説明

スロットル操作機構及び携帯型作業機

【課題】安全性を維持しつつ、スロットルレバーの操作性を向上するスロットル操作機構及び携帯型作業機を提供する。
【解決手段】スロットル操作機構は、スロットルレバー21の中間部を回動自在に設けてこのレバーの一端側21aを作業者が握る部分とし、このレバーの他端部21bをリンクアーム25の一端25aに回動自在に連結し、リンクアーム25の他端25bをスロットルアーム29及び開度調整アーム33の一端29a、33aに回動自在に重ねて連結し、開度調整アーム33の他端33bは回動支点となって位置変更可能に固定され、スロットルアーム29の他端29bにスロットルバルブに接続されたケーブルKを接続し、ケーブルKはスロットルバルブ側に常に引っ張られて、スロットルアーム29の他端29bはアイドル位置Pi側に常に引っ張られ、スロットルレバー21が開放されると、スロットルアーム29の他端はアイドル位置Piに移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンによって駆動される携帯型作業機に設けられたスロットル操作機構に関し、特に、トリガ式のスロットルレバーにおけるスロットル開度の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンによって駆動される携帯型作業機において、作業時のエンジン回転数を調整するためのスロットルレバーは、エンジン回転数の調整方法として、固定式やトリガ式が知られている。
【0003】
一般に固定式は、スロットルレバーの回動操作に応じて任意のスロットル開度に固定することができ、作業に応じたエンジン回転数に調整が可能である点で便利である。しかしながら、この固定式は、作業中に作業機から手を離しても、スロットルレバーを、エンジン回転数をアイドル状態にするための操作をしなければ、エンジン回転数が上昇した状態で回転し続けるため、安全性の確保が不十分となる虞がある。
【0004】
一方、トリガ式は、作業者がスロットルレバーを握っている間だけスロットルバルブが開いてエンジン回転数が上昇し、作業機から手を離すと、スロットルレバーからも手が離れて、即時にエンジンがアイドル状態に戻るように構成されており、安全性が高い。しかしながら、このトリガ式では、スロットル開度が全開とアイドル状態との間のパーシャル状態で任意のスロットル開度に固定して使用する場合には、作業者が一定の握力でスロットルレバーを握り続けることが強いられて、作業者にとって負担となるので、一般にスロットルレバーによる開度調整は困難である。このため、トリガ式のスロットルレバーを搭載した携帯型作業機では、作業者がスロットルレバーをいっぱいに握りしめたエンジン全開の状態で使用するのが通常であった。このため、携帯型作業機では、作業時において、エンジンは常に全開状態となり、騒音、振動、燃費等が悪化するという問題を有していた。
【0005】
この問題を解決する提案が特許文献1及び特許文献2に開示されている。特許文献1に記載の発明は、スロットルレバーの遊び量を調整することで、スロットル開度の上限が調整可能に構成されている。このため、作業に応じてスロットル開度の上限を調整しておくと、作業時においてスロットルレバーをいっぱいに握った状態で且つ所望のエンジン回転数で作業を行うことができる。
【0006】
また特許文献2に記載の発明は、作業者がスロットルレバーを握って所望のスロットル開度にすると、スロットルレバーがその位置で保持されるように構成されている。このため、作業者は一定の握力でスロットルレバーを握り続ける必要がなくなり、作業者の負担を軽減することができる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−148377号公報
【特許文献2】特開平11−24771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の発明は、スロットルレバーの遊びを調整するものであるので、図7(概念図)に示すように、スロットルレバーを握り始めてから実際にスロットルバルブが開き始めるまでに空走区間a、b、cが存在する。なお、図7の縦軸はスロットル開度(%)を示し、横軸はスロットルレバーの操作量(%)を示している。このため、スロットルレバーの操作量とスロットル開度の変化が必ずしもリニアではなく、エンジン回転数の上昇がリニアに変化しない場合があり、作業者にとって違和感を感じることがある。また図8(概念図)に示すように、スロットルレバーの引きしろを調整してスロットル開度の上限を制限する方法も知られているが(図面では、スロットル開度の上限を半分に制限している)、この方法ではスロットルレバーによるスロットル開度の微調整が困難であるため、エンジンの上限の回転数が所望の回転数とずれて、作業者にとって違和感を感じ、操作性が十分とは言えなかった。
【0009】
また特許文献2に記載の発明では、所望のスロットル開度に調整したスロットルレバーを一旦離すと、スロットルレバーの保持機能がなくなってスロットルレバーがアイドル位置に自動復帰するため、所望のスロットル開度にするには、作業者が再びスロットルレバーを握って再セットする必要があり、煩わしいという課題があった。
【0010】
本発明は、このような従来のトリガ式のスロットルレバーが有している問題点を解決するためになされたものであり、安全性を維持しつつ、スロットルレバーの操作性の向上を図ることができるスロットル操作機構及びこれを備えた携帯型作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。特徴の一つは、作業部(例えば、実施形態における刈刃7)を駆動するエンジンを備えた作業機(例えば、実施形態における刈払機1)において、作業機に設けられたスロットルレバーの回動操作によってエンジンのスロットルバルブに接続されたケーブルを操作する作業機のスロットル操作機構であって、スロットルレバーの中間部を作業機に回動自在に設けて該スロットルレバーの一端側を作業者が直接に握る部分とし、スロットルレバーの他端部をリンクアームの一端に回動自在に連結し、リンクアームの他端をスロットルアームの一端及び開度調整アームの一端に回動自在に重ねて連結し、開度調整アームの他端は回動支点となって位置変更可能に固定され、スロットルアームの他端にスロットルバルブに接続されたケーブルを接続し、ケーブルはスロットルバルブ側に常に引っ張られて、スロットルアームの他端は、移動するとエンジンの回転数がアイドル状態になるアイドル位置側に常に引っ張られ、握られたスロットルレバーの一端側が開放されると、スロットルアームの他端はアイドル位置に移動することを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、スロットルレバーの中間部に支点を設けて回動自在に固定し、スロットルレバーの他端部をリンクアームの一端に回動自在に連結し、リンクアームの他端をスロットルアームの一端及び開度調整アームの一端に回動自在に重ねて連結し、開度調整アームの他端を位置変更可能な支点として固定することで、開度調整アームの他端の固定位置を任意に変えると、スロットルレバーの操作範囲を変えることなくスロットルアームの他端の移動ストロークを任意に変更することができる。このため、ケーブルの移動量の調整が可能となり、常にスロットル開度を連続的に調整可能となり、作業者がスロットルレバーを操作範囲で違和感なく連続的に操作でき、且つスロットルレバーを握ったままでスロットル開度を変更して作業をすることができる。また握ったスロットルレバーを開放した場合、エンジンはアイドル状態に戻るので安全性を確保することができ、スロットルレバーを再び握りしめるだけでスロットル開度を所望の上限スロットル開度に再セットすることができる。
【0013】
また特徴の一つは、スロットルアーム及び開度調整アームの各一端と他端との間の長さは等しく、開度調整アームの他端は、スロットルレバーの一端側より握る力が開放された状態にあるときのリンクアームの他端位置を回動中心とする開度調整アームの他端の円軌道上の任意位置に変更可能に固定されることを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、スロットルアーム及び開度調整アームの各一端と他端との間の長さを等しくし、開度調整アームの他端を、スロットルレバーの一端側より握る力が開放された状態にあるときのリンクアームの他端位置を回動中心とする開度調整アームの他端の円軌道上の任意位置に変更可能に固定することで、開度調整アームの他端の固定位置を変えても、スロットルアームの他端のアイドル位置は変わることがなく、アイドル位置ではケーブルが常に同じ動作状態になるので、スロットルレバーの操作によって、決められたアイドル位置でのスロットル開度と所望の上限スロットル開度の範囲内で、エンジンを容易に制御することができる。
【0015】
また特徴の一つは、開度調整アームの他端を、アイドル位置に移動したスロットルアームの他端と上下に重ねられた位置から、円軌道上の任意位置に変更可能に固定することを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、開度調整アームの他端を、アイドル位置に移動したスロットルアームの他端と上下に重ねられた位置から、円軌道上の任意位置に変更可能に固定することで、スロットルレバーの操作範囲を変えずに、その下限ではアイドル状態、その上限では所望の上限スロットル開度とすることが可能となり、スロットルレバーの操作量に応じてスロットル開度をアイドル状態から上限スロットル開度までリニアに調整することが可能となり、操作性を高めることができる。
【0017】
さらに特徴の一つは、アイドル位置に移動したスロットルアームの他端に接してケーブルの延びる方向と反対側に延びる側壁を設け、スロットルレバーの操作範囲内で、リンクアームとスロットルアームとのなす角度のうちケーブルの延びる方向と反対側の角度は、180°より小さいことを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、アイドル位置に移動したスロットルアームの他端に接してケーブルの延びる方向と反対側に延びる側壁を設けることで、スロットルアームの他端は側壁に沿ってケーブルと並行に移動可能となり、ケーブルを無理なく移動させることができる。またリンクアームとスロットルアームとのなす角度のうちケーブルの延びる方向と反対側の角度が180°より小さくすることで、スロットルアームの他端は常に側壁に当接し、ケーブルの移動をスムースにすることができる。
【0019】
また特徴の一つは、スロットルアームと側壁とのなす角度のうちケーブルが延びる側の角度が、スロットルレバーの操作範囲内で、70°より小さいことを特徴とする。
【0020】
この特徴によれば、スロットルアームと側壁とのなす角度のうちケーブルが延びる側の角度を70°より小さくすることで、スロットルアームの移動の際の側壁に対する垂直効力を抑えて摩擦力を低減して、側壁に沿った方向成分の力を増大することができる。このため、スロットルアームの移動がスムースになって、ケーブルの移動をスムースにすることができる。
【0021】
また特徴の一つは、請求項1から5のいずれかに記載のスロットル操作機構を携帯型の作業機に搭載したことを特徴とする。
【0022】
この特徴によれば、請求項1から5のいずれかに記載のスロットル操作機構を携帯型の作業機に搭載することで、安全でスロットルレバーの操作性が良好な携帯型作業機を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、前述した特徴を有することで、安全性を維持しつつ、スロットルレバーの操作性の向上を図ることが可能なスロットル操作機構及び携帯型作業機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係わる作業機のスロットル操作機構及び携帯型作業機の実施形態を図1から図6に基づいて説明する。本実施形態は、スロットル操作機構をエンジン駆動式の携帯型作業機の一例である刈払機に搭載した場合について説明する。図1は刈払機1の斜視図を示しており、刈払機1は、図1に示すように、操作杆3と、操作杆3の後端部に装着されたエンジン5と、操作杆3の前端部に回転自在に取り付けられた円板状の刈刃7と、刈刃7を覆うようにして操作杆3の前端部に装着された安全カバー10とを有して構成される。
【0025】
操作杆3の前端部にはギアヘッド4が取り付けられており、エンジン5の図示しない駆動軸とギアヘッド4は、操作杆3内に設けられた図示しないドライブシャフトを介して連結されて、ギアヘッド4にエンジン5からの動力が伝達可能になっている。ギアヘッド4には刈刃7が装着され、ギアヘッド4を介して刈刃7にエンジン5の動力が伝達されて回転するようになっている。
【0026】
操作杆3の中間部にはハンドル6が取り付けられており、このハンドル6の両端部には図示しない作業者が握る把手部11が取り付けられている。把手部11の一方側にはエンジン5の動力を調整するためのスロットルレバー21が装着されている。作業者はこのスロットルレバー21とともに把手部11を把持して操作することによって、刈払作業を行う。刈払作業においては、円板状の刈刃7が略水平方向に向くようにハンドル6が操作される。なお、刈刃7に動力を伝達する手段として、エンジン5の代わりにモータにしてもよい。
【0027】
図2はスロットル操作機構を模式的に示した図であり、同図に示すように、作業者が直接に操作するスロットルレバー21は、その中間部分に支点21cを設けて回動自在に固定され、その一端側21aを作業者が直接に握る部分とし、他端21bがリンクアーム25の一端25aに回動自在に連結されている。リンクアーム25の他端25bはスロットルアーム29の一端29a及び開度調整アーム33の一端33aに回動自在に上下に重ねて連結されている。
【0028】
スロットルアーム29と開度調整アーム33の各一端29a、33aと他端29b、33bとの間の長さL,Rは等しくなっていて、開度調整アーム33の他端33bは支点となっていて、スロットルレバー21の一端側21aより握る力が開放された状態にあるときのリンクアーム25の他端25bの位置を回動中心とする開度調整アーム33の他端33bの円軌道S1上の任意位置に変更可能に固定され、且つ回動可能になっている。
【0029】
スロットルアーム29の他端29bには、ケーブルKが接続され、ケーブルKの一方は図示しないエンジンスロットルに連動するように取り付けられ、エンジンスロットルにはケーブルKを引っ張る側に付勢する図示しない弾性体が設けられている。スロットルアーム29の他端29bは、このエンジンスロットルの弾性体により、アイドル位置Piの方向に向く力が常に作用し、握られたスロットルレバー21の一端側21aが開放されると、スロットルアーム29の他端29bはアイドル位置Piに移動する。
【0030】
更に詳細には、開度調整アーム33の他端33bは、円軌道S1上で、アイドル位置Piにセットされたスロットルアーム29の他端29bと重ねた位置からスロットル開度の上限を設定する最大上限スロットル開度位置Puの範囲内を移動して、固定できるようになっている。
【0031】
アイドル位置Piに移動したスロットルアーム29の他端29bには、スロットルアーム29の他端29bに接触してケーブルKの延びる方向と反対側に向いてケーブルKと略平行に延びる側壁37が設けられている。この側壁37に接触するスロットルアーム29とリンクアーム25とのなす角度のうちケーブルKの延びる方向と反対側の角度θは、スロットルレバー21の操作範囲内で、180°より小さくなっている。そして、スロットルアーム29と側壁37とのなす角度のうちケーブルが延びる側の角度φは、スロットルレバー21の操作範囲内で、90°より小さくなっている。
【0032】
このように、スロットルアーム29の他端29bはアイドル位置Piの方向に常に引っ張られ、スロットルアーム29とリンクアーム25とのなす角度θが180°よりも小さく、スロットルアーム29と側壁37とのなす角度φが90°より小さい関係にあるので、スロットルアーム29の他端29bは常に側壁37に当接する。そして、ケーブルKとの連結部でもあるスロットルアーム29の他端29bは、スロットルレバー21の動きに応じて側壁37に沿って移動する。ここで、前述したように、側壁37は、ケーブルKと略平行に設けられているので、ケーブルKは無理なくスムースに移動することができ、またスロットルレバー21を握るのをやめて開放状態にすると、エンジンはアイドル状態に戻るので安全性を確保することができる。
【0033】
スロットル開度の上限設定を変更する場合は、開度調整アーム33の他端33bの位置を変える。ここで、スロットルアーム29及び開度調整アーム33の一端29a,33aと他端29b,33bとの間の長さL,Rは等しいので、これらのアームの他端29b,33b同士が上下に重ねられた状態では、スロットルレバー21を操作しても、スロットルアーム29の他端29bは開度調整アーム33の他端33bと重ねられた位置を支点として回動するのみであるので、ケーブルKが移動することはない。
【0034】
スロットルアーム29の他端29bが開度調整アーム33の他端33bからずれると、そのずれ量に応じて、スロットルレバー21の操作量に対するスロットルアーム29の他端29bの移動量は変化する。本実施例では、スロットルアーム29と開度調整アーム33の長さL,Rが等しく、開度調整アーム33の他端33bを、スロットルレバー21より握る力が開放された状態におけるリンクアーム25の他端25bの位置を中心とする円軌道S1上で任意に固定できるようにし、スロットルアーム29の他端29bはケーブルKによってアイドル位置Piの方向に常に引っ張られるので、開度調整アーム33の他端33bの固定位置を変えても、スロットルレバー21を開放状態にすると、スロットルアーム29の他端29bの位置は常に同じアイドル位置Piになり、またアイドル位置Piにあるスロットルアーム29の他端29bと開度調整アーム33の他端33bのずれ量に応じて、スロットルレバー21の操作範囲を変えることなくスロットルアーム29の他端29bの移動ストロークを任意に変更することができる。
【0035】
このため、スロットルレバー21の遊びはなく、スロットルレバー21の操作量に応じてスロットル開度を連側的に変えることができ、作業者がスロットルレバー21の操作範囲内で違和感なく連続的に操作することができ、且つスロットルレバー21を握った状態でスロットル開度を変更する作業ができる。また開度調整アーム33の他端33bの固定位置を変えなければ、スロットルレバー21を開放状態にしても、スロットル開度の上限設定をし直す必要はない。
【0036】
また本実施例では、開度調整アーム33の他端33bを、アイドル位置Piにセットされたスロットルアーム29の他端29bと上下に重ねた位置から、任意の位置に変更可能に固定するので、スロットルレバー21の操作範囲を変えずに、その下限ではアイドル状態、その上限では調整された上限スロットル開度とすることが可能となり、スロットルレバー21の操作量に応じてスロットル開度をアイドル状態から調整された上限スロットル開度までリニアに調整することができる。
【0037】
なお、スロットルアーム29と側壁37とのなす角度φは、スロットルレバー21の操作範囲で、90°よりも小さくなるようにしたが、この角度φを70°よりも小さくすると、スロットルアーム29の移動の際の側壁37に対する垂直効力の大きさを抑えて摩擦力を低減して、側壁37に沿った方向成分の力を増大することができる。このため、スロットルアーム29の移動がスムースになって、ケーブルKの移動をよりスムースにすることができる。
【0038】
次に、このように構成されたスロットル操作機構の動作について説明する。図3(a)〜図3(d)は、上限スロットル開度を最大に設定したときの、スロットルレバー21の回動に応じたスロットル操作機構の動きを示したものである。図3(a)に示すように、開度調整アーム33の他端33bは最大上限スロットル開度位置Puにおいて回動可能に固定され、スロットルレバー21の一端側21aはその支点21cを通ってケーブルKと略平行に延びる中心軸線Qに対して所定角度(図面では30°)を有して傾いている。
【0039】
このような状態でスロットルレバー21を握り込んでいくと、図3(b)に示すように、スロットルレバー21の他端21bとリンクアーム25の一端25aが共に移動し、これと同時に、リンクアーム25の他端25bと開度調整アーム33の一端33aとスロットアーム29の一端29aが、開度調整アーム33の他端33bを中心とする円軌道S2上を移動する。このとき、スロットルアーム29の他端29bは側壁37に沿ってアイドル位置Piから離反する方向に移動する。ここで、スロットルアーム29の他端29bにはエンジンスロットルと連結したケーブルKが連結されているので、スロットルアーム29の他端29bがアイドル位置Piから離反する方向に移動すると、ケーブルKは引っぱられ、その結果エンジンスロットルが開かれる。なお、このときのケーブルKの引き量Xは、図面では4.4mmである。
【0040】
そして、さらにスロットルレバー21を握り込むと、図3(c)に示すように、スロットルアーム29の他端29bがアイドル位置Piからさらに離反する方向に移動して、ケーブルKの引き量Xがさらに増加して(図面ではケーブルKの引き量Xは9.9mm)、エンジンスロットルの開度が大きくなる。そして、図3(d)に示すように、スロットルレバー21の一端側21aがいっぱいに握りしめた状態(図面では一端側21aが中心軸線Qに沿った方向に延びた状態)になると、ケーブルKの引き量Xがさらに増加して(図面ではケーブルKの引き量Xは18mm)、エンジンスロットルの開度が設定した最大上限スロットル開度になる。
【0041】
このように、開度調整アーム33の他端33bが最大上限スロットル開度位置Puに固定された状態では、スロットルレバー21の操作範囲内で、開度調整アーム33の他端33bとスロットルアーム29の他端29bのずれ量が、後述する開度調整アーム33の他端33bがパーシャル位置やアイドル位置Piにある場合と比較して、最も大きくなり、その結果、スロットルレバー21の操作に対して、スロットル開度を大きく変更することができる。
【0042】
図4(a)〜図4(d)は、上限スロットル開度を最大とアイドル状態との中間のいわゆるパーシャル状態に設定したときの、スロットル操作機構の動作を示したものである。図4(a)に示すように、開度調整アーム33の他端33bはアイドル位置Piと最大上限スロットル開度位置Puの中間に固定されている。このような状態でスロットルレバー21を握り込むと、図4(b)〜図4(d)に示すように、開度調整アーム33の一端33aの移動範囲が上限スロットル開度を最大にした場合よりも小さくなり、その結果、開度調整アーム33の他端33bとスロットルアーム29の他端29bとのずれ量が小さくなって、このずれ量に応じたスロットル開度になる。即ち、図面では、中心軸線Qに対してスロットルアーム29の傾き角度が20°のときにケーブルKの引き量Xは2.5mmとなり、傾き角度が10°のときにケーブルKの引き量Xは5.9mmとなり、傾き角度が0°のときにケーブルKの引き量Xは10.3mmとなる。
【0043】
図5(a)〜図5(d)は、上限スロットル開度をアイドル状態に設定したときの、スロットル操作機構の動作を示したものである。図5(a)に示すように、開度調整アーム33の他端33bはアイドル位置Piに固定され、開度調整アーム33の一端33aとスロットルアーム29の一端29aは上下に重ねられ、開度調整アーム33の他端33bとスロットルアーム29の他端29bも上下に重ねられている。このような状態でスロットルレバー21を握りこむと、図5(b)〜図5(d)に示すように、スロットルアーム29の他端29bは開度調整アーム33の他端33bと重ねられた位置を支点として回動するだけであるので、開度調整アーム33の他端33bとスロットルアーム29の他端29bのずれ量はなく(図面ではX=0)、エンジンスロットルはアイドル状態に維持される。
【0044】
図6に本発明に係わるスロットル開度変化の作動概念図を示す。図中の縦軸はスロットル開度(%)を示し、横軸はスロットルレバー21の操作量を示す。図6に示すように、スロットル操作機構はスロットルレバー21を握り始めてから握りきるまでの間において、エンジンスロットルが連続的にリニアに変化するので、作業者は違和感を感じることなく、携帯型作業機のスロットル操作を行うことができる。
【0045】
なお、本実施例では、携帯型作業機として刈払機1を例示したが、他にチェーンソー、ヘッジトリマ、ブロワ等にスロットル操作機構を搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係わるスロットル操作機構を搭載した刈払機の斜視図を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係わるスロットル操作機構を模式的に表した図である。
【図3】上限スロット開度を最大に設定したときのスロットル操作機構の動作説明図である。
【図4】上限スロット開度をパーシャル状態に設定したときのスロットル操作機構の動作説明図である。
【図5】上限スロット開度をアイドル状態に設定したときのスロットル操作機構の動作説明図である。
【図6】本発明によるスロットル開度変化の作動概念図を示す。
【図7】従来技術によるスロットル開度変化の作動概念図を示す。
【図8】従来技術によるスロットル開度変化の作動概念図を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 刈払機(作業機、携帯型作業機)
5 エンジン
7 刈刃(作業部)
21 スロットルレバー
21a 一端側
25 リンクアーム
25a,29a,33a 一端
21b,25b,29b,33b 他端
29 スロットルアーム
33 開度調整アーム
37 側壁
K ケーブル
Pi アイドル位置
S1 円軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部を駆動するエンジンを備えた作業機において、前記作業機に設けられたスロットルレバーの回動操作によって前記エンジンのスロットルバルブに接続されたケーブルを操作する作業機のスロットル操作機構であって、
前記スロットルレバーの中間部を前記作業機に回動自在に設けて該スロットルレバーの一端側を作業者が直接に握る部分とし、
前記スロットルレバーの他端をリンクアームの一端に回動自在に連結し、
前記リンクアームの他端をスロットルアームの一端及び開度調整アームの一端に回動自在に重ねて連結し、
前記開度調整アームの他端は回動支点となって位置変更可能に固定され、
前記スロットルアームの他端に前記スロットルバルブに接続された前記ケーブルを接続し、
前記ケーブルは前記スロットルバルブ側に常に引っ張られて、前記スロットルアームの他端は、移動すると前記エンジンの回転数がアイドル状態になるアイドル位置側に常に引っ張られ、
握られた前記スロットルレバーの一端側が開放されると、前記スロットルアームの他端は前記アイドル位置に移動することを特徴とする作業機のスロットル操作機構。
【請求項2】
前記スロットルアーム及び前記開度調整アームの各一端と他端との間の長さは等しく、
前記開度調整アームの他端は、前記スロットルレバーの一端側より握る力が開放された状態にあるときの前記リンクアームの他端位置を回動中心とする前記開度調整アームの他端の円軌道上の任意位置に変更可能に固定されることを特徴とする請求項1に記載の作業機のスロットル操作機構。
【請求項3】
前記開度調整アームの他端を、前記アイドル位置に移動した前記スロットルアームの他端と上下に重ねられた位置から、前記円軌道上の任意位置に変更可能に固定することを特徴とする請求項2に記載の作業機のスロットル操作機構。
【請求項4】
前記アイドル位置に移動した前記スロットルアームの他端に接して前記ケーブルの延びる方向と反対側に延びる側壁を設け、
前記スロットルレバーの操作範囲内で、前記リンクアームと前記スロットルアームとのなす角度のうち前記ケーブルの延びる方向と反対側の角度は、180°より小さいことを特徴とする請求項2又は3に記載の作業機のスロットル操作機構。
【請求項5】
前記スロットルアームと前記側壁とのなす角度のうち前記ケーブルが延びる側の角度は、前記スロットルレバーの操作範囲内で、70°より小さいことを特徴とする請求項4に記載の作業機のスロットル操作機構。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれかに記載のスロットル操作機構を携帯型の作業機に搭載したことを特徴とする携帯型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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