説明

スマートカード及びスマートカード読取装置

【課題】スマートカードの接触要素は、耐摩耗性の高い表面を有すると同時に、スマートカードと読取装置との間の高い電気接触を確保することが必要である。
【解決手段】本発明は、スマートカードのカード接触要素は接触層でコーティングされた接触面を有し、接触面は読取装置接触要素と接触するように配置され、接触層は多元素物質であるスマートカードにおいて、多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び0を超える数字をq,y及びzとするような、化学式Mと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有し、さらに、化合物Mに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料を有することを特徴とするスマートカードを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートカードを読み取るスマートカード読取装置の読取装置接触要素と電気接触を確立するカード接触要素を有するスマートカードに関し、接触層でコーティングされた接触面を有する前記カード接触要素において、前記接触層は多元素物質であり、前記接触面は、前記読取装置接触要素と接触させるように配置されているものである。
【0002】
また、本発明はスマートカードを読み取る読取装置に関し、スマートカードのカード接触要素と電気接触を確立する読取装置接触要素を有する前記読取装置において、前記読取装置接触要素は接触層にコーティングされた接触面を有し、前記接触層は多元素物質であり、前記接触面は、前記読取装置接触要素と接触させるように配置されているものである。
【背景技術】
【0003】
今日、スマートカードは多くの分野で使用されており、その用途は拡大している。1つの例として、携帯電話におけるSIM(加入者識別モジュール)カードである。その他の使用例として、金融・銀行部門において、クレジットカードの磁気ストリップがスマートカードに置き換えられている。また、同様の使用例として、運輸部門における高速道路料金または公共交通機関の切符代としての支払い用途である。また、スマートカードは、ペイTVにおけるデジタル権利管理に使用されている。
【0004】
スマートカードは、通常、片面にチップを有するクレジットカードと同サイズのプラスティックカードであるが、しかし、例えば、SIMカードに組み込まれているように、実際のチップのサイズより、大幅に小さいものや多少小さいものも可能である。
【0005】
n+1AX化合物の研究は、"The Mn+1AXn Phase: A new class of solids", Barsoum, Progressive Solid State Chemistry, vol. 28, pp 201-281, 2000、"Magnetron sputtered epitaxial single-phase Ti3SiC2 thin films", Palmquist et al., Applied Physics Letters, 2002.81: p. 835、及び"Structural characterization of epitaxial Ti3SiC2 film", Seppanen et al., Proc. 53rdAnnual Meeting of the Scandinavian Society for Electron Microscopy, Tampere, Finland, 12-15 June, 2002 Ed. J. Keranen and K. Sillanpaa, University of Tampere, Finland, ISSN 1455-4518, 2002, pp. 142-143.に記載されている。
【非特許文献1】バルソウム(Barsoum), 「Mn+1AXn相:固体の新たな分野」(The Mn+1AXn Phase: A new class of solids), プログレッシブ ソリッド ステイト ケミストリ(Progressive Solid State Chemistry), 2000, vol. 28, pp 201-281
【非特許文献2】パルムクゥイスト、他(Palmquist et al.), 「マグネトロンスパッタのTi3SiC2のエピタキシャル単一相薄膜」(Magnetron sputtered epitaxial single-phase Ti3SiC2 thin films), アプライド フィジクス レター (Applied Physics Letters), 2002, 81, p. 835
【非特許文献3】セッパネン、他(Seppanen et al.), 「Ti3SiC2のエピタキシャル薄膜の構造的特性」(Structural characterization of epitaxial Ti3SiC2 film), 第53回スカンジナビア電子顕微鏡協会年次大会議事録 (Proc. 53rd Annual Meeting of the Scandinavian Society for Electron Microscopy), タンペレ、フィンランド、2002年6月12−15日(Tampere, Finland, 12-15 June, 2002) 編集者:ジェイ・ケラネン、ケイ・シッランパー、フィンランド・タンペレ大学 (Ed. J. Keranen and K. Sillanpaa, University of Tampere, Finland), ISSN 1455-4518, 2002, pp. 142-143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら多くのスマートカードは、認証やスマートカードに関連付けられた口座からの現金引出のために、繰り返し読取装置に挿入される。そのため、スマートカードの接触要素は、耐摩耗性の高い表面を有すると同時に、スマートカードと読取装置との間の高い電気接触を確保することが必要である。スマートカードの読取装置に関しても、同様の要求が課される。
【0007】
これを実現するために、金で接触面をコーティングして使用されるのが通常である。しかし、金を使用する欠点として価格が高いことが挙げられる。このため、スマートカード及びスマートカード読取装置に使用可能で、耐摩耗性を確保し、高い電気接触を有するが、コスト効率の高いコーティングに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、耐摩耗性を有する接触要素を備え、読取装置との高い電気接触を確保し、コスト効率の高い方法で製造可能なスマートカードを提供する。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、耐摩耗性を有する接触要素を備え、読取装置との高い電気接触を確保し、コスト効率の高い方法で製造可能なスマートカード読取装置を提供する。
【0010】
本発明に係るこれらの目的は、請求項1に記載のスマートカードを用いることで達成される。それらの好適な実施様態は、従属項である請求項2〜16に記載されている。
【0011】
上記の目的は、請求項17に記載の読取装置を用いることでも実現でき、従属項である請求項18〜24に記載されている。
【0012】
本発明のスマートカードにおいて、多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び0を超える数字を示すようなq,y及びzにより、化学式Mと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有する。また、多元素物質は、化合物Mに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料を有する。
【0013】
化合物の組成は、例えば、M0.2AX,M0.2AX0.1,MAX、またはMAXなどがある。
【0014】
「ナノ複合材料」とは、0.1nm〜1000nm程度の特有の大きさを有する、結晶、領域または構造からなる複合材料である。
【0015】
このような接触層を有することで、高い電気接触を確保しながら、極めて高い耐磨耗性を実現可能である。また、使用する多元素物質のコストは、金のコストに比べ低い。
【0016】
1つの実施形態において、多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び1,2,3またはそれより大きな数字を示すnにより、化学式Mn+1AXと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有する。また、多元素物質は、化合物Mn+1AXに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料(4)を有する。本発明に係る多元素物質のこれらの特定の形態は、耐磨耗性及び電気接触の観点から極めて良好な特性を得られることが示されている。
【0017】
ナノ複合材料は、M−A,A−X,M−A−X,X及びM−Xからなるグループから選択された少なくとも2つの相を有するのが好ましい。このようにして、接触層は、特に耐衝撃性を高め、接触抵抗を低減する。
【0018】
本発明に係る1つの実施様態は、遷移金属がチタン、Xが炭素、及びグループA元素がシリコン、ゲルマニウムまたは錫の少なくとも1つである。このような多元素物質により、非常に高い耐磨耗性と同時に、極めて低い接触抵抗も実現可能である。
【0019】
本発明に係る好適な実施形態によると、多元素物質はTiSiCであり、ナノ複合材料は、Ti−C,Si−C,Ti−Si−C,Ti−Si及びCからなるグループから選択された少なくとも1つの相を有する。
【0020】
ナノ複合材料は、少なくとも部分的にアモルファス状態またはナノ結晶状態にあることも可能であり、ナノ結晶領域と混ざり合ったアモルファス領域を有することも可能である。
【0021】
接触層は金属層を有することも可能である。
【0022】
金属層は、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニッケル、または前述の金属の少なくとも1つを有する合金のいずれも好適である。
【0023】
1つの実施形態において、金属層は、金属または金属化合物であり、金属化合物は酸化物、炭化物、窒化物またはホウ化物とすることが可能である。
【0024】
本発明に係るスマートカード読取装置において、多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び0を超える数字を示すようなq,y及びzにより、化学式Mと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有する。また、多元素物質は、化合物Mに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料を有する。このような接触層を有する読取装置は、極めて高い耐磨耗性持ち、またスマートカードに対して良好な電気接触を確保しながらも、金を接触層として使用した場合より低いコストで製造可能である。
【0025】
1つの実施形態において、多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び1,2,3またはそれより大きな数字を示すnにより、化学式Mn+1AXと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有する。また、多元素物質は、化合物Mn+1AXに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料(4)を有する。本発明に係る多元素物質のこれらの特定の形態は、耐磨耗性及び電気接触の観点から極めて良好な特性が得られることが示されている。
【0026】
ナノ複合材料は、M−A,A−X,M−A−X,X及びM−Xからなるグループから選択された少なくとも2つの相を有するのが好ましい。このようにして、接触層は、特に耐衝撃性を高め、接触抵抗を低減する。
【0027】
本発明に係る1つの実施様態は、遷移金属がチタン、Xが炭素、及びグループA元素がシリコン、ゲルマニウムまたは錫の少なくとも1つである。このような多元素物資により、非常に高い耐磨耗性と同時に、極めて低い接触抵抗も達成可能である。
【0028】
本発明に係る好適な実施形態によると、多元素物質はTiSiCであり、ナノ複合材料は、Ti−C,Si−C,Ti−Si−C,Ti−Si及びCからなるグループから選択された少なくとも1つの相を有する。
【0029】
ナノ複合材料は、少なくとも部分的にアモルファス状態またはナノ結晶状態にあることも可能であり、ナノ結晶領域と混ざり合ったアモルファス領域を有することも可能である。
【0030】
本発明のさらに詳細な説明を、本発明の今現在における好適な実施様態の例を示している添付された概略図を参照しながら行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1のスマートカードは、一般的な化学式Mn+1AXで表される組成を有し且つ化合物Mn+1AXに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなるナノ複合材料4(図2を参照)を含有する多元素物質の接触層でコーティングされた接触面3を有するチップ2を備える。たとえ、多元素物質が化学式Mn+1AXで表される組成に対応する原子に基づいていたとしても、Mn+1及びXが一般化学式で特定される割合の1/10から2倍と異なるように、異なる元素の割合は様々である。そのため、実施例のように、組成は、M0.2AX、M0.2AX0.1、MAXまたはMAXも可能であり、q,y及びzは0を超える数字を示す更に一般的な化学式Mに対応する。
【0032】
図3は、図1のスマートカードを読み取る読取装置を示している。読取装置7は、スマートカードを読み取るために挿入するスロット8を備える。スマートカード1がスロット8に挿入されると、チップ2は読取装置の接触要素9と接触する。スマートカード1のチップ2のように、読取装置7の接触要素9は、Mn+1AXとして説明され且つ化合物Mn+1AXに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなるナノ複合材料4を含有する多元素物質の接触層を有する接触面10を備える。スマートカードの場合と同様に、多元素物質の組成は多様であり、q,y及びzは0を超える数字を示す更に一般的な化学式Mに対応する。
【0033】
近年、一般的な化学式Mn+1AXの化合物は、良好な機械的及び電気的な特性を有していることが発見された。これらの化合物において、Mは遷移金属または遷移金属の組み合わせ、AはグループA元素またはグループA元素の組み合わせ、Xは炭素、窒素、または両方の組み合わせ、及びnは1,2,3またはそれより大きな数字である。グループA元素は、アルミニウム、シリコン、燐、硫黄、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、カドミウム、インジウム、錫、タリウム及び鉛である。遷移金属は、スカンジウム、チタン、ヴァナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム及びタンタルである。
【0034】
n+1AX化合物は、グループA元素の層を分けている遷移金属層の数により特徴づけられる。いわゆる211化合物は2つの遷移金属層を有し、312化合物は3つの遷移金属層を、413化合物は4つの遷移金属層を有する。最も一般的である211化合物の例では、TiAlC,TiAlN,HfPbC,NbAlC,(NbTi)AlC,TiAlN0.50.5,TiGeC,ZrSnC,TaGaC,HfSnC,TiSnC,NbSnC,ZrPbC及びTiPbC。312化合物は、TiAlC,TiGeC及びTiSiCの3種類のみが既知である。2種類の413化合物は、TiAlN及びTiSiCである。
【0035】
n+1AX化合物は、三元系、四元系またはそれより高い系も可能である。三元系は、3種類の元素を有する例えばTiSiCであり、四元系は、4種類の元素を有する例えばTiAlN0.50.5などである。高次な系は、弾性的、熱的、化学的、電気的に、二元系の多くの特性を持ち合わせる。
【0036】
読取装置7と同様に、スマートカード1の実施形態において、接触層の多元素物質はTiSiCであり、ナノ複合材料4はTi−C,Si−C,Ti−Si−C,Ti−Si及びCのナノ結晶5を含有する。各相の個々の量は、用途に応じて多様であり、いずれの場合にもこれらの相がすべて存在する必要はない。
【0037】
接触層の多元素物質は、さらに異なる組成を有することも可能である。例えば、Mn+1AX化合物に、グループA元素が複数の場合や炭素及び窒素の両方が存在してもよい。別の好適な多元素物質の1つの例は、TiSi0.5Sn0.5である。錫単体は接触層を非常に吸湿性の高い状態にしてしまい、シリコン単体ではチップ2に絶縁酸化物を形成するように酸化が起こるため、錫とシリコンとの組み合わせは有利な点がある。
【0038】
実施形態において、多元素物質は、アモルファス領域6と混ざり合ったナノ結晶5からなるナノ複合材料を有する図2aに示すような構造を備える。ナノ結晶5は、すべて同相または異相であることが可能である。
【0039】
別の実施形態において、多元素物質は、いくつかのナノ結晶がアモルファス層11またはナノ結晶層12に囲まれたナノ結晶5と混ざり合ったアモルファス領域6からなるナノ複合材料を有する図2bに示すような構造を備える。
【0040】
さらにもう1つの別の実施形態において、多元素物質は、ナノ結晶領域5からなるナノ複合材料4を有する図2cに示すような構造を備える。
【0041】
接触層の厚みは、好適には0.001μm〜1000μmの範囲内であり、摩擦係数は一般的に低く、通常0.01〜0.1である。
【0042】
その他の実施形態において、ナノ結晶は別の相からなる薄膜でコーティング可能である。
【0043】
ナノ結晶とアモルファス領域との間の分布は、上記に例示されたものと異なることも可能である。ナノ複合材料は、およそ全体的に結晶またはおよそ全体的にアモルファスであることが可能である。
【0044】
接触層は、例えば国際公開04/044263号において開示されている方法を用いて、物理気相成長法(PVD)または化学気相成長法(CVD)によりチップ2上に蒸着される。また、接触層は、無電解析出またはプラズマ溶射により電気的に蒸着される。また、多元素物質及びナノ複合材料の分離膜を形成すること及びスマートカード1のチップ2または読取装置7の接触要素9にこれを適用することは想達可能である。
【0045】
ナノ複合材料は、例えばM−A,A−X,M−A−XまたはXの1つ以上の相において、M,A及びXの元素の少なくとも1つを有する、少なくとも1つのM−X及びM−A−Xのナノ結晶及びアモルファス領域からなることが可能である。
【0046】
1つの実施形態において、ナノ複合材料は、炭化物または窒化物の単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系の個々の領域からなる。
【0047】
また、ナノ複合材料は、異なるMn+1AX相の組み合わせも可能である。
【0048】
接触層は、接触要素2,9全体を連続的に覆うのがよいが、不連続的でも可能である。
【0049】
実施形態において、接触層の多元素物質13は、図4に示されたように、薄い金属層14でコーティングされることも可能である。好適には、接触層の表面は金属的なように、金属層を備える。
【0050】
別の実施形態において、接触層は、図5に示されるように、金属層14と多元素層13とが交互になったサンドイッチ構造をすることも可能である。例えば、図示されているように、多元素層は、典型的な繰返し構造である多層構造の金属層で積層されている。
【0051】
更に別の実施形態において、多元素層はナノ結晶状態5の領域からなることも可能であり、また図6に示されるように、薄い金属層14でコーティング可能である。
【0052】
更に別の実施形態において、多元素層は、ナノ結晶状態の領域からなることも可能であり、また図7に示されるように、繰返し構造の金属層で積層可能である。
【0053】
金属は、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、レニウム、モリブデン、タングステン、ニッケルまたはこれらの金属の少なくとも1つとの合金が好適であるが、他の金属も有用である。
【0054】
他の実施形態に1おいて、例えば、必ずしも純金属でない層も、金属層として使用可能である。そのような金属層は、酸化物、炭化物、窒化物またはホウ化物とすることが可能な金属複合材料を含有する。複合材料は、ポリマー、有機材料または酸化物、炭化物、窒化物もしくはホウ化物のようなセラミックス材料からなることができる。
【0055】
また、M,A及びX元素と1つ以上の金属からなる多元素物質の合金を使用することも可能である。合金材料は、完全に一体化されているまたは析出の形態で存在することが可能である。使用される金属は、非炭化物形成金属であることが良い。好適には、0〜30%の金属を添加するのが良い。
【0056】
例えば金属層を有するもので、上記の型の金属層の厚さは、わずか1原子の層から1000μmの範囲が好適であり、さらに好適には、わずか1原子の層から5μmの範囲である。例えば、範囲は1nm〜1000μmが可能である。
【0057】
上記で言及した金属層は、多元素物質の粒または領域を覆うことが可能である。金属層と多元素物質の層とを組み合わせた全体の厚さは、一般的に0.0001μm〜1000μmである。
【0058】
多元素物質は、化学式Tin+1SiC+Cの化合物のような形態で、過剰な炭素を含有することができる。自由な炭素元素は接触層の表面に移動され、表面を酸化から防止すると同時に電気接触を向上する。
【0059】
摩擦、熱特性、機械的または/及び電気的特性のような特性を向上するために、似たような種類の接触層のドーピングは、リストのいずれかの化合物の1つまたは組み合わせを含有することが可能である。リストとは、単一のグループA元素、グループA元素の組み合わせ、Xは炭素、窒素またはその両方、M−Xのナノ複合材料、ナノ結晶及び/または例えばM−A,A−X,M−A−Xのような、1つまたはいくつかの相においてM,A及びX元素を有するアモルファス領域である。
【0060】
実施例において、接触層は、0〜50重量%の範囲内で、Mn+1AX化合物に対応する少なくとも1つの単一元素M,A,Xからなる。
【0061】
また、ナノ複合材料を有する多元素物質は、例えば、リードスイッチのコーティングなど、他の用途において使用されることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】クレジットカード形態における本発明のスマートカードの上面図である。
【図2a】アモルファス領域に混ざり合ったナノ結晶を持つナノ複合材料を有する多元素物質層の構造の概略図である。
【図2b】アモルファス領域と混ざり合い、ナノ結晶層及びアモルファス層を持つナノ結晶を有する多元素物質の別の構造の概略図である。
【図2c】ナノ結晶状態の領域を持つ多元素物質の層の別の構造の概略図である。
【図3】本発明に係る読取装置の斜視図である。
【図4】多元素物質層及び金属層の概略図である。
【図5】繰返し構造の金属層で積層された多元素物質の概略図である。
【符号の説明】
【0063】
1 スマートカード
2 カード接触要素
3,10 接触面
4 ナノ複合材料
5 ナノ結晶領域
6 アモルファス領域
7 読取装置
9 読取装置接触要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートカード(1)を読み取るスマートカード読取装置(7)の読取装置接触要素(9)と電気接触を確立するカード接触要素(2)を備え、前記カード接触要素(2)は接触層でコーティングされた接触面(3)を有し、前記接触面(3)は前記読取装置接触要素(9)と接触するように配置され、前記接触層は多元素物質であるスマートカードにおいて、
前記多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び0を超える数字をq,y及びzとするような、化学式Mと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有し、さらに、化合物Mに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料(4)を有することを特徴とするスマートカード。
【請求項2】
前記多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び1,2,3またはそれより大きな数字をnとするような、化学式Mn+1AXと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有し、さらに、化合物Mn+1AXに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料(4)を有することを特徴とする請求項1に記載のスマートカード。
【請求項3】
前記ナノ複合材料は、M−A,A−X,M−A−X,X及びM−Xからなるグループから選択された少なくとも2つの相を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスマートカード。
【請求項4】
前記遷移金属はチタン、Xは炭素、及び前記グループA元素はシリコン、ゲルマニウムまたは錫の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項5】
前記多元素物質はTiSiCであり、前記ナノ複合材料(4)は、Ti−C,Si−C,Ti−Si−C,Ti−Si及びCからなるグループから選択される少なくとも1つの相を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項6】
前記ナノ複合材料(4)は、少なくとも部分的にアモルファス状態にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項7】
前記ナノ複合材料(4)は、少なくとも部分的にナノ結晶状態にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項8】
前記ナノ複合材料(4)は、ナノ結晶領域(5)と混ざり合ったアモルファス領域(6)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項9】
前記接触層は、金属層からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項10】
前記金属層は、Au,Ag,Pd,Pt,Rh,Ir,Re,Mo,W,Niまたは前述した金属のいずれかの少なくとも1つとの合金であることを特徴とする請求項9に記載のスマートカード。
【請求項11】
前記金属層はいずれの金属または金属複合材料であり、前記複合材料は酸化物、炭化物、窒化物またはホウ化物とすることができることを特徴とする請求項9または10に記載のスマートカード。
【請求項12】
前記金属層はいずれの金属または金属複合材料であり、前記複合材料はポリマー、有機材料、または酸化物、炭化物、窒化物もしくはホウ化物のようなセラミックス材料であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項13】
前記多元素物質は、多層構造の金属層で積層されていることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項14】
前記多元素物質は、接触面が金属であるように前記金属層の膜を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項15】
前記接触層は、前記接触層の摩擦的、機械的、熱的及び電気的な特性を変更及び向上させるために、1つまたはいくつかの化合物または元素によりドープされることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項16】
前記接触層は、0〜50重量%の範囲内で、Mn+1AX化合物に対応する少なくとも1つの単一元素M,A,Xからなることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のスマートカード。
【請求項17】
スマートカード(1)を読み取る読取装置で、前記読取装置(7)は、スマートカード(1)のカード接触要素(2)と電気的な接触を確立する読取装置接触要素(9)を備え、前記読取装置接触要素(9)は、接触層でコーティングされた接触面(10)を有し、前記接触面(10)は、前記カード接触要素(2)と接触するように配置され、前記接触層は多元素物質である読取装置において、
前記多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをM、炭素、窒素またはその両方をX、及び0を超える数字をq,y及びzとするような、化学式Mと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有し、さらに、化合物Mn+1AXに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料(4)を有することを特徴とする読取装置。
【請求項18】
前記多元素物質は、遷移金属または遷移金属の組み合わせをM、グループA元素またはグループA元素の組み合わせをA、炭素、窒素またはその両方をX、及び1,2,3またはそれより大きな数字をnとするような、化学式Mn+1AXと表される炭化物または窒化物の少なくとも1つの組成を有し、さらに、化合物Mn+1AXに対応する原子に基づいた単一元素、二元系、三元系、四元系またはそれより高い系からなる少なくとも1つのナノ複合材料(4)を有することを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項19】
前記ナノ複合材料は、M−A,A−X,M−A−X,X及びM−Xからなるグループから選択された少なくとも2つの相を有することを特徴とする請求項17または18に記載の読取装置。
【請求項20】
前記遷移金属はチタン、Xは炭素、及び前記グループA元素はシリコン、ゲルマニウムまたは錫の少なくとも1つであることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載の読取装置。
【請求項21】
前記多元素物質はTiSiCであり、前記ナノ複合材料(4)は、Ti−C,Si−C,Ti−Si−C,Ti−Si及びCからなるグループから選択される少なくとも1つの相を有することを特徴とする請求項17〜20のいずれかに記載の読取装置。
【請求項22】
前記ナノ複合材料(4)は、少なくとも部分的にアモルファス状態にあることを特徴とする請求項17〜21のいずれかに記載の読取装置。
【請求項23】
前記ナノ複合材料(4)は、少なくとも部分的にナノ結晶状態にあることを特徴とする請求項17〜21のいずれかに記載の読取装置。
【請求項24】
前記ナノ複合材料(4)は、ナノ結晶領域(5)と混ざり合ったアモルファス領域(6)を有することを特徴とする請求項17〜23のいずれかに記載の読取装置。


【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−538838(P2008−538838A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507599(P2008−507599)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000475
【国際公開番号】WO2006/115451
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507342814)インパクト コーティングス アーベー (1)
【Fターム(参考)】