説明

スライドレール、線運動案内装置、及び線運動案内装置用の移動体

【課題】シンプルな構造とレールの動きの円滑さとを両立することができるスライドレールを提供する。
【解決手段】第二のレール2に、対向する一対の側壁部2aの内側面を形成し、一対の内側面のそれぞれに長手方向に伸びる転走部4を形成する。第一のレール1に第一の軸線の回りを回転可能な第一の車輪11を設ける。第一の車輪11は、第二のレール2の上側の内側面の転走部4を転がり運動する。さらに第一のレール1に第二の軸線の回りを回転可能な第二の車輪12を設ける。第二の車輪12は、第二のレール2の下側の内側面の転走部4を転がり運動する。第一の軸線の方向から見た第一の車輪11の外形が円形に形成され、第二の軸線の方向から見た第二の車輪12の外形が円形に形成される。第一の車輪11と第二の車輪12とが連動して回転できるように、第一の車輪11と第二の車輪12とが互いに接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具、家具の引出し等の開閉を滑らかにするためのスライドレール、案内対象の線運動(直線運動又は曲線運動)を案内する線運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドレールは、建具の開閉、家具の引出しの開閉を滑らかにするのに欠かせない部品である。現在では、建具や家具の分野に限られず、産業用機械に至る幅広い分野で使用されている。
【0003】
スライドレールは、本体側に取り付けられるアウターレール、及び引出し側に取り付けられるインナーレールを基本的な構成要素とする。インナーレールはアウターレールに対して長手方向にスライド可能に組み付けられる。アウターレールに対するインナーレールのスライドを円滑にするために、アウターレールとインナーレールとの間には、ボール、ころ等が介在される。
【0004】
ところで、従来のスライドレールの構造は、三つの基本類型、すなわちテレスコープ型、スライドパック型、ローラ型に分類することができる。三つの基本類型の詳細は以下のとおりである。
【0005】
図8に示すように、テレスコープ型のスライドレールは、U字状の断面を持つアウターレール81と、アウターレール81の一対の内側面間に挟まれ、同様にU字状の断面を持つインナーレール82と、を備える。アウターレール81の内側面、及びインナーレール82の外側面には、ボール83が転がり運動する転走部が長手方向に沿って形成される。アウターレール81とインナーレール82との間には、多数のボール83が転がり運動可能に介在される。多数のボール83は図示しないリテーナによって回転可能に保持される。
【0006】
アウターレール81に対してインナーレール82が相対的に移動すると、これらの間に介在される多数のボール83が転がり運動する。多数のボール83の移動量はインナーレール82の移動量の1/2になる。リテーナの長手方向の移動量は多数のボール83の移動量と等しく、インナーレール82の移動量の1/2である。このテレスコープ型のスライドレールは、例えば特許文献1に開示されている。
【0007】
図9に示すように、スライドパック型のスライドレールは、インナーレール84に多数のボール85を循環させるためのサーキット状のボール循環路を形成してなる。アウターレール86に対してインナーレール84をスライドさせると、多数のボール85がアウターレール86とインナーレール84との間を転がり運動すると共に、インナーレール84のサーキット状のボール循環路を循環する。多数のボール85を循環させるボール循環路を設けることにより、テレスコープ型のスライドレールに比較してインナーレール84のストロークを大きくすることができる。このスライドパック型のスライドレールは、例えば特許文献2に開示されている。
【0008】
図10に示すように、ローラ型のスライドレールは、アウターレール87とインナーレール88との間に大径のローラ89及び小径のローラ90を介在させ、大径のローラ89及び小径のローラ90の回転によりインナーレール88のスライドを円滑にさせたものである。アウターレール87は断面がU字状に形成される。アウターレール87の一端には車軸91を介して小径のローラ90が回転可能に取り付けられる。インナーレール88は断面L字形に形成される。インナーレール88は小径のローラ90によって案内される。インナーレール88の一端には、車軸92を介して大径のローラ89が回転可能に取り付けられる。大径のローラ89はアウターレール87の上下一対の内側面のいずれか一方を転がり運動する。
【0009】
インナーレール88を引き出すと、インナーレール88に取り付けられる大径のローラ89がアウターレール87の下側の内側面87aを転がり運動する。それと共に、アウターレール87に取り付けられる小径のローラ90が回転しながらインナーレール88を案内する。所定量以上インナーレール88が引き出されると、引出しの自重により、インナーレール88が小径のローラ90を支点としてシーソーのように揺動し、インナーレールの先端の大径のローラ89がアウターレール87の上側の内側面87bに接するようになる。すなわち、大径のローラ89はアウターレール87の下側の内側面87aに接した状態から上側の内側面87bに接した状態に切り替わる。その後、大径のローラ89がアウターレール87の上側の内側面87bを転がり運動する。このローラ型のスライドレールは、構造が簡単で廉価なので、家具の引出しに最も一般的に用いられている。ローラ型のスライドレールは、例えば特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭64−21635号公報
【特許文献2】特開平4−119218号公報
【特許文献3】実公平7−16348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の類型のスライドレールは、それぞれ以下のような一長一短の特徴を持つ。
【0012】
テレスコープ型のスライドレールにあっては、多数のボール83が転がり運動するので、インナーレール82の動きが円滑であるという長所を持つ。しかし、頻繁にインナーレール82をストロークさせると、リテーナがずれるという短所を持つし、製造にあたってアウターレール81やインナーレール82の加工精度を要するという短所も持つ。
【0013】
スライドパック型のスライドレールにあっては、やはり多数のボール85の転がり運動を利用するので、インナーレール84の動きが円滑であるという長所を持つ。しかし、ボール循環路を形成するためのインナーレール84の構造が複雑になるという短所を持つ。
【0014】
ローラ型のスライドレールにあっては、構造が簡単で廉価に提供できるという長所を持つ。しかし、テレスコープ型やスライドパック型のスライドレールに比べてインナーレール88の動きに滑らかさが得られないという短所を持つ。特に、インナーレール88の大径のローラ89がアウターレール87の上下一対の内側面87a,87bのいずれか一方にのみ接触する構造となっているので、大径のローラ89とアウターレール87の上下一対の内側面87a,87bとの間に隙間が発生するのは避けられない。この隙間が引出しをがたつかせるという短所も持つし、大径のローラ89はアウターレール87の下側の内側面87aに接した状態から上側の内側面87bに接した状態に切り替わるので、切り替わった瞬間に大径のローラ89の回転が反転し、インナーレール88を円滑に引き出すことができない。
【0015】
本発明は、スライドレールの類型に属さない新たな類型のスライドレールを提供するものであり、具体的には、シンプルな構造とレールの動きの円滑さとを両立することができるスライドレールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、第一のレールが第二のレールに対して、第二のレールの長手方向に相対的に移動可能なスライドレールであって、前記第二のレールは、対向する一対の内側面を有すると共に、前記一対の内側面のそれぞれに前記長手方向に伸びる転走部を有し、前記第一のレールは、第一の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第二のレールの一方の内側面の転走部を転がり運動する第一の車輪と、第二の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第二のレールの他方の内側面の転走部を転がり運動する第二の車輪と、を有し、前記第一の軸線の方向から見た前記第一の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第二の軸線の方向から見た前記第二の車輪の外形が円形に形成され、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが連動して回転できるように、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが互いに接するスライドレールである。
【0017】
本発明の他の態様は、移動体がレールに対してレールの長手方向に相対的に移動可能な線運動案内装置であって、前記レールは、対向する一対の内側面を有すると共に、前記一対の内側面のそれぞれに前記長手方向に伸びる転走部を有し、前記移動体は、第一の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの一方の内側面の転走部を転がり運動する第一の車輪と、第二の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの他方の内側面の転走部を転がり運動する第二の車輪と、を有し、前記第一の軸線の方向から見た前記第一の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第二の軸線の方向から見た前記第二の車輪の外形が円形に形成され、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが連動して回転できるように、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが互いに接する線運動案内装置である。
【0018】
本発明のさらに他の態様は、レールの長手方向に相対的に移動可能にレールに組み付けられる線運動案内装置用の移動体であって、前記レールは、対向する一対の内側面を有すると共に、前記一対の内側面のそれぞれに前記長手方向に伸びる転走部を有し、前記移動体は、第一の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの一方の内側面の転走部を転がり運動する第一の車輪と、第二の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの他方の内側面の転走部を転がり運動する第二の車輪と、を有し、前記第一の軸線の方向から見た前記第一の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第二の軸線の方向から見た前記第二の車輪の外形が円形に形成され、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが連動して回転できるように、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが互いに接する線運動案内装置用の移動体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、第二のレールに対して第一のレールを移動させると、第二のレールの一方の内側面の転走部を転がる第一の車輪が例えば時計方向に回転し、第二のレールの他方の内側面の転走部を転がる第二の車輪が例えば反時計方向に回転する。第一の車輪と第二の車輪との接触点では、第一の車輪と第二の車輪とが反対方向に回転するので、滑りの少ない転がり運動が得られる。第一の車輪及び第二の車輪が、がたつきが無い状態で合理的に回転するので、第二のレールに対して第一のレールを円滑に移動させることができる。さらに、第一のレールに作用する荷重は第一の車輪及び第二の車輪の両方で支持されるので、耐荷重性能も向上させることができる。
【0020】
本発明の他の態様、及び本発明のさらに他の態様のように、レールに対して移動体を移動させても同様の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施形態のスライドレールを示す図(図中(a)は側面図を示し、図中(b)は正面図を示す)
【図2】、第一及び第二の車輪が第二のレールの一対の内側面を移動するときの概念図
【図3】第一及び第二の車輪が第二のレールの一対の内側面を移動するときの概念図(図中(a)は下方向の荷重が作用する状態を示し、図中(b)は上方向の荷重が作用する状態を示す)
【図4】本発明の第二の実施形態のスライドレールを示す図(図中(a)は側面図を示し、図中(b)は正面図を示す)
【図5】本発明の第三の実施形態のスライドレールを示す図(図中(a)は側面図を示し、図中(b)は正面図を示す)
【図6】傾き調節機構の側面図
【図7】本発明の一実施形態の線運動案内装置を示す図
【図8】テレスコープ型のスライドレールを示す概念図
【図9】スライドパック型のスライドレールを示す概念図
【図10】ローラ型のスライドレールを示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下添付図面に基づいて本発明の一実施形態におけるスライドレールを詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施形態のスライドレールを示す。図1(a)はスライドレールの側面図を示す、図1(b)はスライドレールの正面図を示す。
【0023】
図1に示すように、スライドレールは細長く伸びる第一のレール1及び第二のレール2を備える。第一及び第二のレール1,2の長さは略等しい。第二のレール2の正面形状は、U字形状に形成され、底壁部2bと、底壁部2bの幅方向(図1の上下方向)の両端から直交する方向に突出する一対の側壁部2aと、を有する。上側の側壁部2aの突出量は下側の側壁部2aの突出量よりも大きい。一対の側壁部2aの内側面のそれぞれには、転走部として、長手方向に伸びる車輪転走部4が側壁部2aの全長に渡って形成される。
【0024】
第一のレール1の正面形状は、T字形状に形成され、第二のレール2の底壁部2bと平行な底壁部1bと、底壁部1bの上端から第二のレール2に向かって直角に折り曲がる上壁部1aと、を有する。上壁部1aの下面には、転走部として、長手方向に伸びるローラ転走部5が形成される。
【0025】
第二のレール2の一端(図中右端)には、軸6を介して大径のローラ7が回転可能に設けられる。軸6は、第一のレール1の底壁部1bに固定される。ローラ7と第二のレール2の側壁部2aとの間にはすきまが空く。ローラ7は第一のレール1の上壁部1aに接触する。軸6の軸線方向からみたローラ7の外形は円形に形成される。ローラは樹脂、ゴム等の弾性体からなる。ローラ7は、第一のレール1の上壁部1aを支持し、回転しながら第一のレール1がスライドするのを案内する。
【0026】
第一のレール1の、大径のローラ7とは反対側の一端(図中左端)には、第一及び第二の車輪11,12が回転可能に設けられる。第一のレール1には、上下方向(第一のレール1が移動する方向と直交する方向)に第一及び第二の軸11a,12aが並べられる。第一の軸11aは、第一の車輪11を回転可能に支持し、第二の軸12aは第二の車輪12を回転可能に支持する。第一及び第二の車輪11,12の外形は、互いの半径が等しい円形に形成される。第一の軸11aと第二の軸12aとの間の距離は、第一及び第二の車輪11,12の直径に等しく設定される。第一の車輪11と第二の車輪12とは外周面の一点で互いに接する。第一及び第二の車輪11,12は樹脂、ゴム等の弾性体からなる。
【0027】
第一のレール1の上壁部1aの一端は、切り欠かれ、切り欠かれた部分1a−1から第一の車輪11が露出する。第一の車輪11は第二のレール2の上側の側壁部2aの車輪転走部4に接する。第二の車輪12は第二のレール2の下側の側壁部2aの車輪転走部4に接する。
【0028】
スライドレールを閉じた状態から開いた状態にする(図1に示す閉じた状態から第一のレール1を図中右方向に移動させる)と、第一及び第二の車輪11,12が第二のレール2の一対の側壁部2aの車輪転走部4を転がり運動する。これと同時に、第一のレールの上壁部1aのローラ転走部5に接するローラ7が軸6の回りを回転する。
【0029】
図2は、第一及び第二の車輪11,12が第二のレール2の一対の側壁部2aの内側面を移動するときの概念図を示す。第一のレール1が図中右方向に移動すると、第一の車輪11は第二のレール2の上側の側壁部2aの内側面に接しているので、反時計方向に回転する。一方、第二の車輪12は第二のレール2の下側の側壁部2aの内側面に接しているので、時計方向に回転する。また、第一及び第二の車輪11,12は互いに接しているので、連動して反対方向に回転する。第一及び第二の車輪11,12の接触点は、転がり接触になる。第一及び第二の車輪11,12が合理的に回転するので、第一のレール1が第二のレール2に対してがたつきのない状態で円滑にスライドする。
【0030】
第一のレール1に作用する荷重は第一及び第二の車輪11,12の両方で支持されるので、耐荷重性能も向上させることができる。
【0031】
図3は、第一及び第二の車輪11,12の合算した高さに比べて、第二のレール2の一対の側壁部2aの内側面間の幅が僅かに広い場合を示す。図3(a)は、第一のレール1に下方向の荷重Wが作用し、第一の車輪11と第二のレール2の上側の側壁部2aの内側面との間にすきまが生じた状態を示す。図3(b)は、第一のレール1に上方向の荷重Wが作用し、第二の車輪12と第二のレール2の下側の側壁部2aの内側面との間にすきまが生じた状態を示す。例えば、スライドレールを引出しの開閉に使用した場合、引出しの引出し量に応じて第一のレール1に作用する荷重Wが下方向から上方向に変化する。
【0032】
図3(a)に示すように、第一のレール1の第二の車輪12が第二のレール2の下側の内側面に接した状態で、第一のレール1が図中右方向に移動すると、第二の車輪12が時計方向に回転する。第一の車輪11は、第二のレール2の上側の側壁部2aの内側面には接しないものの、第二の車輪12に接するので、第二の車輪12に連動して反時計方向に回転する。
【0033】
一方、図3(b)に示すように、第一のレール1の第一の車輪11が第二のレール2の上側の側壁部2aの内側面に接した状態で、第一のレール1が図中右方向に移動すると、第一の車輪11が反時計方向に回転する。第二の車輪12は、第二のレール2の下側の側壁部2aの内側面に接しないものの、第一の車輪11に接しているので、時計方向に回転する。
【0034】
図3(a)及び図3(b)に示すように、第二の車輪12が第二のレール2の下側の側壁部2aの内側面に接している状態から、第一の車輪11が第二のレール2の上側の側壁部2aの内側面に接している状態に変化しても、第一の車輪11及び第二の車輪12の回転方向は変化しない。したがって、第一のレール1に作用する荷重の方向が逆になっても、第一のレール1を円滑に移動させることができる。
【0035】
これに対して、図10に示す従来のローラ型のスライドレールにあっては、大径のローラ89がアウターレール87の下側の内側面87aに接している状態から上側の内側面87bに接する状態に変化すると、インナーレール88の移動方向と大径のローラ89の回転方向が逆となり、大径のローラ89の回転がインナーレール88の移動を妨げてしまう。
【0036】
図4は、本発明の第二の実施形態のスライドレールを示す。この実施形態のスライドレールは、細長く伸びる第二のレール22、及び第二のレール22の一対の側壁間に組み込まれる第一のレール21を備える。第二のレール22の長さは第一のレール21の長さよりも長い。第二のレール22の正面形状は、U字形状に形成され、底壁部22bと、底壁部22bの幅方向(図4の上下方向)の両端から直交する方向に突出する一対の側壁部22aと、を有する。一対の側壁部22aの内側面のそれぞれには、転走部として、長手方向に伸びる車輪転走部24が側壁部22aの全長に渡って形成される。
【0037】
第一のレール21は、板状に形成される。上記第一の実施形態のスライドレールと同様に、第一のレール21の一端には、第一及び第二の車輪31,32が回転可能に設けられる。第一の車輪31は第二のレール22の上側の側壁部22aの車輪転走部24を転がり運動する。第二の車輪32は第二のレール22の下側の側壁部22aの車輪転走部24を転がり運動する。第一及び第二の車輪31,32の外形は、半径が等しい円形に形成される。第一の車輪31と第二の車輪32とは互いに接する。第一及び第二の車輪31,32は樹脂、ゴム等の弾性体からなる。
【0038】
第一のレール21の他端には、第一の車輪31と接触しないように、第三の車輪33が設けられる。第三の車輪33は、第一の軸31aから第一のレール21の移動方向に離れた第三の軸33aの回りを回転可能に設けられ、第二のレール22の上側の側壁部22aの車輪転走部24を転がり運動する。
【0039】
第三の車輪33の下方には、第四の車輪34が設けられる。第四の車輪34は、第二の車輪32と接触しないように、第二の軸32aから第一のレール21の移動方向に離れた第四の軸34aの回りを回転可能に設けられる。第四の車輪34は、第二のレール22の下側の側壁部22aの車輪転走部24を転がり運動する。
【0040】
第三及び第四の車輪33,34の外形は、半径が等しい円形に形成される。第三の軸33aと第四の軸34aとの間の距離は、第三及び第四の車輪33,34の直径に等しく設定され、第三の車輪33と第四の車輪34とは互いに接する。第三及び第四の車輪33,34は樹脂、ゴム等の弾性体からなる。
【0041】
スライドレールを閉じた状態から開いた状態にする(図4に示す閉じた状態から第一のレール21を図中右方向に移動させる)と、第一及び第三の車輪31,33が第二のレール22の上側の側壁部22aの車輪転走部24を転がり運動する。そして、第二及び第四の車輪32,34が第二のレール22の下側の側壁部22aの車輪転走部24を転がり運動する。第三及び第四の車輪33,34は互いに接しているので、連動して反対方向に回転する。第三及び第四の車輪33,34は、第一及び第二の車輪31,32と同様に、合理的に回転するので、第一のレール21が第二のレール22に対してがたつきのない状態で円滑にスライドする。
【0042】
図5は、本発明の第三の実施形態のスライドレールを示す。スライドレールは細長く伸びる第一のレール41及び第二のレール42を備える。第一及び第二のレール41,42の長さは互いに略等しい。第二のレール42の正面形状は、U字形状に形成され、底壁部42bと、底壁部42bの幅方向(図5の上下方向)の両端から直交する方向に突出する一対の側壁部42aと、を有する。上側の側壁部42aの突出の突出量は下側の側壁部42aの突出量よりも大きい。一対の側壁部42aの内側面のそれぞれには、転走部として、長手方向に伸びる車輪転走部44が側壁部42aの全長に渡って形成される。
【0043】
第一のレール41の正面形状は、U字形状に形成され、底壁部41bと、底壁部41bの幅方向(図5の上下方向)の両端から直交する方向に突出する一対の側壁部41aと、を有する。一対の側壁部41aの内側面のそれぞれには、転走部として、長手方向に伸びる車輪転走部46が側壁部41aの全長に渡って形成される。
【0044】
第一のレール41の一端(図中左端)には、第一及び第二の車輪51,52が回転可能に設けられる。第一の車輪51は第二のレール42の上側の側壁部42aの車輪転走部44を転がり運動する。第二の車輪52は第二のレール42の下側の側壁部42aの車輪転走部44を転がり運動する。第一及び第二の車輪51,52の外形は、互いの半径が等しい円形に形成される。第一の車輪51と第二の車輪52とは互いに接する。第一のレール41の側壁部の41a一端は、切り欠かれ、切り欠かれた部分41a−1から第一の車輪51が露出する。第一及び第二の車輪51,52は樹脂、ゴム等の弾性体からなる。
【0045】
第二のレール42の一端(図中右端)には、第一及び第二の車輪53,54が回転可能に設けられる。第一の車輪53は第一のレール41の上側の側壁部41aの車輪転走部46を転がり運動する。第二の車輪54は第一のレール41の下側の側壁部41aの車輪転走部46を転がり運動する。第一及び第二の車輪53,54の外形は、互いの半径が等しい円形に形成される。第一の車輪53と第二の車輪54とは互いに接する。第二のレール42の側壁部42aの一端は、切り欠かれ、切り欠かれた部分42a−1から第二の車輪54が露出する。第一及び第二の車輪53,54は樹脂、ゴム等の弾性体からなる。
【0046】
図6は、第一のレールに、第一の軸61aと第二の軸62aとを結んだ線Lの傾きを調節する傾き調節機構67を設けた例を示す。第一のレール(図示せず)には、第一及び第二の車輪61,62が収容される扁平な枠体66が組み込まれる。枠体66は図示しない第一のレールに含まれる。第一の車輪61を回転可能に支持する第一の軸61a、及び第二の車輪62を回転可能に支持する第二の軸62aは連結プレート63に結合されている。この連結プレート63は枠体66に、第一の軸61aの回りを回転可能に収容される。第一の軸61aは枠体66に結合される。枠体66には、円弧状に伸びる長孔66aが形成される。この長孔66aに第二の軸62aが嵌まる。連結プレート63は、長孔66aに沿って第一の軸61aを中心にして回転できるようになっている。
【0047】
傾き調節機構67は、枠体66に形成される雌ねじ65と、雌ねじ65に螺合する雄ねじ64と、を備える。雄ねじ64を回すと、雄ねじ64が第一のレールの移動方向に移動する。雄ねじ64の先端は連結プレート63に接触しているので、連結プレート63の傾き角度が調節される。
【0048】
第一の軸61aと第二の軸62aとを結んだ線Lの傾きを調節する傾き調節機構67を設けることにより、第二のレール68の一対の内側面68a間の距離にばらつきがあっても、第一及び第二の車輪61,62を第二のレール68の一対の内側面68aに接触させることができる。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態の線運動案内装置を示す。線運動案内装置は、断面U字形状のレール72と、レール72に長手方向にスライド可能に嵌められる移動体としてのスライドパック73を備える。レール72の形状は、上記図6に示す第二のレール68と同様に、互いに対向する一対の内側面72aを有する。一対の内側面72aには、車輪が転走する車輪転走部が形成される。
【0050】
スライドパック73の構成は、図4に示す第一のレール21と略同一であり、第一ないし第四の車輪74〜77を備える。レール72の長さが短い点が、図4に示す第一のレールと異なるが、その他の点は図4に示す第一のレール21と同一である。
【0051】
線運動案内装置のレール72は、固定側に取り付けられ、スライドパック73は、案内対象側に取り付けられる。線運動案内装置は、案内対象の直線運動又は曲線運動(両者を合わせて線運動という)を案内する。このスライドパック73に案内対象としてレールが取り付けられると、スライドレールになる。
【0052】
スライドパック73がレール72の長手方向に移動するとき、スライドパック73の第一の車輪74がレール72の上側の内側面72aを転がり運動し、第二の車輪75が下側の内側面72aを転がり運動する。第一及び第二の車輪74,75は接しているので、これらは連動して反対方向に回転する。同時に、スライドパック73の第三の車輪76がレール72の上側の内側面72aを転がり運動し、第四の車輪77が下側の内側面72aを転がり運動する。第三及び第四の車輪76,77は接しているので、これらは連動して反対方向に回転する。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更することができる。例えば、第一及び第二のレールにさらに第三のレールを組み合わせ、これら三つのレールが重畳的に伸縮するようにしてもよい。
【0054】
第一及び第二のレールは直線状に伸びるのに限られることはなく、円弧状等に曲がっていてもよい。二つで一組の車輪ユニットはレールに二点で接触するので、レールが曲がっていても、レールに沿って移動することができる。
【0055】
上記実施形態では、第一の車輪の外径が第二の車輪の外径と同一であるが、異なっていてもよい。第一の車輪の外径が第二の車輪の外径よりも小さくても、第一の車輪の回転数が大きくなるので、第一の車輪と第二の車輪の接触点は転がり接触になる。
【符号の説明】
【0056】
1…第一のレール
2…第二のレール
4…車輪転走部(転走部)
11…第一の車輪
12…第二の車輪
21…第一のレール
22…第二のレール
24…車輪転走部(転走部)
31…第一の車輪
32…第二の車輪
33…第三の車輪
34…第四の車輪
41…第一のレール
42…第二のレール
44…車輪転走部(転走部)
46…車輪転走部(転走部)
51…第一の車輪
52…第二の車輪
53…第一の車輪
54…第二の車輪
61…第一の車輪
62…第二の車輪
67…傾き調節機構
68…第二のレール
72…レール
73…スライドパック(移動体)
74…第一の車輪
75…第二の車輪
76…第三の車輪
77…第四の車輪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のレールが第二のレールに対して、第二のレールの長手方向に相対的に移動可能なスライドレールであって、
前記第二のレールは、対向する一対の内側面を有すると共に、前記一対の内側面のそれぞれに前記長手方向に伸びる転走部を有し、
前記第一のレールは、
第一の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第二のレールの一方の内側面の転走部を転がり運動する第一の車輪と、
第二の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第二のレールの他方の内側面の転走部を転がり運動する第二の車輪と、を有し、
前記第一の軸線の方向から見た前記第一の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第二の軸線の方向から見た前記第二の車輪の外形が円形に形成され、
前記第一の車輪と前記第二の車輪とが連動して回転できるように、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが互いに接するスライドレール。
【請求項2】
前記第一のレールはさらに、
前記第一の車輪と接触しないように、前記第一の軸線から前記第一のレールの移動方向に離れた第三の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第二のレールの前記一方の内側面の転走部を転がり運動する第三の車輪と、
前記第二の車輪と接触しないように、前記第二の軸線から前記第一のレールの移動方向に離れた第四の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第二のレールの前記他方の内側面の転走部を転がり運動する第四の車輪と、を有し、
前記第三の軸線の方向から見た前記第三の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第四の軸線の方向から見た前記第四の車輪の外形が円形に形成され、
前記第三の車輪と前記第四の車輪とが連動して回転できるように、前記第三の車輪と前記第四の車輪とが互いに接することを特徴とする請求項1に記載のスライドレール。
【請求項3】
前記第一のレールは、対向する一対の内側面を有すると共に、前記一対の内側面のそれぞれに前記長手方向に伸びる転走部を有し、
前記第二のレールはさらに、第一の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第一のレールの一方の内側面の転走部を転がり運動する第一の車輪と、
第二の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記第一のレールの他方の内側面の転走部を転がり運動する第二の車輪と、を有し、
前記第一の軸線の方向から見た前記第一の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第二の軸線の方向から見た前記第二の車輪の外形が円形に形成され、
前記第一の車輪と前記第二の車輪とが連動して回転できるように、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが互いに接することを特徴とする請求項1に記載のスライドレール。
【請求項4】
前記第一のレールには、前記第一の車輪の前記第一の軸線及び前記第二の車輪の前記第二の軸線の方向から見て、前記第一の軸線と前記第二の軸線とを結んだ線の傾きを調節する傾き調節機構が設けられることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のスライドレール。
【請求項5】
移動体がレールに対してレールの長手方向に相対的に移動可能な線運動案内装置であって、
前記レールは、対向する一対の内側面を有すると共に、前記一対の内側面のそれぞれに前記長手方向に伸びる転走部を有し、
前記移動体は、
第一の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの一方の内側面の転走部を転がり運動する第一の車輪と、
第二の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの他方の内側面の転走部を転がり運動する第二の車輪と、を有し、
前記第一の軸線の方向から見た前記第一の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第二の軸線の方向から見た前記第二の車輪の外形が円形に形成され、
前記第一の車輪と前記第二の車輪とが連動して回転できるように、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが互いに接する線運動案内装置。
【請求項6】
レールの長手方向に相対的に移動可能にレールに組み付けられる線運動案内装置用の移動体であって、
前記レールは、対向する一対の内側面を有すると共に、前記一対の内側面のそれぞれに前記長手方向に伸びる転走部を有し、
前記移動体は、
第一の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの一方の内側面の転走部を転がり運動する第一の車輪と、
第二の軸線の回りを回転可能に設けられ、前記レールの他方の内側面の転走部を転がり運動する第二の車輪と、を有し、
前記第一の軸線の方向から見た前記第一の車輪の外形が円形に形成されると共に、前記第二の軸線の方向から見た前記第二の車輪の外形が円形に形成され、
前記第一の車輪と前記第二の車輪とが連動して回転できるように、前記第一の車輪と前記第二の車輪とが互いに接する線運動案内装置用の移動体。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−13204(P2012−13204A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152990(P2010−152990)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)
【Fターム(参考)】