説明

スラグ選別設備

【課題】スラグに含有する地金を効率的に選別可能なスラグ選別設備を提供する。
【解決手段】スラグを搬送するベルトコンベア28と、前記ベルトコンベア28の搬送経路上に配置され、前記スラグから前記スラグに含有する地金を磁力により吸着して前記ベルトコンベア28外に搬送する磁選機44と、前記磁選機44に吸着する前記地金の吸着量を検出する検出手段(重量計74)と、前記検知手段が検出した吸着量が前記磁選機の許容吸着量以上となる場合には前記ベルトコンベア28の搬送速度を下げる制御、及び/または、前記磁選機44の搬送速度を上げる制御を行なう制御部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグ選別設備に関し、スラグに含有する地金を効率的に選別可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の精錬過程にて発生するスラグは、溶融地金を含有し、精錬の方法およびそのスラグ組成によって、多種多様である。従来より、このスラグは、冷却凝固破砕処理された有効金属成分は回収してリサイクルされ、スラグは分別調整されて路盤材及び埋め立て用として供給されてきた。
【0003】
例えば製鋼スラグの処理過程は、先ず、転炉より転炉鍋車に排出された地金を含むスラグを、ピットまたはヤードに鍋傾動放流する。ここでスラグは、散水等によって強制的に冷却され、その後ある時間放置されて所定の温度まで自然冷却される。
【0004】
次に、ピットやヤードにて冷却凝固したスラグを、重機またはブルドーザー等によって適度の大きさに掘削・破砕し、トラック等によって別置のヤードへ搬入する。ここでもスラグを所定の期間を野外にて放置し、この間にスラグは自然崩壊によって一部は微細化する。次いでスラグを最終段階の加工プラントに搬入し、クラッシャー等によりさらに破砕分別し、路盤材及び埋め立て用に適したサイズに調整する。
【0005】
以上のスラグ処理工程での従来の地金の回収においては、磁選機が使用されており、回転ドラム式のものが多用されている(特許文献1乃至特許文献3参照)。これらの特許文献においては、スラグを搬送するベルトコンベアの下流側のローラが磁選機となっており、ベルトコンベアの下流の端部に到達したスラグに包含される地金を、磁力により吸いつけてスラグから分離している。しかしこの方式ではスラグと地金との分離を十分に行なうことができない、といった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−329449号公報
【特許文献2】特開平5−123605号公報
【特許文献3】特開2006−272246号公報
【特許文献4】特開2009−127094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで特許文献4においては、スラグを搬送するベルトコンベアと磁選機とを分離し、ベルトコンベアを複数段配置するととともにベルトコンベア間にスラグを破砕する破砕機またはスラグを篩い分ける篩を介装し、各ベルトコンベア上に磁選機を配置した構成を開示している。しかし、このような構成を採用しても効率的な地金の回収は十分ではなく、またベルトコンベアのような搬送手段を複数用いるためコストがかかるといった問題がある。
そこで本発明は、上記問題点に着目し、スラグから地金の回収を低コスト且つ効率的に行なうことを可能にするスラグ選別設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るスラグ選別設備は、第1には、スラグを搬送する搬送手段と、前記搬送手段の搬送経路上に配置され、前記スラグから前記スラグに含有する地金を磁力により吸着して前記搬送手段外に搬送する磁選機と、前記磁選機に吸着する前記地金の吸着量を検出する検出手段と、前記検知手段が検出した吸着量が前記磁選機の許容吸着範囲以上となる場合には前記搬送手段の搬送速度を下げる制御、及び/または、前記磁選機の搬送速度を上げる制御を行なう制御部と、を有することを特徴とするスラグ選別設備。
【0009】
スラグに含有される地金は不均一に分布するため、搬送手段に搬送される際に磁選機に到来する地金の量は時間を追って変化する。一方、磁選機により同時に吸着できる量は限られているため、磁選機は地金の許容吸着範囲を有する。よって、磁選機に吸着した地金の吸着量が、予め決められた磁選機の許容吸着範囲以上となった場合には、磁選機が吸着すべき地金を取りこぼす虞がある。しかし、上記構成により、地金の磁選機の吸着量が許容吸着範囲以上とならないように搬送手段の搬送速度、磁選機の搬送速度を調整することができるので、磁選機において地金を取りこぼすことを抑制し、効率的に地金を回収することができる。
【0010】
第2には、前記制御部は、前記検知手段が検出した吸着量が前記磁選機の許容吸着範囲以下となる場合には前記搬送手段の搬送速度を上げる制御、及び/または、前記磁選機の搬送速度を下げる制御を行なうことを特徴とする。
上記構成により、地金の回収の作業効率の低下を抑制することができるとともに、磁選機の電力コストを抑制することができる。
【0011】
第3には、前記検出手段は、前記磁選機の前記地金の搬送経路に対して交差する方向にレーザ光を照射する照射手段と、前記レーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段が前記レーザ光を受光する時間に基づいて前記レーザ光の光路を遮る前記地金の吸着量を算出する演算手段と、を有することを特徴とする。
上記構成により、地金の磁選機の吸着量を被接触で算出して、効率的に地金を回収することができる。
【0012】
第4には、前記検出手段は、前記磁選機を支持するとともに、前記磁選機の荷重に基づいて伸長する弾性体と、前記弾性体の変位に基づいて前記地金の吸着量を算出する演算手段と、を有することを特徴とする。
上記構成により、地金の磁選機の吸着量を機械的に算出して、効率的に地金を回収することができる。
【0013】
第5には、前記磁選機は、前記搬送手段上において、前記搬送手段の搬送経路に沿って一列に複数配置されるとともに、前記搬送手段との隙間が前段の磁選機から後段の磁選機に行くに従って狭くなるように配置されたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、前段の磁選機で径の大きい地金を回収し、後段に向かうととともに径の小さな地金が回収可能となり、効率的に地金を回収することができる。またこのように地金を多段階に回収する場合においても、搬送手段は1つでよいのでコストを抑制することができる。
【0015】
第6には、前記磁選機の前記搬送手段の搬送経路の上流側には前記磁選機と前記搬送手段との隙間と同程度の隙間を有するスクレーパーが配置され、前記スクレーパーは、前記搬送手段の搬送経路と鋭角に交差するように配置されたことを特徴とする。
上記構成により、搬送手段上を搬送中のスラグの磁選機への干渉を防止して効率的に地金を回収することができる。
【0016】
第7には、前記磁選機は、前記磁選機の搬出経路と、前記搬送手段の搬出経路とが鋭角に交差するように配置されたことを特徴とする。
上記構成により、磁選機の搬出経路と搬送手段の搬出経路とが重なる長さを長くすることができる。よって、磁選機の搬出経路を長く形成して地金を回収することができるので、効率的に地金を回収することができる。
【0017】
第8には、前記搬送手段には前記スラグに加振する加振手段が設けられたことを特徴とする。
上記構成により、径の大きい地金の隙間に径の小さな地金が入り込み、結果的に大きな径の地金が搬送中のスラグの上部に移動するので、効率的に地金を吸着することができる。
【0018】
第9には、前記搬送手段は、ベルトコンベアであって、前記ベルトコンベアのベルトを支持するローラのうち、前記磁選機に対向する位置に配置されたローラは、前記ベルトが前記磁選機に対向する位置において幅方向に平坦となるように配置されたことを特徴とする。
上記構成により、磁選機とベルトとの距離がベルトの幅方向に均一になるので、ベルトの幅方向でムラなく地金を回収することができる。
【0019】
第10には、前記搬送手段には、前記搬送手段が搬送する前記スラグに水または界面活性剤の水溶液を供給する供給手段が設けられたことを特徴とする。
上記構成により、搬送手段によるスラグの搬送過程において、スラグからの粉塵の発生を抑制し、作業者が粉塵を吸引する虞を回避することができる。
【0020】
第11には、前記スラグをその粒径ごとに多段階に選別し、選別されたスラグごとに出力するスラグ選別手段が配置され、前記搬送手段は、前記スラグ選別手段により選別される段数に対応して複数配置され、各搬送手段は、前記選別されたスラグを搬送することを特徴とする。
【0021】
上記構成により、スラグを搬送手段に供給する前にスラグを粒径に対応して選別して、搬送手段に供給するスラグの粒径のバラつきを小さくすることにより、スラグの磁選機までの距離のバラつきを小さくし、磁選機における地金の吸着効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るスラグ選別設備によれば、スラグに地金の含有率が変動しても地金を取りこぼすことなく回収することができるとともに、搬送手段と磁選機との配置を最適化し、スラグと磁選機との干渉も回避して効率的な地金の回収を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るスラグ選別設備の正面図である。
【図2】本実施形態に係るスラグ選別設備の平面図である。
【図3】図1の部分詳細図である。
【図4】本実施形態のベルトコンベアの断面図である。
【図5】本実施形態のベルトコンベアの磁選機に対向する部分の断面図と磁選機等を示す図である。
【図6】本実施形態の検出手段の変形例であって、レーザ光の光軸方向からみた模式図である。
【図7】本実施形態の検出手段の変形例であって、磁選機の搬送方向からみた模式図である。
【図8】本実施形態の磁選機の変形例を示す図である。
【図9】スラグ選別手段にベルトコンベアを複数配置した平面図である。
【図10】図9のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0025】
本実施形態に係るスラグ選別設備の概要図を図1(正面図)、図2(平面図)に示し、図1の部分詳細図を図3に示す。本実施形態に係るスラグ選別設備10は、受け入れホッパー12、グリズリー16、エプロンフィーダー20、ベルトコンベア28、磁選機44等を有し、エプロンフィーダー20、ベルトコンベア28、磁選機44を制御する制御部(不図示)を有している。
【0026】
グリズリー16は、受け入れホッパー12の傾斜した開口部14に一定の間隔で形成された格子であり、ショベル等により運ばれるスラグを篩い分けるものである。格子の寸法より小さいスラグが受け入れホッパー12に投入され、格子の寸法より大きなスラグはグリズリー16の傾斜面を滑り、開口部14に取り付けられたシューター18を通って排出される。
【0027】
エプロンフィーダー20は、受け入れホッパー12の下端に配置され、下端に蓄えられたスラグをベルトコンベア28に供給するものである。エプロンフィーダー20は、モータ26に駆動されたロータ24によりベルト22を駆動させ、ベルト22上に載ったスラグをベルトコンベア28に供給する。
【0028】
スラグの搬送手段となるベルトコンベア28は、エプロンフィーダー20から供給されたスラグから地金を回収するために搬送するものである。ベルトコンベア28は、スラグの搬送経路(矢印42)の上流側がエプロンフィーダー20のスラグの排出側の真下に来るように配置され、ベルトコンベア28の搬送経路(矢印42)の下流側が上流側より高くなるように配置される。ベルトコンベア28は、ベルトコンベア28全体の骨組みとなるプレート30と、プレート30の長手方向の両端に配置されたロータ32と、プレート30の両面に所定の間隔で設けられた軸受け34(図3)と、軸受け34に取り付けられた小型ロータ36(図3)、ロータ32、小型ロータ36にかけられたベルト38と、を有する。そしてロータ32の少なくとも一方にはモータ40が取り付けられている。よって、ベルト38はロータ32、小型ロータ36に当接し、ロータ32に取り付けられたモータ40により駆動(周回運動)する。なおベルトコンベア28からスラグが溢れないように、エプロンフィーダー20のモータ26の出力と、ベルトコンベア28のモータ26の出力は、後述の制御部(不図示)により一定の比例関係を維持するように調整される。
【0029】
磁選機44は、ベルトコンベア28上に搬送されるスラグから地金を選別してベルトコンベア28外に排出するものである。ここで、地金とはスラグのうち金属の含有率が高く磁力により吸着可能なものをいう。磁選機44は、図1、図3に示すように、例えばベルトコンベア28の傾斜に合わせて磁選機44を傾斜させた状態でワイヤー58等により吊り下げられる。そして図2に示すように、磁選機44は、ベルトコンベア28の搬送経路(矢印42)に交差する方向に地金の搬送経路(矢印60)が向くように配置される。
【0030】
また本実施形態においては、磁選機44は複数(図1では2つ)用いられベルトコンベア28の搬送経路(矢印42)に沿って一列に配置される。そして、ベルトコンベア28と磁選機44との隙間62は、ベルトコンベア28の搬送経路(矢印42)の上流側(前段)の磁選機44から下流側(後段)の磁選機44に行くにつれて狭くなるように配置される。
【0031】
さらにベルトコンベア28上において配列された磁選機44の間の位置には、スクレーパー64が配置されている。スクレーパー64は、ベルト38を迂回してプレート30に接続する金具(不図示)等により固定される。スクレーパーは、図3に示すように、ベルトコンベア28の搬送経路(矢印42)の下流側の磁選機44の隙間62と同程度の隙間66を有するとともに、図2に示すようにスクレーパー56の長手方向(矢印68)とベルトコンベア28の搬送経路(矢印42)とが鋭角に交差するように配置されている。
【0032】
これによりスクレーパー56より上流側の磁選機44を通過した径の大きいスラグはスクレーパー56により矢印70の方向に向かってシューター72から排出され、スクレーパー56の隙間66を通過した径の小さな地金を含むスラグが下流側の磁選機44に搬送される。よって下流側の磁選機44はベルトコンベア28との隙間62を小さくして地金を効率よく選別することができるとともに、下流側の磁選機44の隙間62より大きな径のスラグとの干渉を回避することができる。またこのように地金を多段階に回収する場合においても、ベルトコンベア28は1つでよいのでコストを抑制することができる。そして全ての磁選機44を通過したスラグはベルトコンベア28の端部から放出され、スラグ貯蔵場に蓄えられる。
【0033】
本実施形態では磁選機44を2つ配置しているが、磁選機44を3つ以上配置し、磁選機44の間にスクレーパー56(シューター72)を配置してもよい。なおグリズリー16の格子の間隔が最前段の磁選機44とベルトコンベア28との隙間62と同程度、若しくはその隙間62より小さい場合は、図1に示すように、最前段の磁選機44の上流側にはスクレーパー56を取り付ける必要はない。またシューター72から排出されたスラグをスラグ貯蔵場に搬送するベルトコンベア(不図示)を配置してもよい。
【0034】
図4にベルトコンベアの断面図を示す。図4に示すように、ベルトコンベア28の軸受け34、小型ロータ36は、例えば、プレート30の幅方向に3箇所設けられ、各軸受け34(34a)に小型ロータ36が取り付けられる。そして、幅方向の中央の軸受け34aが、プレート30を基準とした高さが幅方向の両端の軸受け34より低くなるように取り付けられる。よって中央の小型ロータ36は、プレート30を基準とした高さが両端の小型ロータ36より低くなる。これによりベルト38は幅方向の中央部が、その両端より凹んだ状態となるので、スラグがベルト38の脇からこぼれることを防止することができる。
【0035】
図5にベルトコンベアの磁選機に対向する部分の断面図と磁選機等を示す。一方、図5に示すように、磁選機44に対向する位置に取り付けられたベルトコンベア28の軸受け34は、それぞれ同じ高さとなるように取り付けられる。よって磁選機44に対向する位置において小型ロータ36のプレート30を基準とした高さも同じとなる。よってベルト38は、磁選機44に対向する位置において、幅方向に平坦となるので、磁選機44との距離(隙間)が均一となる。したがって、磁選機44は、磁選機44の真下を通過するスラグから地金を効率的に吸着することができる。
【0036】
図5に示すように、磁選機44は、骨組みとなるプレート46と、プレート46の両端に取り付けられたロータ48と、ロータ48にかけられたベルト50と、を有し、ロータ48の少なくとも一方にモータ54が取り付けられる。ベルト50は、例えばキャタピラー構造を有し、キャタピラーを構成する複数の金属板52には磁石(不図示、永久磁石でも電磁石でも良い)がそれぞれ取り付けられている。そして磁選機44は、ベルトコンベア28により搬送され磁選機44の真下に来た地金を、磁石の磁力により吸引してベルト50に吸着させる。そしてロータ48の回転によりベルト50が周回運動をし、吸着した地金を磁選機44の搬送経路(矢印60)に沿って移動させることができる。
【0037】
さらに磁選機44の搬送経路(矢印60)の下流側には吸着した地金をベルト50から取り払って排出するスクレーパー56が取り付けられている。スクレーパー56は、磁選機44のベルト50との干渉を回避して磁選機44のプレート46と接続する金具(不図示)等により固定される。これによりベルト50を構成する金属板52はスクレーパー56を通過すると、地金が取り払われた状態となる。よって、磁選機44は、ベルトの50の周回運動により、吸着面となる金属板52をベルトコンベア28に次々と対向させることができる。したがって、磁選機44は、ベルトコンベア28と対向する位置において、地金を順次吸着するとともに、スクレーパー56により順次排出することができる。
【0038】
図5(図1、図2参照)に示すように、磁選機44の搬送経路(矢印60)の先には、開口部78が傾斜した受け入れホッパー76が配置され、開口部78にはグリズリー80及びシューター82が取り付けられている。グリズリー80は、磁選機44から排出された地金を大塊のものと細粒のものとに選別する寸法に格子が設計されている。よって、大塊の地金は受け入れホッパー76には入らず、シューター82を通って矢印84の方向に排出される。一方、細粒の地金は矢印86に示すようにグリズリー80の格子を通過して受け入れホッパー76に投入される。この受け入れホッパー76、グリズリー80、シューター82は、各磁選機44に対応して配置される。そして受け入れホッパー76の下端にはベルトコンベア77が配置され、受け入れホッパー76から細粒の地金が供給されスラグ貯蔵場に搬送される。
【0039】
ところで、スラグに含有される地金は不均一に分布するため、ベルトコンベア28に搬送される際に磁選機44に到来する地金の量は時間を追って変化する。一方、磁選機44により同時に吸着できる量は限られているため、磁選機44は地金の許容吸着範囲を有する。よって、磁選機44に吸着した地金の吸着量が、予め決められた磁選機44の許容吸着範囲以上となった場合には、磁選機44が吸着すべき地金を取りこぼす虞がある。
【0040】
そこで本実施形態では、後述の重量計74により磁選機44に吸着した地金の吸着量を測定し、後述の制御部(不図示)により、磁選機44に吸着した地金の吸着量がその磁選機44の許容吸着範囲以上となった場合に、ベルトコンベア28の搬送速度を下げる、及び/または、磁選機44の搬送速度を上げる制御等を行なう。
【0041】
図1乃至図3に示すように、磁選機44を吊るすワイヤー58には、磁選機44に対する地金の吸着量を検出する検出手段となる重量計74が介装されている。重量計74は、磁選機44をワイヤー58を介して支持するとともに、磁選機44の荷重に基づいて伸長する例えばバネ定数の高いバネ等の弾性体(不図示)と、弾性体(不図示)の変位に基づいて地金の吸着量を算出する演算手段(不図示)とからなる。弾性体(不図示)としてバネ定数の高いバネ等を用いることにより、地金の吸着による磁選機44の鉛直方向の変位を抑制して、磁選機44とベルトコンベア28との隙間62の変化を抑制して、磁選機44に安定的に地金を吸着させることができる。
【0042】
制御部(不図示)は、演算手段(不図示)とエプロンフィーダー20のモータ26、ベルトコンベア28のモータ40、磁選機44のモータ54と電気的に接続されている。そして制御部は、演算手段から入力される吸着量のデータに基づいて、各モータの出力を調整することができる。
【0043】
制御部(不図示)においては、磁選機44に対する地金の吸着量が許容吸着範囲以上となる場合はモータ26及びモータ40の出力を低下する制御を行なう。これにより、スラグの供給速度を低下させ、磁選機44の地金の取りこぼしを抑制するとともに電力コストを抑制することができる。同様に磁選機44に対する地金の吸着量が許容吸着範囲以上となる場合は、モータ54の出力を上昇させる制御を行なう。これにより、磁選機44の搬送速度を高めて磁選機44の地金の取りこぼしを抑制することができる。
【0044】
逆に磁選機44に対する地金の吸着量が許容吸着範囲以下となる場合は、モータ26及びモータ40の出力を上昇させて地金の回収の作業効率の低下を抑制することができる。同様に磁選機44に対する地金の吸着量が許容吸着範囲以下となる場合は、モータ54の出力を低下させて磁選機44の電力コストを抑制することができる。
【0045】
ここでモータ26及びモータ40の制御と、モータ54の制御は、いずれか一方を行なっても良いし、両方同時に行ってもよい。また同時に制御する場合には、スラグ選別設備10の使用状況に合わせて各モータの出力の変化量の比に適当に重み付けを行なってもよい。
【0046】
なお本実施形態において磁選機44は複数設けられているが、制御部(不図示)は、各磁選機44の重量のデータを入力し、いずれかの磁選機44に係る吸着量がその磁選機44の許容吸着範囲外となった場合は、モータ26及びモータ40の出力の制御、及び/または、対応する磁選機44のモータ54の出力の制御を行なうことができる。
【0047】
図6、図7に本実施形態の検出手段の変形例を示し、図6はレーザ光の光軸方向からみた模式図、図7は磁選機の搬送方向からみた模式図である。よって図6においては、レーザ光90は紙面から奥に向かって進行し、図7においては、磁選機44の搬送経路94(図6の矢印60に対応する)は紙面から手前に向かって進行する。図6、図7に示すように、検出手段は、磁選機44の地金の搬送経路94(矢印60)に対して交差する方向にレーザ光90を照射する照射手段88と、レーザ光90を受光する受光手段92と、受光手段92がレーザ光90を受光する時間に基づいてレーザ光90の光路を遮る地金の吸着量を算出する演算手段(不図示)と、からなる。
【0048】
照射手段88は、照射手段88から照射されるレーザ光90が磁選機の搬送経路94(矢印60)と交差する方向に向けられるとともにベルトコンベア28のベルト38の真上から外れた位置に固定される。そして受光手段92は、照射手段88から照射されるレーザ光90の光軸上に配置される。この配置により照射手段88及び受光手段92は、磁選機44により搬送される地金との干渉、及びベルトコンベア28上で搬送されるスラグとの干渉を回避される一方、受光手段92に向けて照射されるレーザ光90は、レーザ光90の光路上を通過する地金により遮られる。なお、照射手段88及び受光手段92は、磁選機44のベルト50との干渉を回避して磁選機44のプレート46に接続する金具(不図示)等により固定される。
【0049】
演算手段(不図示)は、一定の時間間隔で受光手段92がレーザ光90を受光した時間を算出する。ここで、受光した時間が短いほど磁選機44に吸着した地金の吸着量が多く、逆に受光した時間が長いほど地金の吸着量が少ないことになる。よって演算手段(不図示)はレーザ光90を受光した時間に基づいて地金の吸着量のデータを制御部(不図示)に出力する。なお、磁選機44に吸着する地金の寸法は均一ではないので、レーザ光90は高さ方向の幅を有する状態で照射して受光手段92が高さ方向に多チャンネルで受信し、演算手段(不図示)は、レーザ光90を受信するチャンネル数とその受信時間にもとづいて地金の吸着量を算出するようにしてもよい。検出手段を上記構成とすることにより、地金の磁選機44の吸着量を被接触で算出して、効率的に地金を回収することができる。
【0050】
図8に本実施形態の磁選機の変形例を示す。また本実施形態においては、図8に示すように、磁選機96(磁選機44と同じ機能を有するものとする)の搬出経路(矢印98)と、ベルトコンベア28の搬出経路(矢印42)とが鋭角に交差するように配置することも好適である。上記構成により、磁選機96の搬出経路(矢印98)とベルトコンベア28の搬出経路(矢印42)とが重なる長さを長くすることができる。よって、図8に示すように、磁選機96の搬出経路(矢印98)を長く形成して地金を回収することができるので、効率的に地金を回収することができる。
【0051】
図9に、スラグ選別手段にベルトコンベアを複数配置した平面図を示し、図10に図9のA−A線断面図を示す。図9、図10においては、スラグをその粒径ごとに多段階に選別し、選別されたスラグごとに出力するスラグ選別手段100が配置されている。そしてベルトコンベア28(28A、28B、28C)は、スラグ選別手段100により選別される段数に対応して複数配置され、各ベルトコンベア28は、前記選別されたスラグを搬送する構成を示している。
【0052】
スラグ選別手段100は、スラグをスラグ選別設備10に供給する前にその粒径に対応して予め選別して出力するものである。スラグは、その直径が大小さまざまなものがあるが、スラグ選別手段100は、例えば直径が200mm以上(大粒径のスラグ)のもの、20mmから200mmのもの(中粒径のスラグ)、20mm以下のもの(小粒径のスラグ)に選別する。スラグ選別手段100は、第1グリズリー102、第2グリズリー104、受け入れホッパー106A、106B、106C、シューター108、シューター110を有し、各受け入れホッパーの下端にはそれぞれエプロンフィーダー20が配置され、各エプロンフィーダー20の真下にはスラグ選別設備10を構成するベルトコンベア28A、28B、28Cが配置される。
【0053】
第1グリズリー102は、格子構造を有し、選別前のスラグ(矢印112)が最初に供給される部分であり、第1グリズリー102のスラグの選別先は受け入れホッパー106Aに接続され、スラグが通過する格子の真下にはシューター108が配置される。
【0054】
第1グリズリー102は、その格子間隔(200mm程度)が大粒径のスラグの直径よりやや小さくなるように設計される。よって大粒径のスラグ(矢印114)は格子を通過することなく選別されて受け入れホッパー106Aに供給され、中粒径のスラグ(矢印116)、小粒径のスラグ(矢印118)は格子を通過してシューター108に供給される。
【0055】
第2グリズリー104は、格子構造を有するとともにシューター108の排出先に接続される。そして第2グリズリー104の選別先はシューター110に接続され、シューター110の排出先には受け入れホッパー106Cが配置される。また第2グリズリー104のスラグが通過する格子の真下には受け入れホッパー106Bが配置される。
【0056】
第2グリズリー104は、その格子間隔(20mm程度)が中粒径のスラグの直径よりやや小さくなるように設計される。よって中粒径のスラグ(矢印116)は格子を通過することなく選別されてシューター110を介して受け入れホッパー106Cに供給され、小粒径のスラグ(矢印118)は格子を通過して受け入れホッパー106Bに供給される。
【0057】
よってベルトコンベア28Aには大粒径のスラグ(矢印114)が供給され、ベルトコンベア28Cには中粒径のスラグ(矢印116)が供給され、ベルトコンベア28Bには小粒径のスラグ(矢印118)が供給される。このように、ベルトコンベア28に供給する前にスラグの粒径に対応してスラグを選別して、ベルトコンベア28に供給するスラグの粒径のバラつきを小さくすることにより、スラグの磁選機44(金属板52)までの距離のバラつきを小さくし、磁選機44における地金の吸着効率を高めることができる。
【0058】
本実施形態において、ベルトコンベア28には、スラグに加振する加振手段(不図示)が設けることも好適である。これにより、径の大きい地金(スラグ)の隙間に径の小さな地金(スラグ)が入り込み、結果的に大きな径の地金が搬送中のスラグの上部に移動するので、効率的に地金を吸着することができる。なお加振は、スラグがベルトコンベア28のベルト38の脇からこぼれない程度の強度で行なうことは当然であるが、図4に示すように、ベルト38は幅方向の中央が凹んだ状態となっているので、加振手段(不図示)は、ベルト38が図4のように凹んだ状態となっている位置に取り付けるとよい。
【0059】
さらに本実施形態において、スラグ選別設備10は、ベルトコンベア28で搬送されるスラグに水または界面活性剤の水溶液を供給する供給手段(不図示)を配置することが好ましい。供給手段は、例えばベルトコンベア28上の全面、または、ベルトコンベア28上のスラグが最初に供給されるエプロンフィーダー20の真下となる位置において、供給されたスラグに水や界面活性剤の水溶液をスプレー状に供給する。これにより、ベルトコンベア28によるスラグの搬送過程において、スラグからの粉塵の発生を抑制し、作業者が粉塵を吸引する虞を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
スラグに地金の含有率が変動しても地金を取りこぼすことなく回収することができるとともに、ベルトコンベアと磁選機との配置を最適化し、スラグと磁選機との干渉も回避して効率的な地金の回収を行なうことが可能なスラグ選別設備として利用できる。
【符号の説明】
【0061】
10………スラグ選別設備、12………受け入れホッパー、14………開口部、16………グリズリー、18………シューター、20………エプロンフィーダー、22………ベルト、24………ロータ、26………モータ、28………ベルトコンベア、30………プレート、32………ロータ、34………軸受け、34a………軸受け、36………小型ロータ、38………ベルト、40………モータ、42………矢印、44………磁選機、46………プレート、48………ロータ、50………ベルト、52………金属板、54………モータ、56………スクレーパー、58………ワイヤー、60………矢印、62………隙間、64………スクレーパー、66………隙間、68………矢印、70………矢印、72………シューター、74………重量計、76………受け入れホッパー、77………ベルトコンベア、78………開口部、80………グリズリー、82………シューター、84………矢印、86………矢印、88………照射手段、90………レーザ光、92………受光手段、94………搬送経路、96………磁選機、98………矢印、100………スラグ選別手段、102………第1グリズリー、104………第2グリズリー、106A………受け入れホッパー、106B………受け入れホッパー、106C………受け入れホッパー、108………シューター、110………シューター、112………矢印、114………矢印、116………矢印、118………矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送経路上に配置され、前記スラグから前記スラグに含有する地金を磁力により吸着して前記搬送手段外に搬送する磁選機と、
前記磁選機に吸着する前記地金の吸着量を検出する検出手段と、
前記検知手段が検出した吸着量が前記磁選機の許容吸着範囲以上となる場合には前記搬送手段の搬送速度を下げる制御、及び/または、前記磁選機の搬送速度を上げる制御を行なう制御部と、を有することを特徴とするスラグ選別設備。
【請求項2】
前記制御部は、前記検知手段が検出した吸着量が前記磁選機の許容吸着範囲以下となる場合には前記搬送手段の搬送速度を上げる制御、及び/または、前記磁選機の搬送速度を下げる制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載のスラグ選別設備。
【請求項3】
前記検出手段は、前記磁選機の前記地金の搬送経路に対して交差する方向にレーザ光を照射する照射手段と、前記レーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段が前記レーザ光を受光する時間に基づいて前記レーザ光の光路を遮る前記地金の吸着量を算出する演算手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスラグ選別設備。
【請求項4】
前記検出手段は、前記磁選機を支持するとともに、前記磁選機の荷重に基づいて伸長する弾性体と、前記弾性体の変位に基づいて前記地金の吸着量を算出する演算手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスラグ選別設備。
【請求項5】
前記磁選機は、前記搬送手段上において、前記搬送手段の搬送経路に沿って一列に複数配置されるとともに、前記搬送手段との隙間が前段の磁選機から後段の磁選機に行くに従って狭くなるように配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスラグ選別設備。
【請求項6】
前記磁選機の前記搬送手段の搬送経路の上流側には前記磁選機と前記搬送手段との隙間と同程度の隙間を有するスクレーパーが配置され、
前記スクレーパーは、前記搬送手段の搬送経路と鋭角に交差するように配置されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスラグ選別設備。
【請求項7】
前記磁選機は、前記磁選機の搬出経路と、前記搬送手段の搬出経路とが鋭角に交差するように配置されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスラグ選別設備。
【請求項8】
前記搬送手段には前記スラグに加振する加振手段が設けられたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスラグ選別設備。
【請求項9】
前記搬送手段は、ベルトコンベアであって、前記ベルトコンベアのベルトを支持するローラのうち、前記磁選機に対向する位置に配置されたローラは、前記ベルトが前記磁選機に対向する位置において幅方向に平坦となるように配置されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のスラグ選別設備。
【請求項10】
前記搬送手段には、前記搬送手段が搬送する前記スラグに水または界面活性剤の水溶液を供給する供給手段が設けられたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のスラグ選別設備。
【請求項11】
前記スラグをその粒径ごとに多段階に選別し、選別されたスラグごとに出力するスラグ選別手段が配置され、
前記搬送手段は、前記スラグ選別手段により選別される段数に対応して複数配置され、各搬送手段は、前記選別されたスラグを搬送することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のスラグ選別設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−196602(P2012−196602A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60908(P2011−60908)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【出願人】(000170325)鴻池運輸株式会社 (3)
【Fターム(参考)】