説明

スリットノズル

【課題】噴射後の液膜幅の減少を抑制し、かつ、異物除去が行いやすいスリットノズルを提供する。
【解決手段】横長なボデイ内に、該ボデイの横長方向に沿った流入路14を設け、流入路14に連通する流体導入口13をボデイ外面に設けると共に、流入路14に小径流路17を介して連通する横長なスリット状噴射孔18をボデイの横長方向の端面に沿って設け、スリット状噴射孔18の長さ方向の両端に連続させて、噴射孔18のスリット幅より広くした溝41、42をボデイに設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットノズルに関し、詳しくは、スリット状噴射孔から長い水平方向に亙って膜状に流体を噴射するノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶パネルの液置換洗浄や液切り等、プリント配線板のエッチング、鋼板のワイピング、その他低圧洗浄や液盛り等を行うため、液体あるいはエアを直線状に強い打力で吹き付けるスリットノズルが用いられている。
例えば、液晶パネルの製造工程においては、液晶パネルの大型化に伴って1つのスリットノズルで広範囲に亙って噴射できることが要望されており、噴射流量の分布にバラツキをなくして均一な膜状に噴射させることが不可欠の要素となる。
【0003】
図12(A)(B)に示す二重管方式のスリットノズルは、流体が供給される円筒状の内管1の外周に流路2をあけて四角枠状の外管3を被せ、内管1の上端に軸線方向のスリット1aを設けると共に、外管3の下頂点に軸線方向に噴射口となるスリット3aを設けている。前記スリットノズルでは、内管1のスリット1aから流路2に流体を流出させ、流路2を通して外管2のスリット3aから流体を横方向に広い範囲に亙って噴射している。
この二重管方式では、内管1を外管3の内部に流路2となる隙間をあけて配置する必要があるため歪みが発生しやすく、かつ、幅が不均一な流路2で流体が乱れやすいので、噴射液膜が不均一になる問題がある。さらに、噴射口となるスリット3aが外管3に孔あき加工で形成されているため、用途に応じてスリット3aの幅を変えることも出来ず、汎用性がない問題もある。
【0004】
そこで、特開2003−211027号公報では、図13に示すように、二重管方式を用いずに広い範囲に亙って噴射量がバラツキなく均一となるスリットノズル10を開示している。
該スリットノズル10は、流入口4から噴射口9にかけて、順次、流入口4に連通する流入路5、該流入路5に連通する第1小径流路6、該第1小径流路6に連通して流路を2方向に分離した後に合流させる整流室7、該整流室7に連通する第2小径流路8、該第2小径流路8に連通したスリット状の噴射口9を連続的に設けており、整流室7は円環流路からなり、円環の中心を第1、第2小径流路6、8の軸線と一致させ、第1小径流路6からの流体を円環の両側半周部に流通させて2方向に分離した後に第2小径流路8へ合流させて流通させている。該構成とすると、ノズル10内を流れる流体が層流化されて全長に亙って噴射量を均一化することが可能となる。
【0005】
しかしながら、噴射口9から噴射された液膜流Eは、表面張力などの影響によりある角度θ1で液膜幅Wを減少させる特性があるため、液膜流Eが対象物Tに衝突する時点の液膜幅Wに対してより長い幅の噴射口9を形成する必要があった。特に、スリットノズル10を対象物Tから離して使用する場合にはその現象が顕著となるため、スリットノズル10を対象物Tにある程度近づけて使用する必要があるが、あまり近づけ過ぎると対象物Tから跳ね返った液がノズル10に到達し、噴射口9に異物が付着し易くなる問題がある。よって、結局はノズル10を対象物Tから距離をあけて設置しなければならず、ノズル取付位置が制限されることになる。
また、スリット状の噴射口9は細く異物が溜まりやすいが、噴射口9に異物が堆積した場合にはノズル10を分解して掃除する必要があり、掃除後の再組立時に噴射口9の幅を分解前と同一の状態に再現するのが難しいという問題もあった。
【特許文献1】特開2003−211027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、噴射後の液膜幅の減少を抑制し、かつ、異物除去が行いやすいスリットノズルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、横長なボデイ内に、
該ボデイの横長方向に沿った流入路を設け、 該流入路に連通する流体導入口を前記ボデイ外面に設けると共に、前記流入路に連通する横長なスリット状噴射孔を前記ボデイの横長方向の端面に沿って設け、
前記スリット状噴射孔の長さ方向の両端に連続させて、該噴射孔のスリット幅より広くした溝を前記ボデイに設けていることを特徴とするスリットノズルを提供している。
【0008】
前記構成とすると、スリット状噴射孔の両端の溝はスリット幅よりも広くしているので、溝から噴射される流量がスリット状噴射孔から噴射される流量よりも大きくなり、噴射流体膜の両端側の流れを強化することができる。したがって、噴射流体膜の両端部分による噴射方向の規制力が強く働き、表面張力による噴射後の流体膜幅の減少を低減することが可能となる。
また、スリット状噴射孔に異物が詰まってしまった場合にも、先端が薄い板をスリット状噴射孔に差し込んで異物を端に追いやることで、幅広の溝から排出させることができる。
なお、前記溝の幅はスリット幅の2倍〜40倍程度としていると好ましい。また、前記スリットノズルから噴射する流体は液体でも気体でもよい。
【0009】
また、前記溝は、幅方向の両側に対称に設けて、該溝の断面形状を矩形状、外側が底辺となる三角形状、円形としていると好ましい。
【0010】
また本発明は、横長なボデイ内に、該ボデイの横長方向に沿った流入路を設け、
該流入路に連通する流体導入口を前記ボデイ外面に設けると共に、前記流入路に連通する横長なスリット状噴射孔を前記ボデイの横長方向の一端面に沿って設け、
前記スリット状噴射孔の長さ方向の両端面を外向きに傾斜させたテーパ面としていることを特徴とするスリットノズルを提供している。
【0011】
前記構成とすると、スリット状噴射孔の両端から噴射される流体は噴射直後にテーパ面に沿って外方に拡がるので、表面張力により流体膜幅が減少しても、対象物に到達する時の流体膜幅を従来に比べて幅広に保つことが可能となる。
テーパ面の傾斜角度は、5°〜30°としていると好適であり、より好ましくは10°〜20°としている。
【0012】
また本発明は、横長なボデイ内に、該ボデイの横長方向に沿った流入路を設け、該流入路に連通する流体導入口を前記ボデイ外面に設けると共に、
前記流入路に連通する横長なスリット状噴射孔を前記ボデイの横長方向の一端面に沿って設け、
前記スリット状噴射孔の長さ方向の両端より噴射方向に突出した突片を設けていることを特徴とするスリットノズルを提供している。
【0013】
前記構成とすると、スリット状噴射孔より噴射される流体膜の両側は、噴射直後には突片により噴射方向に沿ってガイドされるので、流体膜幅の減少が開始する時点を遅らせることができる。したがって、対象物に到達する時の流体膜幅を従来に比べて幅広に保つことが可能となる。
突片の突出量は、スリット状噴射孔の先端面より10〜100mmとすると好適であり、好ましくは10〜50mmとしている。また、一対の突片の対向面は、噴射方向に沿って平行に設けてもよいし、傾斜して設けてもよい。
【0014】
前記流入路と前記スリット状噴射孔とを連通する前記小径流路は、流入路に連続する第1小径流路、該第1小径流路に連通して流路を2方向に分離した後に合流させる整流路、該整流路に連通する第2小径流路からなり、該第2小径流路にスリット状噴射孔を連通させていると好ましい。
【0015】
前記構成とすると、第1小径流路と第2小径流路との間に流路を2方向に分ける整流室を設け、流体を2方向に分離した後に第2小径流路で合流させているので、流体の流れに乱れを発生させずに、第2小径流路において層状に整流した流体を得ることができる。この第2小径流路において層状に整流させた流体を先端のスリット状噴射孔より噴射させることで、スリット状噴射孔が横方向に長い場合においても、その全長に亙って噴射量の均一化を図ることが可能となる。
【0016】
前記ボディは、横長な第1部材と第2部材とをボルトで前後方向に締結して形成し、該第1部材と第2部材との対向面には、それらの上端から間隔をあけた位置より下端にかけて、前記流入路、第1小径流路、整流路、第2小径流路、スリット状噴射孔を形成する凹部を設け、第1部材と第2部材とを締結することで、ボディの長さ方向に沿った横長な前記流入路、第1小径流路、整流路、第2小径流路、スリット状噴射孔を上下方向に連続して設け、かつ、前記第1部材あるいは/および第2部材の側面、上面あるいは長さ方向の端面に前記流体導入口を設けて前記流入路と連通させ、
さらに、前記第1小径流路を貫通する位置でスリット幅調節用の締付ボルトにより第1部材と第2部材とを締結し、スリット幅は0.05mm以上5mm以下としていると好ましい。
また、前述した溝はスリット幅が薄い場合に有効であり(スリット幅1mm以下)、溝の幅は0.5mm以上2mm以下としていると好ましい。
【0017】
前記第1部材と第2部材とは横長で厚肉な平板からなり、各平板の対向面に前記流入路、第1小径流路、整流室、第2小径流路、スリット状噴射孔を凹設しているよい。
前記第1部材と第2部材との重ね合わせる対向面は互いに密着させてメタルシールとしているが、シール用シート等からなるパッキンを介在させてもよい。
第1部材と第2部材とを横長とすることにより、噴射口のスリットを所要寸法の横長とすることが容易にできる。かつ、第1部材と第2部材との対向面に設けた凹部を組み合わせることで、前記流入路、第1小径流路、整流室、第2小径流路、スリット状噴射孔を軸線方向に連続して容易に設けることができる。
また、第1部材と第2部材とを締結する前記ボルトは前記流入路の上方位置に配置しているため、流路に影響が及ばないようにすることができる。
【0018】
前記第1小径流路を貫通する位置でスリット幅調整用の締付ボルトにより第1部材と第2部材とを締結している。前記締付ボルトの間に押付ボルトを第1部材側からネジこみ、その軸部先端を第2部材に押し当ててスリット幅を横方向に均一となるように精度よく調整している。
このように、スリット状噴射孔の真上に近い位置でスリット幅調整用の締付ボルトを用いて第1部材と第2部材とを締結することにより、スリット幅を横長方向に精度良く組みつけることができる。
かつ、このスリット幅調整用の締付ボルトおよび押付ボルトを第1小径流路を貫通する位置に設けると、流体の流れが前記スリット幅調節ボルトにより若干乱れるが、その下流に前記整流室を設けているため、乱れた流体の流れを整流化することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明より明らかなように、第1の発明によれば、スリット状噴射孔の長さ方向の両端にスリット幅より広い溝を設けているので、噴射流体膜の両端側の流量が増強されて噴射後の流体膜幅の減少を低減できる。したがって、ノズルを噴射対象物から離して設置することが可能となりノズル取付自由度が向上すると共に、噴射対象物への衝突時の流体膜幅に対してあまり幅広のノズルを設ける必要がなくノズルを小型化できる。
また、スリット状噴射孔に異物が詰まった場合にも、先端が薄い板をスリット状噴射孔に差し込んで異物を端に追いやることで、幅広の溝から楽に排出することができる。
第2の発明によれば、スリット状噴射孔の長さ方向の両端面を外向きに傾斜させたテーパ面としており、噴射直後はテーパ面に沿って外方に拡がるので、その後に流体膜幅が減少しても、対象物に到達する時の流体膜幅を従来に比べて幅広に保たれる。
第3の発明によれば、スリット状噴射孔の長さ方向の両端より噴射方向に突出した突片を設けているので、噴射直後には突片により噴射方向に沿ってガイドされるので、流体膜幅の減少が開始する時点を遅らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図7は第1実施形態を示す。
スリットノズル100は、合成樹脂品からなる横長な第1部材11と第2部材12とでボデイを形成している。第1部材11と第2部材12とは、図中上端及び左右両端を固定ボルト19で締結し、かつ、下部をスリット幅調整用の締付ボルト20で締結すると共に、該締付ボルト20の間に押付ボルト40を取り付けて一体化している。
【0021】
横長な第1部材11と第2部材12には、その重ね合わせる対向面に、固定ボルト19の締結部の下部より下端にかけて、かつ、両端の固定ボルト20の締結部を除く全長に亙って、後述する横長で且つ深さを相違させた凹部を上下に連続して設け、これら凹部を対向させて組み合わせることにより、図2及び図3に示すように、上部側より流入路14、第1小径流路15、整流室16、第2小径流路17を上下に連続させ、第2小径流路17より下端にかけて横長なスリット状噴射孔18を設けている。
【0022】
詳細には、第1部材11は、締付ボルト20が存在する位置の断面図である図2、図4に示すように、上方に固定ボルト挿通孔22を、下方に締付ボルト挿通孔31を設けている。図3、図5は押付ボルト40が存在する位置の断面図であり、上方に固定ボルト挿通孔22を、下方に押付ボルト挿通孔41を設けている。
【0023】
第1部材11には、ボディ長手方向の中央付近に間隔をあけて2つの流入口13を設けている。これら流入口13には流体供給管(図示せず)が接続される。
第1部材11の裏面側の第2部材12との対向側には、流入口13と連通する位置から下端にかけて、底深凹部27、第1底浅凹部29、半円状凹部33、第2底浅凹部35、極浅凹部24を上下に連続させて形成している。第2浅底凹部35の下部はテーパ部35aとし、テーパ部35aの先端にスリット状噴射孔18を形成する極浅凹部24を連続させている。
【0024】
第1底浅凹部29の上下方向の中間位置に、締付ボルト挿通孔31と押付ボルト挿通孔41とを横長さ方向に間隔をあけて交互に流路と直交させて設けている。締付ボルト挿通孔31の内周面にはネジを刻設していないが、押付ボルト挿通孔31の小径の軸部内嵌部にはネジ41aを刻設している。また、固定ボルト挿通孔22の内周面にはネジ22aを刻設している。
【0025】
第2部材12は、第1部材11との対向側に、ネジ23aを刻設した固定ボルト挿通孔23を穿設し、その下方に底深凹部28、第1浅底凹部30、半円状凹部34、第2底浅凹部36を上下に連続させて形成している。第1部材11に設けた極浅凹部は第2部材12には設けずフラットなままとしている。第2浅底凹36の下部はテーパ部36aとし、かつ、第1浅底凹部30の中間位置に締結ボルト挿通孔32を設け、その内周面にネジ32aを刻設している。なお、第1部材11に設けた押付ボルト挿通孔は設けていない、
【0026】
第1部材11と第2部材12とを重ね合わせ、連通させた固定ボルト挿通孔22、23に固定ボルト19をネジ込んで締結し、同じく連通させた締付ボルト挿通孔31と32とに締付ボルト20をOリング21を介して締結する。
この状態で、第1部材11と第2部材12の深底凹部27と28が組み合わされて流入路14が形成され、第1浅底凹部29と30とが組み合わされて第1小径流路15が形成され、半円状凹部33と34が組み合わされて整流室16の外壁が形成され、第2浅底凹部35と36とが組み合わされて第2小径流路17が形成される。第2小径流路17のテーパ状の縮径した下端に、第1部材11の極浅凹部24と第2部材12のフラット面との間に形成されるスリット状噴射孔18が連続することとなる。
【0027】
スリット状噴射孔18の長さ方向の両端には、図6に示すように、噴射孔18のスリット幅W1より広い幅W2を有する断面矩形状の溝41、42を形成している。
なお、スリット長さL1は、50mm〜2500mmとし、スリット幅W1は0.05mm〜5mmとしている。溝幅W2は0.5mm〜2mmとし、溝の長さL2は0.5mm〜2mmとしている。
【0028】
整流室16の断面円形となる外壁の内部には、その内面と隙間をあけて円柱部材25を配置し、円環流路からなる整流室16を設けている。
図4及び図7に示すように、円柱部材25は横方向に延在し、その軸線方向の所要位置に間隔をあけて薄肉(0.5mm程度)・狭幅のリング26を外嵌し、リング26を半円状凹部33、34の内面に押し当てることで、円柱部材25を隙間をあけて支持している。リング26は、本実施形態では150mm間隔をあけて間欠的に取り付けている。
【0029】
円環状流路からなる整流室16の幅は、第1、第2小径流路15、17の幅の50%以下に設定している。円柱部材25の中心を第1、第2小径流路15、17の軸線と一致させ、整流室16の上頂点は第1小径流路15の下端流出口の幅方向の中心に位置し、下頂点は第2小径流路17の上端流入口の幅方向の中心に位置させている。
整流室16を前記構成とすることで、第1小径流路15からの流体が両側半周部16a、16bへと2分割された状態で2方向に別れて流れ、下端流出口から第2小径流路17へと合流して流れこみ、2方向から流入する流体が層流となって第2小径流路17内を流れ、その後、スリット状噴射孔18へと流入して噴射されるようにしている。
【0030】
第1小径流路15の中央部に長さ方向に間隔をあけて貫通する締付ボルト20は、軸部先端側にネジ20aを刻設し、頭部20c側にはネジを設けずに平滑面20bとしている。これにより、第1小径流路15を横断する部分に平滑面20bを位置させて、第1小径流路15を流下する流体の気泡がネジに付着しないようにしている。
また、第1部材11と第2部材12の接合面はメタルシールとしてシール性を保っているが、シートパッキンを入れてもよい。
【0031】
締付ボルト20と交互に設ける押付ボルト40は図3、図5に示すように、締付ボルト20よりも短尺とし、Oリング21を介して押付ボルト挿通孔41にねじ込み、軸部先端面を第2部材12の第1浅底凹部30に押し当てるようにしている。軸部は頭部40c側にのみネジ40bを刻設し、第1小径流路15を横断する先端側にはネジを設けずに平滑面40aとし、流体の気泡がネジに付着しないようにしている。
【0032】
スリット状噴射孔18の近傍の上流に取り付ける締付ボルト20は第1部材11と第2部材にネジ込むことにより、第1部材11と第2部材12とを近接させて、スリット状噴射孔18のスリット幅W1が小さくなるように調節している。一方、押付ボルト40を第1部材11の押付ボルト挿通孔41にネジ込んで、軸部先端を第2部材の浅底凹部に押し当てているため、押付ボルト40をネジ込むことによりスリット幅W2が大きくなるように調整することができ、第2部材12を第1部材11から離反保持して、締付ボルト20により設定したスリット幅を横長さな全長に均一となるように精度よく維持している。
【0033】
以下に、スリットノズル100の作用について説明する。
スリットノズル100は第1部材11と第2部材12とを組み合わせて形成し、流体供給管(図示せず)を流入口13に連結している。
流入口13から液体(あるいは気体)をノズル100内に供給し、流入口13→流入路14→第1小径流路15→整流室16→第2小径流路17の順に流れた後、スリット状噴射孔18および溝41、42より噴射している。
【0034】
流入口13より横長な流入路14の中央部に軸直角方向より流体が流入し、向きを変えて流入路14に流れ込むため流速が低下し、かつ、流入路14の断面積を大としているため、両側へと速度を落として流れ込み、流入路14内において横方向の全長に亙って均等に流体が分配される。
流入路14に流入した流体は、該流入路14に連通した第1小径流路15の幅を狭くしているため、流体は速度を速めて第1小径流路15に流入し、ついで、円環状の整流室16へと流入する。
【0035】
整流室16では、第1小径流路15からの流体が両側半周部16a、16bに2分されて流通し、流体は2方向に分離され、第2小径流路17へと合流して流入する。
整流室16の流路幅L2を第1小径流路15および第2小径流路17の流路幅L1の50%以下としているため、第1小径流路15から整流室16に流入した流体は流路縮小に伴なう加圧で両側半周部16a、16bに均一に分配・整流されると共に、整流室16から第2小径流路17に流入する際に流路拡大により減速して層流化する。
第2小径流路17の下端はテーパー状に縮径しているため、狭幅のスリット状噴射孔18へ流速を速めて流入すると共に、スリット状噴射孔18の両端の溝41、42にも流入し、直線状で且つ膜状の液体が外部に噴射される。
【0036】
本発明のノズル100では、特に、スリット状噴射孔18の両端側に幅広で矩形状の溝
41、42を連続させているので、溝41、42から噴射される液体流量がスリット状噴射孔18から噴射される液体流量よりも大きくなり、噴射液膜の両端側の流れを強化することができる。したがって、図11(A)に示すように、噴射液膜の両端部分による噴射方向の規制力が強く働くことで液膜流の端部の傾斜角度θ2が小さくなり、表面張力による噴射後の液膜幅の減少量t2を低減することが可能となる。
また、スリット状噴射孔18に異物が詰まった場合にも、先端が薄い板をスリット状噴射孔18に差し込んで異物を端に追いやることで、幅広の溝41、42から排出することができる。
【0037】
なお、前記実施形態はポンプからの液体噴射用であるため、スリット状噴射孔18の幅を0.3mmとしているが、コンプレッサーからの圧搾空気を噴射する場合には、前記スリット幅を0.05mm〜0.15mmと小さくするとよい。
また、前記実施形態では、ノズルのボディを第1部材と第2部材とを前後に重ねて締結して形成しているが、横方向の長さが比較的小さい場合、ボディを第1部材と第2部材とに分割せず、樹脂成形で一体的に設けてもよい。
【0038】
図8(A)〜(D)はスリット状噴射孔18の両端に形成する溝の変形例を示している。
図8(A)では、溝50を断面三角形状とし、スリット状噴射孔18に斜辺50aを連続させて底辺50bを外側に配置している。
図8(B)では、溝51を断面円形状として、スリット状噴射孔18に連続させている。
図8(C)では、溝52を断面ホームベース形状とし、スリット状噴射孔18に斜辺52aを連続させてコ字状辺50bを外側に配置している。
図8(D)では、溝53を断面楕円形状とし、その長軸方向をスリット状噴射孔18の長手方向に向けている。
【0039】
図9は第2実施形態を示す。
第1実施形態との相違点は、スリット状噴射孔18の両端に溝を設ける代わりに、テーパ面60、61を設けている点である。
即ち、本実施形態のスリットノズル101は、スリット状噴射孔18の長さ方向の両端面を外向きに傾斜させて一対のテーパ面60、61を形成している。また、テーパ面60、61の傾斜角度αは5°〜30°としている。
前記構成とすると、スリット状噴射孔18の両端から噴射される液体は、図11(B)に示すように、噴射直後にテーパ面60、61に沿って外方に拡がるので、液膜流の側端部の傾斜角度θ3が従来の傾斜角度θ1と同じであっても、表面張力による噴射後の液膜幅の減少量t3を低減することが可能となる。
なお、他の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、本実施形態ではスリット状噴射孔18の両端に溝を設けずにテーパ面60、61を設けているが、第1実施形態の溝とテーパ面との両方を形成しても好適である。
【0040】
図10は第3実施形態を示す。
第1実施形態との相違点は、スリット状噴射孔18の両端に溝を設ける代わりに、スリット状噴射孔18の両端縁から噴射方向に向けて突片70、71を突設している点である。
即ち、本実施形態のスリットノズル102は、スリット状噴射孔18の長さ方向の両端より噴射方向に向けて液膜ガイド用の突片70、71を突出している。また、突片70、71の突出量L3は、スリット状噴射孔18の先端面より10〜100mmとしている。
前記構成とすると、スリット状噴射孔18の両端から噴射される液体は、図11(C)に示すように、噴射直後には突片70、71の対向面により噴射方向に沿ってガイドされるので、突片70、71から離反した液膜流の側端部の傾斜角度θ4が従来の傾斜角度θ1と同じであっても、液膜幅の減少が開始する時点を遅らせることができる。よって、表面張力による噴射後の液膜幅の減少量t4を低減することが可能となる。
なお、他の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、本実施形態ではスリット状噴射孔18の両端に溝およびテーパ面を設けずに突片70、71を設けているが、第1実施形態の溝あるいは/および第2実施形態のテーパ面を突片70、71と併せて設けても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態のスリットノズルの正面図である。
【図2】スリットノズルのI−I線断面図である。
【図3】スリットノズルのII−II線断面図である。
【図4】図2の分解断面図である。
【図5】図3の分解断面図である。
【図6】スリットノズルの下面図である。
【図7】スリットノズルの水平断面図である。
【図8】(A)〜(D)は第1実施形態の変形例を示す要部下面図である。
【図9】第2実施形態のスリットノズルの要部垂直断面図である。
【図10】第3実施形態のスリットノズルの正面図である。
【図11】噴射状態を示し、(A)は第1実施形態、(B)は第2実施形態、(C)は第3実施形態、(D)は従来例の図面である。
【図12】(A)は従来のノズルの斜視図、(B)は断面図である。
【図13】別の従来例を示す図面である。
【符号の説明】
【0042】
100〜103 スリットノズル
11 第1部材
12 第2部材
13 流入口
14 流入路
15 第1小径流路
16 整流室(円環流路)
16a、16b 半周部
17 第2小径流路
18 スリット状噴射孔
19 固定ボルト
20 スリット幅調整用の締付ボルト
20b、40a 平滑面
21 Oリング
25 円柱部材
26 リング
40 押付ボルト
41、42、50〜53 溝
60、61 テーパ面
70、71、80、81 突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横長なボデイ内に、該ボデイの横長方向に沿った流入路を設け、該流入路に連通する流体導入口を前記ボデイ外面に設けると共に、前記流入路に小径流路を介して連通する横長なスリット状噴射孔を前記ボデイの横長方向の端面に沿って設け、
前記スリット状噴射孔の長さ方向の両端に連続させて、該噴射孔のスリット幅より広くした溝を前記ボデイに設けていることを特徴とするスリットノズル。
【請求項2】
前記溝は、幅方向の両側に対称に設けて、該溝の断面形状を矩形状、外側が底辺となる三角形状、円形としている請求項1に記載のスリットノズル。
【請求項3】
横長なボデイ内に、該ボデイの横長方向に沿った流入路を設け、該流入路に連通する流体導入口を前記ボデイ外面に設けると共に、前記流入路に小径流路を介して連通する横長なスリット状噴射孔を前記ボデイの横長方向の一端面に沿って設け、
前記スリット状噴射孔の長さ方向の両端面を外向きに傾斜させたテーパ面としていることを特徴とするスリットノズル。
【請求項4】
横長なボデイ内に、該ボデイの横長方向に沿った流入路を設け、該流入路に連通する流体導入口を前記ボデイ外面に設けると共に、前記流入路に小径流路を介して連通する横長なスリット状噴射孔を前記ボデイの横長方向の一端面に沿って設け、
前記スリット状噴射孔の長さ方向の両端より噴射方向に突出した突片を設けていることを特徴とするスリットノズル。
【請求項5】
前記流入路と前記スリット状噴射孔とを連通する前記小径流路は、流入路に連続する第1小径流路、該第1小径流路に連通して流路を2方向に分離した後に合流させる整流路、該整流路に連通する第2小径流路からなり、該第2小径流路にスリット状噴射孔を連通させている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスリットノズル。
【請求項6】
前記ボディは、横長な第1部材と第2部材とをボルトで前後方向に締結して形成し、該第1部材と第2部材との対向面には、それらの上端から間隔をあけた位置より下端にかけて、前記流入路、第1小径流路、整流路、第2小径流路、スリット状噴射孔を形成する凹部を設け、第1部材と第2部材とを締結することで、ボディの長さ方向に沿った横長な前記流入路、第1小径流路、整流路、第2小径流路、スリット状噴射孔を上下方向に連続して設け、かつ、前記第1部材あるいは/および第2部材の側面、上面あるいは長さ方向の端面に前記流体導入口を設けて前記流入路と連通させ、
さらに、前記第1小径流路を貫通する位置でスリット幅調節用の締付ボルトにより第1部材と第2部材とを締結し、スリット幅は0.05mm以上5mm以下としている請求項5に記載のスリットノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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