説明

スラスト力測定器及びこれを使用したスラスト力の測定方法

【課題】ポンプの設置場所や工場の違い等に拘わらず、芯出し作業が不要で、しかもスラスト力の測定ができるスラスト力測定器の提供と、このスラスト力測定器を使用したスラスト力の測定方法を提供する。
【解決手段】スラスト力測定器10は、ポンプ本体1のヘッド1aの一端に固定されたオイルジャケットブラケット2に装着されるアダプタ5と、前記主軸3の一端に装着され、前記主軸3を延長する延長軸6と、前記延長軸6に挿着されたリング状のスラストカラー7gと、前記スラストカラー7gに当接しながら摺動し、スラスト力を測定するセンサ内蔵滑り軸受 7と、前記センサ内蔵滑り軸受 7を支持し、前記アダプタ5に連結されたハウジング8と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸の軸方向に掛かるスラスト力を測定するスラスト力測定器、及び、このスラスト力測定器を使用したスラスト力の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポンプは、各種のポンプが製造されており、また、そのポンプの吐出性能もいろいろである。高揚程 のポンプとしては、うず巻き状に複数枚のベーン (羽根)を配置した羽根車を多段に組み込んだ多段式遠心ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4に示すように、多段式遠心ポンプ110(以下、ポンプという)は、吸込ケーシング1bから流体が供給されると、多段に組み込まれた羽根車19を順々に巡回して流速と液圧を上げ、吐出 ケーシング1cから流体が吐出されるポンプである。
流体Sは、矢印で示すように、吸込ケーシング1bから流入し、螺旋状で放射状にベーン(羽根)が形成された羽根車19の回転により加速して一旦、外周方向に吐出される。その後、流体は、外周部の近傍でUターンし、また主軸3の近傍に戻り、つぎの羽根車19に流入し、羽根車19の回転によりさらに流速が加速して吐出される。これを多段の羽根車19の個数分だけ繰り返して流体の圧力を高めながら最後に吐出ケーシング1cから吐出される。
【0004】
このような片吸込みの羽根車19では主軸3に対して右方向から左方向に向かってスラスト力(荷重)が発生する。スラスト力は羽根車19毎に発生するため、多段式の場合では、段数の分だけスラスト力が増加する。
新規設計したポンプ110の場合、スラスト力を計算で推定しても一致しないことがあるため、完成したポンプ110を実際に工場にて運転し、スラスト力を測定する。また、この測定値に基づいてスラスト軸受の寿命の目標値をクリヤするように調整する。
【0005】
一般的にスラスト軸受には転がり軸受と滑り軸受がある。ポンプ110のスラスト軸受に滑り軸受、例えばティルティングパッド型軸受を用いた場合、ロードセルのようなセンサを内蔵した滑り軸受を用いてスラスト力を測定することができる。一方、ポンプ110のスラスト軸受に転がり軸受を用いた場合、別途センサを取付ける必要があるが、追加加工などできるだけポンプ110に影響を与えずにスラスト力を測定することが求められる。
【0006】
図6の(a)は、ポンプ110と電動機30との所定の配置を示し、図6の(b)は、
従来のスラスト力測定器をポンプ110と電動機30との間に組み込んで配置した配置図である。
図6の(b)に示すように、従来のスラスト力の測定方法は、図6の(a)に示すポンプ110と電動機30との間に、従来のスラスト力測定器20を装着し、芯出しを行い、ポンプ110の主軸3とスラスト力測定器20の主軸23をカップリング 21にて連結し、さらに、電動機30のモータ軸とスラスト力測定器20の主軸23をカップリング 40 によって連結して、運転可能な状態になった後、スラスト力測定器20を回転駆動させる。
従来のスラスト力測定器20には、スラスト力を測定するセンサ24,24が組み込まれているため、ポンプ110の主軸3にかかるスラスト力を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−82364号公報(段落0002、図3、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のスラスト力測定器20はフロア(床)に固定するため、電動機30を一旦固定位置から移動しなければならず、芯出し作業を含めてスラスト力の測定に時間がかかるという問題があった。
また、従来のスラスト力測定器20によるスラスト力の測定方法は、ポンプ110と電動機30とが芯出しされて接続した連結状態を一旦壊さなければならず、復元するのに時間がかかり、無駄作業が多いという問題があった。この作業には1〜2日を要していた。
【0009】
さらに、このスラスト力の測定は、ある年数を経過した納入先の工場で行うこともある。納入先の工場での測定作業は、従来のスラスト力測定器20では設置スペース等の問題から測定できないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、ポンプの設置場所やフロアスペースの広狭等に拘わらず、容易に設置でき、組み付け作業が容易なスラスト力測定器、および、このスラスト力測定器を使用したスラスト力の測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載されたスラスト力測定器(10)は、ポンプ(100)の主軸(3)にかかるスラスト方向の荷重を測定するスラスト力測定器(10)であって、ポンプ本体(1)のヘッド(1a)の一端に固定されたオイルジャケットブラケット(2)に装着されるアダプタ(5)と、前記主軸(3)の一端に装着され、前記主軸(3)を延長する延長軸(6)と、前記延長軸(6)に挿着されたリング状のスラストカラー(7g)と、前記スラストカラー(7g)に当接しながら摺動し、スラスト力を測定するセンサ内蔵滑り軸受 (7)と、 前記センサ内蔵滑り軸受 (7)を支持し、前記アダプタ(5)に連結されたハウジング(8)と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載のスラスト力測定器(10)であって、前記アダプタ(5)の取付穴は、前記オイルジャケットブラケット(2)に形成されたオイルジャケット(11)の固定穴と一致していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載のスラスト力測定器(10)であって、前記ハウジング(8)は、上ハウジング(8b)と下ハウジング(8a)の2つに分割されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載された発明は、請求項1に記載されたスラスト力測定器(10)を使用したスラスト力の測定方法であって、前記ポンプ(100)の前記オイルジャケットブラケット(2)から前記オイルジャケット(11)を取り外す第1工程と、前記ポンプ(100)の前記オイルジャケットブラケット(2)に前記スラスト力測定器(10)を組み付ける第2工程と、前記ポンプ(100)を駆動させ、主軸(3)にかかるスラスト力を測定する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、スラスト力測定器は、ポンプ本体のヘッドの一端に固定されたオイルジャケットブラケットに装着されたことにより、遠心ポンプと電動機との連結状態をそのまま維持することができるため、電動機を動かすことが不要で、2つのカップリングの芯合わせが不要で、容易に設置でき、かつ、床に設置しないために芯合わせが容易で、組み付け作業が容易なスラスト力測定器を提供することができる。
また、遠心ポンプと電動機との間に装着せずに、オイルジャケットブラケットにアダプタを介して装着することにより、床に固定して回り止めをする必要がない。また、オイルジャケットブラケットに装着することによって容易にハウジングの回り止めができる。
さらに、オイルジャケットを取り外したスペースに、アダプタを介してスラスト力測定器を装着することにより、取付スペースが確保できることから、ポンプの設置場所やフロアスペースの広狭等に拘わらず、小さなスペースで装着ができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、アダプタの取付穴をオイルジャケットの固定穴と一致させたことにより、オイルジャケットブラケットからオイルジャケットを取り外し、このオイルジャケットの代わりにアダプタを固定し、スラスト力測定器を取り付けることができるので、スラスト力測定器の取付工数の削減を図ることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、ハウジングは、上ハウジングと下ハウジングの2つに分割したことにより、ロードセルの組み付けが容易にでき、ロードセルの位置決めや電線の引き回し等が容易にできるため、組立て作業や分解作業にかかる作業時間を短縮できる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、第1工程のオイルジャケットのスペースにアダプタを介してスラスト力測定器を装着することにより、取付スペースが確保できることから、ポンプの設置場所やフロアスペースの広狭等に拘わらず、小さなスペースで装着ができる。
また、第2工程のオイルジャケットブラケットにスラスト力測定器を組み付けることから、床に固定して回り止めをする必要がないため、オイルジャケットブラケットに装着することによって容易にハウジングの回り止めができる。
さらに、遠心ポンプと電動機との連結状態がそのまま維持することができるため、電動機を動かすことが不要で、2つのカップリングの芯合わせが不要で、容易に設置でき、かつ、床に設置しないために芯合わせが容易で、組み付け作業が容易なスラスト力測定器を使用したスラスト力の測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図3の軸端に示す本発明のスラスト力測定器の拡大断面図である。
【図2】本発明のスラスト力測定器の組立て手順を説明する分解説明図である。
【図3】(a)は遠心ポンプに本発明のスラスト力測定器を取り付けた状態を示す断面図であり、(b)は遠心ポンプと電動機を接続した様子を示す正面図である。
【図4】現状の多段式遠心ポンプを示し、一端にオイルジャケットを示す断面図である。
【図5】現状の多段式遠心ポンプの一端に配置されたオイルジャケットを取り外した状態を示す断面図であり、本発明のスラスト力測定器を装着する前の状態を示す断面図である。
【図6】(a)は多段式遠心ポンプに電動機を接続した配置図であり、(b)は従来のスラスト力測定器をポンプと電動機との間に装着した配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るスラスト力測定器10の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図3の(b)に示すように、例えば、多段式遠心ポンプ(以下、ポンプ)100の主軸3と電動機30のモータ軸とがカップリング 40によって連結されている。また、ポンプ100の一端には、スラスト力測定器10が組み換えられて装着されている。このようにすることにより、遠心ポンプ100と電動機30との連結がそのままの状態を維持することができるため、これまで時間を要していた芯出し作業が容易になり、大幅な作業時間の節約ができる。
【0021】
図1は、図3に示すスラスト力測定器10の拡大断面図である。
図1に示すように、スラスト力測定器10は、オイルジャケットブラケット2を介在してヘッド1aに固定され、両端面に連結部5a,5bを有するアダプタ5と、主軸3に螺着された延長軸6と、この延長軸6にスラスト力を測定するセンサ内蔵滑り軸受 7が組み込まれ、アダプタ5に固定されたハウジング8と、ハウジング8の開口する一端をふさぐ密閉部材9と、を備えている。
【0022】
<アダプタの構成>
アダプタ5は、左右両端面にフランジ形状の連結部5a,5bが形成された連結部材である。また、スペースを確保するためのスペーサであり、ベアリング4を潤滑するオイルジャケットでもある。アダプタ5は、中央に貫通孔5cを有する略円筒状になっており、左端面のフランジの連結部5aがオイルジャケットブラケット2に固定されている。また、このアダプタ5の貫通孔5cには、既存のベアリング4,4の外輪が嵌合される。
アダプタ5は、複数のスタッドボルト2aとナット2cによって、オイルジャケットブラケット2に固定されている。
【0023】
<延長軸の構成>
延長軸6は、主軸3の軸端に連結されて延長した軸である。
図2に示すように、主軸3の右端には雌ねじ3aと芯出し穴3bが形成されている。この延長軸6は、前記雌ねじ3aと芯出し穴3bに対応して、雄ねじ6aと芯出し軸6bが形成されており、この芯出し軸6bと芯出し穴3bとの嵌合により主軸3と延長軸6との芯を一致させ、雌ねじ3aと雄ねじ6aとの締結によって主軸3に一体に固定される。また、この延長軸6には、スラスト力測定器10の心臓部の一つとなる後記する第1センサ内蔵滑り軸受 7aと第2センサ内蔵滑り軸受 7bに挟持されたスラストカラー7gが固定されている。
【0024】
<スラストカラーの構成>
スラストカラー7gは、中央部に延長軸6が嵌入される貫通孔が形成されたリング状をなし、扁平な円板状に形成されており、延長軸6にキー6kによって一体に固定されている。さらに、軸方向にカラー6cを介して延長軸6の軸端に配置したナット6dによって固定されている。
スラスト荷重を受けるスラストカラー7gの両面は、高精度に 仕上げ加工が施されている。
【0025】
<ハウジングの構成>
ハウジング8は、延長軸6と、スラスト力を測定するセンサ内蔵滑り軸受 7を覆うようにして支持する支持部材である。また、ハウジング8は、後記するリング状のスラストカラー7gが第1スラストシュー7dと第2スラストシュー7fとの間に挟持されて摺動するため、摺動面を潤滑する潤滑油を溜めたオイルジャケットの機能も有している。
ハウジング8は、前記したアダプタ5の連結部5bに、フランジ状の連結部8cが複数のボルト8dによって接続される。
また、ハウジング8は、下ハウジング8aと上ハウジング8bと、2ピースに分割されている。この分割により、上ハウジング8bに設けられた電線通し穴8e,8fから後記する第1ロードセル付7cと第2ロードセル7eの電線を容易に外へ通すことができる。
また、第1ロードセル7cと第2ロードセル7eの回り止め用のピン7p,7pも容易に装着することができる。
【0026】
<センサ内蔵滑り軸受の構成>
センサ内蔵滑り軸受 7は、リング状に形成されて第1センサ内蔵滑り軸受 7aと第2センサ内蔵滑り軸受 7bとから構成され、スラストカラー7gに当接しながら摺動する。
また、それぞれの内周には延長軸6に遊嵌されている。また、第1センサ内蔵滑り軸受 7aと第2センサ内蔵滑り軸受 7b は、前記スラストカラー7gを中心に左右対称に向き合って配置され、前記したハウジング8の内周面に支持されている。
第1センサ内蔵滑り軸受 7aは、リング状に形成され、軸方向のスラスト力を電気信号に変換する第1ロードセル7cと円滑な摺動を可能にする摺動面を有する第1スラストシュー7dとが一体となって形成されている。また、第1ロードセル7cは3個のロードセルが3等配に配置されて埋め込まれている。これにより、測定の精度を向上させることができる。
また、第2センサ内蔵滑り軸受 7b も、リング状に形成され、軸方向のスラスト力を電気信号に変換する第2ロードセル7eと円滑な摺動を可能にする摺動面を有する第2スラストシュー7fとが一体となって構成されている。第2ロードセル7eもまた3個のロードセルが3等配に配置されて埋め込まれている。これにより、前記同様、測定の精度を向上させることができる。
また、第1スラストシュー7dと第2スラストシュー7fとの間には、延長軸6に支持された円盤状のスラストカラー7gが挟持されている。
なお、第1センサ内蔵滑り軸受 7a、第2センサ内蔵滑り軸受 7bはハウジング8に支持されており、延長軸6の外周とは 隙間が設けられており、第1センサ内蔵滑り軸受 7a、第2センサ内蔵滑り軸受 7bは、回り止め用のピン7p,7pにより上ハウジング8bに係止されるため、回転はしない。
【0027】
<密閉部材の構成>
密閉部材9は、ハウジング8の開口する一端をふさぎ、潤滑油の漏れを防ぐための密閉カバーである。
【0028】
ここで、本発明のスラスト力測定器10の組立て手順を説明する。
図4に示すように、従来のポンプ110の一端に配置されたオイルジャケット11を取り外す手順は、
イ)ハウジング 18から潤滑油を抜き、エンドカバー13をハウジング 18から取り外す。
ロ)円盤状のオイルフィンガー14を主軸3から取り外し、スラストインナーカバー 16からボルト15を抜く。
ハ)オイルジャケット11のハウジング 18からボルト17を抜き、オイルジャケットブラケット2からハウジング 18を取り外す。
【0029】
イ〜ハの手順により、オイルジャケット11を取り外した結果を図5に示す。
図5に示すように、現状のオイルジャケット11を取り外した後は、ポンプ110のヘッド1aの一端に固定されたオイルジャケットブラケット2と、このオイルジャケットブラケット2の右端に突出した主軸3と、主軸3の一端に回転自在に支持された軸受4,4とが残される。
これらを基礎とする部材に、スラスト力測定器10を組み付ける。
【0030】
スラスト力測定器10の組立て手順は、図2に示すように、
1)アダプタ5の貫通孔5cにベアリング4,4を嵌入し、これをガイドにしてオイルジャケットブラケット2の取付穴にねじ込んだスタッドボルト2aをアダプタ5の連結部5aの穴を通す。また、オイルジャケットブラケット2の基準穴2bにボス5dを挿入して芯合わせを行い、ナット2c によりアダプタ5を固定し、スラストインナーカバー 16をアダプタ5に取り付ける。
2)下ハウジング8aをアダプタ5に固定し、延長軸6を主軸3に固定し、隙間を調整する円形スペーサ7hと、図示しないシム7iを延長軸6に通して取り付ける。
なお、主軸3の基準穴3bには延長軸6の軸6bが嵌合されて芯合わせが行われ、主軸3と延長軸6の芯は容易に一致する。
3)第1センサ内蔵滑り軸受 7a、円盤状のスラストカラー7g 、第2センサ内蔵滑り軸受 7bを延長軸6に通し、このスラストカラー7g はカラー6cを介して延長軸6にナット6dによって固定する。
4)上ハウジング8bの電線通し穴8e,8fから電線を通し、上ハウジング8bをアダプタ5に固定し、センサ内蔵滑り軸受 7の厚み方向の隙間を埋めるシム9aを介して、密閉部材9により密閉する。
5)スラストインナーカバー 16をガスケットにより調整し、ベアリング4がスラスト方向に拘束されないことを確認し、アダプタ5と下ハウジング8aの給油口から潤滑油を給油する。
6)センサ内蔵滑り軸受 7に接続された各電線を、外部に設けられた電気抵抗を増幅するアンプに接続する。
以上により、本発明のスラスト力測定器10の組立てが終了する。
【0031】
ここで、図面を参照してスラスト力測定器10の動作を説明する。
図3の(a)、(b)に示すように、吸込ケーシング1bから多段式遠心ポンプ100へ流体を供給し、電動機(モータ)30を起動すると、多段の羽根車19が固定された主軸3と延長軸6が回転し、羽根車19の働きにより流体の圧力を徐々に高めて、吐出ケーシング1cから流体を吐出する。
この時、図1に示すように、第1ロードセル7cと第2ロードセル7eに内蔵された図示しないひずみゲージにスラスト力(荷重)に応じて微小のひずみを発生させる。この微小のひずみを電気信号に変換して送信し、アンプ(増幅器)によって増幅し、さらに、演算処理してスラスト力をニュートン(N)に算出し、表示器に表示する。このようにして、数回のスラスト力の測定を繰り返し、データ採りを終了する。
【0032】
スラスト力測定器10の分解の手順は、図2に示すように、前記した組立て手順の反対である。重複する説明になるため、ここでは省略する。
【0033】
また、図4に示すように、遠心ポンプ110のオイルジャケット11を組立てる手順は、前記した遠心ポンプ110の取り外した手順の反対である。重複する説明になるため、ここでは省略する。
【0034】
この結果、本発明のスラスト力測定器10の作業に要する時間を示す。
1.遠心ポンプ110のオイルジャケット11の取り外し…10分
2.スラスト力測定器10の組立て …60分
3.スラスト力の測定 …10分
4.スラスト力測定器10の分解 …20分
5.遠心ポンプ110のオイルジャケット11の組み付け…20分
これにより、各作業の合計は、ちょうど2時間まで短縮できる。
なお、芯出し作業を容易にしてスラスト力測定器10の組立て作業を60分まで短縮できた理由の一つは、図2に示すように、主軸3の右端の芯出し穴3bと延長軸6の芯出し軸6bとを嵌合、オイルジャケットブラケット2の基準穴2bとアダプタ5のボス5dを嵌合、アダプタ5の基準穴ボス5eにハウジング8のボス8gを嵌合等の方法による。
【0035】
図2に示すスラスト力測定器10の組立て方法の変形例は、ハウジング8を一度組立てた後、上ハウジング8bと下ハウジング8aを一体に固定し、分解することなくハウジング8を一つのユニットとして取り扱うことにより、2回目からは、さらに30分の時間短縮ができる。 例えば、次に手順による。
1)アダプタ5の貫通孔5cにベアリング4,4を嵌入し、オイルジャケットブラケット2のスタッドボルト2aにアダプタ5の連結部5aの穴を通し、ナット2c によりアダプタ5を固定し、スラストインナーカバー 16をアダプタ5に取り付ける(同)。
2)ハウジング8を天井クレーン等により吊り下げた状態で延長軸6の雄ねじ6aを、主軸3の一端に形成された雌ねじに螺入して、主軸3に延長する。
3)図2に示すように、主軸1の突き出し長さLと比較により過 不足の場合は数枚のガスケットなど をアダプタ5の連結部5bとハウジング8との間に挟み、調整 する。
4)(不要)
5)スラストインナーカバー 16をガスケットにより調整し、ベアリング4がスラスト方向に拘束されないことを確認し、アダプタ5と下ハウジング8aの給油口から潤滑油を給油する。
6)センサ内蔵滑り軸受 7に接続された各電線を、外部に設けられた電気信号を増幅するアンプに接続する。(同)
以上のようなスラスト力測定器10の組立手順であっても、構わない。
【0036】
スラスト力の測定が長時間に及びスラスト力測定器10の潤滑油に除熱が必要な場合、外部の強制給油ポンプによりスラスト力測定器10の潤滑油を循環させ、熱交換器などによって除熱しても構わない。また、前記の強制給油ポンプは延長軸6の軸端に装着する軸端オイルポンプであっても構わない。
【0037】
本発明は、ポンプ100の主軸3に掛かるスラスト力の測定を実施例として説明したが、ポンプ100以外の主軸であってもよく、例えば、工作機械や産業機械等の主軸ヘッドの主軸や各ユニットの軸や、その他の業種の回転軸であっても構わない。
また、ポンプ100の仕様にはいろいろあり、ポンプは運転するときの流量が変わるとスラスト力も変化する。流体の比重が違っても変化する。
このスラスト力を軽減する方法の一つにバランスドラム仕様がある。このバランスドラム仕様のポンプの場合は、スラスト力の方向は反対方向に作用することがあるため、このような仕様にも対応可能なようにセンサは2個配置としたが、センサを1個にして右勝手用と左勝手用の2セットを用意しても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1 ポンプ本体(ボディ)
1a ヘッド(ディスチャージヘッド)
1b 吸込 ケーシング
1c 吐出 ケーシング
2 オイルジャケットブラケット
2a スタッドボルト
2b 基準穴
2c ナット
3 主軸
4 軸受(ベアリング)
5 アダプタ(スペーサ)
5a,5b 連結部(フランジ)
5c 貫通孔
5d ボス
5e 基準穴
6 延長軸
6a 雄ねじ
6b 芯出し軸
6c カラー
6d ナット
7 センサ内蔵滑り軸受
7a 第1センサ内蔵滑り軸受
7b 第2センサ内蔵滑り軸受
7c 第1ロードセル
7d 第1スラストシュー
7e 第2ロードセル
7f 第2スラストシュー
7g スラストカラー
7h 円形スペーサ
7i シム
7p ピン
8 ハウジング
8a 下ハウジング
8b 上ハウジング
8c 連結部(フランジ)
8d ボルト
8e,8f 電線通し穴
8g ボス
9 密閉部材
9a シム
9b ボルト
10 スラスト力測定器
11 オイルジャケット
12 プラグ(冷却水用栓)
13 エンドカバー
14 オイルフィンガー
15 ボルト
16 スラスト側インナーカバー
17 ボルト
18 ハウジング
19 羽根車
19a ベーン (羽根)
20 スラスト力測定器(従来型)
21,40 カップリング
30 電動機(モータ)
100,110 多段式遠心ポンプ(ポンプ)
S 流体の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ(100)の主軸(3)にかかるスラスト方向の荷重を測定するスラスト力測定器(10)であって、
ポンプ本体(1)のヘッド(1a)の一端に固定されたオイルジャケットブラケット(2)に装着されるアダプタ(5)と、
前記主軸(3)の一端に装着され、前記主軸(3)を延長する延長軸(6)と、
前記延長軸(6)に挿着されたリング状のスラストカラー(7g)と、
前記スラストカラー(7g)に当接しながら摺動し、スラスト力を測定するセンサ内蔵滑り軸受 (7)と、
前記センサ内蔵滑り軸受 (7)を支持し、前記アダプタ(5)に連結されたハウジング(8)と、
を備えたことを特徴とするスラスト力測定器(10)。
【請求項2】
前記アダプタ(5)の取付穴は、前記オイルジャケットブラケット(2)に形成されたオイルジャケット(11)の固定穴と一致していることを特徴とする請求項1に記載のスラスト力測定器(10)。
【請求項3】
前記ハウジング(8)は、上ハウジング(8b)と下ハウジング(8a)の2つに分割されていることを特徴とする請求項1に記載のスラスト力測定器(10)。
【請求項4】
前記ポンプ(100)の前記オイルジャケットブラケット(2)から前記オイルジャケット(11)を取り外す第1工程と、
前記ポンプ(100)の前記オイルジャケットブラケット(2)に前記スラスト力測定器(10)を組み付ける第2工程と、
前記ポンプ(100)を駆動させ、主軸(3)にかかるスラスト力を測定する第3工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載されたスラスト力測定器(10)を使用したスラスト力の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−42416(P2012−42416A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186061(P2010−186061)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(391019706)新潟ウオシントン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】