説明

スルホニルエチルホスホロジアミデート

スルホニルエチルおよびチオエチルホスホロジアミデート、その製造およびその製造における中間体、それらを含む製剤ならびにその製薬的使用。該化合物は、単独または他の抗ガン療法と併用で、ガンを治療するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホニルエチルおよびチオエチルホスホロジアミデート、それらをグループくむ製剤、その製薬的使用、ならびにその製造およびその製造における中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許No.5,556,942[およびPCT公報No.WO 95/09865]は、式:

[式中、Lは、電子求引性脱離基であり;
Sxは、−S(=O)−、−S(=O)2−、−S(=NH)−、−S(=O)(=NH)−、−S(C1−C6アルキル)−、−Se(=O)−、−Se(=O)2−、−Se(=NH)−もしくは−Se(=O)(=NH)−または−O−C(=O)−もしくは−HN−C(=O)−であり;
各R1、R2およびR3は独立して、Hまたは非妨害性置換基であり;
nは、0、1または2であり;
Yは、
【化1】

(ここで、mは、1または2である)
から選ばれ;および
AAcは、化合物の残部ペプチド結合を介して連結したアミノ酸である]
で示される化合物およびそのアミド、エステルおよび塩を開示する。
【0003】
該化合物は、互換性GSTイソ酵素を含む標的組織の選択的治療のために有用な医薬であり、同時に骨髄中のGM前駆細胞のレベルを上昇させると記載されている。開示されたLの具体例は、望ましくない細胞に対して細胞毒性である薬物を生成するものであり、ホスホルアミデートおよびホスホロジアミデートマスタードが挙げられる。
【0004】
該化合物の1つは、式:

で示される。
該特許において、TER286と呼ばれ、化合物名はγ−グルタミル−α−アミノ−β−((2 エチル−N,N,N,N−テトラ(2'−クロロ)エチルホスホルアミデート)スルホニル)プロピオニル−(R)−(−)−フェニルグリシンである。この化合物は後に、TLK286と呼ばれ、CAS名は、L−γ−グルタミル−3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニル−2−フェニル−(2R)−グリシンである。中間の化合物として、その提案されている国際的一般名称は、カンフォスファミドであり、その塩酸付加塩として、その米国一般名は、カンフォスファミド塩酸塩である。カンフォスファミドおよびその塩は、GST P1−1の作用およびGST A1−1によって活性化される抗ガン化合物であり、細胞毒性ホスホロジアミデートマスタード部分を放出する。
【0005】
インビトロで、カンフォスファミドは、ドキソルビシン耐性について選ばれたM6709ヒト結腸ガン細胞系およびシクロホスファミド耐性について選ばれたMCF−7ヒト乳ガン細胞系(両者は、それらの親細胞系以上にGST P1−1を過剰発現する)においてより強力であることが明らかにされている;高、中および低レベルのGST P1−1を有するように工作されたM7609のマウス異種移植片において、カンフォスファミド塩酸塩の効力は、GST P1−1のレベルと正の相関が認められた(Morganら、Cancer Res.、58:2568(1998))。
【0006】
カンフォスファミド塩酸塩は、現在、卵巣、乳房、非小細胞肺および結腸直腸ガンの治療について複数の臨床試験において評価されている。有意な単剤抗腫瘍活性および非小細胞肺ガンおよび卵巣ガンの患者の生存率の改善、および結腸直腸および乳房ガンにおける単剤抗腫瘍活性が実証されている。インビトロ細胞培養および腫瘍バイオプシーから得られた証拠は、カンフォスファミドが、プラチナ、パクリタキセルおよびドキソルビシンに交差耐性を示さないことを示しており(Rosarioら、Mol.Pharmacol.、58:167(2000))、ゲムシタビンに対してもそうである。カンフォスファミド塩酸塩で処置された患者は、臨床的に重大な血液学的毒性の発生が非常に低い。
【0007】
PCT公報No.WO 95/09865はまた、式:

[式中、Lは、電子求引性脱離基であり;
Sは、SまたはSeであり;
Sxは、−S(=O)−、−S(=O)2−、−S(=NH)−、−S(=O)(=NH)−、−S(C1−C6アルキル)−、−Se(=O)−、−Se(=O)2−、−Se(=NH)−もしくは−Se(=O)(=NH)−または−O−C(=O)−もしくは−HN−C(=O)−であり;
各R1、R2およびR3は独立して、Hまたは非妨害性置換基であり;
nは、0、1または2であり;
Yは、
【化2】

(ここで、mは、1または2である)
から選ばれ;および
AAcは、化合物の残部ペプチド結合を介して連結したアミノ酸である]
で示される化合物およびそのアミド、エステルおよび塩である中間体を開示する。
【0008】
米国特許No.6,506,739[およびPCT公報No.WO 01/83496]は、式:

[式中、Xは、ハロゲン原子であり;
Qは、O、SまたはNHであり;および
Rは、水素、必要に応じて置換された低級アルキル、必要に応じて置換されたアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアリールまたはR'CO−、R'NHCO−、R'SO2−またはR'NHSO2−(ここで、R'は、水素、必要に応じて置換された低級アルキル、必要に応じて置換されたアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアリールである);またはR−Qは一緒になって、塩素である]
で示される化合物およびその塩を開示する。
該化合物は、抗腫瘍剤であると記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カンフォスファミドおよび米国特許No.5,556,942の他の化合物より良好な有効性および安全性を有する他の抗ガン剤の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の開示)
第1の態様において、本発明は、式A、BおよびC:

[式中、各Rは独立して、水素、C1−6アルキルまたは−CH2CH2X(ここで、各Xは独立して、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)(ただし、各ホスホロジアミデート基における少なくとも2つのRは、−CH2CH2Xである)であり;
R1は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアラルキルであり;および
R2は、必要に応じて置換されたアルカンジイル、必要に応じて置換されたヘテロアルカンジイル、必要に応じて置換されたアレンジイル、必要に応じて置換されたアレンジアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアレンジイルまたは必要に応じて置換されたヘテロアレンジアルキルである]
で示される化合物またはその塩である。
【0011】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様である化合物を含む医薬組成物である。
第3の態様において、本発明は、ガンを治療するための医薬の製造における本発明の第1の態様である化合物の使用;および単独または他の抗ガン療法と併用で、本発明の第1の態様である化合物または本発明の第2の態様である医薬組成物を投与することによるガンの治療方法である。
【0012】
第4の態様において、本発明は、式BBおよびCC:

[式中、各Rは独立して、水素、C1−6アルキルまたは−CH2CH2X(ここで、各Xは独立して、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)(ただし、各ホスホロジアミデート基における少なくとも2つのRは、−CH2CH2Xである)であり;
R1は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアラルキルであり;および
R2は、必要に応じて置換されたアルカンジイル、必要に応じて置換されたヘテロアルカンジイル、必要に応じて置換されたアレンジイル、必要に応じて置換されたアレンジアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアレンジイルまたは必要に応じて置換されたヘテロアレンジアルキルである]
で示される化合物またはその塩である。
【0013】
第5の態様において、本発明は、本発明の第4の態様である化合物を含む医薬組成物である。
第6の態様において、本発明は、ガンを治療するための医薬の製造における本発明の第4の態様である化合物の使用;および単独または他の抗ガン療法と併用で、本発明の第4の態様である化合物または本発明の第5の態様である医薬組成物を投与することによるガンの治療方法である。
第7の態様において、本発明は、本発明の第1および第4の態様である化合物の製造方法である。本発明の第1の態様である化合物は、本発明の第4の態様である化合物から都合よく製造される。
【0014】
(発明を実施するための形態)
定義
「アルキル」は、直鎖、分枝鎖または炭素原子から1つの水素原子を除去することにより環式であってよい、飽和または不飽和(しかし、芳香族的に不飽和ではない)C1−C10炭化水素から誘導される一価の基を意味する。例として、メチル、エチル、プロピル、1−プロペニル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロペンテン−1−イル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルおよびシクロヘキシルメチルが挙げられる。飽和アルキル(シクロアルキルを含む)およびC1−C6アルキルが典型例である。本出願における「アルキル」の定義は、標準的定義よりも広く、より一般的に「シクロアルキル」、「シクロアルキルアルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」と呼ばれる基を含む。「アルカンジイル」は、同じ炭素原子または別の炭素原子(別の原子が好ましい)から第2の水素原子を除去することによって「アルキル」(本明細書の定義)から誘導される二価の基を意味する。例として、1,2−エタンジイル、ブト−2−エン−1,4−ジイル、1,5−ペンタンジイルおよび1,4−シクロヘキサンジイルが挙げられる。
【0015】
「置換アルキル」は、3個以下のハロゲン原子および/または−CN、−NO2、−OR、−SR、−COR、−OC(O)R、−C(O)OR、−NR2、−NR3X、−PR2、−PR3X、−SO2OR、−OSO2R、−SO2NR2、−NRSO2R、−CONR2、−NRCORおよび−NRC(O)OR(ここで、各Rは独立して、水素、必要に応じてR'置換されるアルキル、必要に応じてR'置換されるヘテロアルキル、必要に応じてR'置換されるアリール、必要に応じてR'置換されるヘテロアリール、必要に応じてR'置換されるアラルキルまたは必要に応じてR'置換されるヘテロアラルキルであり、各R'は、ハロ、−CN、−NO2、−OH、C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシ、−SH、−NH2または−C(O)Oアルキル(ハロ、−CN、−NO2、−OH、C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシ、−SHまたは−NH2から選ばれる1〜3個の置換基が好ましい)から選ばれる1〜3個の置換基であり、または2つのR基は、4または5員の必要に応じてR'置換されるアルカンジイルまたは必要に応じてR'置換されるヘテロアルカンジイルを形成し、Xはハロゲンである)から選ばれる3個以下の置換基で置換されたアルキルである。したがって、たとえば、置換アルキル基は、トリフルオロメチル、3−クロロプロピルおよび2−モルホリノエチルなどの基である。置換アルキル基はまた、システイン、ホモシステインおよびペニシラミン、およびそのN保護体およびエステルなど(ここで、1つの置換基は−COORであり、もう1つの置換基は−NH2または−NRC(O)ORである)のカルボキシ基における反応によって形成されるそのエステルおよびアミドおよびアミン基における反応によって形成されるそのアミドまたはスルホナミドなどのチオール−アミノ酸の残基(すなわちチオール以外のすべて)を含む。「置換アルカンジイル」は、上記のアルキルと同様の様式で置換されたアルカンジイルを意味する。本発明化合物はまた、1または2個の水素原子を有するいずれかの非芳香族アミンが、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニルおよび他の同様の従来のカルバメート形成保護基などの式R*OC(O)−のアミン保護基によって保護される化合物を含む。用語「置換アルキル」は、特に、システインに基づくジペプチドおよびより高次のペプチド(すなわち、ここで、「置換アルキル」は、システインのイオウ原子を介して分子のスルホニルエチルホスホロジアミデート部分に結合する)およびそのエステル、アミドおよびエステル/アミドを除外する。「同化された」は、アミドまたはスルホナミドへのアミンの変換、エステルまたはアミドへのカルボキシ基の変換、エステルへのヒドロキシの変換、および1つまたはそれ以上の水素原子が、必要に応じて置換されたアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルまたはヘテロアラルキル基によって置換されるものへの窒素上に1つまたはそれ以上の水素原子を有するアミドまたはスルホナミドの変換などのもう1つの典型的により複雑な置換基への反応性置換基の変換を意味する。「保護された」は、有機合成におけるその従来の意味、すなわち、上述のカルバメートとしてのアミンの保護などの実行されることが求められた反応の条件下で非反応性である置換基への反応性置換基の一時的変換という意味を有する。
【0016】
「ヘテロアルキル」は、3−オキサペンチルなどの直鎖基;2−テトラヒドロフラニル、2−ピロリジニル、3−ピペリジニル、2−ピペラジニル、4−メチル−1−ピペラジニル、4−ジヒドロピラニルおよび3−モルホリニルなどの5または6個の環原子を含む単環式環;およびテトラヒドロフラン−2−イルメチルおよびピペリジン−3−イルエチルなどの基を含む、1〜3個の炭素原子がO、SまたはNR(ここで、Rは、ハロゲンまたはヒドロキシで必要に応じて置換されたHまたはC1−3アルキルである)で置換されるアルキルを意味する。「ヘテロアルカンジイル」は、第2の水素原子を除去することによって、3−オキサペンタン−1,5−ジイルなどのヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味する。ヘテロアルキルおよびヘテロアルカンジイルは、環窒素が酸化されてN−オキシドを形成する基も含む。「シクロアミノ」基は、それが一部を形成し、必要に応じて、O、SおよびNR(ここで、Rは、Hまたは必要に応じてハロゲン、ヒドロキシまたは1−または2−フェニル基で置換されるC1−3アルキルである)から選ばれるさらなるヘテロ原子を含む分子の残部に、それよって基が結合する窒素環原子を含む5〜7個の環原子の環式ヘテロアルキルである。4−メチル−1−ピペラジニル、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル、4−(ジフェニルメチル)−1−ピペラジニルおよび4−モルホリニルが、シクロアミノ基の例である。本発明化合物はまた、存在するいずれかの−NR2基がシクロアミノ基で置換される化合物を含む。
【0017】
「置換ヘテロアルキル」および「置換ヘテロアルカンジイル」は、上述の置換アルキルと同様の様式で置換されるヘテロアルキルおよびヘテロアルカンジイルを意味する。
「アリール」は、炭素原子から1つの水素原子を除去することによって、6〜14個の環炭素原子を含む芳香族炭化水素から誘導される一価の基を意味し、単環式(たとえば、フェニル)、縮合二環式などの縮合多環式(たとえば、ナフチル)、または連結二環式などの連結多環式(たとえば、ビフェニルイル)が含まれる。「アレンジイル」は、1,4−ベンゼンジイル、1,5−ナフタレンジイルおよびビフェニル−4,4'−ジイルなどの、炭素原子から第2の水素原子を除去することによって、アリールから誘導される二価の基を意味する。好ましいアリールはフェニルであり、好ましいアレンジイルはベンゼンジイル(いずれかの異性体)である。
【0018】
「置換アリール」は、ハロ、−CN、−NO2、−OR、必要に応じてハロ置換されるC1−3アルキル、必要に応じてハロ置換されるC1−3アルキルオキシ、−SR、−COR、−OC(O)R、−C(O)OR、−NR2、−NR3X、−PR2、−PR3X、−SO2OR、−OSO2R、−SO2NR2、−NRSO2R、−CONR2、−NRCORおよび−NRC(O)OR(ここで、各Rは、水素、必要に応じてR'置換されるアルキル、必要に応じてR'置換されるヘテロアルキル、必要に応じてR'置換されるアリール、必要に応じてR'置換されるヘテロアリール、必要に応じてR'置換されるアラルキルまたは必要に応じてR'置換されるヘテロアラルキルであり(水素または必要に応じてR'置換されるアルキルが好ましい)、各R'は独立して、ハロ、−CN、−NO2、−OH、C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシ、−SH、−NH2または−C(O)Oアルキルから選ばれる1〜3個の置換基(ハロ、−CN、−NO2、−OH、C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシ、−SHまたは−NH2が好ましい)であり、または2つのR基は、4または5員の必要に応じてR'置換されるアルカンジイルまたは必要に応じてR'置換されるヘテロアルカンジイルを形成し、Xはハロゲンである)から選ばれる3個以下の置換基で置換されたアリールを意味する。2つの隣接する置換基は、メチレンジオキシまたはエチレンジオキシ基を形成してもよい。置換アリール基は、ハロ、−CN、−NO2、−OH、必要に応じてハロ置換されるC1−3アルキル、必要に応じてハロ置換されるC1−3アルキルオキシ、−SHおよび−NH2から選ばれる3個以下の置換基で置換されたアリール基を含み、たとえば、この様式で置換されたフェニルである。「置換アレンジイル」は、上述のアリールと同様の様式で置換されたアレンジイルを意味する。好ましい置換アリールは、置換フェニルである。
【0019】
「アラルキル」は、ベンジルおよびフェネチルなどのアリールで置換されたアルキルを意味する。好ましいアラルキルは、ベンジルである。「アレンジアルキル」は、ベンゼン−1,4−ジメチルなどのアレンジイルで一緒に置換された2つのアルキルを意味する。好ましいアレンジアルキルは、ベンゼンジメチル(いずれかの異性体)である。
「置換アラルキル」は、アリールおよびアルキルの一方または両方が、上述の置換アリールおよび置換アルキルと同様の様式で置換されるアラルキルを意味し;および「置換アレンジアルキル」は、1つ以上のアレンジイルおよび2つのアルキルが、上述の置換アリールおよび置換アルキルと同様の様式で置換されるアレンジアルキルを意味する。好ましい置換アラルキルは、置換ベンジルであり;および好ましい置換アレンジアルキルは置換ベンゼンジメチルである。
「ハロゲン」または「ハロ」は、F、ClまたはBrを意味する。
【0020】
「ヘテロアリール」は、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダニニル、ピリミジニルなどの5または6個の環原子を含む単環式基およびベンゾチアゾリル、プリニルおよびベンズイミダゾリルなどの二環式基などの1〜4個(好ましくは1〜3個)の環炭素原子が、O、S、NまたはNR(ここで、RはHまたはC1−3アルキルである)、好ましくはO、SまたはNRによって置換されるアリールを意味する。単環式環が好ましい。「ヘテロアレンジイル」は、炭素原子から第2の水素原子を除去することによってヘテロアリールから誘導される二価の基を意味する。ヘテロアリールおよびヘテロアレンジイル基はまた、N−オキシドを形成する基も含む。
【0021】
「置換ヘテロアリール」および「置換ヘテロアレンジイル」は、上述の置換アリールと同様の様式で置換されたヘテロアリールおよびヘテロアレンジイルを意味する。
「ヘテロアラルキル」は、2−チエニルメチルなどのヘテロアリールで置換されたアルキルを意味する。「ヘテロアレンジアルキル」は、2,5−フラニルジエチルなどのヘテロアレンジイルで一緒に置換された2つのアルキルを意味する。
「置換ヘテロアラルキル」および「置換ヘテロアレンジアルキル」は、上述の置換アルキルおよび置換アレンジアルキルと同様の様式で置換されたヘテロアラルキルおよびヘテロアレンジアルキルを意味する。
「塩」は、「本発明化合物」と題するセクションにおいて記述される。
【0022】
「治療有効量」は、ガンを治療するためにヒトに投与する場合に、ガンに対する治療を達成するのに十分な量を意味する。ヒトにおける、ガンを「治療する」またはガンの「治療」は、以下の1つ以上を含む:
(1)ガンの成長の制限/阻止、すなわち、その進行の制限/阻止;
(2)ガンの拡散の縮小/防止、すなわち、転移の縮小/防止;
(3)ガンの緩和、すなわち、ガンの退行の誘発;
(4)ガンの再発の減少/防止;および
(5)ガンの症状の緩和。
【0023】
「併用療法」は、ガンの化学療法の過程中の本発明の第1または第4の態様の化合物および別の抗ガン療法の投与を意味する。このような併用療法は、別の抗ガン療法の投与前、中および/または後に、本発明の第1または第4の態様の化合物の投与を含んでもよい。本発明の第1または第4の態様の化合物の投与は、別の抗ガン療法の投与から数週間まで離して行うことができ、先でも後でもよいが、より一般的には、本発明の第1または第4の態様の化合物の投与は、48時間以内、最も一般的には、24時間以内に別の抗ガン療法(化学療法剤、分子標的療法剤、生物療法剤または放射療法など)の少なくとも1つの態様を伴う。
【0024】
「別の抗ガン療法」は、本発明の第1または第4の態様の化合物による治療ではない抗ガン療法である。このような「別の抗ガン療法」として、化学療法、分子標的療法、生物療法または放射線療法が挙げられる。これらの療法は、単独療法または併用療法で用いられる療法である。
【0025】
化学療法剤として、以下のものが挙げられる:
ブスルファンなどのアルキルスルホネート;チオテパなどのエチレンイミン誘導体;クロラムブシル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロルエタミン、メルファランおよびウラムスチンなどの窒素マスタード;カルムスチン、ロムスチンおよびストレプトゾシンなどのニトロソウレア;ダカルバジン、プロカルバジンおよびテモゾラミドなどのトリアゼン;およびシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチンおよびピコプラチンなどの白金化合物といったようなアルキル化剤:
メトトレキセート、ペルメトレキセド、ラルチトレキセドおよびトリメトレキセートなどの葉酸代謝拮抗薬;クラドリビン、クロロデオキシアデノシン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチンおよびチオグアニンなどのプリン類縁体;アザシチジン、カペシタビン、シタラビン、エダトレキセート、フロクスリジン、フルオロウラシル、ゲムシタビンおよびトロキサシタビンなどのピリミジン類縁体といったような代謝拮抗物質:
ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ミスラマイシン、ミトマイシン、ミトキサントロン、ポルフィロマイシンおよびダウノルビシン(リポソームダウノルビシンを含む)などのアントラサイクリン、ドキソルビシン(リポソームドキソルビシンを含む)、エピルビシン、イダルビシンおよびバルルビシンなどの抗腫瘍抗生物質;L−アスパラギナーゼおよびPEG−L−アスパラギナーゼなどの酵素;タキサンであるパクリタキセルおよびドセタクセルなどの微小管ポリマー安定化剤;ビンカアルカロイドであるビンブラスチン、ビンククリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの有糸分裂インヒビター;カンプトテシンであるイリノテカンおよびトポテカンなどのトポイソメラーゼIインヒビター;およびアムサクリン、エトポシドおよびテニポシドなどのトポイソメラーゼIIインヒビターといったような天然生成物:
フルオキシメステロンおよびテストラクトンなどのアンドロゲン;ビカルタミド、シプロテロン、フルタミドおよびニルタミドなどのアンチアンドロゲン;アミノグルテチミド、アナストロゾール、エキセメスタン、フォルメスタンおよびレトロゾールなどのアロマターゼインヒビター;デキサメタゾンおよびプレドニゾンなどのコルチコステロイド;ジエチルスチルベストロールなどのエストロゲン;フルベストラント、ラロキシフェン、タモキシフェンおよびトレミフィンなどのアンチエストロゲン;ブセレリン、ゴセレリン、リュープリドおよびトリプトレリンなどのLHRHアゴニストおよびアンタゴニスト;酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲステロールなどのプロゲスチン;およびレボチロキシンおよびリオチロニンなどの甲状腺ホルモンといったようなホルモンおよびホルモンアンタゴニスト:および
アルトレタミン、三酸化ヒ素、硝酸ガリウム、ヒドロキシウレア、レバミゾール、ミトタン、オクトレオチド、プロカルバジン、スラミン、タリドミド、レナリドミド、メトキサレンおよびナトリウムポルフィマーなどの光力学的化合物およびボルテゾミブなどのプロテアソームインヒビターといったような種々の作用剤。
【0026】
分子標的療法剤として、以下のものが挙げられる:
遺伝子療法剤;アンチセンス療法剤;エルロチニブ塩酸塩、ゲフィチニブ、イマチニブメシレートおよびセマキサニブなどのチロシンキナーゼインヒビター;およびレチノイドおよびレキシノイド、たとえば、アダパレン、ベキサロテン、トランスレチノイン酸、9−cis−レチノイン酸およびN−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミドなどの遺伝子発現モジュレーターといったような機能療法剤:
アレムツツマブ、ベバシツマブ、セツキシマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、リツキシマブおよびトランスツツマブなどのモノクローナル抗体;ゲムツマブ・オゾガマイシンなどの抗毒素;131I−トシツモマブなどの放射免疫複合体;および
ガンワクチンといったような表現型標的療法剤。
【0027】
生物療法剤として、以下のものが挙げられる:
インターフェロン−α2aおよびインターフェロン−α2bなどのインターフェロン;および
アルデスロイキン、デニロイキン・ジフティトックスおよびオプレルベキンなどのインターロイキン。
【0028】
ガン細胞に対して作用することを目的とするこれらの作用剤に加えて、抗ガン療法として、アミフォスチン、デキスラゾキサンおよびメンサなどの細胞保護剤;パミドロネートおよびゾレドロン酸などのホスホネート;およびエポエチン、ダルベオペチン、フィルグラスチム、PEG−フィルグラスチムおよびサルグラモスチムなどの刺激因子といったような保護または補助薬の使用が挙げられる。
【0029】
本発明の第1の態様の化合物を組み合わせる併用ガン療法投薬計画は、必要に応じて、上述の保護および補助薬を含む、2つ以上の上記の別の抗ガン療法(抗ガン剤)および/または放射線療法の使用、を含むすべての投薬計画を含む;本発明の第1または第2の態様の化合物は、Cancer Chemotherapy and Biotherapy:Principles and Practice、3rd ed.(2001)、Chabner and Longo編、and Handbook of Cancer Chemotherapy、6th ed.(2003)、Skeel編(両者ともLippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、Pennsylvania、U.S.A.)などの書籍に言及される投与計画などの既存の種々のガンの治療のために知られている抗ガン投与計画に加えることができる;抗ガン療法、特に化学療法のための投与計画は、National Cancer Institute(www.cancer.gov)、the American Society for Clinical Oncology(www.asco.org)およびthe National Comprehensive Cancer Network(www.nccn.org)によって維持されるサイトなどのウエブサイトに見出すことができる。
【0030】
白金化合物とタキサンの組み合わせ、たとえば、カルボプラチン/パクリタキセル、カペシタビン/ドセタキセル、「Cooper投与計画」、フルオロウラシル−レバミゾール、フルオロウラシル−ロイコボリン、メトトレキセート−ロイコボリンおよび頭字語ABDIC、ABVD、AC、ADIC、AI、BACOD、BACOP、BVCPP、CABO、CAD、CAE、CAF、CAP、CD、CEC、CF、CHOP、CHOP+リツキシマブ、CIC、CMF、CMFP、CyADIC、CyVADIC、DAC、DVD、FAC、FAC−S、FAM−S、FOLFOX−4、FOLFOX−6、M−BACOD、MACOB−B、MAID、MOPP、MVAC、PCV、T−5、VAC、VAD、VAPA、VAP−Cyclo、VAP−II、VBM、VBMCP、VIP、VPなどによって知られるものなどの多くの併用化学療法投与計画が当業界で公知である。
【0031】
乳ガンのための単独またはさらにカルボ+チンと組み合わせるトランスツツマブ+パクリタキセルなどの療法および他のガンのための多くの他のこのような投与計画;および食道ガンのための「Dublin投与計画」および「Michigan投与計画」ならびに他のガンのための多くの他の投与計画などの化学療法および分子標的療法、生物療法および放射線療法の併用もまた当業界で公知である。
「含む」およびその文法的変異体は、包含という単語であり、限定ではなく、提示した成分、基、ステップなどの存在を指定することを意味するが、他の成分、基、ステップなどの存在または付加を排除するものではない。したがって、「含む」は、「からなる」、「実質的に、からなる」または「のみからなる」という意味ではなく、たとえば、ある化合物を「含む」製剤は、その化合物を含まなければならないが、他の有効成分および/または賦形剤を含むこともできる。
【0032】
本発明化合物
第1の態様において、本発明は、式A、BおよびC:

[式中、各Rは独立して、水素、C1−6アルキルまたは−CH2CH2X(ここで、各Xは独立して、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)(ただし、各ホスホロジアミデート基における少なくとも2つのRは、−CH2CH2Xである)であり;
R1は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアラルキルであり;および
R2は、必要に応じて置換されたアルカンジイル、必要に応じて置換されたヘテロアルカンジイル、必要に応じて置換されたアレンジイル、必要に応じて置換されたアレンジアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアレンジイルまたは必要に応じて置換されたヘテロアレンジアルキルである]
で示される化合物であるスルホニルエチルホスホロジアミデートまたはその塩である。
【0033】
第4の態様において、本発明は、式BBおよびCC:

[式中、各Rは独立して、水素、C1−6アルキルまたは−CH2CH2X(ここで、各Xは独立して、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)(ただし、各ホスホロジアミデート基における少なくとも2つのRは、−CH2CH2Xである)であり;
R1は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアラルキルであり;および
R2は、必要に応じて置換されたアルカンジイル、必要に応じて置換されたヘテロアルカンジイル、必要に応じて置換されたアレンジイル、必要に応じて置換されたアレンジアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアレンジイルまたは必要に応じて置換されたヘテロアレンジアルキルである]
で示される化合物であるチオエチルホスホロジアミデートまたはその塩である。
【0034】
式A、B、C、BBおよびCCで示される化合物の塩(たとえば、医薬的に許容しうる塩)は、本発明に包含され、本願に記載した組成物、方法および使用において有用である(医薬的に許容しうる塩の非排他的リストについては、Bergeら、J.Pharm.Sci.、66:1(1971)を参照されたい)。
【0035】
これらの塩は、存在する酸性プロトンが、無機または有機塩基と反応する能力がある場合に形成されうる塩を包含する。典型的には、適当なカチオンを含む水酸化物、炭酸塩またはアルコキシドなどの過剰のアルカリ試薬で親化合物を処理する。Na、K、Ca2+、Mg2+およびNH4+などのカチオンが、医薬的に許容しうる塩に存在するカチオンの例である。したがって、適当な無機塩基として、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムが挙げられる。第一級、第二級および第三級アミン、天然の置換アミンなどの置換アミンおよびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジンなどの環状アミンなどの有機塩基を用いて塩を製造することもできる。
【0036】
本発明の第1または第4の態様の化合物が、アミノまたはホスフィノ基などの塩基性基を含むならば、酸付加塩として製造してもよい。該化合物の酸付加塩は、親化合物および塩酸、臭化水素酸、硫酸(硫酸塩および銃硫酸塩を提供する)、硝酸、リン酸などおよび酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、サリチル酸、4−トルエンスルホン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、乳酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2.]オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、4,4'−メチレンビス(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ)酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルクロン酸、グルタミン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸といったような過剰の酸から、適当な溶媒中、標準的な方法で製造される。
化合物のいくつかは、内部塩または両性イオンを形成する。
【0037】
式A、BおよびBBで示される本発明の特定の化合物は、1つまたはそれ以上のキラル中心を含むことができる(たとえば、アミノ酸に基づいて)。このような場合、該化合物(およびその塩)のすべての個々の立体異性体ならびに立体異性体のラセミおよび非ラセミ混合物は、本発明に包含される。典型的には、本発明化合物の立体化学は、式A1およびB1で示されるチオールの立体化学によって決定され、このようなチオールの個々の立体異性体の単離方法、たとえば、チオール−アミノ酸(システインなど)の分割は、当業者に公知であり、したがって、ここには記載しない。システインおよびペニシラミンなどのように、多くの場合、個々の立体異性体および立体異性体のラセミ混合物は、市販されており;ジチオスレイトールおよびジチオエリスリトールなどの他のチオールは、個々の立体異性体として存在する。
【0038】
化合物は、本出願において、カンフォスファミドのCAS名に基づいて半系統的に命名される(すなわち、該分子の残部における置換基として命名された分子のチオエチルまたはスルホニルエチルホスホロジアミデート部分で)。したがって、下記の化合物70A、128A、23Bおよび1C:

はそれぞれ、3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニン、α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]トルエン、1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]ナフタレンおよびジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホンと命名される。
【0039】
本発明化合物は、式A、B、C、BBおよびCCで示される化合物を包含し、ここで、1つまたはそれ以上の以下の項目が当てはまる:
1.各Rは、−CH2CH2Xである;
2.各Xは、Cl、Br、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシまたは4−トルエンスルホニルオキシである;特に、ここで、XはClまたはBrである;特に、Clである;
3.化合物は、式Aで示される化合物である;
4.R1は、1つまたはそれ以上の、たとえば、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、アミノ、第四級アンモニウム、ホスフィノおよび第四級ホスホニウムなどの置換されていない化合物よりも化合物の溶解度を増加させる基で置換される;
5.R1は、必要に応じて置換されたアルキルまたは必要に応じて置換されたアリールまたは必要に応じて置換されたアラルキルである;および
6.R1は、カルボキシ基および/またはアミドにおける反応によって形成されたアミドもしくはエステル、またはアミン基において形成されたスルホンアミドなどの必要に応じて保護されたチオール−アミノ酸または合成されたチオール−アミノ酸の残基であり、チオール−アミノ酸の残基であるのが好ましい;
7.R1は、2−メルカプト酢酸または3−メルカプトプロピオン酸またはカルボキシ基における反応によって形成されたアミドまたはエステルなどの合成された酸の残基であり、必要に応じて合成された2−メルカプトアセトアミドの残基であるのが好ましい;
8.化合物は、式Bで示される化合物である;
9.R2は、1つまたはそれ以上の、たとえば、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホ、アミノ、第四級アンモニウム、ホスフィノおよび第四級ホスホニウムなどの置換されていない化合物よりも化合物の溶解度を増加させる基で置換される;または
10.化合物は、式Cで示される化合物である
【0040】
本発明化合物は、下記実施例などの本願明細書および請求の範囲に記載された化合物、特に化合物5A、13A、15A、23A、70A、128A、171A、172Aおよび180Aおよびその塩のそれぞれを包含する。本発明の組成物、使用および方法は、本発明化合物が前文に言及したものの1つである組成物、使用および方法を包含する。
【0041】
本発明化合物の製造
以下のとおり、式A、BおよびCで示されるスルホニルエチルホスホロジアミデートは、式AA、BBおよびCCで示される対応するチオエチルホスホロジアミデートの酸化によって都合よく製造することができる(必要であれば酸化に対してR1またはR2における反応性部分のいずれかを保護して):
【化3】

【0042】
この酸化は、過酸(ペルオキシカルボン酸)、過硫酸塩、過ホウ酸塩、過酸化物、オゾン、ヨードシル試薬、ハロゲンなどの使用などの、チオエーテルからスルホンへの酸化のための当業界で公知の方法のいずれかによって達成することができる。式AAまたはBBで示される化合物が、R1またはR2においてアミン基などの反応性部分を含むならば、酸化前にその反応性部分を保護し、得られる保護された式AまたはBで示される化合物を要すれば脱保護して、最終化合物を得ることができる(保護された化合物もまた本発明化合物に包含される)。このような保護および脱保護は、たとえば、合成例2に見られる。過酸を用いる場合、典型的な手順は、酢酸または酢酸イソプロピルなどの溶媒に式AA、BBまたはCCで示される化合物を低温で溶解すること、次いで、過酸(たとえば、過酢酸)を過剰に添加することを含む。
酸化および任意の脱保護を行った後、後述するように、それ自体は公知の合成方法によって、式Aおよび式Bの化合物を合成することができる。
【0043】
2つの方法の1つによって、式AAおよびBBのチオエチルホスホロジアミデートを都合よく製造することができる:
(1)以下に示す、式A1およびB1で示される対応するチオールと2−X1−エチルホスホロジアミデート(ここで、X1は、Cl、Brまたはメタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシもしくは4−トルエンスルホニルオキシなどのアルカン−またはアレンスルホニルオキシ基である)との反応:

;および
(2)以下に示す、(a)式A2およびB2で示される対応する2−ヒドロキシエチルチオールをまず形成するための、対応する式A1およびB1で示されるチオールと2−X1−エタノール(ここで、X1は、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)との反応、次いで、(b)2−ヒドロキシエチルチオールとホスホロジアミジルハライドまたはアルカン−もしくはアレンスルホネート(X2は、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)との反応:

【0044】
チオールのアルキル化のための当業界で公知の方法のいずれかによって、式AAおよびBBで示されるチオエチルホスホロジアミデートへの式A1およびB1で示されるチオールの直接変換を行うことができる。典型的な手順は、水、アルコール、ジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフランなどの極性溶媒に、式A1またはB1で示されるチオールを溶解し、次いで、水酸化物、アルコキシド、フッ化物もしくは第三級アミンまたはアミド塩基などの塩基で処理して、チオレートアニオンを形成し、次いで、ホスホロジアミデートを加えることを含む。2−X1−エチルホスホロジアミデートの脱離基X1のチオレート置換により、式AAおよびBBで示される化合物が得られる。
【0045】
別法として、前記パラグラフの条件下、式A1およびB1で示されるチオールを、必要に応じてハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシで2−置換されたエタノール、たとえば、2−クロロエタノールで処理して、式A2およびB2で示される2−ヒドロキシエチルチオール化合物を得、次いで、典型的には、アルコキシドまたは第三級アミンなどの塩基の存在下、テトラヒドロフラン、トルエンまたはジクロロメタンなどの非プロトン性溶媒中で、式A2およびB2で示される化合物をホスホロジアミジルハライドまたはアルカン−もしくはアレンスルホネートと反応させることによって式AAおよびBBで示される化合物に変換する。
必要に応じて脱保護した後、後述するように、それ自体は公知の合成方法によって、式AAおよび式BBで示される化合物を合成することができる。
【0046】
以下に示すとおり、アルコキシドなどの塩基の存在下、非プロトン性溶媒中で、2,2'−チオジエタノールを半化学量論的量のホスホロジアミジルハライドまたはアルカン−もしくはアレンスルホネートと反応させて、モノホスホロアミデートエステルを得、次いで、アルコキシドなどの塩基の存在下、非プロトン性溶媒中で、そのエステルを過剰のホスホロジアミジルハライドまたはアルカン−もしくはアレンスルホネートと再度反応させて、ビスホスホロアミデートを得る、2ステップ合成によって、式CCで示される化合物を都合よく製造する:

【0047】
医薬組成物および投与
本発明の第2および第5の態様は、本発明の第1または第4の態様の化合物および必要に応じて医薬的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物である。
本発明の第1または第4の態様の化合物は、治療される患者および患者の身体状態の性質に適するいずれかの経路によって投与することができる。投与経路として、静脈内、腹腔内、筋肉内および皮下注射などの注射による投与および局所適用、点鼻スプレー、座薬などによる経粘膜または経皮デリバリーによる投与が挙げられるが、経口投与してもよい。製剤は、必要に応じて、リポソーム製剤、乳剤、薬物が粘膜を通過して投与されるように設計された製剤または経皮製剤であってよい。これらの投与方法のそれぞれに適した製剤は、たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、20th ed.、A.Gennaro、ed.、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、Pennsylvania、U.S.Aに見出すことができる。典型的な製剤は、経口または静脈内注入用の液剤のいずれかである。典型的な投与剤形は、経口投与用の錠剤またはカプセル剤、静脈内注入用の液剤および静脈内注入用の液剤とするための凍結乾燥散剤である。
【0048】
意図する投与モードに応じて、医薬組成物は、固体、半固体または液体投与剤形であってよく、正確な用量の単回投与に適した単位投与剤形であるのが好ましい。有効量の有効成分に加えて、該組成物は、医薬的に用いることができる調製物への活性化合物の加工を促進する補助剤などの適当な医薬的に許容しうる賦形剤を含んでもよい。「医薬的に許容しうる賦形剤」は、有効成分の生物活性の有効性を妨害せず、投与される患者にとって毒性でない賦形剤または賦形剤の混合物を意味する。
【0049】
固体組成物には、従来の賦形剤として、たとえば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。液体の薬理学的に投与可能な組成物は、たとえば、溶液剤または懸濁液剤を形成するための水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの賦形剤に、本明細書に記載の活性化合物および任意の医薬的補助剤を溶解、分散することなどによって製造することができる。必要ならば、投与される医薬組成物は、湿潤または乳化剤、酢酸ナトリウム、モノラウリル酸ソルビタン、酢酸ナトリウムトリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンなどのpH緩衝剤などの少量の非毒性の補助的賦形剤を含んでもよい。
【0050】
経口投与には、該組成物は、一般的に、錠剤またはカプセル剤の形状をとり、水性または非水溶液、懸濁液またはシロップであってよい。錠剤およびカプセル剤は、経口投与剤形が好ましい。経口用途用錠剤およびカプセル剤は、一般的に、1種またはそれ以上のラクトースおよびコーンスターチなどの通例使用される賦形剤を含む。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に加えられる。懸濁液剤を用いる場合、有効成分を乳化または懸濁化賦形剤と合わせることができる。必要ならば、香味剤、着色および/または甘味剤を加えることもできる。経口製剤に組み入れるための他の任意の賦形剤として、保存剤、懸濁化剤、増粘剤などが挙げられる。
【0051】
溶液剤もしくは懸濁液剤、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体の形体または乳剤もしくはリポソーム製剤のいずれかとして、注入可能な製剤を都合のよい剤形で製造することができる。滅菌注射製剤は、非毒性の非経口的に許容しうる稀釈剤または溶媒中の滅菌溶液剤または懸濁液剤であってもよい。使用することができる許容しうるビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌不揮発性油、脂肪酸エステルまたはポリオールが、慣例的に溶媒または懸濁媒体として使用される。
【0052】
本発明の医薬組成物は、経口投与用の凍結乾燥散剤として製剤されてもよい。散剤は、水または他の水性媒体を加えて液剤とし、次いで、使用前に適当な稀釈剤で稀釈することができる。液体製剤は一般的に、緩衝等張水性溶液である。適当な稀釈剤の例として、等張生理食塩水、5%デキストロース水溶液および緩衝酢酸ナトリウムもしくはアンモニウム溶液が挙げられる。組成物をさらに良質のものにするかもしくは安定化するため、または組成物の製造を促進するために、医薬的に許容しうる固体または液体賦形剤を加えてもよい。
典型的には、本発明の医薬組成物は、ガンの治療における該医薬組成物の使用を指示するラベルもしくは説明書またはその両方とともに容器にパッケージングされる。
本発明化合物に加えて、医薬組成物はさらに1つまたはそれ以上の他の薬理学的活性剤を含んでもよい。これらの追加の活性剤は、典型的に、ガンの治療に、または本発明化合物によるガンの治療の増強において有用である。
【0053】
本発明化合物の使用
後記インビトロおよびインビボ実施例において実証されるように、本発明の第1および第4の態様の化合物は、ヒトのガン細胞系に対する活性を有し、したがって、ヒトのガンの治療のための、ヒトのガンの化学療法として有用であると考えられる。
したがって、本発明の第3および第6の態様は、治療有効量の本発明の第1または第4の態様の化合物または本発明の第2または第5の態様の医薬組成物を投与することによるヒトにおけるガンの治療方法;およびヒトにおけるガンの治療用の医薬の製造における本発明の第1および第4の態様の化合物の使用を包含する。必要に応じて、該方法はさらに、治療されるガンに対して慣例の治療法などの別の抗ガン療法でヒトを治療することを含む。
【0054】
本発明方法によって特に治療可能なガンは、アポトーシスの誘導因子に対する感受性を有するガンであり、さらに詳しくは、1つまたはそれ以上のグルタチオン S−トランスフェラーゼイソ酵素を発現もしくは特に過剰発現するガンである。他の抗ガン化合物または併用ガン化学療法投与計画で治療した場合に、1つまたはそれ以上のグルタチオン S−トランスフェラーゼイソ酵素を発現もしくは特に過剰発現するガンが、本発明方法によって特に治療可能である。このようなガンとして、脳、乳房、膀胱、頸部、結腸および直腸、食道、頭部および首部、腎臓、肺、肝臓、卵巣、膵臓、前立腺および胃のガン;ALL、AML、AMML、CLL、CML、CMMLおよび有毛細胞白血病などの白血病; ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫;中皮腫、多発性骨髄腫;骨および軟部組織の肉腫が挙げられる。本発明方法によって特に治療可能なガンとして、乳房、卵巣、結腸直腸および非小細胞肺ガンが挙げられる。
【0055】
ヒトに投与する(単独で、または、より普通には本発明の第2または第5の態様の組成物のいずれかで)本発明の第1または第4の態様の化合物の量は、単独で用いる場合または別の抗ガン療法と併用して用いる場合(もし本発明の第1または第4の態様の化合物を、別の抗ガン療法と併用して投与するならば)の治療有効量であるべきである;および同様に、哺乳動物に投与する別の抗ガン療法の量は(もし本発明の第1または第4の態様の化合物を、別の抗ガン療法と併用して投与するならば)、本発明の第1または第4の態様の化合物と併用して用いる場合の治療有効量であるべきである。しかし、本発明の第1または第4の態様いずれかの化合物の治療有効量およびガン化学療法と併用して投与する場合の別の抗ガン療法の治療有効量は、それぞれ、単独でヒトにデリバリーされる場合の治療有効量よりも少なくてよい。しかし、ガン療法においては、療法の最大耐用量で用い、使用する療法の通例の毒性または別の療法による1つの療法の毒性の増強という理由がある場合にのみ減量して用いることが通例である。カンフォスファミドが、たとえばいくつかの通例の化学療法剤と交差耐性を欠如しており、臨床的に重篤な毒性が相対的に欠如しており、特に臨床的に重篤な血液学的毒性が欠如しているという理由から、本発明の第1および第4の態様の化合物を本質的にその最大耐用量で投与することおよび別の抗ガン療法を減量することが必要でないことが期待される。
【0056】
したがって、本発明の第1および第4の態様の化合物または本発明の第2および第5の態様の組成物は、治療有効量の選ばれた化合物または組成物を投与することによって治療を必要としているヒトにおいてガンを治療するのに用いられる。本発明化合物の治療有効量は、10−10,000 mg/m2、たとえば、30−3,000 mg/m2または100−1,000 mg/m2である。投薬は、1−35日の間隔で行う;たとえば、約500−1000 mg/m2を1−5週間の間隔、特に、1、2、3または4週間の間隔で、または2、3または4週間毎に繰り返す投与で、一日一回の頻度などの高頻度で数日の間(たとえば、5または7日間)、または2、3または4週間毎に繰り返す投与で、6−72時間の持続注入を行う。適当な投与量および投与頻度は、当業者であれば、その熟練度と本明細書の記載を考慮して容易に決定する。本発明にしたがって本発明化合物を投与する場合には、許容しえない毒性学的影響は予期されない。
【0057】
他の抗ガン療法のための適当な投薬は(本発明の第1または第4の態様の化合物を併用する場合)、前述の文献に記載されているような、その療法のために既に確立された投薬である。このような投薬は、療法によって広範に変化する:たとえば、カペシタビン(2500 mg/m2 経口)は、1日2回で2週間投薬され、1週間中止する;イマチニブメシレート(400または600 mg/日 経口)は、毎日投薬され、リツキシマブは毎週投薬され、パクリタキセル(135−175 mg/m2)およびドセタキセル(60−100 mg/m2)は、毎週〜3週間毎に投薬され、カルボプラチン(4−6 mg/mL/分)は、3または4週間毎に1回投薬され(投薬量は、分割しても数日間にわたって投与されてもよい)、カルムスチンなどのニトロソウレアアルキル化剤は、6週間毎に1回の頻度で投薬される。放射線療法は、毎週(またはその間隔で毎日少しずつに分割して)の頻度で施される。
ガン療法の当業者は、過度の試行錯誤を繰り返すことなく、個人的認識および本願の開示をたよりとして、特定のガンおよび疾患のステージに対する本発明の第1または第4の態様の化合物の治療有効量および別の抗ガン療法の治療有効量を究明することができる。
【0058】
併用療法は、本発明の第1の耐用の化合物と、必要に応じてさらにゲムシタビンまたはドセタキセルまたはパクリタキセルなどのタキサンを併用するカルボプラチンまたはシスプラスチンなどの白金化合物;ゲムシタビン;タキサン;ドキソルビシンまたはリポソームドキソルビシンなどのアントラサイクリン;必要に応じてさらにカペシタビンまたはフルオロウラシル/リューコボリンを併用するオキサリプラチン;およびさらにビノレルビンなどのビンカアルカロイドを併用するゲムシタビンまたはカルボプラチンまたはシスプラチンなどの白金化合物との併用投与を包含する。
【実施例】
【0059】
以下の実施例により、本発明化合物の製造および予測的インビトロおよびインビボ抗ガンアッセイにおけるその活性を説明する。
合成例
本発明化合物は、有機化学の慣例の方法によって製造することができる。たとえば、Larock、「Comprehensive Organic Transformations」、Wiley−VCH、New York、New York、U.S.Aを参照されたい。ある場合には、保護基を導入し、後に除去する。アミノ、ヒドロキシルおよびカルボキシル基のための適当な保護基は、Greeneら 「Protective Groups in Organic Synthesis」、2nd ed.、1991、John Wiley and Sons、New York、New York、U.S.Aに記載されている。本発明化合物は、一般的に、以下の実施例に示すように本願において先に説明した合成反応工程式にしたがって、または当業者に公知の手段によって例示した合成を変更することによって、合成することができる。
【0060】
以下の合成例は、式A、B、C、BBおよびCC中のRが、すべて2−クロロエチルである化合物を示す。Rが、2−クロロエチル以外である化合物は、平行法によって製造することができるのは明らかである:たとえば:
(a)Rが2−ブロモエチルである化合物は、ビス(2−ブロモエチル)アミン、POCl3およびエチレングリコールを反応させて、2−ヒドロキシエチルテトラキス(2−ブロモエチル)ホスホロアミデートを生成し、エステル化して、適当なスルホネートエステルにし、それを用いて式A1およびB1で示されるチオールまたは2,2'−チオジエタノールをアルキル化して、式AA、BBおよびCCで示される化合物を形成することによって製造することができる;
(b)Rが2−(Z−スルホニルオキシ)エチルである化合物は、上記工程(a)においてビス(2−ブロモエチルアミン)の代わりにビス(2−ヒドロキシエチルアミン)を用い、次いで、スルホネートエステルを形成することによって製造することができる;および
(c)R基が同一でない(たとえば、各アミン上の一方のRが2−クロロエチルであり、他方が水素である)化合物は、上記工程(a)において適当なアミン(たとえば、2−クロロエチルアミン)を用いることによって製造することができる。当業者であれば、その熟練度と本明細書の記載を考慮して、Rが2−クロロエチル以外である化合物を容易に製造することができる。
【0061】
式AのR1基または式BのR2基が反応性(たとえば、アミノ、カルボキシ)基を含む場合、これらの基を変化させて他の化合物を生成することができることは明らかである。このR1およびR2基の変化は、チオール段階(式A1のR1基または式B1のR2基の変化)またはチオエチルホスホロジアミデート段階(式AAのR1基または式BBのR2基の変化)またはスルホニルエチルホスホロジアミデート段階(elaboration of the 式AのR1基または式BのR2基の変化)において起こる。すべてのこのような変化は、それ自体公知の合成方法によって行うことができる。当業者であれば、その熟練度と本明細書の記載を考慮して、容易に入手しうる化合物からR1およびR2基を容易に変化させて、すべての本発明化合物を製造することができる。
【0062】
たとえば、化合物13A(その製造は、後記の合成例1に記載する)の変化した類縁体を考慮すると:2−メルカプト酢酸を2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデートなどのホスホロジアミデートでアルキル化して、2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]酢酸などの化合物を製造することができる。これを酸化して、2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]酢酸、化合物14Aにすることができる。この酸を、その酸化の前または後のいずれかに、塩基およびカップリング試薬の存在下でアミンと反応させて、アミドを形成することができる。化合物13Aは、下記のとおり直接製造してもよいが、この方法で製造することができ、化合物18A−24Aは、この方法で製造することができる化合物の例である。カルボキシ基とスルホニル基の間に、より長い鎖を有する同様の化合物、たとえば、化合物29Aおよび化合物53A−59Aなどの誘導体は、3−メルカプトプロピオン酸および類似のチオ酸から出発することによって製造することができる。エステルは、エステル化によって同様に製造することができる。反対に、メルカプトアルキルアミン(一時的にアミンを保護)から出発して、イオウ原子をアルキル化し、酸化し、脱保護して、逆アミドを製造することができる。また、2−メルカプトエタノールから出発し、アルキル化し、酸化して、化合物16Aを製造することができ、ヒドロキシ基をエステル化して逆エステルを得ることができる。139A(化合物154A−178Aなどの化合物を製造することができる)および141A(化合物142A−152Aなどの化合物を製造することができる)などの化合物から同様の変化体を製造することができる。
【0063】
たとえば、化合物70A(その製造は、後記の合成例2に記載する)の変化した類縁体を考慮すると:
(a)3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニンを、カップリング試薬(たとえば、HBTU)の存在下、プロトン性溶媒(たとえば、ジクロロメタン+ジメチルホルムアミド)中で、アミン(典型的には、過剰)と反応させることによって、対応するアラニンアミドに変換することができる。このアラニンアミドを、記載した酸化法のいずれかによって酸化して、式Aで示される化合物にし、次いで、合成例2に記載するように、アミンを保護する。化合物87A−89Aは、この方法で製造することができる化合物の例である。別法として、アラニンアミドをアミンにて脱保護し、有機塩基の存在下、プロトン性溶媒中で、たとえば、アルカン−またはアレンスルホニル塩化物(典型的には、過剰)と反応させて、アラニン窒素にて対応するスルホンアミドを形成し、次いで、酸化して式Aで示される化合物を形成することができる。別法として、アラニンを最初に酸化し、次いで、脱保護し、次いで、スルホン段階で変化させることができる。化合物95A−97Aは、この方法で製造することができる化合物の例である;および/または
(b)3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニンのエステル(たとえば、対応するL−システインエステルから出発して合成することにより製造される)をアラニン窒素でスルホンアミドに変換し、次いで、酸化して、式Aで示される化合物を形成する。化合物79A−81Aは、この方法で製造することができる化合物の例である。エステルを加水分解して、対応する酸を得ることができる。化合物103A−105Aは、この方法で製造することができる化合物の例である。別法として、アラニンエステルを酸化し、脱保護し、次いで、スルホン段階で変化させることができる。
【0064】
式Aで示される化合物
合成例1:N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセトアミド、化合物13Aの製造
N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]アセトアミド
氷浴で冷却した20 mLの無水メタノール中の粉砕した水酸化ナトリウムペレット、2.28 g(57 mmol)の溶液に、N−メチル−2−メルカプトアセトアミド、3 g(28.5 mmol)をゆっくりと加え、次いで、温度を5℃に維持しながら、20 mLの無水トルエンおよび2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート、34.4 mLの0.83 Mトルエン溶液(28.5 mmol)を加える。約30分間撹拌した後、反応混合物は、白色スラリーになる。それを5℃〜室温にて一夜撹拌する。LC−MS分析により、全ての出発物質が消費され、所望の生成物、N−メチル−2−メルカプトアセトアミドが主要生成物として形成されたことが示される。混合物を濾過し、濾液を濃縮する。残渣を酢酸ジイソプロピルおよび食塩水に分配する。水相を酢酸ジイソプロピルでさらに3回抽出し、合わせた有機相を乾燥(MgSO4)し、蒸発して粗生成物を得、溶離溶媒としてヘキサン/酢酸塩および酢酸塩/メタノールを用いるシリカカラムにおけるカラムクロマトグラフィーにより精製して、N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]アセトアミドを明黄色油状物で得る、12 g(88%収率)。1H NMR(DMSO):δ 7.90(bs、1H)4.05(m、2H)、3.71(m、8H)、3.33(m、8H)、3.12(s、2H)、2.87(m、2H)、2.59(d、3H、J = 4.7 Hz)、2.76(m、1H)。質量分析(LC−MS):m/z 496 [C13H26Cl4N3O3PS+H]
【0065】
N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセトアミド
50 mLの丸底フラスコ中で、N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]アセトアミド、7.4 g(15.6 mmol)を、5 mLのジクロロメタンに溶解し、溶液を氷浴で冷却する。過酢酸、7.4 g、32 重量%(31.2 mmol)をゆっくりと加え、0℃〜室温にて一夜撹拌する。LC−MS分析により、出発物質が残留することなく反応が完了したことが示される。溶媒を蒸発し、油状残渣を酢酸イソプロピルおよび重炭酸ナトリウム水溶液に分配する。有機相を重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水でさらに洗浄し、乾燥(MgSO4)し、蒸発して、生成物を油状物で得る。エチルエーテルで処理することにより、白色固体を沈澱させ、濾過により回収し、少量のエチルエーテルで洗浄し、高減圧乾燥して、最終生成物、N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセトアミド、化合物13A、5.37 g(68%)を得る。濾液を後の精製のために残す。生成物のELSD(蒸発光散乱検出)を用いるHPLC分析により、純度99%が示される。1H NMR(CDCl3):δ 6.59(bs、1H)、4.53(m、2H)、3.95(s、2H)、3.65(m、10H)、3.47(m、8H)、2.88(d、3H、J = 4.7 Hz)。31P NMR(CDCl3):δ 17.7(s、1P)。質量分析(LC−MS):m/z 508 [C13H26Cl4N3O5PS+H]
【0066】
合成例2:塩酸塩として、3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニン、化合物70Aの製造
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニン
粉砕した水酸化ナトリウムペレット、1.2 g(29.8 mmol)および30 mLのメタノールを100 mLの丸底フラスコに入れ、水酸化ナトリウムが溶解するまで混合物を撹拌する。次いで、溶液を5℃に冷却し、温度を5℃以下に維持しながら、N−tert−ブトキシカルボニル−L−システイン、3 g(13.6 mmol)および2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート、8.25 mLの1 Mトルエン溶液(8.25 mmol)を加える。反応混合物を窒素下、室温にて2時間撹拌すると、約40分後、溶液は白色スラリーになる。反応混合物のHPLC分析により、96.7%が3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニン、3.3% ジ−N−tert−ブトキシカルボニル−L−シスチンであり、2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデートが残っていないことが示される。1 Mリン酸により混合物のpHを6 7に調節し、混合物を高減圧濃縮して、白色残渣9.22 gを得る。残渣を30 mLの水に溶解し、30 mLおよび15 mLの酢酸イソプロピルで洗浄する。水層を38 mLの酢酸イソプロピルで稀釈し、混合物のpHを1 Mリン酸で5.15−5.20に調節する。層を分離し、酢酸イソプロピル層を残しておく。水層を酢酸イソプロピルで2回以上抽出し、酢酸イソプロピル抽出物を合わせ、水(2×3.5 mL、2×10.5 mL)で洗浄し、高減圧濃縮して、3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニンを透明粘稠油状物で得る、5.60 g(70%収率)。生成物のHPLC分析により、純度97.3%が示される。1H NMR:δ 7.05 7.18(m、1H)、4.04(m、3H)、3.70(m、8H)、3.33(m、8H)、2.92(m、1H)、2.81(m、1H)、2.76(m、1H)。13C NMR:δ 172.3、172.0、155.3、78.2、66.9、63.7、56.1、53.7、48.4、48.4、42.3、32.8、31.9、31.8、28.1、25.4、21.5。31P NMR:δ 17.1(s、1P)。質量分析:m/z 592 [C18H34Cl4N3O6PS−H]、777、439。
【0067】
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニン
50 mLの丸底フラスコ中で、15 mLの酢酸イソプロピルに3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニン、2.5 g(4.21 mmol)を溶解し、溶液を5℃に冷却する。過酢酸、2.22 mL、32重量%(2.5 g、10.5 mmol)を加え、反応混合物を0−5℃にて7.5時間撹拌する。5時間後、反応混合物のHPLC分析により、出発物質が残っていないことが示される。反応混合物を水(2×6.5 mL)、ヒドロ亜硫酸ナトリウム水溶液(6.5 mL、1 M)で洗浄し、次いで、再度水(2×6.5 mL)で洗浄する。酢酸イソプロピル層をデンプン/ヨウ素紙で過酸化物が残っていないことを試験し、高減圧で一夜濃縮して、3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニンを白色粘着性泡状物で得る、1.94 g(74%収率)。生成物のHPLC分析により、純度96.7%が示される。1H NMR:δ 7.29 7.38(m、1H)、4.43(m、1H)、4.29(m、2H)、3.71(m、8H)、3.57(m、4H)、3.34(m、8H)、1.39(s、9H)。13C NMR:δ 171.9、171.2、155.1、78.6、66.9、58.0、54.2、53.6、53.5、48.3、48.3、42.3、28.1、21.6、21.0、21.0。31P NMR:δ 17.4(s、1P)。質量分析:m/z 624−[C18H34Cl4N3O8PS−H]。
【0068】
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニン
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニン、1.82 g(2.91 mmol)を18 mLの酢酸エチルに溶解し、この溶液に、塩化水素、1.75 mLの2 Mジエチルエーテル溶液(3.5 mmol)を加え、得られる混合物を窒素下、室温にて一夜撹拌する。反応混合物のHPLC分析により、反応が不完全(20.8%の生成物)であることが示されたので、さらに0.9当量の塩化水素溶液を加え、反応混合物をさらに4日間撹拌し、スラリーを得る。反応混合物のHPLC分析により、99.7%の生成物および0.3%の出発物質が示される。スラリーを窒素下で濾過し、酢酸エチルで洗浄し、窒素下で3時間乾燥して、3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニン、化合物70Aを塩酸塩としてオフホワイト固体で得る、0.90 g(55%収率)。生成物のHPLC分析により、純度99.7%が示される。1H NMR:δ 8.50 9.10(bs、3H)、4.43(m、1H)、4.32(m、2H)、3.93 3.97(m、1H)、3.70 3.80(m、11H)、3.34(m、8H)。13C NMR:δ 168.2、58.0、57.9、53.8、53.7、53.0、48.3、48.3、47.1、42.3。31P NMR:δ 17.5(s、1P)。質量分析:m/z 526 [C13H26Cl4N3O6PS+H]
【0069】
合成例3:α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]トルエン、化合物128Aの製造
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]トルエン
水酸化ナトリウム、6.4 g(161 mmol)を窒素下、室温にて100 mLのメタノールに溶解し、α−トルエンチオール、9.52 mL(10 g、80.5 mmol)を加える。得られる混合物を5分間撹拌し、撹拌しながら2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート、80.5 mLの1 Mトルエン溶液(80.5 mmol)を加える。添加から1分以内に沈澱が形成し、撹拌を継続する。2時間後の反応の分析により、反応がほとんど完了したことが示され、室温にて一夜撹拌を継続する。次の分析により、反応の完了が示され、撹拌を停止し、反応混合物を静置し、次いで、沈澱した4−ブロモベンゼンスルホン酸ナトリウムを濾去する。濾液を蒸発してメタノールを除去し、残渣を250 mLの酢酸イソプロピルに溶解する。酢酸イソプロピル溶液を水酸化ナトリウム水溶液(100 mL、1 M)、水(100 mL)および食塩水(100 mL)で洗浄し、次いで、乾燥(無水硫酸ナトリウム)し、濾過する。酢酸イソプロピルを減圧蒸発により除去して、油状物を得、これを40℃にて一夜減圧乾燥して、40.4 gのα−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]トルエンを、残留トルエンを含んでいるオレンジ油状物で得る。生成物のHPLC分析により、純度96.8%が示される。1H NMR:δ 7.16 7.33(m、5H)、4.04−4.06(m、2H)、3.74(s、2H)、3.60 3.65(m、8H)、3.36 3.43(m、8H)、2.69(t、2H)。
【0070】
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]トルエン
100 mLの丸底フラスコ中で、α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]トルエン、9.2 g(18.7 mmol)を20 mLの濃酢酸に溶解し、溶液を5℃に冷却する。過酢酸、7.9 mL、32重量%(8.9 g、37.5 mmol)を20分間にわたって滴下する。反応混合物を室温に温め、16時間撹拌し、次いで、回転蒸発機で減圧濃縮して、を黄色油状物で得る。油状物を100 mLのジクロロメタンに溶解し、300 mLのヘキサンを加えて、乳白色溶液を得、これを18時間静置する。溶液を減圧濾過し、白色固体残渣をヘキサン(3×50 mL)で洗浄し、18時間高減圧乾燥して、α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]トルエンを白色固体で得る、8.2 g(15.5 mmol、83%収率)。生成物のHPLC分析により、純度96.4%が示される。1H NMR:δ 7.40−7.42(m、5H)、4.54(s、2H)、4.24−4.29(q、2H)、3.67 3.73(m、8H)、3.51(t、2H)、3.29 3.34(m、8H)。13C NMR:δ 131.9、129.2、128.8、59.6、58.9、49.0、43.0、40.8、39.6。31P NMR:δ 17.3(s、1P)。質量分析:m/z 529 [C17H27Cl4N2O4PS+H]
【0071】
合成例4:N−{2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセチル}−L−フェニルアラニン、化合物15Aの製造
2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]酢酸
2−メルカプト酢酸メチル、2.6 mL(28.5 mmol)を10 mLの無水メタノールに溶解し、水酸化ナトリウム、2.24 mLの25 M溶液(56 mmol)および10 mLのメタノールを加え、次いで、2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート、26 mLの1 Mトルエン溶液(26 mmol)を撹拌しながら加え、さらに、20 mLのメタノールを加える。白色沈澱がただちに形成し、撹拌を容易にするためにさらに30 mLのメタノールを加えて一夜撹拌する。固体を濾過し、濾液にさらに2 mLの水酸化ナトリウム溶液を加え、2時間撹拌する。塩基性溶液を酢酸エチルで洗浄し、次いで、溶液が濁るまで塩酸を加える。この溶液を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた酢酸エチル抽出物を水で逆洗し、塩酸、水および食塩水で希釈し、次いで、乾燥(硫酸ナトリウム)し、濃縮して、 7.31 gの2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]酢酸を油状物で得、静置して固化する。1H NMRで同定を行った。
【0072】
N−{2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]アセチル}−L−フェニルアラニン
L−フェニルアラニンtert−ブチルエステル塩酸塩、1.2 mg(4.5 mmol)を酢酸エチルおよび重炭酸ナトリウム水溶液に分配し、水および食塩水で洗浄し、次いで、乾燥する。これを2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]酢酸、1.76 g(3.8 mmol)に加え、次いで、1.4 mLのジイソプロピルエチルアミン(8.0 mmol)およびHBTU、1.46 g(3.85 mmol)を加える。混合物を室温にて数時間撹拌する。混合物を濾過し、1 M水酸化ナトリウム、銃硫酸カリウムおよび食塩水で洗浄し、次いで、25%トリフルオロ酢酸/ジクロロメタンで処理して、tert−ブチルエステルを加水分解する。次いで、混合物を濃縮して、N−{2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]アセチル}−L−フェニルアラニンを得る。
【0073】
N−{2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセチル}−L−フェニルアラニン
上記製造したN−{2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]アセチル}−L−フェニルアラニンを20 mLの酢酸エチルに溶解し、合成例1の手順および3 mLの32%過酢酸を用いて酸化する。酢酸エチル溶液をヒドロ亜硫酸ナトリウム、水および食塩水で洗浄した後、乾燥し、濃縮し、クロマトグラフィー処理し、画分を合わせ、エタノールを加えて撹拌し、凍結乾燥して、N−{2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセチル}−L−フェニルアラニンを白色固体で得る、1.5 g(62%収率)。純度を確認する。
【0074】
合成例5:α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−4−[(エトキシカルボニルメチル)アミノカルボニル]トルエン、化合物172Aの製造
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−4−カルボニルトルエン
Org.Syn.Coll.Vol.3、363頁(エタノール中でのチオウレアとの反応、次いで、水酸化ナトリウム水溶液によるエステルの加水分解)の手順を用いて、4−(チオメチル)安息香酸を4−(ブロモメチル)安息香酸メチルから製造する。4−(チオメチル)安息香酸、2 gを10 mLのメタノール中の2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート、15.8 mL、0.83 Mおよび6.25 mLの4 M水酸化ナトリウムメタノール溶液でアルキル化する。濾過および濃縮して得られる生成物は、淡黄色油状物であり、これを飽和重炭酸ナトリウム水溶液に溶解し、100 mLの酢酸イソプロピルで2回洗浄する。水性抽出物を合わせ、硫酸でpH〜1に酸性化し、100 mLの酢酸イソプロピルで2回逆抽出する。酢酸イソプロピル層を合わせ、乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、減圧濃縮して、α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−4−カルボニルトルエンを淡黄色油状物で得る、5.4 g。生成物の同定を、LC−MSで行う。
【0075】
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−4−[(エトキシカルボニルメチル)アミノカルボニル]トルエン
10 mLのジクロロメタン中のα−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−4−カルボニルトルエン、411 mgに、400 μLのジイソプロピルエチルアミンおよびグリシンエチルエステル、212 mgを加える。溶液を0℃に冷却し、2 mLのジメチルホルムアミド中のHBTU、317 mgを加えた後、混合物を室温まで温める。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、次いで、1 M塩酸で3回、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で5回および食塩水で1回洗浄する。有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、溶媒を減圧除去して、α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−4−[(エトキシカルボニルメチル)アミノカルボニル]トルエンを透明油状物で得る、411 mg。生成物の同定を、LC−MSで行う。
【0076】
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−4−[(エトキシカルボニルメチル)アミノカルボニル]トルエン
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−4−[(エトキシカルボニルメチル)アミノカルボニル]トルエン、411 mgを6 mLの酢酸イソプロピルに溶解し、前記合成例に記載のとおり、414 μLの32%過酢酸で酸化する。反応完了後、α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−4−[(エトキシカルボニルメチル)アミノカルボニル]トルエンを透明油状物で単離する、449 mg。平行試行からの生成物の同定を、LC−MSで行う。
【0077】
合成例6:N−(メタンスルホニル)−3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニンメチルエステル、化合物79Aの製造。
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−L−アラニンメチルエステル
合成例2で製造した3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−N−tert−ブトキシカルボニル−L−アラニン、5.0 g(8.4−mmol)を35 mLのジクロロメタンに溶解し、5.3 mL(42 mmol)のクロロトリメチルシラン、次いで80 mLのメタノールを0℃にて撹拌しながら加える。撹拌を継続しながら、混合物を室温まで温め、次いで、一夜撹拌する。次いで、溶媒を減圧除去して、明黄色油状物を得る。これを酢酸エチルに溶解し、ジエチルエーテルで沈澱させる。濾過し、濾液を濃縮して、2画分の3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−L−アラニンメチルエステルを得る、合計4.87 g。純度(96%)決定および同定を、ELSDおよびLC−MS(m/z 508(M+2+H))で行う。
【0078】
N−(メタンスルホニル)−3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−L−アラニンメチルエステル
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−L−アラニンメチルエステル、400 mg(0.8 mmol)を4 mLの無水テトラヒドロフランに溶解し、550 μL(3.2 mmol)のジイソプロピルエチルアミン、次いで、塩化メタンスルホニル、181 mg(1.6 mmol)を加える。反応混合物をアルゴンでパージし、一夜撹拌する。さらに275 μL(1.6 mmol)のジイソプロピルエチルアミン、次いで、トリス(2−アミノエチル)アミン−ポリスチレン樹脂、480 mg(1.6 mmol)を加えた後、混合物を6時間撹拌し、次いで、濾過し、濾液を減圧蒸発乾固して、N−(メタンスルホニル)−3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−L−アラニンメチルエステルを得る、397 mg。純度をELSDで決定し、同定を1Hおよび31P NMRで行う。
【0079】
N−(メタンスルホニル)−3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニンメチルエステル
N−(メタンスルホニル)−3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]−L−アラニンメチルエステル、369 mg(0.63 mmol)を5 mLの酢酸エチルに溶解し、前記合成例に記載のとおり、662 μL 32%過酢酸溶液で酸化する。反応完了後、N−(メタンスルホニル)−3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニンメチルエステル、化合物79Aを透明油状物で単離する、358 mg(87%)。純度決定をELSDで行い、同定をLC−MS(m/z 618(M+2+H))で行う。
【0080】
下記表に示す他の式Aで示される化合物は、同様の方法によって製造することができる。式Aで示される化合物に対する質量分析における最大ピークが、分子中に4個の塩素原子が存在するために、正確な質量(分子を構成する原子の最も通例の同位体に基づいて決定された質量)に対応するピークよりも2大きいことに留意されたい:3つの最大ピークの強度は、M、M+2およびM+4において3:4:2である。
【0081】
下記の式Aで示される化合物を製造した:

【0082】

【0083】

【0084】

【0085】

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】


#は、分子の残りの部分にイオウ原子で結合した、式:

で示されるビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル基を表す。
t−BOCは、tert−ブトキシカルボニル基を表す。
【0099】
これらの式Aで示される化合物のすべてについて、純度についてはHPLCを同定については、NMRおよび質量分析(1H、13Cおよび/または31P)の1つまたはそれ以上を用いて、同定および純度決定を確認するために分析を行ない、良好な純度で予期した生成物であることを確認した。他の式Aで示される化合物を同様な方法で製造することができる。
【0100】
式Bおよび式Bで示される化合物。
合成例7:1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]ナフタレン(化合物23B)の製造
1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]ナフタレン
1,5−ナフタレンジチオール、194 mg(1.009 mmol)を10 mLのメタノールおよび水酸化ナトリウム、2 mLの2 Mメタノール溶液(4 mmol)に溶解し、2−(4−ブロモベンゼンスルホニルオキシ)エチル テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート、1.86 mLの1 Mトルエン溶液(1.86 mmol)を加える。反応混合物を室温にて約30分間撹拌すると、白色沈澱が形成する。混合物を一夜撹拌し、次いで、沈澱を濾過し、濾液を濃縮して固体残渣を得、これを酢酸エチルで抽出し、1 N水酸化ナトリウム水溶液、水および食塩水で洗浄し、次いで、乾燥(硫酸マグネシウム)する。酢酸エチルを減圧除去し、粗1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]ナフタレンをフラッシュクロマトグラフィー(シリカカラム、75% 酢酸エチル/ヘキサン〜100% 酢酸エチルの勾配で溶離)により精製する。最終1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]ナフタレン(化合物23BB)を明黄色油状物で得る、405 mg(42%)。生成物の同定および純度決定をHPLCおよびNMRにより行う。質量分析:m/z 937 [C30H46Cl8N4O4P2S2+H]。
【0101】
1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]ナフタレン
1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ]ナフタレン、324 mg(0.346 mmolを10 mLの酢酸エチルに溶解し、氷浴で0−5℃に冷却する。これに、365 μLの過酢酸(32重量%、1.735 mmol)を加え、混合物を0−5℃にて1時間保持し、次いで、室温まで温めて、一夜静置する。反応混合物を酢酸エチルに溶解し、酢酸エチル層を分離し、水で2回、1 M亜ジチオン酸ナトリウム水溶液で2回、さらに水で2回洗浄する。酢酸エチルを減圧除去し、残渣をジエチルエーテルに懸濁し、30分間超音波処理し、次いで、エーテルを捨て、この手順をもう1回繰り返す。1,5−ジ[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]ナフタレン、化合物23Bを白色固体で単離する、260 mg。生成物の同定および純度決定をHPLCおよびNMRにより行う。質量分析:m/z 1001 [C30H46Cl8N4O8P2S2+4+H+]。
【0102】
下記表に示す他の式BBおよび式Bで示される化合物は、同様の方法によって製造することができる。式BBおよび式Bで示される化合物に対する質量分析における最大ピーク(式Cおよび式CCで示される化合物に対しても同様)が、分子中に8個の塩素原子が存在するために、正確な質量(分子を構成する原子の最も通例の同位体に基づいて決定された質量)に対応するピークよりも4大きいことに留意されたい:4つの最大ピークの強度は、M、M+2、M+4およびM+6において4:9:10:6である。
【0103】
下記の式BBで示される化合物を製造した:

【0104】


ドル記号は、分子の残りの部分にイオウ原子で結合した、式:

で示されるビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]チオ基を表す。
【0105】
これらの式BBで示される化合物のすべてについて、純度についてはHPLCを同定については、NMRおよび質量分析(1H、13Cおよび/または31P)の1つまたはそれ以上を用いて、同定および純度決定を確認するために分析を行ない、良好な純度で予期した生成物であることを確認した。
下記の式Bで示される化合物を製造した:

【0106】


#は、分子の残りの部分にイオウ原子で結合した式:

で示されるビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル基を表す。
【0107】
これらの式Bで示される化合物のすべてについて、純度についてはHPLCを同定については、NMRおよび質量分析(1H、13Cおよび/または31P)の1つまたはそれ以上を用いて、同定および純度決定を確認するために分析を行ない、良好な純度で予期した生成物であることを確認した。
他の式BBおよび式Bで示される化合物も同様にして製造することができる。
【0108】
式CCおよび式Cで示される化合物
合成例8:ジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホン、化合物1Cの製造
N,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロジアミドイルクロリド
ビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩、7.68 g(86 mmol)およびホスホリルトリクロリド、4 mL(43 mmol)を150 mLのトルエンに懸濁した後、トリエチルアミン、12.6 mL(90 mmol)を5分間にわたって加える。反応混合物を窒素下、室温にて18時間撹拌し、次いで、さらなるビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩、7.68 gおよびトリエチルアミン、12.6 mLを加える。得られる混合物を加熱還流し、その温度で8時間保持する。冷却した後、沈澱を濾過し、濾液を減圧濃縮して、揮発物を除去する。粗N,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロジアミドイルクロリドを暗褐色油状物で得る、15.45 g。粗物質を、溶離液として5−10% 酢酸エチル/ジクロロメタンを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、純粋な画分を集め、揮発物を除去し、合計8.33 gのN,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロジアミドイルクロリドを明黄色油状物で得る。同定を1Hおよび31P NMRにより行う。
【0109】
5−ヒドロキシ−3−チアペンチル N,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート
N,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロジアミドイルクロリド、636 mg(1.745 mmol)およびビス(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1 mL(9.67 mmol)を8 mLの無水テトラヒドロフランに溶解し、氷浴で0−5℃に冷却する。カリウムtert−ブトキシド、1.8 mLの1 Mテトラヒドロフラン溶液(1.8 mmol)を10分間にわたって加え、反応混合物をさらに30分間0−5℃に保持する。反応混合物を室温に温め、室温にて18時間撹拌する。次いで、酢酸エチルで稀釈し、酢酸エチル層を分離し、1 M塩酸および食塩水で洗浄し、次いで、乾燥(硫酸マグネシウム)し、酢酸エチルを減圧除去する。粗5−ヒドロキシ−3−チアペンチル N,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデートをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、25% 酢酸エチル/ヘキサンおよび100% 酢酸エチルで溶離)により精製して、無色油状物で得る、335 mg(42.6%収率)。同定をHPLCおよび1Hおよび31P NMRにより行う。
【0110】
ジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルフィド
5−ヒドロキシ−3−チアペンチル N,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロアミデート、174−mg(0.387 mmol)およびN,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロジアミドイルクロリド、363 mg(0.996 mmol)を15 mLの無水テトラヒドロフランに溶解し、氷水浴で0−5℃に冷却する。カリウムtert−ブトキシド、0.4 mLの1 Mテトラヒドロフラン溶液(0.4 mmol)を10−15分間にわたって加え、反応混合物を窒素下、さらに30分間保持する。反応混合物を室温に温め、室温にて43時間撹拌する。さらなるカリウムtert−ブトキシドおよびN,N,N',N'−テトラキス(2−クロロエチル)ホスホロジアミドイルクロリドを次の4日間にわたって加えて、反応を完了させる。4.5日後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、酢酸エチル層を分離し、水および食塩水で洗浄し、層を分離し、次いで、乾燥(硫酸マグネシウム)し、酢酸エチルを減圧除去する。粗ジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルフィド、630 mgをプレパラティブHPLCにより2回精製し、生成物画分を合わせ、凍結乾燥して、ジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルフィド、化合物1CCを無色油状物で得る、56 mg(18%収率)。同定をHPLCおよび1Hおよび31P NMRにより行う。質量分析:779(C20H40Cl8N4O4P2S+4+H+)。
【0111】
ジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホン
前の反応からのジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルフィド、56 mgを10 mLの酢酸エチルに溶解し、氷水浴で0−5℃に冷却する。過酢酸、45 μL(0.214−mmol)を加え、反応混合物を0−5℃にて1時間保持し、次いで、室温に温め、反応を完了するために2時間保持する。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、酢酸エチル層を分離し、水で2回、1 M亜ジチオン酸ナトリウム水溶液で1回および水でさらに2回洗浄する。酢酸エチルを減圧除去して、ジ[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホン、化合物1Cを無色油状物で得る、54 mg(92.6%収率)。同定をHPLCおよび1Hおよび31P NMRにより行う。質量分析:811(C20H40Cl8N4O6P2S+4+H+)。
【0112】
インビトロ実施例
以下の実施例は、インビトロでのヒトガン細胞系に対する本発明のスルホニルエチルホスホロジアミデートエステルの有利な効果を説明する。これらの結果から、これらのアッセイにおいて試験した他の抗ガン剤が、ヒトにおける抗ガン活性を示しているように、ヒトガン化学療法における有効性が予測されると考えられる。
ヒトガン細胞系DLD−1(結腸直腸腺ガン)、LNCap(前立腺ガン)およびOVCAR−3(卵巣ガン)をAmerican Type Culture Collection、Manassas、Virginia、U.S.A.から入手し、HL 60(前骨髄骨髄性白血病)、MX−1(乳ガン)、P388およびP388ADRをNational Cancer Institute、Bethesda、Maryland、U.S.Aから入手した。カルボプラチン、ドキソルビシンおよびメルファランをSigma−Aldrich Chemical Company、St.Louis、Missouri、U.S.Aから入手した。CellTiter−GloアッセイキットをPromega Corporation、Madison、Wisconsin、U.S.A.から入手し、細胞DNAサイトメトリー試薬キットをRoche Diagnostics Corporation、Indianapolis、Indiana、U.S.Aから入手した。ラムダDNAをNew England Biolabs、Beverly、Massachusetts、U.S.A.から入手し、SYBRゴールドをMolecular Probes、Inc.、Eugene、Oregon、U.S.Aから入手した。DNeasy組織キットをQiagen Inc.、Valencia、California、U.S.A.から入手し、AmpliTaqゴールドDNAポリメラーゼおよびPCR試薬をApplied Biosystems、Foster City、California、U.S.Aから入手した。すべての製品を製造者説明書にしたがって用いた。ジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒コントロールを用い、すべてのアッセイをトリプリケートウエルで行った。細胞成長の量は、溶媒コントロールウエルからのシグナルのパーセンテージで表した。
【0113】
インビトロ実施例1:細胞毒性/成長阻害アッセイ
対数期細胞をトリプシン処理し、遠心分離により集め、少量の新鮮な培地に再懸濁し、生存細胞の密度をトリパンブルー染色にしたがって決定する。細胞を新鮮な培地に稀釈し(MX 1は3×103 細胞/mL、DLD−1は3×103 細胞/mLおよびLNCap 細胞は6×103 細胞/mL)、稀釈後、すみやかに試験化合物(濃度0.1−200 μM、50 μLのDMSOに溶解)を加えて最終DMSO濃度0.5%を達成し、次いで、この懸濁液を150 μL/ウエルで96ウエルプレートに加え、数時間インキュベートして、付着細胞の場合には結合させる。細胞をおよそ三倍増まで培養する(MX−1では3日間および4−days for DLD−1およびLNCapでは4日間)。次いで、細胞を遠心分離により集め、100 μLの培養上清をCellTiter Glo試薬と置き換える。室温にて15分間インキュベートした後、ルミノメーターでプレートを読み取る。このアッセイにおいて、多くの式BBで示される化合物および化合物1CCを試験し、活性があることを見出した。多くの化合物が、カンフォスファミドと同程度またはそれ以上に強力であることが分かった。
このアッセイにおいて式Aで示される化合物は、以下の活性を示した:
【0114】

【0115】

【0116】

【0117】

【0118】

【0119】

【0120】

【0121】

【0122】


このアッセイにおいて式Bで示される化合物は、以下の活性を示した:
【0123】


このアッセイにおいて式1Cで示される化合物は、以下の活性を示した:
【0124】

【0125】
インビトロ実施例2:細胞周期分析
採集日に細胞培養が80%集密未満となるように選んだ播種密度で対数期DLD−1細胞を75 mLのフラスコに数時間播き、細胞を付着させる。最終DMSO濃度が0.1%となるように、およそIC75−85で試験化合物(DMSOに溶解)を加え、次いで、さらに1日〜2日間細胞をインキュベートする。インキュベーションに続いて、トリプシン処理により細胞を採集し、75%水性エタノールに固定し、さらなる分析まで20℃にて貯蔵する。細胞周期の状態を反映する細胞DNA含量を決定するために、固定細胞をリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、次いで、37℃にて30分間RNaseで処理する。次いで、蛍光色素ヨウ化プロピジウムで染色し、Becton Dickinson FACSCaliburシステムでFACS分析を行う。カンフォスファミドと同様であり、メルファランとは対照的に、化合物70Aおよび128Aの両方が、このアッセイにおいてG2/M周期阻害を誘発した。他の式Aおよび式Bで示される化合物をこのアッセイにおいて試験した。
【0126】
インビトロ実施例3:DNAダメージアッセイ
ラムダDNA(20 μLのリン酸緩衝生理食塩水中1 μg)を試験化合物(濃度100 μMおよび300 μM、DMSOに溶解)とともに室温にて1日間インキュベートし、次いで、DNeasyキットでDNAを精製する。SYBRゴールドアッセイ(5 μL DNA+200 μL 色素、TE緩衝液で1:10,000稀釈)を用いるプレートアッセイによって定量した後、250 pgの各サンプルをAmpliTaqゴールド試薬ならびにプライマー5'−ccg act ggc acc gct tt−3'および5'−cag gcc acc atc acg cat−3'を用い、95℃、10分;25サイクル(95℃、30秒;60℃、30秒;72℃、3分);72℃、10分;次いで、分析まで4℃にてサンプルを保持というPCRパラメーターで行うPCRによって増幅する。同じSYBRゴールドアッセイによってPCR産物を定量する。カンフォスファミドと同様であり、メルファランとは対照的に、化合物70Aおよび128Aの両方が、このアッセイにおいてわずかなDNAダメージ活性しか示さなかった。他の式Aおよび式Bで示される化合物をこのアッセイにおいて試験したが、多くの化合物が、メルファランなどの作用剤と比べて、低量のDNAダメージしか示さなかった。
【0127】
インビトロ実施例4:交差耐性アッセイ
試験化合物と抗ガン剤との間の交差耐性を、マッチド細胞系ペア、すなわち、標準的ガン細胞系、および致死量以下の濃度の特定の抗ガン剤の存在下での培養によって該抗ガン剤に対して耐性があるようにした誘導細胞系の使用によってアッセイする。本質的に実施例16に記載したように、各細胞系において標準的細胞毒性アッセイを行い、耐性比、標準細胞系のIC50に対する誘導細胞系のIC50の比を計算する。選ばれた抗ガン剤に耐性がある細胞において試験化合物の耐性比が約2またはそれよりも高い場合に、試験化合物が選ばれた抗ガン剤に対して交差耐性があるとみなされる。化合物70Aおよび128Aは、P388マウス白血球細胞系において、ドキソルビシンとは交差耐性が無かった。他の式Aおよび式Bで示される化合物をこのアッセイにおいて試験したが、おおくの化合物もまた交差耐性を示さなかった。
【0128】
インビトロ実施例5:相乗作用アッセイ
試験化合物と抗ガン剤との間の相乗作用を選ばれた細胞系においてアッセイする。本質的に実施例16に記載したように、試験化合物と抗ガン剤の比を固定するかまたは変化させて、相乗作用を示すいずれかの化合物単独と比べての試験化合物を抗ガン剤と併用する場合の細胞毒性の増加について、該細胞系において標準的細胞毒性アッセイを行う。Biosoftの「CalcuSyn」プログラムによるコンビネーション・インデックス(CI)法を用いて、相乗作用を示す1未満、相加作用を示す1およびアンタゴニズを示す1以上ののCI値により、結果を分析することもできる。カンフォスファミドと同様に、化合物128Aは、このアッセイにおいて、OVCAR−3細胞系においてカルボプラスチンと相乗作用があるとみなされた。
【0129】
インビボ実施例
インビボ実施例1:MX−1異種移植片アッセイ、腹腔内投与
6−8週齢(約20 g)の雌性胸腺欠損nu/nuマウス(Harlan、Indianapolis、Indiana、U.S.A.または同種の売り主)に、予めMX−1腫瘍を移植した同種のマウスから採集したMX−1(ヒト乳ガン)腫瘍の20−30 mgの小片を右前脇腹の乳房脂肪体に移植する。腫瘍移植から約7−10日後、腫瘍重量が約50−200 mgになったとき、マウスを処置グループに割り当てる。マウスのグループを、5、9または14日間、腹腔内注射を1日1回行うことによって、100 mg/Kgの化合物5A、13A、15A、23A、70A、128A、171A、172Aおよび180Aならびにビヒクルコントロールで処置する。すべての化合物が、このアッセイにおいてビヒクルと比較して、5%(化合物171A)〜99%(化合物13A)の腫瘍阻害活性があり、大部分の化合物が少なくとも30%の腫瘍成長阻害を引き起こした。化合物13A、70Aおよび128Aを、用量範囲および処置回数についても試験したところ、用量依存的腫瘍阻害を引き起こした。化合物13Aを、5または9日間、25、50または100 mg/Kgで試験したところ、19%(25 mg/Kg、5日間)〜99%(100 mg/Kg、9日間)の腫瘍阻害を引き起こした。化合物70Aを、5または12日間、50、100および150 mg/Kgで試験したところ、16%(50 mg/Kg、5日間)〜95%(150 mg/Kg、12日間)の腫瘍阻害を引き起こした。
【0130】
インビボ実施例2:MX−1異種移植片アッセイ、経口投与
化合物13Aおよび70Aを経口投与して、インビボ実施例1の記載と同様の実験を行う。マウスのグループを、5日間、胃管栄養を1日1回行うことによって、50、100もしくは300 mg/Kgの化合物13Aまたは100、150、200もしくは250 mg/Kgの化合物70Aならびにビヒクルコントロールで処置する。処置開始から13日後に腫瘍成長阻害を測定する。両方の化合物が、このアッセイにおいて活性があり、用量従属性の腫瘍阻害を引き起こした。ビヒクルと比較して、化合物13Aは、63%(50 mg/Kg)〜100%(300 mg/Kg)および化合物70Aは、36%(100 mg/Kg)〜96%(250 mg/Kg)の用量依存的腫瘍阻害を引き起こした。
【0131】
インビボ実施例3:HCT116異種移植片アッセイ、腹腔内投与
6−8週齢(約20 g)の雄性胸腺欠損nu/nuマウスに、予めHCT116腫瘍を移植した同種のマウスから採集したHCT116(ヒト結腸ガン)腫瘍の20−30 mgの小片を右前脇腹に移植する。腫瘍移植から約7−10日後、腫瘍重量が約50−200 mgになったとき、マウスを処置グループに割り当てる。マウスのグループを、11日間、腹腔内注射を1日1回行うことによって、100 mg/Kgの化合物5Aもしくは13Aまたは150 mg/Kgの化合物70Aならびにビヒクルコントロールで処置する。処置開始から13日後に腫瘍成長阻害を測定する。3つの化合物すべてが、このアッセイにおいてビヒクルと比較して、活性があり、化合物5Aが10%、化合物13Aが43%および化合物70Aが26%の腫瘍成長阻害を引き起こした。14日間の組織培養から開始した腫瘍を用い、処置開始から21日後に測定した化合物13Aおよび70Aの同様の実験で同様の結果を得た。
【0132】
インビボ実施例4:MiaPaCa−2異種移植片アッセイ、腹腔内投与
6−8週齢(約20 g)の雄性胸腺欠損nu/nuマウスに、予めMiaPaCa−2腫瘍を移植した同種のマウスから採集したMiaPaCa−2(ヒト膵臓ガン)腫瘍の20−30 mgの小片を右前脇腹に移植する。腫瘍移植から約7−10日後、腫瘍重量が約50−200 mgになったとき、マウスを処置グループに割り当てる。マウスのグループを、14日間、腹腔内注射を1日1回行うことによって、100 mg/Kgの化合物13Aまたは化合物70Aならびにビヒクルコントロールで処置する。処置開始から15日後に腫瘍成長阻害を測定する。両方の化合物が、このアッセイにおいてビヒクルと比較して、活性があり、化合物13Aが78%および化合物70Aが38%の腫瘍成長阻害を引き起こした。
【0133】
インビボ実施例5:MiaPaCa−2異種移植片アッセイ、経口投与
200 mg/Kgの化合物13Aおよび70Aを7日間経口投与する以外はインビボ実施例4と同様の実験を行い、インビボ実施例4と同様の結果を得た。両方の化合物が、このアッセイにおいてビヒクルと比較して、活性があり、化合物13Aが82%および化合物70Aが27%の腫瘍成長阻害を引き起こした。
すべての化合物が試験した用量において安全であった。
【0134】
製剤例および治療例
製剤例1:経口投与用製剤
以下を合わせることによって、経口投与用固形製剤を製造する:
本発明化合物 25.0% w/w
ステアリン酸マグネシウム 0.5% w/w
デンプン 2.0% w/w
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1.0% w/w
微結晶セルロース 71.5% w/w
次いで、混合物を圧縮して錠剤を成型するか、またはたとえば、本発明化合物を100 mg含むように硬ゼラチンカプセルに入れる。必要ならば、被膜剤(たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、色素(たとえば、二酸化チタン)および可塑剤(たとえば、フタル酸ジエチル)の懸濁液を塗布し、溶媒を蒸発して被膜を乾燥することによって、錠剤をコーティングすることができる。
【0135】
製剤例2:静脈内投与用製剤
本発明化合物を、たとえば医薬的に許容しうる塩として、濃度1% w/vのリン酸緩衝液に溶解し、たとえば滅菌濾過により溶液を滅菌し、滅菌容器に密封することによって、たとえば本発明化合物100 mgを含む静脈内投与用製剤を製造する。
別法として、本発明化合物を、こちらもたとえば医薬的に許容しうる塩として、たとえば上述のリン酸緩衝食塩水のリン酸塩緩衝液などの適当な緩衝液に溶解し、溶液を滅菌し、適当な滅菌バイアルに分配し、溶液を凍結乾燥して水を除去し、バイアルを密封して、凍結乾燥製剤を製造する。滅菌水を添加することにより凍結乾燥債剤を戻し、戻した溶液を投与用に0.9%塩化ナトリウム静脈内輸液または5%デキストロース静脈内輸液などの溶液でさらに稀釈する。
【0136】
治療例:本発明化合物による治療
5%デキストロース静脈内輸液で稀釈した本発明化合物を、転移性卵巣ガンを患っている患者に、初期用量100 mg/m2;次いで、250 mg/m2、500 mg/m2、750 mg/m2および1000 mg/m2に増量した濃度で30分間にわたって静脈内投与する。化合物は1週間間隔で投与する。同じ増加用量を2および3週間間隔で同じガンを患っている他の患者に投与する。
【0137】
本発明を特定の具体例および実施例と併せて説明したが、当業者には、当業界の技術および本発明の開示を考慮して、詳細に開示された物質および方法の等価物もまた、本発明に適用しうること、およびそのような等価物が請求の範囲に含まれることを意図するものであることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A、式Bおよび式C:

[式中、各Rは独立して、水素、C1−6アルキルまたは−CH2CH2X(ここで、各Xは独立して、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)(ただし、各ホスホロジアミデート基における少なくとも2つのRは、−CH2CH2Xである)であり;
R1は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアラルキルであり;および
R2は、必要に応じて置換されたアルカンジイル、必要に応じて置換されたヘテロアルカンジイル、必要に応じて置換されたアレンジイル、必要に応じて置換されたアレンジアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアレンジイルまたは必要に応じて置換されたヘテロアレンジアルキルである]
で示される化合物またはその塩。
【請求項2】
各Rが、−CH2CH2Xである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各Xが、Cl、Br、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシまたは4−トルエンスルホニルオキシである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
各Xが、Clである請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
式Aで示される化合物またはその塩である請求項1−4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
R1が、その基で置換されていない化合物よりも化合物の溶解度を増加させる1つまたはそれ以上の基で置換される請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R1が、必要に応じて置換されたアルキルである請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
R1が、必要に応じて保護されたチオール−アミノ酸または合成されたチオール−アミノ酸の残基である請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
R1が、必要に応じて合成された2−メルカプト酢酸または3−メルカプトプロピオン酸、好ましくは、必要に応じて合成された2−メルカプトアセトアミドの残基である請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
R1が、必要に応じて置換されたアラルキルである請求項5または6に記載の化合物。
【請求項11】
R1が、必要に応じて置換されたベンジルである請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニルブタン;
N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセトアミド;
N−{2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセチル}−L−フェニルアラニン;
N−[2−(4−モルホリノ)エチル]−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセトアミド;
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニン;
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]トルエン;
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−4−{[4−(2−テノイル)−1−ピペラジニル]カルボニル}トルエン;
α−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−4−[(エトキシカルボニルメチル)アミノカルボニル]トルエン;および
2−[[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]メチル]チオフェン;
およびその塩から選ばれる請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
N−メチル−2−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]アセトアミドである請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
3−[[2−[[ビス[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ホスフィニル]オキシ]エチル]スルホニル]−L−アラニンまたはその塩である請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
式Bで示される化合物またはその塩である請求項1−4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項16】
R2が、その基で置換されていない化合物よりも化合物の溶解度を増加させる1つまたはそれ以上の基で置換される請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
式Cで示される化合物またはその塩である請求項1−4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項18】
請求項1−17のいずれか1つに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項19】
ガンの治療用医薬組成物の製造における請求項1−17のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項20】
請求項1−17のいずれか1つに記載の化合物または請求項18に記載の医薬組成物をヒトに投与することを含むヒトにおけるガンを治療する方法。
【請求項21】
式A、式Bおよび式C:

[式中、各Rは独立して、水素、C1−6アルキルまたは−CH2CH2X(ここで、各Xは独立して、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)(ただし、各ホスホロジアミデート基における少なくとも2つのRは、−CH2CH2Xである)であり;
R1は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアラルキルであり;および
R2は、必要に応じて置換されたアルカンジイル、必要に応じて置換されたヘテロアルカンジイル、必要に応じて置換されたアレンジイル、必要に応じて置換されたアレンジアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアレンジイルまたは必要に応じて置換されたヘテロアレンジアルキルである]
で示される化合物またはその塩の製造方法であって、
(a)R1またはR2における必要であれば酸化に対して保護されたいずれかの活性部分を有する式AA、式BBまたは式CC:

で示される対応する化合物の酸化;
必要に応じて、次いで、1つまたはそれ以上の以下の項目:
(b)保護された式A、式Bまたは式Cで示される化合物の脱保護;
(c)他の式A、式Bまたは式Cで示される化合物を形成するための、式A、式Bまたは式Cで示される化合物のR基の他のR基への変換;
(d)他の式Aまたは式Bで示される化合物を形成するための、それ自体は公知の合成方法による、式Aで示される化合物のR1基または式Bで示される化合物のR2基の合成;
(e)式A、式Bまたは式Cで示される化合物の塩の形成;
(f)式A、式Bまたは式Cで示される化合物の塩の別の式A、式Bまたは式Cで示される塩への変換;および
(g)式A、式Bまたは式Cで示される化合物の塩の式A、式Bまたは式Cで示される化合物の非塩体への変換;
を含む方法。
【請求項22】
式BBおよび式CC:

[式中、各Rは独立して、水素、C1−6アルキルまたは−CH2CH2X(ここで、各Xは独立して、ハロ、C1−3アルキル、ハロ−C1−3アルキル、C1−3アルキルオキシまたはハロ−C1−3アルキルオキシから選ばれる3個以下の置換基で必要に応じて置換されたCl、Br、C1−6アルカンスルホニルオキシ、ハロ−C1−6アルカンスルホニルオキシまたはベンゼンスルホニルオキシである)(ただし、各ホスホロジアミデート基における少なくとも2つのRは、−CH2CH2Xである)であり;
R1は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアルキル、必要に応じて置換されたアリール、必要に応じて置換されたアラルキル、必要に応じて置換されたヘテロアリールまたは必要に応じて置換されたヘテロアラルキルであり;および
R2は、必要に応じて置換されたアルカンジイル、必要に応じて置換されたヘテロアルカンジイル、必要に応じて置換されたアレンジイル、必要に応じて置換されたアレンジアルキル、必要に応じて置換されたヘテロアレンジイルまたは必要に応じて置換されたヘテロアレンジアルキルである]
で示される化合物またはその塩。
【請求項23】
各Rが、−CH2CH2Xである請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
各Xが、Cl、Br、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシまたは4−トルエンスルホニルオキシである請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
各Xが、Clである請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
式BBで示される化合物またはその塩である請求項22−25のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項27】
式CCで示される化合物またはその塩である請求項22−25のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項28】
請求項22−27のいずれか1つに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項29】
ガンの治療用医薬組成物の製造における請求項22−27のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項30】
請求項22−27のいずれか1つに記載の化合物または請求項28に記載の医薬組成物をヒトに投与することを含むヒトにおけるガンを治療する方法。

【公表番号】特表2008−500392(P2008−500392A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527503(P2007−527503)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017880
【国際公開番号】WO2005/118601
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(593182956)テリック,インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】