説明

スルホン酸基含有ポリマー、イオン交換膜、膜/電極接合体、燃料電池、ポリマー組成物

【課題】物理耐久性と電極触媒層との接合性が改良されたイオン交換膜および、それに用いることができる新規スルホン酸基含有ポリマーの提供。
【解決手段】下記化学式1〜4で表される全ての構造を必須の繰り返し単位として有するスルホン酸基含有ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造のスルホン酸基含有ポリマーと該ポリマーの組成物、該ポリマーを用いたイオン交換膜、膜/電極接合体、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも高分子固体電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有するため、電気自動車や分散発電などの電源装置としての開発が進んできている。
【0003】
高分子固体電解質膜には通常プロトン伝導性のイオン交換膜が使用される。高分子固体電解質膜にはプロトン伝導性以外にも、燃料の水素などの透過を防ぐ燃料透過抑止性や機械的強度などの特性が必要である。このような高分子固体電解質膜としては、例えば米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜が知られている。しかしながら、分子中にフッ素を含むため、使用条件によっては排気ガス中に有害なフッ酸が発生することや、廃棄時に環境への負荷が大きいことなどが問題視されている。
【0004】
パーフルオロカーボンスルホン酸系イオン交換膜は、燃料電池の電解質膜としてバランスのよい特性を示すものの、コストや性能などで、より優れた膜を得るために、炭化水素系イオン交換膜の開発が盛んに行われている。
【0005】
多くの炭化水素系イオン交換膜には、ポリイミドやポリスルホンなどの耐熱性ポリマーに、スルホン酸基などのイオン性基を導入したポリマーが用いられている。(例えば特許文献1を参照)
【0006】
一般に炭化水素系イオン交換膜では、パーフルオロカーボンスルホン酸系イオン交換膜と同等のプロトン伝導性を発現させるためには、より多くのイオン性基を導入する必要がある。しかしながら、イオン性基の量が多くなると、水による膨潤性が大きくなり、吸湿時において、寸法変化や、物理特性の低下などの問題の原因となる。そのため、ポリマーの構造を改良し、より膨潤性を抑制した炭化水素系イオン交換膜もある。(例えば特許文献2を参照)
【0007】
しかしながら、膨潤性を小さくしようとすると、しばしば物理的な耐久性や電極触媒層との接合性が、低下してしまうといった問題が起こることがあった。
【0008】
【特許文献1】特表2004−509224号公報
【特許文献2】特開2004−179779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、物理耐久性と電極触媒層との接合性が改良されたイオン交換膜および、それに用いることができる新規スルホン酸基含有ポリマー、および該イオン交換膜および/または該スルホン酸基含有ポリマーを用いた膜/電極接合体と燃料電池、該スルホン酸基含有ポリマー組成物の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の通りである。
【0011】
1.化学式1〜4で表される全ての構造を必須の繰り返し単位として有することを特徴とするスルホン酸基含有ポリマー。
【0012】
【化4】

【0013】
[化学式1〜4において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、Z〜Zはそれぞれ独立してOまたはS原子のいずれかを、Arは3価の芳香族基を、Arは電子吸引性基を有する2価の芳香族基を、Rはそれぞれ炭素数2〜30のアルキル基を、xは1〜6の整数を、それぞれ表す。]
【0014】
2.Arが、化学式5〜8で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする上記1に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0015】
【化5】

【0016】
3.Arが、下記化学式5または6で表される構造であることを特徴とする上記2に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0017】
4.Rが炭素数4〜20の直鎖アルキル基であることを特徴とする上記1または2に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0018】
5.Arが、下記化学式9〜12で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0019】
【化6】

【0020】
6.Arが、化学式11または12のいずれかであることを特徴とする上記5に記載のポリマー。
【0021】
7.ZおよびZがいずれもO原子であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0022】
8.Xが−S(=O)−基であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0023】
9.分子中における、化学式1〜4でそれぞれ表される繰り返し構造、およびその他の繰り返し構造のモル比が数式1〜3を満たすことを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0024】
【数4】

【0025】
[上記式中、n1〜n4は、分子内における化学式1〜4で表される繰り返し構造のモル%を、n5はその他の繰り返し構造のモル%を、それぞれ表す。]
【0026】
10.上記1〜9のいずれかに記載のポリマーを用いたイオン交換膜。
【0027】
11.n1〜n5が下記数式4または5を満たし、ダイレクトメタノール燃料電池に用いることを特徴とする上記10に記載のイオン交換膜。
【0028】
【数5】

【0029】
12.n1〜n5が下記数式6または7を満たし、水素を燃料とする固体高分子形燃料電池に用いることを特徴とする上記10に記載のイオン交換膜。
【0030】
【数6】

【0031】
13.上記10〜12のいずれかに記載のイオン交換膜を用いた膜/電極接合体。
【0032】
14.電極触媒層に、上記1〜9のいずれかに記載のポリマーを用いたことを特徴とする膜/電極接合体。
【0033】
15.上記13または14に記載の膜/電極接合体を用いた燃料電池。
【0034】
16.上記1〜9のいずれかに記載のポリマーを含む組成物。
【発明の効果】
【0035】
本発明による新規スルホン酸基含有ポリマー又は該組成物から得られるイオン交換膜は、従来の炭化水素系イオン交換膜に比べて、燃料電池として用いた場合に、高耐久性や高出力を可能にするという優れた効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、下記化学式1〜4で表される全ての構造を必須の繰り返し単位として有することを特徴とするスルホン酸基含有ポリマーである。
【0038】
【化7】

【0039】
[化学式1〜4において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、Z〜Zはそれぞれ独立してOまたはS原子のいずれかを、Arは3価の芳香族基を、Arは電子吸引性基を有する2価の芳香族基を、Rはそれぞれ炭素数2〜30のアルキル基を、xは1〜6の整数を、それぞれ表す。]
【0040】
化学式1〜4で表される繰り返し単位は、それぞれランダムに結合していてもよいし、同じ繰り返し単位が連続して結合していてもよい。また、その場合、全ての種類の繰り返し単位が連続して結合していてもよいし、一部の種類のみが連続して結合していてもよい。
【0041】
Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を表すが、−S(=O)−基であると、溶媒への溶解性が高まるため好ましい。また、−C(=O)−基であると、ポリマーに光架橋性を付与することが可能になるため好ましい。
【0042】
YはHまたは1価の陽イオンを表すが、燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合には、YはHであることが好ましい。また、溶解、成型、製膜などの加工においては、YがHであるよりも1価の陽イオンであるほうが、スルホン酸基の熱安定性が高まるため好ましい。1価の陽イオンとしては、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン、第四級アミン塩などが例として挙げることができ、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオンが好ましい。アルカリ金属塩となっているスルホン酸基は、硫酸、塩酸、過塩素酸などの強酸またはその水溶液でポリマーを処理することによって、スルホン酸基に変換することができる。スルホン酸基を有するポリマーは高いプロトン伝導性を示し、プロトン交換樹脂や、プロトン交換膜として用いることができる。中でもプロトン交換膜は、固体高分子形燃料電池の電解質として用いることができ、本発明のポリマーを用いると優れた性能を有する燃料電池を得ることができる。
【0043】
およびZはそれぞれ独立してOまたはS原子のいずれかを表す。ZおよびZがいずれもO原子であると、モノマーのコストや毒性が高くならず、重合における着色などが起こりにくいため好ましい。ZおよびZのうち、少なくともいずれかがS原子であることが耐酸化性の面で好ましく、さらにZおよびZがS原子であるとより好ましい。
【0044】
化学式2および化学式4におけるArは、3価の芳香族基である。ここでいう芳香族基とは、主たる部分が芳香族基で構成された基のことをいい、部分的に、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、イミノ基、ウレタン基、ウレア基、エーテル基、スルフィド基、スルホン基、カルボニル基、ホスフィン基など、他の基を含んでいてもよい。また、芳香族基とは、芳香族性を有する基を表し、ベンゼン環や、ピリジン環などの複素環や、ナフタレン環、アントラセン環、ビフェニレン基、ターフェニレン基などの複数の芳香族基が、縮合または連結した化合物を意味する。好ましくは、下記化学式5〜8で表される構造から選ばれる一種以上の基であることが好ましい。
【0045】
【化8】

【0046】
化学式5〜8において、xは1または2であることが好ましい。xが多くなると高重合度のポリマーを得ることが困難になる場合がある。また、化学式5〜8におけるRは炭素数2〜30のアルキル基を表すが、炭素数が4〜20であると、特性向上の効果が大きいため、より好ましい。また、Rは、分岐を有していてもよいが、直鎖であることが好ましい。最も好ましくは炭素数が5〜15の直鎖アルキル基である。
【0047】
化学式3および化学式4におけるArは、電子吸引性基を有する芳香族基であることが好ましい。電子吸引性基の例としては、スルホン基、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィン基、シアノ基、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基、ニトロ基、ハロゲン基などが挙げられ、シアノ基、スルホン基、カルボニル基が好ましい。さらに、ArおよびArは下記化学式9〜12で表される構造から選ばれる一種以上の基であることが好ましい。化学式9の構造であると、溶媒への溶解性が高まるため好ましい。また、化学式10の構造であると、ポリマーに光架橋性を付与することが可能になるため好ましい。また、化学式11または12の構造であると、ポリマーの膨潤性が小さくなるため好ましい。下記化学式9〜12の中でも、化学式11または12の構造が好ましく、化学式12の構造が最も好ましい。
【0048】
【化9】

【0049】
分子中における、化学式1〜4でそれぞれ表される繰り返し構造、およびその他の繰り返し構造のモル比は、数式1〜3を満たすことが好ましい。その他の繰り返し構造は、特に限定されるものではないが、例えば、ホスホン酸基やリン酸基などを含むようなものであると、耐酸化性が向上して好ましい。また、メチル基などのアルキル基や、アリル基、エチニル基、マレイミド基などの架橋性を有する基を含むものであると、ポリマーに架橋性を付与してイオン交換膜の耐久性や強度などを向上させることができるため好ましい。
【0050】
【数7】

【0051】
[上記式中、n1〜n4は、分子内における化学式1〜4で表される繰り返し構造のモル%を、n5はその他の繰り返し構造のモル%を、それぞれ表す。]
【0052】
数式1はポリマー中における化学式1〜4で表される繰り返し単位が、全繰り返し単位に対して、0.9〜1.0の範囲にあることを表し、0.95〜1.0の範囲であることがより好ましく、0.97〜1.0の範囲であることがさらに好ましい。化学式1〜4以外のその他の繰り返し単位を含む場合は、全繰り返し単位に対して0.001〜0.03の範囲であることがより好ましい。
【0053】
数式2は化学式1〜4で表される繰り返し単位における、スルホン酸基を含む繰り返し単位の割合を表したもので、0.1〜0.7の範囲であることが好ましい。0.1よりも低いと充分なイオン伝導性を得ることができず、0.7よりも高いと膨潤性が著しく大きくなったり、水溶性になったりして、イオン交換膜としての使用が困難になるため好ましくない。
【0054】
数式3は化学式1〜4で表される繰り返し単位における、化学式2および化学式4で表される構造の合計の割合を表したもので、0.01〜0.95の範囲であることが好ましい。0.01よりも小さいと、充分な改善効果を得ることができず、0.95よりも大きいと膜の膨潤性が大きくなるため好ましくない。
【0055】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、イオン交換樹脂や、イオン交換膜、吸湿樹脂、吸湿膜、透湿膜、電解膜などに用いることができ、特にイオン交換膜として用いることが好ましい。さらに、本発明のスルホン酸基含有ポリマーを用いたイオン交換膜は、スルホン酸基をスルホン酸型にすることでプロトン交換膜として用いることができ、燃料電池用プロトン交換膜に特に適している。また、本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、イオン交換膜などを、電極、触媒と接合する際に、接着剤として用いることにも適している。
【0056】
本発明のイオン交換膜を、燃料としてメタノール水溶液を直接用いるダイレクトメタノール燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合には、下記数式4および5を満たしていることが好ましい。
【0057】
【数8】

【0058】
数式4において、(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)の値が、0.1よりも小さいと充分なプロトン伝導性が得られず、燃料電池の出力が低くなり、0.5よりも大きいとメタノールが膜を透過する量が大きくなりすぎて燃料電池の出力が低下してしまうため好ましくない。(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)のより好ましい範囲は0.1〜0.4である。また、燃料として用いるメタノール水溶液の濃度が低い場合には(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)が大きいほうが、プロトン伝導性が大きくなるため、燃料電池の出力が高くなる。一方、高濃度のメタノール水溶液を用いる場合には、(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)が小さいほうが、メタノールの透過に伴う出力の低下を抑制することができ、燃料電池の出力を大きくすることができる。
【0059】
(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)の値は0.05〜0.95の範囲であることが好ましい。0.05より小さいと電極や触媒とイオン交換膜を接合する際に、接合不良が起きやすくなり、0.95より大きいと膨潤性が大きくなりすぎるため好ましくない。より好ましい範囲は0.2〜0.8の範囲である。(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)の値が0.2よりも小さい場合には、(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)は0.4〜0.8の範囲であることが好ましい。また、(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)の値が0.2よりも大きい場合には、(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)は0.1〜0.5の範囲であることが好ましい。
【0060】
本発明のイオン交換膜を、燃料として水素を用いる燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合には、下記数式6および7を満たしていることが好ましい。
【0061】
【数9】

【0062】
数式6において、(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)の値が、0.3よりも小さいと充分なプロトン伝導性が得られず、燃料電池の出力が低くなり、0.7よりも大きいと膜の膨潤性が大きくなりすぎて破損や出力低下などが起きやすくなり、好ましくない。(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)のより好ましい範囲は0.35〜0.7であり、より好ましくは0.4〜0.5の範囲である。
【0063】
(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)の値は0.01〜0.25の範囲であることが好ましい。0.01より小さいと電極や触媒とイオン交換膜を接合する際に、接合不良が起きやすくなり、0.25より大きいと膨潤性が大きくなりすぎるため好ましくない。より好ましい範囲は0.1〜0.2の範囲である。
【0064】
本発明のイオン交換膜は、電極や触媒を接合して膜/電極接合体とすることができる。また、本発明のイオン交換膜以外の膜に対して、電極や触媒との接着剤として、本発明のスルホン酸基含有ポリマーを用いることができる。本発明のスルホン酸基含有ポリマーを接着剤として用いる場合には、化学式1および2におけるYがHであって、スルホン酸基が酸型であることが好ましい。スルホン酸基が陽イオンと塩を形成している状態で用いる場合には、接合後、酸処理によってスルホン酸基を酸型にすることもできる。
【0065】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、適当な溶媒に溶解、分散して組成物として用いることもできる。用いることのできる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミド、N−モルフォリンオキサイドなどの非プロトン性有機極性溶媒や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などの極性溶媒、及びこれらの有機溶媒の混合物、並びに水との混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
ポリマー溶液の濃度は0.1〜50重量%の範囲が好ましい。溶液から、膜、繊維などを成型する場合には、濃度が5〜50重量%の範囲にあることがより好ましく、10〜40重量%の範囲がさらに好ましい。溶液を接着剤として用いる場合には、濃度が0.1〜20重量%の範囲であるとより好ましい。溶液を接着剤として用いる場合には、Pt、PT−Ruなどの触媒を担持したカーボン粒子や、フッ素樹脂など、他の成分を含んでいてもよい。
【0067】
本発明のおけるスルホン酸基含有ポリマーにおいて、好ましい構造の具体例である化学式13A〜13Xを以下に示すが、本発明の範囲は、以下に限定されるものではない。なお、化学式13A〜13XにおけるRは、炭素数2〜30のアルキル基を表す。Rの具体例としては、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−ドデシル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、アミル基などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
化学式13A〜13Xの中でも、化学式13A、13B、13G、13H、13M、13N、13S、13Tが、プロトン伝導性と耐膨潤性に優れるため好ましく、化学式13A、13G、13M、13Sがさらに好ましく、化学式13Aまたは13Bがよりも好ましい。
【0071】
上記化学式13A〜13Xにおいて、n1、n2、n3、n4は下記数式8および9を満たすことが好ましい
【0072】
【数10】

【0073】
(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)は、0.1〜0.7の範囲であることが好ましい。0.1よりも低いと充分なイオン伝導性を得ることができず、0.7よりも高いと膨潤性が著しく大きくなったり、水溶性になったりして、イオン交換膜としての使用が困難になるため好ましくない。
【0074】
(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)は、0.01〜0.95の範囲であることが好ましい。0.01よりも小さいと、充分な改善効果を得ることができず、0.95よりも大きいと膜の膨潤性が大きくなるため好ましくない。ポリマー中に、化学式1および化学式3に由来するビフェニル基と、化学式2および化学式4に由来するアルキル基の比が適切であることが、充分な改善効果を得るために必要である。ビフェニル基の数が少ないと、膜の膨潤性が著しく低下し、形態安定性や、耐久性に悪影響を及ぼす場合があり、アルキル基が少ない場合には、接合性や耐久性などの特性の改善効果が得られない場合がある。
【0075】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーにおいて、上記化学式2および4で表される繰り返し構造が、ポリマーの柔軟性を高め、変形に対する破壊しにくくなったりすることや、ガラス転移温度が低下することによって電極との接合性が高まることなどの効果をもたらしている。また、上記化学式1および3で表される繰り返し構造は、ポリマー全体の膨潤性を小さくしたり、メタノール透過性を小さくしたりする効果をもたらしている。
【0076】
本発明のイオン交換膜を、燃料としてメタノール水溶液を直接用いるダイレクトメタノール燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合には、下記数式10および11を満たしていることが好ましい。
【0077】
【数11】

【0078】
(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)が、0.1よりも小さいと充分なプロトン伝導性が得られず、燃料電池の出力が低くなり、0.5よりも大きいとメタノールが膜を透過する量が大きくなりすぎて燃料電池の出力が低下してしまうため好ましくない(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)のより好ましい範囲は0.1〜0.4である。また、燃料として用いるメタノール水溶液の濃度が低い場合には((n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)が大きいほうが、プロトン伝導性が大きくなるため、燃料電池の出力が高くなる。一方、高濃度のメタノール水溶液を用いる場合には(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)が小さいほうが、メタノールの透過に伴う出力の低下を抑制することができ、燃料電池の出力を大きくすることができる。
【0079】
(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)の値は0.05〜0.95の範囲であることが好ましい。0.05より小さいと電極や触媒とイオン交換膜を接合する際に、接合不良が起きやすくなり、0.95より大きいと膨潤性が大きくなりすぎるため好ましくない。より好ましい範囲は0.2〜0.8の範囲である。(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4])の値が0.2よりも小さい場合には、(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)は0.4〜0.8の範囲であることが好ましい。また(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)の値が0.2よりも大きい場合には、((n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)は0.1〜0.5の範囲であることが好ましい。
【0080】
本発明のイオン交換膜を、燃料として水素を用いる燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合には、下記数式12および13を満たしていることが好ましい。
【0081】
【数12】

【0082】
(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)が、0.3よりも小さいと充分なプロトン伝導性が得られず、燃料電池の出力が低くなり、0.7よりも大きいと膜の膨潤性が大きくなりすぎて破損や出力低下などが起きやすくなり、好ましくない。(n1+n2)/(n1+n2+n3+n4)のより好ましい範囲は0.35〜0.7であり、より好ましくは0.4〜0.5の範囲である。
【0083】
(n2+n4)/(n1+n2+n3+n4)の値は0.01〜0.25の範囲であることが好ましい。0.01より小さいと電極や触媒とイオン交換膜を接合する際に、接合不良が起きやすくなり、0.25より大きいと膨潤性が大きくなりすぎるため好ましくない。より好ましい範囲は0.1〜0.2の範囲である。
【0084】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、化学式14〜17で表される化合物を必須成分として含むモノマーの混合物から芳香族求核置換反応により重合することができる。
【0085】
【化12】

【0086】
化学式14〜17において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、ZおよびZは、それぞれ独立してCl原子、F原子、I原子、Br原子、ニトロ基のいずれかを、ZおよびZは、それぞれ独立してOH基、SH基、−O−NH−C(=O)−R基、−S−NH−C(=O)−R’基のいずれかを{R’は芳香族または脂肪族の炭化水素基を表す。}、Arは3価の芳香族基を、Arは分子中に、スルホン基、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィン基、シアノ基、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基、ニトロ基、ハロゲン基などの電子吸引性基を有する芳香族基を表す。
【0087】
化学式14で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、及びそれらのスルホン酸基が1価陽イオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価陽イオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限されるわけではない。化学式9で表される化合物のうち、スルホン酸基が塩になっている化合物の例としては、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸カリウム4,4’−ジフルオロジフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0088】
化学式15で表される化合物の具体例としては、4−エチルレゾルシノール、4−ヘキシルレゾルシノール、2−ヘキシルハイドロキノン、2−オクチルハイドロキノン、2−オクダデシルハイドロキノン、2−ターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーアミルハイドロキノン、2,2’−ジヘキシル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1−オクチル−2,6−ジヒドロキシナフタレン、2−ヘキシル−1,5−ジヒドロキシナフタレンなどを挙げることができ、4−ヘキシルレゾルシノール、2−ターシャリーブチルハイドロキノンが好ましい。
【0089】
化学式16で表される化合物としては、同一芳香環にハロゲン、ニトロ基などの求核置換反応における脱離基と、それを活性化する電子吸引性基を有する化合物を挙げることができる。具体例としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
【0090】
化学式17で表される化合物の例としては、4,4’−ビフェノール、4、4’−ジメルカプトビフェノールなどを挙げることができ、4,4’−ビフェノールが好ましい。化学式17で表される構造のモノマーが、ポリマーの柔軟性を高め、変形に対する脆性破壊を抑制することや、ガラス転移温度を低下させることによって電極との接合性を高めることなどの効果をもたらしている。
【0091】
上述の芳香族求核置換反応において、化学式14〜17で表される化合物とともに他の各種活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物をモノマーとして併用することもできる。
【0092】
その他のビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物の例としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-チオビスベンゼンチオール、4,4’-オキシビスベンゼンチオール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジアリルビスフェノールA、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド等が、挙げられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオール又は各種芳香族ジチオールを使用することもでき、上記の化合物に限定されるものではない。
【0093】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーを芳香族求核置換反応により重合する場合、化学式14〜17で表される構造の化合物と、必要に応じて他の活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物や芳香族ジオール類または芳香族ジチオール類を加えて、塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。モノマー中の、反応性のハロゲン基又はニトロ基と、反応性のヒドロキシ基及びチオール基のモル比は任意のモル比にすることで、得られるポリマーの重合度を調整することができるが、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1であり、0.95〜1.05であるとさらに好ましく、1であると最も高重合度のポリマーを得ることができる。
【0094】
重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
【0095】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられるが、芳香族ジオール類や芳香族ジメルカプト化合物を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。塩基性化合物は、ビスフェノール化合物及びビスチオフェノール化合物の総和に対して100モル%以上の量を用いると良好に重合することができ、好ましくはビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物の総和に対して105〜125モル%の範囲である。ビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物の量が多くなりすぎると、分解などの副反応の原因となるので好ましくない。
【0096】
また、上記重合反応において、塩基性化合物を用いずに、ビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物を、イソシアネート化合物と反応させてカルバモイル化したものと、活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物とを直接反応させることもできる。
【0097】
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。また副生する塩類を濾過によって取り除いてポリマー溶液を得ることもできる。
【0098】
また、本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーは、後で述べる方法により測定したポリマー対数粘度が0.1dl/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.1dl/gよりも小さいと、イオン交換膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。対数粘度は、0.3dl/g以上であることがさらに好ましい。一方、対数粘度が5dl/gを超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
【0099】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーのイオン交換容量は、0.1meq/gであることが好ましいが、3.5meq/g以下であることがさらに好ましい。イオン交換容量が小さくなるとプロトン伝導性が低下するため好ましくない。イオン交換容量が大きくなると、プロトン伝導性は増大するが、同時に膜が膨潤したり、水に溶解してしまったりする問題が起きやすくなる。より好ましい範囲としては0.5〜3.5meq/g、さらに好ましい範囲としては、1.0〜2.5meq/gを挙げることができる。
【0100】
本発明におけるイオン交換膜は任意の厚みにすることができるが、10μm以下だと所定の特性を満たすことが困難になるので10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、300μm以上になると製造が困難になるため、300μm以下であることが好ましい。
【0101】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーは、単体として使用することができるが、他のポリマーとの組み合わせによる樹脂組成物として使用することもできる。これらのポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。ポリベンズイミダゾールやポリビニルピリジンなどの塩基性ポリマーとの樹脂組成物は、ポリマー寸法性の向上のために好ましい組み合わせといえる、これらの塩基性ポリマー中に、さらにスルホン酸基を導入しておくと、組成物の加工性がより好ましいものとなる。これら樹脂組成物として使用する場合には、本発明のルホン酸基含有ポリマーは、樹脂組成物全体の50質量%以上100質量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。本発明のルホン酸基含有ポリマーの含有量が樹脂組成物全体の50重量%未満の場合には、この樹脂組成物を含むイオン交換膜のスルホン酸基濃度が低くなり良好なイオン伝導性が得られない傾向にあり、また、スルホン酸基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0102】
本発明のイオン交換膜は、本発明のスルホン酸基含有イオン交換樹脂を含む組成物から、押し出し、圧延又はキャストなど任意の方法で得ることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。例えば、加熱、減圧乾燥、化合物を溶解する溶媒と混和することができる化合物非溶媒への浸漬等によって、溶媒を除去し成形体を得ることができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱又は減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基は陽イオン種との塩の形のものを含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。
【0103】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマー及びその樹脂組成物からイオン交換膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン交換膜を得ることができる。当該溶液としてはN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を用いた溶液や、場合によってはアルコール系溶媒等も挙げることができる。溶媒の除去は、乾燥によることがイオン交換膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下できるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン交換膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2000μmよりも厚いと不均一な膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にしたりして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。イオン交換膜として使用する場合、膜中のスルホン酸基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸、等の水溶液中に加熱下あるいは加熱せずに膜を浸漬処理することで行うことも効果的である。
【0104】
本発明の膜/電極接合体は、本発明のプロトン交換膜に、電極触媒層を接合することによって製造することができる。その際の、膜と電極や触媒との接着剤として、炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーや、ナフィオン(登録商標)溶液などのフッ素系プロトン伝導性ポリマーを用いることができる。接着剤としての炭化水素系のプロトン伝導性ポリマーには、本発明におけるプロトン交換膜を構成するポリマーとして記載したポリマーを用いることが、接合性やメタノール透過抑制の面から好ましい。例えば、プロトン交換膜に触媒を含むバインダー溶液を塗布して電極を接合することもできるし、予め触媒を含むバインダー溶液を塗布して触媒層を形成させた電極を、プロトン交換膜とホットプレスすることによって接合することもできるし、予め別のシート状に形成した触媒を含むバインダー層をホットプレスによってプロトン交換膜に転写し、その後で電極とホットプレスすることによって接合を行うこともできる。また、プロトン交換膜に、触媒を含むバインダー溶液を塗布して乾燥して、膜/電極接合体を得ることもできる。膜/電極接合体を得る方法は、任意の方法を用いることができ、これらに限定されるものではない。
【0105】
本発明の膜/電極接合体を製造する際に、プロトン交換膜やバインダーに用いるプロトン伝導性ポリマーは、フリーの酸であってもよいし、塩を形成していてもよい。塩を形成している場合は、Na、K、Liなどアルカリ金属イオンとの塩であることが好ましい。塩を形成していると、イオン性基の安定性が向上するため好ましい。プロトン交換膜及びバインダーの両方、あるいはいずれか一方のプロトン伝導性ポリマー中のイオン性基が塩であってもよい。塩を形成しているイオン性基は、塩酸、硫酸などの強酸の水溶液で処理することなどによって、酸型のイオン性基にすることができる。酸処理は、プロトン交換膜、バインダーそれぞれに行っても良いし、膜/電極接合体としてから行っても良い。いずれの場合も、酸処理に用いた遊離の酸が残存しないよう、十分に洗浄することが好ましい。
【0106】
本発明の燃料電池は、本発明のイオン交換膜又は膜/電極接合体を用いて作製することができる。本発明のイオン交換膜は、固体高分子形燃料電池に適している。本発明の燃料電池は、例えば酸素極と、燃料極と、それぞれの極に挟まれて配置された本発明のプロトン交換膜と、酸素極側に設けられた酸化剤の流路と、燃料極側に設けられた燃料の流路を有するものである。このような一つの単位セルを導電性のセパレーターで連結することによって燃料電池スタックを得ることができる。ポリマー中のスルホン酸基量を調整することによって、メタノールを燃料とするダイレクトメタノール型燃料電池や、水素を燃料とする燃料電池にも用いることができる。また、ジメチルエーテル、水素。ギ酸など他の物質を燃料として用いる燃料電池にも好適に用いることができ、電解膜、分離膜など、イオン交換膜として公知の任意の用途に用いることができる。
【実施例】
【0107】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0108】
対数粘度:ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
【0109】
プロトン伝導性:自作測定用プローブ(テトラフルオロエチレン樹脂製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、25℃の水中または80℃95%の恒湿恒温槽に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
【0110】
メタノール透過性:イオン交換膜の液体燃料透過速度はメタノールの透過速度として、以下の方法で測定した。25℃に調整した5M(モル/リットル)のメタノール水溶液に24時間浸漬したイオン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5Mメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水(18MΩ・cm)を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量を、ガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm)。得られたメタノール透過速度とサンプルの膜厚から、メタノール透過係数を求めた。
【0111】
水素を燃料とする燃料電池(PEFC)の発電評価:デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液に、市販の40%Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒 TEC10V40E)と、少量の超純水及びイソプロパノールを加えた後、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が0.5mg/cmになるように均一に塗布・乾燥して、電極触媒層付きガス拡散層を作製した。上記の電極触媒層付きガス拡散層の間に、イオン交換膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により130℃、2MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノード及びカソードにそれぞれ75℃で加湿した水素と空気を供給して発電特性を評価した。開始直後における電流密度が0.5A/cmにおける出力電圧を初期特性とした。また、耐久性評価として、1時間に1回の割合で開回路電圧を測定しつつ上記の条件で連続運転を行った。開回路電圧が開始直後の値よりも10%以上低下したときの時間を耐久時間とした。耐久性評価は1000時間を上限として行った。
【0112】
ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の発電評価:Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC61E54)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオン(登録商標)の重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となる東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cmになるようにスクリーン印刷により塗布乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC10V40E)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオン(登録商標)の重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施した東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cmとなるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により160℃、8MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込み、燃料電池発電試験機(株式会社東陽テクニカ製)を用いて発電試験を行った。発電は、セル温度40℃で、アノード及びカソードにそれぞれ40℃に調整した高純度空気ガス(80ml/min)と、5mol/lのメタノール水溶液(1.5ml/min)とを供給しながら行った。電流密度が0.02A/cm2における出力電圧と、電流遮断法で測定した抵抗値を測定した。
【0113】
イオン交換容量:100℃で1時間乾燥し、窒素雰囲気下室温で一晩放置した試料の重量をはかり、水酸化ナトリウム水溶液と撹拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定でイオン交換容量を求めた。
【0114】
軟化温度:5mm幅のイオン交換膜を、Rheogel E−4000(東機産業株式会社製)を用い、チャック幅10mmで、50℃から250℃まで2℃/分で加熱しながら、10Hzの動歪を与えて、動的粘弾性を測定した。温度の上昇に伴い、E’が大きく低下する屈曲点の温度を軟化温度とした。
【0115】
<実施例1>
’ 3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(略号:S−DCDPS)60.00g(122.1mmol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN26.74g(155.5mol)、4,4’−ビフェノール(略号:BP)41.35g(222.1mmol)、4−ヘキシルレゾルシノール(略号:HRC)10.79g(55.52mmol)、炭酸カリウム42.20g(305.3mmol)、乾燥したモレキュラーシーブ3−A 32gを1000ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。360mlのN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)を入れて、撹拌しながら、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約16時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は0.91dL/gを示した。重水素化ジメチルスルホキシド中室温で測定したH−NMRスペクトルを図1に示した。ポリマー7gをNMP28gに溶解し、ホットプレート上ガラス板に約400μm厚にキャストして80℃で0.5時間、120℃で0.5時間、150℃で0.5時間加熱した後、窒素雰囲気の150℃のオーブン中で1時間乾燥し、ガラス板からフィルムを剥離した。得られたフィルムは室温の純水に1日浸漬した後、2mol/Lの硫酸水溶液に2時間浸漬した。その後、洗浄水が中性になるまでフィルムを純水で洗浄し、空気中に放置して乾燥して、イオン交換膜を得た。得られたイオン交換膜について評価を行った。
【0116】
<実施例2〜4>
S−DCDPS、DCBN、HRC、BPの量を変更した他は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0117】
<実施例5>
HRCの代わりに、2−ターシャリーブチルハイドロキノン(略号:TBQ)を用いた他は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0118】
<実施例6>
HRCの代わりにTBQを用いた他は実施例2と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0119】
<実施例7>
HRCの代わりに、2,2’−ジヘキシル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル(略号:HBP)を用いた他は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0120】
<実施例8>
HRCの代わりにHBPを用いた他は実施例2と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0121】
<実施例9>
HRCの代わりに、2−ヘキシル−1,5−ジヒドロキシナフタレン(略号:HHN)を用いた他は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0122】
<実施例10>
HRCの代わりにHHNを用いた他は実施例2と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0123】
<比較例1>
構造が公知である下記化学式18のスルホン酸基含有ポリマーを用いて実施例1と同様にして、イオン交換膜を作製し評価を行った。
【0124】
【化13】

【0125】
<比較例2>
構造が公知である下記化学式19のスルホン酸基含有ポリマーを用いて実施例1と同様にして、イオン交換膜を作製し評価を行った。
【0126】
【化14】

【0127】
<比較例3>
構造が公知である下記化学式20のスルホン酸基含有ポリマーを用いて実施例1と同様にして、イオン交換膜を作製し評価を行った。
【0128】
【化15】

【0129】
<比較例4>
構造が公知である下記化学式21のスルホン酸基含有ポリマーを用いて実施例1と同様にして、イオン交換膜を作製し評価を行った。
【0130】
【化16】

【0131】
<比較例5>
市販のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)112について各種評価を行った。
【0132】
<比較例6>
市販のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)117について各種評価を行った。
【0133】
実施例および比較例のイオン交換膜の評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0135】
表1より、本発明における、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)用のイオン交換膜(実施例2、3、6、8、10)は、比較例のイオン交換膜(比較例1〜2)に対して、軟化温度が低くなることで接合性が向上し、抵抗値が低下することで高い出力電圧が得られていることが明らかである。また、既存のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)117(比較例6)に対しては、メタノール透過性が大幅に小さく、耐メタノール透過性に優れたイオン交換膜であることが明らかである。
【0136】
また、水素を燃料とする燃料電池(PEFC)用のイオン交換膜(実施例1、4、5、7、9)は、比較例のイオン交換膜(比較例3〜4)のイオン交換膜に対して、初期電圧は同等であるのにもかかわらず、耐久時間が大幅に向上しており、耐久性に優れたイオン交換膜であることが明らかである。また既存のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)112(比較例5)に匹敵する耐久性を示し、かつ同等以上の初期電圧を示すことから、フッ酸の発生が少なく、また廃棄時の環境負荷の少ない炭化水素系イオン交換膜として、充分に優れた特性を有していることは明らかである。これらのことから、本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、燃料電池用イオン交換膜に用いることによってその特性を大きく改善することができ、産業界に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明における実施例1で合成したポリマーを、VARIAN社製GEMINI−200を用いて、重水素化ジメチルスルホキシド中室温で測定したH−NMRスペクトルである。
【図2】本発明における実施例2で合成したポリマーを上記と同様にして測定したH−NMRスペクトルである。
【図3】本発明における実施例2で得られたRheogel E−4000(東機産業株式会社製)を用いて測定したイオン交換膜の動的粘弾性特性を示す。
【符号の説明】
【0138】
DMSO:重水素化ジメチルスルホキシド中のジメチルスルホキシドに由来するシグナル
O:ポリマーに吸着した水に由来するシグナル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1〜4で表される全ての構造を必須の繰り返し単位として有することを特徴とするスルホン酸基含有ポリマー。
【化1】

[化学式1〜4において、Xは−S(=O)−基または−C(=O)−基を、YはHまたは1価の陽イオンを、Z〜Zはそれぞれ独立してOまたはS原子のいずれかを、Arは3価の芳香族基を、Arは電子吸引性基を有する2価の芳香族基を、Rはそれぞれ炭素数2〜30のアルキル基を、xは1〜6の整数を、それぞれ表す。]
【請求項2】
Arが、化学式5〜8で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【化2】

【請求項3】
Arが、化学式5または6で表される構造であることを特徴とする請求項2に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項4】
が炭素数4〜20の直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項5】
Arが、化学式9〜12で表される構造から選ばれる一種以上の基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【化3】

【請求項6】
Arが、化学式11または12のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
およびZがいずれもO原子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項8】
Xが−S(=O)−基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項9】
分子中における化学式1〜4でそれぞれ表される繰り返し構造、およびその他の繰り返し構造のモル比が数式1〜3を満たすことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【数1】

[上記式中、n1〜n4は、分子内における化学式1〜4で表される繰り返し構造のモル%を、n5はその他の繰り返し構造のモル%を、それぞれ表す。]
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリマーを用いたイオン交換膜。
【請求項11】
n1〜n5が数式4または5を満たし、ダイレクトメタノール燃料電池に用いることを特徴とする請求項10に記載のイオン交換膜。
【数2】

【請求項12】
n1〜n5が数式6または7を満たし、水素を燃料とする固体高分子形燃料電池に用いることを特徴とする請求項10に記載のイオン交換膜。
【数3】

【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載のイオン交換膜を用いた膜/電極接合体。
【請求項14】
電極触媒層に請求項1〜9のいずれかに記載のポリマーを用いたことを特徴とする膜/電極接合体。
【請求項15】
請求項13または14に記載の膜/電極接合体を用いた燃料電池。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれかに記載のポリマーを含む組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−146111(P2007−146111A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193876(P2006−193876)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】