説明

スライド式収納庫

【課題】収納部本体を出し入れするだけで傾倒収納部を傾倒でき、傾倒後はその傾倒姿勢をそのまま維持することのできる使い勝手と収納性に優れたスライド式収納庫を提供する。
【解決手段】収納部本体5がキャビネット3の前方に完全に引き出される直前の段階において当接頭部33が回動作動突起47に当接して、傾倒収納部7は傾倒作動部材31によって圧縮コイルバネ45の付勢力に抗して押され使用者側に傾倒する。収納部本体5をキャビネット3の前方に完全に引き出した後も傾倒収納部7の傾倒姿勢はそのまま維持されるから、使用者は一升瓶、包丁、まな板等の被収納物Aを傾倒収納部7の上方において固定状態で収納部本体5に対して設けられている棚板49等に邪魔されることなく容易に安心して取り出したり、収納したりすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばシステムキッチンのキャビネットの一部に組み込まれるスライド式の収納庫に係り、特にキャビネット内に格納されている収納部本体を手前に引き出すと側面方向に傾倒するスライド式収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばシステムキッチンのスライド式の収納庫は、キャビネットに対し格納、引出し自在に収納庫本体が備えられており、この収納庫本体に包丁等を収容しておく収納部が設けられている。
しかしながら、従来のスライド式収納庫の収納部は収納庫本体に固定されており動かすことができない。従って、包丁等の被収納物を常に収納部の真上から出し入れしなければならず、甚だ使い勝手が悪い。特に包丁等のようにある程度長尺な台所用品は特に出し入れし難いという問題がある。
【0003】
また上記の収納部の上部空間は被収納物を出し入れするため開放しておく必要がある。従って収納スペースに利用することができず、全くのデッドスペースになってしまう問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記背景技術が抱える問題点の存在を踏まえてなされたものであって、収納部本体を出し入れするだけで自動的に傾倒収納部を傾倒させたり、直立姿勢に移行させたりることができ、一旦収納部を傾倒させた後はその傾倒姿勢をそのまま維持することができて、収納部の上部空間を有効利用することができる使い勝手と収納性に優れたスライド式収納庫を提供することを目的とする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、キャビネットと、前記キャビネットに格納、引出し自在に備えられる収納部本体と、前記収納部本体に対して所定の角度側面方向に回動し得るように備えられる傾倒収納部と、前記傾倒収納部の一部がキャビネット内にある状態では傾倒収納部の回動を規制して直立姿勢を維持し、傾倒収納部がキャビネットから完全に引き出された状態では傾倒収納部の回動を許容して傾倒姿勢に移行させてそのまま傾倒姿勢を維持する傾倒復帰機構とを備えていることを特徴とするスライド式収納庫である。
【0006】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したスライド式収納庫において、傾倒復帰機構には傾倒収納部を常時直立姿勢となる方向に付勢する付勢手段が設けられており、且つ一端が傾倒収納部に接続され、他端に当接頭部が備えられた傾倒作動部材と、キャビネットの前面開口付近の内側面に設けられ、前記当接頭部に当接することで前記傾倒収納部を前記付勢手段の付勢力に抗して傾倒方向に回動させる回動作用突起とを備えていることを特徴とするスライド式収納庫である。
【0007】
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載したスライド式収納庫において、傾倒復帰機構には傾倒収納部を常時傾倒方向に付勢する付勢手段が設けられており、且つ傾倒収納部に接続されると共にキャビネットの内側面に当接するように側方に張り出した形状の傾倒作動部材が設けられていることを特徴とするスライド式収納庫である。
【発明の効果】
【0008】
収納部本体を出し入れするだけで自動的に傾倒収納部を傾倒させたり、直立姿勢に移行させたりすることができ、一旦収納部を傾倒させた後はその傾倒姿勢をそのまま維持することができて、使い勝手を向上することができる。
また、収納部の上部空間も有効利用することができて、収納性を向上することができる。
非傾倒収納部を一旦傾倒姿勢に移行した後は、収納部本体をキャビネット側に移動させない限り、その傾倒姿勢をそのまま維持できるから被収納物の取り出し及び収納が容易に安心して行えるようになる。
【0009】
傾倒収納部側に当接頭部を備えた傾倒作動部材を設け、キャビネットの前面開口付近の内側面に当接頭部に当接する回動作用突起を設けた構造を採用した場合には、収納部本体の出し入れに際し当接頭部と回動作用突起は常時摺接しているのではなく、収納部本体を完全に引き出す手前の段階から摺接することになるから当接頭部と回動作用突起の摩耗を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のスライド式収納庫を実施するための最良の形態を説明する。
図1〜4に実施の形態1に係るスライド式収納庫1を示す。このスライド式収納庫1は、システムキッチンに備えられる。
キャビネット3は前後方向に長い角箱状を為しており、このキャビネット3に収納部本体5が収容される。
キャビネット3の左右の内側面の上部には収納部本体5の前後方向の移動を案内するガイド部材11が設けられている。またキャビネット3の左右の内側面の下部には収納部本体5を前方に引き出し可能に保持する所謂フルオープンタイプのスライドレール13が設けられている。
【0011】
収容部本体5の構成について説明する。
符号6は籠部を示し、この籠部6は丸棒状の複数本の線材8を適宜折り曲げて形成された角枠状の部材である。籠部6の底面には底板15が設けられている。また籠部6の前面には矩形平板状の前面パネル17が設けられており、前面パネル17には把手19が取り付けられている。
【0012】
傾倒収納部7は上面が開口する偏平な角箱状の部材であり、上縁にはプラスチック製の保護カバー21が取り付けられている。傾倒収納部7は、その前面側と後面側の中間付近から下方の部分は断面凹字状の保持ブラケット23によって保持されている。一対の保持ブラケット23の下部には回動軸25がそれぞれ設けられており、回動軸25は前方と後方にそれぞれ突出している。
回動軸25は収納部本体5に取り付けられたブラケット27及び軸受部材29によって回動自在に支持されており、傾倒収納部7は回動軸25を中心として側面方向に所定の角度回動できる。
【0013】
傾倒復帰機構9の構成について説明する。
符号43は長穴プレートを示し、この長穴プレート43には上下方向に延びる長穴44が形成されている。長穴プレート43は籠部6の下部、即ち籠部6の下部を構成する2本の線材8に固定されている。
符号31は傾倒作動部材を示し、この傾倒作動部材31は大径部39と小径部40を有し段差が形成された丸棒と、この小径部40の先端に設けられたプラスチック製の球形の当接頭部33とから構成されている。大径部39の直径は長穴44の幅寸法より大きく、小径部40の直径は長穴44の幅寸法より僅かに小さく設定されている。
【0014】
傾倒作動部材31の大径部39は傾倒収納部7の保持ブラケット23に固定されており、小径部40は長穴プレート43の長穴44に動作自在に挿通されている。そして小径部40には付勢手段としての圧縮コイルバネ45が嵌められており、この圧縮コイルバネ45は一端部が長穴プレート44に弾接し、他端部が当接頭部33に弾接している。圧縮コイルバネ45の付勢力によって傾倒収納部7は直立姿勢を維持するようになっている。
【0015】
キャビネット3の前面開口付近の内側面には当接頭部33に当接することで傾倒収納部7を圧縮コイルバネ45の付勢力に抗して傾倒方向に回動させる回動作動突起47が設けられている。
傾倒復帰機構は、傾倒作動部材31、長穴プレート44、圧縮コイルバネ45及び回動作動突起47によって構成されている。
【0016】
次にこのようにして構成される実施の形態1に係るスライド式収納庫1の使用の手順と作動の態様を(1)引出し時と(2)格納時に分けて説明する。
(1)引出し時(図2、3、4参照)
キャビネット3内に格納された状態のスライド式収納庫1を使用する場合には前面パネル17の前面に設けられている把手19に指を掛けて収納部本体5を手前に引き出すようにする。
この時、当接頭部33はキャビネット3の内側面に対して非接触状態であるからキャビネット3側からの摩擦抵抗を受けることなく収納部本体5はガイド部材11とスライドレール13に案内されて円滑に引き出される。
【0017】
そして収納部本体5がキャビネット3の前方に完全に引き出される直前の段階において当接頭部33が回動作動突起47に当接して、傾倒収納部7は傾倒作動部材31によって圧縮コイルバネ45の付勢力に抗して押され使用者側に傾倒する。この際に、傾倒作動部材31が傾くが、小径部40は上下方向に延びる長穴44に動作自在に挿通されているので、傾倒作動部材31の動作が規制されることはない。
収納部本体5をキャビネット3の前方に完全に引き出した後も傾倒収納部7の傾倒姿勢はそのまま維持されるから、使用者は一升瓶、包丁、まな板等の被収納物Aを傾倒収納部7の上方において固定状態で収納部本体5に対して設けられている棚板49等に邪魔されることなく容易に安心して取り出したり、収納したりすることができる。
【0018】
(2)格納時(図2、3、4参照)
キャビネット3の前方に引き出された状態の収納部本体5をキャビネット3内に格納する場合には前面パネル17の前面に設けられている把手19を手に持って収納部本体5をキャビネット3側に押し込む。
しばらくすると当接頭部33と回動作動突起47の当接状態が解除されるようになり、傾倒収納部7は圧縮コイルバネ45の付勢力によって直立姿勢になる。
以後、当接頭部33はキャビネット3の内側面に対して非接触状態となり、収納部本体5はキャビネット3側から摩擦抵抗を受けることなくガイド部材11とスライドレール13に案内されてキャビネット3内に押し込まれて行き、格納状態となる。
【0019】
図5、6に実施の形態2に係るスライド式収納庫51を示す。尚、実施の形態2に係るスライド式収納庫51の基本的な構成は前記実施の形態1に係るスライド式収納庫1とほとんど同様であるので、同様の構成については実施の形態1の説明で使用した用語と符号を使用してその説明を省略し、ここでは異なる構成である傾倒復帰機構53を中心に説明する。
実施の形態2では前記実施の形態1と異なって、傾倒収納部7は自重によって常時傾倒するように設定されており、本実施の形態においては付勢手段は自重(重力)である。
【0020】
傾倒収納部7の後端部に対して傾倒復帰機構53の構成部材の1つである傾倒作動部材55が設けられており、キャビネット3の内側面に対して傾倒作動部材55の一部が常時摺接する傾倒復帰機構53のもう1つの構成部材である摩擦低減部材57が設けられている。
傾倒作動部材55は収納部本体5の構成部材である丸棒状の部材を適宜折り曲げることによって形成されている。
【0021】
傾倒作動部材55の一端は傾倒収納部7の後端部における保持ブラケット23に対して溶接によって接続されている。当該溶接部位は回動軸25近傍における自由端側の保持ブラケット23のコーナー部付近に設定されている。
また傾倒作動部材55は保持ブラケット23の外側面に沿ってキャビネット3の内側面に向けて延長形成されており、延長形成された傾倒作動部材55の他端部には鉤状に大きく曲げられた当接部59が設けられている。
【0022】
摩擦低減部材57はポリ四フッ化エチレン等のプラスチック材料によって形成される前後方向に長い平板状部材である。そして摩擦低減部材57の表面は平滑に加工されており、キャビネット3の内側面に当接するように側方に大きく張り出した上記当接部59が常時、当該摩擦低減部材57をキャビネット3の内側面側に押圧した状態で摺接する。
【0023】
この他、実施の形態2では被収納物Aとして包丁を想定しており、傾倒収納部7の上縁には保護カバー21に代えて包丁を挿し込むための4本のスリット61が形成された蓋材63が取り付けられている。
また保持ブラケット23の形状も実施の形態1のものと相違しており、傾倒収納部7の前面及び後面と、傾倒方向と反対側の側面を覆うように設けられる前後方向に長い平面視凹字形状の1枚の保持ブラケット23によって構成されている。
【0024】
次にこのようにして構成される実施の形態2に係るスライド式収納庫51の使用の手順と作動の態様を(1)引出し完了時と(2)移動時及び格納時に分けて説明する。
(1)引出し完了時(図6参照)
前面パネル17の前面に設けられている把手19に指を掛けて収納部本体5を手前にいっぱいに引き出すと、図示のように今まで摩擦低減部材57に摺接していた当接部59における屈曲部65が摩擦低減部材57から外れて屈曲部65より更に先端側の部位の当接部59が摩擦低減部材57に当接した状態となる。
この状態では今まで傾倒収納部7の直立姿勢を維持していた傾倒作動部材55の付勢力が弱まるため、傾倒収納部7は回動軸25を中心にして使用者側に回動し傾倒姿勢となる。またこの状態では、傾倒収納部7は傾倒姿勢が維持され、使用者は容易に、安心して被収納物Aの取り出し及び収納を実行することができる。
【0025】
(2)移動時及び格納時(図6参照)
収納部本体5の移動時や格納時には当接部59における屈曲部65が摩擦低減部材57に対して摺接されているから、傾倒収納部7は直立姿勢となり、傾倒収納部7がキャビネット3の内側面等に摺接することはなく、収納部本体5の円滑な移動ができる。また摩擦低減部材57によって当接部59とキャビネット3の内側面との間に生ずる摩擦抵抗は極力小さく抑えられる。
【0026】
以上、本発明を実施するための最良の形態として図示の実施の形態1と実施の形態2を例に採って詳述してきたが、本発明の具体的構成は図示の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、本発明のスライド式収納庫1、51はシステムキッチン用のキャビネット3に限らず、靴や傘、ワインやウイスキー等を始めとする種々の被収納物Aを対象とした種々のキャビネット3に対して適用することが可能である。また図示は省略するが、収納部本体5と傾倒収納部7との間に傾倒収納部7の直立姿勢を設定する位置設定用のストッパを設けることも可能であり、このストッパをプラスチック材料等の弾性体によって形成すれば異音等が発生することはない。
【0027】
また実施の形態1において設けた当接頭部33と回動作動突起47の配置を逆にして当接頭部33をキャビネット3側、回動作動突起47を傾倒収納部7側に設けることも可能である。
同様に実施の形態2において設けた当接部59と摩擦低減部材57の配置を逆にして当接部59をキャビネット3側に摩擦低減部材57を傾倒収納部7側に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は例えばシステムキッチン用のキャビネットに取り付けることのできるスライド式収納庫の製造、使用分野等において利用でき、特に傾倒収納部の傾倒を収納部本体の出し入れによって自動的に行うことを可能にし、傾倒収納部の傾倒姿勢を維持することによって安心して被収納物の出し入れを行いたい場合に利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスライド式収納庫を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスライド式収納庫を示す背板を取り外した状態の背面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るスライド式収納庫を示すキャビネットの天板を取り外した状態の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るスライド式収納庫における傾倒作動部材周辺を拡大して示す斜め後方からの斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るスライド式収納庫を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るスライド式収納庫における傾倒作動部材周辺を拡大して示す上方からの斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 スライド式収納庫 3 キャビネット 5 収納部本体
6 籠部 7 傾倒収納部 8 線材
9 傾倒復帰機構 11 ガイド部材
13 スライドレール 15 底板 17 前面パネル
19 把手 21 保護カバー 23 保持ブラケット
25 回動軸 27 ブラケット 29 軸受部材
31 傾倒作動部材 33 当接頭部 35 取付金具
37 固定ナット 39 大径部 40 小径部
43 長穴プレート 44 長穴
45 圧縮コイルバネ 47 回動作動突起
49 棚板 51 スライド式収納庫 53 傾倒復帰機構
55 傾倒作動部材 57 摩擦低減部材 59 当接部
61 スリット 63 蓋材 65 屈曲部
A 被収納物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットと、前記キャビネットに格納、引出し自在に備えられる収納部本体と、前記収納部本体に対して所定の角度側面方向に回動し得るように備えられる傾倒収納部と、前記傾倒収納部の一部がキャビネット内にある状態では傾倒収納部の回動を規制して直立姿勢を維持し、傾倒収納部がキャビネットから完全に引き出された状態では傾倒収納部の回動を許容して傾倒姿勢に移行させてそのまま傾倒姿勢を維持する傾倒復帰機構とを備えていることを特徴とするスライド式収納庫。
【請求項2】
請求項1に記載したスライド式収納庫において、傾倒復帰機構には傾倒収納部を常時直立姿勢となる方向に付勢する付勢手段が設けられており、且つ一端が傾倒収納部に接続され、他端に当接頭部が備えられた傾倒作動部材と、キャビネットの前面開口付近の内側面に設けられ、前記当接頭部に当接することで前記傾倒収納部を前記付勢手段の付勢力に抗して傾倒方向に回動させる回動作用突起とを備えていることを特徴とするスライド式収納庫。
【請求項3】
請求項1に記載したスライド式収納庫において、傾倒復帰機構には傾倒収納部を常時傾倒方向に付勢する付勢手段が設けられており、且つ傾倒収納部に接続されると共にキャビネットの内側面に当接するように側方に張り出した形状の傾倒作動部材が設けられていることを特徴とするスライド式収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−144010(P2007−144010A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345086(P2005−345086)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000137373)株式会社マッキンリー (25)
【Fターム(参考)】