説明

スペーサー及び手摺りの接続構造

【課題】手摺り取付部の断面形状が同じジョイントに多種類の異形断面の手摺りを取り付けても、見映えが悪くならず、がたつきも生じないようにする。
【解決手段】連結ジョイント3は断面円形状の取付部6bを有し、手摺り1は、断面が円形と異なっていて、連結ジョイント3の取付部6b内に端部が嵌入されたときに取付部6bの内周面との間に隙間が形成される隙間形成面2b〜2dを外周面に有する。手摺り1と連結ジョイント3との間に設けられるスペーサー4は、手摺り1の端面に当接した状態で取付部6b内に嵌入される基部10と、基部10に、手摺り1の長さ方向に沿うようにかつ手摺り1の取付部6bへの嵌入深さと同じ長さで突設され、手摺り1外周の隙間形成面2b〜2dと取付部6b内周面との間の隙間を埋める隙間埋め部本体12a,12b,14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺りとジョイントとの間に設けられるスペーサー及びこれを用いた手摺りの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に示すように、階段や廊下等の壁面に沿って複数の手摺りを直列に連結して取り付ける場合に、2つの手摺りの端部同士を連結する連結ジョイントや、特許文献2に示すように、手摺りの端部を壁面に取り付けるためのジョイント(エンドブラケット)を用いることは知られている。これらのジョイントの取付部は、一般的に建築物の屋内外で用いられる断面円形状の手摺りの端部が嵌合するように円筒状又は円環状に形成されている。
【0003】
ところで、近年は、例えば特許文献3に示すように、握りやすさ等を考慮して円形とは異なる異形断面の手摺りも提案されている。
【特許文献1】特開平11−93367号公報
【特許文献2】特開2001−32491号公報
【特許文献3】特開2004−263409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2のようなジョイントは、一般的な断面円形状の手摺りに合わせて取付部が断面円形状となるように形成されている。したがって、上記特許文献3のような異形断面の手摺りであって、ジョイントの取付部よりも小さな断面のものを用いる場合には、取付部内に手摺りを挿入したとき、取付部内と手摺り端部との間に隙間があいてしまうので、見映えがよくない上に、がたつきが生じるおそれがある。
【0005】
そこで、ジョイントの取付部を異形断面の手摺りに合わせた形状に成形することが考えられるが、設置場所や用途によって形状の異なる手摺りに合わせて多種類のジョイントを用意する必要があり、ジョイントのコストアップや製造効率の低下を招くという問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、断面円形状の取付部を有するジョイントを用いながら、そのジョイントに多種類の異形断面の手摺りを取り付けても、見映えが悪くならず、がたつきも生じないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、手摺りの断面形状に合わせて形成したスペーサーをジョイントの取付部内に嵌入し、手摺りと取付部との間の隙間を埋めるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明に係るスペーサーは、断面円形状の取付部を有するジョイントと、断面が円形と異なっていて、該ジョイントの取付部内に端部が嵌入されたときに該取付部の内周面との間に隙間が形成される隙間形成面を外周面に有する手摺りとの間に設けられるスペーサーであって、上記手摺りの端面に当接した状態で上記取付部内に嵌入される基部と、上記基部に、上記手摺りの長さ方向に沿うようにかつ手摺りの取付部への嵌入深さと同じ長さで突設され、上記手摺り外周の隙間形成面と取付部内周面との間の隙間を埋める隙間埋め部とを備えている。
【0009】
上記の構成によると、例えば手摺りをスペーサーに、その先端側(基部と反対側)から、手摺りの端面がスペーサーの基部に当接する位置まで挿入すると、スペーサーの隙間埋め部の内面が手摺りの隙間形成面に当接する。そして、このスペーサーが取り付けられた手摺りの端部をジョイントの取付部内に嵌入すると、手摺りの取付部への嵌入深さと同じ長さで突設された隙間埋め部が、手摺り外周の隙間形成面と取付部内周面との間の隙間を埋める。このように、手摺りの形状に合わせてスペーサーを形成することにより、断面が円形と異なる異形断面の手摺りを一般的なジョイントの断面円形状の取付部内に嵌入しても、手摺りと取付部との間に隙間が生じないようになっている。
【0010】
第2の発明に係るスペーサーは、上記第1の発明のスペーサーにおいて、上記隙間埋め部を含むスペーサーの周方向全体の領域には、直径方向に互いに対向する位置に位置する一対の第1ネジ挿入部と、軸方向に見て、上記第1ネジ挿入部の中心を結ぶ直線と直交する直線上の位置を中央として角度θずつ周方向両側に広がる一対の第2ネジ挿入部とが設けられており、上記角度θは、tanθ≧230/150(0<θ≦π/2)の範囲にある。
【0011】
ここで、一般的には、手摺り同士を接続するジョイントの取付部の側面には、直径方向に互いに対向する位置に一対のネジ孔が設けられている。そのため、スペーサーを取り付けた手摺りの端部をジョイントの取付部内に嵌入し、ジョイントの上記ネジ孔にネジを挿入して手摺りにねじ込み、ジョイントと手摺りとを固定する際に、手摺りが円形と異なる異形断面であって、配置の向きが決まっているときには、この手摺りの形状に合わせて形成されたスペーサーの向きも決まり、ネジを挿入する部分に隙間埋め部が形成されている場合がある。しかし、スペーサーには隙間埋め部を含む周方向全体の領域に第1及び第2ネジ挿入部が設けられているので、これらのネジ挿入部とジョイントのネジ孔とにネジを挿入することができるようになる。
【0012】
そして、上記第2の発明において、例えば、手摺りに合わせて、スペーサーの一対の第1ネジ挿入部の中心を結ぶ直線が水平に延びるように配設され、廊下のコーナー部や、階段と踊り場等との境界部にジョイントを用いる場合を説明する。この場合、ジョイントの一対のネジ孔が上下に位置するときには、第2ネジ挿入部の中央とジョイントのネジ孔との位置が合い、ジョイントのネジ孔が左右に位置するときには、第1ネジ挿入部とジョイントのネジ孔との位置が合うので、これらのネジ挿入部とネジ孔とにネジを挿入可能となる。
【0013】
一方、直角に曲がるように連続する廊下と階段との境界部にジョイントを用いる場合には、階段の傾斜に応じてジョイントの一対のネジ穴の中心を結ぶ直線が傾斜する。第2ネジ挿入部は中央から角度θずつ周方向両側に広がっており、この角度θは、建築基準法施工令第23条における「住宅の階段の蹴上げは230mm以下、踏面は150mm以上とすることができる。」との規定に基づいている。すなわち、住宅の階段において建築基準法で許容される最大傾斜角である角度θ≒56.9度(tanθ=230/150)以上の角度で第2ネジ挿入部が設けられているので、階段の傾斜に拘わらず、この第2ネジ挿入部とジョイントのネジ孔との位置合わせが可能となる。
【0014】
第3の発明に係る手摺りの接続構造では、第1または第2の発明に係るスペーサーを介して上記手摺りの端部がジョイントの取付部内に嵌入されている。
【0015】
上記の構成によると、手摺りをスペーサーに、その先端側(基部と反対側)から、手摺りの端面がスペーサーの基部に当接する位置まで隙間埋め部の内面が手摺りの隙間形成面に当接するように挿入する。そして、このスペーサーが取り付けられた手摺りの端部をジョイントの取付部内に嵌入すると、手摺りの取付部への嵌入深さと同じ長さで突設された隙間埋め部が、手摺り外周の隙間形成面と取付部内周面との間の隙間を埋める。このように、手摺りの形状に合わせてスペーサーを形成することにより、断面が円形と異なる異形断面の手摺りを一般的なジョイントの断面円形状の取付部内に嵌入しても、手摺りと取付部との間に隙間が生じないようになっている。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の発明によれば、手摺りの断面形状に合わせて隙間埋め部が形成されたスペーサーを介して、手摺りの端部がジョイントの取付部内に嵌入されることで、一般的な円形断面の手摺り用のジョイントを用いても、手摺りの断面形状に拘わらず、手摺りと取付部との間に隙間が生じないので、見映えが向上するとともに、がたつきも抑制することができる。
【0017】
上記第2の発明によれば、スペーサーに第1ネジ挿入部と、階段の最大傾斜に合わせた第2ネジ挿入部とを設けていることにより、配置の向きが決まっている手摺りを取付部に嵌入する場合でも、第1ネジ挿入部か第2ネジ挿入部のどちらかにネジを挿入することができ、ジョイントと手摺りとを固定することができる。
【0018】
上記第3の発明によれば、手摺りの断面形状に合わせて形成されたスペーサーを介して手摺りの端部をジョイントの取付部内に嵌入するので、手摺りと取付部との間に隙間が生じず、見映えが向上するとともに、がたつきも抑制することができ、手摺りの形状に合わせて多種類のジョイントを用意しなくても、一般的な円形断面の手摺り用のジョイントを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
《発明の実施形態1》
(使用状態1)
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る手摺りの接続構造を示し、1は手摺り、3は、2つの手摺り1を連結する連結ジョイントであり、4は各手摺り1と連結ジョイント3との間に設けられる本発明の実施形態に係るスペーサーである。図1において、この連結ジョイント3は、廊下のコーナー部で手摺り1を連結しており(使用状態1)、各手摺り1は図示しないブラケットによって壁面9に取り付けられている。
【0021】
(連結ジョイント)
上記連結ジョイント3は、断面円形状の手摺りを連結する場合に用いられる一般的で公知のものであり、例えば、亜鉛合金、アルミニウム合金などの金属製である。この連結ジョイント3は、円筒状の連結部5と、この連結部5の軸方向両端部に揺動可能に取り付けられる可動部6とを備えている。これら可動部6は連結部5内に挿入されて取り付けられる略半球状の半球部6aと、この半球部6aに連続して形成され、軸方向の外側に向かって開放された有底円筒状の取付部6bとからなっている。各可動部6は、その中心軸Ax1が連結部5の中心軸Ax2と一致する位置と、可動部6の中心軸Ax2に対して略45度傾いた位置との間を同じ平面上で、図1のA方向に動くように構成されている。そして、各可動部6の取付部6bには、直径方向に互いに対向する位置に第1のネジ7が挿入される一対のネジ挿入孔8,8が貫通して形成されている。これらのネジ挿入孔8は、その中心を結ぶ直線が、可動部6が上記A方向に可動する平面に対して垂直となる位置に設けられている。
【0022】
(手摺り)
上記各手摺り1は、図3に示すように、断面が円形と異なる形状に形成されている。具体的には、この手摺り1は、断面円形状の本体部2aと、この本体部2aの壁面9の上部を平面状に切り取った形状の第1平面部2bと、この第1平面部2bの下側に連続して設けられ、第1平面部2bと略同じ幅で本体部2aを平面状に切り取った形状の第2平面部2cと、本体部2aの壁面9と反対側(通路側)の上下中央部に設けられた凹み部2dとからなっている。また、この手摺り1の本体部2aの直径は、上記連結ジョイント3の取付部6b内径とほぼ同じとなっていて、第1及び第2平面部2b,2cと凹み部2dとのそれぞれの外周面は、連結ジョイント3の取付部6b内に手摺り1の端部が嵌入されたときに、この取付部6bの内周面との間に隙間が形成される隙間形成面を構成している。このように、本発明の実施形態における手摺り1は円形断面とは異なる異形断面に形成され、上下の向きと壁面9に対する向きとが決められている。
【0023】
(スペーサー)
そして、上記スペーサー4は円形とは異なる異形断面の手摺り1の端部の外側に嵌められ、連結ジョイント3の取付部6b内に嵌入される。つまり、これらの取付部6bと各手摺り1との間の隙間を埋めるようにスペーサー4が取り付けられるようになっており、このスペーサー4を介して、断面円形状の手摺りを連結するように成形された一般的な連結ジョイント3に、異形断面の手摺り1を嵌入して接続する。
【0024】
すなわち、上記スペーサー4は、図4及び図5に示すように、連結ジョイント3の取付部6b内底部側に配置されるリング状の基部10を有している。この基部10は、円環状の基部本体10aと、この基部本体10aの壁面9側上部に、手摺り1の第1及び第2平面部2b,2cの外周面(隙間形成面)にそれぞれ沿うように折曲して設けられた第1直線部10b及び第2直線部10cとからなっている。この基部本体10aは、外周縁が連結ジョイント3の取付部6b内周面に沿うような円環状に形成されている。
【0025】
上記第1及び第2直線部10b,10cの外周縁から板状の第1,第2隙間埋め部11a,11bが、手摺り1の長さ方向(基部10の中心軸方向)に沿うように突設されている。この第1及び第2隙間埋め部11a,11bは、手摺り1の取付部6bへの嵌入深さと同じ長さとなるように形成されている。また、この第1及び第2隙間埋め部11a,11bは、その内側面が、上記手摺りの第1及び第2平面部2b,2cの外周面(隙間形成面)に沿うように平面状に形成され、かつ上記第1のネジ7をねじ込んで貫通させることができる程度の薄肉部に設けられている。そして、これらの第1及び第2隙間埋め部11a,11bの先端部外側面には、外周面が取付部6b内周面に沿うように円弧面とされた第1及び第2隙間埋め部本体12a,12bが一体に形成されている。
【0026】
ここで、第1及び第2隙間埋め部本体12a,12bは、手摺り1の第1及び第2平面部2b,2cの外周面(隙間形成面)と取付部6b内周面との間の隙間を、取付部6bの開口側端部において埋めるように形成されている。また、第2隙間埋め部11bの外側面には、第2隙間埋め部本体12bから第2直線部10cに向かって平行に延びる2つのリブ13が間隔をあけて設けられている。これらのリブ13は、その外側面が取付部6b内周面に沿うように形成され、第2平面部2cの外周面(隙間形成面)と取付部6b内周面との間の隙間を埋める隙間埋め部を構成している。
【0027】
上記基部本体10aの壁面9と反対側(通路側)の上下中央部には、手摺り1側に向かって第3隙間埋め部14が手摺り1の長さ方向に沿うように突設されている。この第3隙間埋め部14は、その内側面が手摺り1の凹み部2dの外周面(隙間形成面)に沿うように、上下中央部が膨らんだ形状に形成されている。そして、この第3隙間埋め部14は、手摺り1の取付部6bへの嵌入深さと同じ長さで突設されている。
【0028】
そして、図5に示すように、上記スペーサー4において、第1及び第2隙間埋め部11a,11b及び第3隙間埋め部14を含むスペーサー4の周方向全体の領域には、直径方向に互いに対向する位置に位置する一対の第1ネジ挿入部15,16と、軸方向に見て、第1ネジ挿入部15,16の中心を結ぶ直線L1上の位置を中央として角度θずつ周方向両側に広がる薄肉部または空間部からなる一対の第2ネジ挿入部17,18とが設けられている。
【0029】
具体的には、上記第3隙間埋め部14には、基端側から凹陥し、基部本体10aの径方向に貫通した第1ネジ挿入部15が設けられている。一方、第2隙間埋め部11bの2つのリブ13間は、この第1ネジ挿入部15に対して基部本体10aの直径方向に対向する位置にあり、第1ネジ挿入部15と対となる第1ネジ挿入部16として構成され、これらの第1ネジ挿入部15,16の中心を結ぶ直線L1が水平となるようにスペーサー4が配置されている。
【0030】
また、軸方向に見て、上記直線L1と直交する直線L2上の位置を中央として角度θずつ周方向両側に広がる一対の第2ネジ挿入部17,18が設けられている。この第2ネジ挿入部17,18の角度θは、56.9°≦θ≦90°、すなわち、tanθ≧230/150(0<θ≦π/2)の範囲にある。具体的には、上側の第2ネジ挿入部17は、直線L2から壁面9の反対側(通路側)は、第1隙間埋め部11aが、直線L2から壁面9側は、第1隙間埋め部11aと第3隙間埋め部14との間の周方向領域の空間部がそれぞれ第2ネジ挿入部17として構成されている。一方、第2隙間埋め部11bと第3隙間埋め部14との間の周方向領域の空間部が下側の第2ネジ挿入部18として構成されている。
【0031】
上記スペーサー4は、例えば、亜鉛合金、アルミニウム合金等の金属や、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、塩化ビニル樹脂等の各種合成樹脂等で成形することができる。
【0032】
(組み付け方法)
次に、上記手摺りの接続構造における組み付け方法を説明する。
【0033】
まず、手摺り1の端部にスペーサー4を取り付ける。具体的には、各手摺り1を第2平面部2cが壁面9側に向き、かつ壁面9と平行となるように配置する一方、スペーサー4の先端側(基部10の反対側)を手摺り1側に向けて、手摺り1の配置と合わせた向き、すなわち、第2隙間埋め部11bが壁面9側に向きかつ壁面9と平行となる向きにし、手摺り1の端部にスペーサー4を外嵌合する。このとき、手摺り1の端面がスペーサー4の基部10に当接する位置までスペーサー4を手摺り1に嵌め込む。
【0034】
一方、連結ジョイント3の各可動部6をA方向に回動して、各可動部6の中心軸Ax1と連結部5の中心軸Ax2とがそれぞれ略45°をなすようにすることで、可動部6の互いの中心軸Ax1が直角に交わるようにする。
【0035】
そして、スペーサー4を取り付けた手摺り1の端部を連結ジョイント3の取付部6b内に嵌入する。
【0036】
最後に、取付部6bの各ネジ挿入孔8に第1のネジ7を挿入し、手摺り1にねじ込む。各第1のネジ7は、可動部6の一対のネジ挿入孔8が図2のように上下に位置している場合、スペーサー4の上下の第2ネジ挿入部17,18の周方向中央部に挿入される。すなわち、上側の第1のネジ7はスペーサー4の第1隙間埋め部11aを貫通し、下側の第1のネジ7は、スペーサー4の第2隙間埋め部11bと第3隙間埋め部14との間の空間部を通り、直接手摺り1にねじ込まれる。
【0037】
このようにして、スペーサー4を介して連結ジョイント3取付部6b内に手摺り1が嵌入される。このとき、スペーサー4の各隙間埋め部本体12a,12b,14は、その内側面が手摺り1の各隙間形成面の外周面に当接するとともに、その外側面が取付部6b内周面に当接して、手摺り1と取付部6bとの間の隙間を埋める。そして、各隙間埋め部本体12a,12b,14の端面が取付部6bの開口端縁に位置している。
【0038】
上記のようにして連結ジョイント3によって2つの手摺り1を直角に連結し、この連結ジョイント3を廊下のコーナー部に配置して、各手摺り1をブラケットを介して壁面9に取り付ける。
【0039】
(使用状態2)
次に、本発明の実施形態1の手摺りの接続構造において、図6に示すように、例えば、左側の階段側の手摺り1と右側の踊り場側の手摺り1とを上記連結ジョイント3で連結する使用状態2について説明する。
【0040】
この場合、連結ジョイント3の踊り場側の手摺り1を取り付ける可動部6は、その中心軸Ax1が連結部5の中心軸Ax2と同軸となる位置に配置され、反対側(階段側)の可動部6は、その中心軸Ax1が連結部5の中心軸Ax2に対して階段の傾斜と同じ傾きとなるように配置されている。このとき、可動部6の一対のネジ挿入孔8が、その中心を結ぶ直線が図6のように水平となるように配置されている場合、各第1のネジ7は、スペーサー4の各第1ネジ挿入部15,16にそれぞれ挿入されて手摺り1にねじ込まれている。具体的には、壁面9側の第1のネジ7は、スペーサー4の第2隙間埋め部11bを貫通し、通路側の第1のネジ7は、スペーサー4の第1ネジ挿入部15を通っている。その他は使用状態1と同じである。
【0041】
(使用状態3)
次に、本発明の実施形態1の手摺りの接続構造において、図7に示すように、廊下側の手摺り1[図7(a)の左側]と、階段側の手摺り1[図7(a)の右側]とを上記連結ジョイント3で連結する場合について説明する。
【0042】
上りの階段の壁面9が廊下側の壁面9に対して直角に連続して設けられ、階段側の手摺り1は、階段の傾斜角度θ’と同じ角度の傾斜で壁面9に取り付けられている。すなわち、連結ジョイント3の階段側の可動部6の中心軸Ax1が水平線Hに対して角度θ’傾いている。
【0043】
そして、連結ジョイント3の可動部6は互いの中心軸Ax1が直角に交わるような向きにある。そして、階段側の手摺り1のネジ挿入孔8は上下に位置している一方、廊下側の手摺り1のネジ挿入孔8は、その中心を通る直線L3が鉛直線Vに対して、階段の傾斜と同じ角度θ’だけ傾く位置に位置している。
【0044】
この場合、階段側の可動部6の各ネジ挿入孔8に挿入される各第1のネジ7は、スペーサー4の上下の第2ネジ挿入部の中央部に挿入されている。一方、廊下側の可動部6の各ネジ挿入孔8に挿入される各第1のネジ7は、各第2ネジ挿入部の中心部と通る直線L2に対して角度θ’だけ傾いた位置に挿入されている。ここで、各第2ネジ挿入部は直線L2に対して角度θずつ両側に広がるように設けられており、この角度θは建築基準法に基づいた階段の最大傾斜以上となっているため、階段の傾斜θ’に拘わらず、第1のネジ7を第2ネジ挿入部に挿入することができる。
【0045】
(実施形態1の効果)
したがって、本実施形態1の手摺りの接続構造においては、手摺り1の断面形状に合わせて第1〜第3隙間埋め部本体12a,12b,14が形成されたスペーサー4を介して、手摺り1の端部を連結ジョイント3の取付部6b内に嵌入する。このことで、一般的な円形断面の手摺り用の連結ジョイント3を用いても、少なくとも外側(取付部6bの開口側)は手摺り1と取付部6bとの間の隙間が埋められるので、見映えが向上するとともに、がたつきも抑制することができる。
【0046】
そして、スペーサー4を手摺り1の断面形状に合わせて形成することで、手摺り1の形状に合わせて多種類のジョイントを用意しなくても、一般的な円形断面の手摺り用の連結ジョイント3を用いることができる。
【0047】
また、スペーサー4に、その中心を結ぶ直線L1が水平となる位置に第1ネジ挿入部15,16を設け、さらに、第1ネジ挿入部15,16の直線L1と直交する直線L2上の位置を中央として第2ネジ挿入部を設けている。このため、上下の向きが決まっている手摺り1を接続する場合でも、鉛直及び水平のいずれの方向からでも第1のネジ7を挿入することができる。
【0048】
また、各第2ネジ挿入部を直線L2上の位置を中央として角度θずつ周方向に広がるように設け、この角度θが階段の最大傾斜角度以上に設定されているため、廊下側の手摺り1と階段側の手摺り1とを連結ジョイント3により連結する場合に、第1のネジ7が、この階段の傾斜角度θ’だけ傾いた方向から挿入されても第2ネジ挿入部に挿入することができるので、手摺り1と連結ジョイント3とを固定することができる。
【0049】
《発明の実施形態2》
次に、図8により、本発明の実施形態2に係る手摺りの接続構造について、詳細に説明する。なお、図1から図7と同じ構成要素については同じ符号を付し、実施形態1と同じ部分については、その詳細な説明は省略する。
【0050】
すなわち、本発明の実施形態2に係る手摺りの接続構造は、ジョイントが手摺り1と壁面9(笠木上面であってもよい)とを連結するエンドブラケット21である点で上記実施形態1に係る手摺りの接続構造と異なる。
【0051】
具体的には、エンドブラケット21は、基端部で壁面9に取り付けられる矩形箱状の公知のものであり、その先端部の一端側に有底円筒状の取付部22が開口されている。この取付部22の底部には、2つのネジ挿入孔24が設けられている。
【0052】
そして、スペーサー4を手摺り1の端部に嵌合した後、手摺り1の端部をエンドブラケット21の取付部22に嵌入し、この取付部22と反対側から手摺り1の軸方向に第2のネジ23を各ネジ挿入孔に挿入して手摺り1にねじ込み、エンドブラケット21を手摺り1に固定する。このようにスペーサー4を介して手摺り1が取り付けられたエンドブラケット21を壁面に取り付けることで、手摺り1と壁面が接続される。
【0053】
(実施形態2の効果)
したがって、本実施形態2の手摺りの接続構造においては、実施形態1と同様に、一般的な円形断面の手摺り用のエンドブラケット21を用いても、少なくとも外側(手摺り取付部22の開口側)は手摺り1と取付部22との間の隙間が埋められるので、見映えが向上するとともに、がたつきも抑制することができる。
【0054】
(その他の実施形態)
なお、上述の実施形態は、本発明の例示であって、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、以下のような構成としてもよい。
【0055】
すなわち、手摺り1の断面形状は上記実施形態の形状には限定されず、設置場所、用途等に合わせて様々な形状とすることができ、この形状に合わせて、スペーサー4を形成すればよい。例えば、図9に示すように、上記実施形態の手摺り1に凹み部2dを形成しないものでもよく、その断面の最大幅が取付部6b,22の直径以下であって、上記連結ジョイント3またはエンドブラケット21の取付部6b,22内に嵌入できる大きさであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、手摺りとジョイントとの間に設けられるスペーサー及びこれを備えた手摺りの接続構造について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態1に係る手摺りの接続構造の使用状態1を示す平面図である。
【図2】実施形態1の手摺りの接続構造の分解斜視図である。
【図3】手摺りを端面側から見た側面図である。
【図4】図2のスペーサーの斜視図である。
【図5】(a)はスペーサーを基部側から見た側面図であり、(b)はスペーサーを先端側から見た側面図である。
【図6】本発明の実施形態1の使用状態2を示す側面図である。
【図7】実施形態1の使用状態3を示し、(a)は廊下側から見た側面図であり、(b)は階段側から見た側面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る手摺りの接続構造を示す分解斜視図である。
【図9】その他の実施形態に係る手摺りを示す図3相当図である。
【符号の説明】
【0058】
1 手摺り
2b 第1平面部(隙間形成面)
2c 第2平面部(隙間形成面)
2d 凹み部(隙間形成面)
3 連結ジョイント(ジョイント)
4 スペーサー
9 壁面
11a 第1隙間埋め部(隙間埋め部、第2ネジ挿入部)
11b 第2隙間埋め部(隙間埋め部)
12a 第1隙間埋め部本体(隙間埋め部)
12b 第2隙間埋め部本体(隙間埋め部)
14 第3隙間埋め部(隙間埋め部)
15 第1ネジ挿入部
16 第1ネジ挿入部
21 エンドブラケット(ジョイント)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形状の取付部を有するジョイントと、断面が円形と異なっていて、該ジョイントの取付部内に端部が嵌入されたときに該取付部の内周面との間に隙間が形成される隙間形成面を外周面に有する手摺りとの間に設けられるスペーサーであって、
上記手摺りの端面に当接した状態で上記取付部内に嵌入される基部と、
上記基部に、上記手摺りの長さ方向に沿うようにかつ手摺りの取付部への嵌入深さと同じ長さで突設され、上記手摺り外周の隙間形成面と取付部内周面との間の隙間を埋める隙間埋め部とを備えていることを特徴とするスペーサー。
【請求項2】
請求項1のスペーサーにおいて、
上記隙間埋め部を含むスペーサーの周方向全体の領域には、
直径方向に互いに対向する位置に位置する一対の第1ネジ挿入部と、
軸方向に見て、上記第1ネジ挿入部の中心を結ぶ直線と直交する直線上の位置を中央として角度θずつ周方向両側に広がる一対の第2ネジ挿入部とが設けられており、
上記角度θは、tanθ≧230/150(0<θ≦π/2)の範囲にあることを特徴とするスペーサー。
【請求項3】
請求項1又は2のスペーサーを介して上記手摺りの端部がジョイントの取付部内に嵌入されていることを特徴とする手摺りの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−303606(P2008−303606A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151515(P2007−151515)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【出願人】(391041822)株式会社内外 (30)
【Fターム(参考)】