説明

スラリー相重合方法

オレフィンモノマーを必要に応じオレフィンコモノマーと一緒に重合触媒の存在下に希釈剤中にて、少なくとも2つの水平セクションと少なくとも2つの垂直セクションとを含むループ反応器で重合させて、固体微粒子オレフィンポリマーと希釈剤とからなるスラリーを生成させる方法につき開示し、ループ反応器の垂直セクションにおける長さの少なくとも20%におけるフラウデ数がループの水平セクションにおける長さの少なくとも20%におけるフラウデ数の85%未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、スラリーまたは懸濁相ループ反応器におけるオレフィン重合に関するものである。
【0002】
オレフィンのスラリー相重合は周知されており、オレフィンモノマーおよび必要に応じオレフィンコモノマーを触媒の存在下に希釈剤中で重合させ、希釈剤で固体ポリマー生成物を懸濁させると共に輸送する。
【0003】
本発明は特にループ反応器における重合に関し、ここでスラリーは典型的にはポンプもしくは撹拌器により反応器にて循環される。液体のフルのループ反応器は特に当業界にて周知され、たとえば米国特許第3,152,872号明細書、米国特許第3,242,150号明細書および米国特許第4,613,484号明細書に記載されている。
【0004】
重合は典型的には50〜125℃の範囲の温度および1〜100baraの範囲の圧力にて行われる。使用する触媒は、典型的にはたとえばクロム酸化物、チーグラー・ナッタもしくはメタロセン型の触媒のようなオレフィン重合につき使用される任意の触媒とすることができる。ポリマーと希釈剤、並びに大抵の場合は触媒、オレフィンモノマーおよびコモノマーを含む生成物スラリーは間欠的または連続的に放出することができ、これには必要に応じたとえばヒドロサイクロンもしくは沈降レグのような濃縮装置を用いて、ポリマーから抜き取られる流体の量を最少化させる。
【0005】
ループ反応器は、少なくとも2個(たとえば4個)の垂直セクションと少なくとも2個(たとえば4個)の水平セクションとを備える連続チューブ構造である。重合熱は典型的には冷却媒体(好ましくは水)での間接的交換を用い、少なくともチューブ状ループ反応器の1部を包囲するジャケットにて除去される。ループ反応器の容積は変化しうるが、典型的には20〜120mの範囲である。本発明のループ反応器はこの一般的種類のものである。
【0006】
最大工業規模のプラント能力は長年にわたり絶えず増大している。過去20,30年にわたる操作経験の増大は、反応ループにおける高スラリーおよびモノマー濃縮の増大の運転をもたらした。スラリー濃縮における増大は典型的には増大した循環速度で達成され、これはたとえば一層高い反応器循環ポンプヘッドまたは複数循環ポンプにより達成される(たとえば、欧州特許第432555号明細書および欧州特許第891990号明細書)。増大する速度およびヘッド要求は、スラリー濃度が増大するにつれて増大するエネルギー消費をもたらした。増大する操作経験にも拘わらず、個々の重合反応器の容積は、所望の生産能力を収容するため増大することを必要とした。新規な工業プラントの構造および承認は極めて高価につき、従って新規な設計は能力における所用の規模拡大を達成することを求める一方、新規な装置の成功裏の操作に対する最小の危険性を示すパラメータを変化させることを求める。典型的には、反応器ループ容積は現存する反応器ループに対し脚部および/または長さを付加し或いは2つの現存するループを一緒に結合することにより増大されると共に、反応器ループの内径を約24インチ(600mm)またはそれ以下に維持する。一定の直径にて長さを増大させることによる反応ループ容積の増大は、絶対的(および特定の)ループ圧力低下(および従って出力消費)を絶えず増大させることになった。
【0007】
反応器容積の増加に対する産業規模反応器の直径の増大は、長さの増大に関連するよりも大きい規模拡大の危険を与えることか解った。危険の増大は反応器断面にわたる良好な熱的、組成的および粒子の分布の維持にわたる問題点に関連するが、重合ループにおける過度の乱流増大(たとえば循環速度)および関連圧力低下/出力には関連しない。不充分な断面分布は増大する汚染、減少する熱移動、並びに減少するポリマー生産性および均質性をもたらしうる。
【0008】
更に反応器は典型的には全ループにわたり一定の内径にて設計および構築され、ただしたとえば循環ポンプのような取付け具が特定の理由から特定箇所における異なる(より大きい、またはより小さい)直径を支配する。ただし、たとえば垂直セクションと水平セクションとの間の内径を変化させれば汚染問題を生ずるという予想が存在する。これは本発明の場合でないことを本出願人は突き止めた。
【0009】
本発明によれば、オレフィンモノマーを必要に応じオレフィンコモノマーと重合触媒の存在下に希釈剤中にて、少なくとも2個の水平セクションと少なくとも2個の垂直セクションとを含むループ反応器にて重合させて、固体微粒子オレフィンポリマーと希釈剤とからなるスラリーを生成させる方法が提供され、ここで反応器ループの垂直セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数はループの水平セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数の85%未満であることを特徴とする。
【0010】
本発明の利点は、反応器の所定長さの滞留時間が増大すると共に同時に反応器汚染の危険における増大を最小化させる点である。本発明は、減少した全体的および特定のエネルギー消費を持って垂直スラリーループ反応器の設計および運転を可能にする。
【0011】
本発明は、オレフィン(好ましくはα−モノオレフィン)を長形チューブ状閉鎖ループ反応帯域にて連続重合させる方法および装置に関するものである。オレフィンは炭化水素希釈剤における触媒に連続的に添加されると共に接触する。各モノマーは重合して、固体微粒子ポリマーのスラリーを重合媒体もしくは希釈剤に懸濁して形成する。特に本発明は、フラウデ数がループにわたり変動する方法に関するものである。
【0012】
フラウデ数は、スラリーにおける粒子の懸濁物と沈降傾向との間のバランスを示す無次元パラメータである。これは、流体と比較した粒子からのパイプ壁部へのモーメント移動プロセスの相対尺度を与える。フラウデ数の一層低い数値はより強力な粒子壁部(流体−壁部に対する)相互作用を示す。フラウデ数(Fr)はv/(g(s−1)D)として規定され、ここでvはスラリーの平均速度であり、gは重力定数であり、sは希釈剤における固形物の比重であり、Dはパイプの内径である。水の密度に対するポリマーの密度の比である固体ポリマーの比重は、実質的に脱揮発化された後かつ押出しの直前における方法ISO 1183Aを用いて測定された脱ガスポリマーのアニール密度に基づいている。
【0013】
反応器ループの垂直セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数は、ループの水平セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数の85%未満である。
【0014】
ループにおける平均フラウデ数は、好ましくは20もしくはそれ未満、たとえば20〜1の範囲、好ましくは15〜2の範囲、より好ましくは10〜3の範囲に維持される。
【0015】
典型的にはポリエチレンのスラリー重合法において、反応器におけるスラリーは微粒子ポリマーと炭化水素希釈剤と(コ)モノマーと触媒と連鎖停止剤(たとえば水素)と他の反応器添加剤とからなっている。特にスラリーは、このスラリーの全重量に対し20〜75重量%(好ましくは30〜70重量%)の微粒子ポリマーとスラリーの全重量に対し80〜25重量%(好ましくは70〜30重量%)の懸濁流体とからなり、ここで懸濁媒体は反応器における全流体成分の合計であると共に希釈剤とオレフィンモノマーと全ての添加剤とからなっている。希釈剤は不活性希釈剤とすることができ、或いは反応性希釈剤(特に主たる希釈剤が不活性希釈剤である場合)は液体オレフィンモノマーとすることもでき、典型的にはスラリーの2〜20重量%、好ましくは4〜10重量%を占める。
【0016】
反応器におけるスラリー中の固形物濃度は典型的には20容量%より大、好ましくは約30容量%、たとえば20〜40容量%、好ましくは25〜35容量%であり、ここで容量%は[(スラリーの全容積−懸濁媒体の容積)/(スラリーの全容積)]x100である。容量%として測定されるものに等しい重量%で測定される固形物濃度は生成されるポリマーに従って変化するが、一層詳細には用いる希釈剤に応じて変化する。生成されるポリマーがポリエチレンであると共に希釈剤がアルカン(たとえばイソブタン)である場合、固形物濃度は40重量%より大、たとえば40〜60重量%、好ましくは45〜55重量%である(スラリーの全重量に対し)ことが好ましい。
【0017】
本発明の格別の特徴は、変動する(好ましくは低フラウデ数)におけるスラリー相重合の操作が反応器を高固形物か充填量にて操作することを可能にするという点である。本発明の好適具体例はループ反応器にてオレフィンモノマー(特にエチレン)を必要に応じオレフィンコモノマーと一緒に重合触媒の存在下に希釈剤(特にイソブタン)中で重合させて、固体微粒子オレフィンポリマーと希釈剤とからなるスラリーを生成される方法であって、反応器ループの垂直セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数がループの水平セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数の85%未満であることを特徴とする。
【0018】
本発明は、好ましくはスラリー重合にて従来使用されているよりも大きい直径の反応器で行われる。たとえば500mmより大(特に600mmより大、たとえば600〜750mm)の平均内径を有する反応器が好適に使用される。本発明の更なる利点は、従って比較的低い循環速度および/または比較的高い反応器ループ直径における高スラリー濃度を達成しうる点である。本発明の更なる具体例は、ループ反応器にてオレフィンモノマーを必要に応じオレフィンコモノマーと一緒に重合触媒の存在下に希釈剤中で重合させて、固体微粒子オレフィンポリマーと希釈剤とからなるスラリーを形成させる方法からなり、ここで反応器ループの垂直セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数はループの水平セクションの長さの少なくとも20%におけるフラウデ数の85%未満であると共に、反応器の平均内径は600〜750mmの範囲である。
【0019】
垂直セクションの平均内径は水平セクションの平均内径と同じ、より大もしくはそれ以下(好ましくはより大)とすることができる。典型的には、水平セクションは500〜700mmの範囲(たとえば600〜650mmの範囲)の平均内径を有する。垂直セクションは典型的には600〜900mm(たとえば650〜750mm)の範囲の平均内径を有する。各水平セクションおよび各垂直セクションの平均内径は同一でも異なってもよい。この内径は単一の水平もしくは垂直セクションに沿って同一もしくは変化することができ、好ましくはこれは同一に保たれる。垂直セクションの平均内径は、水平セクションの平均内径よりも90%大、たとえば5〜50%大、特に10〜30%大とすることができる。
【0020】
垂直および水平とはそれぞれ実質的に垂直および実質的に水平を意味すると解釈すべきであり、これらはたとえば幾何学的垂直および幾何学的水平から10°以下、好ましくは5°以下である。
【0021】
重合混合物もしくはスラリー(上記した通り)は、比較的平滑−通路のエンドレスループ反応システムの周囲に、(i)懸濁物におけるポリマーをスラリー中に維持すると共に(ii)許容しうる断面濃度および固形物充填勾配を維持するのに充分な流体速度にてポンプ輸送する。
【0022】
反応器ループの垂直セクションは反応器の垂直セクションにおけるフラウデ数にて操作することができ、これらは信頼しうる反応器操作を維持すべく水平セクションに必要とされる最小値よりも顕著に低いことが判明した。流体に対する粒子のパイプ壁部へのモーメント移動プロセスは明らかに顕著に減少するがこの場合は減少し、許容しうる熱移動および熱移動係数がまだ維持されうると共にプラントの信頼性に影響を与えないことが判明した。
【0023】
垂直セクションにおけるフラウデ数は、好ましくは水平セクションで用いられる最小フラウデ数の15〜85%に維持される。上方向循環での垂直セクションにおけるフラウデ数は、好ましくは水平セクションで用いられる最小フラウデ数の30〜85%に維持される。それよりずっと低い相対的フラウデ数が下方向循環での垂直セクションにて可能である。下方向循環での垂直セクションにおけるフラウデ数は、好ましくは水平セクションで使用される最小フラウデ数の15〜70%に維持される。
【0024】
本発明の1具体例において、ループの水平セクションにおけるフラウド数は30未満、好ましくは20未満、特に好ましくは10未満に維持され、垂直セクションにおけるフラウデ数は20未満、好ましくは10未満、特に好ましくは5未満に維持される。
【0025】
本発明の好適具体例において、反応器ループの垂直セクションの下方向循環における長さの少なくとも20%のフラウデ数は、ループの垂直セクションの長さの上方向循環の少なくとも20%に存在するフラウデ数の85%未満に維持される。
【0026】
本発明の代案具体例において、反応器ループの垂直セクションの長さの少なくとも20%は、ループの水平セクションの長さの少なくとも20%をカバーする最大内部断面積よりも少なくとも5%大の内部断面積を有する。
【0027】
本発明の更なる具体例において、反応器ループの垂直セクションの長さの下方向循環における少なくとも20%のフラウデ数は、ループの垂直セクションの長さの上方向循環における少なくとも20%に存在するフラウデ数の85%未満に維持される。
【0028】
好ましくは、水平セクションは反応器長さの20%以下よりなり、および/または反応器容積の20%以下に貢献する。
【0029】
特定具体例においては、下方向流動セクションを反応器容積および触媒生産率を最大化するような寸法とするが、ただしこの場合の熱移動係数は通常予測されると同じ高さにしてはならない。この場合、下方向流動垂直セクションにおける循環速度は反応器における粒子の最小沈降速度未満とすることができる。好適具体例において、下方向流動垂直セクションにおけるフラウデ数は1〜5、好ましくは1〜3に維持される。この場合、全反応器長さは純粋な熱移動的考慮から必要とされるよりも高くすることもできるが、この設計の方法論は新規な最適設計ポイントをもたらして、触媒生産率およびポンプ出力をバランスさせる。
【0030】
一定反応器容積につき反応器直径が増大するにつれ、入手しうる熱移動面積は減少する。本発明の更なる利点は、高スラリー濃度を循環速度が極めて低下する際に熱移動係数(全て他のことも同等である)につれ比較的低循環速度にて大直径反応器で耐えうることが判明した点である。本発明の充分な利点を用いて反応器設計を触媒生産率もしくは限定された空時収率よりも限定した熱移動にしやすく、これは従来技術の方法により設計される同等な反応器におけるよりも低い触媒残留物を達成しうることを意味する。
【0031】
反応器は、単位反応器長さ当たり並びにループにわたるポリマーの質量および全圧力低下にわたり、必要とされるよう教示されたよりも低い特定圧力にて特に高固形物充填量および大反応器直径にて設計および操作しうることが判明した。本発明は、1.3バール未満、特に1バール未満の全ループ圧力低下を25トン/hrより高い、特に毎時45トン/hrより大のポリマー生産速度につき可能にする。1つもしくはそれ以上の水平セクションにつきループにて1つのポンプよりも1つもしくはそれ以上のポンプを用いることができる。これらは同じ水平セクションに或いは異なるセクションに位置することができる。ポンプは同じ直径またはそれより大もしくは小の直径、好ましくはポンプもしくはポンプが位置する反応器のセクションの内径と同じ直径とすることができる。好ましくは単一のポンプを用い、ポンプの個数および出力に対する要求が慣用の方法よりも厄介でないことが本発明の特徴である。
【0032】
反応器の寸法は典型的には20mより大、特に50mより大、たとえば75〜150mの範囲、好ましくは100〜125mの範囲である。
【0033】
垂直セクションにおける低フラウデ数で操作する能力は、より大きい反応器直径を考慮することを可能にすると共に80mより大の反応器容積を構築することを可能にし500未満、好ましくは300未満、たとえば250未満の平均内径に対する反応器長さの比を持って構築することを可能にする。反応器長さと平均内径との比の低下は、反応ループにわたる組成勾配を最小化させると共に25te/hrより大、たとえば40te/hrより大の1反応器当たりの生産速度を反応ループにわたる試薬導入の単一のポイントのみを用いて達成することを可能にする。代案として反応体(たとえばオレフィン)、触媒または他の添加剤につきループ反応器に複数の入口を設けることも可能である。
【0034】
本発明の好適具体例においては、ループをループの垂直直径におけるフラウデ数がループの水平セクションの上流にてパイプの水平セクションにおけるフラウデ数の90%以上、好ましくは約100%を維持するよう5本のパイプ直径、好ましくは10本、特に好ましくは15本のパイプ直径の範囲内となるよう設計される。これは流体が水平セクションに流入する前に水平セクションにおけるとほぼ同じ条件に達することを確保するためである。
【0035】
ループに用いる圧力は反応系を「液体フル」(すなわち殆どガス相が存在しない)に維持するのに充分とする。使用する典型的圧力は1〜100bara、好ましくは30〜50baraである。エチレン重合においてエチレンの分圧は典型的には0.1〜5MPa、好ましくは0.2〜2MPa、より好ましくは0.4〜1.5MPaの範囲である。選択する温度は、生成されるポリマーのほぼ全部が実質的に(i)非粘着性かつ非凝集性の固体微粒子型になると共に(ii)希釈剤中に不溶性となるような温度である。重合温度は選択される炭化水素希釈剤および生成されるポリマーに依存する。エチレン重合において温度は一般に130℃未満、典型的には50〜125℃、好ましくは75〜115℃である。たとえばイソブタン希釈剤におけるエチレン重合においてループで用いる圧力は好ましくは30〜50baraの範囲であり、エチレン分圧は好ましくは0.2〜2MPaの範囲であり、重合温度は75〜115℃の範囲である。本発明の方法につきループ反応器容積1単位当たりのポリマーの生産速度である空時速度は0.1〜0.4トン/hr/m、好ましくは0.2〜0.35トン/hr/mの範囲である。
【0036】
本発明による方法はオレフィン(好ましくはエチレン)ポリマーを含有する組成物の作成に適用され、これらポリマーは1種もしくは多数のオレフィンホモポリマーおよび/または1種もしくは多数のコポリマーで構成することができる。特にエチレンポリマーおよびプロピレンポリマーの製造に適している。エチレンコポリマーは典型的には12重量%、好ましくは0.5〜6重量%、たとえば約1重量%に達しうる変動量にてα−オレフィンを含む。
【0037】
この種の反応に一般的に用いられるαモノ−オレフィンモノマーは、1分子当たり8個までの炭素原子を有すると共に4−位置より近い二重結合を分岐しない1種もしくはそれ以上の1−オレフィンである。典型例はエチレン、プロピレン、ブテン−1,ペンテン−1およびオクテン−1並びにたとえばエチレンとブテン−1またはエチレンとヘキセン−1のような混合物を包含する。ブテン−1,ペンテン−1およびヘキセン−1が、エチレン共重合につき特に好適なコモノマーである。
【0038】
この種の反応で用いられる典型的希釈剤は3〜12個、好ましくは3〜8個の炭素原子を1分子当たりに有する炭化水素、たとえばプロパン、n−ブタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンのような線状アルカン類または、たとえばイソブタン、イソペンタン、トルエン、イソオクタンおよび2,2−ジメチルプロパンのような分枝鎖アルカン類またはたとえばシクロペンタンおよびシクロヘキサンもしくはその混合物のようなシクロアルカン類を包含する。エチレン重合の場合、希釈剤は一般に触媒、助触媒および生成されるポリマー(たとえば液体の脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素)に対し、たとえば生成ポリマーの少なくとも50%(好ましくは少なくとも70%)が不溶性となるような温度にて不活性である。イソブタンが、エチレン重合につき希釈剤として特に好適である。
【0039】
操作条件は、モノマー(たとえばエチレン、プロピレン)がいわゆるバルク重合法の場合と同様に懸濁媒体すなわち希釈剤として作用するようなものとすることができる。容量%におけるスラリー濃度限界は、懸濁物媒体の分子量とは無関係にかつ懸濁物媒体が不活性または反応性の液体もしくは超臨界的であるかどうかに無関係に、適用しうることが判明した。プロピレンモノマーがプロピレン重合につき希釈剤として特に好適である。
【0040】
分子量調整の方法は当業界にて公知である。チーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン型触媒および三座レート遷移金属型触媒を用いる場合、水素が好適に使用され、一層高い水素圧力はより低い平均分子量をもたらす。クロム型触媒を用いる場合、重合温度は好ましくは分子量を制御すべく使用される。
【0041】
工業プラントにおいて微粒子ポリマーは希釈剤から分離され、その方法は希釈剤が汚染にさらされて最小の精製を伴って重合帯域に希釈剤を循環させうるようにする。本発明の方法により生成された微粒子ポリマーの希釈剤からの分離は典型的には当業界で知られた任意の方法とすることができ、たとえば(i)開口部にわたるスラリーの流動がポリマー粒子を或る程度希釈剤から沈降させうる帯域を与えるような不連続沈降レグの使用、または(ii)連続的生成物抜き取りを包含する。単一もしくは複数の抜き取りポートを介し、ループ反応器の任意の場所としうるが好ましくはループの水平セクションの下流端部に隣接する。任意の連続抜き取りポートは典型的には2〜25cm、好ましくは4〜15cm、特に5〜10cmの内径を有する。本発明は、大規模の重合反応器を低希釈剤回収要件にて操作することを可能にする。スラリーにおける高固形物濃度を有する大直径反応器の操作は、重合ループから抜き取られる主たる希釈剤の量を最少化させる。
【0042】
抜き取られたポリマースラリーに対する濃縮装置の使用は、好ましくはヒドロサイクロン(単一または複数の場合は平行した或いは直列のヒドロサイクロン)は更に効率的にエネルギーの希釈剤における回収を高める。何故なら、顕著な圧力低下および回収希釈剤の蒸発が回避されるからである。
【0043】
反応器ループにおけるスラリー濃度は平均粒子寸法および/または反応器ループ内のポリマーの粒子寸法分布を制御して最適化しうることが判明した。粉末の平均粒子寸法の主たる決定因子は反応器における滞留時間である。触媒の粒子寸法分布は、反応器に供給される触媒の粒子寸法分布、初期および平均の触媒活性、触媒支持体の丈夫さおよび反応条件下での断片に対する粉末の感受性を包含する多くの因子により影響を受けうる。固形物分離装置(たとえばヒドロサイクロン)を反応器ループから抜き取られるスラリーにつき用いて、反応器における粉末の平均粒子寸法および粒子寸法分布の制御を更に助けることができる。濃縮装置の抜き取り点の位置、並びに濃縮装置系(好ましくは少なくとも1つのヒドロサイクロン循環ループ)の設計および操作条件も、反応器内の粒子寸法および粒子寸法分布を制御することを可能にする。平均粒子寸法は好ましくは100〜1500μm、特に好ましくは250〜1000μmである。
【0044】
抜き取られ、好ましくは濃縮されたポリマースラリーは圧力解除され、必要に応じ加熱された後に主たるフラッシュ容器に導入される。流れは好ましくは圧力解除の後に加熱される。
【0045】
主たるフラッシュ容器にて回収される希釈剤および任意のモノマー蒸気は典型的には再圧縮なしに濃縮されて重合プロセスにて再使用される。主たるフラッシュ容器の圧力は、好ましくは任意の再圧縮に先立ちフラッシュ蒸気のほぼ全部の容易に入手しうる冷却媒体(たとえば冷却水)での凝縮を可能にするよう制御され、典型的には前記主たるフラッシュ容器におけるこの種の圧力は4〜25bara、たとえば10〜20、好ましくは15〜17baraである。主たるフラシュ容器から回収される固形物は好ましくは第2フラッシュ容器に移送されて、残留揮発物を除去する。代案としてスラリーを上記主たる容器におけるよりも低い圧力のフラッシュ容器に移送し、回収希釈剤を凝縮するべく再圧縮を必要とするようにすることができる。高圧力のフラッシュ容器の使用が好適である。本発明による方法は0.890〜0.930における特定密度(低密度)、0.930〜0.940(中密度)または0.940〜0.970(高密度)の範囲の特定密度を示す樹脂を製造すべく使用することができる。
【0046】
本発明による方法は全てのオレフィン重合触媒系に適し、特にチーグラー型触媒から選択されるもの、特にチタン、ジルコニウムもしくはバナジウムから誘導されるもの、および熱活性化シリカまたは無機支持酸化クロム触媒から、およびメタロセン型触媒から誘導されるものに適し、ここでメタロセンは遷移金属(特にチタンもしくはジルコニウム)のシクロペンタジエニル誘導体である。
【0047】
チーグラー型触媒の非限定的例は、周期律表第IIIB、IVB、VBもしくはVIB族から選択される遷移金属とマグネシウムおよびハロゲンからなる化合物であり、これらはマグネシウム化合物を遷移金属およびハロゲン化された化合物と混合して得られる。ハロゲンは、必要に応じマグネシウム化合物または遷移金属化合物の一体的部分を形成することができる。
【0048】
メロタセン型触媒はアルモキサンにより或いはたとえば欧州特許出願公開第500,944号A1明細書(ミツイ・トーアツ・ケミカルズ)に記載されたようなイオン化剤により活性化されたメタロセンとすることができる。
【0049】
チーグラー型触媒が特に好適である。これらのうち、格別の例は第IIIB族、IVB族、VB族およびVIB族から選択される少なくとも1種の遷移金属、マグネシウムおよび少なくとも1種のハロゲンを含む。良好な結果は次のものからなるもので得られる:
10〜30重量%の遷移金属(好ましくは15〜20重量%)、
20〜60重量%のハロゲン(好ましくは30〜50重量%)、
0.5〜20重量%のマグネシウム(一般に1〜10重量%)、
0.1〜10重量%のアルミニウム(一般に0.5〜5重量%)、
残部は一般にその製造につき使用される物品から生ずる元素、たとえば炭素、水素および酸素で構成される。遷移金属およびハロゲンは好ましくはチタンおよび塩素である。
【0050】
重合(特にチーグラー触媒によるもの)は典型的には助触媒の存在下に行われる。当業界で知られた任意の助触媒、特に少なくとも1種のアルミニウム−炭素化学結合を含む化合物、たとえば必要に応じハロゲン化有機アルミニウム化合物を使用することができ、これらは酸素または周期律表第I族の元素を含むことができ或いはアルミノキサンである。特定例は有機アルミニウム化合物であり、たとえばトリエチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム、たとえばトリイソプロペニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム、たとえばジエチルアルミニウムエトキシドのようなアルミニウムモノ−およびジ−アルコキシド、モノ−およびジ−ハロゲン化アルキルアルミニウム(たとえばジエチルアルミニウムクロライド)、アルキルアルミニウムモノ−およびジ−ハイドライド、たとえばジブチルアルミニウムハイドライド、並びにたとえばLiAl(Cのようなリチウムを含む有機アルミニウム化合物を使用することができる。有機アルミニウム化合物、特にハロゲン化されてないものが特に適している。トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが特に有利である。
【0051】
クロム系触媒は、チタニア含有支持体(たとえば複合シリカおよびチタニア支持体)を有する支持酸化クロム触媒からなることが好ましい。特に好適なクロム系触媒は0.5〜5重量%のクロム、好ましくは約1重量%のクロム、たとえば0.9重量%のクロムをクロム含有触媒の重量に基づき含むことができる。支持体は少なくとも2重量%のチタン、好ましくは約2〜3重量%のチタン、より好ましくは約2.3重量%のチタンをクロム含有触媒の重量に基づき含む。クロム系触媒は、200〜700m.sup.2/g、好ましくは400〜550m.sup.2/gの比表面積および2cc/gより大、好ましくは2〜3cc/gの容積多孔度を有することができる。
【0052】
シリカ支持のクロム触媒は、典型的には空気中で高められた活性化温度にて初期活性化工程にかけられる。活性化温度は好ましくは500〜850℃、より好ましくは600〜750℃の範囲である。
【0053】
反応器ループを使用してマルチモダルのポリマーを作成することができる。マルチモダルポリマーは単一反応器にて或いは複数反応器にて作成することができる。反応器システムは、1つもしくはそれ以上のループ反応器から構成して、これを直列または並列に接続することができる。更に反応器ループに先んじて或いはその後にループ反応器でない重合反応器を存在させることもできる。
【0054】
直列反応器の場合、直列の第1反応器には希釈剤およびモノマーの他に触媒および助触媒が供給され、その後の各反応器には少なくともエチレンが供給されると共に直列の事前反応器から生ずるスラリーも供給され、この混合物は触媒と助触媒と直列の事前反応器にて生成されたポリマーの混合物とからなっている。必要に応じ第2反応器および/または適切であれば次の各反応器の少なくとも1つには新鮮触媒および/または助触媒を供給することができる。しかしながら、専ら第1反応器に触媒および助触媒を導入することが好ましい。
【0055】
プラントが少なくとも2個の反応器を直列で含む場合には、最高メルトインデックスのポリマーおよび最低メルトインデックスのポリマーを直列の2つの隣接もしくは非隣接反応器で生成させることができる。水素は(i)低(または0)濃度に高分子量成分を製造する反応器にて維持され、たとえば水素%は0〜0.1容量%を含み、(ii)極めて高い濃度に低分子量成分を製造する反応器にて維持され、たとえば水素%は0.5〜2.4容量%である。各反応器は同等に操作されて、順次の反応器にて実質的に同じポリマーメルトインデックスを生ぜしめることができる。
【0056】
しかしながら、大直径反応器(および関連断面組成、熱もしくは微粒子の濃度勾配)にて操作する格別の感受性がポリマー樹脂の製造に関連し、ここで高いまたは低い分子量樹脂のいずれかのポリマーは汚染の増大問題をもたらすことが知られている。特に50kダルトン未満もしくは150kダルトンより大の分子量のポリマーを製造する場合である。これらの問題は特に、反応器ループにおける低ポリマー固形分にて強調されることが確認された。50kダルトン未満もしくは200kダルトンより大(または0.1未満および50より大のメルトインデックス)の分子量のポリマーを大直径の反応器にて製造する場合、しかしながら驚くことに固形物充填量を20容量%より大、特に30容量%より大まで増大させれば汚染は減少することが突き止められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンモノマーを必要に応じオレフィンコモノマーと一緒に重合触媒の存在下に希釈剤中にて、少なくとも2つの水平セクションと少なくとも2つの垂直セクションとを含むループ反応器で重合させて、固体微粒子オレフィンポリマーと希釈剤とからなるスラリーを生成させる方法において、ループ反応器の垂直セクションにおける長さの少なくとも20%におけるフラウデ数はループの水平セクションにおける長さの少なくとも20%におけるフラウデ数の85%未満であることを特徴とする重合方法。
【請求項2】
ループ反応器における平均フラウデ数を20もしくは20以下に維持する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ループ反応器における平均フラウデ数を10〜3の範囲に維持する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ループ反応器の垂直セクションにおける上方向循環でのフラウデ数を、水平セクションで使用される最小フラウデ数の30〜85%に維持する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ループ反応器の垂直セクションにおける下方向循環でのフラウデ数を、水平セクションで使用される最小フラウデ数の15〜70%に維持する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水平セクションにおけるフラウデ数を30未満に維持する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
垂直セクションにおけるフラウデ数を20未満に維持する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ループ反応器の水平セクションが全反応器長さの20%以下よりなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
全ループ圧力が1.3バール未満だけ低下するである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応器寸法が50mを越える請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ループ反応器の平均内径が300mmを越える請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ループ反応器の平均内径が600〜750mmの範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ループ反応器の平均内径に対する反応器長さの比が500未満、好ましくは250未満である請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つの水平セクションと少なくとも2つの垂直セクションとからなる連続チューブ構造のループ反応器において、垂直セクションの少なくとも20%における内部断面積が水平セクションの少なくとも20%をカバーする最大内部断面積よりも少なくとも5%大であることを特徴とするループ反応器。
【請求項15】
垂直セクションの平均内径が水平セクションの平均内径よりも少なくとも5%大である請求項14に記載のループ反応器。
【請求項16】
少なくとも2つの水平セクションと少なくとも2つの垂直セクションとからなる連続チューブ構造のループ反応器において、2つの垂直セクションの平均内径が水平セクションの平均内径よりも5〜90%大であることを特徴とするループ。
【請求項17】
水平セクションの平均内径が500〜700mmの範囲であると共に、垂直セクションの平均内径が600〜900mmの範囲である請求項16に記載のループ反応器。

【公表番号】特表2008−521961(P2008−521961A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542109(P2007−542109)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004487
【国際公開番号】WO2006/056763
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505455130)イネオス マニュファクチャリング ベルギウム ナームローゼ フェンノートシャップ (11)
【Fターム(参考)】