説明

スルホン酸基又はスルホン酸エステル基と、アミド基とを有するポリマー、及び該ポリマーを有する静電荷像現像トナー

【課題】スルホン酸基もしくはスルホン酸エステル基と、アミド基とを有する新規なポリマーとその製造方法を提供する。
【解決手段】化学式(1)で示されるユニットを有することを特徴とするポリマー。


(式中、Rは−A1−SO2R1を表す。R1w及びR1Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R1yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。A01は、置換もしくは未置換の芳香族環構造である。A1は、置換もしくは未置換の芳香族環構造である。R1は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR1aである。R1aは、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸基またはスルホン酸エステル基と、アミド基とを有する新規なポリマーに関する。また、本発明は、前記新規なポリマーを製造する為に用いる新規化合物に関する。更にまた、本発明は、前記新規なポリマーを有する静電荷像現像トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基のように親水基を有する高分子は、様々な用途への応用が期待される。そして、このスルホン酸基を含有するポリマーの合成方法は、一般に、スルホン酸官能基を含有する特定のビニルモノマーを使用する方法に限られている。具体的なモノマーの例としては、スルホン化スチレン、あるいはAMPS(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)が挙げられる。例えば、下記特許文献1(特開2002−351147号公報)には、スルホン化スチレンの例として、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸塩と、これと共重合可能な他のビニル系モノマーとの共重合体について開示されている。
【特許文献1】特開2002−351147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スルホン化スチレンだけでは、上記した様々な用途に十分に対応できるとは言えず、更なる改良や、新規ポリマーの開発が求められている。
【0004】
本発明の目的は、上記背景技術に鑑み、スルホン酸基もしくはスルホン酸エステル基と、アミド基とを有する新規なポリマーとその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、当該ポリマーを作製するための新規な化合物を提供するものである。更にまた、本発明は当該ポリマーを利用した静電荷像現像トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、様々な機能性を向上するのに有用であると考えられる、親水性基あるいは極性基を導入した新規なポリマーの開発をめざして鋭意研究を重ねてきた結果、以下に示すような発明に至った。
【0006】
本発明にかかるポリマーは、化学式(1)で示されるユニットを有することを特徴とす
るポリマーである。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは−A1−SO2R1を表す。R1w及びR1Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R1yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A01は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A1は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
R1は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR1aである。R1aは、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
本発明にかかるポリマー製造用のモノマーとして有用な化合物は、化学式(201)で示す構造を有することを特徴とする。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは−A201−SO2R201を表す。R201w及びR201Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R201yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A0201は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A201は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
R201は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR201aである。R201aは、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
また、本発明にかかるポリマーの製造方法の他の態様としては、以下の製造方法が挙げられる。即ち、化学式(301)で示すユニットを含むポリマーと、化学式(302)で示されるアミン化合物の少なくとも1種とを縮合反応させて前記化学式(1)に示すユニットを含むポリマーを得ることを特徴とする製造方法である。
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R301w及びR301xはそれぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R301yはCH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。R301は、H原子、Na原子またはK原子である。)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R302はOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR302aである。A302、R302aは、それぞれ独立して、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
本発明にかかるポリマーの製造方法の他の態様は、化学式(303)で示すユニットを含むポリマーに、エステル化剤を用いてエステル化を行い化学式(304)に示すユニットを含むポリマーを得ることを特徴とする製造方法が挙げられる。
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、Rは−A303−SO2R303を表す。R303w及びR303Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R303yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A0303は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A303は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。R303は、OH、ハロゲン原子、ONaまたはOKである。)
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、Rは−A304−SO3R304を表す。R304w及びR304Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R304yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A0304は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A304は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
R304は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
本発明の荷電制御剤は、粉粒体の荷電状態を制御する荷電制御剤において、上記のポリマーの少なくとも1種を含有してなることを特徴とする荷電制御剤である。
【0019】
本発明の静電荷像現像トナーは、静電荷像現像トナーにおいて、少なくとも、バインダー樹脂と着色剤と、上記の本発明に係るポリマーとを含有してなることを特徴とする静電荷像現像トナーである。この場合、当該ポリマーが、トナー中の荷電制御剤として機能するのがよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、新規なポリマー及び、このポリマーを作製するための新規な化合物が提供される。また、当該ポリマーを用いた静電荷像現像トナーを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(本発明に係るポリマー及び化合物)
第1の本発明に係るポリマーは、先に記載した化学式(1)で示される構造を1ユニット以上含むことを特徴とする。特に、このユニットを繰り返し単位構造として含むことが好ましい。
【0022】
なお、本発明においては、ポリマー中に、複数のユニットが存在する場合、各ユニット同士は互いに独立に各式の定義に従って表わされる。例えば、式(1)で示される同じユニットが複数存在していても、式(1)で示される異なるユニットが存在していてもよい。この点は他の式で表わされるユニットにおいても同様である。即ち、本発明は、同じ種類のユニットにより前記ポリマーが構成される場合は勿論、前記ポリマーが、互いに異なる種類のユニットにより構成されている場合を含むものである。
【0023】
本発明に係るポリマーの化学式(1)で示されるユニットとしては、以下の化学式(2)〜(11)のユニットが好ましい。
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、Rは−A2−SO2R2を表す。R2w及びR2Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R2yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A02は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A2は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。R2は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR2aである。
R2aは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基、または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、Rは−A3−SO2R3を表す。R3w及びR3Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R3yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A03は、置換もしくは未置換のフェニレン基、または置換もしくは未置換のナフチレン基である。
A3は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
R3は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR3aである。
R3aは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基、または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
【0028】
【化9】

【0029】
(式中、Rは−A4−SO2R4を表す。R4w及びR4Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R4yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A04は、置換もしくは未置換のフェニレン基である。置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR4g(R4g:H原子、Na原子、K原子のいずれかである。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基及びC37 基から選ばれる少なくとも1種である。
A4は、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基である。
R4は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR4aである。
R4aは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基、または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
【0030】
【化10】

【0031】
(式中、R5w及びR5Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R5yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A05は、置換もしくは未置換のフェニレン基である。置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR05g(R05g:H原子、Na原子、K原子のいずれかである。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基及びC37 基から選ばれる少なくとも1種である。Phはフェニル基を表す(各式において同様である)。
R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eはそれぞれ独立して、SO2R5f(R5fはOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR5hである。R5hは、直鎖または分岐の炭素数1〜8のアルキル基、あるいは置換または未置換のフェニル基を表す。)、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR5g(R5g:H原子、Na原子、K原子のいずれかである。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基またはC37 基であり、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eの少なくとも1つはSO2R5fである。)
【0032】
【化11】

【0033】
(式中、R6w及びR6Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R6yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A06aは、置換もしくは未置換のフェニレン基である。置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR06ag(R06ag:H原子、Na原子、K原子のいずれかである。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基及びC37 基から選ばれる少なくとも1種である。R6a、R6b、R6c、R6d、R6e、R6f及びR6gはそれぞれ独立して、SO2R6o(R6oはOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR6sである。R6sは直鎖または分岐の炭素数1〜8のアルキル基、あるいは置換または未置換のフェニル基を表す。)、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR6p(R6p:H原子、Na原子、K原子のいずれかである。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基またはC37 基であり、R6a、R6b、R6c、R6d、R6e、R6f及びR6gの少なくとも一つは、SO2R6oである。)
【0034】
【化12】

【0035】
(式中、R6v及びR6uは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R6zは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A06bは、置換もしくは未置換のフェニレン基である。置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR06br(R06br:H原子、Na原子、K原子のいずれかである。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基及びC37 基から選ばれる少なくとも1種である。
R6h、R6i、R6j、R6k、R6l、R6m及びR6nはそれぞれ独立して、SO2R6q(R6qはOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR6tである。R6tは直鎖または分岐の炭素数1〜8のアルキル基、あるいは置換または未置換のフェニル基を表す。)、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR6r(R6r:H原子、Na原子、K原子のいずれかである。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基またはC37 基であり、R6h、R6i、R6j、R6k、R6l、R6m及びR6nの少なくとも一つは、SO2R6qである。)
【0036】
【化13】

【0037】
(式中、R7w及びR7Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R7yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。R7aは、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR7bである。
R7bは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
【0038】
【化14】

【0039】
(式中、R8w及びR8Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R8yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。R8aは、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR8bである。
R8bは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基、または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
【0040】
【化15】

【0041】
(式中、R9w及びR9Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R9yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
R9aは、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR9bである。
R9bは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基、または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
【0042】
【化16】

【0043】
(式中、R10w及びR10Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R10yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。R10aは、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR10bである。
R10bは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
【0044】
【化17】

【0045】
(式中、R11w及びR11Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R11yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。R11aは、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR11bである。
R11bは、直鎖もしくは分岐の炭素数1〜8のアルキル基または置換もしくは未置換のフェニル基である。)
本発明に係るポリマーは、例えば化学式(2)〜(11)などの化学式(1)に示すユニットに加え、化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットを少なくとも一つ含む共重合体であってもよい。
【0046】
【化18】

【0047】
(式中、R101w及びR101xはそれぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R101yはCH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。R101は、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、置換もしくは未置換の複素環構造、ハロゲン原子、−CO−R101a、−O−R101b、−COO−R101c、−OCO−R101d、−CONR101eR101f、−CN、またはN原子を含む環構造のいずれかである。R101a、R101b、R101c、R101d、R101e及びR101fはそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。ただし、化学式(101)で示されるユニットには、前記化学式(1)で示すことのできるユニットは含まれない。)
なお、本発明における化学式(1)で示されるユニットと化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットを有する共重合体のユニットの割合は、化学式(1)で示されるユニットが0.1〜100モル%、更に好ましくは、1.0〜50モル%である。
【0048】
本発明に係るポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量=Mw/Mn)は1<Mw/Mn<10とすることができ、望ましくは、1<Mw/Mn<2で表される。

本発明のポリマーである化学式(1)で示されるユニットと化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットからなる共重合体は、ブロック共重合体とすることができる。本発明に係るポリマーの数平均分子量は、1000から1000000であることが好ましい。
【0049】
本発明に係るポリマー製造用のモノマーとして使用し得る化合物には、化学式(201)で示す構造を有する化合物がある。
【0050】
【化19】

【0051】
(式中、Rは−A201−SO2R201を表す。R201w及びR201Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R201yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A0201は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A201は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
R201は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR201aである。R201aは、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
本発明に係るポリマー製造用のモノマーとして使用し得る化合物には、化学式(202)で示す構造の化合物がある。
【0052】
【化20】

【0053】
(式中、Rは−A202−SO2R202を表す。R202w及びR202Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R202yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A0202は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A202は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。R202は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR202aである。R202aは、メチル基、エチル基、またはフェニル基である。)
(製造方法)
先に記載した化学式(1)に示すユニットを含むポリマーは、化学式(201)で示す化合物の少なくとも1種を重合することにより、製造することができる。
【0054】
また、本発明に係る化学式(1)に示すユニットを含むポリマーは、化学式(301)で示すユニットを含むポリマーと、化学式(302)で示されるアミン化合物の少なくとも1種とを縮合反応させて得ることができる。
【0055】
この化学式(1)に示すユニットを含むポリマーの製造方法においては、縮合剤を用い同一反応場中でアミド結合を形成することが好ましい。この場合の縮合剤としては、リン酸系縮合剤を用いることができる。また、縮合反応を、更にピリジンの存在下で行うことができる。
【0056】
また、本発明に係る化学式(304)に示すユニットを含むポリマーは、化学式(303)で示すユニットを含むポリマーに、エステル化剤を用いてエステル化を行うことにより得ることができる。
【0057】
前記化学式(304)に示すユニットを含むポリマーの製造方法において採用される、前記エステル化剤としては、トリメチルシリルジアゾメタン、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリブチル、または、オルトギ酸トリプロピルがある。
【0058】
(荷電制御剤)
本発明に係る荷電制御剤は、粉粒体の荷電状態を制御するものであり、化学式(1)に示す構造のユニットを有するポリマーを含有していることを特徴とする。
【0059】
また、前記粉粒体は、静電荷像現像トナーであることが好ましい。
【0060】
更に、荷電制御剤を構成するポリマーの化学式(1)で示されるユニットとしては、化学式(2)〜(11)で示されるユニットを用いることができる。
【0061】
(本発明に係るポリマーのより具体的な製法)
以下に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。上記した各構成を有する本発明にかかるポリマーは、荷電制御剤としてきわめて優れた特性を有する。さらには、このポリマーを用いた荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーは、なかでも電子写真法による現像システムを有する画像形成装置に使用した場合に著しい効果を有するものである。このポリマーの製造方法としては以下の方法を例示できる。
【0062】
例えば、化学式(1)で示すユニットを有するポリマーは、出発原料として用いる化学式(301)で表されるユニットを有するポリマーと化学式(302)で示す化合物の少なくとも1種との反応で製造される。
【0063】
本手法において、分子量分布が、1<Mw/Mn<2である化学式(301)で表されるユニットを有するポリマーを出発原料として用いることにより、分子量分布が、前記範囲内である化学式(1)で示すユニットを有するポリマーを合成することが可能である。
【0064】
また、化学式(301)で表されるユニットと、化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットからなるブロック共重合体を出発原料として用いることができる。斯かる場合、化学式(1)に示すユニットと化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットからなるブロック共重合体を合成することが可能である。
【0065】
(化学式(301)に示すユニットを含むポリマーの製造方法)
化学式(301)で表されるカルボキシル基を有するポリマーは、公知の重合法と高分子反応を用いることにより、化学式(301)のユニットに加えて化学式(101)に示されるビニル系モノマーユニットを有する共重合体として製造することもできる。
【0066】
なお、化学式(101)に示すユニットを導入するためのビニル系モノマーとしては、以下の各化合物を挙げるこごができる。スチレン及びその誘導体、エチレン不飽和モノオレフィン類、ハロゲン化ビニル類、ビニルエステル酸、α-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエーテル類、アクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体。
【0067】
ビニル安息香酸ユニットを有するポリマーは以下のようにして得ることができる。化学式(301)で表されるカルボキシル基を有するポリマーとして、ビニル安息香酸のカルボン酸に保護基を導入したモノマーを合成し、重合した後、高分子反応を行うことにより、保護基を取り除き、ビニル安息香酸ユニットを有するポリマーを得る。
【0068】
また、リビング重合法を用いることにより、分子量分布が、1.00<Mw/Mn<2.00である化学式(301)で表されるユニットを有するポリマーを合成することが可能である。
【0069】
以下に、リビングラジカル重合として、例えば、原子移動ラジカル重合やニトロキシド媒介重合を使用する場合について説明する。
【0070】
まずは、リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合である場合について説明する。
【0071】
原子移動ラジカル重合は、例えば、ハロゲン化銅−ビピリジル錯体を用いると、ポリマー鎖末端の速やかな移動反応により分子量分布の狭いポリマーを得ることができる。反応溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を使用することができる。
【0072】
次に、リビングラジカル重合がニトロキシド媒介重合である場合について説明する。
【0073】
ニトロキシルラジカルの一つである2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TEMPO)は不対電子が非局在化する為、結合して低い解離エネルギーを与えるラジカルとは結合しにくい。この性質を利用して、過酸化ベンゾイル(BPO)やアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤とし、ニトロキシルラジカルを用いたニトロキシド媒介重合によって分子量分布の狭いポリマーを得ることができる。
【0074】
重合性モノマー、開始剤、ニトロキシルラジカルを反応溶媒に加え、反応系を不活性ガスで置換してニトロキシド媒介重合を行う。
【0075】
ニトロキシルラジカルとしては、例えば、以下に記載のものを使用することができる。
【0076】
反応溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を使用することができる。
【0077】
また、化学式(301)で表されるユニットと、化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットからなるブロック共重合体は、公知の重合法のなかでも、リビング重合法を用いることにより、合成することが可能である。特には、リビング重合法のなかでも、リビングラジカル重合が比較的容易である。
【0078】
具体的には、化学式(301)で示す構造のホモポリマーをリビングラジカル重合で形成した後、そのホモポリマーの片末端に化学式(101)で示す構造のポリマーをリビングラジカル重合によって共重合する。こうすることにより、目的のブロック共重合体の前駆体を得ることができる。尚、ブロック共重合体を形成する順序は逆であっても構わない。
【0079】
このリビングラジカル重合、好ましくは原子移動ラジカル重合及びニトロキシド媒介重合は、先に化学式(301)のユニットを有するポリマーの場合と同様にして行うことができる。
【0080】
(化学式(302)に示す化合物)
本発明に用いる化学式(302)に示す化合物としては、A302が以下の化合物であってもよい。即ち、A302が炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐アルキレン基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のナフチル基、または、置換もしくは未置換のN、S、Oの何れか一つ以上を含む複素環構造を表す化合物であってもよい。A302が環構造の場合、未置換の環がさらに縮合してもよい。A302が炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐アルキレン基の化合物である場合の具体例としては、以下のものが挙げられる。即ち、2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)、3−アミノプロパンスルホン酸、4−アミノブタンスルホン酸、2−アミノ−2−メチルプロパンスルホン酸や、そのアルカリ金属塩である。
【0081】
302が、置換または未置換のフェニル基の場合は化学式(26)で表される。
【0082】
【化21】

【0083】
(式中、R26a 、R26b 、R26c 、R26d 及びR26e はそれぞれ独立して、SO226f(R26f はOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR26h である。R26h は、置換または未置換の脂肪族炭化水素構造、置換または未置換の芳香族環構造、あるいは置換または未置換の複素環構造を表す。)、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR26g (R26g :H原子、Na原子、K原子のいずれかを表す。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基またはC37 基であり、式中、R26a 、R26b 、R26c 、R26d 及びR26e の少なくとも1つはSO226fである。)
化学式(26)で示される化合物としては、p−アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸)等の各種アミノベンゼンスルホン酸誘導体ならびにその塩が挙げられる。さらには、2−アミノベンゼンスルホン酸メチルエステル等の各種アミノベンゼンスルホン酸誘導体のメチルエステル化物あるいはフェニルエステル化物等のエステル化物も挙げられる。
【0084】
302が置換または未置換のナフチル基の場合は、化学式(27a)や(27b)で表される。
【0085】
【化22】

【0086】
(式中、R27a 、R27b 、R27c 、R27d 、R27e 、R27f 及びR27g はそれぞれ独立して、SO227o (R27o はOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR27s である。R27s は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造を表す。)、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR27p (R27p :H原子、Na子、K原子のいずれかを表す。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基、またはC37 基であり、である。R27a 、R27b 、R27c 、R27d 、R27e 、R27f 、R27gの少なくとも1つはそれぞれ独立してSO227o である。)
【0087】
【化23】

【0088】
(式中、R27h 、R27i 、R27j 、R27k 、R27l 、R27m 及びR27n はそれぞれ独立してSO227q (R27qはOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR27t である。R27t は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造を表す。)、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、OH基、NH2 基、NO2 基、COOR27r (R27r:H原子、Na原子、K原子のいずれかを表す。)、アセトアミド基、OPh基、NHPh基、CF3 基、C25 基またはC37 基であり、R27h 、R27i、R27j 、R27k 、R27l 、R27m 及びR27n の少なくとも1つはSO227q である。)
前記化学式(27a)または(27b)で示される化合物としては、1−ナフチルアミン−4−スルホン酸等の各種ナフチルアミンスルホン酸誘導体ならびにその塩が挙げられる。さらには、1−ナフチルアミン−8−スルホン酸メチルエステル等の各種ナフチルアミンスルホン酸誘導体のメチルエステル化物あるいはフェニルエステル化物等のエステル化物も挙げられる。
【0089】
302が置換または未置換のN、S、Oの何れか一つ以上を含む複素環構造の場合は、ピリジン環、ピペラジン環、フラン環、チオール環などが挙げられる。
【0090】
(化学式(1)に示すユニットを分子中に1ユニット以上有するポリマーの製造方法)
本発明における化学式(301)に示すユニットを含むポリマーと化学式(302)で示すアミノスルホン酸化合物との縮合反応について詳しく述べる。
【0091】
カルボキシル基とアミノ基の縮合反応としては、縮合剤を用いる方法、塩を形成し脱水反応により縮合を行う方法、脱水剤を用いる方法など、いずれも利用が可能である。
【0092】
本発明の製造方法として、縮合剤を用いる方法について詳しく述べる。縮合剤としては、リン酸系縮合剤等を利用することが可能である。本発明の反応では、亜リン酸エステル系の縮合剤を用いることが好ましい。この際使用される亜リン酸エステル類としては、亜リン酸トリフェニルが好ましく用いられる。縮合剤の使用量は、化学式(302)に示す化合物に対して、0.1倍モル以上、好ましくは、等倍モル以上の範囲である。また、縮合剤そのものを反応溶媒として用いることも可能である。
【0093】
この方法に用いられる化学式(302)に示す化合物の使用量は、出発原料として用いる化学式(301)に示すユニットに対して、0.1〜50.0倍モル、好ましくは、1.0〜20.0倍モルの範囲である。本発明の反応では、必要に応じ、溶媒を使用することができる。使用する溶媒は、ピリジンが好適に用いられる。
【0094】
本発明の方法において、反応時間は、例えば、1〜48時間の範囲である。このようにして生成した化学式(1)に示すユニットを分子中に1ユニット以上有するポリマーを含む反応液は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。
【0095】
エーテル類等の溶媒を用いて、反応液に均一且つ、化学式(1)に示すユニットを分子中に1ユニット以上有するポリマーに不溶な溶媒と混合する。そして、目的とする化学式(1)に示すユニットを分子中に1ユニット以上有するポリマーを再沈殿することにより、回収することができる。
【0096】
ここで得られた化学式(1)に示すユニットを分子中に1ユニット以上有するポリマーは、必要ならば、単離精製することができる。この単離精製方法としては、特に制限はなく、化学式(1)に示すユニットを分子中に1ユニット以上有するポリマーに不溶な溶媒を用いて再沈殿する方法、カラムクロマトグラフィーによる方法を用いることができる。
【0097】
本手法において、分子量分布が、1.00<Mw/Mn<2.00である化学式(301)で表されるユニットを有するポリマーを出発原料として用いる場合においても同様の方法で、縮合反応を行うことが可能である。
【0098】
また、化学式(301)で表されるユニットと、化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットからなるブロック共重合体を出発原料として用いる場合においても同様の方法で、縮合反応を行うことが可能である。
【0099】
また、化学式(201)で示す化合物、他の重合性モノマーと重合開始剤を用いて、共重合することにより合成することも可能である。
【0100】
(化学式(201)に示す化合物の製造方法)
化学式(201)に示す化合物は、以下の方法により製造できる。
【0101】
本発明における化学式(201)に示す化合物の合成方法について詳しく述べる。ビニル安息香酸などのカルボキシル基を有する重合性モノマー、カルボキシル基が酸塩化物になった酸クロライド重合性モノマーと、後述する化学式(401)に示すアミノ基を有する種々の化合物との縮合反応により合成される。
【0102】
カルボキシル基とアミノ基の縮合反応としては、縮合剤を用いる方法、塩を形成し脱水反応により縮合を行う方法、脱水剤を用いる方法、カルボキシル基を酸クロライドに変換しアミノ基を反応させる方法などいずれも利用が可能である。
【0103】
本発明に係る製造方法として、カルボキシル基を酸クロライドに変換しアミノ基を反応させる方法について詳しく述べる。
【0104】
化学式(203)に示す重合性モノマーの酸クロライドへの変換は、常法である塩化チオニルを使用することにより可能である。
【0105】
【化24】

【0106】
(式中、R203w及びR203Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R203yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A0203は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造のいずれかである。R203は、H原子、Na原子またはK原子である。)
塩化チオニルの使用量は、化学式(203)に示す化合物に対して、0.1〜50.0倍モル、好ましくは、1.0〜20.0倍モルの範囲である。また、塩化チオニルそのものを反応溶媒として用いることも可能である。
【0107】
この方法に用いられる後述する化学式(401)に示す化合物の使用量は、出発原料として用いる化学式(203)に示すユニットに対して、0.1〜50.0倍モル、好ましくは、1.0〜20.0倍モルの範囲である。本発明の反応では、必要に応じ、溶媒を使用することができる。使用する溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどが挙げられる。この方法において、反応温度は、特に限定されないが、通常は−30℃〜溶媒の沸点の範囲の温度である。ただし、使用する後述する化学式(401)に示す化合物、反応溶媒に合わせた最適な温度で反応を行うことが望ましい。本発明の方法において、反応時間は、一概には言えないが、通常、1〜48時間の範囲である。このようにして生成した化学式(201)に示す化合物を含む反応液は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。
【0108】
ここで得られた化学式(201)に示す化合物は、必要ならば、単離精製することができる。この単離精製方法としては、特に制限はなく、化学式(201)に示す化合物が難溶な溶媒を用いて再結晶する方法、カラムクロマトグラフィーによる方法を用いることができる。
【0109】
また、上記方法により、化学式(201)で示す化合物の中でもスルホン酸エステルユニットを有していない化合物を合成することが可能である。例えば、R201はOH、ハロゲン原子、ONa、OKである化合物を合成した場合、さらに、エステル化剤を用いることにより、R201がOR201aで表されるスルホン酸エステルユニットを有する化学式(201)で示される化合物を合成することができる。なお、エステル化剤としては、トリメチルシリルジアゾメタン、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等がある。
【0110】
この反応では、必要に応じ、既述の溶媒等を使用することができる。
【0111】
エステル化剤の使用量は、化学式(201)に示すR201はOH、ハロゲン原子、ONa、OKであるユニットに対して、0.1〜50倍モル、好ましくは、1〜20倍モルの範囲である。
【0112】
この方法において、反応温度は、特に限定されないが、通常は−20℃〜200℃の範囲の温度である。反応時間は、一概には言えないが、通常、1〜48時間の範囲である。
【0113】
このようにして生成した化学式(201)の中でもR201がOR201aで表されるスルホン酸エステルユニットを有する化合物を含む反応液は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。
【0114】
ここで得られた化学式(201)の中でもR201がOR201aで表されるスルホン酸エステルユニットを有する化合物は、必要ならば、単離精製することができる。この単離精製方法としては、特に制限はなく、化学式(201)の中でもR201がOR201aで表されるスルホン酸エステルユニットを有する化合物が難溶な溶媒を用いて再結晶する方法、カラムクロマトグラフィーによる方法を用いることができる。
【0115】
(化学式(401)に示す化合物)
【0116】
【化25】

【0117】
(式中、R401はOH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR401a である。R401a は、それぞれ独立して、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
本発明に用いる化学式(401)に示す化合物としては、以下のものが好ましい。即ち、A401が炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐アルキレン基、置換または未置換のフェニル基、置換または未置換のナフチル基、あるいは、置換または未置換のN、S、Oの何れか一つ以上を含む複素環構造を表す化合物である。A401が環構造の場合、未置換の環がさらに縮合してもよい。
【0118】
401が、炭素数1〜8の直鎖あるいは分岐アルキレン基の化合物である場合、その例としては、以下のものが挙げられる。即ち、2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)、3−アミノプロパンスルホン酸、4−アミノブタンスルホン酸、2−アミノ−2−メチルプロパンスルホン酸や、そのアルカリ金属塩である。A401が、置換または未置換のフェニル基の場合は先に説明した化学式(26)で表される。A401が置換または未置換のナフチル基の場合は、先に説明した化学式(27a)、(27b)で表される。A401が置換または未置換のN、S、Oの何れか一つ以上を含む複素環構造の場合は、ピリジン環、ピペラジン環、フラン環、チオール環などが挙げられる。
【0119】
(化学式(201)で示される化合物の重合方法)
化学式(201)で示される化合物の重合方法としては、公知の種々の重合反応が利用可能である。また、種々の公知のモノマーと共重合も可能である。共重合可能なモノマーの例としては、スチレン、o-メチルスチレン等が挙げられる。
【0120】
化学式(201)の中でもスルホン酸エステルユニットを有していない化合物(例えば、R201はOH、ハロゲン原子、ONa、OKである化合物)を重合する場合、重合条件のコントロールが比較的容易なラジカル重合が用いることが可能である。また、スルホン酸エステルユニットを有している場合は、イオン重合の利用も可能である。
【0121】
ラジカル重合を用いる場合、開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性開始剤の利用も可能である。これらが単独或いは併用して使用できる。その使用量は重合性モノマーの全量に対して、0.0001〜0.5倍モルの範囲が好ましいが、使用するモノマーの種類、共重合で使用するモノマー、使用する開始剤に応じて適宜定め得る。
【0122】
本発明の重合反応では、必要に応じ、既述の溶媒等やトルエンやN,N−ジメチルホルムアミドを使用することができる。
【0123】
また、公知の重合法のなかでも、特には、リビング重合法を用いることにより、分子量分布が1.00<Mw/Mn<2.00である化学式(1)で表されるユニットを有するポリマーを合成することが可能である。リビング重合法のなかでも、リビングラジカル重合が比較的容易である。このリビングラジカル重合、好ましくは原子移動ラジカル重合及びニトロキシド媒介重合は、先に化学式(301)のユニットを有するポリマーの場合と同様にして行うことができる。
【0124】
また、化学式(1)で表されるユニットと、化学式(101)で示されるビニル系モノマー由来のユニットからなるブロック共重合体も、公知の重合法のなかでも、リビング重合法を用いることにより、合成することが可能である。特には、リビング重合法のなかでも、リビングラジカル重合が比較的容易である。
【0125】
具体的には、化学式(301)で示す構造のホモポリマーをリビングラジカル重合で形成した後、そのホモポリマーの片末端に化学式(101)で示す構造のポリマーをリビングラジカル重合によって共重合する。こうして、目的のブロック共重合体の前駆体を得ることができる。尚、ブロック共重合体を形成する順序は逆であっても構わない。このリビングラジカル重合も、先に化学式(301)のユニットを有するポリマーの場合と同様にして行うことができる。
【0126】
このようにして生成した本発明にかかるポリマーを含む反応液中の溶媒は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。または、水、メタノール及びエタノールなどのアルコール類、エーテル類等の本発明にかかるポリマーが不溶である溶媒を、反応液に均一に混合し、目的とする本発明にかかるポリマーを沈殿させる。そして、当該沈殿物をを回収することができる。なお、エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランである。
【0127】
ここで得られた本発明にかかるポリマーは、必要ならば、単離精製することができる。この単離精製方法としては、特に制限はない。本発明にかかるポリマーに不溶な溶媒を用いて沈殿させる方法、カラムクロマトグラフィーによる方法を用いることができる。
【0128】
(化学式(304)に示すユニットを分子中に1ユニット以上有するポリマーの製造方法)
化学式(303)中のR303 がOH、ハロゲン原子、ONaまたはOKの場合は、エステル化剤を用いて、化学式(304)に示す、Rが−A304−SO3304 であるポリマーを合成することが可能である。なお、エステル化剤とは、例えばトリメチルシリルジアゾメタン、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチルである。
【0129】
以下にその反応について詳しく述べる。
【0130】
この反応では、必要に応じ、既述ないし後述の溶媒を使用することができる。好ましくは、クロロホルム、メタノールが用いられる。溶媒の使用量は、出発原料、反応条件等に応じて適宜定め得る。
【0131】
エステル化剤の使用量は、化学式(303)に示すユニットに対して、0.1〜50倍モル、好ましくは、1〜20倍モルの範囲である。
【0132】
この方法において、反応温度は、特に限定されないが、通常は−20℃〜200℃の範囲の温度である。反応時間は、一概には言えないが、通常、1〜48時間の範囲である。
【0133】
このようにして生成した本発明にかかるポリマーを含む反応液中の溶媒は、常法である蒸留を用いて取り除くことができる。
【0134】
(トナーへの応用)
本発明に係るポリマーの用途として、静電荷像現像用トナーおよびそれを用いた画像形成プロセスへの応用が挙げられる。具体的には、トナーに内添または外添される荷電制御剤として利用可能である。すなわち、本発明は上記のポリマーを含有してなる荷電制御剤であり、さらには該荷電制御剤を含有してなる静電荷像現像用トナーである。
【0135】
なお、静電荷像現像用トナー組成中へ用いる荷電制御剤として、例えば化学式(1)に示すポリマー化合物を用いることにより、帯電特性に優れ、かつトナー樹脂中への該化合物の分散性及びスペント性が良好なものを提供することができる。
【0136】
また、本発明に係るポリマーを用いれば、画像形成装置による出力時においても、画像カブリの発生が低減され、かつ、転写性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することが可能となる。
【0137】
更にまた、本発明に係るポリマーを用いた荷電制御剤は、無色とする、あるいはその着色度を弱くすることができる為、荷電制御剤に影響されずカラートナーに要求される色相に合わせて任意の着色剤を選定することが可能である。無色あるいは着色性の弱い荷電制御剤は、染料あるいは顔料が有する本来の色相を阻害し難く、好ましいものである。
【0138】
<荷電制御剤としての使用>
本発明に係るポリマーを荷電制御剤として用いる場合は、前記化学式(1)に示すモノマーユニットのように、側鎖にスルホン酸基あるいはその誘導体を含む構造を有していることが好ましい。これらアニオン性あるいは電子吸引性の官能基を有するユニットの存在は、優れた負帯電性を示す。
【0139】
本発明に係るポリマーは、トナーのバインダー樹脂に対する相溶性が良好であり、特にはポリエステル系のバインダー樹脂に対する相溶性がきわめて良好である。
【0140】
本発明のポリマーを含有するトナーは、比帯電量が高く、その経時安定性も良好であることから、トナーを長時間保存しても静電記録の画像形成において安定して鮮明な画像を与える。また、無色あるいは着色はきわめて薄く、良好な負帯電性能を有するため、黒色の負帯電トナーおよびカラートナー何れについても製出することが出来る。さらに、本発明のポリマーを構成するモノマーユニットの種類/組成比を適宜選択することにより、幅広い相溶性の制御が可能である。
【0141】
ここで、荷電制御剤がトナーバインダー中でミクロ相分離構造をとるよう樹脂組成を選択すると、トナーの電気的連続性が生じないため安定に電荷を保持することが可能となる。
【0142】
(本発明に係るポリマーのトナーへの添加)
本発明において、上記したポリマーからなる荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナーに内添する方法とトナーに外添する方法がある。内添する場合の添加量は、トナーバインダーと荷電制御剤の合計質量に対して、荷電制御剤が通常 0.1〜50質量%、好ましくは 0.2〜20質量%の範囲で使用するのがより好ましい。0.1質量%よりも少ないと、トナーの帯電性における改良の度合いが顕著にみられない場合がある。一方、50質量%を超えると、経済的な観点から好ましくない場合がある。また、外添する場合には、トナーバインダーと荷電制御剤の質量割合は、トナーバインダーと荷電制御剤の合計質量に対して、荷電制御剤0.01〜5質量%とすることが好ましく、特に、メカノケミカル的にトナー表面に固着させるのが好ましい。
【0143】
本発明のポリマーの分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によ
り測定した。また、荷電制御剤として用いる場合、本発明においては、上記のようにして測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が、1〜10の範囲内にある上記ポリマーを使用することが好ましい。
【0144】
また、本発明のポリマーが形成する不連続なドメインの粒径を小さくする目的で、本発明のポリマーに対して相溶性を有しかつトナーバインダーに対しても相溶性を有する重合体を相溶化剤として含有させることもできる。相溶化剤としては、以下ものもが挙げられる。例えば、本発明のポリマーの構成単量体と実質的に同じ構造を有する単量体を50モル%以上含有する重合体鎖と、トナーバインダーの構成単量体と実質的に同じ構造を有する単量体を50モル%以上含有する重合体鎖が結合した重合体である。結合の形式としては、グラフト状またはブロック状に結合させることができる。相溶化剤の使用量は本発明のポリマーに対して、通常30質量%以下であり、好ましくは1〜10質量%である。
【0145】
本発明に係るトナーには、一般的な熱可塑性樹脂をバインダー樹脂として用いることができる。例えば、ポリスチレン等を挙げることができる。
【0146】
本発明の荷電制御剤と組み合わせて使用するバインダー樹脂を形成する場合、必要に応じて下記に挙げるような架橋剤を用いることもできる。例えば、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0147】
また、本発明の荷電制御剤と組み合わせて使用するバインダー樹脂を形成する場合には、下記に挙げるような重合開始剤を必要に応じて用いることができる。例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0148】
本発明の荷電制御剤以外にも、従来使用されている荷電制御剤を本発明の荷電制御剤とともに利用することも可能である。
【0149】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤としては、通常、トナーを製造する際に用いられているものであればいずれも使用でき、特に限定されるものではない。更に、染料と顔料とを併用した方が、その鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。通常、最も良好なトナー特性を得るため、すなわち、印字の着色力、トナーの形状安定性、トナーの飛散などを考慮した場合、着色剤は、通常、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜60質量部好ましくは 0.5〜20質量部程度の割合で使用される。
【0150】
本発明の静電荷像現像用トナー中には、上記したバインダー樹脂及び着色剤成分の他に、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で以下の化合物を含有させてもよい。例えば、シリコーン樹脂等である。
【0151】
上記のような構成を有する本発明の静電荷像現像用トナーを作製する具体的な方法としては、従来公知の方法をいずれも用いることができる。
【0152】
本発明においては、上記のような方法によって作製されたトナーに、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のため、シリカ微粉末を外添することが好ましい。
【0153】
また、トナーの現像性及び耐久性を向上させるために、次に挙げるような無機粉体を添加することも好ましい。例えば酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化コバルト、二酸化マンガン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムの微粉体を使用することが好ましい。更に、テフロンなど滑剤粉末をトナーに添加してもよい。
【0154】
<キャリアについて>
本発明の静電荷像現像用トナーは従来公知の種々のトナーに適用することができる。例えば、静電荷像現像用トナーは単独で非磁性一成分現像剤として用いることができる。本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性キャリアとともに磁性二成分現像剤を構成したりする非磁性トナーや、単独で磁性一成分トナーとして使用される磁性トナー等として用いることができる。
【0155】
<磁性トナー>
本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性材料をトナー粒子中に含有させ磁性トナーとしてもよい。この場合には、磁性材料に、着色剤の役割を兼ねさせることもできる。本発明において用いることのできるこれらの磁性材料としては、平均粒子径が2μm以下、好ましくは 0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。トナー中に含有させる量としては、バインダー樹脂 100質量部に対し 20〜200質量部、特に好ましくは、バインダー樹脂 100質量部に対して 40〜150質量部とすることが好ましい。
【0156】
更に、高画質化を達成するためには、より微小な潜像ドットを忠実に現像することを可能にする必要があり、そのためには、例えば、本発明の静電荷像現像用トナー粒子の重量平均径が4μm〜9μmの範囲内となるように調整することが好ましい。即ち、重量平均径が4μm未満のトナー粒子では、転写効率の低下が生じ、感光体上に転写残トナーが多く残り易く、カブリ・転写不良に基づく画像の不均一ムラの原因となり易く、好ましくない。また、トナー粒子の重量平均径が9μmを超える場合には、文字やライン画像の飛び散りが生じ易い。
【0157】
本発明において、トナーの平均粒径及び粒度分布は、コールターカウンターTA-II型或いはコールターマルチサイザー(商品名、ベックマンコールター社製)等を用いた。
【0158】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、単位質量あたりの帯電量(二成分法)が−10〜−80μC/g、より好ましくは−15〜−70μC/gであることが、電圧を印加した転写部材を用いる転写方法において転写効率を向上させる上で好ましい。
【0159】
本発明において使用した二成分法による帯電量の測定法を以下に示す。測定には、図5に示した帯電量測定装置を使用した。先ず、キャリアとしてのEFV 200 / 300(商品名、パウダーテック社製) 9.5gに対して、測定対象のトナー 0.5gを加えた混合物を調製する。この混合物を、50〜100ml容量のポリエチレン製の瓶に入れ、振幅を一定にした振とう機に設置して、振とう条件を、振幅100mm、振とう速度1分間100回往復に設定し、一定時間振とうする。次いで、図5に示した帯電量測定装置41の、底に500メッシュのスクリーン43のある金属製の測定容器42に、前記混合物1.0〜1.2gを入れて、金属製のフタ44をする。この時の測定容器42全体の質量を秤かりW1(g)とする。次に、不図示の吸引機(測定容器42と接する部分は少なくとも絶縁体)で吸引口47から吸引し、風量調節弁46を調節して真空計45の圧力が2450Pa(250mmAq)になるようにする。この状態で一分間吸引を行なって、トナーを吸引除去する。この時の電位計49の電位をV(ボルト)とする。ここで48はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また、吸引後の測定機全体の質量を秤かりW2(g)とする。トナーの摩擦帯電量(μC/g)は、これらの測定値から、下式によって計算される。
計算式:摩擦帯電量(μC/g)=C×V/(W1-W2)
これらの操作は一定の環境下(例えば、一定の温度及び湿度条件下で行われる。
【0160】
<バインダー樹脂の分子量測定方法と分子量分布>
また、本発明の静電荷像現像用トナーの構成材料に用いられるバインダー樹脂としては、特に、粉砕法で作製した場合に、GPCによる分子量分布において、低分子量領域におけるピークが 3,000〜15,000の範囲にあるようにすることが好ましい。即ち、低分子量領域におけるGPCピークが 15,000を超えると、転写効率の向上が充分なものが得られ難くなる場合がある。また、低分子量領域におけるGPCピークが 3000未満のバインダー樹脂を用いると、表面処理時に融着を生じ易くなるので、好ましくない。
【0161】
本発明において、バインダー樹脂の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。具体的なGPCの測定方法としては、予めトナーをTHF(テトラヒドロフラン)溶剤でソックスレー抽出器を用いて 20時間抽出を行なったサンプルを測定用に用いる。カラム構成は、昭和電工製A-801、802、803、804、805、806、807 を連結し標準ポリスチレン樹脂の検量線を用い分子量分布を測定した。
【0162】
本発明者らは、上記説明したポリマーが、荷電制御剤としてきわめて優れた特性を有することを見出している。これを後述する実施例において示す。
【実施例】
【0163】
まず、実施例A−1からR−2により、本発明により得られる新規なポリマーとその製造方法、及び新規な化合物について説明する。その後、実施例1から40により、比較例を用いながら本発明に係るポリマー等の有用性を示す。
【0164】
なお、本発明に係る新規なポリマーや化合物、及びこれらの製造方法は、以下に示す実施例のみに限定されるものではない。
【0165】
以下の実験において、得られた化合物の構造決定は、次のようにして行う。NMRに関しては、 1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400;共鳴周波数:400MHz;測定核種: 1H;測定温度:室温)を用いる。
更に、フーリエ変換−赤外吸収(FT−IR)スペクトル(Nicolet AVATAR360FT−IR)により分析を行うことで構造を決定する。
【0166】
また、1H−NMR測定は、特に明記しない場合は、重アセトンを用いて、測定を行った。
【0167】
得られたポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソー、カラム;ポリマーラボラトリーズ PLgel 5μ MIXED−C、溶媒;DMF/LiBr 0.1%(w/v)、ポリスチレン換算)により評価した。酸価滴定については、電位差滴定装置AT510(京都電子製)を用いた。
【0168】
<実施例A−0>
Macromolecules, 24, 4310-4321 (1991)、Macromolecules, 26, 2791-2795 (1993)を参考に、スチレンと4−ビニル安息香酸を共重合させた。その結果、下記式(A−0):
【0169】
【化26】

【0170】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(M):(F)=93:7で含有しているポリマー共重合体を得た。得られたポリマーの平均分子量は、数平均分子量Mn =22000、重量平均分子量Mw =52000であった。
【0171】
<実施例A−1>
窒素雰囲気下、実施例A−0で得られたポリマーを1.5023g、2−アミノベンゼンスルホン酸0.8492gを200ml三口フラスコに入れて、ピリジン56.5ml加えて攪拌する。その後、亜リン酸トリフェニル2.57mlを加え、120℃で6時間加熱した。反応終了後、ピリジンを留去し、クロロホルム150ml加えてポリマーを溶解させた。2N塩酸を600mlを用いて分液洗浄後、溶媒を留去して、ポリマー1.2535gを回収した。ポリマーをTHFに溶解し、蒸留水、イソプロパノールを用いて、透析膜を用いて精製を行った。
【0172】
1H−NMRの結果より、2−アミノベンゼンスルホン酸のフェニル基に由来するピークがシフトしていた。その結果、得られたポリマーは、下記式(A−1):
【0173】
【化27】

【0174】
に示すユニットを6mol%含有しているポリマー共重合体であることが確認された。得られたポリマーは、Mn =20000、Mw =48000であった。スケールアップにより上記共重合体50gを得、この化合物を例示化合物A-1として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0175】
<実施例A−2>
実施例A−1で得られた、ポリマー0.9777gを300mLナスフラスコ中に入れて、クロロホルム68.44ml、メタノール17.11mlを加えて溶解し、0℃まで冷却した。これにエステル化剤として、2mol/Lのトリメチルシリルジアゾメタン−ヘキサン溶液(Aldrich社製)3.00mlを加えて、4時間攪拌した。反応終了後、エバポレーターにより溶媒を留去した後、ポリマーを回収した。更に、クロロホルム68.44ml、メタノール17.11mlを加えて、ポリマーを再溶解させて、エバポレーターにより溶媒を留去した。この再溶解、溶媒留去の操作を3回繰り返した。ここで回収したポリマーを、減圧乾燥することでポリマー0.9552gを得た。
【0176】
1H−NMRの結果より、スルホン酸メチルに由来するピークが3〜4ppmに見られた。このことから、得られたポリマーは、下記式(A−2):
【0177】
【化28】

【0178】
に示すユニットを6mol%含有しているポリマー共重合体であることが確認された。また、酸価滴定により、スルホン酸に由来する当量点が見られなかったことからも、スルホン酸がスルホン酸メチルになっていることから明らかになった。得られたポリマーは、Mn =19000、Mw =45000であった。スケールアップにより上記共重合体50gを得、この化合物を例示化合物A-2として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0179】
<実施例B−1>、<実施例C−1>、<実施例D−1>、<実施例E−1>、<実施例F−1>、<実施例G−1>
実施例A−1と同様に、実施例A−0で得られたポリマーを原料として用いた。
表1−1に示すように、
・使用するアミノスルホン酸
・ポリマー使用量
・アミノスルホン酸使用量
・縮合剤使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−1と同様の操作を行い、実施例B−1、C−1、D−1、E−1、F−1、G−1のポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表1−2に示す。
【0180】
【表1】

【0181】
スケールアップにより各共重合体50gを得、各々化合物を例示化合物B−1、C−1、D−1、E−1、F−1、G−1として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0182】
<実施例B−2>、<実施例D−2>、<実施例E−2>、<実施例F−2>、<実施例G−2>
表1−3に示すように、
・原料として、A−1で得られたポリマーの代わりに他のポリマーを用いる点
・ポリマー使用量
・エステル化剤の使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−2と同様の操作を行い、実施例B−2、D−2、E−2、F−2、G−2のポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表1−4に示す。
【0183】
【表2】

【0184】
スケールアップにより各共重合体50gを得、各々化合物を例示化合物B−2、D−2、E−2、F−2、G−2として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0185】
【化29】

【0186】
<実施例H−1>
実施例A−1と同じ文献に従って、スチレンと4−ビニル安息香酸を共重合させた。
その結果、下記式(H−0):
【0187】
【化30】

【0188】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(M):(F)=89:11で含有しているポリマー共重合体を得た。これを以下の実験に用いた。得られたポリマーは、Mn =25000、Mw =60000であった。
【0189】
表2−1に示すように、
・ポリマー使用量
・アミノスルホン酸使用量
・縮合剤使用量
以外は、実施例A−1と同様の操作を行い、ポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表2−2に示す。
【0190】
【表3】

【0191】
スケールアップにより50gを得、例示化合物H−1として、トナー調製ならびに評価
に供した。
【0192】
<実施例H−2>
表2−3に示すように、
・原料として、A−1で得られたポリマーの代わりに、H−1で得られたポリマーを用いる点
・ポリマー使用量
・エステル化剤の使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−2と同様の操作を行い、ポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表2−4に示す。
【0193】
【表4】

【0194】
【化31】

【0195】
スケールアップにより上記共重合体50gを得、例示化合物H−2とした。
【0196】
<実施例I−0>
Macromolecules, 32, 1453-1462 (1999)を参考に、下記式(I−0C):
【0197】
【化32】

【0198】
に示すユニットを、含有比率(F)=15(モル%)で含有しているポリマー共重合体を合成し、以下の実験に用いた。なお、その他のユニットはスチレンユニットである。得られたポリマーの平均分子量は、数平均分子量Mn =15000、重量平均分子量Mw=17000であった。
【0199】
<実施例I−1>
窒素雰囲気下、実施例I−0で得られたポリマーを1.4956g、2−アミノベンゼンスルホン酸0.8844gを200ml三口フラスコに入れて、ピリジン113.0ml加えて攪拌した後、亜リン酸トリフェニル2.68mlを加えた。そして、120℃で6時間加熱した。反応終了後、ピリジンを留去し、クロロホルム150ml、メタノール50ml加えてポリマーを溶解させた。2N塩酸150ml加えて分液洗浄を行い、有機層の溶媒を留去し、イソプロパノール100mlを用いて2回洗浄を行ったのち、ヘキサン100mlを加えて洗浄し、ろ過を行いポリマー1.2323gを回収した。ポリマーをTHFに溶解し、蒸留水、イソプロパノールを用いて、透析膜を用いて精製を行った。
【0200】
1H−NMRの結果より、2−アミノベンゼンスルホン酸のフェニル基に由来するピークがシフトしていた。このことから、得られたポリマーは、その結果、下記式(I−1):
【0201】
【化33】

【0202】
に示すユニットを、12mol%含有しているポリマー共重合体であることが確認された。得られたポリマーは、Mn =13000、Mw =15000であった。調製法を繰り返すことにより50gを得、この化合物を例示化合物I-1として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0203】
<実施例I−2>
表3−3に示すように、
・原料としてA−1で得られたポリマーの代わりに、I−1で得られたポリマーを用いる点
・ポリマー使用量
・エステル化剤の使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−2と同様の操作を行い、ポリマーを合成した。
その結果を表3−4に示す。
【0204】
【表5】

【0205】
【化34】

【0206】
調製法を繰り返すことにより上記共重合体50gを得、例示化合物I−2として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0207】
<実施例J−0>
Macromol.Chem.Phys, 195, 3173-3187 (1994) 、J. Am. Chem. Soc.,125, 715-728 (2003)を参考に、スチレンと4−ビニル安息香酸 ブロック共重合体を合成した。その結果、下記式(J−0):
【0208】
【化35】

【0209】
に示すユニットを、m=210 n=21 で表されるブロック共重合体を得た。これを以下の実験に用いた。得られたポリマーは、Mn =25000、Mw =30000であった。
【0210】
<実施例L−0>
Macromolecules, 24, 4310-4321 (1991)、Macromolecules, 26, 2791-2795 (1993)を参考に、スチレンと4−ビニル安息香酸を共重合させることにより原料ポリマーを得た。回収したポリマーを分画分子量2000の透析膜を用いて精製を行った。次に透析精製後回収したポリマーを、分画分子量3500の透析膜を用いて精製を行った。以下同様に、分画分子量8000、10000の透析膜を用いて精製を行った。その結果、下記式(L−0):
【0211】
【化36】

【0212】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(M):(F)=93:7で含有しているポリマー共重合体を得た。これを以下の実験に用いた。得られたポリマーは、Mn =23000、Mw =32000であった。
【0213】
<実施例M−0>
Macromolecules, 24, 4310-4321 (1991)、Macromolecules, 26, 2791-2795 (1993)を参考に、スチレンと4−ビニル安息香酸を共重合させることにより原料ポリマーを得た。回収したポリマーを分画分子量2000の透析膜を用いて精製を行った。次に透析精製後回収したポリマーを、分画分子量3500の透析膜を用いて精製を行った。以下同様に、分画分子量8000、10000の透析膜を用いて精製を行った。その結果、下記式(M−0):
【0214】
【化37】

【0215】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(M):(F)=88:12で含有しているポリマー共重合体を得た。これを以下の実験に用いた。得られたポリマーは、Mn =26000、Mw =36000であった。
【0216】
<実施例J−1><実施例K−1><実施例L−1><実施例M−1>
表4−1に示すように、
・用いた原料ポリマー
・使用するアミノスルホン酸
・ポリマー使用量
・アミノスルホン酸使用量
・縮合剤使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−1と同様の操作を行い、ポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表4−2に示す。
【0217】
【表6】

【0218】
調製法を繰り返すことにより各共重合体50gを得、各々化合物を例示化合物J−1、K−1、L−1、M−1として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0219】
<実施例J−2><実施例K−2><実施例L−2><実施例M−2>
表4−3に示すように、
・原料として、A−1で得られたポリマーの代わりに、他のポリマーを用いる点
・ポリマー使用量
・エステル化剤の使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−2と同様の操作を行い、ポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表4−4に示す。
【0220】
【表7】

【0221】
【化38】

【0222】
スケールアップにより各共重合体50gを得、各々化合物を例示化合物J−2、K−2、L−2、M−2として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0223】
<実施例N−0>
特開2002-138111、Macromolecules, 30, 2016-2020 (1997)を参考に、下記式(N−0):
【0224】
【化39】

【0225】
で示される、モノマーを合成した。
【0226】
原料として4−アミノベンゼンスルフォン酸50.0gをイオン交換水120mlに溶解させた。さらに、水酸化ナトリウムを12.0g加えて40℃まで加熱し溶解させた。攪拌後、イオン交換水100mlを加えたのち、水を留去した。さらに、イオン交換水100mlに再溶解、溶媒留去の操作を3回繰り返した。この粉末に、蒸留水25.0ml、炭酸水素ナトリウム24.5g、メタノール15.0mlを加えて、4時間攪拌した。ここに、p−ビニルベンゾイルクロライド33.3gをTHF150mlに溶解した溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、この溶液を30分攪拌したのち、0℃まで冷却し、ろ過して結晶を回収した。さらに、メタノールを用いて洗浄を行い、モノマー10.5gを得ることができた。
【0227】
得られた化合物の構造決定は、 1H−NMR測定により行った。ここで得られたモノマーを次の重合に用いた。
【0228】
<実施例N−1>
実施例N−0で得られたモノマー0.4067g、スチレン2.7mlを30mLすり付き試験管に加え、DMSO 20mlを加えて溶解し、窒素バブリングを12時間行い脱気した。開始剤として、2,2'-Azobis(isobutyronitrile) 41.2mgをDMSO 5.0mlに溶解させて試験管に加えたのち、70℃で加熱攪拌した。9時間後、得られたポリマーを、透析膜を用いて精製を行い、水、塩酸を用いて洗浄することで、未反応のモノマーと化学式(N−0)のモノマーの単独重合体を除去し、ポリマー 0.9681gを回収した。
【0229】
1H-NMRの結果より、モノマーのフェニル構造に由来するピークがシフトしていた。このことから、得られたポリマーは、その結果、下記式(N−1):
【0230】
【化40】

【0231】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(NM):(NF)=95:5で含有しているポリマー共重合体であることが確認された。得られたポリマーは、Mn =21000、Mw =36000であった。 スケールアップにより50gを得、この化合物を例示化合物N−1として、トナー調製ならびに評価に供した。
【0232】
<実施例N−2>
表5−1に示すように、
・原料として、A−1で得られたポリマーの代わりに、N−1で得られたポリマーを用いる点
・ポリマー使用量
・エステル化剤の使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−2と同様の操作を行い、ポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表5−2に示す。
【0233】
【表8】

【0234】
【化41】

【0235】
スケールアップにより上記共重合体50gを得、この化合物を例示化合物N−2とした。
【0236】
<実施例O−O>
実施例N−0で得られたモノマーをイオン交換樹脂を用いて、脱塩し、SYNTHETIC COMMUNICATIONS, 15(12), 21, 1057-1062 (1985)を参考に、下記式(O−0):
【0237】
【化42】

【0238】
を合成した。
【0239】
窒素気流下、化学式(N-O)で示される化合物の脱塩体3.5032g、トリメチルオルトフォルメート20ml、重合禁止剤としてp−ベンゾキノンをフラスコにいれて、70℃で5時間加熱した。反応混合物を冷却し、減圧濃縮を行った。水3Lで2回洗浄し、ヘキサン3Lで2回洗浄したのち、クロロホルムに再溶解させたのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
【0240】
得られた化合物の構造決定は、 1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400;共鳴周波数:400MHz;測定核種: 1H;使用溶媒:CDCl3;測定温度:室温)により行った。 1H−NMRの結果より、スルホン酸メチルに由来するピークが3〜4ppmに見られることから、スルホン酸がスルホン酸メチルになっていることから明らかになった。また、元素分析により、Naの存在が検出限界以下であったことにより、メチルステル化が進んでいることも示唆された。さらに、電位差滴定装置AT510(京都電子製)を用いた酸価滴定により、スルホン酸に由来する当量点が見られなかったことからも、スルホン酸がスルホン酸メチルになっていることから明らかになった。このモノマーを次の重合に用いた。
【0241】
<実施例O−2>
実施例O−0で得られたモノマー0.3930g、スチレン2.7mlを30mLすり付き試験管に加え、DMSO 20mlを加えて溶解し、窒素バブリングを12時間行い脱気した。開始剤として、2,2'-Azobis(isobutyronitrile) 41.2mgをDMSO 5.0mlに溶解させて試験管に加えたのち、70℃で加熱攪拌した。9時間後、得られたポリマーを、透析膜を用いて精製を行い、水、塩酸を用いて洗浄することで、未反応のモノマーと化学式(O−0)のモノマーの単独重合体を除去し、ポリマー 0.9658gを回収した。
【0242】
1H−NMRの結果より、モノマーのフェニル構造に由来するピークがシフトしていた。このことから、得られたポリマーは、その結果、下記式(O−2):
【0243】
【化43】

【0244】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(OM):(OF)=95:5で含有しているポリマー共重合体であることが確認された。得られたポリマーは、Mn =20000、Mw =35000であった。 スケールアップにより50gを得、この化合物を例示化合物O−1とした。
【0245】
<実施例P−2>
実施例A−1で得られた、ポリマー0.9993gをフラスコにいれ、オルトギ酸トリメチル7.30gを加えて、80℃で8時間攪拌した。反応終了後、ヘキサン100mlに滴下を行い、ろ過によりポリマーを回収した。さらに、THF10mlに溶解し、ヘキサン100mlに再沈殿を行い、ポリマー0.8700gを回収した。
【0246】
1H−NMRの結果より、スルホン酸メチルに由来するピークが3〜4ppmに見られた。このことから、得られたポリマーは、下記式(P−2):
【0247】
【化44】

【0248】
に示すユニットを6mol%含有しているポリマー共重合体であることが確認された。また、酸価滴定により、スルホン酸に由来する当量点が見られなかったことからも、スルホン酸がスルホン酸メチルになっていることから明らかになった。得られたポリマーは、Mn =17000、Mw =43000であった。
【0249】
<実施例Q−2>
実施例A−1で得られた、ポリマー1.0032gをフラスコに入れて、オルトギ酸トリエチル10.20gを加えて、100℃で8時間攪拌した。反応終了後、ヘキサン100mlに滴下を行い、ろ過によりポリマーを回収した。さらに、THF10mlに溶解し、ヘキサン100mlに再沈殿を行い、ポリマー0.8050gを回収した。
【0250】
1H−NMRの結果より、得られたポリマーは、下記式(Q−2):
【0251】
【化45】

【0252】
に示すユニットを6mol%含有しているポリマー共重合体であることが確認された。また、酸価滴定により、スルホン酸に由来する当量点が見られなかったことからも、スルホン酸がスルホン酸メチルになっていることから明らかになった。得られたポリマーは、Mn =18000、Mw =46000であった。
【0253】
<実施例R−0>
特開2002-138111、Macromolecules, 30, 2016-2020 (1997)を参考に、下記式(R−0):
【0254】
【化46】

【0255】
で示される、モノマーを合成した。
【0256】
原料として2−アミノベンゼンスルフォン酸6.5g、トリエチルアミン8.9gをTHF70mlに溶解させ氷浴で冷却し、攪拌した。そこにp−ビニルベンゾイルクロライドを少しづつ滴下を行い、滴下終了後5時間攪拌を行った。反応終了後、イオン交換水70mlを加えて、溶媒留去を行った。酢酸エチル、4N塩酸を70mlを用いて分液洗浄後、溶媒を留去して、シリカゲルカラムを用いた精製を行い、モノマー8.0gを得ることができた。得られた化合物の構造決定は、 1H−NMR測定により行った。
【0257】
1H−NMRの測定結果を図1に示す。ここで得られたモノマーを次の重合に用いた。
【0258】
<実施例R−1>
実施例R−0で得られたモノマー303.3mg、スチレン1.8mlを三口フラスコに入れて、THF45.6mlを加えて溶解し、窒素バブリングを行い脱気した。開始剤として、2,2'-Azobis(isobutyronitrile) 32.8mgを加えたのち、70℃で加熱攪拌した。9時間後、得られたポリマーを、水、イソプロパノールを用いて透析し、さらには、得られたポリマーを水、塩酸を用いて洗浄することによりポリマー1.5876gを回収した。1H-NMRの結果より、モノマーの二重結合のピークが消失し、モノマーのフェニル構造に由来するピークがシフトしていた。このことから、得られたポリマーは、その結果、下記式(R−1):
【0259】
【化47】

【0260】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(RM):(RF)=93:7で含有しているポリマー共重合体であることが確認された。得られたポリマーは、Mn =15000、Mw =28000であった。
【0261】
<実施例R−2>
表6−1に示すように、
・原料として、A−1で得られたポリマーの代わりに、R−1で得られたポリマーを用いる点
・ポリマー使用量
・エステル化剤の使用量
・溶媒使用量
以外は、実施例A−2と同様の操作を行い、ポリマーを合成した。
その合成結果、分析結果を表6−2に示す。
【0262】
【表9】

【0263】
【化48】

【0264】
<実施例S−O>
実施例R−0で得られたモノマーを用いて、下記式(S−0):
【0265】
【化49】

【0266】
を合成した。
【0267】
窒素気流下、化学式(R-O)で示されるモノマー6.0gを、クロロホルム150ml、メタノール50mlを加えて溶解させ、氷浴で0℃まで冷却した。2mol/Lのトリメチルシリルジアゾメタン−ヘキサン溶液(Aldrich社製)を60mlを少しづつ滴下し、滴下終了後、3時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去した後、クロロホルム300ml、メタノール100mlを加えて溶解させ、溶媒留去するという操作を3回繰り返したのち、シリカゲルカラムを用いて、精製を行い、モノマー4.0gを得ることができた。
【0268】
1H−NMRの測定結果を図2に示す。1H−NMRの結果より、スルホン酸メチルに由来するピークが3〜4ppmに見られることから、スルホン酸がスルホン酸メチルになっていることから明らかになった。
【0269】
<実施例S−2>
実施例S−0で得られたモノマー317.4mg、スチレン1.8mlを三口フラスコに入れて、THF45.9mlを加えて溶解し、窒素バブリングを行い脱気した。開始剤として、2,2'-Azobis(isobutyronitrile) 32.8mgを加えたのち、70℃で加熱攪拌した。9時間後、得られたポリマーを、水、イソプロパノールを用いて透析し、ポリマー1.7600gを回収した。
【0270】
1H-NMRの結果より、モノマーの二重結合のピークが消失し、モノマーのフェニル構造に由来するピークがシフトしていた。このことから、得られたポリマーは、その結果、下記式(R−2):
【0271】
【化50】

【0272】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(SM):(SF)=92:8で含有しているポリマー共重合体であることが確認された。得られたポリマーは、Mn =21000、Mw =34000であった。
【0273】
<実施例T−1>
下記式(T−0):
【0274】
【化51】

【0275】
に示すユニットを、含有比率(モル%)(M):(F)=91:9で含有し、数平均分子量Mn =63000、重量平均分子量Mw =84000であるポリマーを原料として用いた。
【0276】
窒素雰囲気下、ポリマー0.5g、2−アミノベンゼンスルホン酸0.3597gを三口フラスコに入れて、ピリジン4.0ml加えて攪拌した後、亜リン酸トリフェニル1.10mlを加え、115℃で6時間加熱した。反応終了後、ピリジンを留去し、クロロホルム50ml加えてポリマーを溶解させた。2N塩酸50ml、水50mlを用いて分液洗浄後、溶媒を留去してポリマーを回収した。ポリマー0.27gを取り分け、クロロホルム1.0mlに溶解し、イソプロパノール200mlに再沈殿を行った。回収したポリマーを、透析膜を用いて精製を行った。
【0277】
1H−NMRの測定結果を図3に示す。1H−NMRの結果より、2−アミノベンゼンスルホン酸のフェニル基に由来するピークがシフトしていた。その結果、得られたポリマーは、その結果、下記式(T−1):
【0278】
【化52】

【0279】
に示すユニットを、6mol%含有しているポリマー共重合体であることが確認された。
【0280】
<実施例T−2>
実施例T−1で得られた、ポリマー0.07969gをナスフラスコに入れて、クロロホルム2.0ml、メタノール0.5mlを加えて溶解し、0℃まで冷却した。これにエステル化剤として、2mol/Lのトリメチルシリルジアゾメタン−ヘキサン溶液(Aldrich社製)0.3mlを加えて、4時間攪拌した。反応終了後、エバポレーターにより溶媒を留去した後、ポリマーを回収した。更に、クロロホルム8.0ml、メタノール2.0mlを加えて、ポリマーを再溶解させて、エバポレーターにより溶媒を留去した。この再溶解、溶媒留去の操作を3回繰り返した。ここで回収したポリマーを、減圧乾燥することでポリマー0.08339gを得た。
【0281】
1H−NMRの測定結果を図4に示す。1H−NMRの結果より、スルホン酸メチルに由来するピークが3〜4ppmに見られた。このことから、得られたポリマーは、下記式(T−2):
【0282】
【化53】

【0283】
に示すユニットを6mol%含有しているポリマー共重合体であることが確認された。また、酸価滴定により、スルホン酸に由来する当量点が見られなかったことからも、スルホン酸がスルホン酸メチルになっていることから明らかになった。得られたポリマーは、Mn =43000、Mw =70000であった。
【0284】
(実施例1)
先ず、高速撹拌装置TK-ホモミキサーを備えた2リットル用の四つ口フラスコ中に、Na3PO4水溶液を添加し、回転数を 10,000 rpmに調整し、60℃に加温せしめた。ここにCaCl2水溶液を徐々に添加していき、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。一方、下記組成をボールミルを用いて3時間分散させた後、離型剤(カルナバワックス、融点83℃)10質量部と、重合開始剤である2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10質量部を添加して重合性単量体組成物を調製した。
・スチレン単量体:82質量部
・エチルヘキシルアクリレート単量体:18質量部
・ジビニルベンゼン単量体:0.1質量部
・シアン着色剤(C.I.ピグメントブルー 15):6質量部
・酸化ポリエチレン樹脂(分子量 3200、酸価 8):5質量部
・例示化合物H-2:2質量部
次に、上記で得られた重合性単量体組成物を、先に調製した水系分散媒体中に投入し、回転数 10,000 rpmを維持しつつ造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、65℃で3時間反応させた後、80℃で6時間重合させて重合反応を終了した。反応終了後、懸濁液を冷却し、酸を加えて難水溶性分散剤Ca3(PO4)2を溶解した後、濾過、水洗、乾燥して青色重合粒子(1)を得た。得られた青色重合粒子(1)のコールターカウンターマルチサイザー(コールター社製)を用いて測定した粒度は、重量平均粒径7.4μmで、微粉量(個数分布における 3.17μm以下の粒子の存在割合)は 4.9個数%であった。
【0285】
上記で調製した青色重合粒子(1) 100質量部に対して、流動向上剤としてヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET: 270m2/g) 1.3質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して外添する。そして、これを本実施例の青色トナー(1)とした。更に、この青色トナー(1) 7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径: 45μm) 93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系青色現像剤(1)を調製した。
【0286】
(実施例2〜5)
例示化合物H-2をそれぞれ例示化合物B-1、F-1、M-1、G-2とした以外は実施例1と同様の方法により、実施例2〜5の青色トナー(2)〜(5)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、実施例2〜4の2成分系青色現像剤(2)〜(5)を得た。
【0287】
(比較例1)
例示化合物を使用しない点以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の青色トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、比較例1の2成分系青色現像剤(6)を得た。
【0288】
<評価>
上記実施例1で得られた2成分系青色現像剤(1)〜(5)および比較例1で得られた2成分系青色現像剤(6)について、以下のように評価を行う。常温常湿(25℃、60%RH)、及び高温高湿(30℃、80%RH)のそれぞれの環境下で、先に述べた帯電量の測定方法を用いて、10秒、及び 300秒攪拌後のトナーの帯電量を測定する。そして、2成分ブローオフ帯電量の測定値から少数以下第2位を四捨五入し、下記の基準で評価した。その結果を表7にまとめて示した。
【0289】
[帯電性]
◎:非常に良好(-20.0μC/g 以下)
○:良好(-20.0を超えて-10.0μC/g以下)
△:実用可(-10.0を超えて-5.0μC/g以下)
×:実用不可(-5.0μC/g より大)
(実施例6〜10)
例示化合物B-2、L-1、H-1、J-2、A-2をそれぞれ 2.0質量部を用い、シアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(ハンザイエローG)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6〜10のイエロー(黄色)トナー(1)〜(5)を得た。これらのトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、2成分系イエロー(黄色)現像剤(1)〜(5)を得た。
【0290】
(比較例2)
例示化合物を使用しない点およびシアン着色剤の代わりにイエロー着色剤(ハンザイエローG)を使用する点以外は実施例1と同様の方法により、比較例2のイエロー(黄色)トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、比較例2の2成分系イエロー(黄色)現像剤(6)を得た。
【0291】
<評価>
上記実施例6〜10で得られた2成分系イエロー(黄色)現像剤(1)〜(5)と、比較例2で得られた2成分系イエロー(黄色)現像剤(6)について、実施例1と同様にトナーの帯電量を測定し、評価した。その結果を表7にまとめて示した。
【0292】
(実施例11〜15)
例示化合物K-2、C-1、G-1、I-2、N-1をそれぞれ 2.0質量部使用し、シアン着色剤の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量 110mL / 100g)を使用する。その点以外は、実施例1と同様の方法で、実施例11〜15の黒色トナー(1)〜(5)を得た。これらのトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、2成分系黒色現像剤(1)〜(5)を得た。
【0293】
(比較例3)
例示化合物を使用しない点およびシアン着色剤の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量 110mL / 100g)を使用する点以外は実施例1と同様の方法により、比較例3の黒色トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例1と同様にして、比較例3の2成分系黒色現像剤(6)を得た。
【0294】
<評価>
上記実施例11〜15で得られた2成分系黒色現像剤(1)〜(5)と、比較例3で得られた2成分系黒色現像剤(6)について、実施例1と同様に、トナーの帯電量を測定し、評価した。その結果を表7にまとめて示した。
【0295】
(実施例16)
・スチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(ガラス転移温度 70℃:100質量部
・マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド 114):5質量部
・ワックス(低分子ポリエチレン、融点94℃):7質量部
・例示化合物N-2:2質量部
上記組成を混合し、二軸エクストルーダー(L/D= 30)で溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後に分級して、粉砕法によってマゼンタ着色粒子(1)を得た。このマゼンタ着色粒子(1)の粒度は、重量平均粒径 7.2μm、微粉量は 5.7個数%であった。
【0296】
このマゼンタ着色粒子(1)100質量部に対して、流動向上剤として、ヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET: 250m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本実施例のマゼンタ(赤色)トナー(1)を得た。更に、得られたマゼンタ(赤色)トナー(1)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径: 45μm)93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(1)を調製した。
【0297】
(実施例17〜20)
例示化合物N-2をそれぞれ例示化合物F-2、I-1、K-1、M-2とした以外は実施例16と同様の方法により、実施例17〜20のマゼンタ(赤色)トナー(2)〜(5)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、実施例17〜20の2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(2)〜(5)を得た。
【0298】
(比較例4)
例示化合物を使用しない点以外は実施例16と同様の方法により、比較例4のマゼンタ(赤色)トナー(6)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、比較例4の2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(6)を得た。
【0299】
<評価>
上記実施例17〜20で得られた2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(1)〜(5)と、比較例4で得られた2成分系マゼンタ(赤色)現像剤(6)について、実施例1と同様に、トナーの帯電量を測定し、評価した。その結果を表7にまとめて示した。
【0300】
(実施例21〜25)
例示化合物P-2、D-1、E-2、J-1、L-2をそれぞれ 2.0質量部使用し、マゼンタ顔料の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量 110mL / 100g)を使用する。それ以外は、実施例16と同様の方法により、実施例21〜25の黒色トナー(7)〜(11)を得た。これらのトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、2成分系黒色現像剤(7)〜(11)を得た。
【0301】
(比較例5)
例示化合物を使用しない点およびマゼンタ顔料の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量 110mL / 100g)を使用する点以外は実施例16と同様の方法により、比較例5の黒色トナー(12)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例16と同様にして、比較例5の2成分系黒色現像剤(12)を得た。
【0302】
<評価>
上記実施例21〜25で得られた2成分系黒色現像剤(7)〜(11)と、比較例5で得られた2成分系黒色現像剤(12)について、実施例1と同様に、トナーの帯電量を測定し、評価した。その結果を表7にまとめて示した。
【0303】
(実施例26)
・ポリエステル樹脂:100質量部
・カーボンブラック(DBP吸油量 110mL/100g):5質量部
・ワックス(低分子ポリエチレン、融点94℃):7質量部
・例示化合物E-1:2質量部
ポリエステル樹脂は次のようにして合成した。ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 751部、テレフタル酸 104部および無水トリメリット酸 167部をジブチルチンオキサイド2部を触媒として重縮合し、軟化点 125℃のポリエステル樹脂を得た。上記組成を混合し、二軸エクストルーダー(L/D=30)で溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後に分級して、粉砕法によって黒色着色粒子(13)を得た。この黒色着色粒子(13)の粒度は、重量平均粒径 7.6μm、微粉量は 4.8個数%であった。
【0304】
この黒色着色粒子(13)100質量部に対して、流動向上剤として、ヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET: 250m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本実施例の黒色トナー(13)を得た。 更に、得られた黒色トナー(13) 7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径: 45μm) 93質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系黒色現像剤(13)を調製した。
【0305】
(実施例27〜30)
例示化合物E-1をそれぞれ例示化合物A-1、D-2、Q-2、O-2とした以外は実施例26と同様の方法により、実施例27〜30の黒色トナー(14)〜(17)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例26と同様にして、実施例27〜30の2成分系黒色現像剤(14)〜(17)を得た。
【0306】
(比較例6)
例示化合物を使用しない点以外は実施例26と同様の方法により、比較例6の黒色トナー(18)を得た。このトナーの特性を実施例1と同様に測定し、その結果を表7に示した。また、これを用いて実施例26と同様にして、比較例6の2成分系黒色現像剤(18)を得た。
【0307】
<評価>
上記実施例26〜30で得られた2成分系黒色現像剤(13)〜(17)と、比較例6で得られた2成分系黒色現像剤(18)について、実施例1と同様にトナーの帯電量を測定し、評価した。その結果を表7にまとめて示した。
【0308】
【表10】

【0309】
(実施例31〜実施例36および比較例7〜比較例12)
実施例31〜実施例36および比較例7〜比較例12では、LBP5500(商品名、キヤノン株式会社製)を改造して評価に使用した。その際、現像剤として、実施例1、6、11、16、21,26および比較例1〜6で得た、シアントナー、イエロートナー、マゼンタトナー又はブラックトナーでトナー画像を形成した。
【0310】
<評価>
以上の条件で、常温常湿(25℃、60%RH)及び、高温高湿(30℃、80%RH)環境下、8枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度になるようにLBP5500を改造し、プリントを行った。実施例1、6、11、16、21、26のトナーと、比較例1〜6のトナーをそれぞれ使用し、逐次補給しながら、単色での間欠モードでプリントアウト試験を行なった。得られたプリントアウト画像を下記の項目について評価した。評価結果を表8にまとめて示した。なお、間欠モードとは、一枚プリントアウトする毎に 10秒間現像器を休止させ、再起動時の予備動作でトナーの劣化を促進させるモードのことである。
【0311】
[プリントアウト画像評価]
1.画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が 0.00 の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、評価に用いた。
◎:優(終了時の画像濃度が 1.40以上)
○:良(終了時の画像濃度が 1.35以上 1.40未満)
△:可(終了時の画像濃度が 1.00以上 1.35未満)
×:不可(終了時の画像濃度が 1.00未満)
2.画像カブリ
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。具体的には、下記のような方法で評価した。反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD 社製 商品名:REFLECTOMETER MODEL TC-6DS)を用いて測定した。すなわち、プリント後の白地部反射濃度の最低値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとし、これらの値から(Ds-Dr)を求め、これをカブリ量とし、下記の基準で評価した。
◎:非常に良好(カブリ量が0%以上 1.5%未満)
○:良好(カブリ量が 1.5%以上 3.0%未満)
△:実用可(カブリ量が 3.0%以上 5.0%未満)
×:実用不可(カブリ量が 5.0%以上)
3.転写性
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、黒ベタ画像を所定枚数プリントアウトをし、プリント終了時の画像の画像抜け量を目視により観察し、下記の基準で評価した。
◎: 非常に良好(殆ど発生せず)
○: 良好(軽微)
△: 実用可
×: 実用不可
また、実施例31〜実施例36および比較例7〜比較例12で、5000枚画像出力を行なったときの感光ドラム及び中間転写体表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響(LBP5500とのマッチング)を目視で評価した。
【0312】
実施例31〜実施例36のトナーを使用した系では、感光ドラム及び中間転写体表面の傷や、残留トナーの固着が全く確認できず、LBP5500とのマッチングが非常に良好であった。一方、比較例7〜12のトナーを使用した系では、いずれも感光ドラム表面にトナーの固着が認められた。更に、比較例7〜12 のトナーを使用した系では、中間転写体表面上にトナーの固着と表面傷が確認でき、画像上にも縦スジ状の画像欠陥を生じるといった、LBP5500とのマッチングにおいて問題を生じた。
【0313】
【表11】

【0314】
(実施例37〜実施例39、比較例13〜比較例15)
実施例37〜実施例39、比較例13〜比較例15の実施にあたっては、現像剤として、実施例1、6、11および比較例1〜3で得たトナーをそれぞれ用いた。また、画像を形成する手段として LBP5500にリユース機構(回収トナーを利用するシステム)を取り付けて改造し、再設定した画像形成装置を用いた。
【0315】
以上のようにして、常温常湿(25℃、60%RH)環境下、8枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度で、トナーを逐次補給しながら連続モードで、3万枚までプリントアウトを行なう。なお、連続モードとは、現像器を休止させることなくトナーの消費を促進させるモードのことである。
【0316】
得られたプリントアウト画像について画像濃度を測定し、その耐久について下記に示した基準で評価した。又、10,000枚目の画像を観察し、画像カブリについて下記の基準で評価した。又、同時に、耐久試験後におけるLBP5500を構成している各装置の様子を観察し、各装置と上記の各トナーとのマッチングについても評価した。以上の結果を表9にまとめて示した。
【0317】
[耐久時の画像濃度推移]
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が 0.00 の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、評価に用いた。
◎:優(終了時の画像濃度が 1.40以上)
○:良(終了時の画像濃度が 1.35以上 1.40未満)
△:可(終了時の画像濃度が 1.00以上 1.35未満)
×:不可(終了時の画像濃度が 1.00未満)
[画像カブリ]
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。評価は先に記載した反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.,LTD 社製 商品名:REFLECTOMETER MODEL TC-6DS)を用いた方法により行った。
【0318】
[画像形成装置マッチング評価]
1.現像スリーブとのマッチング
プリントアウト試験終了後、現像スリーブ表面への残留トナーの固着の様子とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
◎: 非常に良好(未発生)
○: 良好(殆ど発生せず)
△: 実用可(固着があるが、画像への影響が少ない)
×: 実用不可(固着が多く、画像ムラを生じる)
2.感光ドラムとのマッチング
感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
◎: 非常に良好(未発生)
○: 良好(僅かに傷の発生が見られるが、画像への影響はない)
△: 実用可(固着や傷があるが、画像への影響が少ない)
×: 実用不可(固着が多く、縦スジ状の画像欠陥を生じる)
3.定着装置とのマッチング
定着フィルム表面の様子を観察し、表面性及び残留トナーの固着状況の結果を総合平均化して、その耐久性を評価した。
【0319】
(1)表面性
プリントアウト試験終了後の定着フィルム表面の傷や削れの発生の様子を目視で観察し、評価した。
◎: 非常に良好(未発生)
○: 良好(殆ど発生せず)
△: 実用可
×: 実用不可
(2)残留トナーの固着状況
プリントアウト試験終了後の定着フィルム表面の残留トナーの固着状況を目視で観察し、評価した。
◎: 非常に良好(未発生)
○: 良好(殆ど発生せず)
△: 実用可
×: 実用不可
【0320】
【表12】

【0321】
(実施例40)
実施例37〜実施例39、比較例13〜比較例15で用いたLBP5500のトナーリユース機構を取り外し、プリントアウト速度を 16枚(A4サイズ)/分とした。それ以外は実施例37と同様にし、実施例1の青色トナー(1)を逐次補給しながら連続モードでプリントアウト試験を行なった。なお、連続モードとは、現像器を休止させることなく、トナーの消費を促進させるモードのことである。
【0322】
得られたプリントアウト画像評価ならびに用いたLBP5500とのマッチングを実施例37〜実施例39、比較例13〜比較例15 と同様の項目について評価した。その結果、いずれの項目についても良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0323】
本発明に係るポリマーは、例えば、電子写真技術に用いられるトナーに含有される荷電制御剤に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0324】
【図1】実施例R−0における1H−NMRの測定結果
【図2】実施例S−0における1H−NMRの測定結果
【図3】実施例T−1における1H−NMRの測定結果
【図4】実施例T−2における1H−NMRの測定結果
【図5】トナーの帯電量を測定するブローオフ帯電量測定装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0325】
41 帯電量測定装置
42 測定容器
43 スクリーン
44 フタ
45 真空計
46 風量調節弁
47 吸引口
48 コンデンサー
49 電位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)で示されるユニットを有することを特徴とするポリマー。
【化1】

(式中、Rは−A1−SO2R1を表す。R1w及びR1Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R1yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A01は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A1は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
R1は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR1aである。R1aは、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
【請求項2】
請求項1に記載のユニットと、化学式(101)で示されるユニットとの共重合体であることを特徴とするポリマー。
【化2】

(式中、R101w及びR101xはそれぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R101yはCH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。R101は、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、置換もしくは未置換の複素環構造、ハロゲン原子、−CO−R101a、−O−R101b、−COO−R101c、−OCO−R101d、−CONR101eR101f、−CN、またはN原子を含む環構造のいずれかである。R101a、R101b、R101c、R101d、R101e及びR101fはそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。ただし、化学式(101)で示されるユニットには、前記化学式(1)で示すことのできるユニットは含まれない。)
【請求項3】
化学式(201)で示す化合物。
【化3】

(式中、Rは−A201−SO2R201を表す。R201w及びR201Xは、それぞれ独立してハロゲン原子、または水素原子である。R201yは、CH3基、ハロゲン原子、または水素原子である。
A0201は、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
A201は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。
R201は、OH、ハロゲン原子、ONa、OKまたはOR201aである。R201aは、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素構造、置換もしくは未置換の芳香族環構造、または置換もしくは未置換の複素環構造である。)
【請求項4】
静電荷像現像トナーにおいて、少なくとも、バインダー樹脂と着色剤と、請求項1または2に記載のポリマーとを含有することを特徴とする静電荷像現像トナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−154179(P2007−154179A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306564(P2006−306564)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】