説明

スルホンポリマー組成物

スルホンを含有するコポリマーおよびコポリマーネットワーク、ならびにスルホンを含有するコポリマーおよびコポリマーネットワークを含む組成物は、動物の消化管において、リン含有化合物等の標的イオンを結合させるために用いることができる。ある場合において、スルホンを含有するコポリマーおよびコポリマーネットワークは、多アミン単量体および2つ以上のアミン反応基を含む多官能性スルホニル含有単量体から派生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的イオンを結合させるためのポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークに関し、より具体的には、標的イオンを結合させるための薬学的に許容される組成物、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
高リン酸血症は、末期腎不全(ESRD)、副甲状腺機能亢進症、および他のある種の健康上の問題等、腎機能の不良と関連する疾病に伴うことが多い。その状態は、特に長期に渡って存在する場合、カルシウムおよびリン代謝の深刻な異常を引き起こし、関節、肺、および眼における異所性石灰化によって顕在化する可能性がある。
【0003】
血清リン酸塩を低下させるための治療法には、透析、食事によるリン酸塩の摂取制限、および消化管吸収を低下させるための不溶性リン酸塩結合剤の経口投与が含まれる。これらの治療の多くは、様々な望ましくない副作用および/または作用強度や有効性を含む最善ではないリン酸塩結合特性を有する。したがって、良好なリン酸塩結合特性および良好な副作用プロファイルを有する組成物および治療に対する必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、本発明はポリマー、コポリマー、ポリマーネットワーク、コポリマーネットワークおよび/またはそれを含む医薬組成物に関する。ポリマーおよびコポリマーは、それぞれ、架橋して、ポリマーネットワークおよびコポリマーネットワークを形成することができる。組成物は、ポリマーまたはその残基、コポリマーまたはその残基、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを含むことができる。本発明のこの態様を含む、本発明のいくつかの実施形態を以下にさらに詳細に記載する。一般に、これらの実施形態の各々は、様々な、かつ特定の組み合わせにおいて使用することができ、また本明細書に特に記載されない限りは、他の態様および実施形態とともに使用することができる。
【0005】
本明細書に記載される本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよびコポリマーネットワークに加えて、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、水和物、プロドラッグ、多形、包接化合物、ならびにその同位体の変種および混合物を含む、他の形態のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよびコポリマーネットワークが本発明の範囲内である。
【0006】
また、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワーク、およびコポリマーネットワークは、光学中心、キラル中心または二重結合を有してもよく、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよびコポリマーネットワークは、光学的に純粋な形態、ラセミ化合物、ジアステレオマー、エナンチオマー、互変異性体および/またはその混合物を含む、これらのポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよびコポリマーネットワークのすべての異性体型を含む。
【0007】
本発明は、ヒトを含む動物を治療する方法を提供する。当該方法は、一般に、本明細書に記載される、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークまたはそれらを含有する化合物(例えば医薬組成物)を有効量投与するステップを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、コポリマーもしくはその残基および/またはコポリマーネットワーク、またはそれを含有する医薬組成物であるか、実質的にそれから成るか、またはそれを含み、コポリマーは、2つ以上の単量体から派生するか、または2つ以上の単量体の残基を含み、単量体は、多アミン単量体と、2つ以上のアミン反応基を含む多官能性のスルホニル含有単量体とを含む。いくつかの実施形態において、アミン反応基のうちの少なくとも1つは、例えばα,β−不飽和スルホニル基等のビニル基を含む。
【0009】
一実施形態において、本発明は、以下のように式Iによって表される少なくとも1つの単量体および式IIによって表される少なくとも1つの単量体から派生するコポリマーもしくはその残基および/またはコポリマーネットワークであるか、実質的にそれから成るか、またはそれを含み、
【化1】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよび、もう1つののRは、結合して、例えば1〜4個のヘテロ原子、例えば1、2、3または4個のヘテロ原子、例えば1〜4個の窒素原子を含む複素環等の複素環を形成し、該環は1〜10個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子を含み、nおよびmは、独立して0〜2の整数、例えば0、1または2を表し、好ましくはnまたはmのいずれかは1であり、Rは、独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカル、例えばC〜C20ラジカル、例えば、C、C、C、C、C、またはCラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではない。
【0010】
本発明の別の態様は、本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物である。本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、いくつかの治療的応用を有する。例えば、それらは、例えば、有機リン酸塩および/もしくはリン酸塩等のリン含有化合物またはリン含有イオン等の陰イオン等の化合物またはイオンを、胃、小腸および/または大腸等の消化管から除去する際に有用である。いくつかの実施形態において、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワーク、および/またはコポリマーネットワークは、リン酸塩の不均衡による障害(phosphate imbalance disorders)および腎臓病の治療に用いられる。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、ワンポット合成または一段階合成を用いて1つ以上の単量体から形成される本明細書に記載されるポリマーおよび/またはコポリマーと、それから形成されるポリマーネットワーク、コポリマーネットワークおよび/または医薬組成物とを含む。
【0012】
さらに別の態様において、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、塩化物、重炭酸塩、および/またはシュウ酸塩を含有する化合物またはイオン等の他の溶質を除去するために有用である。シュウ酸化合物またはイオンを除去するポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、シュウ酸塩の不均衡による障害(oxalate imbalance disorders)の治療において役立つ。塩素化合物またはイオンを除去するポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、例えば、アシドーシスの治療において有用である。いくつかの実施形態において、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、胆汁酸および関連化合物を除去するために有用である。
【0013】
本発明は、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークのうちのいずれかを含有する組成物をさらに提供し、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは粒子形態であり、該粒子は1つ以上のシェルに包まれる。
【0014】
別の態様において、本発明は医薬組成物を提供する。一実施形態において、医薬組成物は、本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークならびに薬学的に許容される賦形剤を含有する。いくつかの実施形態において、組成物は、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークが水等の液体ビヒクルおよび好適な賦形剤中に分散された液体製剤である。いくつかの実施形態において、本発明は、標的化合物またはイオンを結合させるためのポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク、ならびに1つ以上の好適な医薬賦形剤を含む医薬組成物を提供し、該組成物は、錠剤、サシェ剤、スラリー、食品製剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、オブラート、チューインガムまたはロゼンジの形態である。いくつかの実施形態において、組成物は、ショ糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、フルクトース、ソルビトール、およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される医薬賦形剤を含有する。いくつかの実施形態において、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの標的陰イオンは、有機リン酸塩および/またはリン酸塩である。いくつかの実施形態において、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、錠剤の重量の約50%を上回る。いくつかの実施形態において、錠剤は直径約12mm〜約28mm、高さ約1mm〜約8mmの円柱形であり、アミンポリマーが錠剤の総重量のうちの0.6〜約2.0gmを占める。
【0015】
本発明のある組成物において、賦形剤は、甘味剤、結合剤、滑沢剤、および崩壊剤から構成される群から選択される。任意選択的に、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、平均直径約80μm未満の粒子として存在する。これらの実施形態のいくつかにおいて、甘味剤は、ショ糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、フルクトース、およびソルビトール、ならびにこれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明は、コポリマー、コポリマーネットワーク、またはコポリマーもしくはその残基を含む組成物を提供し、コポリマーは、少なくとも1つの多アミンまたはその残基と、少なくとも1つのビニルスルホニル含有単量体またはその残基とを含む、2つ以上の共単量体から派生する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、高分岐ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、ポリマーおよび/またはコポリマー中の10〜95%のアミン基が二級アミン基を含むポリマーおよび/またはコポリマーを含む。他の実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、0.10〜0.95の分岐度を有し得る。他の実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、1.2を上回る多分散性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは分岐することができ、最大値を有しない対数(M)と対数(η)のプロットによって特徴付けることができ、そこで、Mはポリマーの粘性平均分子量を表し、ηはポリマーの固有粘度を表す。他の実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、ポリマーまたはコポリマーにおける非末端、非アミドアミン基の10%超、かつ90%未満が三級アミンであるポリマーおよび/またはコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、これらの特性のうちのいずれか1つ以上を有するポリマーまたはコポリマーから形成されるポリマーネットワークまたはコポリマーネットワークと、例えば、ポリマーまたはコポリマーがこれらの特性の内のいずれか1つ以上を有する、1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワーク、コポリマーネットワークまたはそれらを含む組成物(例えば、医薬組成物)を、治療を必要とする動物に有効量投与するステップを含む高リン酸血症の治療等の治療方法を提供する。
【0018】
さらに他の実施形態において、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは2つ以上のポリマーまたはコポリマーを含むことができ、ポリマーまたはコポリマーのうちの少なくとも1つは、式IおよびIIに従う単量体から派生し、結合、または架橋して、ポリマーネットワークまたはコポリマーネットワークを形成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、ポリマーネットワークまたはコポリマーネットワークは、本発明に従う2つ以上のポリマーまたはコポリマーの残基および1つ以上の架橋剤の残基を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一態様において、本発明は、高分岐ポリマーもしくはその残基、高分岐コポリマーもしくはその残基、高分岐ポリマーネットワークおよび/もしくは高分岐コポリマーネットワーク、またはそれを含有する医薬組成物であるか、実質的にそれから成るか、またはそれを含む。
【0020】
別の態様において、本発明は、コポリマー、該コポリマーまたはその残基を含むコポリマーネットワーク、コポリマーおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物(例えば、医薬組成物)、ならびに有効量のコポリマーまたはコポリマーネットワークを投与することにより、動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するための方法を提供し、コポリマーは、多アミン単量体と、アミン反応基が、例えば、ビニル基、酸基、エステル基および/またはこれらの組み合わせであり得る2つ以上のアミン反応基を含む多官能性スルホニル含有単量体とから派生するか、またはその残基を含む。アミン反応基は、いずれの好適な反応を介して、例えば、凝縮反応もしくは重縮合反応を介して、またはアルキル化反応を介して、多アミンと反応し得る。いくつかの実施形態において、反応は、アルキル化反応と凝縮反応の組み合わせ等、異なる反応の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、反応(単数または複数)は、例えば、溶媒の選択、温度、反応物の濃度、保護基を用いた保護、pHおよび/または他の任意の好適な方法を含む、任意の好適な手段によって制御することができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、多官能性スルホニル含有単量体は、ビニルスルホニル含有単量体であり、
【化2】

から構成される群から選択され得、式中、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルまたはアリールラジカルである。
【0022】
一態様において、本発明は、コポリマー、該コポリマーまたはその残基を含むコポリマーネットワーク、コポリマーおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物(例えば、医薬組成物)、ならびに有効量のコポリマーまたはコポリマーネットワークを投与することにより、動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するための方法を提供し、コポリマーは以下の式IおよびIIによって表される共単量体から派生し、
【化3】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは、結合して、例えば1〜4個のヘテロ原子、例えば1、2、3または4個のヘテロ原子、例えば1〜4個の窒素原子を含む複素環等の複素環を形成し、該環は1〜10個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子を含み、nおよびmは、独立して0、1または2等の0〜2の整数を表し、好ましくはnまたはmのいずれかは1であり、Rは、独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカル、例えばC〜C20ラジカル、例えば、C、C、C、C、C、またはCラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではない。
【0023】
一態様において、本発明は、コポリマー、該コポリマーまたはその残基を含むコポリマーネットワーク、コポリマーおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物(例えば、医薬組成物)、ならびに有効量のコポリマーまたはコポリマーネットワークを投与することにより、動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するための方法を提供し、コポリマーは、1つ以上の多アミン化合物の残基および1つ以上のビニルスルホニル含有化合物の残基を含む。いくつかの実施形態において、多アミン単量体は、少なくとも1つの二級アミンを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、ポリマーまたはコポリマー中のアミン基の10〜95%、例えば10〜75%、25%〜75%、30%〜60%、例えば20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、または55%が二級アミン基を成すポリマーおよび/またはコポリマーを含む。他の実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、ポリマーまたはコポリマー中における非末端、非アミドアミン基の10%超、かつ90%未満、例えば、15%〜85%、20%〜80%、30%〜70%、例えば35%、40%、45%、50%、55%、60%または65%が三級アミンであるポリマーおよびまたはコポリマーを含む。他の実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは0.10〜0.95の分岐度、例えば0.25〜0.75、0.30〜0.60、例えば0または0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55の分岐度等を有し得、いくつかの実施形態において、分岐度は以下の式に従って算出することができ、
【数1】

式中、
=ポリマー中の一級アミンユニットの数(例えば、
【化4】

ユニット)
=ポリマー中の三級アミンユニットの数(例えば、
【化5】

ユニット)
=ポリマー中の二級アミンユニットの数
(例えば、
【化6】

および
【化7】

ユニット)である。
【0025】
他の実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、1.2を上回る、例えば1.3、1.4、1.5、1.75、2.0、2.5を上回るかまたは3.0をも上回る、例えば1.2〜6、例えば1.5〜5または2〜4の多分散性を有する。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは分岐し得、最大値を有しない対数(M)と対数(η)のプロットによって特徴付けることができ、ここで、Mはポリマーまたはコポリマーの粘性平均分子量を表し、ηはポリマーまたはコポリマーの固有粘度を表す。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよびコポリマーは、以下の方程式が真である:
【数2】


【0026】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよび/またはコポリマーは、ランダムな、可変長分岐を有することができる。例えば、本発明のポリマーまたはコポリマーは、規則的または容易に予測可能または定量可能なパターンの発生もしくは長さには合致せず、その代わりに、例えば、単量体の濃度、反応性、pH、溶媒、温度、電荷‐電荷相互作用、触媒作用、添加の順序、および他の任意の反応パラメータ等、様々な異なる変数によって決定される可能性がある実質的にランダムな分子相互作用に起因する分岐を示す可能性がある。
【0027】
本明細書において使用される場合、特に記載のない限り、「〜から派生する」という用語は、化学反応によって別の物質が生成されるまたは得られること、特に、直接的に反応物から派生することを意味すると理解され、例えば、ポリマーまたはコポリマーは、多アミン化合物と1つ以上のビニルスルホニル含有化合物との反応から派生し得る。また、架橋剤等の連結剤と反応させたポリマーまたはコポリマーは、そのポリマーまたはコポリマーと連結剤から派生するポリマーネットワークまたはコポリマーネットワークをもたらす。
【0028】
一態様において、本発明は、コポリマー、該コポリマーまたはその残基を含むコポリマーネットワーク、コポリマーおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物(例えば、医薬組成物)、ならびに有効量のコポリマーまたはコポリマーネットワークを投与することにより、動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するための方法を提供し、コポリマーは、以下の式IおよびIIによって表される共単量体から派生し、
【化8】

【0029】
式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは、結合して、例えば1〜4個のヘテロ原子、例えば1、2、3または4個のヘテロ原子、例えば1〜4個の窒素原子を含む複素環等の複素環を形成し、また該環は1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子等の1〜10個の炭素原子を含み、nおよびmは、独立して0、1または2等の0〜2の整数を表し、好ましくはnまたはmのいずれかは1であり、Rは、独立して、置換または非置換のアルキルラジカル、例えばC〜C20ラジカル、例えば、C、C、C、C、C、またはCラジカルの分岐または非分岐を表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、そこで、コポリマーは高分岐である。
【0030】
一態様において、本発明は、コポリマー、該コポリマーまたはその残基を含むコポリマーネットワーク、コポリマーおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物(例えば、医薬組成物)、ならびに有効量のコポリマーまたはコポリマーネットワークを投与することにより、動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するための方法を提供し、コポリマーは、以下の式IおよびIIによって表される共単量体から派生し、
【化9】

【0031】
式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは、結合して、例えば1〜4個のヘテロ原子、例えば1、2、3または4個のヘテロ原子、例えば1〜4個の窒素原子を含む複素環等の複素環を形成し、該環は1、2、3、4、5、6、7、8または9個の炭素原子等の1〜10個の炭素原子を含み、nおよびmは、独立して0、1または2等の0〜2の整数を表し、好ましくはnまたはmのいずれかは1であり、Rは、独立して、置換または非置換のアルキルラジカル、例えばC〜C20ラジカル、例えば、C、C、C、C、C、またはCラジカルの分岐または非分岐を表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、そこで、コポリマーは以下の特徴のうちの1つ以上を有する。
0.10〜0.95の分岐度、
コポリマー中の窒素原子の10〜95%は、二級アミン部分にある窒素である、
約1.2を上回る多分散性、
ランダムな可変長分岐、
上記コポリマー中における非末端、非スルホンアミドのアミン基の10%超、かつ90%未満は三級アミンから成る、
分岐している場合、最大値を有しない固有粘度(粘度平均分子量に対して)。
【0032】
いくつかの実施形態において、ポリマーネットワークまたはコポリマーネットワークは、本明細書に記載されるポリマーまたはコポリマーの残基と、1つ以上の架橋剤の残基とを含む。いくつかの実施形態において、架橋剤は、例えばエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンを含む。
いくつかの実施形態において、本発明は、コポリマー、該コポリマーまたはその残基を含むコポリマーネットワーク、コポリマーおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物、ならびに有効量のコポリマーまたはコポリマーネットワークを投与することにより、動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するための方法を提供し、コポリマーは多アミン単量体およびビニルスルホニル含有単量体から派生し、コポリマーは以下の特徴のうちの1つ以上を有する。
0.10〜0.95の分岐度、
コポリマー中の窒素原子の10〜95%は、二級アミン部分にある窒素である、
約1.2を上回る多分散性、
ランダムな可変長分岐、
上記コポリマー中の非末端、非スルホンアミドのアミン基の10%超、かつ90%未満は三級アミンから成る、
分岐している場合、最大値を有しない固有粘度(粘度平均分子量に対して)。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明は、コポリマー、該コポリマーまたはその残基を含むコポリマーネットワーク、コポリマーおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物、ならびに有効量のコポリマーまたはコポリマーネットワークを投与することにより、動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するための方法を提供し、コポリマーは、1つ以上の多アミン化合物の残基および1つ以上のビニルスルホニル含有化合物の残基を含み、コポリマーは以下の特徴のうちの1つ以上を有する。
0.10〜0.95の分岐度、
コポリマー中の窒素原子の10〜95%は、二級アミン部分にある窒素である、
約1.2を上回る多分散性、
ランダムな可変長分岐、
上記コポリマー中における非末端、非スルホンアミドの10%超、かつ90%未満のアミン基は三級アミンから成る、
分岐している場合、最大値を有しない固有粘度(粘度平均分子量に対して)。
【0034】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される多アミン単量体は、少なくとも1つの二級アミンを含む。かかる多アミン単量体の例には、
【化10】

およびその組み合わせを含み、式中、Rは、独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカル、例えばC〜C20ラジカル、例えば、C、C、C、C、C、またはCラジカルを表す。
【0035】
いくつかの実施形態において、多アミン単量体の1つ以上のアミン基または本明細書に記載される式Iに従う化合物は、例えば、tert‐ブチルオキシカルボニル基等の保護基で保護され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよびコポリマーは、1つより多くの多アミンまたはその残基を含み得る。いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよびコポリマーは、例えば、ポリマーまたはコポリマー中の任意の残りのアミン反応基と多アミンを反応させることによって、重合後に、さらなる多アミンと反応させることができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、多アミンは、
【化11】

およびその組み合わせから構成される群から選択することができ、Rは、独立して、例えば、
【化12】

等の化合物およびその組み合わせ等の、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表す。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明に従う多アミンは、2〜20個のアミン基を含み得、少なくとも1つの、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の二級アミン基を含み得る。いくつかの実施形態において、本発明に従う多アミンは、式Iに従う化合物を含む。いくつかの実施形態において、多アミンは、2〜20個の、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19個の末端アミン基を有することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、ポリマーネットワークまたはコポリマーネットワークは、本明細書に記載されるポリマーまたはコポリマーの残基と、1つ以上の架橋剤の残基とを含む。いくつかの実施形態において、架橋剤はエピクロロヒドリンを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明のコポリマーを作製する方法には、反応器中でビニルスルホニル含有単量体等の2つ以上のアミン反応基を含む化合物に、多アミンを添加して混合物を加熱する等、任意の好適な方法を含むことができる。いくつかの実施形態において、ビニルスルホニル含有単量体はジビニルスルホンであり得る。いくつかの実施形態において、25℃を超える温度、例えば、30℃、35℃、37℃、40℃、45℃、50℃またはそれより高温になるまで、混合物を加熱することができる。いくつかの実施形態において、1時間〜数日間、例えば1〜7日間、例えば2〜6日または24、48、72もしくは96時間、混合物を加熱することができる。得られたコポリマーは、沈殿および洗浄、または透析等、任意の好適な方法を用いて精製することができる。コポリマーは、その後、真空下で乾燥するか、または凍結乾燥して、所望のコポリマーを産出することができる。
【0041】
上記のように調製されたコポリマーは、続いて、任意の好適な方法を用いて架橋させることができる。例えば、コポリマーを、例えば水等の好適な溶媒中で、例えばエピクロロヒドリン等の架橋剤と混合して撹拌することができる。いくつかの実施形態において、架橋剤は、1回以上の分注で、例えば1〜10回に分割して、例えば2〜8回または3〜5回に分割して加えることができる。いくつかの実施形態において、溶液を1時間〜5日間、例えば、1、2、3、4または5日間、撹拌および加熱することができる。ゲルが形成される可能性があり、1回以上硬化、破壊、再懸濁および洗浄して、強制空気乾燥機内でまたは凍結乾燥によって乾燥させることができる。いくつかの実施形態において、洗浄には物質のpHの調節を含み得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明は、血中リン酸塩レベルを、それを減少することを必要とする患者において、5〜100%減少させるための方法であり、該方法は、本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワーク、または本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを含む組成物を、患者に有効量投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、本発明は、尿中リンを、それを減少させることを必要とする患者において、5〜100%減少させるための方法であり、該方法は、本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワーク、または本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークを含む組成物を、患者に有効量投与するステップを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明は、高リン酸血症等のリン酸塩の不均衡による障害を治療する方法であり、本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワーク、または本発明の1つ以上のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークを含む組成物を、治療を必要とする患者に有効量投与するステップを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、組成物は、本発明の1つより多くのポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの、例えば2〜20個の、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10個の本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの、混合物である。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明は、多アミン化合物の混合物である多アミン化合物から派生する本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークと、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを含む医薬組成物と、または動物の消化管からリン含有化合物またはリン含有イオン(例えばリン酸塩)等の化合物またはイオンを除去するために、それらを治療有効量使用する方法と、を含む。
【0046】
本発明の他の実施形態には、ポリマーまたはポリマーの重合した骨格上のペンダント基として、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークから形成されるペンダントポリマーが含まれる。かかるペンダントポリマーは、1つ以上の重合可能な基をポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク上の1つ以上のアミン基に加えてペンダント単量体を形成し、続いて該重合可能な基を重合して、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを含むペンダントポリマーを形成することにより形成することができる。かかる添加を図示した例を以下に示す[以下の図において、「AC」と指定されたポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークまたはその残基を表すことを意図したものであり、そのアミン基のうちの1つは、重合可能な基が、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークにどのように添加され得るのかを図示する目的のために表示されていることを理解されたい。]。
【化13】

【0047】
本発明の実施形態に従うポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークとともに使用することができる他の重合可能な基の非限定的な例には、
【化14】

が含まれる。
【0048】
1つ以上の重合可能な基をそれぞれのACに加えることができ、したがって、異なる数の重合可能な基を有する様々なペンダントACを有するペンダント単量体の混合物を有することが可能である。また、このようにして作製されるペンダントポリマーは、修飾、架橋、ネットワークの中に形成されても、または重合後に置換され得る。かかる修飾は、有効性、耐用性を向上するため、または副作用を減少させるため等、いかなる理由によっても行われ得る。
【0049】
ペンダント単量体は、ACの1つ以上のアミン基をアミン反応性ポリマー上の1つ以上のアミン反応基と反応させることによって、アミン反応性ポリマーにACを添加することにより形成することもできる。アミン反応性ポリマーのいくつかの例には、
【化15】

が挙げられる。
【0050】
ACまたはペンダント単量体は、ポリマーを形成するための多官能性単量体としての機能を果たすこともできる。例えば、ペンダント単量体から形成されたACまたはポリマーが架橋される場合、バルク溶液中(すなわち、そのままのアミンおよびそのままの架橋剤を用いて)または分散媒中で架橋反応が行われ得る。バルクプロセスを用いる場合、ともに反応物を溶解し、架橋反応を妨げないように、溶媒が選択される。好適な溶媒には、水、低沸点アルコール(メタノール、エタノール、ブタノール)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン等を含む。
【0051】
他の重合法には、単一重合反応、一連の反応を介した個々の単量体の段階的添加、単量体のブロックの段階的添加、上記の組み合わせ、または、例えば、直接もしくは逆懸濁、濃縮、乳濁、沈殿技術、エアロゾル中またはバルク重合/架橋法を用いた重合、ならびに押出成形および粉砕等の小型化プロセス等、他の任意の重合法を含めることができる。プロセスは、バッチ、半連続的および連続的なプロセスとして実行することができる。分散媒中でのプロセスには、トルエン、ベンゼン、炭化水素、ハロゲン化溶媒、超臨界二酸化炭素等の無極性溶媒から連続相を選択することができる。直接懸濁プロセスには水を使用することができるが、液滴分離相のアミンおよび架橋剤を「塩析」するためには、塩水も有用である。
【0052】
本発明のポリマーおよびコポリマー、ペンダント単量体およびペンダントポリマーは、1つ以上の他の単量体またはオリゴマーまたは他の重合可能な基とともに共重合することができ、架橋することができ、ポリマーの骨格内に架橋剤または他の連結剤または単量体を有するか、ペンダント基として有することができ、あるいは、形成されるかまたは重合され、ポリマーもしくはコポリマーまたはその残基、ペンダント単量体またはその残基、架橋剤またはその残基、または他の連結剤またはその残基を含む、ポリマーネットワークまたは混合もしくはコポリマーネットワークを形成することができる。ネットワークは、直接的、または架橋剤または他の連結剤(単量体もしくはオリゴマーまたはその残基等)等の1つ以上の連結基を含み得る、同じまたは異なる分子の間における複数の接続を含むことができる。
【0053】
単独でまたは組み合わせて使用することのできる共単量体の非限定的な例には、スチレン、置換スチレン、アクリル酸アルキル、置換アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、置換メタクリル酸アルキル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレン、ビニルアセテート、N−ビニルアミド、マレイン酸誘導体、ビニルエーテル、アリル、メタリル単量体、およびこれらの組み合わせを含む。これらの単量体に官能性を持たせたものも用いられ得る。本発明において使用され得る、さらなる具体的な単量体または共単量体には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ブチル(すべての異性体)、2−メタクリル酸ジエチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(すべての異性体)、アクリル酸ブチル(すべての異性体)、2−アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸グリシジル、2−メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、N,N−メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N,N−メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリエチレングリコール、イタコン酸無水物、イタコン酸、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、アクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、N,N−アクリル酸ジメチルアミノエチル、N,N−アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸トリエチレングリコール、メタクリルアミド、N−メタクリルアミド、N,N−ジメタクリルアミド、N−tert−ブチルメタクリルアミド、N−N−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチロールメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−N−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、ビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノスチレン(すべての異性体)、α−メチルビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノα−メチルスチレン(すべての異性体)、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸トリブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アリルアミン、メタリルアミン、アリルアルコール、メチル−ビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、エチレン、ビニルアセテート、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマーおよびコポリマーは架橋剤を用いて架橋され、溶媒中で溶解しない場合があり、せいぜい、溶媒中で膨潤する程度である。膨潤比は、下に記載される「試験方法」の項目の手順に従って測定することができ、典型的には約1〜約20の範囲であり、例えば、2〜10、2.5〜8、3〜6、例えば5未満、6未満、または7未満である。いくつかの実施形態において、ポリマーおよびコポリマーは溶媒中にゲルを形成せず、ある溶媒に可溶性であるかまたは部分的に可溶性である可能性のある、ポリマーまたはコポリマーネットワークをもたらす架橋剤または他の連結剤を含み得る。
【0055】
架橋剤は、典型的には、ハロゲン基、カルボニル基、エポキシ基、エステル基、酸無水物基、酸ハロゲン化物基、イソシアネート基、ビニル基、およびクロロギ酸基から選択される少なくとも2つの官能基を有する化合物である。架橋剤は、本明細書に記載されるポリマーまたはコポリマーの炭素骨格または窒素に結合し得る。
【0056】
本発明のポリマーまたはコポリマーの合成に好適である架橋剤の例には、ジハロアルカン、ハロアルキルオキシラン、スルホン酸アルキルオキシラン、ジ(ハロアルキル)アミン、トリ(ハロアルキル)アミン、ジエポキシド、トリエポキシド、テトラエポキシド、ビス(ハロメチル)ベンゼン、トリ(ハロメチル)ベンゼン、テトラ(ハロメチル)ベンゼン、エピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリンポリ(エピクロロヒドリン)等のエピハロヒドリン、(ヨードメチル)オキシラン、グリシジルトシレート、グリシジル3−ニトロベンゼンスルホン酸、、4−トシルオキシ−1,2−エポキシブタン、ブロモ−1,2−エポキシブタン、1,2−ジブロモエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1−ブロモ−2−クロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、ビス(2−クロロエチル)アミン、トリ(2−クロロエチル)アミン、およびビス(2−クロロエチル)メチルアミン、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、ジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,9,10−ジエポキシデカン、エチレンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタジオールジグリシジルエーテル、1,2エタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、1,3−ジグリシジルグリセリルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン、レソルシノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,3−ビス−(2,3−エポキシプロピルオキシ)−2−(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ)プロパン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、2,2'−ビス(グリシジルオキシ)ジフェニルメタン、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ビス(2',3'−エポキシプロピル)パーフルオロ−n−ブタン、2、6−ジ(オキシラン−2−イルメチル)−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロピロロ[3,4−f]イソインドール−1,3,5,7−テトラオン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、エチル5−ヒドロキシ−6,8‐ジ(オキシラン−2−イルメチル)−4−オキソ−4h−クロメン−2−カルボン酸塩、ビス[4−(2,3−エポキシ−プロピルチオ)フェニル]−スルフィド、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、9,9−ビス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]フッ素、イソシアヌル酸トリエポキシ、グリセロールトリグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、イソシアヌル酸(S,S,S)−トリグリシジルエステル、イソシアヌル酸(R,R,R)−トリグリシジルエステル、イソシアヌル酸トリグリシジル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル、3,7,14−トリス[[3−(エポキシプロポキシ)プロピル]ジメチルシリルオキシ]−1,3,5,7,9,11,14−ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン、4,4'−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、ビス(ハロメチル)ベンゼン、ビス(ハロメチル)ビフェニルおよびビス(ハロメチル)ナフタレン、トルエンジイソシアネート、アクリロイルクロリド、アクリル酸メチル、エチレンビスアクリルアミド、ピロメタリック二無水物(pyrometallic dianhydride)、スクシニルクロリド、コハク酸ジメチル等の1つ以上の多官能性架橋剤を含むが、これに限定されない。架橋剤がハロゲン化アルキル化合物である場合、反応の間に形成された酸を除去するために塩基が用いることができる。無機または有機塩基が好適である。NaOHが好ましい。塩基と架橋剤の比率は、好ましくは約0.5〜約2である。
【0057】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、アミンポリマーまたはポリマーの総重量に基づいて、0.5〜25重量%で、例えば約2〜約15重量%、約2〜約12重量%、約3〜約10重量%、または約3〜約6重量%、例えば2、3、4、5、6重量%で重合反応に導入され得る。必要な架橋剤の量は、ポリマーまたはコポリマー内の分岐の程度に依存し得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、ポリマーおよびコポリマーの重量平均した分子量は、典型的には少なくとも約1000であり得る。例えば、分子量は約1000〜約1,000,000、例えば約2000〜約750,000、約3000〜約500,000、約5000〜約250,000、約10000〜約100,000、例えば15,000〜80,000、20,000〜75,000、25,000〜60,000、30,000〜50,000、または40,000〜45,000であり得る。
【0059】
いくつかの実施形態のポリマーは、重合開始剤を用いて形成することができる。一般に、陽イオン性およびラジカル開始剤を含む任意の開始剤を用いることができる。用いることができる好適な開始剤のいくつかの例には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジイソ吉草酸ニトリル、ジメチルアゾジイソ酪酸塩、2,2´−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチラミジン(isobutyramidine)塩酸塩、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチラミジン(isobutyramidine)、1,1´−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボ−ニトリル)、4,4´−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2´−アゾビス(イソブチラミド(isobutyramide))二水和物、2,2´−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、VAZO67、シアノペンタン酸、ペルオキシピバレート、過酸化ドデシルベンゼン、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、過酸化アセチル、過酸化ジクミル、クミルヒドロペルオキシド、ジメチルビス(ブチルペルオキシ)ヘキサン等のフリーラジカルペルオキシおよびアゾ化合物を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の実施形態に従うポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク内の窒素原子のいずれもを、任意選択的に四級化し、例えばアンモニウムまたは置換アンモニウム基等の対応する正電荷を有する三級窒素基を得ることができる。ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークにある窒素原子のうちの1つ以上のいずれもが四級化され得、かかる四級化が存在する場合は、末端アミンの窒素原子に限定されることもまたはそれを含む必要もない。いくつかの実施形態において、この四級化は、追加のネットワーク形成をもたらし得、また、窒素への架橋、連結、またはアミン反応基の添加に起因する可能性がある。アンモニウム基は、薬学的に許容される対イオンと会合し得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークまたはその残基は、有機イオン、無機イオン、またはその組み合わせであり得る薬学的に許容される対イオンを用いて、部分的または完全に四級化することができる(プロトン化を含む)。いくつかの好適な無機イオンの例には、炭酸ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物またはヨウ化物)炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、水酸化物、硝酸塩、ペル硫酸塩および亜硫酸塩を含む。いくつかの好適な有機イオンの例には、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、クエン酸二水素、クエン酸水素、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、およびコール酸塩が含まれる。好ましいイオンには、塩化物および炭酸塩が挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークまたはその残基は、プロトン化された窒素原子の割合が1〜25%、好ましくは3〜25%、より好ましくは5〜15%となるようにプロトン化することができる。
【0063】
一実施形態において、薬学的に許容されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークもしくはコポリマーネットワークまたはその残基は、プロトン化された形態のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークまたはその残基であり、炭酸陰イオンを含む。一実施形態において、薬学的に許容されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークはプロトン化された形態であり、炭酸陰イオンと重炭酸陰イオンとの混合物を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、化合物またはイオンを結合させるそれらの能力によって特徴付けられる。好ましくは、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは陰イオンを結合させ、より好ましくは、それらは有機リン酸塩、リン酸塩および/またはシュウ酸塩を結合させ、そして最も好ましくは、それらは有機リン酸塩またはリン酸塩を結合させる。例を示すために、陰イオンを結合させるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク、ならびに特に有機リン酸塩またはリン酸塩を結合させるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークが説明されているが、当業者には明白である適切な修正を用いて、他のイオン、化合物および溶質にも等しくこの説明が適用されることを理解されたい。ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、イオンと会合した場合に、イオン(例えば、陰イオン)を結合させることができるが、一般に、(その必要はないが)非共有結合的な様式で、溶液または体内からイオンを除去するために十分な時間ポリマーが使用される体外または体内条件下で、少なくともイオンの一部が結合した状態を保つだけの十分な会合強度で結合させる。標的イオンは、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークが結合するイオンであり得、通常は、そのイオンがポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークに結合することが、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの治療効果をもたらすと考えられるイオンを指し、陰イオンであっても陽イオンであってもよい。本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、1つより多くの標的イオンを有することができる。
【0065】
例えば、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの中には、有機リン酸塩またはリン酸塩結合の特性を示すものがある。リン酸塩結合能は、リン酸塩結合剤が所与の溶液中で結合することができるリン酸イオンの量の尺度である。例えば、リン酸塩結合剤の結合能は、体外で(例えば、水中または生理食塩水溶液中)、または体内で(例えば、リン酸塩の尿中排泄量から)、または生体外で(例えば、実験動物、患者またはボランティアから得られた粥状液等の吸引液を用いて)測定可能である。測定は、リン酸イオンのみを含有する溶液中、または少なくとも、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークへの結合をリン酸イオンと競合する他の溶質を含まない溶液中で、行うことができる。これらの場合において、非干渉性の緩衝液を用いることができる。あるいは、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークへの結合をリン酸イオン(標的溶質)と競合する、他の競合溶質(例えば、他のイオンまたは代謝物)の存在下において測定が行われ得る。
【0066】
ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークのイオン結合能は、「試験方法」に示されるように測定することができる。いくつかの実施形態は、約0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、8.0、10.0、12、14、16、18mmol/gを上回る、または約20mmol/gを上回るリン酸塩結合能を有する。いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークまたはその残基の標的イオンに対する体外でのリン酸塩結合能は、約0.5mmol/gを上回り、好ましくは約2.5mmol/gを上回り、より好ましくは約3mmol/gを上回り、さらにより好ましくは約4mmol/gを上回り、そしてまたさらにより好ましくは6mmol/gを上回る。いくつかの実施形態において、リン酸塩結合能は、約0.2mmol/g〜約20mmol/g、例えば約0.5mmol/g〜約10mmol/g、好ましくは約2.5mmol/g〜約8mmol/g、およびより好ましくは約3mmol/g〜約6mmol/gの範囲であり得る。リン酸塩結合は、後に記載する「試験方法」の項目に記載される技術に従って測定することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークならびに組成物は、減少させることを必要とする患者の尿中リンを5〜100%、例えば10〜75%、25〜65%、または45〜60%減少させることができる。いくつかの実施形態は、10%を上回って、20%を上回って、30%を上回って、40%を上回って、45%を上回って、50%を上回って、または60%を上回って減少させることができる。尿中リンの減少は、後に記載する「試験方法」の項目に詳述される方法に従って測定することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークならびに組成物は、減少させることを必要とする患者の血中リン酸塩を5〜100%、例えば10〜75%、25〜65%、または45〜60%減少させることができる。いくつかの実施形態は、血中リン酸塩レベルを10%を上回って、20%を上回って、30%を上回って、40%を上回って、45%を上回って、50%を上回って、または60%を上回って減少させることができる。
【0069】
架橋されると、本明細書のポリマーまたはコポリマーのいくつかの実施形態、例えば、ポリマーネットワークまたはコポリマーネットワークは、擬似消化媒体または生理学的に許容される媒体等の溶媒中にゲルを形成する
【0070】
本発明の一態様は、ポリマーのコアおよびシェルを含むコア‐シェル組成物である。いくつかの実施形態において、ポリマーのコアは、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを含む。シェル物質は、化学的にコア物質に固定するか、または物理的にコーティングすることができる。前者の場合は、例えば次のような化学的手段により、コア構成要素上にシェルを形成することができる。コアポリマーに固定された活性部位からのリビング重合法を用いて、コアにシェルポリマーの化学的グラフトを行う、界面反応(すなわち、界面縮重合等のコア粒子表面での化学反応)、およびコア粒子合成中に懸濁剤としてブロックコポリマーを使用する。
【0071】
いくつかの実施形態において、界面反応およびブロックポリマーの使用は、化学的方法が用いられる場合に使用される技術である。界面反応経路において、典型的には、通常、コア界面で小分子または高分子を反応させることによってコア粒子の表面が化学的に修飾される。例えば、アミンを含有するイオン結合コア粒子は、エポキシ、イソシアネート、活性化エステル、ハロゲン基などのアミン反応基を含有するポリマーと反応させることにより、コアの周囲に架橋したシェルを形成する。
【0072】
別の実施形態において、カプセルを生成するために、界面重縮合または溶媒コアセルベーションを用いてシェルを最初に調製する。次に、カプセルの内部にコア形成前駆物質を充填し、シェルカプセル内でコアを構築する。
【0073】
いくつかの実施形態において、ブロックコポリマー手法を用いて、逆懸濁または直接懸濁による粒子形成プロセスにおいてコア粒子を形成するために、両親媒性のブロックコポリマーを懸濁剤として用いることができる。油中水型の逆懸濁プロセスを使用する場合、ブロックコポリマーは、連続的油相に溶解する最初のブロックを含み、別の親水性ブロックは、コアポリマーと反応することができる官能基を含む。コア形成前駆物質と共に水相に加え、次に油相に加えると、ブロックコポリマーは油中水界面に局在し、懸濁剤として作用する。親水性ブロックは、コア材料と反応するか、またはコア形成前駆物質と共反応する。粒子を油相から分離した後で、ブロックコポリマーは、コア表面に共有結合的に結合された薄いシェルを形成する。ブロックの化学的性質および長さは、目的の溶質に対するシェルの透過特性を変更するために変えることができる。
【0074】
シェル材料がコア材料に物理的に吸着する場合、溶媒コアセルベーション、流動床スプレーコーター、または多重エマルジョンプロセス等、周知のマイクロカプセル技術を使用することができる。マイクロカプセル化の一方法は、Wurster構成の流動床スプレーコーターである。さらに別の実施形態において、口および食道に存在する間にコア粒子の膨張を遅らせることで、シェル物質は一次的に作用するのみとなり、任意選択的に胃および十二指腸で分解する。その後、高い疎水性と非常に低い水透過性を有する層を作製することにより、コア粒子に水が輸送されるのを妨ぐためにシェルが選択される。
【0075】
一実施形態において、シェル物質は使用環境に存在する間、負電荷を有する。1つの作用機構に限定されるものではないが、陰イオン結合ビーズにコーティングされた負電荷を有するシェル物質は、低い電荷密度を有する小さい無機イオン(リン酸塩等)の結合力を、原子価あるいはサイズのより大きな競合イオンを上回るように強化すると考えられる。とりわけ、クエン酸塩、胆汁酸および脂肪酸等の競合陰イオンは、したがって、おそらくシェルの透過性が限定される結果により、陰イオン結合コアに対する親和性が相対的に低くなり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、シェル物質は、典型的には小腸に見られるpH範囲の負電荷を有するポリマーである。例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ヒドロスルホン酸基、スルファミン酸基、リン酸基、ヒドロリン酸基、ホスホン酸基、ヒドロホスホン酸基、ホスホルアミド基、フェノール基、ボロン酸基、またはこれらの組合せ等のペンダント酸基を有するポリマーを含むが、これに限定されない。ポリマーはプロトン化されていてもまたはプロトン化されていなくてもよく、後者の場合は、酸の陰イオンを、例えば、Na、K、Li、Ca、Mg、およびNH等の薬学的に許容される陽イオンで中和することができる。
【0077】
別の実施形態において、最終的にはポリ陰イオンとして活性化する前駆物質としてポリ陰イオンを投与することができ、例えば、ポリスルホン酸およびカルボン酸の特定の不安定なエステルまたは無水物の形態は、胃の酸性環境において容易に加水分解して活性陰イオンへと変換され得る。
【0078】
シェルポリマーは、ネットワークにおいて直鎖型、分岐型、高分岐型、セグメント型(すなわち、隣接するブロックの配列に整列された骨格ポリマーの少なくとも1つがペンダント酸基を含む)、櫛形、星型、または架橋型であり、完全にまたは部分的に相互浸透するネットワーク(IPN)である。シェルポリマーの組成は、ランダムまたはブロックのいずれかであり、コア物質に共有結合的にまたは物理的に結合される。かかるシェルポリマーの例には、アクリル酸ホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸ホモポリマーまたはコポリマー、およびメタクリル酸塩とメタクリル酸のコポリマーを含むが、これに限定されない。かかるポリマーの例は、メチルメタクリル酸塩とメタクリル酸のコポリマー、およびアクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマー(Eudragitの商標名でRohm GmbH & Co.KGより販売)であり、その例には、Eudragit L100−55およびEudragit L100(メチルメタクリル酸塩−メタクリル酸(1:1)コポリマー、Degussa/Rohm)、Eudragit L30−D55、Eudragit S 100−55およびEudragit FS 30D、Eudragit S 100(メチルメタクリル酸塩−メタクリル酸(2:1)コポリマー)、Eudragit LD−55(エチルメタクリル酸塩−メタクリル酸(1:1)コポリマー)、四級アンモニウム基を含むアクリル酸塩とメタクリル酸塩のコポリマー(Eudragit RLおよびEudragit RSの商標名で販売)、ならびにいずれの官能基も含まない中性エステル分散液(Eudragit NE30−Dの商標名で販売)を含む。
【0079】
さらなるシェルポリマーには、ポリ(スチレンスルホン酸)、Polycarbophil(登録商標)、ポリアクリル酸(複数を含む)、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、HP−50およびHP−55(信越化学工業)の商標名で販売されるフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トリメリト酸酢酸セルロース、酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルエチルセルロース等のセルロース誘導体、およびセルロース誘導体(フィルムコーティング剤に有用なセルロースエーテル等)、酢酸フタル酸ポリビニル(polyvinyl acetate phthalate)、カラギーナン、アルギン酸塩、またはポリ(メタクリル酸)エステル、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、スチレン/マレイン酸ポリマー、イタコン酸/アクリルコポリマー、およびフマル酸/アクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセタート(AEAの商標名で販売(三共株式会社))、メチルビニルエーテル/マレイン酸コポリマーおよびシェラックを含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、シェルポリマーは以下の薬学的に許容されるポリマーの中から選択される。Eudragit L100−55およびEudragit L100(メタクリル酸メチル‐メタクリル酸(1:1)のコポリマー、Degussa/Rohm)、Carbopol 934(ポリアクリル酸、Noveon)、C−A−P NF (フタル酸酢酸セルロース、Eastman)、Eastacryl(メタクリル酸エステル、Eastman)、カラギーナンおよびアルギン酸塩(FMC Biopolymer)、Anycoat−P(フタル酸HPMC、Samsung Fine Chemicals)、またはAqualon(カルボキシメチルセルロース、Hercules)、メチルビニルエーテル/マレイン酸コポリマー(Gantrez)、およびスチレン/マレイン酸(SMA)。
【0081】
シェルは様々な方法を用いてコーティングすることができる。一実施形態において、シェル物質は活性賦形剤として製剤段階に加えられ、例えば、シェル物質は粉末として固体製剤に含めることが可能であり、有機リン酸塩またはリン酸塩結合ポリマーおよび他の賦形剤と物理的に混合され、任意選択的に顆粒化され、圧縮されて錠剤を形成する。したがって、いくつかの実施形態において、シェル物質は、必ずしも薬物製品のコア物質を覆う必要はない。例えば、酸性シェルポリマーは、錠剤、カプセル、ゲル、液剤等、オブラート、押出成形物の形状で処方される陰イオン結合コアポリマーとともに加えられてもよく、また、薬物製品が口、食道、または最終的には作用部位(すなわち消化管)で平衡を保つ間、シェルポリマー自体は溶解し、コアの周囲のシェルコーティングとして均一に分布することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、シェルは、シェルポリマーの薄い層である。該層は、コア粒子表面上のポリ陰イオンの分子層であり得る。コアに対する重量比は、約0.0001%〜約30%であり得、好ましくは約0.01%〜約5%、例えば約0.1%〜約5%を占める。
【0083】
シェルポリマーは、コアの細孔容積に自由に浸透せず、またコア表面から溶出しないような最低分子量を有する。いくつかの実施形態において、シェル酸性ポリマーの分子量(Mw)は約1000g/moleを上回り、例えば約5000g/moleを上回り、そしてさらには約20,000g/moleを上回る。
【0084】
シェル物質の陰イオン電荷密度(一般的な使用環境において)は、0.5mEq/gr〜22mEq/gr、例えば2mEq/gr〜15mEq/grであり得る。剤形の製造の一環として、ポリマー粒子上にシェルを形成するためにコーティングプロセスが用いられる場合、製薬業界の当業者に既知である手順が適用される。一実施形態において、シェルは流動床コーター(Wursterコーター)において形成される。代替の実施形態において、シェルは制御された沈殿またはコアセルベーションによって形成され、その場合、ポリマー粒子をポリマー溶液中に懸濁させ、該ポリマー粒子上にポリマーが沈殿またはコーティングされるように溶媒の特性が変更される。
【0085】
好適なコーティングプロセスには、製薬業界で典型的に使用される手順を含む。典型的には、コーティング方法の選択は、シェル物質の形状(バルク、溶液、乳濁液、懸濁液、融解液)、コア物質の形状および性質(球形ビーズ、不規則な形状等)、ならびに沈殿させるシェルの量を含むが、これらに限定されない多くのパラメータによって決定される。また、コアは1つ以上のシェルでコーティングされてもよく、複数または交互に重なるシェル層を含み得る。
【0086】
本明細書で使用される「リン酸塩の不均衡による障害(phosphate imbalance disorder)」という用語は、体内に存在するリンのレベルが異常な状態を指す。リン酸塩の不均衡による障害の一例には、高リン酸血症が含まれる。本明細書で使用される「高リン酸血症」という用語は、リン元素が上昇したレベルで体内に存在する状態を指す。典型的には、血中リン酸塩レベルが、例えば、血液1デシリットル当たり4.0または4.5mgを超える、例えば約5.0mg/dlを超える(例えば5.5mg/dl)、例えば約6.0mg/dlを超える場合、および/または糸球体濾過率が、例えば、正常値の約20%未満まで重度に減少している場合に、患者は高リン酸血症と診断されることが多い。本発明は、末期腎不全における高リン酸血症に罹患する患者および透析治療(例えば、血液透析または腹膜透析)を受けている患者を治療するために用いることもできる。
【0087】
本発明の方法、化合物、組成物、およびキットを用いて治療することができる他の疾患には、低カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、腎臓でのカルシトリオール合成の低下、低カルシウム血症によるテタニー、腎不全、および関節、肺、腎臓、結膜、心筋組織を含む軟組織の異所性石灰化を含む。また、本発明は、慢性腎疾患(CKD)、末期腎不全(ESRD)および透析患者を、それらの疾患のいずれの予防的治療をも含めて、治療するためにも用いることができる。
【0088】
本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークならびに組成物は、例えば、リン摂取の食事制限、透析、無機金属塩および/または他のポリマー樹脂を用いる他の治療の補助として用いることができる
【0089】
本発明の組成物は、消化管内から塩化物、重炭酸塩、シュウ酸塩、および胆汁酸を除去する際にも有用である。シュウ酸化合物またはイオンを除去するポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、腎臓結石が形成されるリスクを増加するシュウ酸症または高シュウ酸尿症等のシュウ酸塩の不均衡による疾患の治療にも役立つ。塩素化合物またはイオンを除去するポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、例えば、アシドーシス、胸焼け、酸逆流症、胃のむかつきまたは胃炎等の治療に役立つ。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、脂肪酸、ビリルビン、および関連化合物を除去するために有用である。いくつかの実施形態は、タンパク質、核酸、ビタミンまたは細胞破片等の高分子量分子を結合および除去することができる。
【0090】
本発明は、動物の治療のための方法、医薬組成物、およびキットを提供する。本明細書で使用される場合、「動物」または「動物対象」または「患者」という用語は、ヒトおよび他の哺乳類(例えば、獣医学的治療において、例えばイヌまたはネコ、またはブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、ニワトリ等の家畜動物の治療において)を含む。本発明の一実施形態は、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークのうちの少なくとも1つを有効量投与することにより、動物の胃、小腸または大腸等の消化管から有機リン酸塩またはリン酸塩等のリン含有化合物を除去する方法である。
【0091】
本明細書で使用される「治療」およびその文法上の同義語は、治療効果および/または予防効果を達成することを含む。治療効果とは、治療される基礎疾患の根絶、寛解、または予防を意味する。例えば、高リン酸血症の患者において、治療効果は、根底にある高リン酸血症の根絶または寛解を含む。また、治療効果は、基礎疾患と関連する生理学的症状のうちの1つ以上を根絶、寛解、または予防することにより達成され、患者は依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、患者に改善が見られるようになる。例えば、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの、腎不全および/または高リン酸血症に罹患する患者への投与は、患者の血清リン酸塩レベルが下がる場合のみでなく、異所性石灰化および腎性骨形成異常等の腎不全および/または高リン酸血症を伴う他の疾患に改善が見られる場合にも、治療効果をもたらすと言える。予防効果については、例えば、高リン酸血症を発症するリスクのある患者、または、たとえ高リン酸血症の診断はされていなくても、高リン酸血症の生理学的症状のうちの1つ以上を報告している患者に、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを投与することができる。
【0092】
該組成物は、例えば、リン酸塩の血清レベルを正常またはほぼ正常なレベルまで、例えば、健常な患者の正常レベルの10%以内まで変更することにより、リン酸塩レベルの上昇した対象において血清リン酸塩を制御するために用いることもできる。
【0093】
本発明の他の実施形態は、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークまたはその薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つ、および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体、そして任意選択的に追加の治療薬を1つ以上含む医薬組成物を対象とする。化合物は、製剤の前に、凍結乾燥、または真空下もしくはオーブンで乾燥することができる。
【0094】
賦形剤または担体は、製剤の他の成分と適合し、その受容者に対して有害ではないという意味で「許容される」。製剤は、便利に単位剤形として行なうことができ、任意の好適な方法を用いて調製することができる。方法は、典型的には、例えば、アミンポリマーを賦形剤または担体と均一かつ密接に会合させることにより、薬剤を賦形剤または担体と会合させ、必要があれば、次いで、生成物をその単位用量に分割するステップを含む。
【0095】
本発明の医薬組成物には、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークが、有効量、すなわち、治療および/または予防効果を達成するために有効な量で存在する組成物が含まれる。特定の適用に有効である実際の量は、患者(例えば、年齢、体重)、治療される状態、および投与経路に依存する。
【0096】
動物におけるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの用量は、治療される疾患、投与経路、および治療される動物の物理的特性に依存する。治療的および/または予防的使用のいずれかのためのいくつかの実施形態において、かかる用量は、約1gm/日〜約30gm/日、例えば約2gm/日〜約20gm/日または約3gm/日〜約7gm/日であり得る。本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの用量は、約50gm/日未満、約40gm/日未満、約30gm/日未満、約20gm/日未満、および約10gm/日未満であり得る。
【0097】
典型的には、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、食事の前もしくは後で、または食事とともに投与することができる。本明細書で使用される場合、食事の「前」または「後」とは、典型的には、それぞれ食事の開始または終了の2時間以内、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、最も好ましくは10分以内である。
【0098】
一般に、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークが食事と共に投与されることが好ましい。ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、1日1回、1日2回、または1日3回投与することができる。好ましくは、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、1日1回、最も量の多い食事とともに投与される。
【0099】
好ましくは、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、治療および/または予防効果のために用いることができ、単独で、または医薬組成物の形態で投与することができる。医薬組成物は、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク、1つ以上の薬学的に許容される単体、希釈剤または賦形剤、任意選択的に追加の治療薬を含む。例えば、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、治療される状態に依存して、他の有効な医薬品とともに併用投与することができる。併用投与することのできる医薬品の例には、以下を含むが、これらに限定されない。
【0100】
薬学的に許容されるランタン、カルシウム、アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛化合物、例えば、その酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物、クエン酸塩、アルギン酸塩、およびケト酸を含む他のリン酸塩捕捉剤。
【0101】
炭酸カルシウム、酢酸塩(PhosLo(登録商標)酢酸カルシウム錠剤等)、クエン酸塩、アルギン酸塩、およびケト酸を含むカルシウム化合物は、リン酸塩結合のために利用されている。
【0102】
アルミニウム水酸化物ゲルであるAmphojel(登録商標)等のアルミニウムベースのリン酸塩捕捉剤も、高リン酸血症を治療するために用いられている。これらの化合物は小腸内のリン酸塩と複合して高度に不溶性のリン酸アルミニウムを形成し、結合したリン酸塩は患者によって吸収されない。
【0103】
最も多く使用されるランタニド化合物である、炭酸ランタン(Fosrenol(登録商標))は、炭酸カルシウムと同様の働きをする。
【0104】
本発明における使用に好適である他のリン酸塩捕捉剤には、薬学的に許容されるマグネシウム化合物が含まれる。薬学的に許容されるマグネシウム化合物の様々な例は、2005年11月8日に出願された米国仮出願第60/734,593号に記載されており、参照することによりその教示全体が本明細書に援用される。好適な具体例には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム(例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびヨウ化マグネシウム)、マグネシウムアルコキシド(例えば、マグネシウムエトキシドおよびマグネシウムイソプロポキシド)、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびスチレンスルホン酸等の有機酸のマグネシウム塩、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
薬学的に許容される亜鉛化合物の様々な例は、2005年12月29日に出願されたPCT出願第PCT/US2005/047582号に記載されており、参照することによりその教示全体が本明細書に援用される。薬学的に許容される亜鉛化合物の好適な具体例には、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、カプリル酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、六フッ化ケイ酸亜鉛、ヨウ素酸亜鉛、ヨウ化亜鉛、ヨウ化亜鉛‐デンプン、乳酸亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酸化亜鉛、カラミン(低い割合の酸化第二鉄を含む酸化亜鉛)、p−フェノールスルホン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛、タンニン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、吉草酸亜鉛およびエチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛が含まれる。別の例には、ポリ(アクリル酸亜鉛)が挙げられる。
【0106】
上記のリン酸塩捕捉剤のうちのいずれについて言及する場合にも、その混合物、多形および溶媒和化合物が包含されることを理解されたい。
【0107】
いくつかの実施形態において、上で説明したリン酸塩捕捉剤の混合物は、薬学的に許容される第一鉄塩と組み合わせて本発明において用いることができる。
【0108】
他の実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークと組み合わせて用いられるリン酸塩捕捉剤は、薬学的に許容されるマグネシウム化合物ではない。さらに他の実施形態において、薬学的に許容されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークとともに用いられるリン酸塩捕捉剤は、薬学的に許容される亜鉛化合物ではない。
【0109】
本発明は、リン酸塩輸送阻害剤またはアルカリホスファターゼ阻害剤とともに、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを用いる併用治療を対象とする方法および医薬組成物も含む。あるいは、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの混合物を、リン酸塩輸送阻害剤またはアルカリホスファターゼ阻害剤とともに用いることができる。
【0110】
リン酸塩輸送阻害剤の好適な例は、同時係属中の米国特許出願公開第2004/0019113号および2004/0019020号ならびにWO2004/085448号に見ることができ、参照することによりその教示全体が本明細書に援用される。
【0111】
様々な種類の有機および無機分子が、アルカリホスファターゼ(ALP)に対する阻害剤である(例えば、米国特許第5,948,630号を参照(参照することによりその教示全体が本明細書に援用される))。アルカリホスファターゼ阻害剤の例には、オルトリン酸塩、ヒ酸塩、L−フェニルアラニン、L−ホモアルギニン、テトラミゾール、レバミゾール、L−p−ブロモテトラミソール、5,6−ジヒドロ−6−(2−ナフチル)イミダゾ−[2,1−b]チアゾール(ナフチル)およびその誘導体が含まれる。好ましい阻害剤には、レバミゾール、ブロモテトラミソール、および5,6−ジヒドロ−6−(2−ナフチル)イミダゾ−[2,1−b]チアゾールならびにその誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
この併用投与は、同じ剤形での2つの薬剤の同時投与、別の剤形での同時投与、および別投与を含み得る。例えば、高リン酸血症の治療には、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを、高リン酸血症が原因となる低カルシウム血症を治療するために用いられるカルシウム塩とともに併用投与することができる。
【0113】
本発明の医薬組成物は、錠剤、サシェ剤、スラリー、食品製剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、オブラート、チューインガムまたトローチとして処方することができる。
【0114】
好ましくは、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワーク、またはポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/もしくはコポリマーネットワークを含む医薬組成物は経口投与される。例示的な好適な方法、ビヒクル、賦形剤および担体は、例えば、Remington´s Pharmaceutical Sciences、19th ed.に記載されており、参照することによりその内容が本明細書に援用される。
【0115】
本発明に従う使用のための医薬組成物は、活性ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを薬剤として使用可能な製剤にするための処理を促進する賦形剤および助剤を含む、1つ以上の生理学的に許容される担体を用いて、従来様式において処方することができる。適切な処方は、選択される投与経路に依存する。アミンの医薬組成物を調製するための好適な技術は当該技術分野において周知である。
【0116】
本発明のいくつかの態様において、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、通常は賦形剤の機能である機械的および熱的特性を提供するため、製剤に必要なかかる賦形剤の量を削減する。いくつかの実施形態において、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、組成物の約30重量%より多く、例えば約40重量%より多く、約50重量%より多く、好ましくは約60重量%より多く、約70重量%より多く、より好ましくは約80重量%より多く、約85重量%を上回るかまたは約90重量%より多くを成し、残りは好適な賦形剤(単数または複数)が占める。
【0117】
いくつかの実施形態において、錠剤の圧縮率は、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークの水和(含水量)の程度に大きく依存する。好ましくは、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは約5重量%以上の含水量を有し、より好ましくは、含水量は約5重量%〜約9重量%であり、最も好ましくは約7重量%である。アミンポリマーが水和される実施形態において、水和の水はアミンポリマーの構成要素であると見なされることを理解されたい。
【0118】
錠剤は、当該技術分野において周知である硬化剤、流動促進および滑剤等、1つ以上の賦形剤をさらに含むことができる。好適な賦形剤には、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ショ糖、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸亜鉛およびステアリルフマル酸ナトリウムが挙げられる。
【0119】
本発明の実施形態の錠剤コアは、以下のステップを含む方法によって調製することができる。(1)ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを所望の水分レベルまで水和または乾燥させる、(2)ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを任意の賦形剤と混合する、(3)従来の錠剤化技術を用いて混合物を圧縮する。
【0120】
いくつかの実施形態において、本発明は、安定性のある、嚥下可能なコーティングされた錠剤、具体的には、上述したようにポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを含む錠剤等の、親水性のコアを含む錠剤に関する。一実施形態において、コーティング組成物は、セルロース誘導体および可塑剤を含む。セルロース誘導体は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。セルロース誘導体は、水溶液として存在することができる。好適なヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液には、低粘度HPMCおよび/または高粘度HPMCを含むものが含まれる。さらなる好適なセルロース誘導体には、フィルムコーティング剤に有用なセルロースエーテルが含まれる。可塑剤は、例えば、ジアセチル化モノグリセリド等のアセチル化モノグリセリドであり得る。コーティング組成物は、錠剤に所望の色のコーティングを提供するために選択される色素をさらに含み得る。例えば、白色コーティングを生成するためには、二酸化チタン等の白色色素を選択することができる。
【0121】
一実施形態において、本発明のコーティングされた錠剤は、上記の本発明の錠剤コアを、溶媒、該溶媒中に溶解または懸濁させた少なくとも1つのコーティング剤、および任意選択的に、1つ以上の可塑剤を含むコーティング溶媒と接触させるステップを含む方法によって調製することができる。好ましくは、溶媒は、例えば、水もしくは水性緩衝液、または水性/有機混合溶媒等の水性溶媒である。好ましいコーティング剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。典型的には、錠剤コアの重量が約4%〜約6%の範囲の量だけ増加し、錠剤コア上に、コーティングされた錠剤を形成するための好適なコーティングが堆積されたことが示唆されるまで、錠剤コアをコーティング溶液と接触させる。
【0122】
本発明のいくつかの組成物において有用な他の医薬賦形剤には、微結晶性セルロース、カルボポール、プロビドンおよびキサンガム等の結合剤、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、フルクトース、またはソルビトール等の香味剤、野菜をベースとする脂肪酸等の滑剤、ならびに、任意選択的に、クロスカルメロースナトリウム、ジェランガム、セルロースの低置換度ヒドロキシプロピルエーテル、デンプングリコール酸ナトリウム等の崩壊剤を含む。かかる添加剤および他の好適な成分は当該技術分野において周知である(例えば、Gennaro A R (ed)、Remington´s Pharmaceutical Sciences, 19th Editionを参照)。
【0123】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、咀嚼錠の形態で、医薬組成物として提供される。活性成分のほかに、以下の種類の賦形剤が一般に用いられる。必要な嗜好性を提供するための甘味剤、そして前者が、錠剤に十分な硬度を提供する際に不適切である場合は結合剤、ダイの壁面における摩擦効果を最小限に抑え、錠剤の排出を容易にするための滑剤、および、いくつかの製剤においては、咀嚼を促進するために少量の崩壊剤が加えられる。現在入手可能な咀嚼錠における一般的な賦形剤のレベルは、活性成分(複数を含む)の3倍から5倍の程度であり、その一方、甘味剤が非活性成分の大部分を占める。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク、充填剤、および滑剤を含む、咀嚼錠として処方される医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワーク、充填剤、および滑剤を含む、咀嚼錠として処方される医薬組成物を提供し、そこで充填剤は、ショ糖、マンニトール、キシリトール、マルトデキストリン、フルクトース、およびソルビトールから構成される群から選択され、滑剤はステアリン酸マグネシウム等のマグネシウム脂肪酸塩である。
【0124】
一実施形態において、ポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、ポリマーと賦形剤とが密接に混合される固溶体を形成するために、マンニトール、ソルボース、ショ糖等の高Tg/高融点低分子量の賦形剤で事前に処方される。押出成型、噴霧乾燥、冷却乾燥、凍結乾燥、または湿式造等の混合方法が有用である。混合レベルは、示差走査熱量測定または動的機械分析等の既知の物理的方法で示唆される。
【0125】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークは、液体製剤の形態で、医薬組成物として提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、好適な液体賦形剤に分散させたポリマー、コポリマー、ポリマーネットワークおよび/またはコポリマーネットワークを含有する。好適な液体賦形剤は当該技術分野において既知であり、例えば、Remington´s Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【0126】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、水または他の摂取可能な液体と混合して、ドリンク剤(溶液または懸濁液)として経口投与することができるサシェ剤として包装された粉末製剤の形態であり得る。かかる製剤が、たとえば口当たりおよび味等の、患者に許容可能な特性を提供することを確実にするために、薬学的に許容される陰イオン性の安定剤を製剤に含むことができる。
【0127】
好適な陰イオン性安定剤の例には、陰イオン性ポリペプチド、陰イオン性多糖等の陰イオン性ポリマー、またはマンヌロン酸、グルロン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グルクロン酸、グルタミン酸またはこれらの組み合わせのポリマー等の1つ以上の陰イオン性単量体のポリマー、およびその薬剤として許容される塩が含まれる。陰イオン性ポリマーの他の例には、カルボキシアルキルセルロース等のセルロース、またはその薬学的に許容される塩を含む。陰イオン性ポリマーは、ホモコポリマー、または、上述の2つ以上の陰イオン性単量体のコポリマーであり得る。あるいは、陰イオン性コポリマーは、オレフィン系陰イオン性単量体等(ビニルアルコール、アクリルアミド、ビニルホルムアミド等)の1つ以上の陰イオン性単量体および1つ以上の中性コモノマーを含んでもよい。
【0128】
陰イオン性ポリマーの例には、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸アンモニウム、およびアルギン酸のエステル)、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ペクチン、キサンタン、カラギーナン、フルセララン、アラビアガム、カラヤガム、ガティガム、キャロブガム、トラガントガムを含む。好ましい陰イオン性ポリマーはアルギン酸塩であり、好ましくはアルギン酸塩のC2−C5−ジオールエステルまたはアルギン酸塩のC3−C5トリオールエステル等のエステル化したアルギン酸塩である。本明細書において使用される場合、「エステル化したアルギン酸塩」とは、アルギン酸を有するカルボキシル基のうちの1つ以上がエステル化されたアルギン酸を意味する。アルギン酸塩中の残りのカルボン酸基は、薬学的に許容される塩として任意選択的に(部分的または完全に)中和される。例えば、プロピレングリコールアルギン酸塩は、カルボキシル基のいくつかはプロピレングリコールでエステル化され、残りのカルボン酸基は薬学的に許容される塩で任意選択的に中和された、アルギン酸のエステルである。より好ましくは、陰イオン性ポリマーは、エチレングリコールアルギン酸塩、プロピレングリコールアルギン酸塩またはグリセロールアルギン酸塩であり、プロピレングリコールアルギン酸塩がよりいっそう好ましい。
【0129】
本明細書に記載されるすべての出版物および特許出願は、参照することにより、それぞれ別個の出版物または特許出願が、参照することにより具体的かつ別個に援用されることが示されるのと同様に、本明細書に援用される。
【0130】
当業者には、添付の特許請求の範囲の主旨または範疇から逸脱することなく、本開示に多くの変更および修正を行うことができることは明白であろう。
【実施例】
【0131】
使用した物質
ジビニルスルホン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、4−(アミノエチル)−ピペリジン、クロロホルム、エピクロロヒドリン、メタノールおよびアセトンはSigma−Aldrich、Co.より市販されている。
【0132】
実施例1:化合物Iの合成
フラスコに、ジビニルスルホン15.06ml、N−メチル−1,3プロパンジアミン15.52mlおよびクロロホルム60mlを充填した。混合物を59℃まで発熱させてから、撹拌しながら40℃で96時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、2.5Lのメタノールと50mlの濃縮HClとの溶液に注いだ。濾過により沈殿物を収集し、50%(v/v)メタノールとアセトンの熱溶液に懸濁させ、10分間撹拌してから濾過した。沈殿物を50%(v/v)メタノールとアセトンの熱溶液に再懸濁させて、10分間撹拌してから濾過した。得られた物質を、小流量の窒素ガスを用いて70℃の真空オーブンで乾燥させて、30.20gの所望の生成物を得た。
【0133】
実施例2:化合物II〜IVの合成
実施例1に記載される手順を用いて、表1に示すように化合物II〜IVを合成した。
【表1】

【0134】
実施例3:化合物Iとエピクロロヒドリンとの反応
脱イオン水15g中の化合物I15gの溶液に、NaOHの50%水溶液8.0gを加えた。得られた溶液は、pH10.29であった。エピクロロヒドリン0.569mlをこの溶液に加えて、室温で一晩撹拌した後、60℃になるまで1時間加熱した。ゲルは観察されなかった。2回目の分量として0.569mlのエピクロロヒドリンを加え、溶液を密封容器内において60℃で一晩加熱した。得られたゲルを小片に分割し、脱イオン水2Lに懸濁させ、20分間撹拌してから濾過した。濾過した物質を脱イオン水2Lに再懸濁させ、20分間撹拌してから濾過した。濾過前の懸濁液の伝導率は70.3uS/cmであった。濾過した物質は湿重量22.07gを有し、60℃の強制空気乾燥機内で乾燥させ、2.68gのゴム様物質を得た。ゴム様物質を脱イオン水に懸濁させ、HClを用いてpHを1に調整した。物質を濾過し、60℃の強制空気乾燥器内で乾燥させ、3.51gの所望の生成物を得た。
【0135】
実施例4:化合物Iの透析
脱イオン水50ml中の化合物I(10g)の溶液を、MWCO3500チューブを用いて、脱イオン水に対して伝導率が17.9uS/cmになるまで透析した。透析した物質を凍結乾燥して2.27gを得た。
【0136】
実施例5:化合物IVとエピクロロヒドリンとの反応
脱イオン水30g中の化合物IV15gの溶液(pH3.2)に、NaOHの50%水溶液9.1gを加えた。得られた溶液は、pH10.51であった。エピクロロヒドリン0.474mlをこの溶液に加え、室温で一晩撹拌した。ゲルは観察されなかった。溶液に2回目の分量として0.474mlのエピクロロヒドリンを加え、該溶液を室温で6時間撹拌して、密封容器内において60℃で2時間加熱した。ゲルは観察されなかった。3回目の分量として0.474mlのエピクロロヒドリンを加え、溶液を室温で一晩撹拌して、密封容器内において60℃で5時間加熱した。ゲルは観察されなかった。4回目の分量として0.474mlのエピクロロヒドリンを加え、溶液を室温で一晩撹拌した。ゲルは観察されなかった。5回目の分量として0.474mlのエピクロロヒドリンを加え、溶液を密封において器内で60℃で一晩加熱した。得られたゲルを小片に分割し、脱イオン水2Lに懸濁させ、20分間撹拌してから濾過した。濾過した物質を脱イオン水2Lに再懸濁させ、20分間撹拌してから濾過した。濾過した物質を脱イオン水2Lに懸濁させ、懸濁液の伝導率を0.31mS/cm、pHを6.2にした。濃縮したHCl55.3mlを懸濁液に加えて、pHを1.03に調節した。懸濁液を濾過し、濾過した物質(湿重量127.39g)を、60℃の強制空気乾燥機内で乾燥させ、インプロセス膨潤比10.76ml/gを有する10.83gの所望の生成物を得た。
【0137】
試験方法
尿中リン酸塩の減少(体内―ラット)
実験にはSprague Dawley系(SD)雄性イエネズミを用いることができる。ラットを、ワイヤー底のケージに一匹ずつ収容し、食餌Purina 5002を与えて、実験に用いる前に少なくとも5日間順化させた。
【0138】
リン排泄量のベースラインを確立するために、ラットを代謝ケージに48時間収容した。尿を収集して、日立の分析器を用いてリン含有量を分析し、リン排泄量(mg/日)を決定した。値が範囲外であるいかなるラットも除外し、残りのラットを群に割り振った。
【0139】
標準的な食餌としてPurina 5002を用いた。被験活性成分をPurina 5002と混合し、最終濃度が餌の0.25重量%になるようにした。陰性対照として0.5重量%のセルロースを用いた。陽性対照として0.5重量%のセベラマーを用いた。それぞれのラットにつき、200g食餌を調製した。
【0140】
それぞれのラットの体重を計測し、標準食餌を摂取させた。4日後、標準食餌を治療食餌(または、対照群には対照食餌)と交換した。5日目および6日目に、24時間(+/−30分)でラットの尿サンプルを収集して分析した。試験ラットの体重を再度計測し、いずれの体重の減少または増加も算出した。いずれの残りの食料についても重量計測し、1日当たりに消費された食糧の量を算出した。ベースラインおよびセルロース陰性対照と比較した、リン排出量における変化を算出した。尿中リンの減少率は、以下の式によって決定することができる。
尿中リンの減少率=[(陰性対照の尿中リン(mg/日)−実験の尿中リン(mg/日))/陰性対照の尿中リン(mg/日)]×100
【0141】
体外でのリン酸塩結合(mmol/g)
乾燥によるポリマー重量の損失をそれぞれのサンプルについて調節した後、プラスチックボトル内で、ポリマー当たり2つのサンプルの重量を計測した。10mMのKH2PO4、100mMのN,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]−2−アミノエタンスルホン酸、80mMのNaCl、15mMのグリコケノデオキシコール酸(GCDC)、および15mMのオレイン酸(1N NaOHを用いてpH7.0に調節)を含有する10mMのリン酸緩衝液を調製して十分に混合した。10mMの等量リン酸緩衝液を2つのサンプルボトルにそれぞれに移した。溶液を十分に混合してから軌道振とう機に37℃で1時間配置した。溶液から取った等量のサンプルを除去する前に、ポリマーを沈殿させた。使い捨てのシリンジおよびシリンジフィルタを用いて、等量のサンプルを小さなバイアルに濾過した。濾過したサンプルを脱イオン水で1対10に希釈した。さらに4時間振とうを続け(合計5時間)、サンプリング手順を繰り返した。10mMのリン酸塩標準原液からリン酸塩標準物質を調製し、標準物質が0.3〜1.0mMの範囲になるように適切に希釈した。標準物質およびサンプルの両方を、イオンクロマトグラフィにより分析した。標準曲線を設定し、各試験溶液について結合していないリン酸塩(mM)を算出した。結合したリン酸塩は、次の式を用いて決定した。
結合したリン酸塩(mmol/g)=[(10−結合していないPO)体積×1000]/質量P
式中、体積=試験溶液の体積(L)、質量P=ポリマーのLOD調節済み質量(mg)
【0142】
インプロセス膨張比(mL/g)
インプロセス膨張比(SR)は次の式を用いて決定した。
SR=(湿潤ゲルの重量(g)−乾燥したポリマーの重量(g))/乾燥したポリマーの重量(g)
【0143】
本明細書において、本発明の好ましい実施形態が示され、説明されたが、当業者には、かかる実施形態が例としてのみ提供されていることは明白であろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および代替形態を考え付くであろう。本発明を実践する上で、本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替形態が利用され得ることを理解されたい。よって、以下の特許請求の範囲が、本発明の範囲を定義し、これらの請求項の範囲内である方法および構造ならびにそれらの同等物を網羅することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
a)高分岐コポリマーであって、
(i)多アミン単量体と、
(ii)2つ以上のアミン反応基を含む多官能性スルホニル含有単量体と
から派生する、高分岐コポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記アミン反応基は、ビニル基、酸基、エステル基および/またはこれらの組み合わせから構成される群から独立して選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項3】
前記多官能性単量体は、
【化1】

から構成される群から選択され、
式中、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表す、請求項1〜2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生するコポリマーであって、
【化2】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではない、コポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生する高分岐コポリマーであって、
【化3】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではない、高分岐コポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生するコポリマーであって、
【化4】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、前記コポリマーは0.10〜0.95の分岐度を有するコポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記コポリマーは0.25〜0.75の分岐度を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生するコポリマーであって、
【化5】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、前記コポリマー中の窒素原子の10〜95%は、二級アミン部分にある窒素であるコポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項9】
前記コポリマー中の前記窒素原子の25〜75%は、二級アミン部分にある窒素である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生するコポリマーであって、
【化6】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、前記コポリマーは約1.2を上回る多分散性を有するコポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項11】
前記コポリマーは、約1.5を上回る多分散性を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生するコポリマーであって、
【化7】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、前記分岐コポリマーの固有粘度は最大値を有しない(粘度平均分子量に対して)コポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生するコポリマーであって、
【化8】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、前記コポリマーは、ランダムな、可変長の分岐を有するコポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物であって、
a)以下の式IおよびIIに従う化合物から派生するコポリマーであって、
【化9】

式中、Rは独立して水素ラジカル、‐Rもしくは‐R‐N(H)2−m‐(R−N(H)2−n‐(R‐NHを表すか、または、Rおよびもう1つのRは結合して複素環を形成し、nおよびmは独立して0〜2の整数を表し、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表すが、ただし、少なくとも1つのRは水素ラジカルまたは‐Rではなく、前記コポリマー中における、非末端の、スルホンアミドではないアミン基の10%超、かつ90%未満が三級アミンから成るコポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記コポリマー中における、非末端の、アミドではないアミン基の25%超、かつ75%未満が三級アミンから成る、請求項1〜14のいずれかに記載される組成物。
【請求項16】
医薬組成物であって、
a)高分岐コポリマーであって、
(i)1つ以上の多アミン化合物の残基と、
(ii)1つ以上のビニルスルホニル含有化合物の残基と、
を含む高分岐コポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項17】
医薬組成物であって、
a)高分岐コポリマーであって、
(i)少なくとも1つの二級アミンを含む多アミン単量体と、
(ii)ビニルスルホニル含有単量体と、
から派生する高分岐コポリマーと、
b)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、医薬組成物。
【請求項18】
前記多アミン単量体は、
【化10】

およびこれらの組み合わせから選択される、請求項16〜17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記ビニルスルホニル含有単量体は、
【化11】

から構成される群から選択され、式中、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表す、請求項16〜18のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記多アミン単量体は、少なくとも1つの保護アミン基を含む、請求項16〜19のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記保護アミン基はtert‐ブチルオキシカルボニル基で保護される、請求項20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記コポリマーは、第2の多アミンまたはその残基をさらに含む、請求項16〜22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記第2の多アミンは、
【化12】

およびこれらの組み合わせから構成される群から選択され、式中、Rは独立して、分岐または非分岐の、置換または非置換のアルキルラジカルを表す、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
第2の多アミンは、
【化13】

およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリマーまたはコポリマーは、3000を上回る重量平均分子量を有する、請求項1〜24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
ポリマーまたはコポリマーネットワークを含む医薬組成物であって、
a)請求項1〜25のいずれかに記載のポリマーまたはコポリマーの残基と、
b)架橋剤またはその残基と、
c)薬学的に許容される賦形剤と、
を含む、前記医薬組成物。
【請求項27】
前記架橋剤はエピクロロヒドリンを含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
式Iに従う前記化合物は、トリス(2−アミノエチル)アミンとトリス(3−アミノプロピル)アミンとの組み合わせを含む、請求項4〜14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記第2の多アミンは、トリス(2−アミノエチル)アミンとトリス(3−アミノプロピル)アミンとの組み合わせを含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項30】
式Iに従う前記化合物は、トリス(2−アミノエチル)アミンとトリス(3−アミノプロピル)アミンとの組み合わせを含む、請求項1〜2および16のいずれかに記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−520285(P2010−520285A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552717(P2009−552717)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/002900
【国際公開番号】WO2008/109095
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(508328501)ゲンズイメ コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】