説明

スラグ排出システム

【課題】レイアウトの自由度が高く、低コストで安定したスラグ排出を可能にする信頼性の高いスラグ排出システムを提供する。
【解決手段】ガス化炉1で可燃性ガスを生成して排出されたスラグSを冷却水中で急冷してガラス状のスラグSとし、ガス化炉1から冷却水とともに系外へ排出されるスラグSをスラグ溜め21に回収した後、スラグSをスラグ溜め21からスラグ貯蔵タンク13へ搬送するように構成されたスラグ排出システムが、スラグ溜め21からスラグSを水中に回収してスラリー化するスラグスラリータンク23と、スラグスラリータンク23とスラグ貯蔵タンク13との間を連結するスラグスラリー配管25と、スラグスラリー配管25に配設され、スラグスラリータンク23内のスラグスラリーを吸引してスラグ貯蔵タンク13へ送出するポンプ27と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば石炭ガス化炉、石炭ガス化複合発電プラント及び廃棄物等の溶融プラントに適用されるスラグ排出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融プラントの一種である石炭ガス化炉において、可燃性ガスを生成して排出される灰分(スラグ)は、炉内で溶融された後にスラグ冷却水中に落下して急冷され、ガラス状の水砕スラグとなる。この水砕スラグは、数ミリメートルから数十ミリメートル程度の粒子となり、たとえば図4に示すようなスラグ排出システムを備えている。
このスラグ排出システムでは、ガス化炉1の下部にあるスラグホッパ3からスラグロックホッパ5へ貯められる。
スラグロックホッパ5は、定期的にホッパ内のスラグを排出するため、ロックホッパ入口(上部)の弁7を閉じてガス化炉内圧力を締め切った後、ロックホッパ出口(下部)の弁9を開いてスラグ冷却水とともにスラグを系外へ排出する。
【0003】
ここで、スラグロックホッパ5から排出されたスラグSは、スラグ溜め11内の下部に沈降する。このスラグ溜め11には、内部のスラグSをスラグ貯蔵タンク13に向けて輸送するためスラグコンベア15が設置されている。
このスラグコンベア15としては、従来スクレーパコンベア(特許文献1参照)やスクリューコンベア(特許文献2参照)等が使用されており、従って、スラグ溜め11内の下部に沈降したスラグはスラグコンベア15により搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−88832号公報
【特許文献2】特表2003−518157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したスラグ排出システムの従来技術によれば、スラグ溜め11からスラグ貯蔵タンク13へスラグSを搬出する輸送手段として、スクレーパコンベアやスクリューコンベア等のスラグコンベア15が用いられている。このような機械的輸送手段は、輸送角度を大きくとることができないため、設備の大型化に伴ってスラグ貯蔵タンク13が大型化すると、タンク高さの増大に対して輸送角度の制約が障害となる。すなわち、コンベアのような機械的輸送手段の輸送角度に関する制約内でスラグ貯蔵タンク13の上部までスラグSを搬送するためには、十分な搬送長さを確保して対応することが必要となる。
【0006】
また、スラグコンベア15のような機械的輸送手段は、直線的な動作によりスラグSを搬送するため、スラグ溜め11からスラグ貯蔵タンク13までの搬送経路についても制約を受ける。すなわち、スラグ溜め11及びスラグ貯蔵タンク13の配置に制約を受けるため、スラグ排出システムを備えたプラントにおいては、レイアウトの自由度が低くなるという問題を有している。
【0007】
また、プラントの大型化に伴ってスラグSの輸送量が増大すると、スラグコンベア15を大型化する制約(チェーンの強度、モータ・減速機の動力など)から、複数のスラグコンベア15を設置して対応することが必要となる。このとき、スラグコンベア15及びスラグ貯蔵タンク13の位置関係等から、プラントを配置するスペースが広くなり、かつ、複数の搬送装置等を並列運用する必要がある。
【0008】
この結果、スラグ排出システムを備えたガス化炉等のプラント設備においては、イニシャルコスト及びメンテナンスコストが増加するとともに、信頼性の低下が懸念される。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レイアウトの自由度が高く、低コストで安定したスラグ排出を可能にする信頼性の高いスラグ排出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るスラグ排出システムは、溶融プラントで可燃性ガスを生成して排出されたスラグを冷却媒体の液中で急冷してガラス状のスラグとし、前記溶融プラントから前記冷却媒体とともに系外へ排出される前記スラグをスラグ溜めに回収した後、前記スラグを前記スラグ溜めからスラグ貯蔵タンクへ搬送するように構成されたスラグ排出システムであって、前記スラグ溜めから前記スラグを液状輸送媒体中に回収してスラリー化するスラグスラリータンクと、前記スラグスラリータンクと前記スラグ貯蔵タンクとの間を連結するスラグスラリー配管と、前記スラグスラリー配管に配設されて前記スラグスラリータンク内のスラグスラリーを吸引して前記スラグ貯蔵タンクへ送出するポンプと、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0010】
このようなスラグ排出システムによれば、スラグ溜めからスラグを液状輸送媒体中に回収してスラリー化するスラグスラリータンクへスラグ溜めに具備した供給装置により連続的に排出され、スラグスラリータンク内にて液状輸送媒体と共にスラグスラリータンク内からスラグスラリーとしてポンプに吸引されるため、溶融プラントから排出されたスラグは、濃度変化が抑えられて安定したスラグスラリーとなり、ポンプによりスラグスラリー配管を通ってスラグ貯蔵タンクまで搬送可能となる。この場合のスラグスラリー配管は、スクリューコンベア等の機械的輸送手段と異なり、たとえば輸送角度や直線的な動作等のような搬送経路に関する制約が大幅に緩和される。
【0011】
なお、スラグをスラグ溜めからスラグスラリータンク内の液状輸送媒体中に回収してスラリー化する際には、一般的にはスクレーパコンベアやスクリューコンベア等のスラグコンベアを使用することになる。しかし、この場合のスラグコンベアは、スラグスラリータンクがスラグ貯蔵タンクと比較して大幅に小型のものとなるので、スラグ貯蔵タンクへ搬送する場合のような搬送経路に関する制約(輸送角度や直線的な動作等)を受けることはほとんどない。
【0012】
上記の発明において、前記スラグ貯蔵タンクの上部に、前記スラグスラリー配管の出口から流出した前記スラグスラリーを前記スラグ及び前記液状輸送媒体に分離する脱水スクリーンを設置することが好ましく、これにより、スラグスラリーから分離したスラグをスラグ貯蔵タンク内に回収することが容易になる。
【0013】
上記の発明において、前記スラグ貯蔵タンクの側面に、前記スラグスラリー配管の出口から流出した前記スラグスラリーを前記スラグ及び前記液状輸送媒体に分離する脱水スクリーンを設置することが好ましく、これにより、脱水スクリーンの面積を大きく設定することができる。
【0014】
上記の発明において、前記脱水スクリーンで分離回収した前記液状輸送媒体を前記スラグスラリータンクに戻して回収するためのリターン流路を備えていることが好ましく、これにより、脱水スクリーンで分離回収した液状輸送媒体をスラグスラリータンクに戻すことができる。この結果、液状輸送媒体の循環使用により使用量を低減し、さらに、脱水スクリーンで未分離のスラグを再循環させて回収することが可能となる。
【0015】
上記の発明において、前記スラグスラリー配管の立上がり部下端に入口開閉弁及び排出弁を備えた沈降スラグ受けタンクを設置し、該沈降スラグ受けタンクにタンク内スラグパージ液体の供給系統を接続することが好ましく、これにより、系統に予期せぬトリップが生じても、スラグスラリー配管内の残留スラグによる配管閉塞を防止し、次回起動を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明によれば、溶融プラントから排出されたスラグは、濃度変化が抑えられて安定したスラグスラリーとなるため、経路等の設計自由度が高いスラグスラリー配管を通って、ポンプによるスラグ貯蔵タンクまでの搬送が可能となる。
この結果、レイアウトの自由度が高く、低コストで安定したスラグ排出を可能にする信頼性の高いスラグ排出システムとなり、従って、このスラグ排出システムを備えたガス化炉等のプラント設備は、イニシャルコスト及びメンテナンスコストの低減や信頼性の向上という顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るスラグ排出システムの第1の実施形態を示す図で、(a)はシステム構成を示す系統図、(b)はスラグスラリータンク内からスラグスラリーを吸い出すノズル周辺の拡大図である。
【図2】本発明に係るスラグ排出システムについて、第2の実施形態を示すシステム構成の系統図である。
【図3】本発明に係るスラグ排出システムについて、第3の実施形態を示すシステム構成の系統図である。
【図4】従来のスラグ排出システムを示すシステム構成の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るスラグ排出システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
たとえば石炭ガス化炉、石炭ガス化複合発電プラント及び廃棄物等の溶融プラントのように、石炭や廃棄物等のガス化原料を溶融して可燃性ガスを生成するプラントにおいては、ガス化原料を溶融して可燃性ガスを生成した後に灰分としてスラグが排出される。このスラグは、たとえば水のような冷却媒体の液中に投入され、急冷によりガラス状のスラグとなる。
ガラス状のスラグは、以下に説明するスラグ排出システムにより、溶融プラントから冷却媒体とともに系外へ排出される。すなわち、スラグ排出システムは、ガラス状のスラグをスラグ溜めに回収した後、スラグ溜め内のスラグをスラグ貯蔵タンクまで搬送するように構成された装置である。
【0019】
<第1の実施形態>
以下、本発明に係るスラグ排出システムについて、第1の実施形態を図1に基づいて詳細に説明する。なお、図1に示す実施形態のシステム構成例は、溶融プラントの一例として、石炭をガス化して可燃性ガスを得るガス化炉1への適用例が示されている。
図示のスラグ排出システムにおいて、石炭ガス化により排出されたスラグは、ガス化炉(溶融プラント)1内の下部において、スラグ冷却水(冷却媒体)の中に落下して急冷される。こうしてガラス状となったスラグは、ガス化炉1の下部に設けられたスラグホッパ3からスラグ冷却水とともにスラグロックホッパ5へ落下して貯蔵される。
スラグロックホッパ5は、ホッパ内に溜まったスラグを定期的に排出するため、上部のロックホッパ入口弁7を閉じてガス化炉1内の圧力を締め切った後、下部のロックホッパ出口弁9を開いてスラグをスラグ冷却水とともに、ガス化炉1の系外へ排出する。
【0020】
ガス化炉1の系外には、排出されたスラグ及びスラグ冷却水を回収するスラグ溜め21が設けられている。このスラグ溜め21は、スラグロックホッパ5に設けられたロックホッパ出口弁9の下部に配置され、スラグロックホッパ5から流下するスラグ及びスラグ冷却水を受け入れて回収する。
スラグ排出システムは、スラグ溜め21に回収したスラグをスラグ貯蔵タンク13へ搬送するため、スラグ溜め21からガラス状のスラグSを水(液状輸送媒体)の中に回収してスラリー化するスラグスラリータンク23と、このスラグスラリータンク23とスラグ貯蔵タンク13との間を連結するスラグスラリー配管25と、このスラグスラリー配管25に配設されてスラグスラリータンク23内のスラグスラリーを吸引してスラグ貯蔵タンク13へ送出するポンプ27とを具備して構成される。
【0021】
スラグ溜め21は、上部にロックホッパ弁9から落下するスラグS及びスラグ冷却水を受け入れる入口開口を有している。また、スラグ溜め21の底部には、スラグ溜め21内でスラグ冷却水中に沈降したスラグを最深部に集中させる傾斜面が設けられている。この場合のスラグ溜め21は、スラグ排出システムにおいて、スラグロックホッパ5から回収したスラグSを一時的に受け入れるものであるから、最終的にスラグSを貯蔵するスラグ貯蔵タンク13の容量と比較すれば、かなり小さなものとなる。
【0022】
スラグスラリータンク23は、スラグ溜め21からスラグSを回収し、タンク内の水によりスラグSをスラリー化する貯蔵容器である。このスラグスラリータンク23は、スラグ溜め21に隣接して設置され、スラグ溜め21の最深部付近からスラグコンベア22により搬送されたスラグSを受け入れて回収する。このスラグコンベア22は、スラグSの連続的な定量切り出しを目的とする小規模のものでよい。
なお、スラグスラリータンク23は、スラグ排出システムにおいて、スラグ溜め21から回収したスラグSを一時的に受け入れてスラリー化するものであるから、最終的にスラグSを貯蔵するスラグ貯蔵タンク13の容量と比較すれば、かなり小さなものとなる。
【0023】
図示のスラグコンベア22は、たとえば電動機22aにより駆動されて回転するスクリューコンベアであり、スラグ溜め21の最深部からスラグSを斜め上方へ搬送した後、下方に配置されたスラグスラリータンク23の入口開口へ落下させている。このため、スラグコンベア22の搬送距離は、スラグ溜め21の容量がスラグ貯蔵タンク13と比較してかなり小さいため、傾斜角度など搬送上の制約はほとんどない。
なお、ここで使用するスラグコンベア22は、スクリューコンベアに限定されることはなく、たとえばスクレーパコンベア等の使用も可能である。
【0024】
スラグスラリー配管25は、スラグスラリータンク23内からポンプ27で吸引したスラグスラリーを、スラグ貯蔵タンク13の上端部まで導く搬送流路である。このスラグスラリー配管25は、水とともにスラグSが流れるため、配管内面に耐摩耗処理を施すことが望ましい。耐摩耗処理の具体例をあげると、高クロム鋳鉄やセラミックス・耐摩耗材料等によるライニングが有効である。なお、ポンプ27の接液部についても、必要に応じて耐摩耗処理を施すことが望ましい。
【0025】
スラグスラリー配管25のスラグスラリー入口は、スラグスラリータンク23内の適所に配置された吸引ノズル29となる。この吸引ノズル29は、たとえば図1(b)に示すように、ノズル直径(d)を基準として、スラグスラリータンク23内の底面23aから0.25d〜10dの離間距離(H)となる範囲に配置することが好ましい。すなわち、スラグSを吸い込む吸引ノズル29の開口位置を、スラグスラリータンク23の底面23aから0.25d〜10dの高さとなる位置に設置することにより、吸引ノズル29で吸い込むスラグスラリーの濃度変化を抑えて、ポンプ27によりスラグスラリーSの安定した送出及び搬送を実現する。
【0026】
スラグスラリー配管25のスラグスラリー出口は、たとえばスラグ貯蔵タンク13の上部開口やタンク内上部等であるが、好ましくはスラグ貯蔵タンク13の上部に脱水スクリーン31を設置しておき、この脱水スクリーン31に向けてスラグスラリー出口からスラグスラリーを流出させることが望ましい。この脱水スクリーン31は、上部が開口した容器本体31aと、容器本体31aの上部開口に傾斜して設置された網状(もしくはスリット)部材31bとを具備して構成される。この場合の網状部材31bは、スラグスラリー配管25の出口から流出したスラグスラリーを通すことにより、スラグスラリーを脱水してスラグ及び水に分離する。
【0027】
脱水スクリーン31の網状部材31a上に分離されて残ったスラグSは、重力により傾斜面の網状部材31aからスラグ貯蔵タンク13内に落下する。一方、脱水スクリーン31の網状(もしくはスリット)部材31aに分離されて容器本体31aに落下した水は、容器本体31aの底面からスラグスラリータンク23へ連結されたリターン流路33を通って回収され、液状輸送媒体の水として再利用される。
なお、スラグ貯蔵タンク13内に貯蔵されたスラグSは、タンク内の貯蔵量が所定値以上とならないように、トラック35等を用いて廃棄処分等の次工程へ適宜搬送される。
【0028】
すなわち、スラグ貯蔵タンク13の上部に脱水スクリーン31を設置することにより、スラグスラリー配管25を通って搬送されてきたスラグスラリーをスラグS及び水に分離し、スラグスラリーから分離したスラグSをスラグ貯蔵タンク13内に容易に回収する回収することができる。そして、脱水スクリーン31で分離回収した水をスラグスラリータンク23に戻して回収するリターン流路33を設けると、脱水スクリーン31で分離回収した水を再利用して循環使用することができる。このような水の循環使用は、液状輸送媒体として使用する水の使用量を低減し、さらに、脱水スクリーン31で未分離のスラグSを再循環させて回収することを可能にする。
なお、スラグスラリーをスラグS及び水に分離する工程の実施は、上述したスラグ貯蔵タンク13の上部に設置した脱水スクリーン31に限定されることはなく、たとえばスラグ貯蔵タンク13内に網状(もしくはスリット)部材を設置して実施するようにしてもよい。
【0029】
このように構成されたスラグ排出システムによれば、スラグ溜め21からスラグスラリータンク23の水中にスラグSを回収してスラリー化するので、ガス化炉1から排出されたスラグSは、濃度変化が抑えられて安定したスラグスラリーとなり、ポンプ27によりスラグスラリー配管25を通ってスラグ貯蔵タンク13まで搬送可能となる。この場合のスラグスラリー配管25は、スクリューコンベア等の機械的輸送手段と異なり、たとえば輸送角度や直線的な動作等のような搬送経路に関する制約が大幅に緩和されるため、かなり自由な配管ルートを通る設計が可能となる。従って、スラグSをスラグスラリーにして搬送及び輸送することにより、スラグスラリー配管25の配管設計やスラグ貯蔵タンク13の設置レイアウトの設計自由度が増して容易になる。
【0030】
すなわち、スラグ溜め21からスラグコンベア22を経由してスラグSをスラグスラリータンク23へ供給することは、スラグスラリーの濃度変化を抑え、スラグスラリーの安定した輸送を可能にしている。さらに、スラグSを吸い込むノズル29の高さ位置(H)は、スラグスラリータンク23の底面23aよりノズル直径(d)の0.25d〜10dとなる範囲に設定されているので、ノズル29で吸い込むスラグスラリーの濃度変化を抑え、これによってもスラグスラリー配管25内を搬送されるスラグスラリーの流れを安定させることができる。
【0031】
また、リターン流路33を設けて、スラグスラリーから脱水されて分離した水をスラグスラリータンク23に戻し、スラグスラリー形成用の水として再利用するので、スラグ搬送用として消費(排水)される水量を低減することができる。このような水量の低減は、排水処理設備の小型化など、排水処理の面でも有利になる。
さらに、脱水スクリーン31で未分離となったスラグSについては、スラグスラリー形成用として再利用する水とともに再循環するので、スラグSの回収率を高めることができる。すなわち、未回収のスラグSが水とともに再循環することにより、脱水スクリーン31を再度通過することになるので、脱水スクリーン31を再度通過する際に回収して回収率を向上させることができる。
【0032】
<第2の実施形態>
続いて、本発明に係るスラグ排出システムについて、第2の実施形態を図2に基づいて詳細に説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、スラグスラリー配管25の立上がり部下端に、入口開閉弁41及び排出弁43を備えた沈降スラグ受けタンク45を設置している。すなわち、スラグスラリー配管25が上下方向に配設されている立ち上がり配管25aにおいて、最も低い位置となる最下端部から下方に分岐して沈降配管25bを設け、この沈降配管25bに入口開閉弁41及び排出弁43を備えた沈降スラグ受けタンク45を設置している。
【0033】
この沈降スラグ受けタンク45には、タンク内にタンク内スラグパージ水(スラグパージ液体)を供給する供給系統として、パージ水供給配管47が接続されている。
このように構成されたスラグ排出システムは、系統内に予期せぬトリップが生じても、スラグスラリー配管25内に残留したスラグSによる配管閉塞を防止し、次回起動を容易に行うことができる。なお、上述した入口開閉弁41及び排出弁43は、通常運転時においていずれも閉となっている。
【0034】
すなわち、通常の運転時には、入口開閉弁41が閉じられ、スラグスラリー配管25と沈降スラグ受けタンク45との間は分離されており、従って、スラグスラリーは、沈降スラグ受けタンク45がない上述した実施形態と同様に、スラグスラリー配管25内を流れてスラグ貯蔵タンク13へ搬送される。
しかし、スラグ排出システムの系統がトリップした場合には、ポンプ27の運転停止により、スラグスラリー配管25内の流れも停止する。この結果、スラグスラリー配管25内にはスラグスラリーが残留し、このスラグスラリーは、時間の経過とともに重力によりスラグSが水中を下方へ沈降して分離する。
【0035】
スラグSが立ち上がり配管25aの下部に溜まって堆積すると、トリップ解除により運転を再開する次回起動時に流れの妨げとなり、スムーズな再起動が困難になる。
そこで、系統のトリップ時には、立ち上がり配管25a中に残留しているスラグSを回収するため、トリップから短時間の内に沈降スラグ受けタンク45の入口弁41を開とする。この結果、立ち上がり配管25a内のスラグスラリーは、重力により配管中の最も低い位置にある沈降スラグ受けタンク45に流入して回収される。
【0036】
沈降スラグ受けタンク45内に回収されたスラグSは、パージ水供給配管47から供給されるタンク内スラグパージ水により、スラグスラリー配管25を経由して、スラグ貯蔵タンク13内にパージする。このとき、入口開閉弁41は開とされ、排出弁43は閉のままとする。
この後、沈降スラグ受けタンク45内に回収されたスラグSの略全量について、スラグ貯蔵タンク13にパージしたパージ完了後には、沈降スラグ受けタンク45の入口開閉弁41を閉とする。なお、排出弁43は、沈降スラグ受けタンク45内に残留したスラグSの洗浄排出時やドレン排水時等に開となる。
【0037】
このように構成されたスラグ排出システムは、系統に予期せぬトリップが生じた場合、スラグスラリー配管25内に残量したスラグSの沈降・堆積により配管が閉塞することを防止できる。また、系統のトリップ後には、沈降スラグ受けタンク45のパージも含め、スラグスラリー配管25の管内がパージされるので、トリップ解消後の運転再開時には、スムーズな起動が容易になる。
【0038】
<第3の実施形態>
続いて、本発明に係るスラグ排出システムについて、第3の実施形態を図3に基づいて詳細に説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態では、スラグ貯蔵タンク13の上部に設置した脱水スクリーン31に代えて、スラグ貯蔵タンク13Aの側面に脱水スクリーン31Aが設置されている。
【0039】
この脱水スクリーン31Aは、スラグスラリー配管25の出口から流出したスラグスラリーをスラグ貯蔵タンク13A内に受け入れた後、スラグスラリーをスラグ及び水に分離するものである。すなわち、スラグ貯蔵タンク13Aの側面を、具体的にはスラグ貯蔵タンク13Aの胴部やコーン部をスラグSが通過しない程度の開口を有する網状(もしくはスリット)部材により形成して脱水スクリーン31Aとしている。
さらに、スラグ貯蔵タンク13Aの下部外周には、脱水スクリーン31Aを通過した水を受け止める分離水溜め32が設置されている。この分離水溜め32は、回収した水を再利用するため、スラグスラリータンク23へ連結されたリターン流路33が底部に接続されている。
【0040】
このように構成されたスラグ排出システムは、すなわちスラグ貯蔵タンク13の上部に設置する脱水スクリーン13を廃止し、スラグ貯蔵タンク13Aの側面に脱水スクリーン31Aを設置したので、脱水スクリーン31Aに大きな面積を確保することができ、スラグスラリーの濃度を容易に適性化(28wt%以下、好ましくは6wt%以下)することができる。
また、脱水スクリーン31Aの面積を大きくとれるため、スクリーンの目開きを小さく(3〜8mm、好ましくは5mm)に設定することができる。しかも、スラグスラリーが脱水スクリーン31Aを通過した際に分離され、スラグ貯蔵タンク13A内に堆積したスラグSの層が濾過層として作用するので、脱水スクリーン31Aを通過して分離され、リターン流路33を通ってスラグスラリータンク23に戻る循環水に含まれるスラグSの粒子濃度が低下する。従って、たとえばリターン配管33のように、ラグスラリータンク23に戻る循環水と接液する配管材料等は、スラグSの流れによる摩耗低減により耐久性を増すことができる。
【0041】
上述した実施形態によれば、ガス化炉1等の溶融プラントから排出されたスラグSは、濃度変化が抑えられて安定したスラグスラリーとなるため、経路等の設計自由度が高いスラグスラリー配管25を通って、ポンプ27によるスラグ貯蔵タンク13までの搬送が可能になる。この結果、レイアウトの自由度が高く、低コストで安定したスラグ排出を可能にする信頼性の高いスラグ排出システムとなる。従って、このスラグ排出システムを備えたガス化炉1等のプラント設備は、イニシャルコストやメンテナンスコストを低減でき、しかも信頼性の高いものとなる。
【0042】
特に、スラグSを吸い込むノズル29の高さ(H)について、スラグスラリータンク23の底面23aから、ノズル直径(d)を基準にして0.25d〜10d程度の範囲に設置すれば、スラグスラリーの濃度変化が抑制されて安定した搬送が可能となる。
また、リターン配管33を設けてスラグスラリーから脱水分離された水をスラグスラリータンク23に戻すことにより、液状輸送媒体である水の使用量を低減し、脱水スクリーン31における未分離スラグの再循環回収が可能となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ガス化炉(溶融プラント)
3 スラグホッパ
5 スラグロックホッパ
13,13A スラグ貯蔵タンク
21 スラグ溜め
22 スラグコンベア
23 スラグスラリータンク
25 スラグスラリー配管
27 ポンプ
29 ノズル
31,31A 脱水スクリーン
33 リターン配管
45 沈降スラグ受けタンク
47 パージ水供給配管
S スラグ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融プラントで可燃性ガスを生成して排出されたスラグを冷却媒体の液中で急冷してガラス状のスラグとし、前記溶融プラントから前記冷却媒体とともに系外へ排出される前記スラグをスラグ溜めに回収した後、前記スラグを前記スラグ溜めからスラグ貯蔵タンクへ搬送するように構成されたスラグ排出システムであって、
前記スラグ溜めから前記スラグを液状輸送媒体中に回収してスラリー化するスラグスラリータンクと、
前記スラグスラリータンクと前記スラグ貯蔵タンクとの間を連結するスラグスラリー配管と、
前記スラグスラリー配管に配設されて前記スラグスラリータンク内のスラグスラリーを吸引して前記スラグ貯蔵タンクへ送出するポンプと、を具備して構成したことを特徴とするスラグ排出システム。
【請求項2】
前記スラグ貯蔵タンクの上部に、前記スラグスラリー配管の出口から流出した前記スラグスラリーを前記スラグ及び前記液状輸送媒体に分離する脱水スクリーンを設置したことを特徴とする請求項1に記載のスラグ排出システム。
【請求項3】
前記スラグ貯蔵タンクの側面に、前記スラグスラリー配管の出口から流出した前記スラグスラリーを前記スラグ及び前記液状輸送媒体に分離する脱水スクリーンを設置したことを特徴とする請求項1に記載のスラグ排出システム。
【請求項4】
前記脱水スクリーンで分離回収した前記液状輸送媒体を前記スラグスラリータンクに戻して回収するためのリターン流路を備えていることを特徴とする請求項2または3に記載のスラグ排出システム。
【請求項5】
前記スラグスラリー配管の立上がり部下端に入口開閉弁及び排出弁を備えた沈降スラグ受けタンクを設置し、該沈降スラグ受けタンクにタンク内スラグパージ液体の供給系統を接続したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスラグ排出システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74274(P2011−74274A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228592(P2009−228592)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】