説明

スポンジ用シリコーンゴム組成物

【課題】湿式シリカを用いて高温で常圧熱気加硫を行っても異常発泡が抑えられ、スポンジセルが均一で柔らかく風合いのよいスポンジとなるスポンジ用シリコーンゴム組成物を提供すること。
【解決手段】(A)重合度が100以上であって、分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記特性を有する湿式シリカ:3〜100質量部、
・比表面積(BET法);50m/g以上
・比表面積(BET法)/比表面積(CTAB法)=1.0〜1.3,
・水分含有量;4%以下,
(C)50〜250℃において気体を発生する発泡剤:0.5〜50質量部,
(D)硬化剤:有効量,
を含有するスポンジ用シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式シリカを配合したスポンジ用シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品等様々な分野で広く使用されている。例えば、リモートコントローラ、タイプライター、ワードプロセッサ、コンピュータ末端、楽器等のゴム接点として使用されるラバーコンタクト、建築用ガスケット、定着ロール、現像ロール、転写ロール、帯電ロール、給紙ロール等の事務器用ロール、オーディオ装置等の防振ゴム、コンパクトディスク用パッキン、電線被覆材等に使用されている。
【0003】
硬化してシリコーンゴムとなるシリコーンゴム組成物は、一般的にはベースポリマーとしてのオルガノポリシロキサンとシリカに代表される補強性充填材を混合したものに硬化剤を配合して得られる。
補強性シリカとしては乾式(煙霧質)シリカと湿式(沈降性)シリカに大別されるが、乾式シリカは湿式シリカに比べ高価であり、それを配合したシリコーンゴム組成物は汎用性に欠けるものとなっている。
【0004】
一方、押出発泡成形用シリコーンゴム組成物には通常乾式シリカが用いられる。これは、湿式シリカを用いた場合、常圧熱気発泡加硫した時に成形ゴム中にスポンジセルの異常発泡が起こりやすいためである。即ち、湿式シリカは内部の細孔に水分が吸着され易く、これを用いたスポンジ材料は高温で常圧発泡架橋を行うとシリコーン材料表面の急激な温度上昇により材料表面の吸着水分が瞬時に気体になるためスポンジ成型物表面から内側10mm程度内側の範囲でスポンジセルが巨大となったり、セルとセルがくっついてしまう等の異常発泡層ができてしまうという問題がある。
そのため、湿式シリカを用いたシリコーンスポンジ材料では発泡温度を低くする必要があり、成型時間が長時間必要となり実用てきでなかった。
【0005】
また、特開平3−9932号(特許文献1)、特開平5-59207号(特許文献2)、特開平7−18110号(特許文献3)、特開平8−176333号(特許文献4)、特開平10-87865号(特許文献5)、特開平10-182972号(特許文献6)、特開2000-160017号(特許文献7)、特開2001-164116号(特許文献8)には各種スポンジ用シリコーンゴム組成物が提案されているが、湿式シリカを用いたスポンジ用シリコーンゴム組成物は提案されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平3−9932号公報
【特許文献2】特開平5−59207号公報
【特許文献3】特開平7−18110号公報
【特許文献4】特開平8−176333号公報
【特許文献5】特開平10−87865号公報
【特許文献6】特開平10-182972号公報
【特許文献7】特開2000-160017号公報
【特許文献8】特開2001-164116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、湿式シリカを用いたスポンジ用シリコーンゴム組成物において高温で常圧熱気加硫を行っても異常発泡が抑えられ、効率的にスポンジを成型することができ、スポンジセルが均一で柔らかく風合いのよいスポンジとなるスポンジ用シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、重合度が100以上であって、珪素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、比表面積(BET法)が50m/g以上で比表面積(BET法)/比表面積(CTAB法)=1.0〜1.3、水分含有量が4%以下である湿式シリカ、50〜250℃で気体を発生する発泡剤、硬化剤を配合したスポンジ用シリコーンゴム組成物が高温で常圧熱気加硫を行っても異常発泡が抑えられ、効率的にスポンジを成型することができ、スポンジセルが均一で柔らかく風合いのよいスポンジとなることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、(A)重合度が100以上であって、分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン
100質量部
(B)下記特性を有する湿式シリカ 3〜100質量部
比表面積(BET法) 50m/g以上
比表面積(BET法)/比表面積(CTAB法)=1.0〜1.3
水分含有量 4%以下
(C)50〜250℃において気体を発生する発泡剤 0.5〜50質量部
(D)硬化剤 有効量
を含有するスポンジ用シリコーンゴム組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿式シリカを用いて高温で常圧熱気加硫を行っても異常発泡が抑えられ、効率的にスポンジを成型することができ、スポンジセルが均一で柔らかく風合いのよいスポンジとなるスポンジ用シリコーンゴム組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴム組成物の(A)成分は重合度が100以上であって、珪素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンであり、下記平均組成式(I)で表されるものが代表的である。
SiO(4−a)/2 (I)
(式中、Rは同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
【0012】
上記平均組成式(I)中、Rは同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基を示し、通常、炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、或いはこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したトリフロロプロピル基等が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。メチル基はR中の80モル%以上特に90モル%以上であることが好ましい。
【0013】
具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位からなるもの、又はこのジメチルポリシロキサンの主鎖の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したもの等が好適である。
【0014】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基、好ましくはビニル基を有する必要があり、0.01〜20モル%、特に0.02〜10モル%がアルケニル基であることが好ましい。
【0015】
なお、このアルケニル基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、側鎖のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。具体的には分子鎖末端がジメチルビニルシリル基、メチルジビニルシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されたものが好ましい。
【0016】
aは1.95〜2.05の正数であり、基本的には直鎖状であるがゴム弾性を損なわない範囲において分岐していてもよい。
【0017】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの重合度は100以上であり、好ましくは3,000〜100,000、特に好ましくは4,000〜20,000である。重合度が100未満であると十分なゴム強度が得られない。
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンは1種でも分子構造や重合度の異なる2種以上を併用してもよい。
【0018】
このようなオルガノポリシロキサンは、公知の方法、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、或いは環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性触媒をもちいて開環重合することによって得ることができる。
【0019】
(B)成分の湿式シリカは比表面積(BET法)が50m/g以上、好ましくは100m/g以上、特に好ましくは100〜400m/gであり、かつ比表面積(BET法)/比表面積(CTAB法)=1.0〜1.3、好ましくは1.0〜1.2、特に好ましくは1.0〜1.1であり、水分含有量が4%以下、好ましくは3%以下であることが必要である。
【0020】
比表面積(BET法)が50m/g未満では機械的強度の付与が不十分となる。また、比表面積(BET法)/比表面積(CTAB法)が1.0〜1.3の範囲かつ水分含有量が4%を超えると常圧熱気加硫時に異常発泡が生じ易くなる。
【0021】
比表面積(BET法)は窒素吸着量による表面積であり、比表面積(CTAB法)はN-セチル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロマイドの吸着量による表面積であり、この比が1に近いほど内部に細孔を有していないものとなり、水分が内部細孔に吸着されにくい構造となる。そのため、例え見かけ上水分含有量が多くても除去し易いものとなる。
【0022】
(B)成分の湿式シリカは必要に応じ表面をクロロシランやヘキサメチルジシラザン等の公知の処理剤で疎水化処理してもよい。
【0023】
(B)成分の湿式シリカは例えばZeosil172X(ローディアジャパン(株)製)等として入手可能である。
【0024】
(B)成分の湿式シリカの添加量は、(A)成分100質量部に対して、3〜100質量部、好ましくは10〜70質量部、特に好ましくは30〜60質量部である。3質量部未満だと、添加量が少なすぎて十分な補強効果が得られず、100質量部を超えると加工性が悪くなり、また機械的強度が低下してしまう。
【0025】
(C)成分の発泡剤は50〜250℃において窒素や炭酸ガス等の気体を発生するものであれば特に制限されないが、有機発泡剤及び/又は無機発泡剤が使用される。
有機発泡剤としては、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2'-アゾビス[N-(2−プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、アゾジカルボンアミド、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン等の有機アゾ系発泡剤、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、P,P'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物、カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、P-トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物が例示される。
無機発泡剤としては重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が例示される。
【0026】
これらの中で、有機アゾ系発泡剤、無機発泡剤が好ましく、特に分子内にシリコーンゴムの硬化を阻害する硫黄化合物、リン酸塩類、強いアミン類等を有しないアゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,2'-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2'-アゾビス[N-(2−プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]等の有機アゾ系発泡剤や分解によって強い酸やアルカリを発生することがなく、無臭でシリコーンゴムの架橋阻害性の低い炭酸水素ナトリウム等の分解して炭酸ガスを発生する無機発泡剤が好ましい。
【0027】
(C)成分は(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜20質量部、特に好ましくは1〜10質量部である。少なすぎると発生ガスが不十分でスポンジになりにくくなり、多すぎるとスポンジ成形時に発生ガスが多くなるため、セルが大きく不均一となったり、スポンジが内部より割れてしまうことがある。
発泡剤は1種または2種以上併用してもよい。
【0028】
(D)成分の硬化剤としては、本発明のゴム組成物を硬化させ得るものであれば特に限定されるものではないが、シリコーンゴム用硬化剤として公知の付加反応による架橋反応、即ちオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒及び/又は有機過酸化物が好ましい。
【0029】
上記付加反応による架橋反応に用いられるヒドロシリル化触媒は、(A)成分の脂肪族不飽和結合(アルケニル基及びジエン基等)とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子(SiH基)を付加反応させる触媒である。
【0030】
ヒドロシリル化触媒としては、白金族金属系触媒が挙げられ、白金族の金属単体とその化合物があり、これには従来、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物が好ましい。触媒の添加量は、付加反応を促進できればよく、通常、白金系金属量に換算して1ppm〜1重量%の範囲で使用されるが、10〜500ppmの範囲が好ましい。添加量が1ppm未満だと、付加反応が十分促進されず、硬化が不十分である場合があり、一方、1重量%を超えると、これより多く加えても、反応性に対する影響も少なく、不経済となる場合がある。
【0031】
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、付加架橋制御剤を使用してもよい。具体的にはエチニルシクロヘキサノールやテトラシクロメチルビニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0032】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を含有すれば、直鎖状、環状、分枝状のいずれであってもよく、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(II)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
R'pqSiO(4-p-q)/2 (II)
【0033】
上記平均組成式(II)中、R'は、非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合を除いたものであることが好ましい。通常、炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。これらの中でメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましい。なお、p,qは0≦p<3、好ましくは1≦p≦2.2、0<q≦3、好ましくは0.002≦q≦1、0<p+q≦3、好ましくは1.002≦p+q≦3を満たす正数である。
【0034】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiH基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するが、これは分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、25℃における粘度が0.5〜10,000cSt、特に1〜300cStであることが好ましい。
【0035】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的に下記構造式の化合物を例示することができる。
【0036】
【化1】


(式中、kは2〜10の整数、s及びtは0〜10の整数である。)
【0037】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分100重量部に対し0.1〜40重量部が好ましい。また(A)成分の脂肪族不飽和結合(アルケニル基及びジエン基等)1個に対し、ケイ素原子に結合した水素原子(≡SiH基)の割合が0.5〜10の範囲が適当であり、好ましくは0.7〜5となるような範囲が適当である。0.5未満だと架橋が十分でなく、十分な機械的強度が得られない場合があり、また10を超えると硬化後の物理特性が低下し、特に耐熱性と圧縮永久歪特性が悪くなる場合がある。
【0038】
有機過酸化物としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上併用してもよい。また、常圧熱気加硫で成形する場合は少なくともp-メチルベンゾイルパーオキサイドかo-メチルベンゾイルパーオキサイドを用いることが好ましい。
有機過酸化物の添加量は(A)成分100重量部に対して0.1〜15重量部、特に0.2〜10重量部が好ましい。
【0039】
本発明のスポンジ用シリコーンゴム組成物には、上記成分に加え、更に(E)成分として、下記一般式(III)で表されるオルガノシラン又はシロキサンを含有することが好ましい。(E)成分を配合することにより、本発明のスポンジ用シリコーンゴム組成物の作業性、押出特性、スポンジ特性等が向上する。
【0040】
【化2】


(式中、Rは同一又は異種のアルキル基又は水素原子、Rは同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基、mは1〜50の正数である。)
【0041】
ここで、Rは同一又は異種のアルキル基又は水素原子であり、上記一般式(III)で表されるオルガノシラン又はシロキサンは、分子鎖末端にアルコキシ基又は水酸基を有している。Rとしては水素原子又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が例示され、メチル基、エチル基、水素原子が好ましい。Rとしては、通常炭素数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリ−ル基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基、ビニル基が特に好ましい。
【0042】
mは1〜50の正数であり、1〜30の範囲のものが特に好ましい。mが50を超えると、大量に配合しないと添加効果が不十分となり、大量に配合するとゴム物性が低下することがある。
【0043】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部当たり0.1〜50質量部、特に0.5〜30質量部が好ましい。0.1質量部未満であると添加効果が不十分となることがあり、50質量部を超えると得られるゴム組成物に粘着性が発生したり、得られるスポンジ物性が低下することがある。
【0044】
本発明のスポンジ用シリコーンゴム組成物には、上記成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じ、酸化鉄やハロゲン化合物のような難燃性付与剤や耐熱性向上剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等のシリコーンゴム組成物における公知の添加剤を添加することができる。
【0045】
本発明のスポンジ用シリコーンゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等公知の混練機で混練りすることによって得ることができる。また、必要により熱処理(加熱下での混練り)してもよい。具体的には(A)、(B)成分を混練し、必要に応じて熱処理してから室温において(C)成分、(D)成分を添加する方法等好ましい。熱処理する場合、熱処理温度、時間は特に制限されないが、100〜250℃、特に140〜180℃で30分〜5時間程度行うことが好ましい。
【0046】
本発明のスポンジ用シリコーンゴム組成物の硬化条件は特に限定されず、型発泡や常圧熱気加硫等成形方法に応じて選択すればよいが、一般的には80〜500℃、特に100〜450℃で数秒〜1時間、特に5秒〜30分程度加熱硬化させることによりができる。常圧熱気加硫の場合は200℃以上、特に250℃以上でも異常発泡が起こらないため、200〜500℃、特に250〜450℃で効率よく成形することができる。
また、100〜250℃で10分〜10時間程度2次加硫を行ってもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の部は質量部を示す。常圧熱気発泡加硫時の異常発泡性試験方法、シリカの水分量測定方法について下記に示す。

常圧熱気加硫時の異常発泡性試験
スポンジの平均セル径を測定し、スポンジ中に平均セル径の10倍以上の大きなスポンジセルまたは空間が含まれているものを異常発泡とした。
シリカの水分量測定方法
シリカの25℃における重量と110℃/2時間加熱処理した後の重量の差より求めた。
【0048】
[実施例1]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度約8,000であるオルガノポリシロキサン100部、比表面積(BET法)180m2/g、比表面積(BET法)/比表面積(CTAB法)=1.06、水分含有量2.3%のシリカ(Zeosil172X(ローディアジャパン(株)製))40部、両末端にシラノール基を有し、粘度29cs(23℃)のジメチルポリシロキサン5部をニーダーで配合し、180℃で2時間熱処理を行いシリコーンゴムコンパウンドを作製した。
【0049】
得られたゴムコンパウンド100部に対し、アゾビスイソブチロニトリル1.0部、p-メチルベンゾイルパーオキサイド0.3部、2,4-ジクミルパーオキサイド0.9部を添加し、2本ロールで6mm厚のシートを作成し、これを350℃の内部温度に設定された縦型常圧加熱炉に60秒間入れ発泡架橋させた。作成したスポンジシートをカッターにて切断して内部のスポンジセル状態を調べた所、平均セル径は150μmであり、異常発泡がなく、均一であることを目視にて観察した。
スポンジの状態を表1に示す。
【0050】
[実施例2]
Zeosil172Xを乾燥させて含水量を減らしたシリカを用いた以外は実施例と同様にしてスポンジシートを成形した。
スポンジの状態を表1に示す。
【0051】
[実施例3]
実施例1において更に炭酸水素ナトリウム(試薬グレード)を1.0質量部を添加した以外は実施例1と同様にしてスポンジシートを成形した。
スポンジの状態を表1に示す。
【0052】
[比較例1]
Zeosil172Xの替わりにZeosil132(ローディアジャパン(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にしてスポンジシートを成形した。
スポンジの状態を表1に示す。
【0053】
[比較例2]
Zeosil172Xの替わりにZeosil132を乾燥させて含水量を減らしたシリカを用いた以外は実施例1と同様にしてスポンジシートを成形した。
スポンジの状態を表1に示す。
【0054】
[比較例3]
加熱炉の温度を280℃、架橋時間を90秒とした以外は比較例2同様にしてスポンジシートを成形した。
スポンジの状態を表1に示す。
【0055】
[比較例4]
加熱炉の温度を240℃、架橋時間を180秒とした以外は比較例2と同様にしてスポンジシートを成形した。
スポンジの状態を表1に示す。
【0056】
【表1】

*ほんのわずか異常発泡はあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合度が100以上であって、分子中に珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン
100質量部
(B)下記特性を有する湿式シリカ 3〜100質量部
比表面積(BET法) 50m/g以上
比表面積(BET法)/比表面積(CTAB法)=1.0〜1.3
水分含有量 4%以下
(C)50〜250℃において気体を発生する発泡剤 0.5〜50質量部
(D)硬化剤 有効量
を含有するスポンジ用シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(C)成分が有機アゾ系発泡剤及び/又は無機発泡剤である請求項1記載のスポンジ用シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
硬化剤が有機過酸化物、及び/又はオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒であることを特徴とする請求項1又は2記載のスポンジ用シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のスポンジ用シリコーンゴム組成物を熱風雰囲気中で発泡・架橋させることにより得られるシリコーンゴムスポンジ。

【公開番号】特開2006−143792(P2006−143792A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332724(P2004−332724)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】