スリーブ装置およびスリーブ設置方法
【課題】 スリーブを型枠間に容易かつ的確に設置することができるスリーブ装置を提供する。
【解決手段】 スリーブ装置4は、コンクリート壁2に貫通部3を形成するための装置であって、型枠1a、1c間に配備されて内部が前記貫通部3を構成するスリーブ5と、そのスリーブ5を型枠1a、1cに固定するためのスリーブ固定具6とを備える。スリーブ固定具6は、スリーブ5の、一方の型枠1a側となる一方の端部5aとは反対の他方の端部5bに、着脱可能に嵌められる固定具であって、その他方の端部5bを閉塞する固定具本体6aと、固定具本体6aから張り出すフランジ601とを備える。そして、固定具本体6aは、スリーブ5の内部を通るボルト部材7が貫通可能であり、固定具本体6aには、ボルト部材7が螺合する雌ねじ部材8が設けられる。そこで、型枠1a、1cの外側において、ボルト部材7の各端側に、ナット9、10がねじ込まれる。
【解決手段】 スリーブ装置4は、コンクリート壁2に貫通部3を形成するための装置であって、型枠1a、1c間に配備されて内部が前記貫通部3を構成するスリーブ5と、そのスリーブ5を型枠1a、1cに固定するためのスリーブ固定具6とを備える。スリーブ固定具6は、スリーブ5の、一方の型枠1a側となる一方の端部5aとは反対の他方の端部5bに、着脱可能に嵌められる固定具であって、その他方の端部5bを閉塞する固定具本体6aと、固定具本体6aから張り出すフランジ601とを備える。そして、固定具本体6aは、スリーブ5の内部を通るボルト部材7が貫通可能であり、固定具本体6aには、ボルト部材7が螺合する雌ねじ部材8が設けられる。そこで、型枠1a、1cの外側において、ボルト部材7の各端側に、ナット9、10がねじ込まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート壁に貫通部を形成するための、スリーブ装置およびスリーブ設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート壁に貫通部を形成する方法として、そのコンクリート壁にスリーブを埋設する方法があった(例えば、特許文献1参照)。図17に示されるように、このスリーブ20は、内部が貫通部21を構成するものであって、内挿筒体22と、その内挿筒体22に被さる外装筒体23とで構成された。ここで、内挿筒体22の外面にはらせん溝22aが設けられた。また、外装筒体23には、弾性片23aが設けられ、その弾性片23aに前記らせん溝22aと係合する係止爪23bが形成されていた。そこで、コンクリート壁24を形成するための型枠25、25間において、スリーブ20を縮めた状態から、相対的に内挿筒体22を外装筒体23に対して引っ張ったり、相対的に外装筒体23をらせん溝22aに沿って回動することで、スリーブ20の長さを伸ばして、そのスリーブ20を型枠25、25間で突っ張らせ、これによって、スリーブ20を型枠25、25間の所定の位置に設置していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のスリーブ20にあっては、スリーブ20の設置にあたって、両型枠25、25間でスリーブ20を伸ばして突っ張らせていたため、その設置作業が型枠25、25間での作業となり面倒であった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、スリーブを型枠間に容易かつ的確に設置することができる、スリーブ装置およびスリーブ設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るスリーブ装置およびスリーブ設置方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係るスリーブ装置は、対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するための、スリーブ装置である。このスリーブ装置は、前記一対の型枠間に配備されて内部が前記貫通部を構成するスリーブと、そのスリーブを前記型枠に固定するためのスリーブ固定具とを備える。前記スリーブ固定具は、前記スリーブの、前記一対の型枠のうちの一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められる固定具であって、その他方の端部を閉塞する固定具本体と、その固定具本体が前記スリーブの一方の端部側方向に移動しないよう前記スリーブと係合する係合部とを備える。そして、前記固定具本体は、前記スリーブの内部を通るボルト部材が貫通可能であって、そのボルト部材が螺合する雌ねじ部、またはその雌ねじ部を有する雌ねじ部材を前記スリーブの一方の端部側方向に移動不能に収容する雌ねじ部材収容部を備える。そこで、スリーブ装置は、前記スリーブの内部を通り前記雌ねじ部に螺合する前記ボルト部材の、前記一方の型枠に設けられる貫通孔を貫通して外側に突出する一端側に、第1のナットがねじ込まれて、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持可能となっている。加えて、スリーブ装置は、その後に、前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように設置する前記一対の型枠のうちの他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出する、前記ボルト部材の他端側に、第2のナットがねじ込まれて、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持可能となっている。
【0007】
このスリーブ装置によると、スリーブを型枠間に設置するにあたって、始めに、ボルト部材に螺合する第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持することで、一方の型枠に対しスリーブを固定することができる。また、その後に、他方の型枠を設置して、ボルト部材を他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出させた、ボルト部材の他端側に、第2のナットをねじ込むようにして、その第2のナットと前記第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持することで、それら一対の型枠に対してスリーブを固定することができる。このように、始めに、一方の型枠に対してスリーブを固定する、つまり、他方の型枠を設置しない状態でスリーブを固定する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、その固定作業を型枠の外側から行う。これにより、型枠へのスリーブの一連の固定作業が容易となり、スリーブを型枠間に容易に設置することができる。また、一方の型枠に対してスリーブを固定する際には、第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、第2のナットと第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持する。これにより、スリーブを一方の型枠、さらには一対の型枠に固定することができることから、スリーブを型枠間に的確に設置することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係るスリーブ装置は、請求項1に記載のスリーブ装置において、前記スリーブ固定具には、設置された前記他方の型枠に前記他の貫通孔を形成するための穿孔ドリルの先端が、前記雌ねじ部に干渉しないように、前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係るスリーブ装置は、請求項1または2に記載のスリーブ装置において、前記係合部は、前記スリーブの他方の端部における端面に当接するように、前記固定具本体から張り出した、フランジからなる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係るスリーブ装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスリーブ装置において、前記スリーブの一方の端部に着脱可能に嵌められるスリーブ固定補助具を備える。このスリーブ固定補助具は、前記スリーブの一方の端部を閉塞する補助具本体を備え、その補助具本体には、前記ボルト部材が貫通する通孔が設けられて、その通孔を前記ボルト部材が貫通することで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレが規制される。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係るスリーブ設置方法は、対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するために、内部が前記貫通部を構成するスリーブを前記一対の型枠間に設置する、スリーブ設置方法である。このスリーブ設置方法は、以下に示す第1から第3の工程を備える。
【0012】
第1の工程:前記一対の型枠のうちの一方の型枠を設置し、前記一方の型枠に設けられる貫通孔にボルト部材を貫通させるとともに、前記スリーブを、そのスリーブの内部に前記ボルト部材が通るように配置し、そのスリーブの、前記一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められるスリーブ固定具に設けられた雌ねじ部に、前記ボルト部材を螺合させ、前記一方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の一端側に第1のナットをねじ込んで、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持するようにして、前記スリーブを前記一方の型枠に固定することにより、前記スリーブを仮固定する。
【0013】
第2の工程:前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように前記一対の型枠のうちの他方の型枠を設置し、前記他方の型枠に設けられる他の貫通孔から前記ボルト部材の他端が外側に突出するように、そのボルト部材を、前記型枠の外側からの操作により前記ボルト部材の軸方向に移動させる。
【0014】
第3の工程:前記他方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の他端側に第2のナットをねじ込んで、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持して、前記スリーブを前記一対の型枠に固定することにより、前記スリーブを本固定する。
【0015】
このスリーブ設置方法によると、スリーブを型枠間に設置するにあたって、始めに、ボルト部材に螺合する第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持することで、一方の型枠に対しスリーブを固定することができる。また、その後に、他方の型枠を設置して、ボルト部材を他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出させた、ボルト部材の他端側に、第2のナットをねじ込むようにして、その第2のナットと前記第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持することで、それら一対の型枠に対してスリーブを固定することができる。このように、始めに、一方の型枠に対してスリーブを固定する、つまり、他方の型枠を設置しない状態でスリーブを固定する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、その固定作業を型枠の外側から行う。これにより、型枠へのスリーブの一連の固定作業が容易となり、スリーブを型枠間に容易に設置することができる。また、一方の型枠に対してスリーブを固定する際には、第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、第2のナットと第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持する。これにより、スリーブを一方の型枠、さらには一対の型枠に固定することができることから、スリーブを型枠間に的確に設置することができる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明に係るスリーブ設置方法は、請求項5に記載のスリーブ設置方法において、前記第2の工程にあたって、前記他の貫通孔は、前記他方の型枠の設置後に穿孔ドリルを用いて形成される。そこで、この穿孔ドリルによる穿孔にあたって、前記穿孔ドリルの先端が前記雌ねじ部に干渉しないように、前記スリーブ固定具には前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられ、かつ、前記穿孔ドリルの先端が前記ボルト部材の他端に干渉しないように、前記第1の工程において、前記ボルト部材の他端を前記他方の型枠から控えて位置させる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明に係るスリーブ設置方法は、請求項5または6に記載のスリーブ設置方法において、前記第1の工程にあたって、前記スリーブの一方の端部にスリーブ固定補助具を着脱可能に嵌め、そのスリーブ固定補助具に設けられた通孔に、前記ボルト部材を貫通させることで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレを規制する。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るスリーブ装置およびスリーブ設置方法によれば、スリーブ固定具を用いることで、スリーブを型枠間に容易かつ的確に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態の、スリーブ装置の分解断面図である。
【図2】同じく、スリーブ装置の斜視図である。
【図3】同じく、スリーブ固定具の斜視図である。
【図4】同じく、スリーブ固定補助具の斜視図である。
【図5】同じく、スリーブ設置方法の第1の工程を示す断面図である。
【図6】同じく、スリーブ設置方法の第2の工程における、他の貫通孔の穿孔過程を示す断面図である。
【図7】同じく、スリーブ設置方法の第2の工程を示す断面図である。
【図8】同じく、スリーブ設置方法の第3の工程を示す断面図である。
【図9】同じく、第3の工程後の、コンクリートの打設によるコンクリート壁の形成工程を示す断面図である。
【図10】同じく、コンクリート壁の形成後の、型枠、スリーブ固定具、スリーブ固定補助具等を除去した状態を示す断面図である。
【図11】この発明の他の実施の形態の、図5相当図である。
【図12】同じく、第1のナットを緩めた状態を示す断面図である。
【図13】同じく、図7相当図である。
【図14】この発明のさらに他の実施の形態の、図5相当図である。
【図15】同じく、第1のナットを緩めた状態を示す断面図である。
【図16】同じく、図7相当図である。
【図17】従来のスリーブの設置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係るスリーブ装置およびスリーブ設置方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図10は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、型枠である。2は、対面する一対の型枠1間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁であって、建造物における、例えば、外壁、間仕切り壁、基礎壁、天井から下方に突設された梁を構成する壁等、その他の壁からなる。3は、前記コンクリート壁2に形成される貫通部であり、例えば、配線・配管材(配線材または配管材)を通すための孔からなる。4は、前記コンクリート壁2に前記貫通部3を形成するための、スリーブ装置である。
【0022】
このスリーブ装置4は、一対の型枠1間に配備されて内部が前記貫通部3を構成するスリーブ5と、そのスリーブ5を型枠1に固定するためのスリーブ固定具6とを備える。このスリーブ固定具6は、スリーブ5の、前記一対の型枠1のうちの一方の型枠1a側となる一方の端部5aとは反対の他方の端部5bに、着脱可能に嵌められる固定具である。そして、スリーブ固定具6は、スリーブ5の他方の端部5bを閉塞する固定具本体6aと、その固定具本体6aがスリーブ5の一方の端部5a側方向に移動しないようスリーブ5と係合する係合部6bとを備える。ここで、固定具本体6aは、スリーブ5の内部を通るボルト部材7が貫通可能であって、そのボルト部材7が螺合する雌ねじ部8a、またはその雌ねじ部8aを有する雌ねじ部材8(詳しくは、ナット)をスリーブ5の一方の端部5a側方向に移動不能に収容する雌ねじ部材収容部6cを備える。図示実施の形態においては、固定具本体6aは、前記雌ねじ部材収容部6cを備え、この雌ねじ部材収容部6cに前記雌ねじ部材8が収容されることで、この固定具本体6a、ひいてはスリーブ固定具6に前記雌ねじ部8aが設けられる。また、前記係合部6bは、スリーブ5の他方の端部5bにおける端面に当接するように、固定具本体6aから張り出した、フランジ601からなる。
【0023】
そこで、スリーブ5の内部を通り前記雌ねじ部8aに螺合するボルト部材7の、一方の型枠1aに設けられる貫通孔1bを貫通して外側に突出する一端7a側に、第1のナット9がねじ込まれて、その第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持可能であり、かつ、その後に、スリーブ5を一方の型枠1aとで挟むように設置する一対の型枠1のうちの他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dから外側に突出する、ボルト部材7の他端7b側に、第2のナット10がねじ込まれて、その第2のナット10と前記第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持可能となっている。
【0024】
また、スリーブ装置4は、スリーブ5およびスリーブ固定具6の他に、スリーブ5の一方の端部5aに着脱可能に嵌められるスリーブ固定補助具11を備えている。このスリーブ固定補助具11は、スリーブ5の一方の端部5aを閉塞する補助具本体11aを備え、その補助具本体11aには、前記ボルト部材7が貫通する通孔11bが設けられて、その通孔11bをボルト部材7が貫通することで、一方の型枠1aに対してスリーブ5のズレが規制されるようになっている。
【0025】
具体的には、スリーブ5は、例えば合成樹脂製であって、図1に示すように、内部が貫通形成された筒状の、スリーブ本体501とベルマウス502とから構成され、それらスリーブ本体501とベルマウス502とが、各端側において嵌め合わされて接着されている。そして、スリーブ5は、スリーブ本体501におけるベルマウス502から離れた側の端部が、前記一方の端部5aとなり、ベルマウス502におけるスリーブ本体501から離れた側の端部が、前記他方の端部5bとなる。また、スリーブ5(詳しくは、スリーブ本体501)の外周面には、スリーブ5とコンクリート壁2との間の止水のために、例えばブチルゴム製のシールテープ12が巻かれている。
【0026】
スリーブ固定具6は、例えば合成樹脂製であって、図1および図3に示すように、その固定具本体6aが、スリーブ5に嵌まるように、筒形に形成されている。詳細には、固定具本体6aは、スリーブ5に挿入される先端とは反対の基端側がベルマウス502の形状に合わせて手前側ほど径大となるように広がって形成されている。そして、この固定具本体6aの基端から径方向に張り出すようにして前記フランジ601が設けられ、このフランジ601が、スリーブ5の他方の端部5bにおける端面となるベルマウス502の端面に当接する。
【0027】
また、スリーブ固定具6(詳しくは、固定具本体6a)には、設置された他方の型枠1cに他の貫通孔1dを形成するための穿孔ドリル13の先端が、雌ねじ部8a(図示実施の形態においては、雌ねじ部材8)に干渉しないように、雌ねじ部8aの前方(手前側)、つまり雌ねじ部材収容部6cの前方に、穿孔ドリル13の先端を受容する受容空間6dが設けられる。詳細には、スリーブ固定具6には、その軸心部分において、固定具本体6aを突き抜けるように、手前側から順に、受容空間6dと、雌ねじ部材8を収容する六角穴形状の雌ねじ部材収容部6cと、孔6eとが並んで設けられる。そして、ボルト部材7は、孔6e、雌ねじ部8a(詳しくは、雌ねじ部材収容部6cに収容された雌ねじ部材8)および受容空6d間を通るようにして、固定具本体6a、つまりスリーブ固定具6を貫通する。
【0028】
スリーブ固定補助具11は、例えば合成樹脂製であって、図1および図4に示すように、その補助具本体11aが、スリーブ5に嵌まるように、円筒状の筒形に形成されている。そして、このスリーブ固定補助具11には、その軸心部分を突き抜けるように前記通孔11bが設けられる。ここにおいて、通孔11bは、その奥部に径大に形成された六角穴形状のナット収容部11cを有するが、図示実施の形態においては、このナット収容部11cにナットは収容されない。また、スリーブ固定補助具11は、前記補助具本体11aの他に、スリーブ5の一方の端部5aにおける端面に当接するように、補助具本体11aの基端から径方向に張り出した、係合部としてのフランジ11dを備えている。
【0029】
ボルト部材7は、例えば、その全長に渡って雄ねじが形成された全ネジボルトであって、一対の型枠1a、1cを貫通し、さらに、それら型枠1a、1cの外側に突出する長さを有している。
【0030】
次に、このスリーブ装置4を用いたスリーブ設置方法を説明する。このスリーブ設置方法は、対面する一対の型枠1(1a、1c)間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁2に貫通部3を形成するために、内部が前記貫通部3を構成するスリーブ5を一対の型枠1(1a、1c)間に設置する、スリーブ設置方法である。このスリーブ設置方法は、施工手順として、第1の工程から第3の工程までの各工程を備える。
【0031】
第1の工程:一対の型枠1のうちの一方の型枠1aを設置し、一方の型枠1aに設けられる貫通孔1bにボルト部材7を貫通させるとともに、スリーブ5を、そのスリーブ5の内部にボルト部材7が通るように配置し、そのスリーブ5の、一方の型枠1a側となる一方の端部5aとは反対の他方の端部5bに、着脱可能に嵌められるスリーブ固定具6に設けられた雌ねじ部8a(図示実施の形態においては、雌ねじ部材8)に、ボルト部材7を螺合させ、一方の型枠1aの外側に突出したボルト部材7の一端7a側に第1のナット9をねじ込んで、その第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持するようにして、スリーブ5を一方の型枠1aに固定することにより、そのスリーブ5を仮固定する(図5参照)。つまり、一方の型枠1aにスリーブ5を支持させる。
【0032】
第2の工程:スリーブ5を前記一方の型枠1aとで挟むように一対の型枠1のうちの他方の型枠1cを設置し、他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dからボルト部材7の他端7bが外側に突出するように、そのボルト部材7を、型枠1の外側からの操作によりボルト部材7の軸方向に移動させる(図6、図7参照)。
【0033】
第3の工程:他方の型枠1cの外側に突出したボルト部材7の他端7b側に第2のナット10をねじ込んで、その第2のナット10と前記第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持して、スリーブ5を一対の型枠1(1a、1c)に固定することにより、そのスリーブ5を本固定する(図8参照)。
【0034】
ところで、図示実施の形態においては、第1の工程にあたって、図5に示すように、スリーブ5の一方の端部5aにスリーブ固定補助具11を着脱可能に嵌め、そのスリーブ固定補助具11に設けられた通孔11bに、ボルト部材7を貫通させることで、一方の型枠1aに対してスリーブ5のズレを規制する。
【0035】
また、前記第2の工程にあたって、図6に示すように、他の貫通孔1dは、他方の型枠1cの設置後に穿孔ドリル13を用いて形成される。そして、この穿孔ドリル13による穿孔にあたっては、前記穿孔ドリル13の先端が前記雌ねじ部8a(雌ねじ部材8)に干渉しないように、スリーブ固定具6には雌ねじ部8a(雌ねじ部材8)の前方に穿孔ドリル13の先端を受容する受容空間6dが設けられ、かつ、穿孔ドリル13の先端がボルト部材7の他端7bに干渉しないように、第1の工程において、ボルト部材7の他端7bを他方の型枠1cから控えて位置させる。
【0036】
そして、この第2の工程では、他の貫通孔1dからボルト部材7の他端7bが外側に突出するように、そのボルト部材7を型枠1の外側からの操作により軸方向に移動させるが、このボルト部材7の移動にあたっては、一方の型枠1aの外側からの操作のみで移動させても、一方および他方の型枠1a、1cの外側からの操作で移動させても、他方の型枠1cの外側からの操作のみで移動させてもよい。
【0037】
一方の型枠1aの外側からの操作のみでボルト部材7を移動させるには、第1のナット9を少し緩めることでその第1のナット9と雌ねじ部8aとのいわゆるダブルナットによる締付けを解除し、第1のナット9を回動しないように保持(例えば、一方の型枠1aとの摩擦で保持)した状態でボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる。他の方法として、第1のナット9が一方の型枠1aからある程度離れるまで(ボルト部材7が他方の型枠1c(詳しくは、他の貫通孔1d)から外側に突出するに足る長さ分)その第1のナット9を緩め、その後、ボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる。また、この一連の操作を段階的に、つまり少しずつ繰り返し行うようにしてもよい。
【0038】
一方および他方の型枠1a、1cの外側からの操作でボルト部材7を移動させるには、一方の型枠1aの外側から第1のナット9を少し緩め、他方の型枠1cの外側から、他の貫通孔1dを通して、ボルト部材7の他端7bの端面に予め設けておいた工具係止部(図示せず)に工具を係止させるようにしてボルト部材7の他端を掴むなどして、その工具によりボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる(この際、第1のナット9は、一方の型枠1aとの摩擦で回動しないよう保持される。)。
【0039】
他方の型枠1cの外側からの操作のみでボルト部材7を移動させるには、第1の工程で、第1のナット9をきつく締めるのではなく適度に締めた状態にとどめ、上記と同様に、他方の型枠1cの他の貫通孔1dを通して、工具でボルト部材7の他端7bを掴むなどして、その工具によりボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる(この際、第1のナット9は、一方の型枠1aとの摩擦で回動しないよう保持される。)。
【0040】
また、第3の工程により、一対の型枠1(1a、1c)間にスリーブ5を設置した後には、一対の型枠1(1a、1c)間にコンクリートを打設して、コンクリート壁2を形成する(図9参照)。その後、スリーブ5を残して、型枠1a、1c、スリーブ固定具6、スリーブ固定補助具11、ボルト部材7等を取り除くことで、コンクリート壁2を貫通する貫通部3が形成される(図10参照)。
【0041】
次に、以上の構成からなるスリーブ装置4およびスリーブ設置方法の作用効果について説明する。このスリーブ装置4およびスリーブ設置方法によると、スリーブ5を型枠1(1a、1c)間に設置するにあたって、始めに、ボルト部材7に螺合する第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持することで、一方の型枠1aに対しスリーブ5を固定することができる(図5参照)。また、その後に、他方の型枠1cを設置して、ボルト部材7を他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dから外側に突出させた、ボルト部材7の他端7b側に、第2のナット10をねじ込むようにして、その第2のナット10と前記第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持することで、それら一対の型枠1(1a、1c)に対してスリーブ5を固定することができる(図8参照)。このように、始めに、一方の型枠1aに対してスリーブ5を固定する、つまり、他方の型枠1cを設置しない状態でスリーブ5を固定することで、その固定作業が容易となる(図5参照)。そして、その後の、一対の型枠1(1a、1c)に対してスリーブ5を固定する際には、その固定作業を型枠1a、1cの外側から行うことで、その固定作業が容易となる(図7、図8参照)。こうして、型枠1a、1cへのスリーブ5の一連の固定作業が容易となり、スリーブ5を型枠1a、1c間に容易に設置することができる。
【0042】
また、一方の型枠1aに対してスリーブ5を固定する際には、第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持することで、このスリーブ5を一方の型枠1aに固定することができる。そして、その後の、一対の型枠1(1a、1c)に対してスリーブ5を固定する際には、第2のナット10と第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持することで、このスリーブ5を一対の型枠1(1a、1c)に固定することができる。こうして、スリーブ5を一方の型枠1a、さらには一対の型枠1a、1cに固定することができることから、スリーブ5を型枠1a、1c間に的確に設置することができる。
【0043】
すなわち、スリーブ固定具6を用いることで、型枠1へのスリーブ5の一連の固定作業が容易となるとともに、スリーブ5を型枠1に固定することができ、これによって、スリーブ5を型枠1(1a、1c)間に容易かつ的確に設置することができる。
【0044】
また、第2のナット10を、他方の型枠1cの外側に突出したボルト部材7の他端7b側にねじ込む際には、ボルト部材7は、雌ねじ部8a(雌ねじ部材8)および第1のナット9の両方の螺合による、いわゆるダブルナット作用により、回り止めされている。このため、この第2のナット10による締付けを容易に行うことができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、貫通部3は、配線・配管材を通すための孔でなくとも、換気のための孔等、その他の目的に用いられるものであってもよい。
【0046】
また、スリーブ5は、スリーブ本体501とベルマウス502とを互いに接着することで形成されているが、別体のベルマウス502をなくして、スリーブ本体501の端部をベルマウス形状に成形してもよい。また、スリーブ5は、二体であるか一体であるかを問わず、各端部5a、5bは、ベルマウス形状とか、あるいは、ベルマウス形状とは異なり、湾曲した面がない真っ直ぐな形状(円筒形状)とかの形状とすることができる。
【0047】
また、一対の型枠1(1a、1c)間にコンクリートを打設して形成されたコンクリート壁2に、スリーブ5は、埋設されたまま残されるが、例えば、スリーブ5を紙製とすることで、コンクリート壁2の形成後に、このスリーブ5を破り取る等して取り除いてもよい。
【0048】
また、スリーブ固定具6における固定具本体6aは、雌ねじ部材8を収容する雌ねじ部材収容部6cを備えているが、この雌ねじ部材8における雌ねじ部8aが、固定具本体6a(つまり、スリーブ固定具6)自身に一体に設けられても構わない。つまり、雌ねじ部材8を用いることなく、例えば、孔6eの内面に雌ねじ部8aを成形してもよい。
【0049】
また、スリーブ固定具6は、フランジ601を備えて、そのフランジ601が係合部6bとなってスリーブ5の端面に当接するが、固定具本体6aにおける手前側ほど径大となる外周面が係合部となってもよく、また、スリーブ5の内面に段部を設け、固定具本体6aにその段部に当接するように係合部を設けてもよい。スリーブ固定補助具11についても同様に、補助具本体11aの外周面の一部が径大となって、その径大となる外周面が係合部となってもよく、また、スリーブ5の内面に設けた段部に当接するような係合部を、補助具本体11aに設けてもよい。
【0050】
また、第2の工程において、ボルト部材7を軸方向に移動させるにあたって、ボルト部材7を螺進させることなく真っ直ぐ移動させてもよい。以下に、この例を二つ示す。
【0051】
一つ目の例として、ボルト部材7を、雌ねじ部材8と一緒に真っ直ぐ移動させる例を、図11〜図13に基づき説明する。この例では、図11に示すように、雌ねじ部材8の手前側(前方)に、ボルト部材7が他方の型枠1c(詳しくは、他の貫通孔1d)から外側に突出するようにボルト部材7とともに雌ねじ部材8が移動可能なスペースX1が空けられている。そこで、図12に示すように、他方の型枠1cを設置後、一方の型枠1aの外側から、第1のナット9が一方の型枠1aからある程度離れるまで(ボルト部材7が他方の型枠1c(他の貫通孔1d)から外側に突出するに足る長さ分)その第1のナット9を緩める。その後、図13に示すように、ボルト部材7を一方の型枠1aの外側から押して真っ直ぐ移動させる。
【0052】
次いで、二つ目の例として、ボルト部材7を、スリーブ固定具6および雌ねじ部材8と一緒に真っ直ぐ移動させる例を、図14〜図16に基づき説明する。この例では、図14に示すように、雌ねじ部材8は、スリーブ固定具6と一体化されるように、例えば、スリーブ固定具6は、雌ねじ部材8をインサートするようにして成形され、また、スリーブ固定具6は、スリーブ5の他方の端部5bに奥まで挿入される。このとき、スリーブ固定具6は、その外周奥端が係合部6bとなって、その係合部6bが、スリーブ5が径小に変化する部分と係合することで、奥側、つまりスリーブ5の一方の端部5a側方向への移動が止められる。そして、スリーブ固定具6の手前側(前方)に、ボルト部材7が他方の型枠1c(詳しくは、他の貫通孔1d)から外側に突出するようにボルト部材7とともにスリーブ固定具6および雌ねじ部材8が移動可能なスペースX2が空けられている。そこで、図15に示すように、他方の型枠1cを設置後、一方の型枠1aの外側から、第1のナット9が一方の型枠1aからある程度離れるまで(ボルト部材7が他方の型枠1c(他の貫通孔1d)から外側に突出するに足る長さ分)その第1のナット9を緩める。その後、図16に示すように、ボルト部材7を一方の型枠1aの外側から押して真っ直ぐ移動させる。なお、この例では、スリーブ5は、ベルマウス502を有せず、スリーブ本体501のみで構成される。
【0053】
また、一対の型枠1(1a、1c)のうちの他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dは、その他方の型枠1cが設置された後にあけられなくとも、設置される前にあけられてもよい。そして、この場合には、スリーブ固定具6には、受容空間6dは設けられなくともよい。さらには、この場合には、スリーブ5の他方の端部5bからボルト部材7の他端7bを突出させておいてもよい。ここにおいて、ボルト部材7を軸方向へ移動する操作は、一方の型枠1aの外側からか、設置されていない他方の型枠1c側(つまり、スリーブ5の他方の端部5bのある側)からかは、作業のし易い方から行えばよい。
【0054】
また、スリーブ装置4は、スリーブ5およびスリーブ固定具6の他に、スリーブ固定補助具11を備えるが、このスリーブ固定補助具11はなくともよい。
【0055】
また、各実施の形態のスリーブ装置4において、第1の工程による挟持によってスリーブ5を一方の型枠1aに固定し、第2の工程を他方の型枠1cの設置にとどめるとともに、第3の工程を省略してもよい。つまり、第1の工程による一方の型枠1aへのスリーブ5の固定(仮固定)、その後の第2の工程を経た第3の工程による両型枠1a、1cへのスリーブ5の固定(本固定)という使用の仕方はもちろん可能であるが、第1の工程においてコンクリート打設圧に耐え得るように固定することで、第1の工程でのスリーブ5の固定を本固定とし、他方の型枠1cからのボルト部材7の突出と第3の工程による型枠1a、1c両側からの挟持とを省略した使用の仕方も可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 型枠
1a 一方の型枠
1b 貫通孔
1c 他方の型枠
1d 他の貫通孔
2 コンクリート壁
3 貫通部
4 スリーブ装置
5 スリーブ
5a 一方の端部
5b 他方の端部
6 スリーブ固定具
6a 固定具本体
6b 係合部
6c 雌ねじ部材収容部
6d 受容空間
601 フランジ
7 ボルト部材
7a 一端
7b 他端
8 雌ねじ部材
8a 雌ねじ部
9 第1のナット
10 第2のナット
11 スリーブ固定補助具
11a 補助具本体
11b 通孔
13 穿孔ドリル
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート壁に貫通部を形成するための、スリーブ装置およびスリーブ設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート壁に貫通部を形成する方法として、そのコンクリート壁にスリーブを埋設する方法があった(例えば、特許文献1参照)。図17に示されるように、このスリーブ20は、内部が貫通部21を構成するものであって、内挿筒体22と、その内挿筒体22に被さる外装筒体23とで構成された。ここで、内挿筒体22の外面にはらせん溝22aが設けられた。また、外装筒体23には、弾性片23aが設けられ、その弾性片23aに前記らせん溝22aと係合する係止爪23bが形成されていた。そこで、コンクリート壁24を形成するための型枠25、25間において、スリーブ20を縮めた状態から、相対的に内挿筒体22を外装筒体23に対して引っ張ったり、相対的に外装筒体23をらせん溝22aに沿って回動することで、スリーブ20の長さを伸ばして、そのスリーブ20を型枠25、25間で突っ張らせ、これによって、スリーブ20を型枠25、25間の所定の位置に設置していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のスリーブ20にあっては、スリーブ20の設置にあたって、両型枠25、25間でスリーブ20を伸ばして突っ張らせていたため、その設置作業が型枠25、25間での作業となり面倒であった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、スリーブを型枠間に容易かつ的確に設置することができる、スリーブ装置およびスリーブ設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るスリーブ装置およびスリーブ設置方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係るスリーブ装置は、対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するための、スリーブ装置である。このスリーブ装置は、前記一対の型枠間に配備されて内部が前記貫通部を構成するスリーブと、そのスリーブを前記型枠に固定するためのスリーブ固定具とを備える。前記スリーブ固定具は、前記スリーブの、前記一対の型枠のうちの一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められる固定具であって、その他方の端部を閉塞する固定具本体と、その固定具本体が前記スリーブの一方の端部側方向に移動しないよう前記スリーブと係合する係合部とを備える。そして、前記固定具本体は、前記スリーブの内部を通るボルト部材が貫通可能であって、そのボルト部材が螺合する雌ねじ部、またはその雌ねじ部を有する雌ねじ部材を前記スリーブの一方の端部側方向に移動不能に収容する雌ねじ部材収容部を備える。そこで、スリーブ装置は、前記スリーブの内部を通り前記雌ねじ部に螺合する前記ボルト部材の、前記一方の型枠に設けられる貫通孔を貫通して外側に突出する一端側に、第1のナットがねじ込まれて、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持可能となっている。加えて、スリーブ装置は、その後に、前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように設置する前記一対の型枠のうちの他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出する、前記ボルト部材の他端側に、第2のナットがねじ込まれて、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持可能となっている。
【0007】
このスリーブ装置によると、スリーブを型枠間に設置するにあたって、始めに、ボルト部材に螺合する第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持することで、一方の型枠に対しスリーブを固定することができる。また、その後に、他方の型枠を設置して、ボルト部材を他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出させた、ボルト部材の他端側に、第2のナットをねじ込むようにして、その第2のナットと前記第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持することで、それら一対の型枠に対してスリーブを固定することができる。このように、始めに、一方の型枠に対してスリーブを固定する、つまり、他方の型枠を設置しない状態でスリーブを固定する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、その固定作業を型枠の外側から行う。これにより、型枠へのスリーブの一連の固定作業が容易となり、スリーブを型枠間に容易に設置することができる。また、一方の型枠に対してスリーブを固定する際には、第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、第2のナットと第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持する。これにより、スリーブを一方の型枠、さらには一対の型枠に固定することができることから、スリーブを型枠間に的確に設置することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係るスリーブ装置は、請求項1に記載のスリーブ装置において、前記スリーブ固定具には、設置された前記他方の型枠に前記他の貫通孔を形成するための穿孔ドリルの先端が、前記雌ねじ部に干渉しないように、前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係るスリーブ装置は、請求項1または2に記載のスリーブ装置において、前記係合部は、前記スリーブの他方の端部における端面に当接するように、前記固定具本体から張り出した、フランジからなる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係るスリーブ装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスリーブ装置において、前記スリーブの一方の端部に着脱可能に嵌められるスリーブ固定補助具を備える。このスリーブ固定補助具は、前記スリーブの一方の端部を閉塞する補助具本体を備え、その補助具本体には、前記ボルト部材が貫通する通孔が設けられて、その通孔を前記ボルト部材が貫通することで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレが規制される。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係るスリーブ設置方法は、対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するために、内部が前記貫通部を構成するスリーブを前記一対の型枠間に設置する、スリーブ設置方法である。このスリーブ設置方法は、以下に示す第1から第3の工程を備える。
【0012】
第1の工程:前記一対の型枠のうちの一方の型枠を設置し、前記一方の型枠に設けられる貫通孔にボルト部材を貫通させるとともに、前記スリーブを、そのスリーブの内部に前記ボルト部材が通るように配置し、そのスリーブの、前記一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められるスリーブ固定具に設けられた雌ねじ部に、前記ボルト部材を螺合させ、前記一方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の一端側に第1のナットをねじ込んで、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持するようにして、前記スリーブを前記一方の型枠に固定することにより、前記スリーブを仮固定する。
【0013】
第2の工程:前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように前記一対の型枠のうちの他方の型枠を設置し、前記他方の型枠に設けられる他の貫通孔から前記ボルト部材の他端が外側に突出するように、そのボルト部材を、前記型枠の外側からの操作により前記ボルト部材の軸方向に移動させる。
【0014】
第3の工程:前記他方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の他端側に第2のナットをねじ込んで、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持して、前記スリーブを前記一対の型枠に固定することにより、前記スリーブを本固定する。
【0015】
このスリーブ設置方法によると、スリーブを型枠間に設置するにあたって、始めに、ボルト部材に螺合する第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持することで、一方の型枠に対しスリーブを固定することができる。また、その後に、他方の型枠を設置して、ボルト部材を他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出させた、ボルト部材の他端側に、第2のナットをねじ込むようにして、その第2のナットと前記第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持することで、それら一対の型枠に対してスリーブを固定することができる。このように、始めに、一方の型枠に対してスリーブを固定する、つまり、他方の型枠を設置しない状態でスリーブを固定する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、その固定作業を型枠の外側から行う。これにより、型枠へのスリーブの一連の固定作業が容易となり、スリーブを型枠間に容易に設置することができる。また、一方の型枠に対してスリーブを固定する際には、第1のナットとスリーブ固定具とでスリーブおよび一方の型枠を挟持する。そして、その後、一対の型枠に対してスリーブを固定する際には、第2のナットと第1のナットとでスリーブおよび一対の型枠を挟持する。これにより、スリーブを一方の型枠、さらには一対の型枠に固定することができることから、スリーブを型枠間に的確に設置することができる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明に係るスリーブ設置方法は、請求項5に記載のスリーブ設置方法において、前記第2の工程にあたって、前記他の貫通孔は、前記他方の型枠の設置後に穿孔ドリルを用いて形成される。そこで、この穿孔ドリルによる穿孔にあたって、前記穿孔ドリルの先端が前記雌ねじ部に干渉しないように、前記スリーブ固定具には前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられ、かつ、前記穿孔ドリルの先端が前記ボルト部材の他端に干渉しないように、前記第1の工程において、前記ボルト部材の他端を前記他方の型枠から控えて位置させる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明に係るスリーブ設置方法は、請求項5または6に記載のスリーブ設置方法において、前記第1の工程にあたって、前記スリーブの一方の端部にスリーブ固定補助具を着脱可能に嵌め、そのスリーブ固定補助具に設けられた通孔に、前記ボルト部材を貫通させることで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレを規制する。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るスリーブ装置およびスリーブ設置方法によれば、スリーブ固定具を用いることで、スリーブを型枠間に容易かつ的確に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態の、スリーブ装置の分解断面図である。
【図2】同じく、スリーブ装置の斜視図である。
【図3】同じく、スリーブ固定具の斜視図である。
【図4】同じく、スリーブ固定補助具の斜視図である。
【図5】同じく、スリーブ設置方法の第1の工程を示す断面図である。
【図6】同じく、スリーブ設置方法の第2の工程における、他の貫通孔の穿孔過程を示す断面図である。
【図7】同じく、スリーブ設置方法の第2の工程を示す断面図である。
【図8】同じく、スリーブ設置方法の第3の工程を示す断面図である。
【図9】同じく、第3の工程後の、コンクリートの打設によるコンクリート壁の形成工程を示す断面図である。
【図10】同じく、コンクリート壁の形成後の、型枠、スリーブ固定具、スリーブ固定補助具等を除去した状態を示す断面図である。
【図11】この発明の他の実施の形態の、図5相当図である。
【図12】同じく、第1のナットを緩めた状態を示す断面図である。
【図13】同じく、図7相当図である。
【図14】この発明のさらに他の実施の形態の、図5相当図である。
【図15】同じく、第1のナットを緩めた状態を示す断面図である。
【図16】同じく、図7相当図である。
【図17】従来のスリーブの設置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係るスリーブ装置およびスリーブ設置方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図10は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、型枠である。2は、対面する一対の型枠1間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁であって、建造物における、例えば、外壁、間仕切り壁、基礎壁、天井から下方に突設された梁を構成する壁等、その他の壁からなる。3は、前記コンクリート壁2に形成される貫通部であり、例えば、配線・配管材(配線材または配管材)を通すための孔からなる。4は、前記コンクリート壁2に前記貫通部3を形成するための、スリーブ装置である。
【0022】
このスリーブ装置4は、一対の型枠1間に配備されて内部が前記貫通部3を構成するスリーブ5と、そのスリーブ5を型枠1に固定するためのスリーブ固定具6とを備える。このスリーブ固定具6は、スリーブ5の、前記一対の型枠1のうちの一方の型枠1a側となる一方の端部5aとは反対の他方の端部5bに、着脱可能に嵌められる固定具である。そして、スリーブ固定具6は、スリーブ5の他方の端部5bを閉塞する固定具本体6aと、その固定具本体6aがスリーブ5の一方の端部5a側方向に移動しないようスリーブ5と係合する係合部6bとを備える。ここで、固定具本体6aは、スリーブ5の内部を通るボルト部材7が貫通可能であって、そのボルト部材7が螺合する雌ねじ部8a、またはその雌ねじ部8aを有する雌ねじ部材8(詳しくは、ナット)をスリーブ5の一方の端部5a側方向に移動不能に収容する雌ねじ部材収容部6cを備える。図示実施の形態においては、固定具本体6aは、前記雌ねじ部材収容部6cを備え、この雌ねじ部材収容部6cに前記雌ねじ部材8が収容されることで、この固定具本体6a、ひいてはスリーブ固定具6に前記雌ねじ部8aが設けられる。また、前記係合部6bは、スリーブ5の他方の端部5bにおける端面に当接するように、固定具本体6aから張り出した、フランジ601からなる。
【0023】
そこで、スリーブ5の内部を通り前記雌ねじ部8aに螺合するボルト部材7の、一方の型枠1aに設けられる貫通孔1bを貫通して外側に突出する一端7a側に、第1のナット9がねじ込まれて、その第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持可能であり、かつ、その後に、スリーブ5を一方の型枠1aとで挟むように設置する一対の型枠1のうちの他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dから外側に突出する、ボルト部材7の他端7b側に、第2のナット10がねじ込まれて、その第2のナット10と前記第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持可能となっている。
【0024】
また、スリーブ装置4は、スリーブ5およびスリーブ固定具6の他に、スリーブ5の一方の端部5aに着脱可能に嵌められるスリーブ固定補助具11を備えている。このスリーブ固定補助具11は、スリーブ5の一方の端部5aを閉塞する補助具本体11aを備え、その補助具本体11aには、前記ボルト部材7が貫通する通孔11bが設けられて、その通孔11bをボルト部材7が貫通することで、一方の型枠1aに対してスリーブ5のズレが規制されるようになっている。
【0025】
具体的には、スリーブ5は、例えば合成樹脂製であって、図1に示すように、内部が貫通形成された筒状の、スリーブ本体501とベルマウス502とから構成され、それらスリーブ本体501とベルマウス502とが、各端側において嵌め合わされて接着されている。そして、スリーブ5は、スリーブ本体501におけるベルマウス502から離れた側の端部が、前記一方の端部5aとなり、ベルマウス502におけるスリーブ本体501から離れた側の端部が、前記他方の端部5bとなる。また、スリーブ5(詳しくは、スリーブ本体501)の外周面には、スリーブ5とコンクリート壁2との間の止水のために、例えばブチルゴム製のシールテープ12が巻かれている。
【0026】
スリーブ固定具6は、例えば合成樹脂製であって、図1および図3に示すように、その固定具本体6aが、スリーブ5に嵌まるように、筒形に形成されている。詳細には、固定具本体6aは、スリーブ5に挿入される先端とは反対の基端側がベルマウス502の形状に合わせて手前側ほど径大となるように広がって形成されている。そして、この固定具本体6aの基端から径方向に張り出すようにして前記フランジ601が設けられ、このフランジ601が、スリーブ5の他方の端部5bにおける端面となるベルマウス502の端面に当接する。
【0027】
また、スリーブ固定具6(詳しくは、固定具本体6a)には、設置された他方の型枠1cに他の貫通孔1dを形成するための穿孔ドリル13の先端が、雌ねじ部8a(図示実施の形態においては、雌ねじ部材8)に干渉しないように、雌ねじ部8aの前方(手前側)、つまり雌ねじ部材収容部6cの前方に、穿孔ドリル13の先端を受容する受容空間6dが設けられる。詳細には、スリーブ固定具6には、その軸心部分において、固定具本体6aを突き抜けるように、手前側から順に、受容空間6dと、雌ねじ部材8を収容する六角穴形状の雌ねじ部材収容部6cと、孔6eとが並んで設けられる。そして、ボルト部材7は、孔6e、雌ねじ部8a(詳しくは、雌ねじ部材収容部6cに収容された雌ねじ部材8)および受容空6d間を通るようにして、固定具本体6a、つまりスリーブ固定具6を貫通する。
【0028】
スリーブ固定補助具11は、例えば合成樹脂製であって、図1および図4に示すように、その補助具本体11aが、スリーブ5に嵌まるように、円筒状の筒形に形成されている。そして、このスリーブ固定補助具11には、その軸心部分を突き抜けるように前記通孔11bが設けられる。ここにおいて、通孔11bは、その奥部に径大に形成された六角穴形状のナット収容部11cを有するが、図示実施の形態においては、このナット収容部11cにナットは収容されない。また、スリーブ固定補助具11は、前記補助具本体11aの他に、スリーブ5の一方の端部5aにおける端面に当接するように、補助具本体11aの基端から径方向に張り出した、係合部としてのフランジ11dを備えている。
【0029】
ボルト部材7は、例えば、その全長に渡って雄ねじが形成された全ネジボルトであって、一対の型枠1a、1cを貫通し、さらに、それら型枠1a、1cの外側に突出する長さを有している。
【0030】
次に、このスリーブ装置4を用いたスリーブ設置方法を説明する。このスリーブ設置方法は、対面する一対の型枠1(1a、1c)間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁2に貫通部3を形成するために、内部が前記貫通部3を構成するスリーブ5を一対の型枠1(1a、1c)間に設置する、スリーブ設置方法である。このスリーブ設置方法は、施工手順として、第1の工程から第3の工程までの各工程を備える。
【0031】
第1の工程:一対の型枠1のうちの一方の型枠1aを設置し、一方の型枠1aに設けられる貫通孔1bにボルト部材7を貫通させるとともに、スリーブ5を、そのスリーブ5の内部にボルト部材7が通るように配置し、そのスリーブ5の、一方の型枠1a側となる一方の端部5aとは反対の他方の端部5bに、着脱可能に嵌められるスリーブ固定具6に設けられた雌ねじ部8a(図示実施の形態においては、雌ねじ部材8)に、ボルト部材7を螺合させ、一方の型枠1aの外側に突出したボルト部材7の一端7a側に第1のナット9をねじ込んで、その第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持するようにして、スリーブ5を一方の型枠1aに固定することにより、そのスリーブ5を仮固定する(図5参照)。つまり、一方の型枠1aにスリーブ5を支持させる。
【0032】
第2の工程:スリーブ5を前記一方の型枠1aとで挟むように一対の型枠1のうちの他方の型枠1cを設置し、他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dからボルト部材7の他端7bが外側に突出するように、そのボルト部材7を、型枠1の外側からの操作によりボルト部材7の軸方向に移動させる(図6、図7参照)。
【0033】
第3の工程:他方の型枠1cの外側に突出したボルト部材7の他端7b側に第2のナット10をねじ込んで、その第2のナット10と前記第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持して、スリーブ5を一対の型枠1(1a、1c)に固定することにより、そのスリーブ5を本固定する(図8参照)。
【0034】
ところで、図示実施の形態においては、第1の工程にあたって、図5に示すように、スリーブ5の一方の端部5aにスリーブ固定補助具11を着脱可能に嵌め、そのスリーブ固定補助具11に設けられた通孔11bに、ボルト部材7を貫通させることで、一方の型枠1aに対してスリーブ5のズレを規制する。
【0035】
また、前記第2の工程にあたって、図6に示すように、他の貫通孔1dは、他方の型枠1cの設置後に穿孔ドリル13を用いて形成される。そして、この穿孔ドリル13による穿孔にあたっては、前記穿孔ドリル13の先端が前記雌ねじ部8a(雌ねじ部材8)に干渉しないように、スリーブ固定具6には雌ねじ部8a(雌ねじ部材8)の前方に穿孔ドリル13の先端を受容する受容空間6dが設けられ、かつ、穿孔ドリル13の先端がボルト部材7の他端7bに干渉しないように、第1の工程において、ボルト部材7の他端7bを他方の型枠1cから控えて位置させる。
【0036】
そして、この第2の工程では、他の貫通孔1dからボルト部材7の他端7bが外側に突出するように、そのボルト部材7を型枠1の外側からの操作により軸方向に移動させるが、このボルト部材7の移動にあたっては、一方の型枠1aの外側からの操作のみで移動させても、一方および他方の型枠1a、1cの外側からの操作で移動させても、他方の型枠1cの外側からの操作のみで移動させてもよい。
【0037】
一方の型枠1aの外側からの操作のみでボルト部材7を移動させるには、第1のナット9を少し緩めることでその第1のナット9と雌ねじ部8aとのいわゆるダブルナットによる締付けを解除し、第1のナット9を回動しないように保持(例えば、一方の型枠1aとの摩擦で保持)した状態でボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる。他の方法として、第1のナット9が一方の型枠1aからある程度離れるまで(ボルト部材7が他方の型枠1c(詳しくは、他の貫通孔1d)から外側に突出するに足る長さ分)その第1のナット9を緩め、その後、ボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる。また、この一連の操作を段階的に、つまり少しずつ繰り返し行うようにしてもよい。
【0038】
一方および他方の型枠1a、1cの外側からの操作でボルト部材7を移動させるには、一方の型枠1aの外側から第1のナット9を少し緩め、他方の型枠1cの外側から、他の貫通孔1dを通して、ボルト部材7の他端7bの端面に予め設けておいた工具係止部(図示せず)に工具を係止させるようにしてボルト部材7の他端を掴むなどして、その工具によりボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる(この際、第1のナット9は、一方の型枠1aとの摩擦で回動しないよう保持される。)。
【0039】
他方の型枠1cの外側からの操作のみでボルト部材7を移動させるには、第1の工程で、第1のナット9をきつく締めるのではなく適度に締めた状態にとどめ、上記と同様に、他方の型枠1cの他の貫通孔1dを通して、工具でボルト部材7の他端7bを掴むなどして、その工具によりボルト部材7を螺回動、つまり螺進させるようにして移動させる(この際、第1のナット9は、一方の型枠1aとの摩擦で回動しないよう保持される。)。
【0040】
また、第3の工程により、一対の型枠1(1a、1c)間にスリーブ5を設置した後には、一対の型枠1(1a、1c)間にコンクリートを打設して、コンクリート壁2を形成する(図9参照)。その後、スリーブ5を残して、型枠1a、1c、スリーブ固定具6、スリーブ固定補助具11、ボルト部材7等を取り除くことで、コンクリート壁2を貫通する貫通部3が形成される(図10参照)。
【0041】
次に、以上の構成からなるスリーブ装置4およびスリーブ設置方法の作用効果について説明する。このスリーブ装置4およびスリーブ設置方法によると、スリーブ5を型枠1(1a、1c)間に設置するにあたって、始めに、ボルト部材7に螺合する第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持することで、一方の型枠1aに対しスリーブ5を固定することができる(図5参照)。また、その後に、他方の型枠1cを設置して、ボルト部材7を他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dから外側に突出させた、ボルト部材7の他端7b側に、第2のナット10をねじ込むようにして、その第2のナット10と前記第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持することで、それら一対の型枠1(1a、1c)に対してスリーブ5を固定することができる(図8参照)。このように、始めに、一方の型枠1aに対してスリーブ5を固定する、つまり、他方の型枠1cを設置しない状態でスリーブ5を固定することで、その固定作業が容易となる(図5参照)。そして、その後の、一対の型枠1(1a、1c)に対してスリーブ5を固定する際には、その固定作業を型枠1a、1cの外側から行うことで、その固定作業が容易となる(図7、図8参照)。こうして、型枠1a、1cへのスリーブ5の一連の固定作業が容易となり、スリーブ5を型枠1a、1c間に容易に設置することができる。
【0042】
また、一方の型枠1aに対してスリーブ5を固定する際には、第1のナット9とスリーブ固定具6とでスリーブ5および一方の型枠1aを挟持することで、このスリーブ5を一方の型枠1aに固定することができる。そして、その後の、一対の型枠1(1a、1c)に対してスリーブ5を固定する際には、第2のナット10と第1のナット9とでスリーブ5および一対の型枠1(1a、1c)を挟持することで、このスリーブ5を一対の型枠1(1a、1c)に固定することができる。こうして、スリーブ5を一方の型枠1a、さらには一対の型枠1a、1cに固定することができることから、スリーブ5を型枠1a、1c間に的確に設置することができる。
【0043】
すなわち、スリーブ固定具6を用いることで、型枠1へのスリーブ5の一連の固定作業が容易となるとともに、スリーブ5を型枠1に固定することができ、これによって、スリーブ5を型枠1(1a、1c)間に容易かつ的確に設置することができる。
【0044】
また、第2のナット10を、他方の型枠1cの外側に突出したボルト部材7の他端7b側にねじ込む際には、ボルト部材7は、雌ねじ部8a(雌ねじ部材8)および第1のナット9の両方の螺合による、いわゆるダブルナット作用により、回り止めされている。このため、この第2のナット10による締付けを容易に行うことができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、貫通部3は、配線・配管材を通すための孔でなくとも、換気のための孔等、その他の目的に用いられるものであってもよい。
【0046】
また、スリーブ5は、スリーブ本体501とベルマウス502とを互いに接着することで形成されているが、別体のベルマウス502をなくして、スリーブ本体501の端部をベルマウス形状に成形してもよい。また、スリーブ5は、二体であるか一体であるかを問わず、各端部5a、5bは、ベルマウス形状とか、あるいは、ベルマウス形状とは異なり、湾曲した面がない真っ直ぐな形状(円筒形状)とかの形状とすることができる。
【0047】
また、一対の型枠1(1a、1c)間にコンクリートを打設して形成されたコンクリート壁2に、スリーブ5は、埋設されたまま残されるが、例えば、スリーブ5を紙製とすることで、コンクリート壁2の形成後に、このスリーブ5を破り取る等して取り除いてもよい。
【0048】
また、スリーブ固定具6における固定具本体6aは、雌ねじ部材8を収容する雌ねじ部材収容部6cを備えているが、この雌ねじ部材8における雌ねじ部8aが、固定具本体6a(つまり、スリーブ固定具6)自身に一体に設けられても構わない。つまり、雌ねじ部材8を用いることなく、例えば、孔6eの内面に雌ねじ部8aを成形してもよい。
【0049】
また、スリーブ固定具6は、フランジ601を備えて、そのフランジ601が係合部6bとなってスリーブ5の端面に当接するが、固定具本体6aにおける手前側ほど径大となる外周面が係合部となってもよく、また、スリーブ5の内面に段部を設け、固定具本体6aにその段部に当接するように係合部を設けてもよい。スリーブ固定補助具11についても同様に、補助具本体11aの外周面の一部が径大となって、その径大となる外周面が係合部となってもよく、また、スリーブ5の内面に設けた段部に当接するような係合部を、補助具本体11aに設けてもよい。
【0050】
また、第2の工程において、ボルト部材7を軸方向に移動させるにあたって、ボルト部材7を螺進させることなく真っ直ぐ移動させてもよい。以下に、この例を二つ示す。
【0051】
一つ目の例として、ボルト部材7を、雌ねじ部材8と一緒に真っ直ぐ移動させる例を、図11〜図13に基づき説明する。この例では、図11に示すように、雌ねじ部材8の手前側(前方)に、ボルト部材7が他方の型枠1c(詳しくは、他の貫通孔1d)から外側に突出するようにボルト部材7とともに雌ねじ部材8が移動可能なスペースX1が空けられている。そこで、図12に示すように、他方の型枠1cを設置後、一方の型枠1aの外側から、第1のナット9が一方の型枠1aからある程度離れるまで(ボルト部材7が他方の型枠1c(他の貫通孔1d)から外側に突出するに足る長さ分)その第1のナット9を緩める。その後、図13に示すように、ボルト部材7を一方の型枠1aの外側から押して真っ直ぐ移動させる。
【0052】
次いで、二つ目の例として、ボルト部材7を、スリーブ固定具6および雌ねじ部材8と一緒に真っ直ぐ移動させる例を、図14〜図16に基づき説明する。この例では、図14に示すように、雌ねじ部材8は、スリーブ固定具6と一体化されるように、例えば、スリーブ固定具6は、雌ねじ部材8をインサートするようにして成形され、また、スリーブ固定具6は、スリーブ5の他方の端部5bに奥まで挿入される。このとき、スリーブ固定具6は、その外周奥端が係合部6bとなって、その係合部6bが、スリーブ5が径小に変化する部分と係合することで、奥側、つまりスリーブ5の一方の端部5a側方向への移動が止められる。そして、スリーブ固定具6の手前側(前方)に、ボルト部材7が他方の型枠1c(詳しくは、他の貫通孔1d)から外側に突出するようにボルト部材7とともにスリーブ固定具6および雌ねじ部材8が移動可能なスペースX2が空けられている。そこで、図15に示すように、他方の型枠1cを設置後、一方の型枠1aの外側から、第1のナット9が一方の型枠1aからある程度離れるまで(ボルト部材7が他方の型枠1c(他の貫通孔1d)から外側に突出するに足る長さ分)その第1のナット9を緩める。その後、図16に示すように、ボルト部材7を一方の型枠1aの外側から押して真っ直ぐ移動させる。なお、この例では、スリーブ5は、ベルマウス502を有せず、スリーブ本体501のみで構成される。
【0053】
また、一対の型枠1(1a、1c)のうちの他方の型枠1cに設けられる他の貫通孔1dは、その他方の型枠1cが設置された後にあけられなくとも、設置される前にあけられてもよい。そして、この場合には、スリーブ固定具6には、受容空間6dは設けられなくともよい。さらには、この場合には、スリーブ5の他方の端部5bからボルト部材7の他端7bを突出させておいてもよい。ここにおいて、ボルト部材7を軸方向へ移動する操作は、一方の型枠1aの外側からか、設置されていない他方の型枠1c側(つまり、スリーブ5の他方の端部5bのある側)からかは、作業のし易い方から行えばよい。
【0054】
また、スリーブ装置4は、スリーブ5およびスリーブ固定具6の他に、スリーブ固定補助具11を備えるが、このスリーブ固定補助具11はなくともよい。
【0055】
また、各実施の形態のスリーブ装置4において、第1の工程による挟持によってスリーブ5を一方の型枠1aに固定し、第2の工程を他方の型枠1cの設置にとどめるとともに、第3の工程を省略してもよい。つまり、第1の工程による一方の型枠1aへのスリーブ5の固定(仮固定)、その後の第2の工程を経た第3の工程による両型枠1a、1cへのスリーブ5の固定(本固定)という使用の仕方はもちろん可能であるが、第1の工程においてコンクリート打設圧に耐え得るように固定することで、第1の工程でのスリーブ5の固定を本固定とし、他方の型枠1cからのボルト部材7の突出と第3の工程による型枠1a、1c両側からの挟持とを省略した使用の仕方も可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 型枠
1a 一方の型枠
1b 貫通孔
1c 他方の型枠
1d 他の貫通孔
2 コンクリート壁
3 貫通部
4 スリーブ装置
5 スリーブ
5a 一方の端部
5b 他方の端部
6 スリーブ固定具
6a 固定具本体
6b 係合部
6c 雌ねじ部材収容部
6d 受容空間
601 フランジ
7 ボルト部材
7a 一端
7b 他端
8 雌ねじ部材
8a 雌ねじ部
9 第1のナット
10 第2のナット
11 スリーブ固定補助具
11a 補助具本体
11b 通孔
13 穿孔ドリル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するための、スリーブ装置であって、
前記一対の型枠間に配備されて内部が前記貫通部を構成するスリーブと、そのスリーブを前記型枠に固定するためのスリーブ固定具とを備え、
前記スリーブ固定具は、前記スリーブの、前記一対の型枠のうちの一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められる固定具であって、その他方の端部を閉塞する固定具本体と、その固定具本体が前記スリーブの一方の端部側方向に移動しないよう前記スリーブと係合する係合部とを備え、
前記固定具本体は、前記スリーブの内部を通るボルト部材が貫通可能であって、そのボルト部材が螺合する雌ねじ部、またはその雌ねじ部を有する雌ねじ部材を前記スリーブの一方の端部側方向に移動不能に収容する雌ねじ部材収容部を備え、
前記スリーブの内部を通り前記雌ねじ部に螺合する前記ボルト部材の、前記一方の型枠に設けられる貫通孔を貫通して外側に突出する一端側に、第1のナットがねじ込まれて、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持可能であり、かつ、
その後に、前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように設置する前記一対の型枠のうちの他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出する、前記ボルト部材の他端側に、第2のナットがねじ込まれて、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持可能であることを特徴とするスリーブ装置。
【請求項2】
前記スリーブ固定具には、設置された前記他方の型枠に前記他の貫通孔を形成するための穿孔ドリルの先端が、前記雌ねじ部に干渉しないように、前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のスリーブ装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記スリーブの他方の端部における端面に当接するように、前記固定具本体から張り出した、フランジからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のスリーブ装置。
【請求項4】
前記スリーブの一方の端部に着脱可能に嵌められるスリーブ固定補助具を備え、
前記スリーブ固定補助具は、前記スリーブの一方の端部を閉塞する補助具本体を備え、その補助具本体には、前記ボルト部材が貫通する通孔が設けられて、その通孔を前記ボルト部材が貫通することで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレが規制されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスリーブ装置。
【請求項5】
対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するために、内部が前記貫通部を構成するスリーブを前記一対の型枠間に設置する、スリーブ設置方法であって、
前記一対の型枠のうちの一方の型枠を設置し、前記一方の型枠に設けられる貫通孔にボルト部材を貫通させるとともに、前記スリーブを、そのスリーブの内部に前記ボルト部材が通るように配置し、そのスリーブの、前記一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められるスリーブ固定具に設けられた雌ねじ部に、前記ボルト部材を螺合させ、前記一方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の一端側に第1のナットをねじ込んで、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持するようにして、前記スリーブを前記一方の型枠に固定することにより、前記スリーブを仮固定する第1の工程と、
前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように前記一対の型枠のうちの他方の型枠を設置し、前記他方の型枠に設けられる他の貫通孔から前記ボルト部材の他端が外側に突出するように、そのボルト部材を、前記型枠の外側からの操作により前記ボルト部材の軸方向に移動させる第2の工程と、
前記他方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の他端側に第2のナットをねじ込んで、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持して、前記スリーブを前記一対の型枠に固定することにより、前記スリーブを本固定する第3の工程とを備えることを特徴とするスリーブ設置方法。
【請求項6】
前記第2の工程にあたって、前記他の貫通孔は、前記他方の型枠の設置後に穿孔ドリルを用いて形成され、
この穿孔ドリルによる穿孔にあたって、前記穿孔ドリルの先端が前記雌ねじ部に干渉しないように、前記スリーブ固定具には前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられ、かつ、前記穿孔ドリルの先端が前記ボルト部材の他端に干渉しないように、前記第1の工程において、前記ボルト部材の他端を前記他方の型枠から控えて位置させることを特徴とする、請求項5に記載のスリーブ設置方法。
【請求項7】
前記第1の工程にあたって、前記スリーブの一方の端部にスリーブ固定補助具を着脱可能に嵌め、そのスリーブ固定補助具に設けられた通孔に、前記ボルト部材を貫通させることで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレを規制することを特徴とする、請求項5または6に記載のスリーブ設置方法。
【請求項1】
対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するための、スリーブ装置であって、
前記一対の型枠間に配備されて内部が前記貫通部を構成するスリーブと、そのスリーブを前記型枠に固定するためのスリーブ固定具とを備え、
前記スリーブ固定具は、前記スリーブの、前記一対の型枠のうちの一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められる固定具であって、その他方の端部を閉塞する固定具本体と、その固定具本体が前記スリーブの一方の端部側方向に移動しないよう前記スリーブと係合する係合部とを備え、
前記固定具本体は、前記スリーブの内部を通るボルト部材が貫通可能であって、そのボルト部材が螺合する雌ねじ部、またはその雌ねじ部を有する雌ねじ部材を前記スリーブの一方の端部側方向に移動不能に収容する雌ねじ部材収容部を備え、
前記スリーブの内部を通り前記雌ねじ部に螺合する前記ボルト部材の、前記一方の型枠に設けられる貫通孔を貫通して外側に突出する一端側に、第1のナットがねじ込まれて、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持可能であり、かつ、
その後に、前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように設置する前記一対の型枠のうちの他方の型枠に設けられる他の貫通孔から外側に突出する、前記ボルト部材の他端側に、第2のナットがねじ込まれて、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持可能であることを特徴とするスリーブ装置。
【請求項2】
前記スリーブ固定具には、設置された前記他方の型枠に前記他の貫通孔を形成するための穿孔ドリルの先端が、前記雌ねじ部に干渉しないように、前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のスリーブ装置。
【請求項3】
前記係合部は、前記スリーブの他方の端部における端面に当接するように、前記固定具本体から張り出した、フランジからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のスリーブ装置。
【請求項4】
前記スリーブの一方の端部に着脱可能に嵌められるスリーブ固定補助具を備え、
前記スリーブ固定補助具は、前記スリーブの一方の端部を閉塞する補助具本体を備え、その補助具本体には、前記ボルト部材が貫通する通孔が設けられて、その通孔を前記ボルト部材が貫通することで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレが規制されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスリーブ装置。
【請求項5】
対面する一対の型枠間にコンクリートが打設されて形成されるコンクリート壁に貫通部を形成するために、内部が前記貫通部を構成するスリーブを前記一対の型枠間に設置する、スリーブ設置方法であって、
前記一対の型枠のうちの一方の型枠を設置し、前記一方の型枠に設けられる貫通孔にボルト部材を貫通させるとともに、前記スリーブを、そのスリーブの内部に前記ボルト部材が通るように配置し、そのスリーブの、前記一方の型枠側となる一方の端部とは反対の他方の端部に、着脱可能に嵌められるスリーブ固定具に設けられた雌ねじ部に、前記ボルト部材を螺合させ、前記一方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の一端側に第1のナットをねじ込んで、その第1のナットと前記スリーブ固定具とで前記スリーブおよび前記一方の型枠を挟持するようにして、前記スリーブを前記一方の型枠に固定することにより、前記スリーブを仮固定する第1の工程と、
前記スリーブを前記一方の型枠とで挟むように前記一対の型枠のうちの他方の型枠を設置し、前記他方の型枠に設けられる他の貫通孔から前記ボルト部材の他端が外側に突出するように、そのボルト部材を、前記型枠の外側からの操作により前記ボルト部材の軸方向に移動させる第2の工程と、
前記他方の型枠の外側に突出した前記ボルト部材の他端側に第2のナットをねじ込んで、その第2のナットと前記第1のナットとで前記スリーブおよび前記一対の型枠を挟持して、前記スリーブを前記一対の型枠に固定することにより、前記スリーブを本固定する第3の工程とを備えることを特徴とするスリーブ設置方法。
【請求項6】
前記第2の工程にあたって、前記他の貫通孔は、前記他方の型枠の設置後に穿孔ドリルを用いて形成され、
この穿孔ドリルによる穿孔にあたって、前記穿孔ドリルの先端が前記雌ねじ部に干渉しないように、前記スリーブ固定具には前記雌ねじ部の前方に前記穿孔ドリルの先端を受容する受容空間が設けられ、かつ、前記穿孔ドリルの先端が前記ボルト部材の他端に干渉しないように、前記第1の工程において、前記ボルト部材の他端を前記他方の型枠から控えて位置させることを特徴とする、請求項5に記載のスリーブ設置方法。
【請求項7】
前記第1の工程にあたって、前記スリーブの一方の端部にスリーブ固定補助具を着脱可能に嵌め、そのスリーブ固定補助具に設けられた通孔に、前記ボルト部材を貫通させることで、前記一方の型枠に対して前記スリーブのズレを規制することを特徴とする、請求項5または6に記載のスリーブ設置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−132265(P2012−132265A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286687(P2010−286687)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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