説明

スロットルボディ温度制御装置

【課題】ハイブリッド車両のエンジンの間欠停止後に、適切にエンジンを再始動する。
【解決手段】スロットルボディ温度制御装置(30)は、ハイブリッド車両(1)に搭載されたエンジン(11)のスロットルボディ(14)の温度を、該エンジンの冷却水を該スロットルボディに循環させることにより制御するスロットルボディ温度制御装置である。該スロットルボディ温度制御装置は、冷却水の温度が高いことを条件に、スロットルボディへの冷却水の循環を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば冷却水を循環させてスロットルボディの温度を制御するスロットルボディ温度制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、ハイブリッド車両のエンジンが有するスロットルボディに対して、該ハイブリッド車両の電気系冷却水を供給することによって、スロットルボディを昇温する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、エンジンを冷却するための冷却水を、電動ポンプによって循環させると共に、スロットルボディに供給する装置であって、該スロットルボディにアイシングが生じていると判定された場合に、電動ポンプの流量を増加させる装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
尚、エンジンが負荷運転されている際の吸気温に応じて点火時期を補正してノッキングの抑制を行う装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−082219号公報
【特許文献2】特開2008−106625号公報
【特許文献3】特開2010−195306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ハイブリッド車両のエンジンが暖機された後はスロットルボディが比較的高温となり、吸気の温度が上昇する。すると、エンジンの間欠停止後、該エンジンを再始動する際に、ノッキングが発生する可能性があるという技術的問題点がある。上述した特許文献1乃至3に記載の技術では、該技術的問題点を解決することは困難である。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド車両のエンジンの間欠停止後に、適切にエンジンを再始動することができるスロットルボディ温度制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスロットルボディ温度制御装置は、上記課題を解決するために、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンのスロットルボディの温度を、前記エンジンの冷却水を前記スロットルボディに循環させることにより制御するスロットルボディ温度制御装置であって、前記冷却水の温度が高いことを条件に、前記スロットルボディへの前記冷却水の循環を停止する。
【0009】
本発明のスロットルボディ温度制御装置によれば、当該スロットルボディ温度制御装置は、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンのスロットルボディの温度を、該エンジンの冷却水をスロットルボディに循環させることにより制御する。尚、「冷却水」には、水に限らず、例えばエチレングリコール等の液体も含まれる。
【0010】
ここで、本願発明者の研究によれば、以下の事項が判明している。即ち、エンジンが暖機された後も、スロットルボディには比較的高温の冷却水が供給されるため、該スロットルボディの温度が比較的高い状態に保たれる。すると、エンジンの間欠停止時には、該エンジンの吸気系内部に空気が滞留すると共に、該空気にスロットルボディの熱が伝導することによって、該空気の温度が比較的高温となる。この結果、エンジンの間欠停止後、該エンジンを再始動する際に、ノッキングが発生する可能性がある。或いは、ノッキング抑制制御に起因して点火時期が変更されると再始動時のエンジントルクが低下する可能性がある。
【0011】
そこで本発明では、冷却水の温度が高いことを条件に、スロットルボディへの該冷却水の循環が停止される。ここで「冷却水の温度が高い」とは、冷却水がスロットルボディに循環された場合に、該スロットルボディの温度に起因してノッキングが発生する可能性があるほど冷却水の温度が高いことを意味する。
【0012】
このため、エンジンの間欠停止時におけるスロットルボディの高温化を抑制することができる。この結果、エンジンの再始動時のノッキングの発生を抑制することができる。加えて、ノッキング抑制制御が実施されることを抑制することもできるので、エンジンの再始動時にエンジントルクが低下することも抑制することができる。
【0013】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るハイブリッド車両における冷却系の概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係るスロットルボディ温度制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るスロットルボディ温度制御装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
実施形態に係るハイブリッド車両1の冷却系システムについて、図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係るハイブリッド車両における冷却系の概略構成を示すブロック図である。尚、図1において、実線は冷却水流路を示しており、実線矢印は冷却水の流れの一例を示している。
【0017】
冷却系システムは、冷却水を用いてエンジン11等の冷却を行うと共に、該冷却水を用いて車室内空気を暖めたり、冷却水と排気ガスとの間で熱交換を行うことによって排気熱を回収したりするシステムである。
【0018】
冷却水流路上には、エンジン11、スタータモータ(Engine Start Moter:ESM)12、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブ(EGR/V)13、電子スロットルボディ(Throttle Body:T/B)14、ヒータ15、EGRクーラ(EGR/C)16、排気熱回収器17、電動ウォータポンプ(Electric Water Pump:EWP)21、ラジエータ22、ラジエータタンク(Radiator Tank:R/T)23、及びサーモスタット24が設けられている。
【0019】
冷却水流路は特に、ヒータ15等を経由せずに、冷却水をスタータモータ12に供給可能なバイパス流路25と、電子スロットルボディ14に冷却水を供給可能な流路26と、電子スロットルボディ14を経由しない流路27と、を備えてなる。
【0020】
エンジン11は、供給される燃料と空気との混合気を燃焼させることによって動力を発生する装置である。該エンジン11は、冷却水が供給されることによって冷却される。ヒータ15は、内部を通過する冷却水によって、車室内空気を暖める装置である。この場合、ヒータ15によって暖められた空気は、ブロア(図示せず)によって車室内に送風される。排気熱回収器17は、エンジン11の排気ガスが通過する排気通路(図示せず)上に設けられている。該排気熱回収器17の内部を冷却水が通過することによって、冷却水と排気ガスとの間で熱交換が行われることによって排気熱が回収される。
【0021】
EGRクーラ16は、EGRガスが通過するEGR通路(図示せず)上に設けられており、EGRガスを冷却するために用いられる。また、EGRクーラ16には、冷却水が供給される。これにより、効果的にEGRガスを冷却することができる。EGRバルブ13は、EGR通路内を通過するEGRガスの流量を制御する弁である。EGRバルブ13にも、冷却水が供給される。これにより、EGRバルブ13が冷却される。
【0022】
ラジエータ22では、その内部を通過する冷却水が外気によって冷却される。この場合、例えば電動ファン(図示せず)の回転により導入された風によって、ラジエータ22内の冷却水の冷却が促進される。電動ウォータポンプ21は、電動式のモータを備えて構成され、該モータの駆動により冷却水を冷却水流路内で循環させる。
【0023】
サーモスタット24は、冷却水の温度に応じて開閉する弁によって構成される。基本的には、サーモスタット24は、冷却水の温度が高温となったときに開弁する。この場合、冷却水はラジエータ22を通過することとなる。これにより、冷却水が冷却され、例えばエンジン11のオーバーヒート等が抑制される。これに対して、冷却水の温度が比較的低温である場合には、サーモスタット22は閉弁している。この場合には、冷却水はラジエータ22を通過しない。これにより、冷却水の温度低下が抑制されるため、例えばエンジン11のオーバークール等が抑制される。
【0024】
電子スロットルボディ14は、エンジン11の吸気通路(図示せず)上に設けられており、エンジン11に供給する吸気の量を調整するスロットルバルブ(図示せず)を内蔵するユニットである。尚、スタータモータ12は、モータ・ジェネレータ(電動発電機)により実現されるモータであってもよい。
【0025】
上記の如く構成された冷却系システムを備えるハイブリッド車両1に搭載されたECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)30は、例えば、温度センサ(図示せず)からの出力信号に基づいて、電動ウォータポンプ21に対して、回転数等を指示する信号を送信することによってエンジン11等の冷却を行う。
【0026】
具体的には例えば、流路26及び流路27の接合部に、流路26及び流路27を相互に切り換える電子サーモスタット又は電子制御弁を配置し、冷却水の温度が高い場合には、ECU30は、流路26に冷却水が供給されないように電子サーモスタット又は電子制御弁を制御する。他方、冷却水の温度が低い場合には、ECU30は、流路26に冷却水が供給されるように電子サーモスタット又は電子制御弁を制御する。
【0027】
或いは、例えば、流路26及び流路27各々に電動ウォータポンプを配置し、冷却水の温度が高い場合には、ECU30は、流路26に冷却水が供給されないように電動ウォータポンプの回転数を制御する。他方、冷却水の温度が低い場合には、ECU30は、流路26に冷却水が供給されるように電動ウォータポンプの回転数を制御する。
【0028】
このように構成すれば、エンジン11の間欠停止時における電子スロットルボディ14の高温化を抑制することができる。このため、エンジン11の再始動時のノッキングの発生を抑制することができる。また、ノッキング抑制制御が実施されることを抑制することもできるので、エンジン11の再始動時にエンジントルクが低下することも抑制することができる。
【0029】
次に、ECU30が実施するスロットルボディ温度制御処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0030】
エンジン11の間欠停止時に、先ず、ECU30は、温度センサにより検出された冷却水の温度が閾値(例えば、摂氏50度)より高いか否かを判定する(ステップS101)。冷却水の温度が閾値より高いと判定された場合(ステップS101:Yes)、ECU30は、電子スロットルボディ14への冷却水の循環を停止する(ステップS102)。他方、冷却水の温度が閾値より低いと判定された場合(ステップS101:No)、ECU30は、電子スロットルボディ14への冷却水の循環を行う(ステップS103)。
【0031】
尚、冷却水の温度と閾値とが「等しい」場合には、どちらかの場合に含めて扱えばよい。ここで、本実施形態に係る「閾値」は、電子スロットルボディ14への冷却水の循環を停止するか否かを決定する値であり、予め固定値として、或いは、何らかの物理量又はパラメータに応じた可変値として設定されている。このような閾値は、実験的若しくは経験的に、又はシミュレーションによって、例えば、エンジンの間欠停止時における冷却水の温度と、吸気系内部の空気の温度との関係を求め、該求められた関係に基づいて、エンジンの再始動時にノッキングが生じる可能性がある冷却水の温度として、又は、該温度よりも所定値だけ低い温度として、設定すればよい。
【0032】
尚、本実施形態に係る「ECU30」は、本発明に係る「スロットルボディ温度制御装置」の一例である。本実施形態では、ハイブリッド車両1の各種電子制御用のECU30の機能の一部を、スロットルボディ温度制御装置の一部として用いている。
【0033】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うスロットルボディ温度制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
1…ハイブリッド車両、11…エンジン、14…電子スロットルボディ、21…電動ウォータポンプ、22…ラジエータ、30…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両に搭載されたエンジンのスロットルボディの温度を、前記エンジンの冷却水を前記スロットルボディに循環させることにより制御するスロットルボディ温度制御装置であって、
前記冷却水の温度が高いことを条件に、前記スロットルボディへの前記冷却水の循環を停止する
ことを特徴とするスロットルボディ温度制御装置。

【図1】
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【図2】
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