説明

スルホ基又はスルファミル基を有するカソード電着樹脂

電着可能なバインダーを含む水性電着コーティング組成物から製造されたコーティング層であって、前記バインダーがスルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含むコーティング層は、金属製基材に腐蝕保護を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着コーティング組成物、その製造方法、導電性基材上にコーティングを電着する方法並びに電着されたコーティングに関する。
【0002】
開示の背景
この箇所の記載は、単に、本開示に関連した情報を提供するだけで、先行技術を成さないこともある。
【0003】
腐蝕性環境で使用される金属物品の工業的コーティングには、1つ以上の無機の及び有機の処理及びコーティングの適用が含まれうる。自動車組み立て工場での塗装システム("塗装作業場")は、大きく、複雑で、かつ高価である。金属の自動車車体("ボディ・イン・ホワイト")及び部品には、Claffeyによる米国特許第5,868,820号に記載されるように、1つ以上のクリーニング浴もしくは吹き付けタンクにおけるクリーニング、リン酸塩処理浴における金属前処理段階としての水性リン酸塩コーティング材料の適用、続いての様々なすすぎ、そして追加の仕上げ処理という多段階処理がなされる。リン酸塩前処理段階は、金属の耐腐食性の改善と、引き続いてのコーティングと金属との付着性の改善のために着手される。クリーニング段階とリン酸塩処理段階は、10又は12個の吹き付け装置の個別の処理ステーション又は浸漬タンクを有することがある。
【0004】
電着コーティング("電着")は、前処理段階の後に、金属車体へと適用される。電着浴は、通常は、水中もしくは水と有機助溶剤との混合物中でイオン性安定化を有する、主たる皮膜形成性の樹脂(本開示では"ポリマー"及び"樹脂"が同義で使用される)の水性の分散液もしくはエマルジョンを含む。耐久性の電着被膜が望まれる自動車もしくは工業的な用途においては、電着組成物は、硬化性(熱硬化性)の組成物として調合される。これは、通常は、主たる被膜形成性の樹脂と一緒に、該主たる樹脂上の官能基と好適な条件下で、例えば熱を加えることで反応することができ、こうしてコーティングを硬化しうる架橋剤を乳化させることによって達成される。電着の間に、比較的低い分子量を有するイオン的に荷電された樹脂を含有するコーティング材料は、導電性基体上へと、電着浴中に前記基体を浸し、次いで該基体と反対の電荷の極、例えばステンレス鋼電極との間に電位をかけることによって析出される。荷電されたコーティング材料は、導電性の基体上に移動し、そこに析出する。コーティングされた基体は、次いで加熱され、コーティングは硬化もしくは架橋する。
【0005】
電着組成物及び電着方法の利点の1つは、適用されたコーティング組成物が、形状もしくは構造にかかわらず、様々な金属製の基材上に均一かつ連続した層を形成することである。これは、該コーティングが、車両車体などの不規則な表面を有する基材上に耐蝕性コーティングとして適用される場合に特に好ましい。金属製の基材の全ての部分上での連続的なコーティング層でさえも、最高の耐蝕効果を提供する。しかしながら、リン酸塩前処理は、今まで、自動車車体については腐蝕から保護するにあたり不可欠な段階であった。
【0006】
Benson他による米国特許第7,342,082号は、アミン捕捉剤として、例えば分析物、アミノ酸、DNA及びRNA断片、細胞小器官又は免疫グロブリンを表面上に固定化するために使用できるアシルスルホンアミドペンダント基を有する熱硬化ポリマー系を開示している。Wearによる米国特許第3,110,701号は、織物及び他の無機特性の材料、例えばクロット絶縁線に又は金属に適用できて、腐蝕に対して優れた耐性を有する丈夫な付着性の均一なコーティングが提供される、ポリ(ベンゾスルフイミド)基含有の化合物と多官能性の第一級の脂肪族アミンとを含有する熱硬化性の組成物を開示している。ポリ(ベンゾスルフイミド)基含有の化合物と多官能性の第一級の脂肪族アミンのコポリマーが開示されている。ポリ(ベンゾスルフイミド)基含有の化合物は、ポリハロゲン化合物及びサッカリンのナトリウム塩によって形成される。
【0007】
開示の要旨
金属の基材、リン酸塩処理されていない金属の基材(すなわち、リン酸塩前処理されていない金属の基材)上に電着コーティングを電着する組成物及び方法であって、その電着コーティングが優れた腐蝕保護を提供するものが開示される。
【0008】
本方法は、カソード電着可能な樹脂を含むバインダーを有する水性の電着コーティング組成物(電着浴とも呼ばれる)であって、少なくとも1個のスルホ基又はスルファミル(スルファモイルとも呼ばれる)基
【化1】

を有し、アニオンが水素(酸構造で示される)又は他のカチオン種によって満たされていてよく、それぞれのRは、無関係に低級のヒドロカルビル基、特にC1〜C4の基である前記水性の電着コーティング組成物を使用する。便宜上、本願においては、"樹脂"は、樹脂、オリゴマー及びポリマーを含めて使用される。"バインダー"は、コーティング組成物の被膜形成性の成分を指す。一般に、バインダーは、熱硬化性又は硬化性である。
【0009】
一実施態様において、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、複数のスルホ基、スルファミル基又はスルホ基とスルファミル基の組み合わせを有する、アミン官能性の(カソード電着のための)又はカルボキシル官能性の(アノード電着のための)樹脂である。
【0010】
スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリブタジエン、ポリイソプレンもしくは他のエポキシ変性ゴムベースのポリマーであってよい。
【0011】
一定の実施態様においては、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、電着可能であり、該電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して、約0.01%から約99%までであってよい。とりわけ、これらの実施態様は、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が、電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して、約1%から約90%までである実施態様と、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が、電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して、約5%から約80%までである実施態様である。
【0012】
一定の実施態様においては、バインダーは、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂のための架橋剤を含む。一定の実施態様においては、バインダーは、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂以外の第二の電着可能な樹脂を含む。これらのいずれの実施態様においても、バインダーは、電着されたコーティング層の硬化の間に、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂か、第二の電着可能な樹脂か、又はその両方と反応する架橋剤を含んでもよい。これらの実施態様においては、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、電着可能であり、バインダー全体の質量に対して、約0.01%から約30%までであり、かつ第二の電着可能な樹脂は、電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して、約40%から約80%であってよい。前記のスルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、また、電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して、約1%から30%又は約5%から約20%であってもよく、第二の電着可能な樹脂は、電着コーティング組成物中でバインダー全体の質量に対して約45%から約75%又は約50%から約70%であってよい。
【0013】
また、導電性の基材、例えば金属の自動車の車体又は部品のコーティング方法であって、前記導電性の基材を、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含む電着可能なバインダーを有する水性の電着コーティング組成物中に入れ、該導電性の基材をカソードとして使用して、該水性の電着コーティング組成物に電流を流して、前記導電性の基材上に前記バインダーを含むコーティング層を析出させることを含む前記方法が開示されている。次いで、析出されたコーティング層を硬化させて、硬化されたコーティング層とすることができる。後続のコーティング層を、(任意に硬化された)電着されたコーティング層上に適用してよい。例えば、電着されたコーティング層は、他の層、例えば任意の吹き付け適用されたプライマーサーフェイサー層及び1層もしくはそれより多層のトップコート層(例えば着色されたベースコート層及びクリヤーコート層)を有してよく、それらは、前記電着されたコーティング層上に適用されている。
【0014】
前記方法の一実施態様においては、導電性の基材は、それがスルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含む電着されたコーティングでコーティングされる前に、リン酸塩処理されていない。すなわち、前記基材は、リン酸塩前処理を含まない。
【0015】
本方法の一実施態様において、金属の自動車車体は清浄化され、そして清浄化された金属の自動車車体は、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含む水性のコーティング組成物で電着される。このように、リン酸塩前処理は使用されない。スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は電着可能であってよく、又は電着コーティング組成物のバインダーは、スルホ基もしくはスルファミル基又はその両方を有さない第二の電着可能な樹脂を含んでよく、一般に一方の又は両方の樹脂と反応性の架橋剤が該コーティング組成物中に含まれているので、その電着されたコーティング層は硬化されうる。
【0016】
コーティングされた導電性の基材は、該基材上に電着されたコーティング層を含み、その際、該電着されたコーティング層は、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含むバインダーから形成される硬化されたコーティングを含む。様々な実施態様においては、前記バインダーは、更に、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂、第二の電着可能な樹脂又はその両方と反応性の架橋剤を含み、該架橋剤は硬化の間に反応して硬化されたコーティングを形成する。
【0017】
"1つの"など、"その"など、"少なくとも1つ"など、"1もしくはそれより多く"などは、同義で、少なくとも1つのそのものが存在すること、複数のそのものが存在してよいことを示すために使用される。詳細な説明の終わりにある実施例以外では、特許請求の範囲を含む明細書中のパラメータ(例えば量もしくは条件)の全てのパラメータ値は、全ての場合において、その数値の前に実際に"約"があろうとなかろうと、用語"約"によって修飾されるものと理解されるべきである。"約"は、示された数値が幾らかの僅かな不正確さを可能にすることを示している(数値の正確さに対するいくらかのアプローチを伴って;その値にほぼ又はかなり近い;ほとんど)。"約"により与えられる不正確さがそれにもかかわらず当該技術分野においてこの通常の意味をもって理解されないのであれば、本願で示される"約"は、少なくとも、通常の測定法からかかるパラメータを用いて生じうるずれを示している。加えて、範囲の開示は、全ての値と、全範囲内の更に細分された範囲の開示も含む。
【0018】
更なる適用範囲の領域は、本願にある詳細な説明から明らかになる。詳細な説明及び特定の実施例は、説明を目的とするに過ぎず、本開示の範囲を制限することを意図するものではないと理解されるべきである。
【0019】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、単に例示を性質とするものであり、本開示、用途もしくは使用を制限することを意図するものではない。
【0020】
リン酸塩処理されていなくてよい金属の基材は、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含むバインダーを有する水性の電着コーティング組成物で電着される。前記バインダーは、アミンと塩形成されたカルボキシル基又は酸と塩形成されたアミン基を有する少なくとも1種の電着可能な樹脂を含み、前記電着可能な樹脂は、スルホ基もしくはスルファミル基を有する樹脂又は第二の異なる樹脂であってよい。電着されたコーティング層は、硬化されてよく、1層もしくはそれより多層の追加のコーティング層で上塗りされてよい。前記のスルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、
【化2】

[式中、アニオンは、水素(酸構造で示される)又は他のカチオン性種によって満たされ、かつ各Rは、無関係に低級のヒドロカルビル基、特にC1〜C4である]から選択される構造を有する少なくとも1つの共有結合された基を有する。
【0021】
前記のスルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、そのスルホ基もしくはスルファミル基と付加されうる任意の樹脂又は重合可能なモノマーを使用して製造することができる。電着コーティングバインダーは、しばしば、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂を含み、かつスルホ基もしくはスルファミル基を有する樹脂は、例えばエポキシ樹脂、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン又はポリブタジエン、ポリイソプレン又は他のエポキシ変性されたゴムベースポリマーであってよい。
【0022】
スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、ヒドロキシル基もしくは第二のアミン基などの活性水素を有する基を有する樹脂と、アルカンスルトン(すなわちヒドロキシアルキルスルホン酸の環状エステル)、2−スルホ安息香酸無水物又は2−安息香酸スルフィミド(サッカリン)との反応によって製造できる。選択的に、前記のスルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、ヒドロキシル基などの活性水素を有する基を有するモノマーと、アルカンスルトン、2−スルホ安息香酸無水物又は2−安息香酸スルフィミド(それらを、"スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物"と呼ぶ)とを反応させて、次いでモノマーを重合させて、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を形成させることによって製造できる。いずれかの場合に、活性水素基と、スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物(アルカンスルトン、2−スルホ安息香酸無水物又は2−安息香酸スルフィミド)との反応は、典型的に約90〜150℃で、約0.5〜3時間にわたり塩基の存在で実施することができる。スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、複数のスルホ基及び/又はスルファミル基を含んでよい。
【0023】
第一の実施態様においては、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、エポキシ樹脂である。スルホ基又はスルファミル基を有するエポキシ樹脂は、まずエポキシ樹脂を、ポリエポキシドと任意の延長剤及び/又は任意の他の反応物、例えば一官能性の又は三官能性もしくはより多官能性の反応物、任意にこの反応工程でカルボキシル官能性又はアミン官能性を提供するモノマーを含めて反応させるか又はこの反応工程の生成物とカルボキシル官能性又はアミン官能性を提供するモノマーと反応させることによって製造し、次いでその生成物のエポキシ樹脂とスルホ基又はスルファミル基を提供する反応物とを反応させることによって製造できる。第二の方法において、スルホ基又はスルファミル基を有するエポキシ樹脂は、ポリエポキシドと延長剤との反応の工程においてスルホ基又はスルファミル基を提供する反応物を含めることによって、又はポリエポキシドと延長剤との生成物がカルボキシル官能性又はアミン官能性を提供するモノマーと反応されるより後続の工程においてスルホ基又はスルファミル基を提供する反応物を含めることによって製造することができる。第三の方法において、前記のスルホ基又はスルファミル基を有するエポキシ樹脂は、先に概説した反応であるが、少なくとも1種のポリエポキシド、延長剤、一官能性もしくは三官能性の反応物又はカルボキシル官能性又はアミン官能性を提供するモノマーがスルホ基又はスルファミル基を提供する反応物との反応の生成物である反応(すなわち、エポキシ樹脂を形成するモノマーの一つは、スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物と事前に反応される)によって製造することができる。
【0024】
ポリエポキシド樹脂の好適な制限されない例は、複数のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、例えばジグリシジル芳香族化合物、例えば多価フェノール類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシアセトフェノン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニレン)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシ−3−ナフタレン及び他のジヒドロキシナフチレン類、カテコール、レゾルシノールなどのジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル及び構造
【化3】

[式中、Qは
【化4】

であり、RはH、メチル又はエチルであり、かつnは、0〜10の整数である]を有するビスフェノールAを基礎とする樹脂を含む。一定の実施態様においては、nは、1〜5の整数である。また好適なのは、脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン)、1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどのジグリシジルエーテルである。ジカルボン酸のジグリシジルエステルは、またポリエポキシドとして使用することもできる。特定の化合物の例は、シュウ酸、シクロヘキサン二酢酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのジグリシジルエステルを含む。ポリグリシジル反応物は、好ましくは少量でジエポキシド反応物と組み合わせて使用してよい。ノボラックエポキシドは、ポリエポキシド官能性反応物として使用してよい。ノボラックエポキシ樹脂は、エポキシフェノールノボラック樹脂もしくはエポキシクレゾールノボラック樹脂から選択できる。他の好適な高級官能性ポリエポキシドは、トリオール及び高級ポリオールのグリシジルエーテル及びエステル、例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール及びグリセロール;トリカルボン酸もしくはポリカルボン酸のトリグリシジルエーテルである。また、ポリエポキシドとして有用なのは、エポキシ化アルカン、例えばシクロヘキセンオキシド及びエポキシ化脂肪酸及び脂肪酸誘導体、例えばエポキシ化大豆油である。他の有用なポリエポキシドは、制限されないが、ポリエポキシドポリマー、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂及びエポキシ樹脂及びポリマー並びにエポキシ変性されたポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリロブタジエンニトリルコポリマー又は他のエポキシ変性されたゴムを基礎とする複数のエポキシ基を有するポリマーを含む。ポリエポキシドにスルホ基又はスルファミル基を備えさせることは、ヒドロキシル基と、スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物との反応、例えばビスフェノールAを基礎とする樹脂について前記した構造に示されるヒドロキシル基、又はポリオールのヒドロキシル基(1個のヒドロキシル基から2個のヒドロキシル基以外全て)であって次いでエピハロヒドリンでエーテル化されてポリグリシジルエーテルを形成するもの、又はポリオールの1個のヒドロキシル基以外全てであってエーテル化されてモノグリシジルエーテルを形成するものの反応によって行われうる。
【0025】
ポリエポキシ(及びあらゆる任意のモノエポキシ)を、延長剤と反応させて、β−ヒドロキシエステル結合を有するより高分子量を有する樹脂を製造することができる。好適な延長剤の制限されない例は、ポリカルボン酸、ポリオール、ポリフェノール、及び2個以上のアミノ水素を有するアミン、特にジカルボン酸、ジオール、ジフェノール及びジアミンを含む。特に、好適な延長剤の制限されない例は、ジフェノール、ジオール及び二酸、例えばポリエポキシの形成に関連して前記されたもの;ポリカプロラクトンジオール及びエトキシ化ビスフェノールA、例えばBASF Corporation社から商品名MACOL(登録商標)として入手できるものを含む。他の好適な延長剤は、制限されないが、カルボキシ官能性もしくはアミン官能性のアクリル、ポリエステル、ポリエーテル及びエポキシ樹脂及びポリマーを含む。更なる他の好適な延長剤は、制限されないが、ポリアミン、例えばジアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、ジプロピルアミン及びピペリジン、例えば1−(2−アミノエチル)ピペラジン、ポリアルキレンポリアミン、例えばトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロパン−1,3−ジアミン並びにポリオキシアルキレンアミン、例えばBASF AG社から商品名POLYAMIN(登録商標)として得られるもの又はHuntsman社から商品名JEFFAMINE(登録商標)として得られるものを含む。ポリエポキシド及び延長剤の生成物は、過剰の当量のポリエポキシドが反応される場合にはエポキシ官能性であり、又は過剰の当量の延長剤が使用される場合には延長剤の官能性を有する。
【0026】
延長剤にスルホ基又はスルファミル基を備えさせることは、3つ以上のヒドロキシル基及びアミン基を有する化合物の1つのヒドロキシル基又はアミン基と、スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物との反応によって行うことができるので、その反応生成物は、2つの未反応のヒドロキシル基、アミン基又はヒドロキシル基とアミン基との組み合わせを残している。一定の実施態様においては、フェノール官能性の延長剤には、そのフェノール性OH基とスルホ基又はスルファミル基を提供する反応物との反応によって、スルホ基又はスルファミル基を備えさせることができる。
【0027】
一官能性の反応物は、場合によりポリエポキシ樹脂及び延長剤と、又はポリエポキシドと延長剤とが反応されて、エポキシ樹脂が製造された後に反応されてよい。好適な一官能性反応物の制限されない例は、フェノール、アルキルフェノール、例えばノニルフェノール及びドデシルフェノール、他の一官能性のエポキシ反応性化合物、例えばジメチルエタノールアミン及びモノエポキシド、例えばフェノールのグリシジルエーテル、ノニルフェノールのグリシジルエーテル又はクレゾールのグリシジルエーテル及び二量体脂肪酸を含む。1つ以上のスルホ基及び/又はスルファミル基を有する一官能性の反応物は、スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物と、化合物の1つ以上の好適な官能基とを、1つのエポキシ反応性基又は未反応のエポキシ基を残しつつ反応させることによって製造することができる。制限されない例は、延長剤化合物の1つのヒドロキシル基又はアミン基以外の全ての反応である。
【0028】
ポリエポキシ樹脂と延長剤及び任意に一官能性の反応物との反応のために有用な触媒は、オキシラン環を活性化する触媒、例えば第三級アミンもしくは第四級アンモニウム塩(例えばベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、トリエチルアミン、N−メチルイミダゾール、テトラメチルアンモニウムブロミド及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド)、スズ及び/又はリンの錯塩(例えば(CH33SNI、(CH34PI、トリフェニルホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムヨージド)などを含む。当該技術分野においては、第三級アミン触媒は、幾つかの反応で好ましいことがあると知られている。該反応は、約100℃〜約350℃(他の実施態様においては160℃〜250℃)の温度で溶剤中又はストレートで実施してよい。好適な溶剤は、制限されないが、不活性有機溶剤、例えばケトン、例えばメチルイソブチルケトン及びメチルアミルケトン、芳香族溶剤、例えばトルエン、キシレン、Aromatic 100及びAromatic 150並びにエステル、例えばブチルアセテート、n−プロピルアセテート、ヘキシルアセテートを含む。
【0029】
エポキシ樹脂は、ポリエポキシ樹脂と延長剤及び任意の一官能性の反応物との反応の間に又はその後に、スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物と反応させてよい。エポキシ樹脂は、また、スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物及び任意に一官能性の反応物、例えば既に記載したものと反応させてもよく、延長剤と反応させなくてもよい。
【0030】
アミン官能性の又はカルボキシル官能性のエポキシ樹脂は、少なくとも1個のアミン基又はカルボキシル基を有し、このアミン官能性又はカルボキシル官能性は、ポリエポキシドと延長剤との反応の間に又はその後に導入されうる。アミン官能性又はカルボキシル官能性は、ポリエポキシ樹脂と、第三級のアミン基又はカルボキシル基(その全てはエポキシ基と反応されない、すなわちカルボキシル当量は、エポキシ当量に対して過剰である)を有する延長剤又は第三級アミン基を有する一官能性の反応物との反応によって導入されうる。アミン官能性又はカルボキシル官能性は、ポリエポキシド及び延長剤の反応の後に、該生成物がエポキシ官能性である場合に、エポキシ官能性生成物と、第三級アミンを有する反応物又は複数のカルボキシル基を有する過剰の反応物との反応によって導入されうる。アミン基を有する延長剤及び一官能性の反応物の好適な制限されない例は、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ジイソブタノールアミン、ジグリコールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、N−アミノエチルピペラジン、アミノプロピルモルホリン、テトラメチルジプロピレントリアミン、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノブチルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルモノメチルエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアミン及びケチミンの形成により保護された第一級アミン基を有する化合物、例えば1モルのジエチレントリアミンと2モルのメチルイソブチルケトンとの反応生成物を含む。カルボキシル基を有する延長剤及び一官能性の反応物の好適な制限されない例は、式HORCOOHで示され、その式中、Rが1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基(一定の実施態様においては、2〜8個の炭素原子のアルキレン基)である化合物及びこれらの化合物のアミン塩を含む。制限されない例は、乳酸、グリコール酸及びヒドロキシルステアリン酸を含む。リンゴ酸及びクエン酸などのポリ酸を使用してもよい。エポキシ樹脂がアミン官能性を有する場合には、該樹脂はカソード電着可能であり、エポキシ樹脂がカルボキシル官能性を有する場合には、該樹脂はアノード電着可能である。スルホ官能性又はスルファミル官能性のエポキシ樹脂がアミン官能性又はカルボキシル官能性を有さない場合には、該樹脂は、電着コーティング組成物のバインダーにおいて第二の電着可能な樹脂と合される。
【0031】
第一の特定の一実施態様においては、ビスフェノールA、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びフェノールは、第一工程において反応されて、エポキシ官能性の延長された樹脂を形成する。該エポキシ官能性の延長された樹脂、ジエタノールアミン及びジメチルアミノプロピルアミンは、第二工程において反応されて、アミン官能性のエポキシ樹脂を形成する。そして、該アミン官能性のエポキシ樹脂は、2−スルホ安息香酸無水物と第三工程において反応されて、スルホ基を有するアミン官能性のエポキシ樹脂を形成する。スルホ基を有するアミン官能性のエポキシ樹脂は、モノマー単位
【化5】

を有してよい。
【0032】
水性の電着コーティング組成物において、酸基はイオン化され、塩形成性の塩基によって中和される。第二の特定の実施態様においては、アミン官能性のエポキシ樹脂は、第一の特定の実施態様の第一工程及び第二工程によって形成され、次いでアミン官能性のエポキシ樹脂は、2−安息香酸スルファミドと第三工程で反応されて、スルファミル基を有するアミン官能性のエポキシ樹脂が形成される。スルホ基を有するアミン官能性のエポキシ樹脂は、モノマー単位
【化6】

を有してよい。
【0033】
水性の電着コーティング組成物において、アミン基はイオン化され、塩形成性の酸によって中和される。
【0034】
第二の一実施態様においては、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、ビニルポリマー、例えばアクリルポリマーである。スルホ基又はスルファミル基を有するアクリルポリマーは、スルホ基又はスルファミル基を有するコモノマーの重合によって、又は活性水素官能性を有するアクリルポリマーとスルホ基又はスルファミル基を提供する反応物とを反応させることによって製造することができる。スルホ基又はスルファミル基を提供する反応物と重合前に反応されうるモノマー又は重合して重合後にスルホ基又はスルファミル基を提供する反応物と反応される基を提供するモノマーの制限されない例は、ヒドロキシル基を有する付加重合可能なモノマーを含む。特定の制限されない例は、ヒドロキシ官能性のエチレン性不飽和モノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート及びメタクリル酸とスチレンオキシドとの反応生成物を含む。
【0035】
ビニル樹脂又はアクリル樹脂は、アミン含有のモノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン又はビニルピロリジンの導入によってカソード電着可能にしてよく、又はカルボキシル基含有のモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸もしくはマレイン酸、フマル酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸及びイタコン酸もしくは無水イタコン酸又はジカルボン酸のモノエステル、例えばモノメチルマレエート、モノブチルマレエート及びモノプロピルイタコネートの導入によってアノード電着可能にしてよい。選択的に、エポキシ基は、エポキシ官能性モノマー、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート又はアリルグリシジルエーテルを重合反応に含めることによって導入でき、次いでエポキシ基とアミンとをエポキシ樹脂について前記した方法に従って反応させることによってカソード電着可能にすることができる。
【0036】
架橋のための官能性を提供するモノマー、言い換えると、バインダー中の架橋剤と反応性の基を有するモノマーは、一般にビニルポリマー又はアクリルポリマーを形成して共重合される。なかでも、好適なモノマーは、スルホ基もしくはスルファミル基を提供する反応物と反応性の活性水素基を有するものとして既に挙げられたモノマーであり、それは、過剰に使用でき、スルホ基又はスルファミル基が備えられて、架橋のための付加された活性水素基が残る。特に注目すべきは、ヒドロキシル基を有するモノマーである。また、架橋性基の提供に有用なのは、上述の酸官能性の、アミン官能性の又はエポキシ官能性のモノマーである。
【0037】
スルホ基もしくはスルファミル基を有する又はスルホ基もしくはスルファミル基を提供する反応物と反応性の活性水素基(例えばヒドロキシル基)を有するモノマー及び電着のための基を有する任意のモノマー(カチオン性基のためにはアミン又はアニオン性基のためには酸もしくは無水物)及び/又はコーティングの架橋のための基を有するモノマーは、1種以上の他のエチレン性不飽和モノマーと重合されうる。共重合のためのかかるモノマーは、当該技術分野で公知である。実例は、制限されないが、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、置換シクロヘキシルアクリレート及びメタクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸及びイタコン酸のジエステルなど;及びビニルモノマー、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどを含む。他の有用な重合可能なコモノマーは、例えばアルコキシエチルアクリレート及びメタクリレート、アクリルオキシアクリレート及びメタクリレート並びにアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン及びメタクロレインなどの化合物を含む。これらの組み合わせが通常は使用される。
【0038】
特定の一実施態様においては、ビニルポリマー又はアクリルポリマーは、アミン官能性、ヒドロキシル官能性及びスルホ基もしくはスルファミル基を有するモノマー単位を有する。スルホもしくはスルファミルのモノマー単位は、以下の構造:
【化7】

[式中、Rは、アルキレン基、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、かつR′は、H又はメチルである]の一つを有してよい。
【0039】
スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、電着コーティング組成物(電着浴としても知られる)の製造に使用される。一般に、バインダーは、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含めて製造され、次いで該バインダーは、水性媒体中に、該バインダー中に存在するイオン化可能な基を塩形成させることにより分散させる。スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、それ自体電着可能でない場合に、第二の電着可能な樹脂がバインダー中に含まれる。その第二の電着可能な樹脂は、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が電着可能である場合でさえもバインダー中に含まれてよい。一般に、電着されたコーティングを架橋させて硬化されたコーティング層とすることが望ましく、架橋剤(硬化剤もしくは架橋性剤とも呼ばれる)は、一般にこの目的のためにバインダー中に含まれる。架橋剤は、硬化条件下で、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂、任意の第二の電着可能な樹脂及び/又は任意の更なる樹脂であってコーティング組成物バインダー中に含まれるものと反応しうる。
【0040】
第二の電着可能な樹脂は、エポキシ樹脂、アクリルポリマー、ポリエステル、ポリウレタン又はポリブタジエン、ポリイソプレン又は他のエポキシ変性されたゴムベースのポリマーであってよく、その際、前記樹脂は、アミン官能性(カソード電着可能にするために)又はカルボキシル官能性(アノード電着可能にするために)を有する。かかる樹脂は、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂の製造に関して先に概説した方法に従って、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を付加することなく、又は重合におけるスルホ基又はスルファミル基を有するモノマーを含めることなく、製造することができる。製造の更なる詳細は、当該技術分野において容易に入手可能であり、特に現存の特許文献において容易に入手可能である。カチオン性のポリウレタン及びポリエステルを使用してもよい。かかる材料は、例えばアミノアルコールでの末端封鎖によって製造でき、又はポリウレタンの場合には、上記の塩形成可能なアミン基を含む同じ化合物が有用なこともある。ポリブタジエン、ポリイソプレン、又は他のエポキシ変性ゴムベースのポリマーは、本発明において樹脂として使用することができる。エポキシゴムは、塩形成可能なアミン基を含む化合物で封鎖することができる。
【0041】
一定の実施態様においては、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、電着可能であり、電着コーティング組成物中でバインダーの質量に対して、約0.01%から約99%までの量で存在する。電着可能なスルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、電着コーティング組成物中で、バインダーの質量に対して約1%から約90%までの量で、又はバインダーの質量に対して約5%から約80%までの量で存在してよい。他の実施態様においては、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、電着可能ではなく、電着コーティング組成物中で、バインダーの質量に対して約0.01%から約30%の量で、バインダーの質量に対して約1%から約30%の量で、又はバインダーの質量に対して約5%から約20%の量で存在する。スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が電着可能でない場合に、第二の電着可能な樹脂は、電着コーティング組成物中で、バインダーの質量に対して約0.01%から約30%の量で、バインダーの質量に対して約1%から約30%の量で、又はバインダーの質量に対して約5%から約20%の量で存在する。
【0042】
架橋剤は、基材上に形成されるコーティング層の硬化の間の架橋のためのバインダーの1種以上の樹脂で利用できる群に従って選択される。当該技術分野では、架橋剤の選択に際して多くの考慮が説明される。1種以上の樹脂上の活性水素基と反応性の架橋剤は最も一般的に使用され、そのうちポリイソシアネート(特にブロックトポリイソシアネート)及びアミノプラストが特に挙げられる。芳香族の、脂肪族のもしくは脂環式のポリイソシアネートの制限されない例は、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)、2,4−もしくは2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、二量体脂肪酸から誘導されるジイソシアネートの混合物であって、Henkel社によって市販名DDI1410として販売されているもの、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,7−ジイソシアナト−4−イソシアナト−メチルヘプタンもしくは1−イソシアナト−2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキサン並びに高級ポリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン−4,4′,4′′−トリイソシアネート又はこれらのポリイソシアネートの混合物を含む。好適なポリイソシアネートは、また、ポリイソシアネートであって、これらから誘導され、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、ウレアもしくはウレットジオン基を有するものを含む。ウレタン基を有するポリイソシアネートは、例えば、幾つかのイソシアネート基とポリオール、例えばトリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール及びグリセロールなどのポリオールとを反応させることによって得られる。イソシアネート基は、ブロッキング剤と反応される。好適なブロッキング剤の例は、フェノール、クレゾール、キシレノール、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ジエチルマロネート、ジメチルマロネート、エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、ブタノール、グリコールモノエーテル、例えばエチレンもしくはプロピレングリコールモノエーテル、酸アミド(例えばアセトアニリド)、イミド(例えばスクシンイミド)、アミン(例えばジフェニルアミン)、イミダゾール、ウレア、エチレンウレア、2−オキサゾリドン、エチレンイミン、オキシム(例えばメチルエチルケトキシム)などを含む。アミノプラストの制限されない例が含まれる。
【0043】
当業者に理解されるように、アミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒド及びアミンの反応生成物によって形成され、その際、好ましいアミンは、尿素又はメラミンである。尿素及びメラミンは好ましいアミンであるが、他のアミン、例えばトリアジン、トリアゾール、ジアジン、グアニジン又はグアナミンは、また、アミノプラスト樹脂の製造のために使用できる。更に、ホルムアルデヒドはアミノプラスト樹脂の形成のために好ましいが、他のアルデヒド、例えばアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びベンズアルデヒドも使用できる。好適なアミノプラスト樹脂の制限されない例は、モノマーの又はポリマーのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、例えば好ましくは1〜6個の、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルコールを使用して部分的に又は完全にアルキル化されたメラミン樹脂、例えばヘキサメトキシメチル化メラミン;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、例えばメチロール尿素及びシロキシ尿素、例えばブチル化された尿素ホルムアルデヒド樹脂、アルキル化されたベンゾグアニミン、グアニル尿素、グアニジン、ビグアニジン、ポリグアニジンなどを含む。
【0044】
バインダーは、1種又はそれより多種の付加的な樹脂を含んでよい。好適な付加的な樹脂の制限されない例は、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル樹脂、例えばアクリルポリマー及びポリブタジエン樹脂を含む。付加的な樹脂は、例えば既に上述した、いずれかのポリエポキシ樹脂、延長されたポリエポキシ樹脂又はエポキシ官能性樹脂であって、場合により少なくとも1つのエポキシ反応性基を有する化合物と反応されたものであってよい。
【0045】
場合により、可塑剤もしくは溶剤又は両方は、電着コーティング組成物中に含まれていてよい。凝集溶剤の制限されない例は、アルコール、グリコールエーテル、ポリオール及びケトンを含む。特定の凝集溶剤は、エチレングリコールのモノブチル及びモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールのフェニルエーテル、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばエチレングリコールもしくはプロピレングリコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル及びモノブチルエーテル;エチレングリコールもしくはプロピレングリコールのジアルキルエーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル及びプロピレングリコールジメチルエーテル;ブチルカルビトール;ジアセトンアルコールを含む。可塑剤の制限されない例は、ノニルフェノール、ビスフェノールA、クレゾールのエチレンもしくはプロピレンオキシド付加物又は他のかかる材料、又はエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを基礎とするポリグリコールを含む。凝集溶剤の量は、決定的ではなく、一般に、樹脂固体の全質量に対して、約0〜15質量%、好ましくは約0.5〜5質量%である。可塑剤は、樹脂固体に対して15質量%までの水準で使用できる。
【0046】
バインダーは、塩形成性の酸又は塩基の存在下で水中に乳化される。好適な酸の制限されない例は、リン酸、ホスホン酸、プロピオン酸、ギ酸、酢酸、乳酸又はクエン酸を含む。好適な塩基の制限されない例が含まれる。好適な塩基の制限されない例は、ルイス塩基及びブレンステッド塩基、例えばアミン及び水酸化物化合物、例えば水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを含む。実例のアミンは、N,N−ジメチルエチルアミン(DMEA)、N,N−ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジイソプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどを含む。一定の好ましい実施態様においては、アミンは、第三級アミン、例えばジメチルエチルアミン及びジメチルエタノールアミンである。塩形成する酸又は塩基は、バインダーを水に添加する前に、バインダーと配合してよく、水と混合してよく、又はその両方であってよい。該酸又は塩基は、水分散性をバインダーに付与するのに十分なイオン化可能な樹脂基を中和するのに十分な量で使用される。該イオン化可能な基は、完全に中和されてもよいが、部分中和は、通常は、所望の水分散性の付与に十分である。樹脂が少なくとも部分的に中和されているとは、該バインダーの少なくとも1個の塩形成可能な基が中和され、かかる基の全てまでが中和されていてよいことを意味する。特定のバインダーに必要な水分散性を与えるのに必要な中和の程度は、その組成、樹脂の分子量、アミン官能性樹脂の質量割合及び他のかかる要素に依存し、それは当業者によって簡単な実験を通じて容易に決定することができる。
【0047】
イオン化可能な基が中和又は塩形成される程度は、樹脂の溶解性と、電着組成物の電着のための電着浴中での低い導電性を維持する必要性との間の所望のバランスに依存する。一般に、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、部分中和されている必要だけがある。幾つかの実施態様において、イオン化可能又は塩形成可能な基の40〜80%が塩形成される;幾つかの実施態様において、イオン化可能又は塩形成可能な基の50〜70%が塩形成される。幾つかのアノード性の実施態様において、1種以上の電着可能な樹脂の酸のミリ当量は、0.45〜0.85ミリ当量(酸)/グラム(固体)であってよい;幾つかのアノード性の実施態様において、1種以上の電着可能な樹脂の塩基のミリ当量は、0.2〜0.7ミリ当量(塩基)/グラム(固体)であってよい。1種以上の電着可能な樹脂上の酸基又は塩基性基の最適なレベルは、簡単な実験によって決定できる。
【0048】
バインダーエマルジョンは、その際、電着コーティング組成物(もしくは浴)の製造において使用される。電着浴は、無色又は澄明な電着コーティング層を生成するために顔料を含有しなくてよいが、電着浴は、通常は、1種又はそれより多種の顔料を含み、別個に顔料ペーストの部分として添加され、そして任意の更なる所望の材料、例えば凝集助剤、抑泡助剤及び樹脂の乳化の前もしくは後に添加してよい他の添加剤を含有してよい。電着プライマーのための慣用の顔料は、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、沈殿硫酸バリウム、ホスホモリブデン酸アルミニウム、クロム酸ストロンチウム、塩基性のケイ酸鉛もしくはクロム酸鉛を含む。該顔料は、粉砕樹脂もしくは顔料分散剤を用いて分散されてよい。電着浴中での顔料対樹脂の質量比は、重要なことがあり、好ましくは50未満:100、より好ましくは40未満:100、通常は約10〜30:100であるべきである。より高い顔料対樹脂固体の質量比は、凝集及び流動に悪影響を及ぼすことが判明した。通常は、顔料は、浴中の不揮発性材料の質量に対して10〜40質量%である。好ましくは、顔料は、浴中の不揮発性材料の質量に対して15〜30質量%である。電着プライマーで通常使用される任意の顔料及び充填剤が含まれていてよい。クレイなどの無機増量剤及び腐食防止顔料が通常は含まれる。
【0049】
電着コーティング組成物は、随意の成分、例えば染料、流動調節剤、可塑剤、触媒、湿潤剤、界面活性剤、UV吸収剤、HALS化合物、酸化防止剤、消泡剤などを含有してよい。界面活性剤及び湿潤剤の例は、アルキルイミダゾリン、例えばCiba−Geigy Industrial Chemicals社からAMINE C(登録商標)として入手されるもの、アセチレン系アルコール、例えばAir Products and Chemicals社から商品名SURFYNOL(登録商標)として入手されるものを含む。界面活性剤及び湿潤剤の量は、存在する場合には、一般に、樹脂固体の質量に対して2%までである。
【0050】
スズ触媒などの硬化触媒は、該コーティング組成物中で使用してよい。典型的な例は、制限されないが、スズ及びビスマス化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキシド及びビスマスオクトエートである。使用される場合に、触媒は、一般に、全体の樹脂固体の質量に対するスズの質量に対して約0.05〜2質量%の量で存在する。
【0051】
電着コーティング組成物は、金属製の基材上に電着され、次いで硬化されて、コーティングされた物品の硬化されたコーティング層を形成する。本発明によるコーティング調製物の電着は、当業者に公知の方法によって実施することができる。該電着コーティング組成物は、任意の導電性基材、例えば鋼、銅、アルミニウム又は他の金属もしくは金属合金上に、好ましくは乾燥膜厚10〜35μmまで適用することができる。該方法の一実施態様においては、導電性の基材はリン酸塩処理されていない。すなわち、該基材は、リン酸塩での前処理が施されていない。本発明の組成物でコーティングされる物品は、金属製の自動車部品もしくは車体であってよい。導電性の基材、例えば金属の自動車の車体又は部品のコーティング方法であって、清浄化されているが、好ましくはリン酸塩前処理がなされていない前記導電性の基材を、電着コーティング組成物中に入れ、そして該導電性の基材をカソードとして使用して、コーティング層をもたらす電着コーティング組成物に電流を流して、該導電性の基材上に析出させる前記方法。適用後に、コーティングされた物品は、浴から取り出され、脱イオン水ですすがれる。該コーティングは、好適な条件下で、例えば約275゜F〜約375゜Fで、約15分〜約60分にわたり焼き付けることによって硬化してよい。コーティング層は、同様にアノード電着可能な電着コーティング組成物から、導電性の基材をアノードとして使用することによって適用することができる。
【0052】
自動車の車体は、電着されていてよい。自動車の車体は、清浄化され、そして清浄化された金属の自動車の車体は、リン酸化樹脂を含む水性の電着コーティング組成物で電着される。
【0053】
1つ又はそれより多くの付加的なコーティング層、例えば吹き付け適用されたプライマーサーフェイサー、単独のトップコート層又は複合カラーコート(ベースコート)及びクリヤーコート層を、電着層上に適用してよい。単層のトップコートは、またトップコートエナメルとも呼ばれる。自動車産業において、該トップコートは、一般に、ベースコートであり、それはクリヤーコート層で上塗りされる。プライマーサーフェイサー及びトップコートエナメル又はベースコート及びクリヤーコート複合トップコートは、水系、溶剤系、又は粉末の塗料であってよく、粉末の塗料は、乾燥粉末又は水性粉末スラリーであってよい。
【0054】
本発明の複合コーティングは、一層として、プライマーコーティング層を有してよく、該層は、プライマーサーフェイサー層又はフィラーコーティング層とも呼ばれうる。プライマーコーティング層は、溶剤系の組成物、水性の組成物、又は粉末の組成物、例えば粉末スラリー組成物から形成することができる。プライマー組成物は、好ましくは、熱硬化性のバインダーを有するが、熱可塑性のバインダーも公知である。好適な熱硬化性のバインダーは、自己架橋性のポリマー又は樹脂を有してよく、又は該バインダー中にポリマーもしくは樹脂と反応性の架橋剤を含んでよい。好適なバインダーポリマー又は樹脂の制限されない例は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂を含む。かかるポリマー又は樹脂は、官能基として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、無水物基、エポキシ基、カルバメート基、アミン基などを含んでよい。とりわけ、かかる基と反応性の好適な架橋剤は、アミノプラスト樹脂(ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバメート基及びアミン基と反応性である)、ポリイソシアネート、例えばブロックトポリイソシアネート(ヒドロキシル基及びアミン基と反応性である)、ポリエポキシド(カルボキシル基、無水物基、ヒドロキシル基及びアミン基と反応性である)及びポリ酸及びポリアミン(エポキシ基と反応性である)である。好適なプライマー組成物の例は、例えば米国特許第7,338,989号;同第7,297,742号;同第6,916,877号;同第6,887,526号;同第6,727,316号;同第6,437,036号;同第6,413,642号;同第6,210,758号;同第6,099,899号;同第5,888,655号;同第5,866,259号;同第5,552,487号;同第5,536,785号;同第4,882,003号;及び同第4,190,569号に開示されており、それぞれはBASF社に譲渡されており、それぞれ参照をもって開示されたものとする。
【0055】
電着プライマー上に適用されたプライマーコーティング組成物を次いで硬化させて、プライマーコーティング層を形成させることができる。電着プライマーは、プライマーコーティング層と同時に、"ウェット・オン・ウェット"コーティングとして知られる方法で硬化させることができる。
【0056】
トップコート組成物は、電着層上に又はプライマーコーティング層上に適用し、好ましくは硬化させることで、トップコート層を形成することができる。好ましい一実施態様においては、電着層又はプライマー層は、カラー・プラス・クリヤー(ベースコート−クリヤーコート)トップコートとして適用されるトップコートでコーティングされる。ベースコート−クリヤーコートトップコートにおいては、顔料着色されたコーティング、すなわちベースコートは、透明なコーティング、すなわちクリヤーコートの外部層で覆われる。ベースコート−クリヤーコートトップコートは、魅力的な滑らかかつ光沢のある仕上げを提供し、一般に改善された性能をもたらす。
【0057】
架橋性組成物は、1つもしくはそれより多くのトップコート層として好ましい。この種のコーティングは当該技術分野でよく知られ、それには水系の組成物、溶剤系の組成物、並びに粉末組成物及び粉末スラリー組成物が含まれる。ベースコート組成物及びクリヤーコート組成物において有用であることが当該技術分野で知られるポリマーは、制限されないが、アクリルポリマー、ビニルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリカーボネートポリマー、ポリエステルポリマー、アルキドポリマー及びポリシロキサンポリマーを含む。アクリルポリマー及びポリウレタンポリマーは、なかでもトップコートバインダーのために好ましいポリマーである。熱硬化性のベースコート組成物及びクリヤーコート組成物も好ましく、その目的のためには、好ましいポリマーは、1種又はそれより多くの種類の架橋可能な官能基、例えばカルバメート、ヒドロキシ、イソシアネート、アミン、エポキシ、アクリレート、ビニル、シラン、アセトアセテートなどを含む。該ポリマーは、自己架橋性であってよく、又は好ましくは該組成物は、ポリイソシアネート又はアミノプラスト樹脂などの架橋剤を含んでよい。好適なトップコート組成物の例は、例えば米国特許第7,375,174号;同第7,342,071号;同第7,297,749号;同第7,261,926号;同第7,226,971号;同第7,160,973号;同第7,151,133号;同第7,060,357号;同第7,045,588号;同第7,041,729号;同第6,995,208号;同第6,927,271号;同第6,914,096号;同第6,900,270号;同第6,818,303号;同第6,812,300号;同第6,780,909号;同第6,737,468号;同第6,652,919号;同第6,583,212号;同第6,462,144号;同第6,337,139号;同第6,165,618号;同第6,129,989号;同第6,001,424号;同第5,981,080号;同第5,855,964号;同第5,629,374号;同第5,601,879号;同第5,508,349号;同第5,502,101号;同第5,494,970号;同第5,281,443号に開示されており、それぞれはBASF社に譲渡されており、それぞれ参照をもって開示されたものとする。
【0058】
更なるコーティング層は、電着コーティング層へと、当該技術分野でよく知られる多くの技術のいずれかに従って適用することができる。これらには、例えば吹き付けコーティング、浸漬コーティング、ローラコーティング、カーテンコーティングなどが含まれる。自動車用途のためには、1つもしくはそれより多くの更なるコーティング層は、好ましくは、吹き付けコーティング、特に静電吹き付け法によって適用される。1ミルより厚いコーティング層は、通常、2つ以上のコートにおいて、溶剤又は水性媒体の幾らかを蒸発させるか又は適用された層から"フラッシング"するのに十分な時間を隔てて適用される。
【0059】
フラッシングは、周囲温度又は高められた温度であってよく、例えばフラッシングは、放射熱を利用することができる。適用されたコーティングは、乾燥時に0.5ミルから3ミルまでであってよく、十分な数のコーティングを適用して、所望の最終コーティング厚が得られる。
【0060】
プライマー層は、トップコートを適用する前に硬化させることができる。硬化されたプライマー層は、約0.5ミルから約2ミルまでの厚さであってよく、好ましくは約0.8ミルから約1.2ミルの厚さであってよい。
【0061】
カラー・プラス・クリヤートップコートは、通常はウェット・オン・ウェットで適用される。該組成物は、複数のコーティングにおいてフラッシングによって隔てられて上記のように適用され、その際、フラッシングはまたカラー組成物の最後のコーティングと最初のクリヤーなコーティングとの間でもよい。2つのコーティング層は、次いで、同時に硬化される。好ましくは、硬化されたベースコート層は、0.5〜1.5ミルの厚さであり、硬化されたクリヤーコート層は、1〜3ミル、より好ましくは1.6〜2.2ミルの厚さである。
【0062】
選択的に、プライマー層及びトップコートは、"ウェット・オン・ウェット"で適用できる。例えば、プライマー組成物を適用でき、次いで適用された層がフラッシングされ、次いでトップコートが適用され、フラッシングされ、次いでプライマー及びトップコートが同時に硬化されうる。再び、トップコートは、ウェット・オン・ウェットで適用されたベースコート層及びクリヤーコート層を含んでよい。プライマー層は、また、未硬化の電着コーティング層に適用させて、全ての層を一緒に硬化させてもよい。
【0063】
記載されるコーティング組成物は、好ましくは熱を用いて硬化される。硬化温度は、トップコートもしくはプライマー組成物であって非封鎖酸触媒を含むものについては、好ましくは約70℃〜約180℃であり、特に好ましくは約170゜F〜約200゜Fであり、又はトップコートもしくはプライマー組成物であって封鎖酸触媒を含むものについては、約240゜F〜約275゜Fである。前記温度での典型的な硬化温度は、15〜60分の範囲であり、好ましくはその温度は、約15〜約30分の硬化時間を可能にするように選択される。好ましい一実施態様においては、コーティングされる物品は自動車の車体又は部品である。
【0064】
本発明を、以下の実施例において更に説明する。実施例は、単に説明を目的とするものであって、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の範囲をなんら限定するものではない。全ての部は、特に記載がない限り、質量部である。
【0065】
実施例
調製物A: 2−スルホ安息香酸無水物を有するバインダーエマルジョンの製造
撹拌機と加熱マントルを備えた3Lのフラスコ中で、以下の材料:ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)(18.03部)、ビスフェノールA(BPA)(4.1部)、フェノール(1.41部)及びプロピレングリコール n−ブチルエーテル(0.36部)を合する。
【0066】
撹拌しながら、温度を257゜F(125℃)に高める。引き続き、トリフェニルホスフィン(0.04部)を添加し、発熱が392゜F(200℃)として記録される。該混合物を次いで275゜F(135℃)に冷却させ、45分後に、エポキシ当たりの質量(WPE)測定(ターゲット=525±25)を行い、測定されたWPEは533である。194゜F(90℃)に冷却し、加熱マントルを停止させた後に、1.73部のジエタノールアミンを導入して、発熱が241゜F(116℃)として記録される。該反応混合物を、発熱に至った後に、221゜F(105℃)でさらに30分間にわたり撹拌させる。30分間撹拌した後に、3−ジメチルアミノプロピルアミンを221゜F(105℃)で添加し(0.84部)、発熱は、302゜F(150℃)として記録される。該混合物を、さらに1時間にわたり撹拌する。次いで、1.13部の2−スルホ安息香酸無水物を275゜F(135℃)で添加し、そして得られた混合物を266゜F(135℃)で1.5時間にわたり撹拌する。次いで、2.36部のPluracol(登録商標)710R(BASF Corporationにより販売)を添加し、引き続き架橋剤(ポリマーのMDI及び一官能性アルコールを基礎とするブロックトイソシアネート)(13.6部)を添加する。該混合物を、221〜230゜F(105〜110℃)で30分にわたり撹拌する。
【0067】
均質な混合物に至った後に、樹脂と架橋剤のブレンドを、一定の撹拌をしつつ、脱イオン水(34.95部)及びギ酸(88%)(0.62部)の酸/水混合物に添加する。全ての成分を金属製のスパチュラを用いて徹底的に混ぜた後に、固体をさらに水の添加(18.55部)によって減少させる。流動添加剤パック(flow−additive package)(2.51部)を前記酸混合物に添加する。前記の様々な使用される溶剤を含む全ての原材料は、工業等級であり、更なる精製はされない。
【0068】
調製物B: 第三級アンモニウム基を有する粉砕樹脂
EP0505445号B1に従って、有機粉砕樹脂水溶液を、第一段階で2598部のビスフェノールAグリシジルエーテル(エポキシ当量(EEW)188g/当量)、787部のビスフェノールA、603部のドデシルフェノール及び206部のブチルグリコールをステンレス鋼反応容器中で4部のトリフェニルホスフィンの存在下で130℃でEEWが865g/当量に到達するまで反応させることによって製造する。冷却の過程で、そのバッチを、849部のブチルグリコール及び1534部のD.E.R(登録商標)732(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、DOW Chemical,米国)で希釈し、そしてさらに90℃で266部の2,2′−アミノエトキシエタノール及び212部のN,N−ジメチルアミノプロピルアミンと反応させる。2時間後に、樹脂溶液の粘度は、一定である(5.3dPas;Solvenon(登録商標)PM(メトキシプロパノール、BASF(ドイツ)から入手)中40%;コーン・プレート粘度計で23℃)。それを、1512部のブチルグリコールで希釈し、そしてベースの基は、201部の氷酢酸で部分的に中和され、そして該生成物をさらに1228部の脱イオン水で希釈し、排出させる。それにより、60%濃度の有機樹脂水溶液であって、その10%希釈がpH6.0を有する溶液が得られる。該樹脂溶液は、ペースト製造のために直接的に使用する。
【0069】
調製物C: 顔料ペースト
まず、1897部の水と1750部の調製物Bの粉砕樹脂からプレミックスを形成する。次いで、21部のDisperbyk(登録商標)110(Byk−Chemie GmbH(ドイツ))、14部のLanco Wax(登録商標)PE W 1555(Langer&Co.(ドイツ))、42部のカーボンブラック、420部のヒドロケイ酸アルミニウム ASP 200(Langer&Co.(ドイツ))、2667部の二酸化チタン TI−PURE(登録商標)R 900(DuPont,米国)及び189部のジ−n−ブチルスズオキシドを添加する。該混合物を、高速溶解撹拌機で30分にわたり予備分散させる。該混合物を引き続き、小さい研究室用のミル(Motor Mini Mill,Eiger Engineering Ltd,英国)中で、それが12μm未満又はそれに等しいヘグマン粒度を測定するまで分散させ、そして固体含有率を追加の水で調整する。得られた顔料ペーストは、固体含有率:60.0質量%(180℃で1/2時間)を有する。
【0070】
実施例1
電着浴を、1517.98部の調製物A、154.04部の調製物C、及び1327.98部の脱イオン水を合することによって調製する。水及び調製物Aの樹脂エマルジョンを一定の撹拌をしつつ1つの容器中で合し、そして調製物Cを撹拌しながら添加する。前記浴の固体含有率は、19質量%である。
【0071】
リン酸化された冷間圧延鋼とベアな冷間圧延鋼の両方の4インチ×6インチのパネルを100〜225ボルト(0.5アンペア)で実施例1の浴中で浴温度88〜98゜F(31〜36.7℃)で2.2分にわたりコーティングし、該コーティングされたパネルを350゜F(177℃)で28分間にわたり焼き付けする。析出され、焼き付けられたコーティングは、約0.8ミル(20μm)の塗膜形成を有する。
【0072】
詳細な説明は、単に例示的な性質にすぎず、従って本開示の骨子から逸脱しない別形も本発明の一部である。それらの別形は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱するものとして見なされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーを含む水性コーティング組成物であって、前記バインダーが、スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂を含む、前記水性コーティング組成物。
【請求項2】
前記スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂である、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
前記スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が、電着可能である、請求項2に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
前記スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が、ビスフェノールAを基礎とするエポキシ樹脂である、請求項2又は3に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
前記スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂は、
【化1】

、その塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマー単位を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
前記スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が、樹脂とアルカンスルトン、2−スルホ安息香酸無水物、2−安息香酸スルフィミド又はそれらの組み合わせとの反応によって形成される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
前記スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂が、平均して、1分子当たり1つより多くのスルホ基又はスルファミル基を含むか、又は平均して、1分子当たり少なくとも1つのスルホ基とスルファミル基のそれぞれを含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
更に、前記スルホ基又はスルファミル基を有する樹脂と反応性の架橋剤を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
前記バインダーが、更に、第二のアミン官能性樹脂を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
更に、スルホ基又はスルファミル基を含まない第二のアミン官能性樹脂と、前記スルホ基もしくはスルファミル基を有する樹脂及び該第二のアミン官能性樹脂と反応性の架橋剤とを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
金属の自動車車体をコーティングする方法であって、
(a)金属の自動車車体を清浄化することと、
(b)清浄化した金属の自動車車体を、請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性のコーティング組成物中に入れることと、
(c)前記金属の自動車車体をカソードとして電気回路に接続し、そして前記水性の電着コーティング組成物に電流を流して、前記金属の自動車車体上にコーティング層を析出させることと、
を含む、金属の自動車車体をコーティングする方法。
【請求項12】
前記金属の自動車車体が、リン酸塩前処理されていない、請求項11に記載の導電性の基材のコーティング方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法又は請求項12に記載の方法によって製造されたコーティングされた基材。

【公表番号】特表2012−514095(P2012−514095A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544425(P2011−544425)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/050107
【国際公開番号】WO2010/077383
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】