説明

スライド型携帯端末

【課題】ネジの頭部や先端が露呈しないスライド部を有するスライド型携帯端末を提供する。
【解決手段】第1プリント基板を有する第1筐体と、第2プリント基板を有する第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的にスライド可能に連結するスライド部と、前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間を電気的に接続する同軸状の線材と、前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間を電気的に接続する帯状の可撓性プリント基板と、を備え、前記第1筐体と前記第2筐体が重なった状態において、前記線材は、前記可撓性プリント基板の内側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドレール部に摺動可能にベース部が設けられ、ベース部をガイドレール部の摺動端に向けて付勢する付勢部材を備えた携帯電話やPDA、カメラ、ノート型パソコン等のスライド型携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話が多数開発され使用されているが、この携帯電話には、単純な棒状を呈するストレート型の他に、回転型ヒンジ装置を介して開閉可能な折畳型やスライド装置を介して開閉可能なスライド型等が各種開発されている。
【0003】
このスライド型携帯電話は、第1の筐体と第2の筐体を上下方向に重ね合わせた状態で相対的にスライドさせるスライド機構を有し、このスライド機構は、第1の筐体と第2の筐体のいずれか一方のものに取り付けたスライドケースと、そのスライドケースに対し摺動可能に取り付けられ前記第1の筐体と第2の筐体のいずれか他方のものに取り付けられたスライダーと、このスライダーと前記スライドケースとの間に設けられ前記スライダーを所定の摺動位置から閉方向及び開方向へ摺動付勢させる弾性手段とで構成されている。
【0004】
さらに、このスライドケースには複数の雌ネジ部が設けられ、第1の筐体に取り付けられる雄ネジ部によって、スライド機構が第1筐体に装着されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、第1の筐体と第2の筐体を上下方向に重ね合わせた状態で相対的にスライドさせるスライド機構を備えたスライド型携帯電話は、第2の筐体の下端にアンテナが配置されている(例えば、特許文献2参照)。
また、この種の携帯端末はファッション性を向上させるため、ネジの頭部や先端を隠すために専用部材で覆うことで、デザイン性を向上させる場合が多い(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−210649号公報
【特許文献2】特開2005−244679号公報
【特許文献3】特開2002−305569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなスライド機構にあっては、スライド型携帯電話を手に持っているときに不意に開いてしまったり、また伸長させて開いた状態でメールや通話をしているときに容易に閉じることがない様、所望の付勢力が必要なので、弾性手段が内装される。この弾性手段を備えたスライド機構は、上述したように、ネジを用いて第1の筐体に装着される。
【0008】
このようなスライド型携帯電話を開状態にした場合、第1の筐体に装着されるスライドケースの雌ネジ部が露呈し、この雌ネジ部には雄ネジ部の頭部または先端のいずれかが露出する。
従って、特許文献1で開示されたスライド機構をスライド型携帯端末に使用する場合、デザイン性、ファッション性を向上させるためには、特許文献3で開示された目隠し蓋(専用部材)を追加するなどして雌ネジ部を隠す必要があり、結果、コストアップを招く。
【0009】
さらに、この専用部材を設けようとした場合、専用部材はスライド動作とともに変位する弾性部材との干渉を回避しなければ、スムーズな摺動動作が阻害される。専用部材が占有する面積や高さが大きいと弾性部材と干渉してしまうため、この弾性部材にも小型化が求められる。小型化が困難な場合には、付勢力の増大を犠牲にしたり、装置の大型化が避けられなかった。
【0010】
また、上述のスライド機構は、第1の筐体の裏側(表示部とは反対面)に第1の筐体と重なるように装着されている。このような装着構造を採用する限り、筐体を構成する部材の薄型化をしても、第1の筐体の薄型化には限界があった。
【0011】
また、上述のスライド機構は金属製の部品を多用している。接地されていない金属部品は電磁波を吸収すると電位が変化(帯電)してしまう。
例えば、特許文献2で開示された携帯情報端末のスライド機構を特許文献1のスライド機構で実現した場合、電圧で発信周波数を制御する発信器などを有する無線回路部が近接配置されるので、正しい周波数変調動作を阻害してしまう場合がある。
【0012】
また、特許文献2では、第2の筐体の下端にアンテナを配置している。通話時は頭部から離れるのでアンテナの利得低下は回避されるが、一方、第2の筐体を手に持ってメールなどの文字入力をする文字入力時には、アンテナ部を握ってしまうため、待ち受け状態の受信感度を幾分犠牲にせざるを得ない。そのため、文字入力時であっても受信感度を向上させる方法として、第2の筐体を把持していても握られない部位(例えば、第1の筐体内)にアンテナを増設する手段があるが、同時にコストアップを招いてしまう。
【0013】
また、第1の筐体に設けた基板と、電池に接続され第2の筐体に設けた基板は、第1の筐体と第2の筐体の間に配置した帯状の配線で連結している。帯状の配線は断面積が小さいので、送電ロス(電圧降下)を伴うので、線材を用いたいという要望がある。
しかしながら、線材は断面積が大きいため、曲率の小さな曲げに繰り返し応力が作用すると断線しやすい。このような線材を、曲率を大きくしながら第1と第2の筐体間に配置すると、端末の厚みが増してしまうため、線材を用いたスライド型携帯端末の提案がなされていなかった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、第1に、付勢力を付与する弾性部材を有するスライド部の装着構造において、ネジの頭部や先端が露呈しないようにしながら第1の筐体の厚みの増大を極力回避させる装着構造の実現を図る。
第2に、金属で形成したスライド部を簡単な構造で接地させることで、誤動作の誘発を回避できるようにする。
第3に、アンテナを備えた場合でも高利得が得られるようにする。
第4に、配線部材として線材を用いたときでも、断線しにくくする。
第5に、配線部材としてフレキシブルプリント基板と線材の両方を用いたときでも、断線しにくくするなど、多くの効果を有するスライド型携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のスライド型携帯端末は、第1プリント基板を有する第1筐体と、第2プリント基板を有する第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的にスライド可能に連結するスライド部と、前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間を電気的に接続する同軸状の線材と、前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間を電気的に接続する帯状の可撓性プリント基板と、を備え、前記第1筐体と前記第2筐体が重なった状態において、前記線材は、前記可撓性プリント基板の内側に配置される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、付勢力を付与する弾性部材を有するスライド部の装着構造において、ネジの頭部や先端が露呈せず、第1の筐体の薄型化を図れ、金属で形成したスライド部を簡単な構造で接地させることで、誤動作の誘発を回避でき、アンテナを備えた場合でも高利得が得られる。
また、本発明によれば、配線部材として線材を用いたときでも、断線しにくく、配線部材としてフレキシブルプリント基板と線材の両方を用いたときでも、断線しにくいという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話の外観を示す斜視図
【図2】本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話の分解図
【図3】図1(a)の縦断面図
【図4】図1(a)の横断面図
【図5】本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話の筐体内の電気的構成を示すブロック図
【図6】(a)は第1、第2のねじりコイルばねの分解斜視図、(b)は第1、第2のねじりコイルばねの斜視図
【図7】第1、第2のねじりコイルばねの配置状態を示す平面図
【図8】可撓性配線部材が透視されている状態を示す図であり、(a)は本体部が閉状態のときの平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は本体部が開状態のときの平面図、(d)は(c)の側面図
【図9】アンテナの動作を示す図であり、(a)は、本体部が閉状態のときの斜視図、(b)は本体部が閉状態のときの縦断面図、(c)は本体部が開状態のときの縦断面図
【図10】本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話に用いられた第1、第2プリント基板の第1、第2グランドパターンに流れる高周波電流の分布図
【図11】本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話に用いられた第1、第2プリント基板の第1、第2グランドパターンに流れる高周波電流の分布図
【図12】本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話に用いられた第1、第2プリント基板の第1、第2グランドパターンに流れる高周波電流の分布図
【図13】本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話に用いたアンテナのVSWR特性を表す図
【図14】本発明の第2実施形態におけるスライド部の分解斜視図
【図15】本発明の第2実施形態におけるスライド部を用いたスライド型携帯電話の横断面図
【図16】本発明に係るスライド部の変形例を示す分解斜視図
【図17】第1、第2のねじりコイルばねの他の形態を示す分解斜視図
【図18】第1、第2のねじりコイルばねの他の形態の配置状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、ここでは、本発明のスライド型携帯端末として、スライド型携帯電話に適用して説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話の外観を示す斜視図であり、(a)は閉状態、(b)は開状態を示す。図2は、図1の分解斜視図を示す。図3は、図1(a)の縦断面図である。図4は、図1(a)の横断面図である。
図5は、本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話の筐体内の電気的構成を示すブロック図である。図6(a)、(b)は、第1、第2のねじりコイルばねの斜視図である。図7は、ねじりコイルばねの配置状態を示す平面図であり、(a)は本体部が閉状態のとき、(b)はベース部32に対してガイドレール部がL1だけスライド移動したとき、(c)はベース部32に対してガイドレールがL2だけスライド移動したとき、(d)はベース部32に対してガイドレールがL3だけスライド移動したとき、(e)はベース部32に対してガイドレールがL4だけスライド移動し、本体部が開状態のときを示す図である。
図8は、可撓性配線部材が透視されている状態を示す図であり、(a)は本体部が閉状態のときの平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は本体部が開状態のときの平面図、(d)は(c)の側面図である。図9は、アンテナの動作を示す図であり、(a)は、本体部が閉状態のときの斜視図、(b)は本体部が閉状態のときの縦断面図、(c)は本体部が開状態のときの縦断面図を示す。図10〜図12は、本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話に用いた第1プリント基板の第1グランドパターン71と第2プリント基板の第2グランドパターンの電流分布を示す図である。図13は、本発明の第1実施形態におけるスライド型携帯電話に用いたアンテナのVSWR特性を示す図である。
【0020】
図1乃至図5に示すように、本実施形態のスライド型携帯電話(以下、本体部という)1は、大略構成として、第1筐体(上筐体)2と、第2筐体(下筐体)3と、これら上下の筐体2、3をスライド可能に固設するスライド部4とを備えて、本体部1を構成している。このスライド部4の摺動動作により本体部1はスライド可能に連結されている。
【0021】
携帯時や着信したメールのチェックする場合、図1(a)に示すように、本体部1が閉じた状態(閉状態)で用いられる。他方、通話時、文字や数字、電話番号を入力する場合、図1(b)に示すように、本体部1を開いた状態(開状態)で用いられる。
【0022】
上筐体2は、主面2Aを形成する上カバー2Bと裏面を形成する上ケース2Cとが組み合わされて箱状となり、レシーバ5と、表示部6と、第1カメラ部7と、永久磁石8と、第1プリント基板9と、アンテナ10とを収容している。このうち、上筐体2の主面2Aには表示部6が露呈している。また、上筐体2の主面2Aとは反対側である裏面2Dは、閉状態のとき下筐体3と重ならない突出部11(厚みW1)と、この突出部11より下端側であって、閉状態のとき下筐体3と重なる重畳部12(厚みW2)とからなって段差W3(W1−W2)を有している。この突出部11の最先端の厚みはW4になっており、突出部11の裏面はW4−W3だけ傾いた傾斜面11Aとなっている。また、上筐体2の長手方向の長さU1は、突出部11の長手方向の長さU2と、重畳部12の長手方向の長さU3の和となる。
【0023】
第1プリント基板9には、無線回路部13、整合回路部14、データ変換部15、音声処理部16、画像処理部17、情報記録部18及び制御部19などを実装している。また、給電部20を形成し、給電部20にはばね端子(内部に圧縮ばねを内蔵したプローブピン型)21が実装されている。
【0024】
一方、下筐体3は、主面3Aを形成する下カバー3Bと裏面を形成する下ケース3Cとが組み合わされて箱状となり、送話部(マイクロフォン)22と、操作部23と、バイブレータ部24と、スピーカ25と、ホール素子26と、第2カメラ部27と、第2プリント基板28と、着脱可能な電池29などを収容している。
このうち、下筐体3の主面3Aにはマイクロフォン22と表示部6とが配置される。電池29は、下筐体3に装着後、電池カバー30が取り付けられて覆われる。また、下筐体3の厚みは上筐体2の段差W3に等しい。また、長手方向の長さは、上筐体2の重畳部12の長さU3に等しい。
【0025】
スライド部4は、上下の筐体2、3をスライド可能に固設するものであり、主に、ガイドレール部31と、ベース部32と、付勢部(第1ねじりコイルばね33と、第2ねじりコイルばね34)とで構成されている。本体部1を閉状態から開状態へと態様を変化させるために、上筐体2に固定されるガイドレール部31に対して下筐体3に4本のネジ35によって固定されるベース部32が摺動可能になっている。
【0026】
また、スライド部4近傍には可撓性配線部材であるフレキシブルプリント基板36と線材37は上筐体2と下筐体3との間に折り曲げられて配置される。フレキシブルプリント基板36の一端は第1プリント基板9における下筐体3側に向く表面に設けられたコネクタ38Aに、線材37の一端はコネクタ38Aに隣接するコネクタ38Bに差し込まれる。フレキシブルプリント基板36の他端は第2プリント基板28における上筐体2側に向く表面に設けられたコネクタ39Aに、線材37の他端はコネクタ39Aに隣接するコネクタ39Bに差し込まれて、第1、第2プリント基板9、28を電気的に接続するものである。
図3に示すように、開状態ではフレキシブルプリント基板36のほとんどは上筐体2内に収容される。閉状態ではフレキシブルプリント基板36のほとんどは下筐体3の主面3Aに重なり、2点鎖線で示す。線材37も同様であり、図3への図示は省く。
【0027】
また、上ケース2Cはスライド部4が装着される装着用開口部40が形成されている。装着用開口部40の周囲には後述する延長部を収容し、上ケース2Cに対してスライド部4の位置決めをする位置決め部40Aが凹状に形成してある。この位置決め部40Aがスライド部4の位置決めをしながら装着用開口部40周囲にスライド部4が搭載されている構造なので、本体部1が開状態で曲げやねじりの外力を加えてしまったり、使用者が誤って落下させたりすると、装着用開口部40の周囲に応力が集中しやすい。また、表示部6に力を加えてガラスの破損を招く場合もある。
【0028】
そのため、表示部6の背面側に装着用開口部40を形成し、この装着用開口部40全周に補強リブ40Bを立設させている。さらに、この装着用開口部40に金属製のスライド部4を装着することで、上筐体2全体の剛性を高めている。
なお、上ケース2Cに対するスライド部4の位置決め手段としては、前述の形状に限るものではなく、例えば、スライド部4の周囲に切り欠き部や孔を形成し、装着用開口部40の周囲の対応する部位にリブやボスを設け、両者を嵌め合わせて位置決めしてもよい。
この位置決めにより、本体部1が開/閉いずれの状態でも上、下筐体2、3の重なりを正常にすることができる。すなわち、両者の外形が整列(一致)し、不整列な状態が発生させない。
【0029】
下カバー3Bの主面3Aには、本体部1が開状態のときに上筐体1と重畳する位置に、ネジ35が貫通する孔が形成された固定部41と、フレキシブルプリント基板36及び線材37が通過する第1スリット42とが設けられている。また、主面3Aの周囲には上筐体2と下筐体3の間に所定の隙間を形成する突起3Dが複数形成されている。固定部41の近隣には第1ねじりコイルばねとの干渉を回避するザグリ3Eとを有する。上カバー2B、上ケース2C、下カバー3B、下ケース3CはABSやPCなどの樹脂部材で形成されている。
【0030】
このような各構成要素からなる本体部1は、閉状態においては、略厚みがW1、長さがU1となり、上筐体2の重畳部12が下筐体3と重畳して略直方形状となる。開状態においては、下筐体3に対して上筐体2が矢印A方向にL4だけ移動した状態である。
【0031】
次に、本実施形態のスライド型携帯電話の本体部1が有する各構成要素について、さらに具体的に説明する。
【0032】
上筐体2について、説明する。
レシーバ5は第1音声出力部であり、通信相手の音声を出力するものである。着信時、使用者はレシーバ5に耳を当て、相手の音声を聞き取る。
表示部6は、レシーバ5とともに上筐体2の主面2Aにあり、レシーバ5よりも下端寄り(略中央)に設けられている。この表示部6には、受信電界強度を示すマーク、電池残容量情報、時刻情報や着信情報、入力した文字や記号等が表示される。
【0033】
使用者は、本体部1が開閉何れかの状態であっても、表示部6に表示される表示情報が認識できる。この表示部6は、液晶表示器(LCD)や有機EL等により構成され、可撓性を有するフレキシブルプリント配線板等からなる表示部用配線部材6Aによって第1プリント基板9に接続されている。表示部6は透明窓6Bが設けられ、透明窓6Bが主面2Aの一部を形成する。
【0034】
第1カメラ部7はレシーバ5に隣接して設けられ、TV電話時には、使用者を撮影し撮影画像は表示部6に鏡像として表示され、通話相手には音声とともにこの撮影画像が送信される。
永久磁石8は、上筐体2の下端側であって表示部6に近接に配置されている。
表示部6の下側には第1プリント基板9が配置される。
アンテナ10は、突出部11内であってレシーバ5の下側に配置される。
【0035】
下筐体3について、説明する。
操作部23は、受話ボタンや終話ボタン、レシーバ5やスピーカ25から出力される音量の調節、マナーモードへの切替え、メニュー画面における選択と確定などができる操作ボタンからなる。外表面には、電話番号や文字を入力するために、数字や文字、記号が印刷されている。
マイクロフォン22と操作部23は、下筐体3の主面3Aであって本体部1が閉状態のときに上筐体2の裏面2Dと対向して覆われ、本体部1が開状態のときに露出するように設けられている。
【0036】
従って、マイクロフォン22と操作部23は、本体部1が開状態のときに使用者は操作部23を操作して、例えば、文字や記号、数字の入力、第1カメラ部7、第2カメラ部27等の操作ができる。使用者が操作部23を操作するとき、使用者の指の前方には、上筐体2の下端が存在することになる。指の爪の先が長い人が操作する場合には、操作部23の操作性を低下させるため、上筐体2の下端と操作部23とは所定の距離を設けなければならない。そのため、本体部1が閉状態から開状態にする場合には、上筐体2が移動する移動量は大きいほど好ましい。
【0037】
なお、閉状態のときでも受話や終話、レシーバ5やスピーカ25から出力される音量の調節、マナーモードへの切替え、メニュー画面における選択と確定などができるようにしたい場合には、操作用の専用ボタンを上筐体2の表示部6の下端側や閉状態で外面に露出する上筐体2または下筐体3の側面に増設または配置換えをしてもよい。
【0038】
本発明の第1実施形態では、スライド量を大きくすることを実現したので、表示部6をできるだけ大きくすることで文字や画像の視認性を向上させながら、かつ下筐体3の主面3Aに全ての操作部23を形成することで指の移動量を低減させ、文字入力のための操作性を向上させている。
【0039】
バイブレータ部24は、着信時に起振することにより着信を振動で報知する。マナーモードに設定されていれば、着信時にバイブレータが起振し、着信を無音報知する。スピーカ25は第2音声出力部であり、着信音やハンズフリー時の音声などを出力するものである。
【0040】
ホール素子26は、本体部1が閉状態のときには永久磁石8と対向するように、第2プリント基板28上に設けられている。このホール素子26は、本体部1が閉状態では、永久磁石8が近接状態にあるため、永久磁石8の磁界を検出して制御部19に検出信号を出力する。また、このホール素子26は、本体部1が開状態であれば永久磁石8が離間するので、この永久磁石8の磁界を検出できないため、ホール素子26は検出信号を生成しない。
【0041】
すなわち、ホール素子26が永久磁石8を検出すると本体部1は閉状態であり、検出できなければ開状態である。本体部1が閉状態であれば、操作部23を照明する光源がオフになって消費電力を低減させる。本体部1が開状態であれば、操作部23を照明する光源がオンとなり、操作部23の文字や記号が明瞭に見ることができる。
【0042】
第2カメラ部27は、上筐体1と重畳する領域であって、バイブレータ部24及びスピーカ25に隣接するように配置され、表示部6の後方が撮像可能になっている。
この第2カメラ部27と前述した第1カメラ部7は、ともに捉えた被写体からの入射光を、レンズ群を通過してCCD(電荷結合素子)などの光電変換素子にて光信号から電気信号に変換され、画像情報が生成される。この画像情報は、画像処理部17にて処理された後、表示部6に画像を生成する。
【0043】
このため、表示部6、第1カメラ部7及び第2カメラ部27は、画像処理部17と接続されており、これら第1カメラ部7及び第2カメラ部27が撮影した画像情報は、所定の撮影を行うと、情報記録部18に記録される。なお、この情報記録部18は、この画像情報の他にも、電話番号情報や音声情報、撮像した画像情報以外の画像情報(受信した画像情報等)、作成中または送受信したメール等の文字情報を記録することができる。
第2プリント基板28は操作部23の下側に設けられ、反対面側には電池29が配設される。
【0044】
制御部19は、操作部23、バイブレータ部24、ホール素子26、無線回路部13、データ変換部15、画像処理部17及び情報記録部18に接続されており、これらの制御を行う。さらに、この制御部19は、電池29にも接続されている。
【0045】
無線回路部13は整合回路部14を介してアンテナ10に接続されており、このアンテナ10で受信したデータを処理してデータ変換部15に出力するように構成されている。整合回路部14はアンテナ10のインピーダンスを無線回路部13の入力インピーダンスに整合させる。一方、データ変換部15は、音声処理部16に接続されており、音声処理部16は、レシーバ5、スピーカ25及びマイクロフォン22にそれぞれ接続されている。
【0046】
従って、このデータ変換部15では、整合回路部14、無線回路部13及び制御部19を介して、アンテナ10からの受信データを音声データに変換して音声処理部16に出力する。
一方、音声処理部16は、音声データを復号化して音声信号を生成した後、レシーバ5やスピーカ25に出力する。他方、レシーバ5やスピーカ25では、音声処理部16から伝達された音声信号に対応する音声を出力する。
【0047】
また、音声処理部16は、マイクロフォン22が受けた音声を符号化して音声データを生成した後、データ変換部15に出力する。データ変換部15は、入力した音声データを通信データに変換した後、無線回路部13に出力する。無線回路部13は、受け取った通信データを処理し、アンテナ10から無線信号の電波として送信する。
【0048】
スライド部4について、説明する。
ガイドレール部31、ベース部32は金属薄板で形成される。ガイドレール部31は、中央には凹部43を有し、第1角部44と第2角部45によってコの字状に形成された2つの案内部46A、46Bを支持する支持部47とからなる。案内部46A、46Bは、支持部47の両端に、下筐体3の主面3Aに向けて突出する方向に形成される。支持部47中央の凹部43には、案内部46A近傍に第1貫通孔(凹部43の長手方向における所定位置)48、案内部46B近傍に第2貫通孔(凹部43の長手方向における所定位置)49、可撓性配線部材が通過する第2スリット50がそれぞれ設けられている。
【0049】
凹部43は、支持部47が第1プリント基板9に当接するように配置されたとき、第1プリント基板9と支持部47との間に隙間が生じさせることで、第1プリント基板9上への実装を可能にしており、例えば、コネクタ38A、38Bが実装される。
【0050】
第1、第2の貫通孔48、49は、第1ねじりコイルばね33と第2ねじりコイルばね34との間に隙間を有しさせるために、矢印A方向において僅かながら位相差を持たせている。また、支持部47の四隅には切り欠き部51を有し、第1角部44を形成するときに曲げられない、支持部47が延長した延長部52が形成されている。
【0051】
ベース部32は、平らな中央部53と、この中央部53の両端が第3角部54によって起き上がり第4角部55によって中央部53と略平行、かつ中央部53より外側に向かうように形成された2つの摺動部56A、56Bとからなる。中央部53には、略中央には第3貫通孔(ベース部32の一つの所定位置)57、略四隅には第4の貫通孔58が形成され、ネジ35が螺着する。
【0052】
同一材料、線径で形成される第1、第2のねじりコイルばね33、34について、図6を用いて説明する。図6において、第1ねじりコイルばね33は、右巻きで形成された第1コイル部(コイル部)59と、一端側に形成されたリング部(一端)60と、他端側に略コの字状に折り曲げられて形成された第1折曲げ部(他端)61を有している。第2ねじりコイルばね34は、左巻きで形成された第2コイル部(コイル部)62と、一端と他端側の両方に略コの字状に折り曲げられた第2折曲げ部(一端)63及び第3折曲げ部(他端)64を有している。
【0053】
第2ねじりコイルばね34の第2折曲げ部63は、第1ねじりコイルばね33のリング部60に通した後にベース部32の第3貫通孔57に引っ掛けられて連結される。
第1、第2のねじりコイルばね33、34が取り付けられたベース部32は、摺動部56A、56Bの両面が挟まれるようにガイドレール部31の案内部46A、46Bに矢印A方向から差し込み、ベース部32を第1、第2の貫通孔48、49を通過させた後、第1ねじりコイルばね33の第1折曲げ部61は第1の貫通孔48に引っ掛けられて取り付けられる。摺動部56A、56Bと案内部46A、46Bは互いに非切断面が当接して、ガイドレール部31とベース部32が電気的に接続される。
【0054】
また、第2ねじりコイルばね34の第3折曲げ部64は第2の貫通孔49に引っ掛けられて取り付けられる。
ガイドレール部31にベース部32が組み付けられた状態では、第1、第2のねじりコイルばね33、34はベース部32の中央部53とガイドレール部31の支持部47との間に介在する。
【0055】
第1ねじりコイルばね33の第1コイル部59を右巻き、第2ねじりコイルばね34の第2コイル部62を左巻きとした。
よって、第1ねじりコイルばね33の一端側を形成する腕部65が、第1コイル部59の下部(中央部53に近接)に位置し、第1ねじりコイルばね33の他端側を形成する腕部66は上部に位置する。第2ねじりコイルばね34の一端側を形成する腕部67が、第2コイル部62の上部(中央部53から離遠)に位置し、第2ねじりコイルばね34の他端側を形成する腕部68は下部に位置する。
【0056】
よって、第1、第2のねじりコイルばね一端59、60を共にベース部32の第3貫通孔57に連結した状態において、第2ねじりコイルばね34をベース部32から浮き上がらせる必要がないので、第1、第2のねじりコイルばね33、34の厚み、及びこれら第1、第2のねじりコイルばね33、34を介在させるための空間の高さ方向(中央部53と凹部43とが形成する隙間)が増すことが抑えられる。
【0057】
次に、本体部1の組み方を説明する。
まず、アンテナ10が取り付けられた上ケース2Cにスライド部4を矢印B方向(図2に示す)から装着用開口部40に組み付ける。第1、第2のねじりコイルばね33、34とベース部32が装着用開口部40を通過し、装着用開口部40周囲の位置決め部40Aに延長部52を収容しながら係止される。
すなわち、位置決め部40Aと延長部52は、スライド部4が装着用開口部40を通過できないようにするストッパー作用を兼ねる構造になっている。
【0058】
次に、操作部23が組み付けられた下カバー3Bを上ケース2Cに対向させると、下カバー3Bと上ケース2Cとで突起3Dの高さだけ隙間を形成する。この状態で矢印C方向からネジ35を螺合させると、ベース部32は固定部41に固定される。上ケース2Cを下カバー3Bから外そうとしても、ベース部32が固定されており、かつ、ガイドレール部32が装着用開口部40を通過できないので、外すことができない。また上ケース2Cを下カバー3Bにさらに密着させようとしても、突起3Dがあるので密着できない。
従って、下カバー3Bと上ケースとの間の隙間は常に一定に維持される。
【0059】
次に、フレキシブルプリント基板36の片端と線材37の片端は第2スリット50に通し、第1プリント基板9のコネクタ38A、39Bと嵌着させる。他端は、上筐体2の下端側に向けて延設させ、スライド部4の中央部53の外側を巻くように曲げてから第1スリット42を通過させ、第2プリント基板28のコネクタ39A、39Bに嵌着させる。
これにより、第1プリント基板9と第2プリント基板28とが電気的に接続される。
【0060】
次いで、レシーバ5や第1カメラ部7などが組み付けられた上カバー2Bを上ケース2Cに組み付けると、上筐体2が完成する。バイブレータ部24、2つのスピーカ25、第2カメラ部27が組み付けられた下ケース3Cを下カバー3Bに組み付けると、下筐体3が完成する。最後に電池29、電池カバー30を装着して、本体部1が完成する。
【0061】
延長部52が位置決め部40A上に搭載され、案内部46A、46Bは上筐体2の裏面2Dを形成するとともに第1プリント基板に接する構造なので、第1プリント基板9から裏面2Dまでの厚みは、案内部46A、46Bの厚みでのみ決定される。
【0062】
なお、仮に、案内部46A、46Bにおける上筐体2の裏面2Dを形成する側面(第2角部45により形成され、ベース部32の摺動部56A、56Bを搭載する側面の裏面)を上ケース2Cに搭載すると、第1プリント基板9から裏面2Dまでの厚みはさらに増えてしまう。
【0063】
そのため、上述の厚み(第1プリント基板9から裏面2Dまでの厚み)を最小にするために、本第1実施形態のように、位置決め部40Aに延長部52を搭載させる構造により、ベース部32と2つねじりコイルばね33、34を開口部に通過させながら上筐体2の最薄化が実現できる。すなわち、下ケース2Cと案内部46A、46Bが重ならないので、第1プリント基板9から裏面2Dまでの距離は案内部46A、46Bの厚みで決定される。
【0064】
ガイドレール部31の支持部47は第1プリント基板9と対面する。対面した第1プリント基板の表面にグランドパターンを形成し、ガイドレール部31の表面に当接させると、ガイドレール部31は接地される。
従って、ベース部32はガイドレール部31に電気的に接続されているので、スライド部4は第1プリント基板9に接地されることになる。
【0065】
なお、第1プリント基板9とガイドレール部31を電気的に接続するために、例えば、第1プリント基板9の表面に導電性ばね部材を追加し、第1プリント基板9側に露出したガイドレール部31の表面を付勢してもよい。或いは、ガイドレール部の一部に切り起こし部によってばね性を有するばね片を形成し、第1プリント基板9を付勢させてもよい。本第1実施形態では、両者の電気的接続を低コスト、かつ簡単に実現するために、ガイドレール部31を第1プリント基板9側に露出させ、かつネジを用いずに上ケース3Cに固定することで、ネジが外面に露見することを防止し、目隠し蓋を必要としない構成を実現したものである。
【0066】
次に、スライド部4の動作について、図7を用いて説明する。
図7(a)〜(e)は、スライド部4の第1、第2のねじりコイルばね33、34、及び第1〜第3の貫通孔57、48、49が透視されている状態を示す。
図7(a)は、ガイドレール部31の右端(片端)側の第1の位置にベース部32が寄せられている状態を示している。第1、第2のねじりコイルばね33、34は第3貫通孔57の左側に位置している。
【0067】
前述したように、第1ねじりコイルばね33のリング部60には第2ねじりコイルばね34の第2折曲げ部63が挿通し、さらに、この第2ねじりコイルばね34の第2折曲げ部は第3貫通孔57に貫通して取り付けられている。従って、第1、第2のねじりコイルばね33、34は、共に第3貫通孔57の軸心を回転中心として回動可能になっている。
このとき、第1コイル部59の中心は、第3貫通孔57の軸心を回転中心とした半径R1が回動半径になる。第2コイル部62の中心は、第3貫通孔57の軸心に回転中心とした半径R2(R2>R1)が回動半径になる。半径R1,R2はベース部32の中央部53上で形成される。
【0068】
また、第1ねじりコイルばね33は、一端側を形成する腕部65と他端側を形成する腕部66とで、所定のねじれ角α(ベース部32に取り付ける前はα+Δ)を形成し、ねじれ角αの頂角は、第3貫通孔57を中心に右回りに向いて配置されている(への字の山が右回りに向いている)。
第2ねじりコイルばね34は、一端側を形成する腕部67と他端側を形成する腕部68とで、所定のねじれ角β(ベース部32に取り付ける前はβ+Δ)を形成し、ねじれ角βの頂角は、第1ねじりコイルばね33と同様に、第3貫通孔57を中心に右回りに向いて配置されている(への字の山が右回りに向いている)。
【0069】
図7(a)では、第1ねじりコイルばね33の一端側を形成する腕部65は、第1コイル部59から第3貫通孔57付近に向かって略左下がりの傾斜をしている。第1ねじりコイルばね33の他端側を形成する腕部66は、第1コイル部59から第1貫通孔48に向かって略左上がりの傾斜をしている。
第2ねじりコイルばね34の一端側を形成する腕部67は、第2コイル部62から第3貫通孔57の中心に向かって略右下がりの傾斜をしている。第2ねじりコイルばね34の他端側を形成する腕部68は、第2コイル部62から第2貫通孔49に向かって略左下がりの傾斜をしている。
【0070】
図7(b)は、ガイドレール部31に対してベース部32が左方向にL1だけ移動(ベース部32に対してガイドレール部31が右方向にL1だけ移動)した状態である。この状態では、第3貫通孔57は第1、第2の貫通孔48、49に対して摺動方向(矢印A方向及びその反対方向)における距離L1だけ近づくため、第1、第2のねじりコイルばね33、34は共に第3貫通孔57の軸心を回転中心として右回り方向に回し、初期のねじれ角αはα−a1、初期のねじれ角βはβ−b1へと変化する。
【0071】
第1ねじりコイルばね33の一端側を形成する腕部65は、第1コイル部59から第3貫通孔57付近に向かって略左上がりの傾斜をしている。第1ねじりコイルばね33の他端側を形成する腕部66は、第1コイル部59から第1貫通孔48に向かって略左上がりの傾斜をしており、図7(a)の状態から傾きが大きくなっている。
【0072】
第2ねじりコイルばね34の一端側を形成する腕部67は、第2コイル部62から第3貫通孔57の中心に向かって略右下がりの傾斜をしており、図7(a)の状態から傾きが大きくなっている。
第2ねじりコイルばね34の他端側を形成する腕部68は、第2コイル部62から第2貫通孔68に向かってまっすぐに向かって下がっており、摺動方向(矢印A方向及びその反対側)に対して垂直となる。
【0073】
図7(a)の状態に対して図7(b)の状態では、ねじれ角を小さく変化させるための曲げモーメントが第1、第2のねじりコイルばね33、34に加わっている。ねじれ角が小さくなると(初期のねじれ角αがねじれ角α−a1、初期のねじれ角βがβ−b1になる)、その反力がベース部32とガイドレール部31とに作用し、その摺動方向への分力によって、図7(b)の状態から図7(a)の状態に戻ろうとする。この戻ろうとする力を付勢力と称することにする。
この付勢力が小さいと、本体部1が開状態から閉状態へ、或いはその逆の動作が容易に発生してしまう。
【0074】
本実施形態では、2つのばねを用いることで所望の付勢力が簡単に得られるようになっている。その結果、例えば、ポケットの中で不意に力が加わり、本体部1が閉状態からL1だけ開いた場合、前述の付勢力によって閉状態へと復帰するので、ポケットの中で簡単に開状態にならないようになっている。
【0075】
また、図7(b)には、図7(a)の状態における第1コイル部59を2点鎖線で示している。第2コイル部62はこの2点鎖線と一部重なっている。すなわち、前述のL1の移動をすると、第2コイル部62は第1コイル部59に近づこうとするが、第1コイル部59は第2コイル部62と同方向(矢印で示す右回り)に回動しているので、第1、第2のコイル部59、62の追突は回避される。
【0076】
L1の移動前に第1コイル部59が存在していた位置へ、L1の移動に伴って第2コイル部62が一部重なる位置まで第2コイル部62を矢印方向に回動させるようにしたので、第1ねじりコイルばね33の他端側を形成する腕部66及び第2ねじりコイルばね34の他端側を形成する腕部68を所定の長さにすることができる。この腕部66、68の長さが長いほどベース部32の摺動距離を大きくすることができる。
仮に、これら腕部の長さが短い状態で、本実施例と同じスライド量を得ようとするとねじれ角の変化が大きくなってしまうため、ばねに生じる応力が増大し、ねじりコイルばねの折損を招く恐れがある。
【0077】
ここで、第1、第2のねじりコイルばね33、34の配置スペースについて説明する。
付勢力を得るために用いるねじりコイルばねは、本体部1が開/閉何れの状態であっても、本体部1の外面に露出すると使用者が容易に触れることができるため、不注意でねじりコイルばねを変形させてしまう恐れがある。
よって、本体部が開/閉何れの状態であってもねじりコイルばねの露出を回避するために、本体部が開/閉何れの状態であっても、ねじりコイルばねを上筐体2と下筐体3とが重畳する領域に配置しなければならない。しかも、このスペースが大きいと操作部23の面積が小さくなってしまうため、このスペースはできる限り小さい方が好ましい。
【0078】
そこで、本実施形態では、第2コイル部62が移動するために必要な領域は、第1コイル部59が移動するために必要な領域と重ねることで、第1、第2のねじりコイルばね33、34に必要な領域は確保しながら、各々に必要な領域の総和を小さくしている。
すなわち、第1コイル部59に第2コイル部62が一部重なった領域(図7(b)の斜線部)S1だけ、前述の領域の総和を小さきしている。その結果、上筐体2と下筐体3とが重畳する領域を増大させずにすむので、操作部23が配置されるスペースを確保している。
【0079】
図7(c)は、閉状態からベース部32に対してガイドレール部31が右方向にL2だけ移動した状態である。第1コイル部59は右回りの回動を継続している。初期のねじれ角αはα−a2(a2>a1)となり、初期のねじれ角βはβ−b2(b2>b1)となる。第1ねじりコイルばね33のねじれ角は、第1貫通孔48と第3貫通孔57とが最短となるときに略最小となる。第2ねじりコイルばね34のねじれ角は、第2貫通孔49と第3貫通孔57とが最短となるときに略最小となる。図7(a)から図7(e)の状態の中では、図7(c)が近似している。
【0080】
第1ねじりコイルばね33の一端側の腕部65は、第1コイル部59から第3貫通孔57付近に向かって略左上がりの傾斜をしており、図7(b)の状態から傾きが大きくなっている。第2コイル部62は右回り方向への回動から左回り(矢印方向)の回動へと反転している。
第2ねじりコイルばね34の一端側を形成する腕部67は、第2コイル部62から第3貫通孔57の中心に向かって略右下がりの傾斜をしている。第2ねじりコイルばね34の他端側68を形成する腕部は、第2コイル部62から第2貫通孔49に向かって略右下がりの傾斜をしている。
すなわち、第2ねじりコイルばね34の他端側を形成する腕部68は、図7(a)では傾斜をし、図7(b)の垂直状態を経て、図7(c)では図7(a)の傾斜方向とは逆になり、同時に第2コイル部62の回動方向が矢印方向に反転する。
【0081】
また、ガイドレール部31の移動量が図7(c)の状態付近では、各々のねじりコイルばね33、34が生じる力における摺動方向の分力が零に近づく。すなわち、2つのねじりコイルばね33、34が生じる力のほとんどが摺動方向に対して直交方向に作用し、摺動方向へのわずかな分力は相殺されることにより、ベース部32に対してガイドレール部31が何れの摺動端側にも移動しない状態となる。
【0082】
図7(d)は、閉状態からベース部32に対してガイドレール部31が右方向にL3だけ移動した状態である。第1、第2コイル部59、62は共に右回り及び左回りの回動を継続している。第1ねじりコイルばね33の初期のねじれ角αはα−a1となり、第2ねじりコイルばね34の初期のねじれ角βはβ−b2とほぼ等しい。
【0083】
第1ねじりコイルばね33の一端側を形成する腕部65は、第1コイル部59から第3貫通孔57の中心に向かって垂直に近い左上がりの傾斜をしており、図7(c)の状態から傾きがさらに大きくなっている。第1ねじりコイルばね33の他端側を形成する腕部66は、第1コイル部59から第1貫通孔48に向かってまっすぐに上がっており、摺動方向に対して垂直となる。
【0084】
第2ねじりコイルばね34の一端側を形成する腕部67は、第2コイル部62から第3貫通孔57に向かって略右下がりの傾斜をしている。
第2ねじりコイルばね34の他端側を形成する腕部68は、第2コイル部62から第2貫通孔49に向けて略右下がりの傾斜をしており、図7(c)の状態から傾きが小さくなっている。
この状態では、2つのねじりコイルばねが生じる付勢力によって、ベース部32に対してガイドレール部31を右側(矢印A方向)へ付勢する。すなわち、後述する図7(e)の状態になろうとする。
【0085】
図7(e)は、ベース部32に対してガイドレール部31が右方向にL4だけ移動した状態である。この状態が、ガイドレール部31の左端(反対端)側にベース部32が寄せられた、本体部1の開状態でもある。
第1コイル部59は、図7(d)の状態から左回りをする。すなわち、図7(a)の状態から図7(d)の状態まで右回りをし、その後は逆周をする。
第1ねじりコイルばね33のねじれ角は略αとなり、第2ねじりコイルばね34のねじれ角は略βとなり、ほぼ図7(a)の状態と同じになる。
【0086】
第1ねじりコイルばね33の一端側を形成する腕部65は、第1コイル部59から第3貫通孔付近57に向かって略左上がりの傾斜をしており、図7(d)の状態より傾きが小さくなっている。第1ねじりコイルばね33の他端側を形成する腕部66は、第1コイル部59から第1貫通孔48に向かって略右上がりの傾斜をしている。
第2ねじりコイルばね34の一端側を形成する腕部67は、第2コイル部62から第3貫通孔57の中心に向かって略右上がりに傾斜している。第2ねじりコイルばね34の他端側を形成する腕部68は、第2コイル部62から第2貫通孔49に向かって右下がりの傾斜をしており、図7(d)の状態より傾きが小さくなっている。
【0087】
ここで、付勢力についてまとめる。
第1、第2の貫通孔48、49が第3貫通孔57の左側にあれば、ベース部32に対してガイドレール部31を左側(矢印Aと反対方向)に付勢する。第3貫通孔57に対して第1、第2の貫通孔48、49が左側から近づくと、付勢力は徐々に増す。第1、第2のねじりコイルばねの矢印a方向の分力が平衡になるとき、付勢力がほぼ零になる。
さらに、第1、第2の貫通孔48、49が第3貫通孔57を通過し、分力が不平衡になると、付勢力に向きが反転し、ベース部32に対してガイドレール部31を右側(矢印方向)に付勢する。第1、第2の貫通孔48、49が第3貫通孔57の右側にあるときに、第3貫通孔57に対して第1、第2の貫通孔が近づいた場合は、ベース部32に対してガイドレール部31を右側(矢印A方向)に付勢する。
【0088】
図7(e)には、図7(d)の状態における第1コイル部59を2点鎖線で示している。第2コイル部62は、この2点鎖線と一部重なっている(斜線部S2)。すなわち、前述のL3移動後にL4の移動をすると、第2コイル部62は、第1コイル部59に近づこうとするが、第1コイル部59は第2コイル部62と同方向に(左回り)に回動しているので、第1、第2のコイル部59、62の追突は回避される。
その結果、L4の移動直前に第1コイル部59が存在していた位置に、L4の移動に伴って第2コイル部62が一部重なる位置まで回動させるようにしたので、この位置でも前述の占有面積を小さくしている。
【0089】
すなわち、ベース部32に対してガイドレール部31が摺動方向に移動する際、ベース部32がガイドレール部31の摺動端に近づくときに一方のねじりコイルばねの跡地に他方のねじりコイルばねを一部重ねることで、追突を回避しながら両者に必要な動作領域の総和を最小限にしている。
さらに、第1、第2貫通孔48、49に取り付けられるねじりコイルばねの腕部を長くすることができるので、摺動長及び付勢力を大きくすることができる。
従って、操作部23が配置されるスペースの確保しながら不意な開閉が防止される。
【0090】
ここで、上述の腕部の長さとコイル部の回動半径について補足する。
例えば、図7(a)において、第2ねじりコイルばね34の他端側の腕部68が短かく、第2貫通穴49が同じ位置であれば、第2コイル部62が図7(a)の状態から左回りした位置になる。このとき、ねじれ角の変化(初期のβ+Δからの差)は、図7(a)の状態より小さくなるので、発生する付勢力が小さくなる。また、第2ねじりコイルばね34の他端側の腕部68が長く、第2貫通穴49が同じ位置であれば、第2コイル部62が図7(a)の状態から右回りした位置になるので、第1コイル部59に第2コイル部62に追突する。
【0091】
また、例えば、図7(a)において、回動半径R2がR1に等しい場合、ねじれ角βが増し、所期のねじれ角(β+Δ)に近づくので、発生する付勢力が小さくなる。
従って、2つのねじりコイルばねの長くしながら腕2つのコイル部の回動半径を異ならせることで、付勢力を増大させながら摺動量も大きく、占有面積の最小化を同時に達成している。
【0092】
以上説明したように、ガイドレール部31の両摺動端に向けてベース部32を摺動可能に案内するスライド部4は、摺動時、第1、第2のねじりコイルばね33、34が回動するとき、その回動中心を同じにしている。
ベース部32がガイドレール部31の片側の摺動端側から中央に向かってL1の移動をする際は、第1、第2のコイル部59、62の回動方向を同じくし、L1の移動後は第2ねじりコイルばね34を反転させ、第1、第2のねじりコイルばね33、34が追突する前のL4の移動をした際には、第1ねじりコイルばね33の回動を止め、L3からL4の間では、また第1、第2のねじりコイルばね33、34の回動方向を再度同じくなるように構成した。
よって、第1、第2のねじりコイルばね33、34が回動するために必要な占有面積を小さくできる。
【0093】
この占有面積は、本体部1が開状態のときに上筐体2と下筐体3とが重なった領域となるので、占有面積を小さくすることで、開状態における上筐体2と下筐体3との重なる領域の低減が図れる。同時に、第1、第2の貫通孔48、49に連結される第1、第2のねじりコイルばね33、34の腕部66、68を長くできるので、摺動量も大きくすることができる。
その結果、操作部23を形成する面積を広くすることができるので、下筐体3の主面3Aに配置されるボタンや、またボタンの間隔を大きくできるので、手が大きい人や爪の長い人でも操作しやすくなり、しかも、操作部23を同一面に形成できるので、操作性が良好となる。
【0094】
また、本第1実施形態によれば、第1ねじりコイルばね33のリング部60に第2ねじりコイルばね34の第2折曲げ部63を挿通しながらベース部32に引っ掛けて連結したので、専用部品を用いず(コストアップを回避しながら)に第1、第2のねじりコイルばね33、34の取り付ができる。
【0095】
さらに、スライド部4を本体部1に用いることで、上筐体2に対して下筐体3を移動させるときの力(付勢力)を大きくしながら、操作部23を配置するための領域(面積)の狭小化が阻止できる。
【0096】
なお、本第1実施形態では、ねじりコイル部のコイル中心径を全ての巻数で共通にした一般的なねじりコイルばねを用いたが、他の形態として、コイル部を渦巻ばねのような渦巻き状にし、渦巻中心側の端部を渦巻き部と重ねるような曲げ部を設けて、渦巻き部の外側に導いた形状にしたコイル部を有するねじりコイルばねとすることで、ねじり応力の低減を図ってもよい。
すなわち、使用するばねとしては、巻回部を有し、一端をベース部32に連結し、他端をガイドレール部31に接続し、一端側と他端側とでへの字の状態にねじれ角を有しさせ、回動軸を中心として同回動方向に向けた構造にすればよい。
【0097】
次に、可撓性配線部材について、図8を用いて説明する。
本体部1が閉状態である図8(a)、(b)において、フレキシブルプリント基板36は、コネクタ38Aと、コネクタ38Aより上側に位置するコネクタ39Aに接続されている。線材37は、コネクタ38Bと、コネクタ38Bより上側に位置するコネクタ39Bに接続されている。その結果、フレキシブルプリント基板36は、本体部1の厚み方向(上、下筐体2、3が重なる方向)に中心をOfとした半径R3の円弧を形成する。線材37は、折り曲げられたフレキシブルプリント基板36の内側に配置され、本体部1の幅方向(半径R3の軸心方向)に中心をOcとした半径R4の円弧を形成するように折り曲げられて、略U字状になっている。
【0098】
図8(b)においては、線材37が第1プリント基板9と第2プリント基板28の間の距離だけ円弧が傾いた状態となっている。
図8(c)、(d)は、下筐体3に対して上筐体2が矢印A方向にL4だけ移動した開状態を示している。フレキシブルプリント基板36は、コネクタ38Aと、コネクタ38Aより下側に位置するコネクタ39Aに接続されている。線材36は、コネクタ38Bと、コネクタ38Bより下側に位置するコネクタ39Bに接続されている。その結果、フレキシブルプリント基板36は、本体部1の厚み方向に中心をOf´とした半径R3の円弧を形成する。線材37は、折り曲げられたフレキシブルプリント基板36の内側に配置されたまま、本体部1の幅方向に中心をOc´とした半径R4の円弧を形成するように折り曲げられて、略U字状になっている。なお、線材37は、第1プリント基板9と第2プリント基板28の間の距離だけ円弧R4が傾いた状態となっていて、傾きは図8(b)と変わらない。
【0099】
次に、可撓性配線部材の動作について説明する。
下筐体3に対して上筐体1がL4だけ移動(コネクタ38Aが矢印A方向にL4移動したように図示してある)すると、フレキシブルプリント基板36の円弧は、中心Ofが矢印A方向へL4/2だけ移動して中心Of´となる。また、線材37の円弧は、中心Ocが同方向へL4/2だけ移動して中心Of´となる。
【0100】
つまり、本体部1が閉状態から開状態へ変化すると、フレキシブルプリント基板36の中心Of、及び線材37の中心Ocは、ともにL4/2だけ変位するだけなので、フレキシブルプリント基板36や線材37に余長が生じて本体部1の外側にはみ出したり、或いは、張架することで本体部1が開ききらないことによる断線の招来、コネクタの嵌着が解除されることが回避できる。
【0101】
しかも、フレキシブルプリント基板36の中心Ofと線材37の中心Ocとは同方向に同じ量だけ移動するので、例えば、フレキシブルプリント基板36の円弧が線材37の円弧に追突して、互いが応力を付与し合うことがない。
また、線材37の円弧が形成される方向はフレキシブルプリント基板36の円弧が形成される方向に対して略直交方向に形成したので、線材37の円弧をフレキシブルプリント基板36と同方向に形成した場合よりも曲率を大きくすることができる。
一般に、フレキシブルプリント基板36の厚さより大きい(太い)線材37には、円弧の曲率を大きくすることで、生じる曲げ応力を小さくすることができる。フレキシブルプリント基板36と同方向に線材37を曲げて配置すると、曲率が小さくなってしまうため、発生する応力が大きくなってしまう。
【0102】
よって、本第1実施形態のようにフレキシブルプリント基板36の曲げ方向に対して直交する方向に線材37の曲げを形成したので、線材37に生じる応力を小さくした。スライド型携帯電話は受話や送話、メールの送受信等、操作するたびに本体部1を開閉し、摺動によってフレキシブルプリント基板36と線材37に繰り返し応力が加わる。上述した構成によって、寿命特性を向上させられる。
(断線の回避)。
【0103】
本第1実施形態では、フレキシブルプリント基板36は第1プリント基板9と第2プリント基板28の間で信号を送受し、線材37は、電池29の正極から第1プリント基板9に電源を供給する電源供給線として用いた例として説明した。フレキシブルプリント基板36も電源供給線を有するが、線幅、線厚が小さいので、電圧降下を招いてしまうため、本実施形態では、フレキシブルプリント基板36とは別に専用線として設けた。他の態様として、必ずしも両方を用いる必要はなく、いずれか一方でも構わない。線材37のみを用いる場合はフレキシブルプリント基板36がないので、フレキシブルプリント基板36の内側という配置条件は無くなるが、円弧R3を形成する向きは、上述したように、平面視で円弧R3を形成するようにすればよい。
【0104】
すなわち、本第1実施形態では、両者を使用する場合には、上述した構成にすることで、本体部1の寿命特性を低下させない共存構造を詳述したものである。
【0105】
なお、フレキシブルプリント基板36の外側に線材37を配置した場合、線材37を内側に配置した場合に両者に生じる応力との差異は微少であるが、線材37の傾きが大きくなるため、そのスペースを確保しなければならなくなり、結果的に本体部1の厚みを増大させる。従って、寿命特性だけを考える場合にはフレキシブルプリント基板36の外側、或いは内側の何れに線材37を配置してもよく、さらに、本体部1の厚みの薄くしたい場合には、フレキシブルプリント基板36の内側に配置したほうが有利である。
【0106】
さらに、線材を複数本用いるときは、線材を並設させて全ての線材が形成する円弧の中心をほぼ同じくすることができるので、極端な寿命特性を低下させなくて済む。換言すると、図8(a)の状態で、全ての線材が形成する円弧を同心円状にしたほうが、本体部1の厚み方向に円弧を形成するより十分曲率を大きくできるので、本体部1の厚み増、応力増が回避できる。
【0107】
また、線材37は、無線回路部13や整合回路部14とアンテナを2つの筐体に分離配置した場合や、第1実施形態の構成において下筐体3に外部インターフェースコネクタを設け、このコネクタと無線回路部とを接続する場合には、2つの筐体間で無線信号を送受する信号送受線として用いることで、アンテナ利得の低下を回避するために使用してもよい。
【0108】
なお、上述の摺動部56A、56Bの先端(切断面)は案内部46A、46Bの内面に対面するようになっている。下筐体2に対して上筐体3の進行方向(矢印A方向)の直交する方向に微動したとき、切断面が摩擦する構造である。この微動による僅かな不安定進行を解消したければ、例えば、下筐体3の主面3Aに第1のリブ、上筐体2の裏面2Dにこの第1のリブを案内する第2のリブを設けてもよい。或いは、後述する第2実施形態のように、ベース部の両端に曲げ部を形成し、面当接させてもよい。
【0109】
次に、アンテナ10について、図9を用いて説明する。
図9(a)において、上筐体2に収容された第1プリント基板9は、給電部20を除いたほぼ全面に回路の接地電位となる第1グランドパターン71を有し、斜線で示す。また、下筐体3に収容された第2プリント基板28は、ほぼ全面に回路の接地電位となる第2グランドパターン72を有し、斜線で示す。
【0110】
第1プリント基板9のばね端子21が実装された給電部20は突出部11内に配置される。この給電部20は整合回路部14を介して無線回路部13に接続され、この無線回路部13は第1グランドパターン71に接地されるとともに制御部19にも接続されている。第1グランドパターン71はアンテナ10と重ならないように、突出部11内には配設されず重畳部12内に配設される。また、スライド部4は、前述したように第1プリント基板9の第1グランドパターン71に接続されているので、電気的には、第1グランドパターン71とスライド部4は一体となる。
【0111】
第2プリント基板28は、本体部1が閉状態のときのアンテナ10と第2グランドパターン72との距離P1が、アンテナ10と第1グランドパターン71との距離P2より大きくなる位置に配置している。
【0112】
フレキシブルプリント基板36は、下筐体3に収容されたマイクロフォン22、操作部23、第2カメラ部27と第1プリント基板9に形成された制御部19とを接続する信号線(図示せず)と、電池29の負極に接続された第2グランドパターン72と第1グランドパターン71とを接続するグランド線とを有する。
しかしながら、所定幅のフレキシブルプリント基板36は、多数の信号線とグランド線の両方を形成しなければならず、しかも厚みが薄い。ゆえに、フレキシブルプリント基板36のグランド線は狭幅な回路線となるので、わずかな高周波電流しか流さない。
【0113】
アンテナ10は、突出部11の内側に内蔵され、斜面部11Aに平行な平面素子部10Aを有する。この平面素子部10Aの端部は、ばね端子21によって付勢される。平面素子部10Aはリアクタンス素子部(図示せず)を介在させことにより、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2を有した多周波アンテナを実現している。多周波アンテナとして、本発明人によって開示された特開2004−134975号公報に記載の多周波アンテナを用いた。
従って、平面素子部10Aの端部が給電部20に接続されて内蔵型モノポールアンテナを実現している。
【0114】
ここで、f1は830MHzから960MHzである。f2は、1710MHzから2170MHzである。これら、f1、f2の帯域で共振周波数を有するようにしたので、日本や欧州におけるGSM、DCS、PCS、W−CDMAに好適となっている。
【0115】
次に、アンテナ10の動作を説明する。
図9(b)において、本体部1が閉状態では、第1グランドパターン71には矢印J方向(給電部20から離れる方向)への高周波電流が流れる。第2グランドパターン72はフレキシブルプリント基板36によって第1グランドパターン71に接続されているが、前述したように、フレキシブルプリント基板36は僅かな高周波電流しか流さないので、これに接続された第2グランドパターン72には僅かな高周波電流しか流れない。
図9(c)において、本体部1が開状態の場合は、閉状態に対してアンテナ10が第2グランドパターン72からL4だけ離れる方向へ平行移動しただけである。
【0116】
ここで、本体部1が閉状態のときには第2グランドパターン72とアンテナ10は近接し、本体部1が開状態のときには第2グランドパターン72とアンテナが離れるように、上筐体2が下筐体3に対して移動している。その結果、本体部1の開/閉状態によってアンテナ10周囲のグランド条件が変わり、アンテナ10の利得低下を招いてしまう。そのため、制御部19は本体部1の開/閉状態を検出し、この検出結果に基づいて整合回路部14内のマッチングを変えなければならない。すなわち、整合回路部14やこれを制御するためのプログラムを複雑にしてしまう。
【0117】
そこで、本第1実施形態では、本体部1の態様変化が生じてもアンテナ10に及ぼす第2グランドパターン72の影響を最小にするために、上述したP1、P2の関係にして、第2グランドパターン72が起因するアンテナ10の利得低下を回避したので、整合回路部やプログラムの簡素化を図っている。
従って、本体部1が開/閉いずれの状態でも、第1グランドパターン71に流れる高周波電流が支配的である。
【0118】
次に、第1グランドパターン71と第2グランドパターン72の電流分布について、図10〜図12を用いて説明する。これら図10〜図12は、シミュレーション結果である。
条件として、第1のグランドパターンは短手方向の長さが40mm、長手方向の長さが90mmとした。第2グランドパターンの短手方向の長さが40mm、長手方向の長さが70mmとした。下筐体3に対する上筐体2の摺動量L4は50mmとした。本第1実施形態の構成による効果を確認するために、スライド部4を第2グランドパターン72にも接地した構造と比較した。
【0119】
(a−f1)・・・800MHzにおいて、本体部1が閉状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71と第2グランドパターン72の双方に接地した場合である(図10(a))。
(b−f1)・・・800MHzにおいて、本体部1が閉状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71にだけ接地した場合であり、本第1実施形態の構成である(図10(b))。
【0120】
(a−f2)・・・2000MHzにおいて、本体部1が閉状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71と第2グランドパターン72の双方に接地した場合である(図10(c))。
(b−f2)・・・2000MHzにおいて、本体部1が閉状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71にだけ接地した場合であり、本第1実施形態の構成である(図10(d))。
【0121】
(c−f1)・・・800MHzにおいて、本体部1が開状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71と第2グランドパターン72の双方に接地した場合である(図11(a))。
(d−f1)・・・800MHzにおいて、本体部1が開状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71にだけ接地した場合であり、本第1実施形態の構成である(図11(b))。
【0122】
(c−f2)・・・2000MHz(2GHz)において、本体部1が開状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71と第2グランドパターン72の双方に接地した場合である(図12(a))。
(d−f2)・・・2GHzにおいて、本体部1が開状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71にだけ接地した場合であり、本第1実施形態の構成である(図12(b))。
また、図13にはアンテナ10のVSWR特性を示している。
【0123】
図13(a)・・・本体部1が閉状態のとき、スライド部を第1グランドパターンと第2グランドパターンの双方に接地した場合である。
図13(b)・・・本体部1が開状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71にだけ接地した場合である。
【0124】
図13(c)・・・本体部1が閉状態のとき、スライド部を第1グランドパターンと第2グランドパターンの双方に接地した場合である。
図13(d)・・・本体部1が開状態のとき、スライド部4を第1グランドパターン71にだけ接地した場合である。
【0125】
図13の各図を比較した結果を、表1にまとめる。図13より、第2グランドパターン72に電流がほとんど流れていないので変化がないことが理解されるので、第2グランドパターン72についての説明は省く。
【0126】
【表1】



【0127】
表1より、電流分布について、説明する。800MHzにおいては、本体部1が開/閉いずれの状態であっても、第1グランドパターン71の中央付近に電流密度が高い領域(h3)が存在する。この理由は、スライド部4が第1グランドパターン71と第2グランドパターン72とを電気的に接続する(強結合)と、電位の低い第2グランドパターン72側にも高周波電流が流れ、第1グランドパターン71のグランド接点部に電流が集中する。
この電流密度が高い領域(h3)は、通話時、頬に当たりやすい位置なので、人体の影響が受けやすい。なお、2GHzにおいては、本体部1が開/閉いずれの状態であっても、ほとんど変化が無いので、筐体の態様状態の影響をほとんど受けていない。
【0128】
シミュレーションで得られたVSWR特性について、説明する。800MHzにおいては、本体部1が開/閉いずれの状態であっても、スライド部4を第1、第2グランドパターン71、72の双方に接地するより第1グランドパターン71にのみ接地させたほうが、f1の帯域が広くなる。
【0129】
この理由は、スライド部4を介して第1グランドパターン71と第2グランドパターン72を電気的に接続(強結合)すると、第1グランドパターン71の電気長と第2グランドパターン72の電気長の和が合計された電気長となる。
そのため、第1グランドパターン71の端部で位相が反転し、第2グランドパターン72に逆相の高周波電流が発生する。この逆相の逆相の高周波電流が第1グランドパターン71に生じている高周波電流を打ち消すため、狭帯域となる。
【0130】
2GHzにおいては、本体部1が開/閉いずれの状態であっても、波長が短いので高周波電流は第1グランドパターン71に集中する。よって、第2グランドパターンの影響を受け難くいため、差異が生じていない。
【0131】
以上、電流分布、及びVSWR特性より、スライド部4は第1グランドパターン71に接地させ、第1グランドパターン71と第2グランドパターン72とは疎結合としたほうが、帯域を広くし、かつ人体の影響が極力排除されるなど、アンテナの利得向上がなされていることが理解できる。
【0132】
アンテナ10についてまとめる。アンテナ10を突出部11に配置し、スライドレール部4は第1グランドパターン71に接地させ、第1、第2グランドパターン71、72は疎結合にしたことにより、第2グランドパターン72に流れる高周波電流を小さくすることができる。その結果、操作部23を操作するために下筐体3を把持した場合でもアンテナの性能劣化を抑制することができる。
【0133】
また、頭部にレシーバ5を当てて通話する場合、第1グランドパターン71に電流分布が強い領域があると、この強い領域が頬に当たってしまうので、第1グランドパターン71は人体の影響を受けやすくなる。そのため、アンテナ劣化を防止するためには、中央部電流分布の強い領域がない、本第1実施形態の構成が好適である。
【0134】
従って、スライドレール部4を上筐体2に接地させた場合、本体部1が開/閉何れの状態でも高いアンテナ性能が得られている。第1実施形態では摺動量L4を50mmとしたが、この摺動量がさらに大きく、或いは小さくても、アンテナ性能に影響しないことは明白である。
【0135】
第1実施形態では、モノポールアンテナを実現する構造として説明したが、この形態以外のアンテナを実現する手段として、仮に、アンテナ10を下筐体3へ移設させたり、或いは第2のアンテナを下筐体3側に配置した場合でも、第1グランドパターン71にスライド部4を接地することは有効である。
【0136】
下筐体3にアンテナを設けた場合において、第1グランドパターンと第2グランドパターンが強結合されていると、本体部1が開/閉状態で電気長が変化してしまい、また、アンテナを有する下筐体側にスライド部を接地させても、本体部1が開/閉状態で電気長が変化してしまうので、アンテナ性能が低下する。一方、スライド部4の帯電を回避するため、いずれかの筐体側に接地させたほうがよい。
また、モノポールアンテナに限るものではない。本第1実施形態のアンテナを逆Fアンテナ、逆Lアンテナ等に置換したときでも、スライド部4を上筐体2の第1グランドパターン71に接地させる構造であれば、第2グランドパターン72の影響を受けにくい構造が実現できる。
【0137】
従って、アンテナは上、下筐体2、3の何れか一方、または両方に配置した場合であっても、前述した構成で、スライド部4を第1グランドパターン71に接地させ、第1グランドパターン71と第2グランドパターン72を疎結合にすれば、本体部1の態様変化があってもグランドパターンの影響を受けにくくすることができ、アンテナを有するスライド型携帯端末に好適となる。なお、前述した疎結合とは、第1グランドパターン71と第2グランドパターン72との間にLCトラップ回路が装荷されて、直流的には結合されているが、高周波的には高いインピーダンスを有する状態をいう。
【0138】
以上、第1実施形態についてまとめる。
第1に、スライド部は、上筐体の内面側から上ケースに取り付けたとき、案内部を通過させ、ガイドレール部は通過しないようにした。これにより、ネジなどの締結部材を用いずとも上筐体に装着できる。
【0139】
なお、通過防止するために、ガイドレール部の支持部の一部に折り曲げられない延長部を形成し、この延長部が装着用開口部の周囲に当接させるようにしたが、支持部に対して別部品を重ねて固定し、別部品が通過できないようにしてもよい。また、延長部の形状は前述した形状に限るものではない。
【0140】
第2に、ガイドレール部は上筐体内面に露出するので、これに対面する第1プリント基板と容易に電気的に接続できる。
【0141】
第3に、上筐体の上端に、主面から離してアンテナを配置したので、頭部にレシーバ部を当てながら使用するときは頭部から離れ、表示部を見ながら文字入力をするときは手は操作部を握るので、アンテナや、さらに第1プリント基板を覆わないなど、人体の影響が極力排除された位置に配設してある。このとき、金属製のスライド部は第1グランドパターンに接地されているので、第2プリント基板の影響を極力小さくし、高利得なモノポールアンテナを実現している。なお、アンテナを逆Fアンテナや逆Lアンテナで実現しても同様な効果が得られる。
【0142】
第4に、線材は、上、下筐体を重ねるように見たときにU字状の曲げを形成するように配置したので、線材に生じる応力を小さくした。その結果、繰り返し摺動させるスライド型携帯電話であっても、断線しにくい構造を実現している。
【0143】
第5に、上述の線材をフレキシブルプリント基板が形成する曲げの内側に配置したので、両者とも断線しにくい共存構造を実現している。
【0144】
なお、スライド部は第1プリント基板の第1グランドパターンに接地させたが、第1プリント基板が不用な構造にした場合には、表示部6に接続される表示部用配線6Aに接地させても構わない。
【0145】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、ここでは、第1実施形態で説明したスライド型携帯電話のスライド部の変形例であり、筐体内の電気的構成等、同じ符号については説明を省く。
【0146】
図14は、本発明の第2実施形態におけるスライド部の分解斜視図である。図15は、本発明の第2実施形態におけるスライド部を用いたスライド型携帯電話の横断面図である。
スライド部80は、第1実施形態で説明した上下の筐体2、3をスライド可能に固設するものであり、主に、ガイドレール部81と、ベース部82A、82Bと、圧縮ばね83A、83Bと、パイプ84A、84Bとで構成されている。ガイドレール部81、ベース部82A、82Bは金属薄板で形成される。本体部85を閉状態から開状態へと態様を変化させるために、上筐体2に固定されるガイドレール部81に対して下筐体3に固定されるベース部82A、82Bが摺動可能になっている。
【0147】
ガイドレール部81は凹部86を有し、両端に第4角部87A、87B、第5角部88A、88B、第6角部89A、89Bによって、非切断面が箱状の2つの案内部90A、90Bと、この案内部90A、90Bを一体に支持する支持部91とからなる。この凹部86には、可撓性配線部材が通過する第3スリット92が設けられている。第6角部89A、89Bより先端側の先端部は支持部91と重なって4ケ所のカシメ部93により支持部91に密着固定される。
【0148】
凹部86は、支持部91が第1プリント基板9に当接するように配置されたとき、第1プリント基板9と支持部91との間に隙間を生じさせることで、第1プリント基板9上への実装を可能にしており、例えば、コネクタ38A、38Bが実装される。
支持部91の四隅には切り欠き部94を有し、第4角部87A、87Bを形成するときに曲げられない、支持部91が延長した延長部95A、95B、95C、95Dが形成されている。
【0149】
案内部90A、90Bの長手方向端部には、向かい合うように折り曲げられた爪部96A、96B、96C、96Dが形成されている。
また、案内部90A、90Bには長孔97A、97B(図14には点線で示す)が形成されており、案内部90A、90Bの中に装入されるベース部82A、82Bに固定されるネジ98A、98Bが長孔97A、97Bに挿通する。
【0150】
ベース部82A、82Bは、平らな中央部99A、99Bと、この中央部の両端が起き上がって2つ側面100A、100B、100C、100Dを有し、さらに、先端(切断面)が向かい合うように折り曲げられて、中央部99A、99Bと平行な天面101A、101B、101C、101Dを形成している。第1実施形態では摺動部56A、56Bを折り曲げで形成したが、第2実施形態では、中央部99A、99Bと、2つの側面100A、100B、100C、100Dと、天面101A、101B、101C、101Dとで摺動部を形成している。
【0151】
中央部99A、99Bには第5の貫通孔102A、102Bが形成され、ネジ98A、
98Bが螺着する。また、中央部99A、99Bにはパイプ84A、84Bを支持するとともに圧縮ばね83A、83Bの一端面が当接して圧縮ばね83A、83Bの付勢力を受ける受け部103A、103Bを有する。
【0152】
中空状のパイプ84A、84Bは、圧縮ばね83A、83Bのコイル部内に挿通させ受け部103A、103Bに通されて支持されるとともに、圧縮ばね83A、83Bとともに案内部90A、90Bに収容され、両端は爪部96A、96B、96C、96Dが差し込まれて保持されるようになっている。このパイプは、圧縮ばね83A、83Bが圧縮したときの蛇行を回避し、ばね定数を常に一定にさせる。また、長孔97A、97Bから圧縮ばね83A、83Bが脱出することを防止する機能も兼ねる。
【0153】
このように形成されたベース部82A、82B、圧縮ばね83A、83B、パイプ84A、84Bは、それぞれ案内部90A、90Bに挿入される。ベース部82A、82Bは圧縮ばね83A、83Bの付勢を受けて矢印D方向に付勢されるが、矢印D側の爪部96B、96Dにより脱出不能になっている。また、案内部90A、90Bの内面に、ベース部82A、82Bの中央部99A、99B、側面100A、100B、100C、100D、天面101A、101B、101C、101Dが摺動可能に面当接する。すなわち、両者は非切断面が摩擦しながら摺動する構成となっているので、摩擦抵抗を小さくしている。なお、摩擦抵抗を小さくするためにベース部82A、82Bは非切断面を有しない成形品で構成して、面当接をさせてもよい。本第2実施形態及び第1実施形態では、廉価な板材を使用する構成とした。
【0154】
下カバー3Bには、ベース部82A、82Bが固定される固定部104A、104B、一方の固定部104B近傍にはレバー105を摺動可能に保持する保持部106を有する。レバー106の一端は下筐体3の左側面に突出した突片部107を有し、他端は、一方の案内部90Bの側面100Cに係止する係止爪108を有する。固定部104A、104Bは中空状のボスが主面3Aに立設したものであり、ネジ98A、98Bが挿通する。
【0155】
次に、本体部85の組み方について説明する。なお、本第2実施形態のスライド部は第1実施形態のスライド部と置換した構成である。
2Cに形成された装着用開口部40にスライド部80を組み付けると、2つの案内部90A、90Bが装着用開口部40を通過し、装着用開口部40周囲の補強リブ40B上の位置決め部40Aに延長部95A、95B、95C、95Dが搭載されて位置決めされる。すなわち、第1実施形態と同様に、補強用リブ40Bは延長部95A、95B、95C、95Dを載せ、スライド部80が装着用開口部40を通過できないようにしている。
【0156】
次に、レバー105を装着した下カバー3Bを上ケース2Cに対向させると、下カバー3Bと上ケース2Cとで突起3Dの高さだけ隙間を形成する。この状態で、固定部104A、104Bをベース部82A、82Bの中央部99A、99Bに当接させ、ネジ98A、98Bを第5の貫通孔102A、102Bに螺着すると、ベース部82A、82Bは下カバー3Bに固定される。上ケース2Cを下カバー3Bから外そうとしても、ベース部82A、82Bが固定されており、かつ、ガイドレール部81が装着用開口部40を通過できないので、外すことができない。また上ケース2Cを下カバー3Bにさらに密着させようとしても、突起3Dがあるので密着できない。
従って、下カバー3Bと上ケースとの間の隙間は常に一定に維持される。
【0157】
以後、フレキシブルプリント基板36と線材37は第3スリット86に通過させ、上カバー2B、下ケース3C等を第1実施形態と同じように組み付けると、本体部85が完成する。
【0158】
第1実施形態と同様に、ガイドレール部81の支持部91は第1プリント基板9側に露出している。この露出面と第1プリント基板9を当接させるだけで、両者を電気的に接続できる。また、第1プリント基板9と上筐体2の裏面2Dとの距離は、案内部の厚みでのみ決定されている。
なお、電気的接続方法は、第1実施形態で説明したように、専用ばねやばね片によって接続しても構わない。
【0159】
次に、動作について説明する。本体部85が開状態では、圧縮ばね83A、83Bは上筐体2の重畳部12の領域で伸長している。下筐体3に対し、上筐体2に矢印D方向の力を加えて上筐体2を移動させると、圧縮ばね83A、83Bは圧縮され、所定長の移動後、レバー105の係止爪108が側面100Cに係合し、圧縮ばね83A、83Bの復帰が抑制される。すなわち、閉状態となる。レバー105の突片部107を押操作すると、係止爪108による係止が解除され、圧縮ばね83A、83Bの伸長が開始し、下筐体3に対して上筐体2が所定量摺動後、ベース部82A、82Bが爪部96B、96Dに当接して開状態となる。
【0160】
閉状態から開状態になるとき、ベース部82A、82Bが案内部90A、90Bの中を摩擦しながら摺動するが、互いに非切断面同士を当接しているので、摺動摩擦が小さくスムーズな動作が行われるようになっている。しかも、廉価な板材で構成しているので、コストダウンが図れる。
【0161】
仮に、切断面が、案内部90A、90Bの内面で、かつ長孔97A、97B周囲に当接させるような構造の場合、切断面のエッヂが案内部90A、90Bの内面に当接しながら摺動するので、エッヂに摩耗が発生し、安定した摺動が行われなくなってしまう。
故に、互いの面が当接させられるような本第2実施形態の形状により、安定した動作が行える構造を実現している。
【0162】
また、2つの案内部90A、90Bは支持部91によって一体的に連結したことにより、ガイドレール部81が製作された段階で両者の平行度(ベース部の進行方向)が確保される。また、このガイドレール部81からなるスライド部80を上筐体2に組みつけても、部品状態時の平行度が継続して維持されるので、下筐体3の摺動案内がスムーズに行うことができる。別体であれば、上ケース3Cに取り付けたとき、互いが平行になるように、上ケース3Cには厳しい寸法精度が要求される。進行方向側が狭くなるなど平行度が得られていないと固定部の間隔が不変であるため、ベース部が摺動端まで案内ができなくなる。或いは、上ケース2Cが撓むような変形を有していれば、製品毎に平行度が異なり、付勢力が変化してしまったり、開状態まで開ききらなかったり閉状態にならない事態が生じてしまう。
【0163】
なお、圧縮ばねを使用した例として述べたが、引張ばねでもよい。引張ばねのときは、一端は摺動端に、他端はベース部に固定するとよい。圧縮ばねの場合には、上筐体2の重畳部12の領域で伸びた状態で開状態となるが、引張ばねの場合には、上筐体2の重畳部12の領域で伸びた状態が閉状態となる。なお、引張ばねの場合、常に伸長状態であるため、蛇行が発生しないので、パイプは不用である。ばねは、案内部の大きさ、端末の厚みによって適宜選択すればよい。
【0164】
以上、第2実施形態についてまとめる。
第1実施形態のスライド部との相違点は、(1)案内部が箱状(2)ベース部が別体(3)付勢手段は圧縮ばねである。案内部は長孔を境にベース部の両端を支持する両持構造なので、2つの筐体2、3が離遠するような力が加わっても第5、第6角部に力が加わる構造となる。ゆえに、案内部の変形を最小にすることができる。第1実施形態の場合、第2角部にのみ力が加わる構造(所謂、片持構造)なので、第1実施形態より第2実施形態のほうが、上述の離遠するような力に対して有利である。また、ベース部が別体であるが、案内部を単一部材で構成したことにより2つの案内部の平行度が確保されているので、平行摺動を行うことができ、第1実施形態より不利にはならない。
従って、上述の差異はあっても、第1実施形態のまとめに述べた効果は、第2実施形態で詳述したスライド部でも同様に得られる。
【0165】
なお、本発明は上述した第1第2実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態でスライド部選択し実施し得るものである。
【0166】
例えば、図16に示すスライド部4Aは、ガイドレール部31Aに別部材の枠体31Bが取り付けられている。枠体31Bは、ガイドレール部31の平面形状に略一致するとともに、両長辺に二個づつ、合計四個の延長部52Aが設けられている。
このようなスライド部4Aによれば、案内部に切り欠きを設けずに延長部を構成することができるので、切り欠きから水の浸入が完全に排除される。この種の携帯電話は把持して使用するため、誤って落下してしまう場合がる。時には、水溜まりにも落とすときが有り得る。第1実施形態では、切り欠きを十分に小さくするとともに装着用開口部周囲に密着させることで容易な浸入を回避したが、完全な水没対策として有効である。
【0167】
なお、枠体31Bは、特定箇所が突出する延長部52Aを設けずに、ガイドレール部31よりも大きな平面形状を有することにより、当該枠体31Bの縁部全域を延長部としてもよい。
すなわち、延長部はガイドレール部の案内部より外側に設けているので、スライド部は上筐体の装着用開口部を通過できない。このスライド部の一部を上筐体内面側に露出させながらガイドレール部に摺動可能に保持されたベース部が下筐体に固定されているので、上筐体と下筐体とは、安定した摺動動作が行えるようになっている。
【0168】
また、ガイドレール部にコの字や箱状の案内部を形成した実施形態として説明した。ベース部に案内部を形成しガイドレール部に摺動部を形成したり、または、一方に案内軸、他方にすべり軸受部を形成してベース部がガイドレール部に摺動可能に案内される構造であれば、スライド部の案内部形状や摺動部形状は上述した形態に限らずともよく、ガイドレール部の一部を上筐体内面側に露出することは可能である。
また、摺動面に摺動特性のよい材料で形成した摺動部材を適宜設けても構わない。
【0169】
また、第1ねじりコイルばね、第2ねじりコイルばねは前述した第1実施形態において例示した形態に限定せず、図17および図18に示す第1ねじりコイルばね33A、第2ねじりコイルばね34Aを採用してもよい。
図17に示すように、第1ねじりコイルばね33Aは、右巻きで形成された第1コイル部(コイル部)59Aと、両端部に形成されたリング部60A、60Aを有している。第2ねじりコイルばね34Aは、左巻きで形成された第2コイル部(コイル部)62Aと、両端部に略コの字状に折り曲げられた折曲げ部63A、64Aを有している。
【0170】
これらの第1ねじりコイルばね33A、第2ねじりコイルばね34Aは、前述した第1ねじりコイルばね33、第2ねじりコイルばね34と同様に、第2ねじりコイルばね34Aの折曲げ部63Aが第1ねじりコイルばね33Aのリング部60Aに通した後にベース部32の貫通孔57に引っ掛けられて連結され、第2ねじりコイルばね34Aの折曲げ部64Aが第1ねじりコイルばね33Aのリング部60Aに通した後に第2の貫通孔49に引っ掛けられて取り付けられる。
【0171】
また、第1ねじりコイルばね33Aの第1コイル部59Aを右巻き、第2ねじりコイルばね34Aの第2コイル部62Aを左巻きとしたため、前述した第1ねじりコイルばね33、第2ねじりコイルばね34と同様に、第1ねじりコイルばね33A、第2ねじりコイルばね34Aを介在させるための空間の高さ方向(中央部53と凹部43とが形成する隙間)が増すことが抑えられる。
【0172】
図18(a)に示すように、第1、第2のねじりコイルばね33A、34Aは、共に貫通孔57の軸心を回転中心として回動可能になっている。
そして、本体部閉状態から本体部開状態への移行に伴って、第1、第2のねじりコイルばね33A、34Aが貫通孔57の軸心を回転中心として回動するにあたっては、第1のねじりコイルばね33Aが図18(b)中時計回りに回動するが、第2のねじりコイルばね34Aが一時的に図18(b)中時計回りに回動する。
【0173】
すなわち、第2のねじりコイルばね34Aは、第1のねじりコイルばね33Aから離れる。
その後、第2のねじりコイルばね34Aは、図18(c)中時計回りに回動することにより、第1ねじりコイルばねが存在していた位置に向かうように、第1のねじりコイルばね33Aに追従する。
【0174】
すなわち、第1ねじりコイルばね33Aは、リング部60A、60A間の寸法を半径として回動するとともに、第2ねじりコイルばね34Aは、折曲げ部63A、64A間の寸法を半径として回動するため、前述した第1実施形態において例示した第1ねじりコイルばね、第2ねじりコイルばねに比較して、本体部のスライドストロークを長くできる。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明のスライド型携帯端末は、スライド部に付勢力を付与するばねを設けた構成であって、スライド部を構成するガイドレール部を上ケースに取り付けるとき、ガイドレール部が通過しないようにしたので、締結用のネジが不用となる。また、簡単な構造で接地できるので、上筐体の上端部にアンテナを配置したとき、高利得なアンテナを実現する。さらに、可撓性配線部材の寿命特性を向上させられるなど、装置の大型化、コストアップが回避されるという効果を有し、携帯電話機、PDA、モバイル型のPC、さらに軽量であればノート型PCなどのようなスライド可能な小型電子機器におけるスライド装置に適用するのに好適である。
【符号の説明】
【0176】
1、85 スライド型携帯電話(携帯端末)の本体部
2 上筐体(第1筐体)
3 下筐体(第2筐体)
4、80 スライド部
6 表示部
9 第1プリント基板
10 アンテナ
23 操作部
28 第2プリント基板
31、81 ガイドレール部
32、82 ベース部
36 フレキシブルプリント基板
37 線材
40 装着用開口部
46、90 案内部
47、91 支持部
52、95A、95B、95C、95D 延長部
53、99 中央部
56 摺動部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プリント基板を有する第1筐体と、
第2プリント基板を有する第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的にスライド可能に連結するスライド部と、
前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間を電気的に接続する同軸状の線材と、
前記第1プリント基板と前記第2プリント基板との間を電気的に接続する帯状の可撓性プリント基板と、
を備え、
前記第1筐体と前記第2筐体が重なった状態において、前記線材は、前記可撓性プリント基板の内側に配置される、スライド型携帯端末。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−54977(P2012−54977A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225049(P2011−225049)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2009−272333(P2009−272333)の分割
【原出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】