説明

スラスト振動併発振動モータ

【課題】 製造・組み立てが容易で、耐久性の高いスラスト振動偏平モータを提供する。
【解決手段】 S極とN極とに交互に着磁された略円環状の永久磁石2bを備え、シャフト3を中心として回転するロータ2と、永久磁石2bと間隔を空けて対向して配置されたコイル4とを有し、ロータ2とコイル4とが上ケース10及び下ケース11との間に形成される空間に収納されたスラスト振動偏平モータであって、ロータ2はシャフト3の軸方向に移動自在に設置されており、ロータ2には、下ケース11側に凸となる凸部2cが形成されており、下ケース11には、ロータ2の回転に伴って凸部2cとの衝突及び離間を繰り返すように凸部11aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が感知可能な振動を発生させるためのモータに関し、特に、スラスト方向への振動を発生させることのできる振動発生モータに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信端末においては、特定の人(使用者)のみに着信を報知するために振動が利用されている。このような着信通知手段には、振動の発生源としてモータが用いられている。
【0003】
近年の携帯通信端末は、端末自体の小型化や薄型化が要求されているため、これに組み込まれる振動発生源としてのモータにも簿型化が求められる。このため、一般的には、扁平振動型モータが振動発生源として携帯通信端末に用いられている。
【0004】
しかし、従来の扁平型振動モータは、振動がラジアル方向(半径方向)に発生するため、モータは取り付け面と平行な方向に振動してしまう。モータが取り付け面と平行に振動すると、発生する振動は人間が感知しにいものとなる。よって、回転数を高くしたり偏心量を多くして、人間が振動を感知しやすくしなければならない。
【0005】
人間が感知しやすい振動を発生させるモータとしては、特許文献1に開示される「偏平型振動ブラシレスモータ」がある。ロータフレームの外周に凸部を、モータケースの内周部にY=a/sin(2nθ)の関数で示される溝をそれぞれ設けることにより、ロータ回転時に凸部が溝に沿って摺動し、スラスト方向の振動を発生させるものである。
【特許文献1】特開平5−38093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明は、ロータに作用する磁力は、スラスト方向の変位に伴って変化するため、ロータが所望の強さのスラスト振動を発生するように設計・製造することは難しい。
【0007】
また、モータケースの内周面に溝を形成しなければならないため、加工が難しく製造コストが高騰する。また、凸部と溝とが噛みあうようにモータを組み立てなければならないため、組み立て時の作業性が低い。さらに、凸部を溝に沿って移動させるために摺動抵抗が大きくなり、発熱量も大きくなる。
【0008】
しかも、nが奇数の場合には、ロータフレームの一端と他端とで振動方向が逆となり、モータシャフトに曲げ応力が繰り返し作用する。このため、モータシャフトが疲労で破断する恐れがある。
【0009】
このように、特許文献1に記載の発明は、設計・製造・組み立てが難しく、耐久性が低いという問題があった。
【0010】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、設計・製造・組み立てが容易で、耐久性の高いスラスト振動併発振動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、S極とN極とに交互に着磁された略円環状のマグネットを備え、枢軸を中心として回転するロータと、マグネットと間隔を空けて対向して配置されたコイルとを有し、ロータとコイルとが第1のケース及び磁性材料で形成された第2のケースとの間の空間に収納されたスラスト振動併発振動モータであって、
ロータは枢軸の軸方向に移動自在に設置されており、
ロータには、第2のケース側に凸となる第1の突起が形成されており、
第2のケースには、ロータの回転に伴って第1の突起との衝突及び離間を繰り返すように第2の突起が形成されていることを特徴とするスラスト振動併発振動モータを提供するものである。
【0012】
上記の構成のスラスト振動併発振動モータにおいては、第1の突起が2以上形成されていることが好ましい。また、第2の突起が2以上形成されていることが好ましい。また、ロータに偏心ウェイトが設けられていることが好ましい。また、ロータが磁性材料で形成されていることが好ましい。また、第1のケースと第2ケースとが同じ材料で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設計・製造・組み立てが容易で、耐久性の高いスラスト振動併発振動モータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好適な実施の形態について説明する。図1に、本実施形態に係るスラスト振動併発振動モータの構成を示す。このスラスト振動併発振動モータは、ロータ2、シャフト3、コイル4及び基板5を有し、これらが上ケース10と下ケース11とに収容されている。
ロータ2は、凸部2cを備えたベース金属と偏心ウェイト2aと軸受2dと永久磁石2bによって構成される。偏心ウェイト2aは、ロータ2が発生させるスラスト方向の振動を強める役割に加え、従来の振動モータと同様にラジアル方向への振動を発生させる役目も果たす。
【0015】
上ケース10及び下ケース11は、金属材料で形成される。なお、下ケース11は、永久磁石2bとの間に引力が生じる材料、すなわち磁性金属で形成される。上ケース10は磁性金属で形成する必要は無いが、上ケース10と下ケース11とに異なる材料を用いると、電池が形成されるため、これらは同じ材料で形成することが好ましい。
下ケース11は、凸部11aが設けられると共に、シャフト3とコイル4とを接続する基板5が固定されている。
【0016】
なお、ここでは便宜上、一対のケースの一方を上ケース10、他方を下ケース11としているが、本実施形態に係るスラスト振動併発振動モータは、必ずしも上ケース10が鉛直上方に位置するように実装する必要はなく、任意の向きに実装可能である。
【0017】
基板5は、組み立て係合された上ケース10及び下ケース11の間から外に引き出されて配置されている。基板5は、端子5aから電源入力されコイル4に磁界を発生させ、ロータ2に備えられている永久磁石2bに吸引、反発力を生じさせる。これにより、ロータ2は、一般的なモータと同様の動作原理にて回転運動を行う。
【0018】
なお、ロータ2は、電源が供給されていない状態では、永久磁石2bの間の磁力によって下ケース11側に引き寄せられている。
【0019】
モータに電源が供給されると、ロータ2の回転に伴って、凸部2cはシャフト3を中心とする円周を描くように変位する。図2に示すように凸部2cが下ケース11の凸部11aに乗り上げると、ロータ2はスラスト方向(下ケース11から遠ざかる方向)に変位する。
ロータ2がさらに回転して、凸部2cが下ケース11の凸部11aを通過すると、永久磁石2bの磁力によってロータ2は下ケース11側へ引きつけられて、スラスト方向(下ケース11に近づく方向)に変位する。
凸部2c及び凸部11aが各々一つずつであれば、ロータ2は一回転を周期としてスラスト方向への往復運動を繰り返す。
【0020】
本実施形態に係るスラスト振動併発振動モータにおいて、スラスト方向への振動を発生させるのは、ロータ2及び下ケース11のそれぞれに設けた凸部2c及び11aである。このため、精密な加工が必要とならず、部品の製造コストを低減できる。
また、従来のラジアル振動モータと同様に、ロータ2は単純にシャフト3に組み付けるだけで良いため、組み立てが容易である。
さらに、ロータ2は、スラスト方向に変位する際にシャフト3に沿って平行に移動するため、シャフト3に曲げ応力が作用することはない。
【0021】
さらに、スラスト方向への振動を発生させる際に、凸部2cと凸部11aとが衝突するため、特許文献1に記載の発明よりもスラスト方向への振動をより強く発生させられる。
【0022】
このように、本実施形態に係るスラスト振動併発振動モータは、設計・製造・組み立てが容易で、高い耐久性を持ち、しかも従来の振動モータよりも強いスラスト方向の振動を容易に得られる。
【0023】
なお、上記実施形態は、本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはない。
例えば、金属ウェイトの取り付け位置などは、図示した位置に限定されることは無く適宜変更可能である。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好適な実施の形態にかかるスラスト振動併発振動モータの構成を示す図である。
【図2】本発明の好適な実施の形態にかかるスラスト振動併発振動モータの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
2 ロータ
2a 金属ウェイト
2b 永久磁石
2c、11a 凸部
2d 軸受
3 シャフト
4 コイル
5 基板
5a 端子
10 上ケース
11 下ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S極とN極とに交互に着磁された略円環状のマグネットを備え、枢軸を中心として回転するロータと、前記マグネットと間隔を空けて対向して配置されたコイルとを有し、前記ロータと前記コイルとが第1のケース及び磁性材料で形成された第2のケースとの間の空間に収納されたスラスト振動併発振動モータであって、
前記ロータは前記枢軸の軸方向に移動自在に設置されており、
前記ロータには、前記第2のケース側に凸となる第1の突起が形成されており、
前記第2のケースには、前記ロータの回転に伴って前記第1の突起との衝突及び離間を繰り返すように第2の突起が形成されていることを特徴とするスラスト振動併発振動モータ。
【請求項2】
前記第1の突起が2以上形成されていることを特徴とする請求項1記載のスラスト振動併発振動モータ。
【請求項3】
前記第2の突起が2以上形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のスラスト振動併発振動モータ。
【請求項4】
前記ロータに偏心ウェイトが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のスラスト振動併発振動モータ。
【請求項5】
前記ロータが磁性材料で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のスラスト振動併発振動モータ。
【請求項6】
前記第1のケースと前記第2ケースとが同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のスラスト振動併発振動モータ。

【図1】
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【図2】
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