説明

スペーサ及びその製造方法、液晶表示装置用基板、液晶表示装置

【課題】弾性回復率及び加重変形量の大きいスペーサを提供する。
【解決手段】少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を用いて形成されており、25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.5GPa以上3.0GPa以下であり、底面積が20μmを超え350μm以下であり、高さが1.0μm以上10.0μm以下であるスペーサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ及びその製造方法、並びにこれを用いた液晶表示装置用基板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の生産性を上げるために、ワンドロップフィル法(One Drop Fill Technology:ODF法)が提案されている。この方法は、液晶表示素子を構成する2枚の液晶パネル用基板のうち、一方の基板の液晶封入面上に所定量の液晶を滴下し、他方の基板を真空下で所定のセルギャップを維持できる状態で対峙させ、貼り合わせることにより、液晶表示素子を製造する方法である。この方法によれば、従来の方法に比べて液晶表示素子が大面積化し、セルギャップが狭小化しても液晶の封入が容易であることから、将来的にODF法が液晶表示素子の製造方法の主流になると考えられる。
【0003】
しかし、ODF法において微粒子のスペーサを用いると、液晶の滴下時、又は対向基板の貼り合わせ時に散布した微粒子のスペーサは液晶の流動と共に流されて、基板上に存在する微粒子のスペーサの分布が不均一となる問題がある。微粒子を用いたスペーサの分布が不均一になると、液晶セルのセルギャップにバラツキが生じ、液晶表示に色ムラが発生してしまうという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、従来の微粒子を用いたスペーサに替わって、液晶基板上にフォトリソグラフの手法によってセルギャップを均一保持するための凸型パターンを形成したスペーサ(いわゆるフォトスペーサ)が提案され、実用化されてきている。このフォトスペーサを用いた場合、画素内部にスペーサが配置される問題やODF法による際にスペーサむらが生じる問題を解消することができる。
【0005】
しかしながら、フォトスペーサを用いてODF法により製造された大型液晶表示素子においては、表示装置の使用中に液晶セル内の液晶が表示パネルの下方へ流動することにより、表示パネルの上半面と下半面とにおいて色ムラとなる「重力不良」と呼ばれる欠陥が発生することがあり、大きな問題とされている。このような「重力不良」を解消するには、バックライトから発生する熱によって液晶セル内の液晶が膨張してセルギャップが押し広げられた際に、圧縮された状態のスペーサを圧縮変形からの弾性回復によりセルギャップの変化に追随できるようにし、基板とスペーサとの間に隙間が生じないようにすることで回避可能であると考えられる。ところが、従来の方法では、スペーサに高い変形回復力を持たせるためには、スペーサを形成するための樹脂を高度に架橋して圧縮時に塑性変形が起こりにくい性状にする必要があるところ、このような高度な架橋構造を有する樹脂は一般的に圧縮弾性率が高く、硬くなってしまう傾向にある。そして、このような硬い樹脂によりスペーサを形成した場合には、スペーサを圧縮変形させる課程において大きな圧力が必要であり、液晶表示素子においては、圧縮されたスペーサによる液晶セルを押し広げようとする大きな力を内包することになる。スペーサが液晶セルを押し広げようとする力が大きい場合、低温時に液晶セル内の液晶の体積収縮が起こると、液晶セル内の内圧が急激に低下して気泡が発生する「低温発泡」という現象を招き、表示画像に表示ムラを生じさせる一因となる。
【0006】
かかる状況に鑑み、液晶表示素子の2枚のガラス基板の間隙を一定に維持するために、カラムスペーサの弾性係数を0.2〜1.0GPaとする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−258422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、圧縮弾性率が低く軟らか過ぎると、特に基板サイズが例えば19インチ以上の大サイズとなる場合には、液晶表示装置を形成して水平面と交差する方向に配置したときに、基板下方側に位置するスペーサが液晶の重量に耐え切れず基板面から離れてしまい、重力により液晶が下方に溜まって表示ムラが生じることがある。さらに、温度環境の変化により液晶材料を挟む2枚の基板間に間隙差が生じやすいが、このような基板間の間隙変化にスペーサを追随させるためには、スペーサを柔らかくして変形量、変形率を大きくする必要があるが、スペーサの軟化には、柱径を大きくしたり、柱本数を増やしたり、あるいは円柱形状を変更する等の種々の課題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、弾性回復率及び加重変形量の大きいスペーサ及びその製造方法、並びに良質な画像表示が可能な液晶表示装置用基板及び液晶表示装置を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を用いて形成されており、25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.5GPa以上3.0GPa以下であり、底面積が20μmを超え350μm以下であり、高さが1.0μm以上10.0μm以下であるスペーサである。
<2> 前記(A)樹脂が、側鎖に、分岐及び/又は脂環構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合を有する基を含む樹脂であることを特徴とする前記<1>に記載のスペーサである。
<3> 前記(A)樹脂の炭素数が10以上であることを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載のスペーサである。
<4> 前記分岐及び/又は脂環構造が、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基から選択される少なくとも1種を有することを特徴とする前記<2>又は前記<3>に記載のスペーサである。
<5> 前記分岐及び/又は脂環構造が、トリシクロペンテニル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、及びイソボルニル基から選択される少なくとも1種を有することを特徴とする前記<4>に記載のスペーサである。
<6> 前記(C)光重合開始剤が、アミノアセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、及びオキシムエステル系化合物よりなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のスペーサである。
【0010】
<7> 更に、(D)微粒子を含むことを特徴とする前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のスペーサである。
<8> 前記(D)微粒子の平均粒子径が5nm以上50nm以下であり、前記(D)微粒子の全固形分に対する質量比率が5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする前記<7>に記載のスペーサである。
<9> 前記弾性係数が、1.0GPa以上3.0GPa以下であることを特徴とする前記<1>〜前記<8>のいずれか1つに記載のスペーサである。
<10> 前記底面積が20μmを超え180μm以下であり、前記高さが1.5μm以上5.0μm以下であることを特徴とする前記<1>〜前記<9>のいずれか1つに記載のスペーサである。
【0011】
<11> 前記<1>〜前記<10>のいずれか1つに記載のスペーサの製造方法であって、少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を塗布することにより支持体上に感光性樹脂層を形成し、前記感光性樹脂層をパターニングしてスペーサパターンを形成する工程を有するスペーサの製造方法である。
<12> 前記<1>〜前記<10>のいずれか1つに記載のスペーサの製造方法であって、仮支持体上に少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用いて、加熱及び/又は加圧により支持体上に前記感光性樹脂層を転写し、前記感光性樹脂層をパターニングしてスペーサパターンを形成する工程を有するスペーサの製造方法である。
<13> 前記<1>〜前記<10>のいずれか1つに記載のスペーサを備えた液晶表示装置用基板である。
<14> 前記<13>に記載の液晶表示装置用基板を備えた液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弾性回復率及び加重変形量の大きいスペーサ及びその製造方法、並びに良質な画像表示が可能な液晶表示装置用基板及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のスペーサ及びその製造方法、並びにこれを用いた液晶表示装置用基板及び液晶表示装置について詳細に説明する。
【0014】
<スペーサ及びその製造方法>
本発明のスペーサは、少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を用いて形成されたものであり、25℃における15%圧縮時の弾性係数を0.5GPa以上3.0GPa以下の範囲とし、底面積を20μm超え350μm以下の範囲とし、高さを1.0μm以上10.0μm以下の範囲として構成されたものである。
【0015】
本発明においては、所定の底面積及び高さを有する構造において一定の弾性係数を持つように構成されるので、弾性回復率及び加重変形量の大きいスペーサが得られ、液晶表示装置において2枚の基板の間隙を一定に維持するためのスペーサとして用いたときに、スペーサの弾性回復、変形量が小さいことに起因して例えば液晶材料の重量や温度変化による体積膨張・収縮、液晶注入量のバラツキ等により起きる表示ムラを効果的に抑えることができ、良質な画像表示が可能になる。これは、スペーサの弾性率が低すぎるときに基板間が押し広げられるために生じる重力不良による表示ムラの発生防止に特に有効であり、また、基板が大サイズのときには、基板間の液晶材料が例えば水平面と交差する方向に配置する等の際に液晶自体の重さが大きくなることに起因して基板底部付近等に偏在(重力不良)して表示ムラを起こしやすいことから、大サイズの基板(好ましくは400mm×300mm以上のサイズの基板)を用いた場合にも特に有効である。
【0016】
本発明のスペーサにおいては、25℃における15%圧縮時の弾性係数を0.5〜3.0GPaの範囲とする。ここでの弾性係数が0.5GPa未満であると、スペーサが柔らかすぎて、温度上昇で液晶材料が体積膨張したり液晶注入量が所定量を超える等して基板間隙が広がった場合にスペーサが部分的に伸びる等して液晶材料が例えば水平面と交差する方向に配置する等の際に偏在(重力不良)して表示ムラを生じてしまう。また、弾性係数が3.0GPaを超えると、スペーサが硬すぎて、温度低下で液晶材料が体積収縮することにより発泡(低温発泡)して表示ムラを生じてしまう。
【0017】
本発明において、25℃における15%圧縮時の弾性係数は、弾性回復率及び加重変形量(柔らかさ)を液晶材料の温度膨張・収縮や注入量バラツキ等で影響されない範囲に制御する点から、1.0〜3.0GPaの範囲が好ましく、より好ましくは1.3〜2.4GPaの範囲内である。
【0018】
「25℃における15%圧縮時の弾性係数」は、温度25℃に調整した室内において、スペーサを10mN/sの荷重印加速度で初期高さH[mm]の85%に相当する高さH[mm]になるまで圧縮し、高さHのときの荷重F[N]を読み取り、15%圧縮時(ひずみ量=(H−H)/H)において下記式から算出される値である。
弾性係数=(荷重F/スペーサの底面積S[mm])/ひずみ量
すなわち、上記式は、高さH、底面積Sのスペーサに荷重Fを加えたときのひずみ量が(H−H)/Hのときの弾性係数を表す。
【0019】
15%圧縮(25℃)時の弾性係数を前記範囲内に調整するには、例えば、(1)モノマーとバインダーとの比率を変える方法、(2)シリカなどの粒子の添加量を変える方法、(3)開始剤の種類を変える方法などを適用することができる。
【0020】
また、本発明のスペーサでは、その底面積(S)を20μm<S≦350μmの範囲とし、高さ(H)を1.0≦H≦10.0μmの範囲とする。
底面積Sは、20μm以下であると基板間隙が広がった場合にスペーサが基板から離れやすく、液晶材料が例えば水平面と交差する方向に配置する等の際に偏在(重力不良)して表示ムラを生じ、350μmを超えると追随できなくなり、低温発泡を生じてやはり表示ムラを生じる。また、高さHは、1.0μm未満であると基板間隙が広がった場合に追随し得ず、スペーサが基板から離れて液晶材料が例えば水平面と交差する方向に配置する等の際に偏在(重力不良)して表示ムラを生じ、10.0μmを超えると弾性が低下して、やはり液晶材料が例えば水平面と交差する方向に配置する等の際に偏在(重力不良)を生じたり、柱の形状が横方向へ変形(横倒れ)が生じたりして表示ムラを生じてしまう。
【0021】
スペーサの底面積Sとしては、20<S≦300μmの範囲が好ましく、20<S≦180μmの範囲がより好ましく、更に好ましくは50〜180μmの範囲である。また、スペーサの高さとしては、1.5〜5.0μmの範囲が好ましく、より好ましくは1.8〜4.7μmの範囲である。
【0022】
上記の中でも、スペーサの弾性回復率及び加重変形量を高める観点から、25℃における15%圧縮時の弾性係数が1.3〜2.4GPaの範囲であって、スペーサの底面積Sが50〜180μmの範囲であって、スペーサの高さが1.8〜4.7μmの範囲である場合が特に好ましい。
【0023】
なお、底面積は、スペーサの長手方向における両端のいずれか一方の端面の面積(例えば円柱状のスペーサの場合、柱長方向と直交する円形断面の面積)であり、高さは、スペーサの長手方向の長さ(2枚の基板の一方と向き合うスペーサの一端と、他方と向き合う該スペーサの他端との間の距離)を複数計測し、その計測値を平均した平均値である。
スペーサの底面積及び高さは、25℃下で24時間放置した後の値であり、例えば、底面積はSEM観察により、高さは三次元表面構造解析顕微鏡(メーカー:ZYGO Corporation、型式:New View 5022)を用いることにより計測することができる。
【0024】
本発明のスペーサは、少なくとも2枚の基板と、該基板間に設けられた液晶材料と、該液晶材料に電界を印加する2枚の電極と、前記基板間のセル厚を規制するためのスペーサとを備えた液晶表示装置における前記スペーサを構成し、少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を用いて形成される。
【0025】
本発明のスペーサは、前記2枚の基板の一方の上に、前記(A)〜(C)を少なくとも含有する感光性組成物を付与して感光性樹脂層を形成する工程(以下、「層形成工程」と称する。)を設けることにより作製することができる。感光性組成物の付与には、感光性組成物を塗布する塗布法、感光性組成物を用いて形成された感光性樹脂層が予め設けられた感光性転写材料の前記感光性樹脂層を転写する転写法のいずれをも適用することができる。
【0026】
−層形成工程−
本発明における層形成工程では、支持体上に、(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を少なくとも含む感光性組成物を用いて感光性樹脂層を形成する。
この感光性樹脂層は、後述のパターニング工程等の他工程を経ることにより、セル厚を均一に保持し得る既述の本発明のスペーサを構成するものである。本発明のスペーサを用いることにより、特にセル厚の変動で表示ムラが生じやすい液晶表示装置における画像中の表示ムラが効果的に解消される。
【0027】
支持体上に感光性樹脂層を形成する方法としては、(a)少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を塗布する塗布法、及び(b)前記感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用い、加熱及び/又は加圧により感光性樹脂層をラミネート、転写する転写法が好適に挙げられる。
【0028】
(a)塗布法
感光性組成物の塗布は、公知の塗布法、例えば、スピンコート法、カーテンコート法、スリットコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により行なうことができる。中でも、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリットノズルあるいはスリットコーターによる方法が好適である。
【0029】
(b)転写法
転写は、感光性転写材料を用いて、仮支持体上に膜状に形成された感光性樹脂層を所望の支持体面に例えば加熱及び/又は加圧したローラー又は平板を用いて圧着又は加熱圧着することによって貼り合せた後、仮支持体の剥離により感光性樹脂層を支持体上に転写する。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーター及びラミネート方法が挙げられ、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0030】
感光性樹脂層を形成する場合、感光性樹脂層と仮支持体との間には更に酸素遮断層(以下、「酸素遮断膜」又は「中間層」ともいう。)を設けることができる。これにより、露光感度をアップすることができる。また、転写性を向上させるために、クッション性を有する熱可塑性樹脂層を設けてもよい。
感光性転写材料を構成する仮支持体、酸素遮断層、熱可塑性樹脂層、その他の層や該感光性転写材料の作製方法については、特開2006−23696号公報の段落番号[0024]〜[0030]に記載の構成、作製方法を適用することができる。
【0031】
(a)塗布法、(b)転写法ともに感光性樹脂層を形成する場合、その層厚は0.5〜10.0μmが好ましく、1〜6μmがより好ましい。層厚が前記範囲であると、製造時における塗布形成の際のピンホールの発生が防止され、未露光部の現像除去を長時間を要することなく行なうことができる。
【0032】
感光性樹脂層を形成する支持体としては、例えば、透明基板(例えばガラス基板やプラスチックス基板)、透明導電膜(例えばITO膜)付基板、カラーフィルタ付きの基板(カラーフィルタ基板ともいう。)、駆動素子(例えば、薄膜トランジスタ[TFT])付駆動基板、などが挙げられる。支持体の厚みとしては、700〜1200μmが一般に好ましい。
【0033】
〜感光性組成物〜
次に、感光性組成物について説明する。
感光性組成物は、少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含有してなり、(A)樹脂として、側鎖に分岐及び/又は脂環構造と酸性基とエチレン性不飽和結合とを有する樹脂を用いて好適に構成することができる。また、必要に応じて、着色剤や界面活性剤などのその他の成分を用いて構成できる。
【0034】
−(A)樹脂−
樹脂としては、公知の樹脂成分から任意に選択して用いることができ、弾性回復性に優れる観点から、分子中に反応性基と酸性基とを有する樹脂が好ましい。中でも、スペーサの弾性回復性(即ち変形回復率)を高める観点から、側鎖に、分岐及び/又は脂環構造:X(xモル%)と、酸性基:Y(yモル%)と、エチレン性不飽和結合:Z(zモル%)とを有する樹脂が好ましく、必要に応じてその他の基(L)(lモル%)を有していてもよい。また、(A)樹脂中の1つの基の中に、X,Y,及びZが複数組み合わされていてもよい。
【0035】
ここで、分岐及び/又は脂環構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合は、それぞれが異なる側鎖中に含まれていてもよいし、一部が組み合わされて同じ側鎖中に含まれていてもよいし、全てが同じ側鎖中に含まれていてもよい。
【0036】
−分岐及び/又は脂環構造:X−
前記「分岐及び/又は脂環構造」について説明する。
まず、分岐構造としては、炭素原子数3〜12個の分岐状のアルキル基が挙げられ、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、i−アミル基、t−アミル基、3−オクチル、t−オクチル等並びにこれらを有する基が挙げられる。これらの中でも、i−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等並びにこれらを有する基が好ましく、さらにi−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基等並びにこれらを有する基が好ましい。
【0037】
前記脂環構造としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基が挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基等並びにこれらを有する基が挙げられる。これらの中でも、ジシクロペンテニル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、トリシクロペンテニル基、トリシクロペンタニル基等並びにこれらを有する基が好ましく、更にジシクロペンテニル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロペンテニル基等並びにこれらを有する基が好ましい。
【0038】
更には、分岐及び/又は脂環構造を有する基として、下記一般式(a)で表される基を有して構成された形態が好ましい。
【0039】
【化1】

【0040】
一般式(a)において、xは1又は2を表し、m及びnは各々独立に0〜15の整数を表す。
【0041】
樹脂の側鎖に分岐及び/又は脂環構造を導入するための単量体としては、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0042】
樹脂の側鎖に分岐構造を導入するための単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸sec−iso−アミル、(メタ)アクリル酸2−オクチル、(メタ)アクリル酸3−オクチル、(メタ)アクリル酸t−オクチル等が挙げられ、その中でも、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等が好ましく、さらに好ましくは、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸t−ブチル等である。
【0043】
樹脂の側鎖に脂環構造を導入するための単量体の具体例としては、炭素原子数5〜20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル−2)、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−メチル−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5,8−トリエチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3,5−ジメチル−8−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−5−イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ−4,7−メンタノインデン−1−イルメチル、(メタ)アクリル酸−1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシ−2,6,6−トリメチル−ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸−3,7,7−トリメチル−4−ヒドロキシ−ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、などが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルの中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸フエンチル、(メタ)アクリル酸1−メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシルなどが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸−2−アダマンチルが特に好ましい。
【0044】
更に、樹脂の側鎖に脂環構造を導入するための単量体の具体例としては、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。ここで、一般式(1)、(2)において、xは1又は2を表し、Rは水素又はメチル基を表す。m及びnはそれぞれ独立に0〜15を表す。一般式(1)、(2)の中でも、現像性に優れ、変形回復率に優れる点で、x=1又は2、m=0〜8、n=0〜4が好ましく、x=1又は2、m=1〜4、n=0〜2がより好ましい。一般式(1)又は(2)で表される化合物の好ましい具体例として、下記化合物D−1〜D−5、T−1〜T−8が挙げられる。
【0045】
【化2】

【0046】
【化3】

【0047】
【化4】

【0048】
樹脂の側鎖に脂環構造を導入するための単量体は適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、日立化成工業(株)製:FA−511A、FA−512A(S)、FA−512M、FA−513A、FA−513M、TCPD−A、TCPD−M、
H−TCPD−A、H−TCPD−M、TOE−A、TOE−M、H−TOE−A、H−TOE−M等が挙げられる。これらの中でも、現像性に優れ、変形回復率に優れる点で、FA−512A(S),512Mが好ましい。
【0049】
−酸性基:Y−
酸性基としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。これらの中でも、現像性、及び硬化膜の耐水性が優れる点から、カルボキシ基、フェノール性水酸基であることが好ましい。
【0050】
酸性基を樹脂に導入するための単量体としては、特に制限はなく、スチレン類、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、(メタ)アクリレート類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリレート類である。
【0051】
酸性基を樹脂に導入するための単量体の具体例としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0052】
前記水酸基を有する単量体と環状酸無水物との付加反応物に用いられる水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記環状酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0053】
前記「酸性基を有する単量体」の市販品としては、東亜合成化学工業(株)製:アロニックスM−5300、アロニックスM−5400、アロニックスM−5500、アロニックスM−5600、新中村化学工業(株)製:NKエステルCB−1、NKエステルCBX−1、共栄社油脂化学工業(株)製:HOA−MP、HOA−MS、大阪有機化学工業(株)製:ビスコート#2100等が挙げられる。これらの中でも現像性に優れ、低コストである点で(メタ)アクリル酸等が好ましい。
【0054】
−エチレン性不飽和結合:Z−
エチレン性不飽和結合としては、特に制限はないが、(メタ)アクリロイル基を導入して配されることが好ましい。また、エチレン性不飽和結合と単量体との連結はエステル基、アミド基、カルバモイル基などの2価の連結基であれば特に制限はない。
側鎖にエチレン性不飽和結合を導入する方法は、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸性基を持つ基にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法、ヒドロキシル基を持つ基にイソシアネート基を持つ(メタ)アクリレートを付加した付加する方法、イソシアネート基を持つ基にヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法などが挙げられる。
その中でも、酸性基を持つ繰り返し単位にエポキシ基を持つ(メタ)アクリレートを付加する方法が最も製造が容易であり、低コストである点で好ましい。
【0055】
前記エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、これらを有すれば特に制限はないが、例えば、下記構造式(1)で表される化合物及び下記構造式(2)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化5】

【0057】
ただし、前記構造式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。
【0058】
【化6】

【0059】
ただし、前記構造式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Lは有機基を表す。Wは4〜7員環の脂肪族炭化水素基を表す。
【0060】
前記構造式(1)で表される化合物及び構造式(2)で表される化合物の中でも、構造式(1)で表される化合物が構造式(2)よりも好ましい。前記構造式(1)及び(2)においては、L及びLがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基のものがより好ましい。
【0061】
前記構造式(1)で表される化合物又は構造式(2)で表される化合物としては、特に制限はないが、例えば、以下の例示化合物(1)〜(10)が挙げられる。
【0062】
【化7】



【0063】
−その他の単量体−
前記その他の単量体としては、特に制限はなく、例えば分岐及び/又は脂環構造をもたない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルエーテル、二塩基酸無水物基、ビニルエステル基、炭化水素アルケニル基等を有する単量体などが挙げられる。
前記ビニルエーテル基としては、特に制限はなく、例えば、ブチルビニルエーテル基などが挙げられる。
【0064】
前記二塩基酸無水物基としては、特に制限はなく、例えば、無水マレイン酸基、無水イタコン酸基などが挙げられる。
前記ビニルエステル基としては、特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル基などが挙げられる。
前記炭化水素アルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ブタジエン基、イソプレン基などが挙げられる。
【0065】
前記(A)樹脂におけるその他の単量体の含有率としては、モル組成比が、0〜30mol%であることが好ましく、0〜20mol%であることがより好ましい。
【0066】
(A)樹脂の具体例としては、下記化合物(化合物P−1〜P−45)が挙げられる。
【0067】
【化8】



【0068】
【化9】



【0069】
【化10】



【0070】
【化11】



【0071】
【化12】



【0072】
【化13】



【0073】
【化14】



【0074】
【化15】



【0075】
【化16】



【0076】
<合成法>
(A)樹脂は、モノマーの(共)重合反応の工程とエチレン性不飽和基を導入する工程の二段階の工程から合成することができる。
まず、(共)重合反応は種々のモノマーの(共)重合反応によって作られ、特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、重合の活性種については、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合などを適宜選択することができる。これらの中でも合成が容易であり、低コストである点からラジカル重合であることが好ましい。また、重合方法についても特に制限はなく公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、バルク重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などを適宜選択することができる。これらの中でも、溶液重合法であることがより望ましい。
【0077】
<炭素数>
(A)樹脂の総炭素数としては、弾性係数(硬さ)の点で、10以上が好ましい。中でも、総炭素数は、10〜30がより好ましく、特に好ましくは10〜15である。
【0078】
<分子量>
(A)樹脂の重量平均分子量としては、10,000〜10万が好ましく、12,000〜60,000が更に好ましく、15,000〜45,000が特に好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、樹脂(好ましくは共重合体)の製造適性、現像性の点で望ましい。また、溶融粘度の低下により形成された形状が潰れ難い点で、また、架橋不良となり難い点、現像でのスペーサ形状の残渣がない点で好ましい。
【0079】
<ガラス転移温度>
(A)樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40〜180℃であることが好ましく、45〜140℃であることはより好ましく、50〜130℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる。
【0080】
<酸価>
(A)樹脂の酸価は、とりうる分子構造により好ましい範囲が変動するが、一般には20mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることはより好ましく、70〜130mgKOH/gであることが特に好ましい。酸価が前記好ましい範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる。
【0081】
前記(A)樹脂は、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる点で、ガラス転移温度(Tg)が40〜180℃であり、かつ重量平均分子量が10,000〜100,000であることが好ましく、Tgが45〜140℃(更には50〜130℃)であり、かつ重量平均分子量が12,000〜60,000(更には15,000〜45,000)であることが好ましい。
更に、前記(A)樹脂の好ましい例は、好ましい前記分子量、ガラス転移温度(Tg)、及び酸価のそれぞれの組合せがより好ましい。
【0082】
本発明における(A)樹脂は、側鎖に分岐及び/又は脂環構造を有する繰り返し単位:X(xモル%)と、側鎖に酸性基を有する繰り返し単位:Y(yモル%)と、側鎖にエチレン性不飽和結合を有する繰り返し単位:Z(zモル%)と、をそれぞれ別の共重合単位に有する少なくとも3元共重合以上の共重合体であることが、変形回復率、現像残渣、レチキュレーションの観点から好ましい。具体的には、前記X,Y,Zを構成する各々の単量体を少なくとも1つ共重合させてなる共重合体が好ましい。
このような共重合体は、例えば、分岐及び/又は脂環構造を有する単量体と、酸性基を有する単量体と、エチレン性不飽和結合を有する単量体と、必要に応じて他の単量体と、を共重合させて得ることができる。
【0083】
前記(A)樹脂の前記各成分の共重合組成比については、ガラス転移温度と酸価を勘案して決定される。一概に言えないが、下記の範囲とすることができる。
(A)樹脂における、分岐及び/又は脂環構造を有する繰り返し単位の組成比(x)は、10〜70モル%が好ましく、15〜65モル%が更に好ましく、20〜60モル%が特に好ましい。組成比(x)が前記範囲内であると、良好な現像性が得られると共に、画像部の現像液耐性も良好である。
(A)樹脂における、酸性基を有する繰り返し単位の組成比(y)は、5〜70モル%が好ましく、10〜60モル%が更に好ましく、20〜50モル%が特に好ましい。組成比(y)が前記範囲内であると、良好な硬化性、現像性が得られる。
(A)樹脂における、エチレン性不飽和結合を有する繰り返し単位の組成比(z)は、10〜70モル%が好ましく、20〜70モル%が更に好ましく、30〜70モル%が特に好ましい。組成比(z)が前記範囲内であると、顔料分散性に優れると共に、現像性及び硬化性も良好である。
更には、(A)樹脂としては、組成比(x)が10〜70モル%(更には15〜65モル%、特には20〜50モル%)であって、組成比(y)が5〜70モル%(更には10〜60モル%、特には30〜60モル%)であって、組成比(z)が10〜70モル%(更には20〜70モル%、特には30〜70モル%)である場合が好ましい。
【0084】
前記(A)樹脂の含有量としては、前記感光性組成物全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。樹脂としては、後述のその他の樹脂を含有することができるが、(A)樹脂のみが好ましい。
【0085】
−その他の樹脂−
前記(A)樹脂と併用することができる樹脂としては、アルカリ性水溶液に対して膨潤性を示す化合物が好ましく、アルカリ性水溶液に対して可溶性である化合物がより好ましい。
アルカリ性水溶液に対して膨潤性又は溶解性を示す樹脂としては、例えば、酸性基を有するものが好適に挙げられ、具体的には、エポキシ化合物にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物(エポキシアクリレート化合物)、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体、エポキシアクリレート化合物と、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体との混合物、マレアミド酸系共重合体、などが好ましい。
前記酸性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、などが挙げられ、これらの中でも、原料の入手性などの観点から、カルボキシル基が好ましく挙げられる。
【0086】
前記(A)樹脂とその他の樹脂とを併用する場合、(A)樹脂と併用することができる樹脂との合計の含有量(固形分)としては、感光性樹脂層の全固形分に対して、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。この含有量が、5質量%以上であると感光樹脂層の膜強度を維持でき、該感光樹脂層の表面のタック性を良好に保つことができ、70質量%以下であると露光感度が良好になる。
【0087】
−(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、その他の成分−
本発明における感光性組成物は、前記(A)樹脂と共に、(B)重合性化合物及び(C)光重合開始剤を少なくとも含有してなり、好ましくは(D)微粒子を含んでなり、更に必要に応じて、光重合開始助剤などの他の成分を含んでいてもよい。(B)重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)微粒子、及び他の成分としては、公知の組成物を構成する成分から選択して用いることができ、例えば、特開2006−23696号公報の段落番号[0010]〜[0020]に記載の成分や、特開2006−64921号公報の段落番号[0027]〜[0053]に記載の成分を挙げることができる。
【0088】
(C)光重合開始剤としては、感度の点で、アミノアセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、及びオキシムエステル系化合物が好適である。
前記アミノアセトフェノン系化合物の具体例としては、IRGACURE(Irg)369やIRGACURE(Irg)379、及びIRGACURE(Irg)907等(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、DAROCUR TPOや、Irgacure(Irg)819等(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記オキシムエステル系化合物の具体例としては、IRGACURE(Irg) OXE01やCGI242等(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
以下に、これらの開始剤の構造を示す。
【0089】
【化17】



【0090】
【化18】



【0091】
【化19】

【0092】
前記(A)樹脂との関係において、(B)重合性化合物の(A)樹脂に対する質量比率〔(B)/(A)比〕が0.5〜2.0であることが好ましく、0.6〜1.4であることはより好ましく、0.7〜1.2であることが特に好ましい。(B)/(A)比が前記範囲内であると、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる。
【0093】
また、前記(C)光重合開始剤の感光性樹脂層中における含有量としては、感光性樹脂層の全固形分に対して、0.5〜25質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。該含有量が前記範囲内であると、光感度やスペーサ強度の低下を防止でき、スペーサとして必要な変形回復性などの性能を向上させることができる。
【0094】
また、光重合開始助剤を感光性組成物に含有する場合、光重合開始助剤は、光重合開始剤によって重合が開始された光重合性化合物の重合を促進するために、前記(B)光重合開始剤と組み合わせて用いることができる。光重合開始助剤としては、アミン系化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0095】
前記アミン系化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称ミヒラーズケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられ、中でも4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。また、アミン系やその他の光重合開始助剤を複数組み合わせて使用してもよい。
【0096】
その他の光重合開始助剤としては、例えば、アルコキシアントラセン系化合物、チオキサントン系化合物、クマリン系化合物などが挙げられる。
前記アルコキシアントラセン系化合物としては、例えば、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0097】
また、光重合開始助剤として市販のものを用いることもでき、市販の光重合開始助剤としては、例えば、商品名「EAB−F」(保土谷化学工業(株)製)などが挙げられる。
(D)光重合開始助剤の感光性組成物における使用量としては、前記(C)光重合開始剤1質量部に対して、0.6質量部以上20質量部以下が好ましく、更に1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、とりわけ1.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0098】
−(D)微粒子−
感光性組成物は、力学強度の点で、微粒子を含有することが好ましい。
(D)微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、特開2003−302639号公報[0035]〜[0041]に記載の体質顔料が好ましく、中でも、良好な現像性、力学強度を有するスペーサが得られる点から、コロイダルシリカが好ましい。
【0099】
前記(D)微粒子の平均粒子径は、高い力学強度を有するスペーサが得られる点で、5〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることがより好ましく、15〜30nmであることが特に好ましい。
【0100】
前記(D)微粒子の感光性樹脂層(即ちスペーサ)中における含有量としては、高い力学強度を有するスペーサを得る観点から、感光性樹脂層(スペーサ)中の全固形分(質量)に対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることが特に好ましい。
【0101】
−パターニング工程−
本発明においては、上記の層形成工程の後、支持体上に形成された感光性樹脂層を露光及び現像してパターニングする工程(以下、「パターニング工程」ということがある。)を設けることができ、所望の形状のスペーサを作製することができる。
【0102】
パターニング工程の具体例としては、特開2006−64921号公報の段落番号[0071]〜[0077]に記載の形成例や、特開2006−23696号公報の段落番号[0040]〜[0051]に記載の工程などが、本発明において好適な例として挙げることができる。
【0103】
本発明のスペーサは、ブラックマトリクス等の黒色遮蔽部及び着色画素等の着色部を含むカラーフィルタを形成した後に形成することができる。
前記黒色遮蔽部及び着色部とスペーサとは、感光性組成物を塗布する塗布法と感光性組成物からなる感光性樹脂層を有する転写材料を用いる転写法と、を任意に組合せて形成することが可能である。
前記黒色遮蔽部及び着色部並びに前記スペーサはそれぞれ感光性組成物から形成でき、具体的には、例えば、基板に液体の前記感光性組成物を直接塗布することにより感光性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行ない、前記黒色遮蔽部及び着色部をパターン状に形成し、その後、別の液体の前記感光性組成物を前記基板とは異なる別の基板(仮支持体)上に設置して感光性樹脂層を形成することにより作製された転写材料を用い、この転写材料を前記黒色遮蔽部及び着色部が形成された前記基板に密着させて感光性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行うことによりスペーサをパターン状に形成することができる。このようにして、スペーサが設けられたカラーフィルタを作製することができる。
【0104】
<液晶表示装置用基板>
本発明の液晶表示装置用基板は、前記本発明のスペーサを備えたものである。スペーサは、支持体上に形成されたブラックマトリクス等の黒色遮光部の上やTFT等の駆動素子上に形成されることが好ましい。また、ブラックマトリクス等の黒色遮光部やTFT等の駆動素子とスペーサとの間にITO等の透明導電層(透明電極)やポリイミド等の液晶配向膜が存在していてもよい。
【0105】
例えば、スペーサが黒色遮光部や駆動素子の上に設けられる場合、該支持体に予め配設された黒色遮光部(ブラックマトリクスなど)や駆動素子を覆うようにして、例えば、感光性転写材料の感光性樹脂層を支持体面にラミネートし、剥離転写して感光性樹脂層を形成した後、これに露光、現像、加熱処理等を施してスペーサを形成することによって、本発明の液晶表示装置用基板を作製することができる。上記と同様に例えば、基板に液体の前記感光性組成物を直接塗布することにより感光性樹脂層を形成した後に、露光・現像を行ない、前記黒色遮蔽部及び着色部をパターン状に形成し、その後、別の液体の前記感光性組成物を前記基板とは異なる別の基板(仮支持体)上に設置して感光性樹脂層を形成することにより作製された転写材料を用い、この転写材料を前記黒色遮蔽部及び着色部が形成された前記基板に密着させて感光性樹脂層を転写した後に、露光・現像を行うことによりスペーサをパターン状に形成することができる。このようにして、スペーサが設けられた液晶表示装置用基板を作製することができる。
本発明の液晶表示装置用基板には更に、必要に応じて赤色(R)、青色(B)、緑色(G)3色等の着色画素が設けられてもよい。
【0106】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示装置用基板を設けて液晶表示素子を構成することができる。液晶表示素子の1つとして、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む。)を少なくとも備えたものが挙げられる。
【0107】
この場合、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されているカラーフィルタ基板として用いることができる。このカラーフィルタ基板には、弾性回復率及び加重変形量に優れた変形回復性の高いスペーサが設けられているため、該カラーフィルタ基板を備えた液晶表示素子は、カラーフィルタ基板と対向基板との間のセルギャップ(セル厚)の変動に起因して液晶材料が偏在する、低温発泡する等による色ムラ等の表示ムラの発生を効果的に防止することができる。これにより、作製された液晶表示素子は鮮やかな画像を表示できる。
【0108】
また、液晶表示素子の別の態様として、少なくとも一方が光透過性の一対の支持体(本発明の液晶表示装置用基板を含む。)間に液晶層と液晶駆動手段とを少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ一対の基板間が弾性回復率及び加重変形量に優れた変形回復性の高いスペーサにより所定幅に規制して構成されたものである。この場合も、本発明の液晶表示装置用基板は、複数のRGB画素群を有し、該画素群を構成する各画素が互いにブラックマトリックスで離画されたカラーフィルタ基板として用いられる。
【0109】
本発明において使用可能な液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶が挙げられる。
また、前記カラーフィルタ基板の前記画素群は、互いに異なる色を呈する2色の画素からなるものでも、3色の画素、4色以上の画素からなるものであってもよい。例えば3色の場合、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相で構成される。RGB3色の画素群を配置する場合には、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4色以上の画素群を配置する場合にはどのような配置であってもよい。カラーフィルタ基板の作製は、例えば2色以上の画素群を形成した後既述のようにブラックマトリックスを形成してもよいし、逆にブラックマトリックスを形成した後に画素群を形成するようにしてもよい。RGB画素の形成については、特開2004−347831号公報等を参考にすることができる。
【0110】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示装置用基板を設けて構成されたものである。また、本発明の液晶表示装置は、前記液晶表示素子を設けて構成することができる。すなわち、互いに向き合うように対向配置された一対の基板間を既述のように、本発明のスペーサで所定幅に規制し、規制された間隙に液晶材料を封入(封入部位を液晶層と称する。)して構成されており、液晶層の厚さ(セル厚)が所望の均一厚に保持されるようになっている。
【0111】
液晶表示装置における液晶表示モードとしては、STN型、TN型、GH型、ECB型、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、VA型、IPS型、OCB型、ASM型、その他種々のものが好適に挙げられる。中でも、本発明の液晶表示装置においては、最も効果的に本発明の効果を奏する観点から、液晶セルのセル厚の変動により表示ムラを起こし易い表示モードが望ましく、セル厚が2〜4μmであるVA型表示モード、IPS型表示モード、OCB型表示モードに構成されるのが好ましい。
【0112】
本発明の液晶表示装置の基本的な構成態様としては、(a)薄膜トランジスタ(TFT)等の駆動素子と画素電極(導電層)とが配列形成された駆動側基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、(b)駆動基板と、対向電極(導電層)を備えた対向基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成したもの、等が挙げられ、本発明の液晶表示装置は、各種液晶表示機器に好適に適用することができる。
【0113】
液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、側工業調査会、1994年発行)」に記載がある。本発明の液晶表示装置には、本発明の液晶表示素子を備える以外に特に制限はなく、例えば前記「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載された種々の方式の液晶表示装置に構成することができる。中でも特に、カラーTFT方式の液晶表示装置を構成するのに有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)、1996年発行)」に記載がある。
【0114】
本発明の液晶表示装置は、既述の本発明の液晶表示装置用基板や液晶表示素子を備える以外は、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ.視野角補償フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、防眩フィルムなどの様々な部材を用いて一般的に構成できる。これら部材については、例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島健太郎、(株)シーエムシー、1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉、(株)富士キメラ総研、2003等発行)」に記載されている。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0116】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.35/min、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
【0117】
(樹脂の合成)
(A)樹脂の例として既述した化合物P−1の合成例を以下に示す。
−合成例1−
反応容器中に1−メトキシ−2−プロパノール(MMPGAC、ダイセル化学工業(株)製)7.48部をあらかじめ加え、90℃に昇温し、メタクリル酸−2−アダマンチル(ADMA、日立化成工業(株)製)6.35部、メタクリル酸3.62部、アゾ系重合開始剤(和光純薬(株)製、V−601)0.22部、及び1−メトキシ−2−プロパノール7.48部からなる混合溶液を窒素ガス雰囲気下、90℃の反応容器中に2時間かけて滴下した。滴下後、4時間反応させて、アクリル樹脂溶液を得た。
次いで、前記アクリル樹脂溶液に、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.020部、及びテトラエチルアンモニウムブロマイド0.46部を加えた後、グリシジルメタクリレート3.53部を2時間かけて滴下した。滴下後、空気を吹き込みながら90℃で4時間反応させた後、固形分濃度が45%になるように溶媒を添加することにより調製し、不飽和基を持つ既述の化合物P−1〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;70.6mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た(x:y:zが41.0mol%:24.0mol%:35.0mol%)。
なお、化合物P−1の分子量Mwは、重量平均分子量を示し、重量平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて行なった(以下、同様である)。
【0118】
以下、(A)樹脂の他の化合物として、既述の化合物P−2〜P−10を合成する合成例(合成例2〜合成例10)を示す。
【0119】
−合成例2−
既述の化合物P−2の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをメタクリル酸イソボルニルに代え、化合物P−2中のx:y:zが48.0mol%:22.0mol%:30.0mol%になるように、メタクリル酸イソボルニル(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−2〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;63.6mgKOH/g、Mw;30,000、及び10,000、40,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0120】
−合成例3−
既述の化合物P−3の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをメタクリル酸シクロヘキシルに代え、化合物P−3中のx:y:zが45.0mol%:20.0mol%:35.0mol%になるように、メタクリル酸シクロヘキシル(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−3〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;64.9mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0121】
−合成例4−
既述の化合物P−4の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをトリシクロペンテニルメタアクリレート(TCPD−M、日立化成工業(株)製)に代え、化合物P−4中のx:y:zが40.0mol%:25.0mol%:35.0mol%になるように、TCPD−M(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−4〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;65.2mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0122】
−合成例5−
既述の化合物P−5の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをトリシクロペンタニルメタアクリレート(H−TCPD−M、日立化成工業(株)製)に代え、化合物P−5中のx:y:zが42.0mol%:26.0mol%:32.0mol%になるように、H−TCPD−M(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−5〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;67.6mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0123】
−合成例6−
既述の化合物P−6の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをトリシクロペンテニルオキシエチルメタアクリレート(TOE−M、日立化成工業(株)製)に代え、化合物P−6中のx:y:zが40.0mol%:23.0mol%:37.0mol%になるように、TOE−M(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−6〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;54.8mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0124】
−合成例7−
既述の化合物P−7の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをトリシクロペンタニルオキシエチルメタアクリレート(H−TOE−M、日立化成工業(株)製)に代え、化合物P−7中のx:y:zが40.0mol%:25.0mol%:35.0mol%になるように、H−TOE−M(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−7〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;60.1mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0125】
−合成例8−
既述の化合物P−8の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(FA−512A、日立化成工業(株)製)に代え、化合物P−8中のx:y:zが42.0mol%:23.0mol%:35.0mol%になるように、FA−512A(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−8〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;63.3mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0126】
−合成例9−
既述の化合物P−9の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをジシクロペンテニルオキシエチルメタアクリレート(FA−512M、日立化成工業(株)製)に代え、化合物P−9中のx:y:zが41.0mol%:24.0mol%:35.0mol%になるように、FA−512M(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−9〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;64.7mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0127】
−合成例10−
既述の化合物P−10の合成を以下のように行なった。
合成例1において、ADMAをジシクロペンタニルメタアクリレート(FA−513M、日立化成工業(株)製)に代え、化合物P−10中のx:y:zが50.0mol%:24.0mol%:26.0mol%になるように、FA−513M(x)、メタクリル酸(y)、及びグリシジルメタクリレート(z)の添加量を変更した以外は、合成例1と同様の方法により合成し、不飽和基を持つ化合物P−10〔(A)樹脂〕の樹脂溶液(固形分酸価;70.8mgKOH/g、Mw;30,000、1−メトキシ−2−プロパノール45%溶液)を得た。
【0128】
(実施例1):塗布法
<カラーフィルタ基板の作製>
特開2005−3861号公報の段落番号[0084]〜[0095]に記載の方法により、ブラックマトリクス、R(赤色)画素、G(緑色)画素、B(青色)画素を有するカラーフィルタを作製した(以下、これをカラーフィルタ基板と称する。)。ここで、カラーフィルタ基板の基板サイズは、400mm×300mmとした。
次いで、得られたカラーフィルタ基板のR画素、G画素、及びB画素並びにブラックマトリクスの上に更に、ITO(Indium Tin Oxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0129】
<フォトスペーサの形成>
上記で作製したITO透明電極がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO透明電極上に、スリット状ノズルを有するガラス基板用コーターMH−1600(エフ・エー・エス・アジア社製)にて下記表1に示す処方(実施例では処方1)からなる感光性樹脂層用塗布液をスリット塗布した。引き続き、真空乾燥機VCD(東京応化社製)を用いて30秒間溶媒の一部を乾燥させて塗布膜の流動性をなくした後、120℃で3分間プリベークし、膜厚5.0μmの感光性樹脂層を形成した(層形成工程)。
【0130】
続いて、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと感光性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板と、を略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の表面との間の距離を100μmとし、マスクを介して露光量300mJ/cmにてプロキシミティー露光した。
【0131】
次に、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フィルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、パターン像を形成した。引き続いて、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フィルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、形成されたパターン像の周辺の残渣除去を行ない、円柱状のスペーサパターンを300μm×300μmに1本のスペーサ間隔となるように形成した(パターニング工程)。
【0132】
次に、スペーサパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、230℃下で30分間加熱処理を行なう(熱処理工程)ことにより、カラーフィルタ基板上にフォトスペーサを作製した。ここで、得られたフォトスペーサ1000個を、三次元表面構造解析顕微鏡(メーカー:ZYGO Corporation、型式:New View 5022)を用いてITO透明電極形成面側から最も高いスペーサの最も高い位置を測定(n=20)し、平均したときの平均値を高さ(平均高さ)とした。また、得られたフォトスペーサの底面積の計測は、SEM写真を用いて行なった。その結果、直径15.1μm、平均高さ4.7μmの円柱形状であった。測定値は下記表2に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
<液晶表示装置の作製>
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、上記で得られたカラーフィルタ基板の透明電極上及び対向基板上にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更にポリイミドよりなる配向膜を設けた。
【0135】
その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリックス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。
【0136】
次いで、赤色(R)LEDとしてFR1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、緑色(G)LEDとしてDG1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)、青色(B)LEDとしてDB1112H(スタンレー電気(株)製のチップ型LED)を用いてサイドライト方式のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、液晶表示装置とした。
【0137】
<評価>
得られたフォトスペーサについて、下記の測定、評価を行なった。測定評価の結果は下記表2に示す。
【0138】
−変形回復率−
得られたフォトスペーサに対して、微小硬度計(DUH−W201、(株)島津製作所製)により次のようにして測定を行ない、評価した。測定は、50μmφの円錘台圧子を採用し、最大荷重50mN、保持時間5秒として、負荷−除荷試験法により行なった。この測定値から下記式により変形回復率〔%〕を求め、下記評価基準にしたがって評価した。測定は、22±1℃、50%RHの環境下で行なった。
変形回復率(%)
=(荷重開放後の回復量[μm]/荷重時の変形量[μm])×100
〈評価基準〉
5:変形回復率が90%以上であった。
4:変形回復率が87%以上90%未満であった。
3:変形回復率が85%以上87%未満であった。
2:変形回復率が80%以上85%未満であった。
1:変形回復率が75%以上80%未満であった。
0:変形回復率が75%未満であった。
【0139】
−25℃における15%圧縮時の弾性係数−
温度25℃に調整した室内において、スペーサを10mN/sの荷重印加速度で初期高さH[mm]の85%に相当する高さH[mm]になるまで圧縮し、高さHのときの荷重F[N]を読み取り、15%圧縮時(ひずみ量=(H−H)/H)の弾性係数を下記式から算出した。
弾性係数=(荷重F/スペーサの底面積S[mm])/ひずみ量
【0140】
−現像性−
前記「−フォトスペーサの作製−」において、プロキシミティー露光後、各実施例の現像条件と同様の方法で現像し、形成したフォトスペーサ周辺部のSEM観察を行ない、スペーサ周辺の残渣の有無を確認した。
〈評価基準〉
5:残渣がまったく見られなかった。
4:パターン周辺に若干の残渣が見られた。
3:パターン周辺に残渣が見られた。
2:パターン周辺とパターン近傍の基板上に残渣が見られた。
1:基板上の所々に残渣が確認された。
【0141】
−感度−
各実施例で用いた感光性樹脂層用塗布液に対して、露光量を種々変化させたときにスペーサパターンを形成できるかできないかを観察し、下記評価基準にしたがって評価した。
〈評価基準〉
○:60mJ以下でパターン形成が可能であった。
△:60〜200mJでパターン形成が可能であった。
×:パターン形成に200mJ以上の露光量が必要であった。
【0142】
−表示ムラ−
(1)重力不良による表示ムラ
液晶表示装置を水平面の法線方向と平行に立てた状態で、60℃の条件下で2日間放置した。放置後、この液晶表示装置をクロスニコルの間に設置し、目視により表示画像を観察して、重力不良の発生について以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
○:表示画像は均一であった。
△:表示画像の一部に色ムラがあった。
×:表示画像の全体に色ムラがあった。
(2)低温発泡による表示ムラ
液晶表示装置を0℃の条件下に24時間放置した後、この液晶表示装置をクロスニコルの間に設置し、目視により観察して、低温発泡の発生の有無を以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
○:発泡はみられなかった。
△:発泡による色ムラが一部に認められた。
×:発泡による色ムラが認められた。
【0143】
(実施例2〜19、実施例21〜23):塗布法
実施例1において、感光性樹脂層用塗布液の調製に用いた化合物P−1〔(A)樹脂〕、微粒子、開始剤、B/A、及び形成方法等を、下記表2〜表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様して、フォトスペーサ及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサは、円柱形状とした。
【0144】
(比較例1〜6):塗布法
実施例1において、感光性樹脂層用塗布液の処方1を前記表1に記載の処方2又は処方3に代えると共に、感光性樹脂層用塗布液の調製に用いた化合物P−1〔(A)樹脂〕、微粒子、及び形成方法等を、下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フォトスペーサ及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサは、円柱形状とした。
【0145】
(実施例20):転写法
実施例1において、感光性樹脂層用塗布液の調製に用いた化合物P−1〔(A)樹脂〕、微粒子、及び形成方法等を下記表3に示すように変更し、感光性樹脂層用塗布液の塗布に代えて以下に示すスペーサ用感光性転写フィルムを用いた転写を行なうことにより、感光性樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様して、フォトスペーサ及び液晶表示装置を作製した。得られたフォトスペーサは、円柱形状であった。
【0146】
−スペーサ用感光性転写フィルムの作製−
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体(PET仮支持体)上に、下記処方Aからなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させ、乾燥層厚15.0μmの熱可塑性樹脂層を形成した。
【0147】
〔熱可塑性樹脂層用塗布液の処方A〕
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 … 25.0部
(=55/11.7/4.5/28.8[モル比]、重量平均分子量90,000)
・スチレン/アクリル酸共重合体 … 58.4部
(=63/37[モル比]、重量平均分子量8,000)
・2,2−ビス〔4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン
… 39.0部
・下記界面活性剤1 … 10.0部
・メタノール … 90.0部
・1−メトキシ−2−プロパノール … 51.0部
・メチルエチルケトン …700部
【0148】
*界面活性剤1
・下記構造物1 …30%
・メチルエチルケトン …70%
【0149】
【化20】

【0150】
次に、形成した熱可塑性樹脂層上に、下記処方Bからなる中間層用塗布液を塗布、乾燥させて、乾燥層厚1.5μmの中間層を積層した。
【0151】
〔中間層用塗布液の処方B〕
・ポリビニルアルコール …3.22部
(PVA−205(鹸化率80%)、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン …1.49部
(PVP K−30、アイエスピー・ジャパン株式会社製)
・メタノール …42.3部
・蒸留水 …524部
【0152】
次に、形成した中間層上に更に、前記表1に示す処方1からなる感光性樹脂層用塗布液〔(A)樹脂は表3中の化合物〕を塗布、乾燥させて、乾燥層厚5.0μmの感光性樹脂層を積層した。
【0153】
以上のようにして、PET仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層の積層構造(3層の合計層厚:21.5μm)に構成した後、感光性樹脂層の表面に更に、カバーフィルムとして厚み12μmのポリプロピレン製のフィルムを加熱・加圧して貼り付け、スペーサ用感光性転写フィルムを得た。
【0154】
−フォトスペーサの作製−
得られたスペーサ用感光性転写フィルムのカバーフィルムを剥離し、露出した感光性樹脂層の表面を、実施例1と同様にして作製したITO透明電極がスパッタ形成されたカラーフィルタ基板のITO透明電極上に重ね合わせ、ラミネーターLamicII型〔(株)日立インダストリイズ製〕を用いて、線圧100N/cm、130℃の加圧・加熱条件下で搬送速度2m/分にて貼り合わせた。その後、PET仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離除去し、感光性樹脂層を熱可塑性樹脂層及び中間層と共に転写した(層形成工程)。
【0155】
続いて、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)を用いて、マスク(画像パターンを有する石英露光マスク)と、該マスクと熱可塑性樹脂層とが向き合うように配置したカラーフィルタ基板とを略平行に垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層の中間層に接する側の表面との間の距離を100μmとし、マスクを介して熱可塑性樹脂層側から露光量90mJ/cmにてプロキシミティー露光した。
【0156】
次に、トリエタノールアミン系現像液(トリエタノールアミン30%含有、商品名:T−PD2(富士フィルム(株)製)を純水で12倍(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合)に希釈した液)を30℃で50秒間、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去した。引き続き、このガラス基板の上面にエアを吹きかけて液切りした後、純水をシャワーにより10秒間吹き付け、純水シャワー洗浄し、エアを吹きかけて基板上の液だまりを減らした。
次いで、炭酸Na系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有;商品名:T−CD1(富士フィルム(株)製)を純水で10倍に希釈した液)を用いて29℃で30秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し、パターン像を形成した。引き続いて、洗浄剤(燐酸塩・珪酸塩・ノニオン界面活性剤・消泡剤・安定剤含有;商品名:T−SD3(富士フィルム(株)製))を純水で10倍に希釈した液を用いて33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaにてシャワーで吹きかけ、形成されたパターン像の周辺の残渣除去を行ない、円柱状のスペーサパターンを300μm×300μmに1本のスペーサ間隔となるように形成した(パターニング工程)。
次に、スペーサパターンが設けられたカラーフィルタ基板を、230℃下で30分間加熱処理を行なう(熱処理工程)ことにより、カラーフィルタ基板上にフォトスペーサを作製した。得られたフォトスペーサは、直径15.1μm、平均高さ4.7μmの円柱形状であった。
そして、フォトスペーサが作製されたカラーフィルタ基板を用い、実施例1と同様にして、PVAモード液晶表示装置を作製した。
【0157】
【表2】

【0158】
【表3】

【0159】
前記表2〜表3に示すように、実施例では、比較例に比し、変形回復性能に優れており、重力不良及び低温発泡が抑制され、色ムラ等の表示ムラの発生を飛躍的に向上させることができた。また、感度も良好であった。
これに対し、所定の弾性係数、底面積及び高さを満足しない場合(比較例)には、重力不良や低温発泡の発生を防止できず、表示ムラの発生を回避することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を用いて形成されており、25℃における15%圧縮時の弾性係数が0.5GPa以上3.0GPa以下であり、底面積が20μmを超え350μm以下であり、高さが1.0μm以上10.0μm以下であるスペーサ。
【請求項2】
前記(A)樹脂が、側鎖に、分岐及び/又は脂環構造、酸性基、並びにエチレン性不飽和結合を含む樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記(A)樹脂の炭素数が10以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記分岐及び/又は脂環構造が、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、及びトリシクロペンタニル基から選択される少なくとも1種を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記分岐及び/又は脂環構造が、トリシクロペンテニル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、及びイソボルニル基から選択される少なくとも1種を有することを特徴とする請求項4に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記(C)光重合開始剤が、アミノアセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、及びオキシムエステル系化合物よりなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項7】
更に、(D)微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項8】
前記(D)微粒子の平均粒子径が5nm以上50nm以下であり、前記(D)微粒子の全固形分に対する質量比率が5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項7に記載のスペーサ。
【請求項9】
前記弾性係数が、1.0GPa以上3.0GPa以下であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項10】
前記底面積が20μmを超え180μm以下であり、前記高さが1.5μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のスペーサ。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のスペーサの製造方法であって、
少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性組成物を塗布することにより支持体上に感光性樹脂層を形成し、前記感光性樹脂層をパターニングしてスペーサパターンを形成する工程を有するスペーサの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のスペーサの製造方法であって、
仮支持体上に少なくとも(A)樹脂、(B)重合性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用いて、加熱及び/又は加圧により支持体上に前記感光性樹脂層を転写し、前記感光性樹脂層をパターニングしてスペーサパターンを形成する工程を有するスペーサの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のスペーサを備えた液晶表示装置用基板。
【請求項14】
請求項13に記載の液晶表示装置用基板を備えた液晶表示装置。

【公開番号】特開2009−75553(P2009−75553A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154417(P2008−154417)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】