スペーサ
【課題】間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、容易に固定することができるスペーサを提供すること。
【解決手段】スペーサ1は、骨と骨との間隙部に設置して固定されるものであり、間隙部に設置されるブロック体2と、ブロック体2に挿通され、両端がブロック体2から突出するワイヤー3とを有し、このワイヤー3は、前記両端に、ボルトを挿入して前記間隙部にブロック体2を固定するためのリング(固定部)32を備える。
【解決手段】スペーサ1は、骨と骨との間隙部に設置して固定されるものであり、間隙部に設置されるブロック体2と、ブロック体2に挿通され、両端がブロック体2から突出するワイヤー3とを有し、このワイヤー3は、前記両端に、ボルトを挿入して前記間隙部にブロック体2を固定するためのリング(固定部)32を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ、特に、棘突起、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起、椎弓スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、頚椎脊椎症性脊髄症や、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、椎間板ヘルニア等に対する治療として、正中縦割式頚椎拡大椎弓形成術、片側侵入片開き式脊柱管拡大術が行われている。
【0003】
正中縦割式拡大椎弓形成術の場合では、棘突起の正中部(中央部)を切断し、正中部を境にして、両側の椎弓を、ヒンジのようにして開くことにより、脊柱管を拡大する。この際、棘突起を切断して形成された間隙部(骨欠損部)には、スペーサが挿入される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このスペーサは、椎弓または棘突起の切断端部と、スペーサが有する一対の当接面とが接触するように前記間隙部に挿入され、前記切断端部に設けられた貫通孔と、前記一対の当接面を貫通して設けられた貫通孔とに糸を挿通して縛る結紮固定により、間隙部内に固定される。
【0005】
しかしながら、この結紮固定は操作が煩雑であり、視野が狭く、貫通孔に血液等が入り込むため、糸を通すのが困難になるおそれがある。
【0006】
さらに、金属製のプレートを用いて、スペーサと切断端部とをスクリューで固定することで、スペーサを間隙部内に固定する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかしながら、このプレートを用いた方法では、スクリューで固定するために、スペーサに穴を形成する必要があり、この穴の形成の際にスペーサに亀裂・割れ等が生じるという問題がある。また、プレート状であるため骨への固定位置が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−638号公報
【特許文献2】特許第4482445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、容易に固定することができるスペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体に挿通され、両端が前記ブロック体から突出するワイヤーとを有し、
前記ワイヤーは、前記両端に、ボルトを挿入して前記間隙部に前記ブロック体を固定するための固定部を備えることを特徴とするスペーサ。
【0011】
これにより、間隙部に設置されたスペーサ(ブロック体)に亀裂・割れ等を生じることなく、スペーサを間隙部に容易に固定することができる。
【0012】
(2) 前記固定部は、リングを備える上記(1)に記載のスペーサ。
このリングにボルトを挿通した状態で骨にネジ止めすることで、ブロック体を間隙部内に固定することができる。
【0013】
(3) 前記固定部は、前記リングを複数備える上記(2)に記載のスペーサ。
これにより、複数のリングの全てをボルトでネジ止めする場合、ブロック体をより強固に間隙に固定することができる。また、複数のリングのうち何れかをボルトでネジ止めする場合、ボルトによりネジ止めする骨の位置の選択の幅が広がるという利点が得られる。
【0014】
(4) 前記リングは、Oリングである上記(2)または(3)に記載のスペーサ。
このリングにボルトを挿通した状態で骨にネジ止めすることで、ブロック体を間隙部内に固定することができる。
【0015】
(5) 前記リングは、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングである上記(2)または(3)に記載のスペーサ。
【0016】
このリングにボルトを挿通した状態で骨にネジ止めすることで、ブロック体を間隙部内に固定することができる。さらに、ワイヤーをボルトを用いて骨にネジ止めする際に、まず、骨にボルトを途中までネジ止めした後、C字状をなすリングをボルトに引っ掛け、その後、ボルトの拡径部がリングに当接するまでボルトをネジ止めすることによっても、ワイヤーをボルトで固定することができる。
【0017】
(6) 前記ワイヤーを複数備える上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のスペーサ。
【0018】
これにより、ブロック体の位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体をより強固に間隙に固定することができる。
【0019】
(7) 複数の前記ワイヤーは、各端部に備える前記固定部を共有する上記(6)に記載のスペーサ。
【0020】
これにより、ブロック体の位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体をより強固に間隙に固定することができる。
【0021】
(8) 前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のスペーサ。
【0022】
セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0023】
(9) 前記ワイヤーは、金属材料または高分子材料を主材料として構成される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のスペーサ。
【0024】
金属材料または高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体をより確実に間隙部に固定することができる。
【0025】
(10) 棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のスペーサ。
【0026】
本発明のスペーサは、棘突起スペーサまたは椎弓スペーサとして特に好ましく適用される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、糸を挿通して縛ることなく、予めブロック体に挿通されたワイヤーが備える固定部にボルトを挿入した状態で骨に固定することで、間隙部にスペーサを容易に固定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のスペーサの第1実施形態を示す図である。
【図2】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図3】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図4】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図5】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図6】本発明のスペーサの第2実施形態を示す図である。
【図7】本発明のスペーサの第3実施形態を示す図である。
【図8】本発明のスペーサの第4実施形態を示す図である。
【図9】本発明のスペーサの第5実施形態を示す図である。
【図10】本発明のスペーサの第6実施形態を示す図である。
【図11】本発明のスペーサの第7実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のスペーサを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明のスペーサを正中縦割式拡大椎弓形成術に用いられる椎弓スペーサに適用した場合を一例に説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、本発明のスペーサの第1実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)、図2〜図5は、それぞれ、正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【0031】
<<正中縦割式拡大椎弓形成術>>
まず、本発明のスペーサの第1実施形態を説明するのに先立って、図2〜図5を参照して、正中縦割式拡大椎弓形成術について説明する。なお、図2〜図5中の上側が背側、下側が腹側、である。
【0032】
図2に示すように、椎骨100は、椎体110と、椎体110の後方(図2中の上側)に延び、脊柱管(椎孔)140を形成する椎弓120と、椎弓120の中央部から後方に突出する棘突起130とを有している。
【0033】
[1] まず、図2に示すように、椎骨100における棘突起130を、椎弓120から切断線131において切離(切断)する。
【0034】
[2] 次に、図3に示すように、椎弓120の中央部(正中部)を、例えばエアドリル等を用いて切断する。
【0035】
また、正中面200を境にして椎弓120の根元部の外側に、例えばエアドリル等を用いて溝121a、121bを形成する。
【0036】
この溝121a、121bの深さは、外板のみ削り、内板を削らない程度とする。この溝121a、121bを形成した部位は、ヒンジ部(蝶番)122a、122bとなる。
【0037】
[3] 次に、図4に示すように、ヒンジ部122a、122bを中心に、椎弓120を回動させ、椎弓120の切断した部分を広げる。これにより、切断端部(骨)120a、120b同士の間に間隙部150が形成される。
【0038】
なお、必要に応じて、椎弓120の間隙部150に臨む切断端部120a、120bを整形する。
【0039】
[4] 次に、図5に示すように、間隙部150に、本発明のスペーサ1を挿入した後、スペーサ1が備えるリング32にネジ(ボルト)4を、挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、スペーサ1を間隙部150内に固定する。これにより、患者の椎弓120と、スペーサ1とで、拡大された椎弓160が形成される。
【0040】
なお、スペーサ1を切断端部120a、120bにネジ4でネジ止めし、スペーサ1を間隙部150内に固定する構成とすることにより、術後早期に、スペーサ1が椎弓120に対して位置ズレするのを防止することができ、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合を確実に生じさせることができる。
【0041】
また、前述した結紮固定のように、スペーサに形成した貫通孔に糸を挿通して縛る場合と比較して、スペーサ1が備えるリング32にネジ4を挿通した状態で後面124a、124bにネジ止めするという単純な作業で、スペーサ1を間隙部150内に容易に固定することができる。
【0042】
さらに、後に詳述するように、ブロック体2にワイヤー3が予め挿通されていることから、ブロック体2にスクリュー等で穴を形成する必要がないため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0043】
なお、前記工程[1]において切離された棘突起130を、スペーサ1の後面13の中央(正中)に戻し、スペーサ1に糸等により固定してもよい。
【0044】
また、棘突起130を椎弓120から切離することなく、前記工程[2]において、棘突起130ごと正中面200に沿って切断してもよい。
【0045】
<<スペーサ>>
次に、本発明のスペーサの第1実施形態について、図1および図5を参照して説明する。
【0046】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、スペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(設置)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0047】
図1および図5に示すように、スペーサ1は、間隙部(欠損部)150に設置(挿入)されるブロック体(スペーサ本体)2と、このブロック体2に挿通され、両端がブロック体2から突出するワイヤー3とを有している。
【0048】
ブロック体2は、間隙部150に挿入され、拡大された椎弓160を形成するためのものである。
【0049】
このブロック体2は、本実施形態では、図5に示すように、上面視または下面視で、前面11側に凹部を備えるほぼ台形状をなしており、複数の角部を有している。
【0050】
このブロック体2において、前面11は、湾曲凹面で構成されており、前面11に対向する後面13は、平面で構成されている。前面11を湾曲凹面で構成することにより、脊柱管140をより大きく(広く)拡大することができ、脊髄神経の圧迫を確実に防止することができる。
【0051】
また、ブロック体2の一対の側面12は、それぞれ、間隙部150に挿入した状態で、椎弓120の切断端部120a、120bが当接する当接面を構成する。
【0052】
さらに、このようなブロック体2は、その長手方向に貫通して設けられた貫通孔21、すなわち一対の側面12を貫通する貫通孔21を有している。この貫通孔21にワイヤー3が挿通され、本実施形態では、貫通孔21内に固定されず、遊嵌されており、ワイヤー3の挿通方向に対する移動が規制されない。貫通孔21内にワイヤー3が遊嵌されることで、ブロック体2の左右から突出するワイヤーの突出割合を変更でき、骨への固定位置を調節可能である。固定位置を調節することで、骨の骨密度の高いなど最適部位を選択し、強固な固定ができる。また、術者の視野が良好な部位を選択することもできる。
【0053】
また、本実施形態のように、ブロック体2の後面13を平面で構成することにより、例えば、手術の手技として、切離された棘突起130を元の位置に戻す場合には、後面13に対する棘突起130の位置ずれを好適に防止できるとともに、後面13と棘突起130との接触面積が増大して、この骨癒合を早期に図ることができる。
【0054】
なお、ブロック体2において、各部の寸法は、それぞれ、次のように設定される。
ブロック体2の前後方向の長さ(図1中L)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0055】
また、ブロック体2の上下方向の長さ(図1中H)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0056】
また、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W)は、6〜23mm程度であるのが好ましく、10〜21mm程度であるのがより好ましい。
【0057】
また、前面11の湾曲凹面の平均曲率半径は、20〜120mm程度であるのが好ましく、23〜53mm程度であるのがより好ましい。
【0058】
さらに、貫通孔21の口径の平均径は、Φ0.15〜Φ2.5mm程度であるのが好ましく、Φ0.35〜Φ1.3mm程度であるのがより好ましい。
【0059】
スペーサ1における各部の寸法を上述した範囲内に設定することにより、ブロック体2に優れた機械的強度をより確実に付与することができる。
【0060】
このようなブロック体2は、特に限定されないが、セラミックス材料を主材料として構成されたものが好ましい。セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0061】
セラミックス材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスが好ましい。なかでもリン酸カルシウム系化合物は、優れた生体親和性を備えているため、ブロック体2の構成材料として特に好ましい。
【0062】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく用いられる。
【0063】
このようなリン酸カルシウム系化合物のうち、ハイドロキシアパタイトがより好ましい。ハイドロキシアパタイトは、骨の無機質主成分と同様の構造であるため、優れた生体適合性を有している。また、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの癒合を期待することもできる。
【0064】
また、ブロック体2は、緻密体であっても、多孔質体であってもよいが、多孔質体であるのが好ましい。ブロック体2を多孔質体で構成することにより、ブロック体2内への骨芽細胞の侵入を可能とし、ブロック体2内において骨新生を行うことができ、特にブロック体2を、ハイドロキシアパタイトを主材料として構成する場合、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの確実な癒合を期待することができる。
【0065】
また、多孔質体の気孔率は、0〜90%程度であるのが好ましく、15〜60%程度であるのがより好ましい。これにより、ブロック体2の機械的強度が低下するのを防止しつつ、ブロック体2内への骨芽細胞のより円滑な侵入を可能とし、ブロック体2内における骨新生が促進することとなる。その結果、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合をより確実かつ早期に生じさせることができる。
【0066】
なお、ブロック体2の構成材料としては、上記セラミックス材料の他、該セラミックス材料とチタン等の生体為害性の小さい金属材料との複合材料等を用いることも可能である。
【0067】
ワイヤー3は、ブロック体2の貫通孔21に挿通して用いられ、ブロック体2を間隙部150に固定するためのものである。
【0068】
このワイヤー3は、本体部31と、この本体部31に両端に設けられたリング32とを備えている。
【0069】
本体部31は、可撓性を有する線状体であり、ブロック体2が有する貫通孔21に挿通され、ブロック体2の一対の側面12から双方の端部が突出するようになっている。
【0070】
また、この本体部31は、本実施形態では、貫通孔21内に固定されず遊嵌されており、ワイヤー3の挿通方向に対する移動が許容される。これにより、ブロック体2の側面12から突出する本体部31の長さを適宜変えることができる。そのため、ネジ4により固定する切断端部120a、120bへの固定位置を自由に変えることができることから、最適な位置で固定することができる。
【0071】
本体部31の長さは、ブロック体2からその両端が突出し得るように設定され、本実施形態では、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W)に応じて設定される。具体的には、ブロック体2の左右方向の長さより、好ましくは1〜100mm程度大きく設定され、より好ましくは5〜40mm程度大きく設定される。これにより、ブロック体2から突出した本体部31の端部にリング32を設けることができる。
【0072】
また、本体部31の外径の平均径は、Φ0.1〜Φ2.0mm程度であるのが好ましく、Φ0.3〜Φ1.2mm程度であるのがより好ましい。これにより、間隙部150内に固定したブロック体2に応力が付与されたとしても、本体部31が切断されることなく、ブロック体2を間隙部150内に強固に固定することができ、ワイヤーを変形させてもブロック体2に負荷が掛からない。
【0073】
リング32は、その全体形状が円環状をなすOリングであり、本体部31の両端にそれぞれ設けられている。
【0074】
このリング32にネジ(ボルト)4を挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、ブロック体2が間隙部150内に固定される。すなわち、本実施形態では、リング32が、ネジを挿入して間隙部150にブロック体2を固定するための固定部として機能する。
【0075】
リング32の内径は、好ましくはΦ0.5〜Φ5.0mm程度に設定され、より好ましくはΦ1.0〜Φ3.0mm程度に設定される。
【0076】
また、リング32の外径は、好ましくはΦ1.0〜Φ6.0mm程度に設定され、より好ましくはΦ1.5〜Φ3.5mm程度に設定される。
【0077】
さらに、リング32の厚さは、好ましくは0.1〜3.0mm程度に設定され、より好ましくは0.1〜1.0mm程度に設定される。
【0078】
リング32の各部の寸法を、かかる範囲内に設定することにより、ブロック体2を間隙部150内に確実に固定することができる。
【0079】
このようなワイヤー3は、特に限定されないが、金属材料または高分子材料を主材料として構成されたものが好ましい。金属材料と高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体2をより確実に間隙部150内に固定することができ、ワイヤーを変形させてもブロック体2に負荷が掛からない。
【0080】
金属材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、チタンまたはチタン合金であるのが好ましい。チタンまたはチタン合金は、生体適合性が高く、また、優れた強度を有することからワイヤー3の構成材料として好ましく用いられる。なお、チタン合金としては、特に限定されないが、例えば、Ti−6Al−4Vや、Ti−29Nb−13Ta−4.6ZrのようなTiを主成分とし、Al、Sn、Cr、Zr、Mo、Ni、Pd、Ta、Nb、V、Pt等が添加されたものが挙げられる。
【0081】
また、高分子材料としては、各種のものが挙げられるが、特にポリエーテルエーテルケトンが好ましい。この他にもポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸など臨床で使用されているものが挙げられる。
【0082】
なお、本体部31とリング32とは、上述したような構成材料のうち、同一または同種の材料で構成してもよいし、異なる材料で構成してもよい。
【0083】
本実施形態のスペーサ1は、上記のような構成のワイヤー3、すなわち、ブロック体2が備える貫通孔21に挿通される本体部31と、ネジ4によりネジ止めすることでブロック体2を間隙部150に固定する固定部として機能するリング32とを有するワイヤー3を備える構成となっている。
【0084】
したがって、ブロック体2にネジで穴を形成することなく、ブロック体2を間隙部150に固定することができるため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0085】
さらに、ネジ4を用いてネジ止めするという単純な作業で、スペーサ1を間隙部150内に容易に固定することができる。また、左右から出るワイヤー3(本体部31)の長さを変えることで、骨質のよい位置や視野の広い位置の切断端部120a、120bにネジ(スクリュー)4を穿つことができる。
【0086】
なお、スペーサ1を構成する各部は、その全体に亘って、角部が丸みを帯びた形状をなしている(R付けがなされている)ものであってもよい。かかる構成とすることにより、スペーサ1を間隙部150に挿入する際に、周辺組織を傷付けるのを防止することができるという利点が得られる。
【0087】
また、本明細書中において、上述した「間隙部」とは、本実施形態のように椎弓拡幅のために形成される空間の他、例えば、腸骨などの自家骨採取によって形成される空間や、事故や病気で骨を失った空間等を含むこととする。
【0088】
以上のようなスペーサ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
なお、以下では、ブロック体2がセラミックス材料で構成され、ワイヤー3が金属材料で構成されるスペーサ1を製造する場合を一例に説明する。
【0089】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、スペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(装着)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0090】
[A]まず、ブロック体2を用意する。
[A−1]まず、ブロック体2の形状に対応する成形体(グリーン体)を得る。
【0091】
この成形体は、例えば、I:セラミックス原料粉末を含むスラリーを、所定の型内に充填して、成形する方法、II:前記スラリーに対して、沈殿または遠心分離により固形分を偏在させる方法、III:前記スラリーを所定の型内に入れ、脱水処理し、固形分を型内に残す方法、IV:圧縮成形法(粉末の場合、圧粉成形)、V:セラミックス原料粉末と水状の糊とを混ぜ、これを型に入れ乾燥させる方法等、種々の方法により製造することができる。
【0092】
なお、前記スラリーは、予めスプレードライ法などにより造粒した二次粒子をセラミックス原料粉末として含むものであっても良い。
【0093】
また、必要に応じて、成形体を、旋盤、ドリル等を用いた切削加工によりその形状、大きさ等を調整するようにしてもよい。
【0094】
なお、成形体は、公知である経時的に硬化するペースト状のリン酸カルシウム系化合物を用いて得ることもできる。この場合は、後工程[A−2]の焼成は、行わなくても良い。
【0095】
[A−2]次いで、成形体(グリーン体)に、その側面同士を貫通する貫通孔を、ドリル等を用いて形成した後、成形体を焼成することでブロック体2を得る。
【0096】
成形体を焼成する際の焼成温度は、例えば、セラミックス材料がリン酸カルシウム系化合物である場合、700〜1300℃程度であるのが好ましい。
【0097】
[B]次に、リング32の取り付けが省略されたワイヤー3、すなわち、本体部31とリング32とをそれぞれ用意する。
【0098】
本体部31は、例えば、複数の線状体を用意し、これら線状体を撚り合わせた後、所定の長さで切断することにより得ることができる。
【0099】
また、リング32は、例えば、シート状をなす金属製の緻密体を用意し、この緻密体を、リング32の形状、大きさ等に成形することで容易に得ることができる。
【0100】
この緻密体の成形には、例えば、レーザーカット、ウォータージェット、放電ワイヤー加工、超音波切断のような薄片切断加工法を用いることができる。
【0101】
[C]次に、ブロック体2の貫通孔21に本体部31を挿通した後、本体部31の両端にリング32を取り付けることで、貫通孔21内に本体部31が挿通された状態のワイヤー3を得る。
【0102】
なお、本体部31へのリング32の取り付けは、例えば、カシメ、溶接、ろう接等により行うことができる。
以上のようにして、ブロック体2とワイヤー3とを有するスペーサ1が得られる。
【0103】
<第2実施形態>
次に、本発明のスペーサの第2実施形態について説明する。
【0104】
図6は、本発明のスペーサの第2実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0105】
以下、第2実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0106】
図6に示すスペーサ1は、ブロック体2の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0107】
すなわち、第2実施形態のスペーサ1において、ブロック体2が備える貫通孔21は、その内径が、ワイヤー3(本体部31)の外径とほぼ等しく設定されている。これにより、ワイヤー3の貫通孔21内での移動、すなわちワイヤー3の挿通方向に対する移動が規制される。このような移動が規制される構成とすることで、ブロック体2を間隙部150内に固定した際に、ブロック体2が椎弓120に対して位置ズレするのをより確実に防止することができる。
【0108】
このような第2実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0109】
<第3実施形態>
次に、本発明のスペーサの第3実施形態について説明する。
【0110】
図7は、本発明のスペーサの第3実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0111】
以下、第3実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0112】
図7に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0113】
すなわち、第3実施形態のスペーサ1において、ワイヤー3が備えるリング32は、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングで構成され、この欠損部が本体部31の長手方向と直交する方向上に位置している。
【0114】
これにより、ワイヤー3をネジ4を用いて後面124a、124bにネジ止めする際に、まず、後面124a、124bにネジ4を途中までネジ止めした後、C字状をなすリング32をネジ4に引っ掛け、その後、ネジ4の拡径部がリング32に当接するまでネジ4をネジ止めすることによっても、ワイヤー3をネジ4で固定することができる。
【0115】
このような第3実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0116】
<第4実施形態>
次に、本発明のスペーサの第4実施形態について説明する。
【0117】
図8は、本発明のスペーサの第4実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0118】
以下、第4実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0119】
図8に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0120】
すなわち、第4実施形態のスペーサ1において、ワイヤー3が備えるリング32は、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングで構成され、この欠損部が本体部31の長手方向上に位置している。
【0121】
これにより、ワイヤー3をネジ4を用いて後面124a、124bにネジ止めする際に、まず、後面124a、124bにネジ4を途中までネジ止めした後、C字状をなすリング32をネジ4に引っ掛け、その後、ネジ4の拡径部がリング32に当接するまでネジ4をネジ止めすることによっても、ワイヤー3をネジ4で固定することができる。
【0122】
このような第4実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0123】
<第5実施形態>
次に、本発明のスペーサの第5実施形態について説明する。
【0124】
図9は、本発明のスペーサの第5実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0125】
以下、第5実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0126】
図9に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0127】
すなわち、第5実施形態のスペーサ1において、ワイヤー3が備えるリング32は、円環状をなす環状体を2つ有している。換言すれば、前記第1実施形態のスペーサ1のリング32を2つ有している。そして、これら2つの環状体が本体部31の長手方向上に配列している。
【0128】
リング32をかかる構成とすることで、2つの環状体ともにネジ4でネジ止めする場合、ブロック体2をより強固に間隙部150に固定することができる。また、2つの環状体のうち何れか一方をネジ4でネジ止めする場合、ネジ4によりネジ止めする後面124a、124bの位置の選択の幅が広がる。
【0129】
このような第5実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0130】
また、リング32が備える環状体の数は複数であればよく、2つに限らず、3つ以上であってもよい。さらに、複数の環状体が配列する位置は、本体部31の長手方向上に限らず、本体部31の長手方向からズレていてもよい。
【0131】
<第6実施形態>
次に、本発明のスペーサの第6実施形態について説明する。
【0132】
図10は、本発明のスペーサの第6実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0133】
以下、第6実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0134】
図10に示すスペーサ1は、ブロック体2およびワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0135】
すなわち、第6実施形態のスペーサ1において、ブロック体2には貫通孔21がブロック体2の短手方向に所定間隔をあけて2つ設けられている。そして、これら貫通孔21の双方にワイヤー3が挿通されている。
【0136】
スペーサ1をかかる構成とすることで、ブロック体2の回旋に起因する前後方向への位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体2をより強固に間隙部150に固定することができる。
【0137】
このような第6実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0138】
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
また、ブロック体2が備える貫通孔21、および貫通孔21に挿通されるワイヤー3の数は複数であればよく、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0139】
<第7実施形態>
次に、本発明のスペーサの第7実施形態について説明する。
【0140】
図11は、本発明のスペーサの第7実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0141】
以下、第7実施形態のスペーサ1について、前記第6実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0142】
図11に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図10に示すスペーサ1と同様である。
【0143】
すなわち、第7実施形態のスペーサ1において、2つのワイヤー3が備えるリングのうち、本体部31の一方の端部に位置するリングが共有のリング32で構成され、他方の端部に位置するリングが共有のリング32で構成されている。
【0144】
スペーサ1をかかる構成とすることで、ブロック体2の前後方向への位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体2をより強固に間隙部150に固定することができる。また、第6実施形態のスペーサ1と比較して、4つではなく2つのネジ4でネジ止めすることができ、ネジ4によるネジ止めを容易に行うことができる。
【0145】
このような第7実施形態のスペーサ1によっても、前記第6実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0146】
以上、本発明のスペーサを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0147】
例えば、本発明のスペーサにおいて、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0148】
例えば、本発明では、前記第1〜第7実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0149】
さらに、前記実施形態のスペーサでは、いずれもブロック体2の上面視での形状がほぼ台形状のものについて示したが、本発明のスペーサは、ブロック体2の全体形状が円柱状や四角柱状のような柱状をなすものであってもよい。また、後面13を曲面とした全体としてアーチ状の形状としてもよい。
【0150】
また、前記実施形態のスペーサでは、いずれも固定部すなわちリング32の後面視での形状が円環状のものについて示したが、本発明のスペーサでは、固定部は環状形状を有するものであればよく、三角形、四角形のような多角形の形状をなす環状体であってもよい。
【0151】
さらに、前記実施形態では、スペーサ1を正中縦割式拡大椎弓形成術に用いる場合について示したが、本発明では、スペーサを、椎弓の一方側(片側)を切断し、他方側をヒンジのようにして椎弓を開くことにより脊柱管を拡大する片側侵入片開き式脊柱管拡大術に用いるようにしてもよい。
【0152】
また、スペーサ1を、椎弓に形成された間隙部に設置して固定する他、腸骨、大腿骨、頭蓋骨等の各種骨に形成された間隙部に配置して固定することもできる。
【符号の説明】
【0153】
1 スペーサ
11 前面
12 側面
13 後面
14 上面
15 下面
2 ブロック体
21 貫通孔
3 ワイヤー
31 本体部
32 リング
4 ネジ
100 椎骨
110 椎体
120 椎弓
120a、120b 切断端部
121a、121b 溝
122a、122b ヒンジ部
124a、124b 後面
130 棘突起
131 切断線
140 脊柱管
150 間隙部
160 拡大された椎弓
200 正中面
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサ、特に、棘突起、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起、椎弓スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、頚椎脊椎症性脊髄症や、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、椎間板ヘルニア等に対する治療として、正中縦割式頚椎拡大椎弓形成術、片側侵入片開き式脊柱管拡大術が行われている。
【0003】
正中縦割式拡大椎弓形成術の場合では、棘突起の正中部(中央部)を切断し、正中部を境にして、両側の椎弓を、ヒンジのようにして開くことにより、脊柱管を拡大する。この際、棘突起を切断して形成された間隙部(骨欠損部)には、スペーサが挿入される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このスペーサは、椎弓または棘突起の切断端部と、スペーサが有する一対の当接面とが接触するように前記間隙部に挿入され、前記切断端部に設けられた貫通孔と、前記一対の当接面を貫通して設けられた貫通孔とに糸を挿通して縛る結紮固定により、間隙部内に固定される。
【0005】
しかしながら、この結紮固定は操作が煩雑であり、視野が狭く、貫通孔に血液等が入り込むため、糸を通すのが困難になるおそれがある。
【0006】
さらに、金属製のプレートを用いて、スペーサと切断端部とをスクリューで固定することで、スペーサを間隙部内に固定する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかしながら、このプレートを用いた方法では、スクリューで固定するために、スペーサに穴を形成する必要があり、この穴の形成の際にスペーサに亀裂・割れ等が生じるという問題がある。また、プレート状であるため骨への固定位置が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−638号公報
【特許文献2】特許第4482445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、間隙部に設置されたスペーサに亀裂・割れ等を生じることなく、容易に固定することができるスペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体に挿通され、両端が前記ブロック体から突出するワイヤーとを有し、
前記ワイヤーは、前記両端に、ボルトを挿入して前記間隙部に前記ブロック体を固定するための固定部を備えることを特徴とするスペーサ。
【0011】
これにより、間隙部に設置されたスペーサ(ブロック体)に亀裂・割れ等を生じることなく、スペーサを間隙部に容易に固定することができる。
【0012】
(2) 前記固定部は、リングを備える上記(1)に記載のスペーサ。
このリングにボルトを挿通した状態で骨にネジ止めすることで、ブロック体を間隙部内に固定することができる。
【0013】
(3) 前記固定部は、前記リングを複数備える上記(2)に記載のスペーサ。
これにより、複数のリングの全てをボルトでネジ止めする場合、ブロック体をより強固に間隙に固定することができる。また、複数のリングのうち何れかをボルトでネジ止めする場合、ボルトによりネジ止めする骨の位置の選択の幅が広がるという利点が得られる。
【0014】
(4) 前記リングは、Oリングである上記(2)または(3)に記載のスペーサ。
このリングにボルトを挿通した状態で骨にネジ止めすることで、ブロック体を間隙部内に固定することができる。
【0015】
(5) 前記リングは、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングである上記(2)または(3)に記載のスペーサ。
【0016】
このリングにボルトを挿通した状態で骨にネジ止めすることで、ブロック体を間隙部内に固定することができる。さらに、ワイヤーをボルトを用いて骨にネジ止めする際に、まず、骨にボルトを途中までネジ止めした後、C字状をなすリングをボルトに引っ掛け、その後、ボルトの拡径部がリングに当接するまでボルトをネジ止めすることによっても、ワイヤーをボルトで固定することができる。
【0017】
(6) 前記ワイヤーを複数備える上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のスペーサ。
【0018】
これにより、ブロック体の位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体をより強固に間隙に固定することができる。
【0019】
(7) 複数の前記ワイヤーは、各端部に備える前記固定部を共有する上記(6)に記載のスペーサ。
【0020】
これにより、ブロック体の位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体をより強固に間隙に固定することができる。
【0021】
(8) 前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のスペーサ。
【0022】
セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0023】
(9) 前記ワイヤーは、金属材料または高分子材料を主材料として構成される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のスペーサ。
【0024】
金属材料または高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体をより確実に間隙部に固定することができる。
【0025】
(10) 棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のスペーサ。
【0026】
本発明のスペーサは、棘突起スペーサまたは椎弓スペーサとして特に好ましく適用される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、糸を挿通して縛ることなく、予めブロック体に挿通されたワイヤーが備える固定部にボルトを挿入した状態で骨に固定することで、間隙部にスペーサを容易に固定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のスペーサの第1実施形態を示す図である。
【図2】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図3】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図4】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図5】正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【図6】本発明のスペーサの第2実施形態を示す図である。
【図7】本発明のスペーサの第3実施形態を示す図である。
【図8】本発明のスペーサの第4実施形態を示す図である。
【図9】本発明のスペーサの第5実施形態を示す図である。
【図10】本発明のスペーサの第6実施形態を示す図である。
【図11】本発明のスペーサの第7実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のスペーサを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下では、本発明のスペーサを正中縦割式拡大椎弓形成術に用いられる椎弓スペーサに適用した場合を一例に説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1は、本発明のスペーサの第1実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)、図2〜図5は、それぞれ、正中縦割式拡大椎弓形成術について順を追って説明するための図である。
【0031】
<<正中縦割式拡大椎弓形成術>>
まず、本発明のスペーサの第1実施形態を説明するのに先立って、図2〜図5を参照して、正中縦割式拡大椎弓形成術について説明する。なお、図2〜図5中の上側が背側、下側が腹側、である。
【0032】
図2に示すように、椎骨100は、椎体110と、椎体110の後方(図2中の上側)に延び、脊柱管(椎孔)140を形成する椎弓120と、椎弓120の中央部から後方に突出する棘突起130とを有している。
【0033】
[1] まず、図2に示すように、椎骨100における棘突起130を、椎弓120から切断線131において切離(切断)する。
【0034】
[2] 次に、図3に示すように、椎弓120の中央部(正中部)を、例えばエアドリル等を用いて切断する。
【0035】
また、正中面200を境にして椎弓120の根元部の外側に、例えばエアドリル等を用いて溝121a、121bを形成する。
【0036】
この溝121a、121bの深さは、外板のみ削り、内板を削らない程度とする。この溝121a、121bを形成した部位は、ヒンジ部(蝶番)122a、122bとなる。
【0037】
[3] 次に、図4に示すように、ヒンジ部122a、122bを中心に、椎弓120を回動させ、椎弓120の切断した部分を広げる。これにより、切断端部(骨)120a、120b同士の間に間隙部150が形成される。
【0038】
なお、必要に応じて、椎弓120の間隙部150に臨む切断端部120a、120bを整形する。
【0039】
[4] 次に、図5に示すように、間隙部150に、本発明のスペーサ1を挿入した後、スペーサ1が備えるリング32にネジ(ボルト)4を、挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、スペーサ1を間隙部150内に固定する。これにより、患者の椎弓120と、スペーサ1とで、拡大された椎弓160が形成される。
【0040】
なお、スペーサ1を切断端部120a、120bにネジ4でネジ止めし、スペーサ1を間隙部150内に固定する構成とすることにより、術後早期に、スペーサ1が椎弓120に対して位置ズレするのを防止することができ、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合を確実に生じさせることができる。
【0041】
また、前述した結紮固定のように、スペーサに形成した貫通孔に糸を挿通して縛る場合と比較して、スペーサ1が備えるリング32にネジ4を挿通した状態で後面124a、124bにネジ止めするという単純な作業で、スペーサ1を間隙部150内に容易に固定することができる。
【0042】
さらに、後に詳述するように、ブロック体2にワイヤー3が予め挿通されていることから、ブロック体2にスクリュー等で穴を形成する必要がないため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0043】
なお、前記工程[1]において切離された棘突起130を、スペーサ1の後面13の中央(正中)に戻し、スペーサ1に糸等により固定してもよい。
【0044】
また、棘突起130を椎弓120から切離することなく、前記工程[2]において、棘突起130ごと正中面200に沿って切断してもよい。
【0045】
<<スペーサ>>
次に、本発明のスペーサの第1実施形態について、図1および図5を参照して説明する。
【0046】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、スペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(設置)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0047】
図1および図5に示すように、スペーサ1は、間隙部(欠損部)150に設置(挿入)されるブロック体(スペーサ本体)2と、このブロック体2に挿通され、両端がブロック体2から突出するワイヤー3とを有している。
【0048】
ブロック体2は、間隙部150に挿入され、拡大された椎弓160を形成するためのものである。
【0049】
このブロック体2は、本実施形態では、図5に示すように、上面視または下面視で、前面11側に凹部を備えるほぼ台形状をなしており、複数の角部を有している。
【0050】
このブロック体2において、前面11は、湾曲凹面で構成されており、前面11に対向する後面13は、平面で構成されている。前面11を湾曲凹面で構成することにより、脊柱管140をより大きく(広く)拡大することができ、脊髄神経の圧迫を確実に防止することができる。
【0051】
また、ブロック体2の一対の側面12は、それぞれ、間隙部150に挿入した状態で、椎弓120の切断端部120a、120bが当接する当接面を構成する。
【0052】
さらに、このようなブロック体2は、その長手方向に貫通して設けられた貫通孔21、すなわち一対の側面12を貫通する貫通孔21を有している。この貫通孔21にワイヤー3が挿通され、本実施形態では、貫通孔21内に固定されず、遊嵌されており、ワイヤー3の挿通方向に対する移動が規制されない。貫通孔21内にワイヤー3が遊嵌されることで、ブロック体2の左右から突出するワイヤーの突出割合を変更でき、骨への固定位置を調節可能である。固定位置を調節することで、骨の骨密度の高いなど最適部位を選択し、強固な固定ができる。また、術者の視野が良好な部位を選択することもできる。
【0053】
また、本実施形態のように、ブロック体2の後面13を平面で構成することにより、例えば、手術の手技として、切離された棘突起130を元の位置に戻す場合には、後面13に対する棘突起130の位置ずれを好適に防止できるとともに、後面13と棘突起130との接触面積が増大して、この骨癒合を早期に図ることができる。
【0054】
なお、ブロック体2において、各部の寸法は、それぞれ、次のように設定される。
ブロック体2の前後方向の長さ(図1中L)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0055】
また、ブロック体2の上下方向の長さ(図1中H)は、5〜12mm程度であるのが好ましく、5〜7mm程度であるのがより好ましい。
【0056】
また、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W)は、6〜23mm程度であるのが好ましく、10〜21mm程度であるのがより好ましい。
【0057】
また、前面11の湾曲凹面の平均曲率半径は、20〜120mm程度であるのが好ましく、23〜53mm程度であるのがより好ましい。
【0058】
さらに、貫通孔21の口径の平均径は、Φ0.15〜Φ2.5mm程度であるのが好ましく、Φ0.35〜Φ1.3mm程度であるのがより好ましい。
【0059】
スペーサ1における各部の寸法を上述した範囲内に設定することにより、ブロック体2に優れた機械的強度をより確実に付与することができる。
【0060】
このようなブロック体2は、特に限定されないが、セラミックス材料を主材料として構成されたものが好ましい。セラミックス材料は安定かつ無機質な材料のため、有機物の溶出という生体への負荷がない。
【0061】
セラミックス材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスが好ましい。なかでもリン酸カルシウム系化合物は、優れた生体親和性を備えているため、ブロック体2の構成材料として特に好ましい。
【0062】
リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく用いられる。
【0063】
このようなリン酸カルシウム系化合物のうち、ハイドロキシアパタイトがより好ましい。ハイドロキシアパタイトは、骨の無機質主成分と同様の構造であるため、優れた生体適合性を有している。また、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの癒合を期待することもできる。
【0064】
また、ブロック体2は、緻密体であっても、多孔質体であってもよいが、多孔質体であるのが好ましい。ブロック体2を多孔質体で構成することにより、ブロック体2内への骨芽細胞の侵入を可能とし、ブロック体2内において骨新生を行うことができ、特にブロック体2を、ハイドロキシアパタイトを主材料として構成する場合、ブロック体2自体と切断端部120a、120bとの確実な癒合を期待することができる。
【0065】
また、多孔質体の気孔率は、0〜90%程度であるのが好ましく、15〜60%程度であるのがより好ましい。これにより、ブロック体2の機械的強度が低下するのを防止しつつ、ブロック体2内への骨芽細胞のより円滑な侵入を可能とし、ブロック体2内における骨新生が促進することとなる。その結果、切断端部120a、120bと側面12との間における骨癒合をより確実かつ早期に生じさせることができる。
【0066】
なお、ブロック体2の構成材料としては、上記セラミックス材料の他、該セラミックス材料とチタン等の生体為害性の小さい金属材料との複合材料等を用いることも可能である。
【0067】
ワイヤー3は、ブロック体2の貫通孔21に挿通して用いられ、ブロック体2を間隙部150に固定するためのものである。
【0068】
このワイヤー3は、本体部31と、この本体部31に両端に設けられたリング32とを備えている。
【0069】
本体部31は、可撓性を有する線状体であり、ブロック体2が有する貫通孔21に挿通され、ブロック体2の一対の側面12から双方の端部が突出するようになっている。
【0070】
また、この本体部31は、本実施形態では、貫通孔21内に固定されず遊嵌されており、ワイヤー3の挿通方向に対する移動が許容される。これにより、ブロック体2の側面12から突出する本体部31の長さを適宜変えることができる。そのため、ネジ4により固定する切断端部120a、120bへの固定位置を自由に変えることができることから、最適な位置で固定することができる。
【0071】
本体部31の長さは、ブロック体2からその両端が突出し得るように設定され、本実施形態では、ブロック体2の左右方向の長さ(図1中W)に応じて設定される。具体的には、ブロック体2の左右方向の長さより、好ましくは1〜100mm程度大きく設定され、より好ましくは5〜40mm程度大きく設定される。これにより、ブロック体2から突出した本体部31の端部にリング32を設けることができる。
【0072】
また、本体部31の外径の平均径は、Φ0.1〜Φ2.0mm程度であるのが好ましく、Φ0.3〜Φ1.2mm程度であるのがより好ましい。これにより、間隙部150内に固定したブロック体2に応力が付与されたとしても、本体部31が切断されることなく、ブロック体2を間隙部150内に強固に固定することができ、ワイヤーを変形させてもブロック体2に負荷が掛からない。
【0073】
リング32は、その全体形状が円環状をなすOリングであり、本体部31の両端にそれぞれ設けられている。
【0074】
このリング32にネジ(ボルト)4を挿通した状態で切断端部120a、120bの後面124a、124bにネジ止めすることで、ブロック体2が間隙部150内に固定される。すなわち、本実施形態では、リング32が、ネジを挿入して間隙部150にブロック体2を固定するための固定部として機能する。
【0075】
リング32の内径は、好ましくはΦ0.5〜Φ5.0mm程度に設定され、より好ましくはΦ1.0〜Φ3.0mm程度に設定される。
【0076】
また、リング32の外径は、好ましくはΦ1.0〜Φ6.0mm程度に設定され、より好ましくはΦ1.5〜Φ3.5mm程度に設定される。
【0077】
さらに、リング32の厚さは、好ましくは0.1〜3.0mm程度に設定され、より好ましくは0.1〜1.0mm程度に設定される。
【0078】
リング32の各部の寸法を、かかる範囲内に設定することにより、ブロック体2を間隙部150内に確実に固定することができる。
【0079】
このようなワイヤー3は、特に限定されないが、金属材料または高分子材料を主材料として構成されたものが好ましい。金属材料と高分子材料は、優れた強度と弾性を有しているため、ブロック体2をより確実に間隙部150内に固定することができ、ワイヤーを変形させてもブロック体2に負荷が掛からない。
【0080】
金属材料としては、各種のものが挙げられるが、特に、チタンまたはチタン合金であるのが好ましい。チタンまたはチタン合金は、生体適合性が高く、また、優れた強度を有することからワイヤー3の構成材料として好ましく用いられる。なお、チタン合金としては、特に限定されないが、例えば、Ti−6Al−4Vや、Ti−29Nb−13Ta−4.6ZrのようなTiを主成分とし、Al、Sn、Cr、Zr、Mo、Ni、Pd、Ta、Nb、V、Pt等が添加されたものが挙げられる。
【0081】
また、高分子材料としては、各種のものが挙げられるが、特にポリエーテルエーテルケトンが好ましい。この他にもポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸など臨床で使用されているものが挙げられる。
【0082】
なお、本体部31とリング32とは、上述したような構成材料のうち、同一または同種の材料で構成してもよいし、異なる材料で構成してもよい。
【0083】
本実施形態のスペーサ1は、上記のような構成のワイヤー3、すなわち、ブロック体2が備える貫通孔21に挿通される本体部31と、ネジ4によりネジ止めすることでブロック体2を間隙部150に固定する固定部として機能するリング32とを有するワイヤー3を備える構成となっている。
【0084】
したがって、ブロック体2にネジで穴を形成することなく、ブロック体2を間隙部150に固定することができるため、ブロック体2に亀裂・割れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0085】
さらに、ネジ4を用いてネジ止めするという単純な作業で、スペーサ1を間隙部150内に容易に固定することができる。また、左右から出るワイヤー3(本体部31)の長さを変えることで、骨質のよい位置や視野の広い位置の切断端部120a、120bにネジ(スクリュー)4を穿つことができる。
【0086】
なお、スペーサ1を構成する各部は、その全体に亘って、角部が丸みを帯びた形状をなしている(R付けがなされている)ものであってもよい。かかる構成とすることにより、スペーサ1を間隙部150に挿入する際に、周辺組織を傷付けるのを防止することができるという利点が得られる。
【0087】
また、本明細書中において、上述した「間隙部」とは、本実施形態のように椎弓拡幅のために形成される空間の他、例えば、腸骨などの自家骨採取によって形成される空間や、事故や病気で骨を失った空間等を含むこととする。
【0088】
以上のようなスペーサ1は、例えば、次のようにして製造することができる。
なお、以下では、ブロック体2がセラミックス材料で構成され、ワイヤー3が金属材料で構成されるスペーサ1を製造する場合を一例に説明する。
【0089】
なお、以下の説明では、特に断らない限り、スペーサ1を患者の施術部位(間隙部150)に挿入(装着)した状態を基本として方向を特定する。すなわち、患者の腹側(脊柱管140側)を「前」、背側(脊柱管140と反対側)を「後」といい、患者の頭側を「上」、患者の脚側を「下」という。
【0090】
[A]まず、ブロック体2を用意する。
[A−1]まず、ブロック体2の形状に対応する成形体(グリーン体)を得る。
【0091】
この成形体は、例えば、I:セラミックス原料粉末を含むスラリーを、所定の型内に充填して、成形する方法、II:前記スラリーに対して、沈殿または遠心分離により固形分を偏在させる方法、III:前記スラリーを所定の型内に入れ、脱水処理し、固形分を型内に残す方法、IV:圧縮成形法(粉末の場合、圧粉成形)、V:セラミックス原料粉末と水状の糊とを混ぜ、これを型に入れ乾燥させる方法等、種々の方法により製造することができる。
【0092】
なお、前記スラリーは、予めスプレードライ法などにより造粒した二次粒子をセラミックス原料粉末として含むものであっても良い。
【0093】
また、必要に応じて、成形体を、旋盤、ドリル等を用いた切削加工によりその形状、大きさ等を調整するようにしてもよい。
【0094】
なお、成形体は、公知である経時的に硬化するペースト状のリン酸カルシウム系化合物を用いて得ることもできる。この場合は、後工程[A−2]の焼成は、行わなくても良い。
【0095】
[A−2]次いで、成形体(グリーン体)に、その側面同士を貫通する貫通孔を、ドリル等を用いて形成した後、成形体を焼成することでブロック体2を得る。
【0096】
成形体を焼成する際の焼成温度は、例えば、セラミックス材料がリン酸カルシウム系化合物である場合、700〜1300℃程度であるのが好ましい。
【0097】
[B]次に、リング32の取り付けが省略されたワイヤー3、すなわち、本体部31とリング32とをそれぞれ用意する。
【0098】
本体部31は、例えば、複数の線状体を用意し、これら線状体を撚り合わせた後、所定の長さで切断することにより得ることができる。
【0099】
また、リング32は、例えば、シート状をなす金属製の緻密体を用意し、この緻密体を、リング32の形状、大きさ等に成形することで容易に得ることができる。
【0100】
この緻密体の成形には、例えば、レーザーカット、ウォータージェット、放電ワイヤー加工、超音波切断のような薄片切断加工法を用いることができる。
【0101】
[C]次に、ブロック体2の貫通孔21に本体部31を挿通した後、本体部31の両端にリング32を取り付けることで、貫通孔21内に本体部31が挿通された状態のワイヤー3を得る。
【0102】
なお、本体部31へのリング32の取り付けは、例えば、カシメ、溶接、ろう接等により行うことができる。
以上のようにして、ブロック体2とワイヤー3とを有するスペーサ1が得られる。
【0103】
<第2実施形態>
次に、本発明のスペーサの第2実施形態について説明する。
【0104】
図6は、本発明のスペーサの第2実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0105】
以下、第2実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0106】
図6に示すスペーサ1は、ブロック体2の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0107】
すなわち、第2実施形態のスペーサ1において、ブロック体2が備える貫通孔21は、その内径が、ワイヤー3(本体部31)の外径とほぼ等しく設定されている。これにより、ワイヤー3の貫通孔21内での移動、すなわちワイヤー3の挿通方向に対する移動が規制される。このような移動が規制される構成とすることで、ブロック体2を間隙部150内に固定した際に、ブロック体2が椎弓120に対して位置ズレするのをより確実に防止することができる。
【0108】
このような第2実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0109】
<第3実施形態>
次に、本発明のスペーサの第3実施形態について説明する。
【0110】
図7は、本発明のスペーサの第3実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0111】
以下、第3実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0112】
図7に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0113】
すなわち、第3実施形態のスペーサ1において、ワイヤー3が備えるリング32は、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングで構成され、この欠損部が本体部31の長手方向と直交する方向上に位置している。
【0114】
これにより、ワイヤー3をネジ4を用いて後面124a、124bにネジ止めする際に、まず、後面124a、124bにネジ4を途中までネジ止めした後、C字状をなすリング32をネジ4に引っ掛け、その後、ネジ4の拡径部がリング32に当接するまでネジ4をネジ止めすることによっても、ワイヤー3をネジ4で固定することができる。
【0115】
このような第3実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0116】
<第4実施形態>
次に、本発明のスペーサの第4実施形態について説明する。
【0117】
図8は、本発明のスペーサの第4実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0118】
以下、第4実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0119】
図8に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0120】
すなわち、第4実施形態のスペーサ1において、ワイヤー3が備えるリング32は、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングで構成され、この欠損部が本体部31の長手方向上に位置している。
【0121】
これにより、ワイヤー3をネジ4を用いて後面124a、124bにネジ止めする際に、まず、後面124a、124bにネジ4を途中までネジ止めした後、C字状をなすリング32をネジ4に引っ掛け、その後、ネジ4の拡径部がリング32に当接するまでネジ4をネジ止めすることによっても、ワイヤー3をネジ4で固定することができる。
【0122】
このような第4実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0123】
<第5実施形態>
次に、本発明のスペーサの第5実施形態について説明する。
【0124】
図9は、本発明のスペーサの第5実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0125】
以下、第5実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0126】
図9に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0127】
すなわち、第5実施形態のスペーサ1において、ワイヤー3が備えるリング32は、円環状をなす環状体を2つ有している。換言すれば、前記第1実施形態のスペーサ1のリング32を2つ有している。そして、これら2つの環状体が本体部31の長手方向上に配列している。
【0128】
リング32をかかる構成とすることで、2つの環状体ともにネジ4でネジ止めする場合、ブロック体2をより強固に間隙部150に固定することができる。また、2つの環状体のうち何れか一方をネジ4でネジ止めする場合、ネジ4によりネジ止めする後面124a、124bの位置の選択の幅が広がる。
【0129】
このような第5実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0130】
また、リング32が備える環状体の数は複数であればよく、2つに限らず、3つ以上であってもよい。さらに、複数の環状体が配列する位置は、本体部31の長手方向上に限らず、本体部31の長手方向からズレていてもよい。
【0131】
<第6実施形態>
次に、本発明のスペーサの第6実施形態について説明する。
【0132】
図10は、本発明のスペーサの第6実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0133】
以下、第6実施形態のスペーサ1について、前記第1実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0134】
図10に示すスペーサ1は、ブロック体2およびワイヤー3の構成が異なる以外は、図1に示すスペーサ1と同様である。
【0135】
すなわち、第6実施形態のスペーサ1において、ブロック体2には貫通孔21がブロック体2の短手方向に所定間隔をあけて2つ設けられている。そして、これら貫通孔21の双方にワイヤー3が挿通されている。
【0136】
スペーサ1をかかる構成とすることで、ブロック体2の回旋に起因する前後方向への位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体2をより強固に間隙部150に固定することができる。
【0137】
このような第6実施形態のスペーサ1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0138】
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
また、ブロック体2が備える貫通孔21、および貫通孔21に挿通されるワイヤー3の数は複数であればよく、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0139】
<第7実施形態>
次に、本発明のスペーサの第7実施形態について説明する。
【0140】
図11は、本発明のスペーサの第7実施形態を示す図((a)正面図、(b)平面図、(c)側面図)である。
【0141】
以下、第7実施形態のスペーサ1について、前記第6実施形態のスペーサ1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0142】
図11に示すスペーサ1は、ワイヤー3の構成が異なる以外は、図10に示すスペーサ1と同様である。
【0143】
すなわち、第7実施形態のスペーサ1において、2つのワイヤー3が備えるリングのうち、本体部31の一方の端部に位置するリングが共有のリング32で構成され、他方の端部に位置するリングが共有のリング32で構成されている。
【0144】
スペーサ1をかかる構成とすることで、ブロック体2の前後方向への位置ズレをより的確に抑制または防止することができるため、ブロック体2をより強固に間隙部150に固定することができる。また、第6実施形態のスペーサ1と比較して、4つではなく2つのネジ4でネジ止めすることができ、ネジ4によるネジ止めを容易に行うことができる。
【0145】
このような第7実施形態のスペーサ1によっても、前記第6実施形態と同様の効果が得られる。
なお、各部の寸法は、前記第1実施形態のスペーサ1と同様である。
【0146】
以上、本発明のスペーサを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0147】
例えば、本発明のスペーサにおいて、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0148】
例えば、本発明では、前記第1〜第7実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0149】
さらに、前記実施形態のスペーサでは、いずれもブロック体2の上面視での形状がほぼ台形状のものについて示したが、本発明のスペーサは、ブロック体2の全体形状が円柱状や四角柱状のような柱状をなすものであってもよい。また、後面13を曲面とした全体としてアーチ状の形状としてもよい。
【0150】
また、前記実施形態のスペーサでは、いずれも固定部すなわちリング32の後面視での形状が円環状のものについて示したが、本発明のスペーサでは、固定部は環状形状を有するものであればよく、三角形、四角形のような多角形の形状をなす環状体であってもよい。
【0151】
さらに、前記実施形態では、スペーサ1を正中縦割式拡大椎弓形成術に用いる場合について示したが、本発明では、スペーサを、椎弓の一方側(片側)を切断し、他方側をヒンジのようにして椎弓を開くことにより脊柱管を拡大する片側侵入片開き式脊柱管拡大術に用いるようにしてもよい。
【0152】
また、スペーサ1を、椎弓に形成された間隙部に設置して固定する他、腸骨、大腿骨、頭蓋骨等の各種骨に形成された間隙部に配置して固定することもできる。
【符号の説明】
【0153】
1 スペーサ
11 前面
12 側面
13 後面
14 上面
15 下面
2 ブロック体
21 貫通孔
3 ワイヤー
31 本体部
32 リング
4 ネジ
100 椎骨
110 椎体
120 椎弓
120a、120b 切断端部
121a、121b 溝
122a、122b ヒンジ部
124a、124b 後面
130 棘突起
131 切断線
140 脊柱管
150 間隙部
160 拡大された椎弓
200 正中面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体に挿通され、両端が前記ブロック体から突出するワイヤーとを有し、
前記ワイヤーは、前記両端に、ボルトを挿入して前記間隙部に前記ブロック体を固定するための固定部を備えることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
前記固定部は、リングを備える請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記固定部は、前記リングを複数備える請求項2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記リングは、Oリングである請求項2または3に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記リングは、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングである請求項2または3に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記ワイヤーを複数備える請求項1ないし5のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項7】
複数の前記ワイヤーは、各端部に備える前記固定部を共有する請求項6に記載のスペーサ。
【請求項8】
前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される請求項1ないし7のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項9】
前記ワイヤーは、金属材料または高分子材料を主材料として構成される請求項1ないし8のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項10】
棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである請求項1ないし9のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項1】
骨と骨との間隙部に設置して固定されるスペーサであって、
前記間隙部に設置されるブロック体と、該ブロック体に挿通され、両端が前記ブロック体から突出するワイヤーとを有し、
前記ワイヤーは、前記両端に、ボルトを挿入して前記間隙部に前記ブロック体を固定するための固定部を備えることを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
前記固定部は、リングを備える請求項1に記載のスペーサ。
【請求項3】
前記固定部は、前記リングを複数備える請求項2に記載のスペーサ。
【請求項4】
前記リングは、Oリングである請求項2または3に記載のスペーサ。
【請求項5】
前記リングは、その一部が欠損する欠損部を備えるCリングである請求項2または3に記載のスペーサ。
【請求項6】
前記ワイヤーを複数備える請求項1ないし5のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項7】
複数の前記ワイヤーは、各端部に備える前記固定部を共有する請求項6に記載のスペーサ。
【請求項8】
前記ブロック体は、セラミックス材料を主材料として構成される請求項1ないし7のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項9】
前記ワイヤーは、金属材料または高分子材料を主材料として構成される請求項1ないし8のいずれかに記載のスペーサ。
【請求項10】
棘突起の切断・縦割、椎弓の切断により形成された切断部に設置される棘突起スペーサもしくは椎弓スペーサである請求項1ないし9のいずれかに記載のスペーサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−85901(P2013−85901A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232201(P2011−232201)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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