収容溝に面して形成され、
突部に、ロックリング収容溝と受口開口部とに連通する欠損部が形成され、
スペーサは、欠損部を管軸心方向において通過可能であり、欠損部に対して周方向にずれるのを阻止するずれ止め部材を有しており、
ずれ止め部材は周方向において欠損部に係合するとともに管軸心方向において欠損部から離脱可能であることを特徴とする請求項4記載の管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−80546(P2011−80546A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234064(P2009−234064)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】