説明

スポット溶接電極装置

【課題】
スポット溶接するための受け側電極チップの摩耗を自動調節して補正し、またハット断面形状のワークを変形させることなくシリーズスポット溶接を可能としたスポット溶接電極装置を提供する。
【解決手段】
固定ベース3上に固設された台形で筒状のチップガイド2と、前記チップガイド2の傾斜面4に、この傾斜面4と直交する軸線方向に進退移動可能に設けたチップ7と、前記チップガイド2の筒内に昇降動可能に挿入され前記チップ7を進退作動するための作動軸部材8と、この作動軸部材8を昇降動制御するためのアクチュエータ11とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハット断面形状のワークをスポット溶接するための受け側電極チップの位置を可変制御可能としたスポット溶接電極装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接の受け側電極チップの位置を可変制御可能とした技術は、例えば、特開平10−6032公報で開示されている。このものは電極の位置をシリンダによって上下軸線方向に制御する技術であり、図3で示すような第1のワークW1にハット断面形状の第2ワークW2をスポット溶接することはできない。
【0003】
上記図3で示すような第1のワークW1にハット断面形状の第2ワークW2をスポット溶接するには、台形のベース12の傾斜面にチップ13を埋め込み、スポット溶接ガン14によりスポット溶接している。
【0004】
図3で示すようなスポット溶接電極では、チップ13の摩耗によりワークとに隙間ができてスポット溶接後の組み付け精度のバラツキが生じる。また、ハット断面の第2ワークW2のサイズが変化した場合には、変化した断面形状に対応したスポット溶接電極を使用する必要があり、断面形状が変化しても同一のスポット溶接電極でシリーズスポット溶接することができないという問題がある。
【特許文献1】特開平10−6032公報
【特許文献2】特開2003−19571公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、スポット溶接するための受け側電極チップの摩耗を自動調節して補正し、またハット断面形状のワークを変形させることなくシリーズスポット溶接を可能としたスポット溶接電極装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明は、請求項1に記載の通り、ハット断面形状のワークをスポット溶接するための受け側電極装置であって、固定ベース上に固設された台形で筒状のチップガイドと、前記チップガイドの傾斜面に、この傾斜面と直交する軸線方向に進退移動可能に設けたチップと、前記チップガイドの筒内に昇降動可能に挿入され前記チップを進退作動するための作動軸部材と、この作動軸部材を昇降動制御するためのアクチュエータとを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、チップガイドの傾斜面に設けたチップを作動軸部材によってチップガイドの傾斜面と直交する軸線方向に進退移動可能にしたことにより、チップの摩耗では前進移動して適正位置に補正してワークとチップとの間に隙間をなくし、スポット溶接後の組み付け精度を向上するとともに、ハット断面形状のワークの変化では、変化したワークに対応するようチップの位置を進退移動してワーク断面形状を変化させることなく同一のスポット溶接電極でシリーズスポット溶接を可能にした効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。図1において、1は本発明によるハット断面形状のワークをスポット溶接するための受け側電極装置を示す。このスポット溶接電極装置1は、固定ベース3上に固設された台形で筒状のチップガイド2と、前記チップガイド2の傾斜面4に、この傾斜面4と直交する軸線方向に進退移動可能に設けたチップ7と、前記チップガイド2の筒内に昇降動可能に挿入され前記チップ7を進退作動するための作動軸部材8と、この作動軸部材8を昇降動制御するためのアクチュエータ11とを備えた構成である。尚、図1において、W1は第1のワークであり.W2は前記第1のワークW1にスポット溶接するハット断面形状の第2ワークである。
【0009】
以下さらに詳しく説明する。前記チップ7はチップベース6に埋め込まれており、前記チップガイド2の傾斜面4に明けられた穴5に前記チップベース6を介してチップガイド2の傾斜面4と直交する軸線方向に進退移動可能に設けられている。
【0010】
前記作動軸部材8はチップガイド2と相似形であり、アクチュエータ11によりチップガイド2の筒内で昇降動するようになっている。例えば、アクチュエータ11は可逆転モータとし、このモータの回転軸にピニオンを設け、作動軸部材8には前記ピニオンと噛み合うラックを設けたロッド10が結合している構造である。
【0011】
前記チップベース6は作動軸部材8の傾斜面に接触し、かつ作動軸部材8の昇降動を許容すべく相対移動可能に係合している。この相対移動可能な係合構造は、作動軸部材8に、その傾斜面に沿って溝8aが切ってあり、この溝8aにチップベース6から突設した係合突起9を相対摺動可能に係合した構造である。
【0012】
本発明は上記の通りの構造であるから、アクチュエータ11により作動軸部材8を上昇動させることにより、作動軸部材8の傾斜面に接触しているチップベース6は作動軸部材8の傾斜面で押されてチップガイド2の傾斜面4と直交する軸線方向に前進してチップ7を押し出し位置する。
【0013】
また、アクチュエータ11により作動軸部材8を下降動させることにより、チップベース6を作動軸部材8の傾斜面に接触した状態で係合突起9を溝8aで引き込みチップガイド2の傾斜面6と直交する軸線方向に後退してチップ7を引き込み位置する。
【0014】
このように、チップ7は作動軸部材8の昇降動によって押し出しあるいは引き込み位置する可変制御可能であるため、チップ7が摩耗したときには作動軸部材8を適当量で上昇させてチップ7を押し出し位置し適正位置に補正する。これにより、チップ7の摩耗によるワークとチップ7との間に隙間をなくし、スポット溶接後の組み付け精度を向上する利点を有する。
【0015】
また、ハット断面形状の第2ワークW2のサイズが変化した場合、チップ7の位置を変化したハット断面形状のサイズに対応するよう作動軸部材8を昇降動してチップ7を押し出しあるいは引き込み制御する。これにより、ワーク断面形状を変化させることなく同一のスポット溶接電極でシリーズスポット溶接を可能する利点を有する。
【0016】
尚、作動軸部材8を昇降動させるにはチップとワークの接触を微弱電流で検知しながらアクチュエータ11を駆動してチップの位置を自動調節するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるスポット溶接電極装置の断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】従来一般的に使用されているハット断面形状ワークのスポット溶接用の受け側電極を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 スポット溶接電極装置
2 チップガイド
3 固定ベース
4 チップガイドの傾斜面
5 穴
6 チップベース
7 チップ
8 作動軸部材
8a 溝
9 係合突起
10 ロッド
11 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハット断面形状のワークをスポット溶接するための受け側電極装置であって、固定ベース上に固設された台形で筒状のチップガイドと、前記チップガイドの傾斜面に、この傾斜面と直交する軸線方向に進退移動可能に設けたチップと、前記チップガイドの筒内に昇降動可能に挿入され前記チップを進退作動するための作動軸部材と、この作動軸部材を昇降動制御するためのアクチュエータとを備えたことを特徴とするスポット溶接電極装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−205208(P2006−205208A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20459(P2005−20459)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】