スーパーオキシドジスムターゼモノマーの架橋
2つの異なるSOD1モノマー上の2つのアミノ酸の側鎖が接続されている安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体が提供される。安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法には、第1のSOD1モノマー、第2のSOD1モノマーおよび架橋剤を反応させるステップが含まれる。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に援用されている2009年6月2日出願の米国仮特許出願第61/183,286号に対する優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、スーパーオキシドジスムターゼモノマーの架橋に関する。
【背景技術】
【0003】
なかでも最も重大なものとして上位および下位の両方の運動ニューロンの死および3〜5年という診断後平均生存期間を特徴とする疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性疾患と闘うために、革新的なアプローチが必要とされている。ALSの治療用の唯一の米国食品医薬品局(FDA)認可薬であるRiluzoleは、患者の生存率および生活の質に対しせいぜい中程度の効果しかもたない(1−3)。抗炎症性化合物から金属さらには酸化防止剤に至るあらゆるものが関与するALSについての50回を超える臨床試験から、1つとして有効な薬剤が特定されていない。注目すべきことに、凝集およびタンパク質安定性喪失が家族性ALS症例(fALS)の病因の一部であることをより多くの証拠が示しているにも関わらず、臨床試験にまで到達した凝集阻害物質または薬理学的シャペロンは1つもない。SOD1を特異的に標的とする本出願人らの知る唯一の臨床試験は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが関与する小規模で進行中の第1段階試験である。興味深いことに、ALS臨床試験には概してパーキンソン病の試験で使用されたものと同じ戦略および同じ化合物の多くが関与してきたが、それでも、それらが共通の疾患経路を共有していない可能性は高い。
【0004】
散発性神経変性疾患の原因はなお未解明のままであるが、家族型のこれらの疾患の多く(例えばアルツハイマー、パーキンソンおよびALS)をひき起こす変異は公知である。例えば、家族性ALS症例(fALS)の約20%、そして全ALSの2%の原因は、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)をコードする遺伝子内の変異にある。このような変異には、野生型様酵素活性を維持するG93A、および本質的に不活性である金属欠乏性G85Rの2つがある。例えばパーキンソン病におけるアルファ−シヌクレインおよびパーキン修飾、アルツハイマー病におけるアベータおよびタウ修飾そしてALSにおけるTDP43およびSOD1修飾のような家族性疾患に関与するタンパク質の翻訳後修飾が、対応する散発性疾患の病因として引き合いに出されてきた。したがって、家族性疾患を治療するための戦略を散発性疾患の少なくとも1つのサブセットに転用し得る、ということに希望を見出すことができる。
【0005】
変異体SOD1の優先遺伝およびノックアウトマウスにおける症候の欠如の両方から、機能の喪失に対立するものとして「毒性機能の増加」が示唆されている。SOD1の凝集癖および安定性の喪失が、fALS患者の疾患の重症度にとっての相乗的危険因子であり、試験管内および生体内でのfALSバリアントの共通特性が、その凝集癖にあるということが示唆されてきた。fALS−SOD1バリアントの毒性の機序についての最も一般的な仮説には、ダイマーの不安定化およびモノマーへの解離が関与しており、これらのモノマーは次により高次の凝集体の形成の核となる。実際、本研究中で使用されるG85R SOD1などのバリアントタンパク質は、生体内ではモノマーとして発見される。CuまたはZnの喪失、未変性分子内ジスルフィドの分割、酸化およびfALS関連変異を含めた数多くの修飾により、SOD1にダイマー解離傾向が付与される。A4Vそしてより低いレベルであるがI113Tの両方のX線結晶構造;H46R、A4VおよびH48Qの酵母ツーハイブリッド分析;G85R、G93R、E100GおよびI113Tのカオトロフによる解離;そして分子動力学シミュレーション法の全てが、この仮説と整合性を示している。ダイマー不安定化が凝集をひきおこすという仮説に加えて、別の凝集仮説は、バリアントをひきおこす新たに翻訳されたfALS SOD1が、サブユニット内ジスルフィド形成の欠如、金属欠乏などに起因して決してダイマー化せず、その結果不安定なモノマーがもたらされる、というものである。この仮説と整合するように、サブユニットを繋留することによるかまたは小分子の使用を通したSOD1ダイマー界面の安定化が、タンパク質の凝集を妨げ得る。
【0006】
安定したSOD1ダイマーの繋留への1つの代表的アプローチとしてチオール−ジスルフィド交換が探求され得る。チオール−ジスルフィド交換は、治療的戦略としての探求に充分適したものであり、事実、生体内でSOD1 Cys111上に発生して、SOD1がトリペプチドグルタチオン(GSH)を結合させる結果となるものとして公知である。これらは、SOD1のダイマー界面にあるCys111残基が、治療学上の潜在的標的であることを示唆している。その上、ヒトSOD1Cys111は、fALS変異の毒性を変調させる少なくとも2つの残基の1つである(もう1つはSOD1W32である)。例えば、C111S変異体はSOD1の安定性を増大させ、fALS SOD1変異C6F、C146R、G93A、A4VおよびH46Rの細胞毒性および凝集を逆転させる。アルキル化によるCys111の化学的修飾も同様にSOD1の安定性を増大させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、2つの異なるSOD1モノマー上の2つのアミノ酸の側鎖が接続されている、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体である。本発明の別の態様は、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法であって、第1のSOD1モノマー、第2のSOD1モノマーおよび架橋剤を反応させて前記類似体を形成するステップを含む製造方法にある。この架橋のための有効な代表的部位は、各モノマー上の111位である。本発明は同様に、第1のSOD1モノマーのα−アミノ酸残基と第2のSOD1モノマーのα−アミノ酸残基が接続されている、SOD1類似体の製造方法も含んでいる。本発明の別の態様は、治療上有効な量の安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に投与するステップを含む、神経変性疾患のための治療的または予防的投与方法である。本発明が有意な効能を有する代表的な神経系疾患は筋萎縮性側索硬化症である。同様に開示されているのは、SOD1類似体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】SOD1内のシステイン111サブユニット間架橋の部位を示す。相対するSOD1モノマー上のシステイン111残基が各末端に示されている。
【図2】架橋実験において使用されるいくつかの方法を要約するブロック図を示す。
【図3】一部のSOD1架橋実験のウエスタンブロット分析の結果を示す。(A)異なるマレイミドおよびビニルスルホン架橋剤を用いた架橋。SOD1を、1:1または1:3の架橋対タンパク質濃度で架橋した。マレイミド架橋剤の各々がSOD1を架橋して、ダイマー形成を結果としてもたらした。三官能性架橋剤であるTMEAが、最も効率の良い架橋剤であるように思われた。ビニルスルホンであるHBVSは、SOD1を架橋するとは思われなかった。(B)SOD1のDTME架橋。リンカー領域内にジスルフィド結合を含むDTMEを用いてSOD1を架橋させ、還元剤の存在下または不在下でSDS PAGE上を泳動させた。還元剤は、架橋剤を還元して、ダイマーをそのモノマー形態に戻した。
【図4】架橋されたSOD1のMALDI−TOF MS分析の結果を示す。(A)野生型SOD1の架橋。(B)G93Aの架橋。架橋されたSOD1のMALDI−TOF分析において観察されたダイマーの増加によってわかるように、マレイミド架橋剤を用いて、WTおよびG93Aの両方のSOD1が架橋される。
【図5】架橋されたSOD1のLC−FTMS分析を示す。架橋されたG93A SOD1のLC−FTMSスペクトル。(A)液体クロマトグラフィランについての全イオンクロマトグラム(TIC)。ダイマーはおよそ30分で溶離する。(B)TIC中で32.1分に関係づけしたダイマーG93Aの未処理スペクトル。(C)1つの架橋剤により修飾された1455.4におけるG93Aダイマー。(D)G93A架橋されたダイマーのファンネルスキマー解離。1442.4というm/zはG93Aモノマーに対応し、1456.8というm/zは分割された架橋剤によって修飾されたG93Aモノマーに対応し、1471.0というm/zは、1つの架橋剤によって修飾されたG93Aモノマーに対応し、1499.7というm/zは2つの架橋剤により修飾されたG93Aに対応する。
【図6】ホモ二官能性およびヘテロ二官能性架橋剤としてDTMEを用いたSOD1ダイマーの架橋に由来する反応生成物を表している。ホモ二官能性(上)およびヘテロ二官能性(下)架橋剤としてDTMEを用いたSOD1ダイマーの架橋に由来する反応生成物。上の構造には2つのマレイミドで開始された反応が用いられ、一方下の構造ではマレイミドおよびジスルフィド交換が使用されている。
【図7】ダイマー界面に1/2DTMEを伴うSOD1システイン111のモデルを示す。システイン111硫黄は、黄色の球により表わされ、1/2DTMEはシアンブルーで示されている。本出願人らはチオール−ジスルフィド交換を用いて効率良くSOD1モノマーを架橋することができ、その結果として1/2DTMEは結合され、これは、ペプチドベースの治療戦略に適している可能性がある(図13)。LC−FTMS分析を介して架橋の部位が確認された(図14)。
【図8】ダイマー1個あたり1つの架橋剤で架橋されたダイマーを結果としてもたらすSOD1の架橋を示す。(A)SOD1モノマーの15H+の荷電状態についての抽出されたイオンクロマトグラム(t約36分で3.0超のピークを伴うライン)および(B)DTME−架橋されたダイマーの23H+の荷電状態(t約30分で6.0超のピークを伴うライン)。(C)未架橋G93A SOD1の質量スペクトル、および(D)DTMEで架橋されたG93A SOD1。
【0009】
図8A中、t=37分で3.0超のピークを伴う曲線が、1058.271m/zの強度(モノマー+15H+)である。図8B中、t=30分で6.0超のピークを伴う曲線が、1392.085m/zの強度(ダイマー+DTME+23H+)である。
【0010】
WT SOD1を架橋することに加えて、G93Aを、1:1のモル濃度でDTMEおよびBMOEを用いて架橋した。観察したスペクトルは、G93Aと1つの架橋剤すなわちBMOEまたはDTMEの分子量と一致している。(E)還元可能な形で不安定な分子を伴うWT SOD1の化学的架橋。試験されたマレイミド架橋剤の1つであるDTMEは、そのスペーサーアーム中にDTTなどの還元剤により分割され得るジスルフィド結合を有する。WT SOD1は、1:1のモル比のDTMEを用いて架橋され、還元剤DTTの存在下と不在下の両方でSDS PAGEゲルにより分析された。SOD1の架橋されたダイマーは還元剤の存在下でモノマーになっており(図8B、レーン2)、形成されているダイマーが使用中の架橋剤に特異的であることそして架橋剤が触媒として作用したダイマー形成の結果ではなかったことを示唆していた。
【図9】化学的架橋によるfALS関連SOD1バリアントの安定化を表している。図15も同様に参照のこと(熱蛍光検定により測定された変異体SOD1の安定性)。2.5〜20μMの範囲の濃度のBMOEと共に、10μMのG93A(A)およびG85R SOD1(C)をインキュベートした。20μMの銅/亜鉛および2.5〜20μMの範囲の濃度のBMOEと共に10μMのG93A(B)およびG85R(D)をインキュベートした。ここで使用した架橋剤は、DMSO中に再懸濁され、したがって4%のDMSO中のSOD1の対照が使用された。WtSOD1も同じく調査されたが、その溶融温度が沸点に近いことから、ここで使用された検定では、安定化が発生したか否かを検出することはできない(データ示さず)。
【0011】
G85RおよびG93Aは、それぞれおよそ40℃および20℃の温度まで架橋剤濃度依存的に安定させられた。銅と亜鉛の添加は、野生型様のG93A変異体に対しほとんど効果をもたなかったが、架橋剤と共に金属欠乏性変異体であるG85Rに銅と亜鉛を添加すると、タンパク質はほぼ野生型のレベルまで安定化する。図10はこのきわめて安定した形態のG85Rが、野生型様スーパーオキシドジスムターゼ活性を取り戻したことを示している。以上のグラフは、各濃度それぞれの3つの複製の平均を表わす;トリプリケートで反復した。
【図10】化学的架橋によるfALS−バリアントG85R SOD1活性の回復を表す。WtSOD1活性は、銅、亜鉛および/またはBMOEの添加により変化しないと思われる。wt様の変異体であるG93Aも同様に、銅、亜鉛および/またはBMOEの添加による影響を受けないように思われるが、それは野生型に比べて活性が低くなっているように思われる。G85Rは、不活性である金属欠乏性変異体である。余剰の銅、亜鉛またはBMOEが存在する場合、G85Rの活性は増大する。最も注目すべきことに、銅、亜鉛およびDTMEの存在下でG85Rは、より一層活性を増大させる。したがって、G85Rの安定性の増加は同様に活性の増加に対応する(図16)。
【図11】架橋されたWT SOD1およびG93A SOD1中のダイマー形成の存在を表している。(A)未変性(未架橋)wtSOD1のスペクトル。(B)DTME架橋されたwtSOD1のスペクトル。観察された種の大部分は、ダイマーwtSOD1である。(C)未変性G93Aのスペクトル。(D)DTME架橋されたG93Aのスペクトル。WT SOD1を架橋することに加えて、1:1のモル濃度でDTMEおよびBMOEを用いてG93Aを架橋した。より低い分子量の第2のピークは、モノマーSOD1または[M+2H]2+ダイマーのいずれかに対応できた。
【図12】SOD1ダイマー形成という結果をシステイン架橋がいかにもたらすかをウエスタンブロット分析により示す。2つのシステイン残基ロトマーの間の結晶学的距離に基づいて、本出願人らは、8.0〜14.7Å(0.8〜1.47nm)の範囲のスペーサーを伴うマレイミド架橋剤および14.7Å(1.47nm)のスペーサーを伴う1つのビニルスルホン架橋剤を使用した。架橋に先立ち、SOD1をDTTで処理して、偶発的なスルファン硫黄(de Beus、2004#1268)を除去した。C18逆相クロマトグラフィ、50/50のH20/ACN、0.1%のギ酸中へのSOD1の溶離および、アミコンYM10濃縮装置を用いたpH7.4のPBS中へのこの溶離液の緩衝液交換によって、DTT還元を急冷した。1時間室温で1:1または1:3のSOD1対架橋剤モル比で架橋を実施し、さまざまなマレイミドおよびビニルスルホンを用いたWT SOD1のSOD1に対するポリクローナル抗体(SOD100、Stressgen)(A)の1:1および1:3の化学的架橋を用いたウエスタンブロットによってこれを分析した。
【図13】DTMEのチオール−ジスルフィド交換を示唆する断片化を示す。(A)1つの架橋剤により修飾された1455.4でのG93Aダイマー(前駆体イオン)。(B)G93Aで架橋されたダイマー(断片イオン)のFunnelスキマー解離。1442.4のm/zはG93Aモノマーに対応し、1456.8のm/zは分割された架橋剤により修飾されたG93Aモノマーに対応し、1471.0のm/zは1つの架橋剤により修飾されたG93Aモノマーに対応し、1499.7のm/zは2つの架橋剤により修飾されたG93Aに対応する。
【図14】Cys111が化学的架橋の代表的部位であることを示す。架橋の代表的部位を同定するために、G85RをBMOEで架橋し、Glu−Cで消化させた。その後、フーリエ変換質量分析法(LC−FTMS)を用いてペプチドを分析した。LC−FTMSランから生成されたペプチドデータをMASCOT検索を目的として提出し、未架橋のおよび架橋された試料について結果を比較した。架橋された試料中にはあったものの未変性試料にはなかった2つのMrは、5232.674(m/z873.120)および5347.700(m/z892.291)であった。0.01Daの許容誤差を用いて上述のm/zの各々について抽出イオンクロマトグラム(EIC)を作製した。すなわち、t約22.5分において1.5超のピークを伴うライン(架橋された試料)およびt約23分で約1.5のピークを伴うライン(未架橋)。両方の試料中でm/z487.790(Mr973.563;残基1〜9、アセチル化N末端)が観察され、陽性対照として提示されている。EICの比較の後、5232.674、5347.740、そしてその他の架橋候補をMS−Bridgeウェブサイト内に入力し、これがMrを、考えられる全ての架橋済みペプチドMrと架橋剤の分子量(BMOE220.05Da)のリストと比較する。MS−Bridgeは、5232.674と5347.740を両方共、それぞれ1つの架橋(残基103−126に対する残基103−125)および(残基103−126に対する残基103−126)に関与しているものとして同定した。5232.674についての予測された架橋は、6.19ppmの精度を有し、一方5347.700は、5.88ppmの精度を有していた。したがって、これらの予測された架橋内には1つのシステインしか入らないことから、LC−FTMS/MSデータは、架橋の部位をCys111として明らかにした。注目すべきことに、架橋の複雑性に起因して、予測架橋済みペプチドについてはいかなるMS/MSデータも得られなかった。
【図15】化学的架橋によるfALS関連SOD1バリアントの安定化を示す。(A)2.5〜20μMのDTMEと共にインキュベートされた10μMのG93A。(B)0〜20μMのDTMEと共にインキュベートされた10μMのG85R。BMOE(図9)と類似の結果がDTMEについて観察された。
【図16】化学的架橋によるfALSバリアントG85R SOD1活性の回復を示す。ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)12.5%未変性ポリアクリルアミドゲルベースの検定(69−72)を用いて、SOD1活性を監視した。以下のものの存在下または不在下で、WTまたはfALS関連SOD1バリアントをインキュベートした:2倍余剰の銅および亜鉛;等モルDTME;およびあらゆるDTME媒介型架橋を分割するTCEP。G85Rは、本質的に不活性の金属欠乏性変異体であり、一方、wtSOD1およびG93A SOD1は完全に活性である。しかしながら、余剰の銅、亜鉛またはDTMEの存在下では、G85R活性は増大する。注目すべきことに、G85Rは銅、亜鉛およびDTMEの存在下で最大の活性増大を示し、TCEPによるDTME媒介型架橋の分割は結果として活性の喪失をもたらした。類似の結果がBMOEについて得られた。
【図17】野生型SOD1および選択された変異体についてのモノマーあたりの金属含有量を示す。
【図18A】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18B】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18C】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18D】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18E】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18F】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18G】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願人らは一般にシステイン残基がもつ独特の求核性、特に隣接するSOD1モノマーのCys111の近接性を活用した、fALS関連SOD1バリアントの熱安定性を増大させるための戦略を開発した。本出願人らは、各SOD1モノマーそれぞれの上の2つの隣接するシステイン(Cys111)を用いた、SOD1のマレイミド交換およびチオール−ジスルフィド交換の両方を媒介とする安定化を紹介している。質量分析法データは、1当量のダイマーを産生する1当量の架橋剤で整合性を有し、還元的に不安定な架橋剤(DTME)は、架橋剤を触媒とする反応の発生を排除した。TCEPを介したDTMEの還元が同様に、サブユニット間ジスルフィドが関与しないCys111を媒介とする効果を排除した(図16)。
【0013】
化学的架橋は約20℃でG93Aを安定化し、余剰の銅、亜鉛および化学的架橋は約45℃でG85Rを安定化し、これはSOD1について、そして本出願人らの知るかぎりあらゆる疾病関連タンパク質についてこれまで達成された最高のものである。G85Rは、生体内でモノマーとして発見されるfALSバリアントのうちの1つであり、類似のバリアントについて本出願人らのアプローチが有効であるかもしれないということを示唆している。余剰の銅、亜鉛、そして化学的架橋は、G85Rを安定化させることに加えて、その酵素活性も増大させた。最も一般的な5つのfALS SOD1バリアント(D90A、A4V、E100G、H46RおよびI113T)を含めて、一般的なSOD1バリアントの全てとは言えないまでもその一部は、増大した安定化および酵素活性をも示すかもしれないということが予想される。
【0014】
注目すべきことに、活性部位から遠位の残基を標的にすることによりここで達成される活性の増大は、可逆的阻害物質を活性部位に結合させることが関与する薬理学的シャペロンの設計のための最も一般的な戦略と対照的である。このような活性部位阻害物質にとって、毒性の主要源または一部の変異体に対する効能の欠如は、このアプローチにとって基本となるものでありかつ安定化にとっては次善であるかもしれない用量に関する妥協を結果としてもたらす酵素阻害にある。これとは対照的に、ダイマーの界面で相互作用する本出願人らのアプローチは、SOD1を安定化すると同時に、少なくとも一部の不活性変異体についてSOD1活性を増大させる。本明細書で記述されている一部の代表的な架橋剤の使用は、同様に、ALS細胞培養およびマウスモデルにおいて有効性を確認できる可能性のある療法として役立つかもしれない高親和性および/または特異性化合物の設計のための足場としての用途にも適している。
【0015】
潜在的な毒性(他のタンパク質に対する標的外結合)を最小限におさえながらヒトSOD1ダイマーを安定化するために、本出願人らは、Cysロトマーに応じて約9または13オングストローム(約0.9または1.3nm)だけ離隔されているダイマー界面の相対する側にある2つの対称に配置されたCys111残基の存在(図7)、一般にシステイン残基の高い求核性(独特の反応性)、および架橋のエントロピー上のメリットを活用した。共有結合を使用することで、化合物の結合強度は増大し、そのため、結合は本質的に試験管内で不可逆的である。
【0016】
その他のシステインに向けられた化合物のクラスには、水銀試薬、ペプチド、非ペプチドジスルフィド形成試薬、ビスマレイミドおよびアルキル化剤(例えばヨードアセトアミド)がある。これらの異なる部類の架橋剤を比較するために、本出願人らは、logPと表現される一般溶解度(オクタノール−水分配係数の対数)および曝露された細胞または動物の50%致死的用量である、IC50またはID50として表現される毒性をそれぞれ考慮した。Lipinskiの法則は、5以下(理想的には1〜3の間)のlogP値を有する化合物が「薬剤様」とみなされ、1未満のlogPを有する化合物が水溶液中に充分に溶解可能であるということを示した。各クラス中の代表的数(利用可能性に応じて3〜350)の化合物を、PubChemにより文献中で検索することができる。これらのクラスは、以下の水中溶解度順で最高から最低までランク付けされる:すなわちペプチド(350個のペプチドについて−3〜12の範囲内のlogPできわめて可変的かつ配列依存的)>ビスマレイミド(XlogP約1)>アルキル化剤(XlogP、約2.5)>非ペプチドジスルフィド形成試薬(XlogP約4)、水銀剤(毒性が高いため精査せず、以下参照)。最低から最高への毒性ランクは、以下の通りである:ペプチド(可変的、ただし多くの場合10mM超の生物学的濃度で耐容可能である、ビスマレイミド(注:最も一般的に研究されるマレイミドであるN−エチルマレイミドは、ラット中0.075mg/kgで肝毒性であり、第2のマレイミドは、マウス中40mg/kg未満で細胞培養中で2μmのIC50を有していた)<アルキル化剤[1,3−ジブロモアセトン(マウス中3g/kg)、ビス−エポキシド(4〜20g/kgの範囲)、および一部のビニルスルホン(1g/kg)]、(一方他のアルキル化剤[フェニルヒドラジン(80mg/kg)およびN,N’−エチレンビス−(ヨードアセトアミド)(9mg/kg)]はヒトにおいてはそのLD50値に起因して推奨されない)<水銀誘導体(可変的、ただし一部の化合物は、ヒトについて10〜40mg/kgの範囲内にある)。これらの化合物のうち、一部のアルキル化剤は、非常に高い用量で耐容可能であった。
【0017】
データに基づかない(prophetic)実施形態
Cys111−架橋剤媒介型安定化が最も一般的なfALS SOD1バリアントおよび酸化されたWT SOD1に適用可能であるか否かを判定する
予備的結果の中で、本出願人らは、G93AおよびG85R SOD1バリアントの個別のSOD1モノマーを繋留するために、ホモ二官能性、Cys111特異的、マレイミド架橋剤を使用した。本出願人らは、そうでなければ不活性であるG85Rバリアントに対するほぼ完全な活性も同時に回復しながら、G85R SOD1の融点を約45℃だけ上昇させることによって、本出願人らの知るかぎりにおいてあらゆるタンパク質にとっての小分子媒介型安定化の前例のないレベルを達成した。このより広い治療可能性を決定するため、5つの最も一般的なfALS SOD1バリアント(D90A、A4V、E100G、H46RおよびI113T)、C6Gおよび酸化されたWT SOD1が、以下の方法で分析される:
A. 最も一般的なSOD1 D90A、A4V、E100G、H46R、I113TおよびC6Gバリアントを発現させ精製する。
【0018】
B. Cys111ホモ二官能性マレイミドが、1)質量分析法を用いてCys111でこれらのバリアントのダイマーを繋留しているか判定する;2)「熱蛍光」安定性検定を用いて、fALS SOD1バリアントを安定化するか判定する;かつ3)酵素活性を改善するか判定する。質量分析法を用いて化合物の部位を決定し、他の遊離システインとの副反応のための代用物としてSOD1 Cys6に結合した化合物を使用する。
【0019】
C. ホモ二官能性マレイミドがSOD1の酸化反応生成物、過酸化物によりひき起こされる酸化およびモノマー化速度を低下させるかを判定し、同様にホモ二官能性マレイミドが、先に酸化されたWT SOD1を安定化させるかを判定する。
【0020】
ペプチドベースのCys111架橋およびSOD1安定化分子を開発する
合理的な所定の制約および反復的な実験により決定された制約の両方を用いて、チオール−ジスルフィド交換媒介型SOD1ダイマー安定化に適した約2000個のペプチドの組合せライブラリを、考えられる2000万超のジ、トリ、テトラおよび環状ペプチドから解析し使用してもよい。これらのペプチドは、ハイスループットサービス施設により合成されてもよい;多重化質量分析法検定が、生理学的還元剤グルタチオンの存在下で、化合物のオンレートおよびそのオフレートを決定する;多重化安定化検定が実施され、ジスムターゼ活性が、最良の200個の化合物について決定される。
【0021】
異なるスペーサーアーム長および異なる化学的環境を試験するために、本出願人らはR−Cys−Cys−R、R−Cys−X−Cys−R1およびR−Cys−X−X−Cys−R架橋剤を作製する。なおここでRは、ペプチドのシステイニル硫黄に対してジスルフィド結合により付着された可変基であり、Xは、20個の天然に発生するアミノ酸および8個の非天然アミノ酸で構成され得る可変的アミノ酸である。本出願人らは、質量分析法、熱蛍光および活性を用いてSOD1を安定化させるこれらの化合物の能力を試験する予定である。
【0022】
本出願人らは、Aims 2A−C由来の最も活性の高いペプチドをそのCys−Cysジスルフィド結合を介してカップリングすることによって、環状ペプチドを創出する予定である。これらの化合物の試験は、上述の通りである。
【0023】
本出願人らは、実験結果を用いて、定量的構造活性関係モデルを生成し、これらを用いて追加の200個の最適化されたペプチドを創出する予定であり、これらは上述の通りに試験され、改善された性能を有するものと予想される。
【0024】
本出願人らは、ペプチドベースのSOD1 Cys111架橋剤の第一世代を開発し特徴づけすることを期待している。ペプチド合成コストは比較的低いことから、試験管内の構造活性関係の規模を同時に増大させることができる。1つの最終目的は、構造−活性関係が発生し、有資格グループ、協力者または企業がペプチド模倣体の設計に着手するよう奨励することになることにある。構造−活性関係は、必須残基のさらなる「類似体化」が関与する、ペプチド模倣体の創出のための前提条件である。別の最終目的は、追加のおよび必須の構造−活性情報を提供する本出願人ら独自の細胞培養に基づく毒物学および生物活性検定を可能にすることにある。他の研究において、本出願人らは、細胞培養および動物由来のSOD1を日常的に免疫精製しており、将来の細胞培養または動物研究において、架橋されたSOD1用の生物学的検定として、同じプロトコルを使用できるものと思われる。
【0025】
本出願人らは、SOD1を結合させることのできるペプチドをまず発見し、次にそれらをそのNおよびC末端システイン残基を通して他の活性ペプチドに結合させることによりこれらのペプチドの類似体を創出することを提案している。ペプチドを使用することにより、本出願人らは、合成を下請けさせながら大量の化学的環境を探究し、比較的ハイスループットのスクリーニングに集中できる。ペプチドは化学的環境を探求する1つの比較的安価な方法であり、そして薬理学的特性が劣るという潜在的な弱点は恐らくはペプチド模倣体の専門的知識を用いてのみ克服可能である。換言すると、ペプチドを用いて、非ペプチド小分子の合成についての情報を提供することができる。ペプチド薬剤は、低コストであり、合成が堅調であり、問題のアミノ酸を位置特定する上で特異性が高く、本質的に毒性が低く、本明細書で使用されるペプチドサイズでは事実上免疫原性が全くない。本出願人らのアプローチの主要な差異であり、1つの潜在的な差異は、名目上、SOD1を架橋するために必要なアミノ酸がCys−Cysのわずか2個だけであり、このため本出願人らによるペプチドは他の生物活性ペプチドに比べ潜在的にはるかに小さい。このことは確実に、血液脳関門を通過する上で一助となり、恐らくはペプチターゼによる消化を低減させるものである。
【0026】
SOD1安定化に対する潜在的な代表的ペプチドベースのアプローチは、環状ペプチドの創出にある。システイン−ジスルフィドを用いてペプチドの活性残基を環化する一般的アプローチは、システイン残基でα−MSHのHis−Phe−Arg−Trp必須活性コアをフランキングし、次に同じシステインを用いて環化し、α−MSH類似体の場合において功を奏した。環状ペプチドは、直鎖状ペプチドの生物活性および薬理学的特性を高めるため、ほぼ30年にわたり使用されてきた。その効能に関する別の証は、バシトラシン、シクロスポリンおよびナイシン(一般的食品保存料)などの周知の抗生物質を含む数多くの天然産物由来の抗生物質が、環状ペプチドである、という点にある。環状ペプチドは、ヒトの消化管でも生き延びるほどに、並外れて安定している可能性がある。得られる環状ペプチドは、60倍の生物活性を有していた。このペプチドの生物学的半減期は、配列をアミノ酸わずか7個まで短縮し非天然アミノ酸を取込むことによりさらに一層改善された。環状ペプチドにはその直鎖状類似体に比べて、代謝および分泌の両方におけるより優れた薬物動態およびタンパク質分解に対するより高い耐性を含めた数多くの利点がある。環状ペプチドは、より拘束され、より明確な分子構造で満たされ、このことがひいてはペプチド模倣体を構築する場合に適切なファーマコフォアのより良い推定を可能にしている。本出願人らは、定性的な20ピコ秒のMM2ベースの分子動力学シミュレーションを実施し、8Å(0.8nm)超であり得た直鎖状ペプチド内のシステイニル硫黄移動度とおよそ2Å(およそ0.2nm)であった環状ペプチドの間の差異は注目に値するものであった。
【0027】
本発明の代表的類似体
本発明の一態様は、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体において、前記類似体が三次構造を有し第1のSOD1モノマーおよび第2のSOD1モノマーを含み;前記第1のSOD1モノマーが第1の面および第1のα−アミノ酸残基を含み、前記第2のSOD1モノマーが第2の面と第2のα−アミノ酸残基を含み;前記第1のα−アミノ酸残基が第1の側鎖を含み、前記第2のα−アミノ酸残基が第2の側鎖を含み;第1のα−アミノ酸残基が1つの接続部により第2のα−アミノ酸残基に接続されている安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体である。
【0028】
類似体の一部の実施形態において、第1のα−アミノ酸残基と第2のα−アミノ酸残基の間の接続は、第1の側鎖と第2の側鎖の間にある。
【0029】
一部の実施形態において、本発明は、第1の側鎖および第2の側鎖が共有結合、イオン結合または非共有結合により接続されている、上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0030】
一部の実施形態において、本発明は、三次構造が、野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素と実質的に同じである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0031】
一部の実施形態において、本発明は、類似体の酵素活性が低下しないような場所に第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基の場所がある上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0032】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基の位置が、第1の面上に特定され、第2のα−アミノ酸残基の位置が第2の面上に特定される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0033】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基が同じ付番位置を占有している上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0034】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基が異なる付番位置を占有している上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0035】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基が111位にある上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0036】
一部の実施形態において、本発明は、第2のα−アミノ酸残基が111位にある上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0037】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0038】
一部の実施形態において、本発明は、第2のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0039】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基がシステインである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0040】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩であり、第2のα−アミノ酸残基がアルギニンである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0041】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がアルギニンであり、第2のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0042】
一部の実施形態において、本発明は、前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーの配列相同性が約85%以上である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0043】
一部の実施形態において、本発明は、前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーが実質的に同じアミノ酸配列を有する上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0044】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが0オングストローム(0nm)〜約30オングストローム(約3nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0045】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約2オングストローム(約0.2nm)〜約20オングストローム(約2nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0046】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約5オングストローム(約0.5nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0047】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約8オングストローム(約0.8nm)〜14オングストローム(1.4nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0048】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜11オングストローム(1.1nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0049】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜約13オングストローム(約1.3nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0050】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の第1のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0051】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の第2のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0052】
一部の実施形態において、本発明は、野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素の活性の少なくとも90%を約75℃の温度まで保持する前記類似体のいずれか一つに関する。
【0053】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約10度から約60度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0054】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約20度から約40度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0055】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約15度から約25度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0056】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約30度から約50度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0057】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約20度増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0058】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約40度増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0059】
本発明の別の態様は、さらに架橋剤を含み、前記架橋剤が第1のアミノ酸残基と第2のアミノ酸残基を接続する、前記類似体のいずれか一つの安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体である。
【0060】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が、トリス[2−マレイミドエチル]アミン(TMEA)、ジチオ−ビスマレイミドエタン(DTME)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、(1,8−ビス−マレイミド−ジエチレングリコール(BM(PEG)2)、1,4−ビス(マレイミド)ブタン(BMB)およびビス(マレイミド)エタン(BMOE)からなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0061】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が、有機水銀化合物、マレイミド、ビニルスルホンおよびアルキル化剤からなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0062】
一部の実施形態において、本発明は、第1のアミノ酸残基および第2のアミノ酸残基がリジンである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0063】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が0オングストローム(0nm)〜約20オングストローム(約2nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0064】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が約3オングストローム(約0.3nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0065】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が約7オングストローム(約0.7nm)〜約11オングストローム(約1.1nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0066】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が約9オングストローム(約0.9nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0067】
本発明の別の態様は、安定化されたSOD1類似体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0068】
本発明の代表的方法
本発明の別の態様は、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法であって、第1のSOD1モノマー、第2のSOD1モノマー、および架橋剤を反応させて前記類似体を形成するステップを含む製造方法である。
【0069】
本発明の別の態様は、第1のSOD1モノマーの第1のα−アミノ酸残基を第2のSOD1モノマーの第2のα−アミノ酸残基と接続するステップを含む、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法である。
【0070】
一部の実施形態において、本発明は、第1のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を第1のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含む上述の方法のいずれか一つに関する。
【0071】
一部の実施形態において、本発明は、第2のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を第2のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含む上述の方法のいずれか一つに関する。
【0072】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸および第2のα−アミノ酸が架橋剤により接続されている上述の方法のいずれか一つに関する。
【0073】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択される上述の方法のいずれか一つに関する。
【0074】
一部の実施形態において、本発明は、第2のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択される上述の方法のいずれか一つに関する。
【0075】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基がシステインである上述の方法のいずれか一つに関する。
【0076】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基がリジンである上述の方法のいずれか一つに関する。
【0077】
本発明の別の態様は、治療上有効な量の上述の類似体のいずれか一つの安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含む神経性疾患の治療方法である。
【0078】
本発明の別の態様は、治療上有効な量の上述の類似体のいずれか一つを、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含む神経変性疾患向けの予防的投与方法である。
【0079】
一部の実施形態において、本発明は、神経変性疾患が筋委縮性側索硬化症である上述の方法のいずれか一つに関する。
【0080】
定義
「類似体」という用語は、機能がSOD1タンパク質に類似している分子またはその断片を意味する。
【0081】
基準ペリペプチドに関して本明細書で使用されている「アミノ酸配列同一性百分率(%)」または「アミノ酸配列相同性百分率」または「〜パーセント(%)の同一性を有する」という用語は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部と考えることなく、最大配列同一性百分率を達成するために、必要な場合、配列を整列させギャップを導入した後の、基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一であるポリペプチド配列候補中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性百分率を決定するための整列は、当該技術分野において公知のさまざまな技術によって、例えばALIGNまたはMegalign(DNASTAR)などの公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用することによって達成可能である。当業者であれば、比較に使用されているペプチド配列の全長にわたり最大の整列を達成するのに必要とされるあらゆるアルゴリズムを含めて、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。例えば、本発明との関連において、SOD1の類似体は、前記類似体のアミノ酸配列が野生型と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%の同一性を有する場合に、SOD1と「実質的な相同性」を共有すると言われる。
【0082】
「薬学的に許容される」という成句は、哺乳動物において、適正な医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に見合い、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題または合併症が無く、実質的に非発熱性で、人間および動物の組織と接触して使用するのに適しているリガンド、材料、組成物および/または剤形に言及するために用いられている。
【0083】
本明細書中で使用される「薬学的に許容される担体」という成句は、対象の化学物質を体の一器官または一部分からその別の器官または部分まで搬送または輸送することに関与する液体または固体充填材、希釈剤、賦形剤、溶剤または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各々の担体は、調合物の他の成分と相容性があり、患者にとって有害でなく実質的に非発熱性であるという意味において「許容される」ものでなくてはならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、次のものが含まれる:(1)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースとその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)トラガカント粉未;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばココアバターおよび坐薬用ロウ;(9)油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)製剤調合において用いられる他の非毒性で相容性ある物質。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、非発熱性である、すなわち患者に投与された場合に有意な温度上昇を誘発しない。
【0084】
「予防(する)」という用語は、当該技術分野において認められており、局所再発(例えば疼痛)などの身体条件、癌などの疾患、心不全などの複合症候群または他の何らかの病状に関係して使用される場合、当該技術分野において良く理解されるものであり、その組成物を受けていない対象に比べて或る対象の体内の病状の症候の頻度を削減するかまたはその開始を遅らせる組成物の投与を含む。こうして、癌の予防には、例えば、未処置の対照集団に比べ予防的処置を受けた患者の集団における検出可能な癌成長の数を削減させること、および/または未処置対照集団に比べて処置済み集団において例えば統計学的および/または臨床的に有意な量だけ検出可能な癌成長の出現を遅延させることが含まれる。感染予防には、例えば、未処置の対照集団に比べて処置済み集団において感染診断数を削減させること、および/または、未処置対照集団に比べて処置済み集団において感染の症候の開始を遅延させることが含まれる。疼痛予防には、例えば、未処置対照集団に比べて処置済み集団において対象が感じる疼痛の知覚の規模を削減させることまたはこの知覚を遅延させることが含まれる。
【0085】
治療における使用に関して、例えば本発明のポリペプチドまたはペプチド類似体などの化合物の「治療上有効な量」とは、所望の用法・用量の一部として(哺乳動物、好ましくはヒトに対し)投与された場合に、例えば任意の医療的処置に適用可能な妥当な損益比で、処置すべき障害または身体条件または化粧品用途のために、臨床的に許容できる標準規格にしたがって症候を軽減するか、身体条件を改善するかまたは疾病条件の開始を遅延させる、調製物中のポリペプチドまたはペプチドの量を意味する。
【0086】
「予防的」または「治療的」処置という用語は、当該技術分野において認知されたものであり、対象組成物の1つ以上を宿主に対し投与することを含む。望ましくない身体条件(例えば宿主動物の疾病または他の所望されない状態)の臨床的発現に先立ち投与された場合には、その処置は予防的処置であり(すなわち、それは宿主を、所望されない身体条件の発生に対し保護する)、一方それが、所望されない身体条件の発現の後に投与される場合には、処置は治療的処置である(すなわちそれは、既存の所望されない条件またはその副作用を低減、改善または安定化するように意図されている)。
【実施例】
【0087】
本発明について一般的に記述したが、限定的な意図なくその一部の態様および実施形態の例示のみを目的として含まれている以下の実施例を参照することによって本発明をさらに容易に理解することができるものである。
【0088】
タンパク質の発現と精製
WtSOD1をSigma−Aldrich(St.Louis、Missouri)から購入した。S・セレビシエ(S.cerevisiae)中のG93AおよびG85Rの発現のための構成体は、Dr.P.John Hart、Ph.D.(University of Texas Health Science Center、San Antonio)からの寛大な寄贈品である。G93AおよびG85Rの発現および精製は、先に公表された通り(26、67)に実施した。簡単に言うと、酵母発現ベクターYEp−351内の各構成体を、EGy118ΔSOD1酵母へと形質転換させ、30℃で36〜48時間成長させた。培養をペレット化し、0.5mmのガラスビーズおよびブレンダーを用いて分解し、60%の硫酸アンモニウムカットに付した。硫酸アンモニウム沈降の後、試料をペレット化し、上清を、硫酸アンモニウムの最終濃度が2.0Mになるまで0.19体積で希釈した。その後この試料を、高塩分緩衝液(2.0Mの硫酸アンモニア、50mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、0.1MのEDTA、0.25mMのDTT、pH7.0)から低塩分緩衝液(50mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、0.1MのEDTA、0.25mMのDTT、pH7.0)まで線形的に減少する300mLの塩勾配を用いて、フェニル−セファロース6高速流(high sub)疎水性相互作用クロマトグラフィカラム(GE Life Sciences)を使用して精製した。SOD1を含む試料を1.6〜1.1Mの間の硫酸アンモニアで溶離させ、SDS PAGE分析を用いて同定し、プールし、10mMのトリス、pH8.0緩衝液に対し交換した。その後タンパク質を、Mono Q10/100アニオン交換クロマトグラフィカラム(GE Life Sciences)に投入し、低塩分緩衝液(10mMトリス、pH8.0)から高塩分緩衝液(10mMのトリス、pH8.0、1Mの塩化ナトリウム)まで線形的に増加する200mLの塩勾配を用いて溶離した。勾配を、0〜30%の10mMトリス、pH8.0、1Mの塩化ナトリウムから実施し、SOD1を5〜12%の間の10mMトリス、pH8.0、1Mの塩化ナトリウムで溶離させた。SOD1タンパク質を、SDS PAGE、ウエスタンブロット、MALDI−TOFおよびFTMSを介して確認した。
【0089】
架橋およびウエスタンブロット
Wt、G93AまたはG85R SOD1をおよそ20分間、5〜25mMのDTTと共にインキュベートし、Amicon Ultra−4遠心分離スピンコンセントレーター(MWCo10K)を用いるかまたは逆相クロマトグラフィ(ZIPTIP、Millipore, Inc)を用いて、両方の緩衝液を交換した。ZIPTIPにより清浄した試料を、同様に、5mMのEDTAでのインキュベーションに付した。Amiconコンセントレーターを用いて緩衝液交換したSOD1試料をHPLC水に交換し、一方ZIPTIP試料は、ZIPTIPの後、pH7.4のPBSまたはHPLC水にさらに交換した。DTTで還元されたSOD1を、1:1(20μM:20μMまたは10μM:10μM)または1:3(20μM:60μMまたは10μM:30μM)のタンパク質対架橋剤比でインキュベートした。
【0090】
さまざまな架橋剤(Thermo−Fisher Scientific)を使用した:ジチオ−ビスマレイミドエタン(DTME、スペーサーアーム13.3Å)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB、スペーサーアーム10.2Å)、1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール(BM(PEG)2、スペーサーアーム14.7Å)、1,4ビスマレイミドブタン(BMB、スペーサーアーム10.9Å)、トリス[2−マレイミドエチル]−アミオン(TMEA、10.3Å)および1,6−ヘキサノール−ビス−ビニルスルホン(HBVS、スペーサーアーム14.7Å)。pH7.4のPBSまたは水のいずれかの中で、室温で1時間反応をインキュベートすることにより、架橋を達成した。1時間後に、未架橋対照と共に、15%のSDS−PAGEゲル上で反応を分析し、ニトロセルロース膜に移し、SOD1に対するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロットに付した。トリプリケートで反復した。
【0091】
さらに、DTMEは、分割可能なスルフヒドリル−スルフヒドリル架橋剤である。したがって、1:1のモル比でwtSOD1とDTMEを含む架橋反応を、室温で1時間実施した。架橋の後、反応を半分に分割し、試料の半分を、DTTを含む試料緩衝液(還元性)中で実施し、もう半分を、DTTを含まない試料緩衝液(非還元性)中で実施した。次に、これらの試料を未架橋対照と共に、15%のSDS PAGEゲル上で分析し、以上の通りにウエスタンブロットに付した。
【0092】
マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)−飛行時間質量分析(TOF)
WtSOD1およびG93A SOD1を上述の通りにDTT処理し、1:1のモル比で架橋した。wtSOD1は前述の全ての架橋剤で架橋されたが、一方G93Aは、DTMEおよびビス(マレイミド)エタン(BMOE、スペーサーアーム8.0Å(0.8nm))で架橋された。BMOEを使用したのは、そのスペーサーアームの長さが比較的短いからであった。架橋の後、1μlの試料を、1μlのマトリクス、20mg/mLのシニピン酸を含むMALDI標的上でスポッティングし、Bruker Daltonics Microflex上で分析した。MALDIは、毎回、高分子量タンパク質較正標準Protein Calibration Standard I(Bruker Daltonics)を用いて較正した。MALDI−TOFを、72〜90%の間のレーザー出力を用いて線形モードで作動させた。MALDI−TOFスペクトルは、架橋されたものについてのものであり、未架橋試料は、FlexAnalysis software(Bruker Daltonics)を用いて分析した。トリプリケートで反復した。
【0093】
液体クロマトグラフィ(LC)−フーリエ変換質量分析計(FTMS)およびファンネルスキマー解離(FSD)
前述の通り、1:1のモル比(5μM:5μM)でDMTEまたはBMOEを使用してG93Aを架橋させた。1時間後、3%のアセトニトリルおよび1%のギ酸を試料に加え、14,000RPMで10分間回転させて、沈殿したタンパク質を全てペレット化した。架橋した試料をオートサンプラ内に入れ、30分間3〜50%B、7分間50〜95%B、5分間95%B、1分間95〜3%Bそして15分間3%Bという勾配で、Proxeon 1D HPLCまたはEksigent 2D UPLCのいずれかの中に1μLの架橋した試料を吸引させた。緩衝液Aは、0.1%のギ酸を伴うHPLC水であり、緩衝液Bは100%のアセトニトリル、0.1%のギ酸である。液体クロマトグラフィの後、試料を、ナノスプレーイオン化を用いてイオン化し、94Tesla Bruker Daltonics FTMSを用いて分析した。FTMSを、Apex制御ソフトウェアを用いて制御し、Apollo IIソフトウェアを用いてソースパラメータを制御した。35〜40Vのスキマー1電圧を用いてスペクトル(モノマーおよびダイマーG93A)を収集し、一方、スキマー1の電圧を140Vに上昇させることにより架橋済みG93Aを断片化するためにファンネルスキマー解離を使用した。架橋されたおよび未架橋のG93AのLC−FTMSデータを、Date Analysisソフトウェア(Bruker Daltonics)を用いて分析した。これらの実験をトリプリケートで反復した。
【0094】
LC−FTMSを用いたペプチド配列決定(ボトムアップ分析)
前述の通りに、1:1のモル比(5μM:5μM)でBMOEを用いてG85Rを架橋した。1時間後、架橋されたタンパク質を99℃で30分間加熱し、次に10mMのTCEPで10分間インキュベートした。その後、加熱し還元した架橋済みG85Rを30℃で一晩、1.5μLの0.5mg/mLのGlu−Cと共にインキュベートした。消化した試料を14,000RPMで10分間回転させて、次に上記の勾配を用いてEksigent UPLC内に注入した。液体クロマトグラフィの後、ナノスプレーイオン化を用いて試料を導入し、CIDを用いてMS/MSデータを収集した。Bruker Daltonics Data Analysisソフトウェアを用いて化合物を同定し、デコンボリューションに付し、包括的マスコットファイルにエキスポートした。1.2Da(MS許容誤差)および0.6Da(MS/MS許容誤差)で、NCBIrデータベースを用いて、酵素として無しを選択するMASCOT検索エンジン内に包括的マスコットファイルをアップロードすることによって、架橋済みおよび未架橋分析を実施した。未架橋および架橋済み試料についてのMASCOT検索を比較し、架橋済み試料内では同定されたものの未架橋試料内では同定されなかったm/zを、架橋剤(220.05Da)としてBMOEを用いてMS Bridge(タンパク質プロスペクター、UCSF)検索に付した。MS Bridgeは、架橋済みペプチドの潜在的分子量全てに架橋剤の分子量に加えたものを検索する。架橋済みに関与するものとしてMS Bridge検索から同定されたペプチドを、データ分析ソフトウェア内で抽出イオンクロマトグラムによりさらに特徴づけした。
【0095】
金属分析
University of Georgia Chemical Analysis Lab(Athens、GA)において、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を用いて金属分析を実施した。簡単に言うと、各バリアント1μMと共に、ブランクとしての分析のために単独緩衝液を送った。分析はトリプリケートで反復した。さらに、各バリアント5μMを、直接注入法(direct infusion)を用いてESIモードでFTMSを使用して分析した。
【0096】
熱蛍光安定性検定
溶融温度の上昇がタンパク質安定性の結合および増加を示唆するG93AおよびG85R SOD1の溶融曲線を、DTMEまたはBMOEおよび余剰の銅および亜鉛の両方の存在下または不在下で監視した。したがって、タンパク質の安定性に対するDMSOの効果を判定するために、2〜4%のDMSOの存在下で、架橋剤(これはDMSO中に再懸濁している)または銅および亜鉛の不在下で、タンパク質試料を分析した。最初の反応シーケンスにおいては、0〜20μMの増大する濃度のDTMEまたはBMOEと共に10μMの変異体SOD1をインキュベートし、20X SYPRO(商標)Orangeと共にインキュベートし、96ウェル平板に加えた。あるいは、第2の反応シーケンスでは、10μMの変異体SOD1を20μMの銅、20μMの亜鉛そして0〜20μMのBMOEまたはDTMEと共にインキュベートした。タンパク質の溶融温度を、毎分0.3℃の温度上昇で25〜100℃の間、RT−PCRマシン(AppliedBiosystems)を用いて監視した。それぞれのウェル各々から染料単独のブランクをサブトラクトすることによってデータを分析し、1に正規化し、折り畳み不良タンパク質の画分に対する温度の関係をグラフにした。DTMEまたはBMOE、銅、亜鉛、染料ブランクのサブトラクションにより、染料単独のブランクのサブトラクションと類似の結果が得られた。トリプリケートで反復した。
【0097】
SOD1活性検定
ニトロブル−テトラゾリウム(NBT)ゲルベースの検定を用いて、SOD1活性を監視した(69−72)。80μMの銅および亜鉛および/または42μMのBMOEの存在下または不在下で、10μg(約42μM)のwtまたは変異体SOD1をインキュベートし、次に12.5%のポリアクリルアミドゲル上で分析した。あるいは、80μMの銅および亜鉛および/または42μMのDTMEの存在下または不在下で、10μg(約42μM)のwtまたは変異体SOD1をインキュベートした。DTMEで架橋された試料を二分し、ここで半分を10mMのTCEPでインキュベートし、残りの半分はインキュベートせずに、その後12.5%のポリアクリルアミドゲル上で分析した。50mMのリン酸カリウム、pH7.8、NBT1錠(10mg/錠)および0.1mg/mLのリボフラボンを含む溶液を用いて、ゲルを45分間暗所で染色した。45分のインキュベーションの後、1μL/mLのTEMEDを添加し、ゲルを2分間光に曝露した。スーパーオキシドラジカルが、NBTから不溶性ブルーホルマゾンを形成させる。SOD1はスーパーオキシドを除去して青色形成を阻害することから、SOD1の活性は、無色のバンドとして見える。トリプリケートで反復した。
【0098】
結果
ダイマーSOD1を安定化させるための外因性マレイミド官能基架橋剤を用いた架橋
8〜14Aの範囲内の鎖長を有する被験マレイミド架橋剤は全て、ジチオ−ビスマレイミドエタン(DTME、スペーサーアーム13.3Å)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB、スペーサーアーム10.2Å)、1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール(BM(PEG)2、スペーサーアーム14.7Å)、1,4ビスマレイミドブタン(BMB、スペーサーアーム10.9Å)およびトリス[2−マレイミドエチル]アミオン(TMEA、10.3Å)を含めたSOD1ダイマーの安定化を結果としてもたらした(図12)。あるいは、試験した1つのビニルスルホン、1,6−ヘキサノール−ビス−ビニルスルホン(HBVS、スペーサーアーム14.7Å)は、結果としてダイマーSOD1を形成しなかった(図12)。
【0099】
架橋剤の化学量論を調査するために本出願人らは、液体クロマトグラフィ(LC)−フーリエ変換質量分析法(FTMS)を用いて、架橋済み(DTMEまたはBMOE)のG93Aバリアントと未架橋のG93Aバリアントの分子量を比較した。モノマー未架橋種についての実験上の分子量は、15851.055Daであると判定され(理論値15850.889Da)、ダイマー架橋された種についての実験上の分子量は32013.904Daであると判定された(2つのG93Aモノマーの分子量の理論値に1つのDTME(312.37Da)を加えたものとは0.244Daの差異)。ダイマーDTME架橋済みG93Aの実験上の分子量、32013.904Daは、1当量の架橋剤が1当量のダイマーを産生し(図8)、このことは2つのモノマーに対する単一の架橋剤の結合と整合性をもつということを示唆している。G93AおよびBMOE架橋についても類似の結果が得られた(データ示さず)。
【0100】
架橋剤を触媒とする反応の発生を排除するため、還元的に不安定な架橋剤DTMEを使用し、ウエスタンブロット法を用いて架橋を監視した。DTMEを使用した架橋の結果ダイマーSOD1がもたらされたが、還元剤の存在下ではモノマーのみが観察され(図8E)、SOD1ダイマーの形成が特異的に、結合された化学的架橋剤に起因していたことを示唆していた。
【0101】
チオール−ジスルフィド交換を媒介にしたSOD1ダイマーの安定化
DTMEで架橋されたG93Aバリアント(前駆体イオン)のファンネルスキマー解離(FSD)を用いた無傷のSOD1の質量およびMS/MS断片化データから、SOD1を架橋するための独特の反応機序であるチオール−ジスルフィド交換が明らかになった(図13)。第1に、無傷のSOD1および1/2のDTMEを伴うSOD1は、液体クロマトグラフィのランにおいて異なる保持時間で溶離し、それらが唯一の種でありしたがってDTMEのジスルフィドにおける断片化の可能性が排除されることを示唆している。第2に、断片化は、架橋の部位で優先的に発生する。半分のDTMEにより修飾された種は、DTMEのスペーサー内部のスルフヒドリル−スルフヒドリル結合とG93A上のシステイン残基のチオール部分との間で交換が起こったことを示唆している。最終的に、チオール−ジスルフィド交換の可能性は、SOD1構造のダイマー界面、具体的にはCys111においてDTMEの半分をモデル化することによってさらに確認された((2C9V(Strange、2006#95)))(図7)。こうして、本出願人らは、数多くの分子(図12)および2つの全く異なる反応機序、すなわちマレイミド(図8、図11および図12)およびチオール−ジスルフィド交換(図13)を用いて(ペプチドベースの治療戦略のためには後者が適している)効率良くSOD1モノマーを架橋することができた。
【0102】
Cys111が化学的架橋部位である
架橋部位を同定するために、本出願人らは、未架橋試料と架橋済み試料について、消化されたペプチドの配列データを提供するタンパク質分解およびLC−FTMS/MSデータを比較した(図14)。WTおよびG93A SOD1のプロテアーゼ耐性がおそらくは金属結合および分子内ジスルフィド結合を介して付与されていることから、プロテアーゼ耐性が比較的低いG85Rバリアントが使用された。m/z487.790(Mr973.563;残基1〜9、アセチル化N末端)は両方の試料中で観察され、未架橋試料と架橋済み試料におけるペプチドの類似の強度を浮彫りにする陽性対照として提示されている。本出願人らは、5232.674(m/z873.120)および5347.700(m/z892.291)という、架橋済み試料内にはあるものの未変性試料内には無い2つのMrを観察した。MS−Bridgeは、それぞれ架橋(BMOEを介して第2のモノマーの残基103〜126に架橋された1つのモノマーの残基103〜125)および(BMOEにより第2のモノマーの残基103〜126に架橋された1つのモノマーの残基103〜126)に関与しているものとして5232.674および5347.740の両方を同定した。5232.674についての予測された架橋は、6.19ppmの精度を有し、一方5347.700は、5.88ppmの精度を有していた。したがって、質量分析法では、架橋が化学量論的であり主としてCys111を通して発生したこと、そして他のSOD1システイン残基Cys6、Cys57およびCys146との交叉反応が比較的低いものであったことが確認された(図14)。注目すべきことに、架橋の複雑さに起因して、架橋されたペプチドの前駆体イオン断片化が欠如していた。
【0103】
化学的架橋がG93AおよびG85Rダイマーを安定化させる
Sypro orangeは、タンパク質が変性されるにつれて露呈状態となる疎水性パッチに優先的に結合する。温度の関数としてのSypro orange結合を監視する蛍光ベースの検定を用いて、G93AとG85Rの両方の変性温度の傾向を観察した。この検定は、おそらくはSOD1の凝集の結果として可逆的でなく、変性温度は以前に観察されたSOD1の溶融温度に似ているものの、適切な熱力学的安定性を示さない。WT SOD1は、その溶融温度が検出限界(約100℃)にあることから、この検定を用いて監視できなかった。本出願人らは、分析した2つの変異体の安定性の空前の増加を観察した(図9および図15)。例えばG93A SOD1は約20℃までに安定化し;余剰の銅および亜鉛とのインキュベーションはG93Aの安定性に対し一切影響を及ぼさず;架橋剤の濃度が低くなると、G93Aの安定性に対しさらに大きい効果が及ぼされた。一方、G85R SOD1は、余剰の銅および亜鉛の存在下において約20℃で安定化し;銅、亜鉛および架橋剤の存在下において約45℃(約40℃〜85℃)でさらに増大し、架橋剤の濃度が高くなると、G85Rの安定性にさらに大きい効果がもたらされた。したがって、ここで、本質的に(共有の)薬理学的シャペロンであるものによって達成される安定化度は、本出願人らの知るかぎりいずれの疾病関連タンパク質に関してもSOD1についてこれまで達成された最高のものである。
【0104】
fALSバリアントS85R SOD1の活性はSOD1ダイマーを安定化することによって回復される
安定性に加えて、本出願人らは、ゲルベースの検定を用いて、化学的架橋がSOD1活性に対して及ぼす影響を調査した。WTおよびG93A SOD1活性は、銅、亜鉛または化学的架橋の添加により影響されなかった。しかしながら、G85R SOD1の熱安定性を増大させることに加えて、化学的架橋は、その定性的金属結合親和力を増大させ、その結果として、G85R SOD1を、試験管内および生体内で触媒不活性であるタンパク質から、試験管内でそして潜在的には生体内でも活性であるタンパク質へと変換させた(図10)。DTME架橋中に観察されたG85R活性の増大は、TCEPを用いたDTMEの内部ジスルフィド結合の分割時点で逆転した(図16)。したがって、G85R SOD1の熱安定性の改善に加えて、これらの化合物は、酸化的ストレスに対する生命体の耐性を増大させる潜在的可能性を有し、本出願人らのアプローチは他の機能喪失疾患について考慮されてもよい。
【0105】
SOD1の金属含有量が、SOD1の安定化において1つの役割を果たす
単離されたままのWT、G93AおよびG85R SOD1の金属含有量は誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を用いて決定され、これらは補足的表1の中に列挙されている。すなわち、単離されたままのWT SOD1はモノマー1個あたりおよそ2個の銅および亜鉛分子を含み、単離されたままのG93Aは、モノマー1個あたり1個の銅分子と1.5個の亜鉛分子を含み、G85Rはモノマー1個あたり1個未満の銅と1.5個の亜鉛を含んでいた。これらのデータから、WTおよびG93A SOD1は金属を十分に含み、さらに幾分かの偶発的な(非活性部位)金属結合が発生していたように思われる。したがって本出願人らは、FTMSを用いて金属含有量も同様に分析し、脱溶媒和プロセスが大部分の偶発的な金属を除去する傾向をもつことを観察した。すなわち、単離されたままのWT SOD1は、完全に金属化されているように思われ、単離されたままのG93A SOD1は約95%金属化されているように思われ、単離されたままのG85R SOD1は部分的に金属化され、金属化されていないまたは一価金属化(singly metallated)された画分のさらに大きい集団で約70%が金属化されていると思われた。これらのデータによって、G85Rの集団がより大きい割合の部分金属化形態および未金属化形態で構成されていることを理由として、G93A試料の場合に比べてG85R試料に対し外因性金属が添加された場合に観察された安定性の増大の説明がつくかもしれない。
【0106】
参照による援用
本明細書中で引用されている全ての米国特許および米国公開特許出願は、本明細書に参照により援用される。
【0107】
均等物
当業者であれば、本明細書中で記述された本発明の具体的実施形態に対する数多くの均等物を認識し、日常的なものにすぎない実験を用いてそれらを確認できるものである。このような均等物は、以下のクレームにより包含されるように意図されている。
【関連出願】
【0001】
本出願は、全体が参照により本明細書に援用されている2009年6月2日出願の米国仮特許出願第61/183,286号に対する優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、スーパーオキシドジスムターゼモノマーの架橋に関する。
【背景技術】
【0003】
なかでも最も重大なものとして上位および下位の両方の運動ニューロンの死および3〜5年という診断後平均生存期間を特徴とする疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性疾患と闘うために、革新的なアプローチが必要とされている。ALSの治療用の唯一の米国食品医薬品局(FDA)認可薬であるRiluzoleは、患者の生存率および生活の質に対しせいぜい中程度の効果しかもたない(1−3)。抗炎症性化合物から金属さらには酸化防止剤に至るあらゆるものが関与するALSについての50回を超える臨床試験から、1つとして有効な薬剤が特定されていない。注目すべきことに、凝集およびタンパク質安定性喪失が家族性ALS症例(fALS)の病因の一部であることをより多くの証拠が示しているにも関わらず、臨床試験にまで到達した凝集阻害物質または薬理学的シャペロンは1つもない。SOD1を特異的に標的とする本出願人らの知る唯一の臨床試験は、アンチセンスオリゴヌクレオチドが関与する小規模で進行中の第1段階試験である。興味深いことに、ALS臨床試験には概してパーキンソン病の試験で使用されたものと同じ戦略および同じ化合物の多くが関与してきたが、それでも、それらが共通の疾患経路を共有していない可能性は高い。
【0004】
散発性神経変性疾患の原因はなお未解明のままであるが、家族型のこれらの疾患の多く(例えばアルツハイマー、パーキンソンおよびALS)をひき起こす変異は公知である。例えば、家族性ALS症例(fALS)の約20%、そして全ALSの2%の原因は、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)をコードする遺伝子内の変異にある。このような変異には、野生型様酵素活性を維持するG93A、および本質的に不活性である金属欠乏性G85Rの2つがある。例えばパーキンソン病におけるアルファ−シヌクレインおよびパーキン修飾、アルツハイマー病におけるアベータおよびタウ修飾そしてALSにおけるTDP43およびSOD1修飾のような家族性疾患に関与するタンパク質の翻訳後修飾が、対応する散発性疾患の病因として引き合いに出されてきた。したがって、家族性疾患を治療するための戦略を散発性疾患の少なくとも1つのサブセットに転用し得る、ということに希望を見出すことができる。
【0005】
変異体SOD1の優先遺伝およびノックアウトマウスにおける症候の欠如の両方から、機能の喪失に対立するものとして「毒性機能の増加」が示唆されている。SOD1の凝集癖および安定性の喪失が、fALS患者の疾患の重症度にとっての相乗的危険因子であり、試験管内および生体内でのfALSバリアントの共通特性が、その凝集癖にあるということが示唆されてきた。fALS−SOD1バリアントの毒性の機序についての最も一般的な仮説には、ダイマーの不安定化およびモノマーへの解離が関与しており、これらのモノマーは次により高次の凝集体の形成の核となる。実際、本研究中で使用されるG85R SOD1などのバリアントタンパク質は、生体内ではモノマーとして発見される。CuまたはZnの喪失、未変性分子内ジスルフィドの分割、酸化およびfALS関連変異を含めた数多くの修飾により、SOD1にダイマー解離傾向が付与される。A4Vそしてより低いレベルであるがI113Tの両方のX線結晶構造;H46R、A4VおよびH48Qの酵母ツーハイブリッド分析;G85R、G93R、E100GおよびI113Tのカオトロフによる解離;そして分子動力学シミュレーション法の全てが、この仮説と整合性を示している。ダイマー不安定化が凝集をひきおこすという仮説に加えて、別の凝集仮説は、バリアントをひきおこす新たに翻訳されたfALS SOD1が、サブユニット内ジスルフィド形成の欠如、金属欠乏などに起因して決してダイマー化せず、その結果不安定なモノマーがもたらされる、というものである。この仮説と整合するように、サブユニットを繋留することによるかまたは小分子の使用を通したSOD1ダイマー界面の安定化が、タンパク質の凝集を妨げ得る。
【0006】
安定したSOD1ダイマーの繋留への1つの代表的アプローチとしてチオール−ジスルフィド交換が探求され得る。チオール−ジスルフィド交換は、治療的戦略としての探求に充分適したものであり、事実、生体内でSOD1 Cys111上に発生して、SOD1がトリペプチドグルタチオン(GSH)を結合させる結果となるものとして公知である。これらは、SOD1のダイマー界面にあるCys111残基が、治療学上の潜在的標的であることを示唆している。その上、ヒトSOD1Cys111は、fALS変異の毒性を変調させる少なくとも2つの残基の1つである(もう1つはSOD1W32である)。例えば、C111S変異体はSOD1の安定性を増大させ、fALS SOD1変異C6F、C146R、G93A、A4VおよびH46Rの細胞毒性および凝集を逆転させる。アルキル化によるCys111の化学的修飾も同様にSOD1の安定性を増大させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、2つの異なるSOD1モノマー上の2つのアミノ酸の側鎖が接続されている、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体である。本発明の別の態様は、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法であって、第1のSOD1モノマー、第2のSOD1モノマーおよび架橋剤を反応させて前記類似体を形成するステップを含む製造方法にある。この架橋のための有効な代表的部位は、各モノマー上の111位である。本発明は同様に、第1のSOD1モノマーのα−アミノ酸残基と第2のSOD1モノマーのα−アミノ酸残基が接続されている、SOD1類似体の製造方法も含んでいる。本発明の別の態様は、治療上有効な量の安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に投与するステップを含む、神経変性疾患のための治療的または予防的投与方法である。本発明が有意な効能を有する代表的な神経系疾患は筋萎縮性側索硬化症である。同様に開示されているのは、SOD1類似体および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】SOD1内のシステイン111サブユニット間架橋の部位を示す。相対するSOD1モノマー上のシステイン111残基が各末端に示されている。
【図2】架橋実験において使用されるいくつかの方法を要約するブロック図を示す。
【図3】一部のSOD1架橋実験のウエスタンブロット分析の結果を示す。(A)異なるマレイミドおよびビニルスルホン架橋剤を用いた架橋。SOD1を、1:1または1:3の架橋対タンパク質濃度で架橋した。マレイミド架橋剤の各々がSOD1を架橋して、ダイマー形成を結果としてもたらした。三官能性架橋剤であるTMEAが、最も効率の良い架橋剤であるように思われた。ビニルスルホンであるHBVSは、SOD1を架橋するとは思われなかった。(B)SOD1のDTME架橋。リンカー領域内にジスルフィド結合を含むDTMEを用いてSOD1を架橋させ、還元剤の存在下または不在下でSDS PAGE上を泳動させた。還元剤は、架橋剤を還元して、ダイマーをそのモノマー形態に戻した。
【図4】架橋されたSOD1のMALDI−TOF MS分析の結果を示す。(A)野生型SOD1の架橋。(B)G93Aの架橋。架橋されたSOD1のMALDI−TOF分析において観察されたダイマーの増加によってわかるように、マレイミド架橋剤を用いて、WTおよびG93Aの両方のSOD1が架橋される。
【図5】架橋されたSOD1のLC−FTMS分析を示す。架橋されたG93A SOD1のLC−FTMSスペクトル。(A)液体クロマトグラフィランについての全イオンクロマトグラム(TIC)。ダイマーはおよそ30分で溶離する。(B)TIC中で32.1分に関係づけしたダイマーG93Aの未処理スペクトル。(C)1つの架橋剤により修飾された1455.4におけるG93Aダイマー。(D)G93A架橋されたダイマーのファンネルスキマー解離。1442.4というm/zはG93Aモノマーに対応し、1456.8というm/zは分割された架橋剤によって修飾されたG93Aモノマーに対応し、1471.0というm/zは、1つの架橋剤によって修飾されたG93Aモノマーに対応し、1499.7というm/zは2つの架橋剤により修飾されたG93Aに対応する。
【図6】ホモ二官能性およびヘテロ二官能性架橋剤としてDTMEを用いたSOD1ダイマーの架橋に由来する反応生成物を表している。ホモ二官能性(上)およびヘテロ二官能性(下)架橋剤としてDTMEを用いたSOD1ダイマーの架橋に由来する反応生成物。上の構造には2つのマレイミドで開始された反応が用いられ、一方下の構造ではマレイミドおよびジスルフィド交換が使用されている。
【図7】ダイマー界面に1/2DTMEを伴うSOD1システイン111のモデルを示す。システイン111硫黄は、黄色の球により表わされ、1/2DTMEはシアンブルーで示されている。本出願人らはチオール−ジスルフィド交換を用いて効率良くSOD1モノマーを架橋することができ、その結果として1/2DTMEは結合され、これは、ペプチドベースの治療戦略に適している可能性がある(図13)。LC−FTMS分析を介して架橋の部位が確認された(図14)。
【図8】ダイマー1個あたり1つの架橋剤で架橋されたダイマーを結果としてもたらすSOD1の架橋を示す。(A)SOD1モノマーの15H+の荷電状態についての抽出されたイオンクロマトグラム(t約36分で3.0超のピークを伴うライン)および(B)DTME−架橋されたダイマーの23H+の荷電状態(t約30分で6.0超のピークを伴うライン)。(C)未架橋G93A SOD1の質量スペクトル、および(D)DTMEで架橋されたG93A SOD1。
【0009】
図8A中、t=37分で3.0超のピークを伴う曲線が、1058.271m/zの強度(モノマー+15H+)である。図8B中、t=30分で6.0超のピークを伴う曲線が、1392.085m/zの強度(ダイマー+DTME+23H+)である。
【0010】
WT SOD1を架橋することに加えて、G93Aを、1:1のモル濃度でDTMEおよびBMOEを用いて架橋した。観察したスペクトルは、G93Aと1つの架橋剤すなわちBMOEまたはDTMEの分子量と一致している。(E)還元可能な形で不安定な分子を伴うWT SOD1の化学的架橋。試験されたマレイミド架橋剤の1つであるDTMEは、そのスペーサーアーム中にDTTなどの還元剤により分割され得るジスルフィド結合を有する。WT SOD1は、1:1のモル比のDTMEを用いて架橋され、還元剤DTTの存在下と不在下の両方でSDS PAGEゲルにより分析された。SOD1の架橋されたダイマーは還元剤の存在下でモノマーになっており(図8B、レーン2)、形成されているダイマーが使用中の架橋剤に特異的であることそして架橋剤が触媒として作用したダイマー形成の結果ではなかったことを示唆していた。
【図9】化学的架橋によるfALS関連SOD1バリアントの安定化を表している。図15も同様に参照のこと(熱蛍光検定により測定された変異体SOD1の安定性)。2.5〜20μMの範囲の濃度のBMOEと共に、10μMのG93A(A)およびG85R SOD1(C)をインキュベートした。20μMの銅/亜鉛および2.5〜20μMの範囲の濃度のBMOEと共に10μMのG93A(B)およびG85R(D)をインキュベートした。ここで使用した架橋剤は、DMSO中に再懸濁され、したがって4%のDMSO中のSOD1の対照が使用された。WtSOD1も同じく調査されたが、その溶融温度が沸点に近いことから、ここで使用された検定では、安定化が発生したか否かを検出することはできない(データ示さず)。
【0011】
G85RおよびG93Aは、それぞれおよそ40℃および20℃の温度まで架橋剤濃度依存的に安定させられた。銅と亜鉛の添加は、野生型様のG93A変異体に対しほとんど効果をもたなかったが、架橋剤と共に金属欠乏性変異体であるG85Rに銅と亜鉛を添加すると、タンパク質はほぼ野生型のレベルまで安定化する。図10はこのきわめて安定した形態のG85Rが、野生型様スーパーオキシドジスムターゼ活性を取り戻したことを示している。以上のグラフは、各濃度それぞれの3つの複製の平均を表わす;トリプリケートで反復した。
【図10】化学的架橋によるfALS−バリアントG85R SOD1活性の回復を表す。WtSOD1活性は、銅、亜鉛および/またはBMOEの添加により変化しないと思われる。wt様の変異体であるG93Aも同様に、銅、亜鉛および/またはBMOEの添加による影響を受けないように思われるが、それは野生型に比べて活性が低くなっているように思われる。G85Rは、不活性である金属欠乏性変異体である。余剰の銅、亜鉛またはBMOEが存在する場合、G85Rの活性は増大する。最も注目すべきことに、銅、亜鉛およびDTMEの存在下でG85Rは、より一層活性を増大させる。したがって、G85Rの安定性の増加は同様に活性の増加に対応する(図16)。
【図11】架橋されたWT SOD1およびG93A SOD1中のダイマー形成の存在を表している。(A)未変性(未架橋)wtSOD1のスペクトル。(B)DTME架橋されたwtSOD1のスペクトル。観察された種の大部分は、ダイマーwtSOD1である。(C)未変性G93Aのスペクトル。(D)DTME架橋されたG93Aのスペクトル。WT SOD1を架橋することに加えて、1:1のモル濃度でDTMEおよびBMOEを用いてG93Aを架橋した。より低い分子量の第2のピークは、モノマーSOD1または[M+2H]2+ダイマーのいずれかに対応できた。
【図12】SOD1ダイマー形成という結果をシステイン架橋がいかにもたらすかをウエスタンブロット分析により示す。2つのシステイン残基ロトマーの間の結晶学的距離に基づいて、本出願人らは、8.0〜14.7Å(0.8〜1.47nm)の範囲のスペーサーを伴うマレイミド架橋剤および14.7Å(1.47nm)のスペーサーを伴う1つのビニルスルホン架橋剤を使用した。架橋に先立ち、SOD1をDTTで処理して、偶発的なスルファン硫黄(de Beus、2004#1268)を除去した。C18逆相クロマトグラフィ、50/50のH20/ACN、0.1%のギ酸中へのSOD1の溶離および、アミコンYM10濃縮装置を用いたpH7.4のPBS中へのこの溶離液の緩衝液交換によって、DTT還元を急冷した。1時間室温で1:1または1:3のSOD1対架橋剤モル比で架橋を実施し、さまざまなマレイミドおよびビニルスルホンを用いたWT SOD1のSOD1に対するポリクローナル抗体(SOD100、Stressgen)(A)の1:1および1:3の化学的架橋を用いたウエスタンブロットによってこれを分析した。
【図13】DTMEのチオール−ジスルフィド交換を示唆する断片化を示す。(A)1つの架橋剤により修飾された1455.4でのG93Aダイマー(前駆体イオン)。(B)G93Aで架橋されたダイマー(断片イオン)のFunnelスキマー解離。1442.4のm/zはG93Aモノマーに対応し、1456.8のm/zは分割された架橋剤により修飾されたG93Aモノマーに対応し、1471.0のm/zは1つの架橋剤により修飾されたG93Aモノマーに対応し、1499.7のm/zは2つの架橋剤により修飾されたG93Aに対応する。
【図14】Cys111が化学的架橋の代表的部位であることを示す。架橋の代表的部位を同定するために、G85RをBMOEで架橋し、Glu−Cで消化させた。その後、フーリエ変換質量分析法(LC−FTMS)を用いてペプチドを分析した。LC−FTMSランから生成されたペプチドデータをMASCOT検索を目的として提出し、未架橋のおよび架橋された試料について結果を比較した。架橋された試料中にはあったものの未変性試料にはなかった2つのMrは、5232.674(m/z873.120)および5347.700(m/z892.291)であった。0.01Daの許容誤差を用いて上述のm/zの各々について抽出イオンクロマトグラム(EIC)を作製した。すなわち、t約22.5分において1.5超のピークを伴うライン(架橋された試料)およびt約23分で約1.5のピークを伴うライン(未架橋)。両方の試料中でm/z487.790(Mr973.563;残基1〜9、アセチル化N末端)が観察され、陽性対照として提示されている。EICの比較の後、5232.674、5347.740、そしてその他の架橋候補をMS−Bridgeウェブサイト内に入力し、これがMrを、考えられる全ての架橋済みペプチドMrと架橋剤の分子量(BMOE220.05Da)のリストと比較する。MS−Bridgeは、5232.674と5347.740を両方共、それぞれ1つの架橋(残基103−126に対する残基103−125)および(残基103−126に対する残基103−126)に関与しているものとして同定した。5232.674についての予測された架橋は、6.19ppmの精度を有し、一方5347.700は、5.88ppmの精度を有していた。したがって、これらの予測された架橋内には1つのシステインしか入らないことから、LC−FTMS/MSデータは、架橋の部位をCys111として明らかにした。注目すべきことに、架橋の複雑性に起因して、予測架橋済みペプチドについてはいかなるMS/MSデータも得られなかった。
【図15】化学的架橋によるfALS関連SOD1バリアントの安定化を示す。(A)2.5〜20μMのDTMEと共にインキュベートされた10μMのG93A。(B)0〜20μMのDTMEと共にインキュベートされた10μMのG85R。BMOE(図9)と類似の結果がDTMEについて観察された。
【図16】化学的架橋によるfALSバリアントG85R SOD1活性の回復を示す。ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)12.5%未変性ポリアクリルアミドゲルベースの検定(69−72)を用いて、SOD1活性を監視した。以下のものの存在下または不在下で、WTまたはfALS関連SOD1バリアントをインキュベートした:2倍余剰の銅および亜鉛;等モルDTME;およびあらゆるDTME媒介型架橋を分割するTCEP。G85Rは、本質的に不活性の金属欠乏性変異体であり、一方、wtSOD1およびG93A SOD1は完全に活性である。しかしながら、余剰の銅、亜鉛またはDTMEの存在下では、G85R活性は増大する。注目すべきことに、G85Rは銅、亜鉛およびDTMEの存在下で最大の活性増大を示し、TCEPによるDTME媒介型架橋の分割は結果として活性の喪失をもたらした。類似の結果がBMOEについて得られた。
【図17】野生型SOD1および選択された変異体についてのモノマーあたりの金属含有量を示す。
【図18A】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18B】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18C】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18D】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18E】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18F】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【図18G】本発明において有用なさまざまなタイプの架橋剤を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本出願人らは一般にシステイン残基がもつ独特の求核性、特に隣接するSOD1モノマーのCys111の近接性を活用した、fALS関連SOD1バリアントの熱安定性を増大させるための戦略を開発した。本出願人らは、各SOD1モノマーそれぞれの上の2つの隣接するシステイン(Cys111)を用いた、SOD1のマレイミド交換およびチオール−ジスルフィド交換の両方を媒介とする安定化を紹介している。質量分析法データは、1当量のダイマーを産生する1当量の架橋剤で整合性を有し、還元的に不安定な架橋剤(DTME)は、架橋剤を触媒とする反応の発生を排除した。TCEPを介したDTMEの還元が同様に、サブユニット間ジスルフィドが関与しないCys111を媒介とする効果を排除した(図16)。
【0013】
化学的架橋は約20℃でG93Aを安定化し、余剰の銅、亜鉛および化学的架橋は約45℃でG85Rを安定化し、これはSOD1について、そして本出願人らの知るかぎりあらゆる疾病関連タンパク質についてこれまで達成された最高のものである。G85Rは、生体内でモノマーとして発見されるfALSバリアントのうちの1つであり、類似のバリアントについて本出願人らのアプローチが有効であるかもしれないということを示唆している。余剰の銅、亜鉛、そして化学的架橋は、G85Rを安定化させることに加えて、その酵素活性も増大させた。最も一般的な5つのfALS SOD1バリアント(D90A、A4V、E100G、H46RおよびI113T)を含めて、一般的なSOD1バリアントの全てとは言えないまでもその一部は、増大した安定化および酵素活性をも示すかもしれないということが予想される。
【0014】
注目すべきことに、活性部位から遠位の残基を標的にすることによりここで達成される活性の増大は、可逆的阻害物質を活性部位に結合させることが関与する薬理学的シャペロンの設計のための最も一般的な戦略と対照的である。このような活性部位阻害物質にとって、毒性の主要源または一部の変異体に対する効能の欠如は、このアプローチにとって基本となるものでありかつ安定化にとっては次善であるかもしれない用量に関する妥協を結果としてもたらす酵素阻害にある。これとは対照的に、ダイマーの界面で相互作用する本出願人らのアプローチは、SOD1を安定化すると同時に、少なくとも一部の不活性変異体についてSOD1活性を増大させる。本明細書で記述されている一部の代表的な架橋剤の使用は、同様に、ALS細胞培養およびマウスモデルにおいて有効性を確認できる可能性のある療法として役立つかもしれない高親和性および/または特異性化合物の設計のための足場としての用途にも適している。
【0015】
潜在的な毒性(他のタンパク質に対する標的外結合)を最小限におさえながらヒトSOD1ダイマーを安定化するために、本出願人らは、Cysロトマーに応じて約9または13オングストローム(約0.9または1.3nm)だけ離隔されているダイマー界面の相対する側にある2つの対称に配置されたCys111残基の存在(図7)、一般にシステイン残基の高い求核性(独特の反応性)、および架橋のエントロピー上のメリットを活用した。共有結合を使用することで、化合物の結合強度は増大し、そのため、結合は本質的に試験管内で不可逆的である。
【0016】
その他のシステインに向けられた化合物のクラスには、水銀試薬、ペプチド、非ペプチドジスルフィド形成試薬、ビスマレイミドおよびアルキル化剤(例えばヨードアセトアミド)がある。これらの異なる部類の架橋剤を比較するために、本出願人らは、logPと表現される一般溶解度(オクタノール−水分配係数の対数)および曝露された細胞または動物の50%致死的用量である、IC50またはID50として表現される毒性をそれぞれ考慮した。Lipinskiの法則は、5以下(理想的には1〜3の間)のlogP値を有する化合物が「薬剤様」とみなされ、1未満のlogPを有する化合物が水溶液中に充分に溶解可能であるということを示した。各クラス中の代表的数(利用可能性に応じて3〜350)の化合物を、PubChemにより文献中で検索することができる。これらのクラスは、以下の水中溶解度順で最高から最低までランク付けされる:すなわちペプチド(350個のペプチドについて−3〜12の範囲内のlogPできわめて可変的かつ配列依存的)>ビスマレイミド(XlogP約1)>アルキル化剤(XlogP、約2.5)>非ペプチドジスルフィド形成試薬(XlogP約4)、水銀剤(毒性が高いため精査せず、以下参照)。最低から最高への毒性ランクは、以下の通りである:ペプチド(可変的、ただし多くの場合10mM超の生物学的濃度で耐容可能である、ビスマレイミド(注:最も一般的に研究されるマレイミドであるN−エチルマレイミドは、ラット中0.075mg/kgで肝毒性であり、第2のマレイミドは、マウス中40mg/kg未満で細胞培養中で2μmのIC50を有していた)<アルキル化剤[1,3−ジブロモアセトン(マウス中3g/kg)、ビス−エポキシド(4〜20g/kgの範囲)、および一部のビニルスルホン(1g/kg)]、(一方他のアルキル化剤[フェニルヒドラジン(80mg/kg)およびN,N’−エチレンビス−(ヨードアセトアミド)(9mg/kg)]はヒトにおいてはそのLD50値に起因して推奨されない)<水銀誘導体(可変的、ただし一部の化合物は、ヒトについて10〜40mg/kgの範囲内にある)。これらの化合物のうち、一部のアルキル化剤は、非常に高い用量で耐容可能であった。
【0017】
データに基づかない(prophetic)実施形態
Cys111−架橋剤媒介型安定化が最も一般的なfALS SOD1バリアントおよび酸化されたWT SOD1に適用可能であるか否かを判定する
予備的結果の中で、本出願人らは、G93AおよびG85R SOD1バリアントの個別のSOD1モノマーを繋留するために、ホモ二官能性、Cys111特異的、マレイミド架橋剤を使用した。本出願人らは、そうでなければ不活性であるG85Rバリアントに対するほぼ完全な活性も同時に回復しながら、G85R SOD1の融点を約45℃だけ上昇させることによって、本出願人らの知るかぎりにおいてあらゆるタンパク質にとっての小分子媒介型安定化の前例のないレベルを達成した。このより広い治療可能性を決定するため、5つの最も一般的なfALS SOD1バリアント(D90A、A4V、E100G、H46RおよびI113T)、C6Gおよび酸化されたWT SOD1が、以下の方法で分析される:
A. 最も一般的なSOD1 D90A、A4V、E100G、H46R、I113TおよびC6Gバリアントを発現させ精製する。
【0018】
B. Cys111ホモ二官能性マレイミドが、1)質量分析法を用いてCys111でこれらのバリアントのダイマーを繋留しているか判定する;2)「熱蛍光」安定性検定を用いて、fALS SOD1バリアントを安定化するか判定する;かつ3)酵素活性を改善するか判定する。質量分析法を用いて化合物の部位を決定し、他の遊離システインとの副反応のための代用物としてSOD1 Cys6に結合した化合物を使用する。
【0019】
C. ホモ二官能性マレイミドがSOD1の酸化反応生成物、過酸化物によりひき起こされる酸化およびモノマー化速度を低下させるかを判定し、同様にホモ二官能性マレイミドが、先に酸化されたWT SOD1を安定化させるかを判定する。
【0020】
ペプチドベースのCys111架橋およびSOD1安定化分子を開発する
合理的な所定の制約および反復的な実験により決定された制約の両方を用いて、チオール−ジスルフィド交換媒介型SOD1ダイマー安定化に適した約2000個のペプチドの組合せライブラリを、考えられる2000万超のジ、トリ、テトラおよび環状ペプチドから解析し使用してもよい。これらのペプチドは、ハイスループットサービス施設により合成されてもよい;多重化質量分析法検定が、生理学的還元剤グルタチオンの存在下で、化合物のオンレートおよびそのオフレートを決定する;多重化安定化検定が実施され、ジスムターゼ活性が、最良の200個の化合物について決定される。
【0021】
異なるスペーサーアーム長および異なる化学的環境を試験するために、本出願人らはR−Cys−Cys−R、R−Cys−X−Cys−R1およびR−Cys−X−X−Cys−R架橋剤を作製する。なおここでRは、ペプチドのシステイニル硫黄に対してジスルフィド結合により付着された可変基であり、Xは、20個の天然に発生するアミノ酸および8個の非天然アミノ酸で構成され得る可変的アミノ酸である。本出願人らは、質量分析法、熱蛍光および活性を用いてSOD1を安定化させるこれらの化合物の能力を試験する予定である。
【0022】
本出願人らは、Aims 2A−C由来の最も活性の高いペプチドをそのCys−Cysジスルフィド結合を介してカップリングすることによって、環状ペプチドを創出する予定である。これらの化合物の試験は、上述の通りである。
【0023】
本出願人らは、実験結果を用いて、定量的構造活性関係モデルを生成し、これらを用いて追加の200個の最適化されたペプチドを創出する予定であり、これらは上述の通りに試験され、改善された性能を有するものと予想される。
【0024】
本出願人らは、ペプチドベースのSOD1 Cys111架橋剤の第一世代を開発し特徴づけすることを期待している。ペプチド合成コストは比較的低いことから、試験管内の構造活性関係の規模を同時に増大させることができる。1つの最終目的は、構造−活性関係が発生し、有資格グループ、協力者または企業がペプチド模倣体の設計に着手するよう奨励することになることにある。構造−活性関係は、必須残基のさらなる「類似体化」が関与する、ペプチド模倣体の創出のための前提条件である。別の最終目的は、追加のおよび必須の構造−活性情報を提供する本出願人ら独自の細胞培養に基づく毒物学および生物活性検定を可能にすることにある。他の研究において、本出願人らは、細胞培養および動物由来のSOD1を日常的に免疫精製しており、将来の細胞培養または動物研究において、架橋されたSOD1用の生物学的検定として、同じプロトコルを使用できるものと思われる。
【0025】
本出願人らは、SOD1を結合させることのできるペプチドをまず発見し、次にそれらをそのNおよびC末端システイン残基を通して他の活性ペプチドに結合させることによりこれらのペプチドの類似体を創出することを提案している。ペプチドを使用することにより、本出願人らは、合成を下請けさせながら大量の化学的環境を探究し、比較的ハイスループットのスクリーニングに集中できる。ペプチドは化学的環境を探求する1つの比較的安価な方法であり、そして薬理学的特性が劣るという潜在的な弱点は恐らくはペプチド模倣体の専門的知識を用いてのみ克服可能である。換言すると、ペプチドを用いて、非ペプチド小分子の合成についての情報を提供することができる。ペプチド薬剤は、低コストであり、合成が堅調であり、問題のアミノ酸を位置特定する上で特異性が高く、本質的に毒性が低く、本明細書で使用されるペプチドサイズでは事実上免疫原性が全くない。本出願人らのアプローチの主要な差異であり、1つの潜在的な差異は、名目上、SOD1を架橋するために必要なアミノ酸がCys−Cysのわずか2個だけであり、このため本出願人らによるペプチドは他の生物活性ペプチドに比べ潜在的にはるかに小さい。このことは確実に、血液脳関門を通過する上で一助となり、恐らくはペプチターゼによる消化を低減させるものである。
【0026】
SOD1安定化に対する潜在的な代表的ペプチドベースのアプローチは、環状ペプチドの創出にある。システイン−ジスルフィドを用いてペプチドの活性残基を環化する一般的アプローチは、システイン残基でα−MSHのHis−Phe−Arg−Trp必須活性コアをフランキングし、次に同じシステインを用いて環化し、α−MSH類似体の場合において功を奏した。環状ペプチドは、直鎖状ペプチドの生物活性および薬理学的特性を高めるため、ほぼ30年にわたり使用されてきた。その効能に関する別の証は、バシトラシン、シクロスポリンおよびナイシン(一般的食品保存料)などの周知の抗生物質を含む数多くの天然産物由来の抗生物質が、環状ペプチドである、という点にある。環状ペプチドは、ヒトの消化管でも生き延びるほどに、並外れて安定している可能性がある。得られる環状ペプチドは、60倍の生物活性を有していた。このペプチドの生物学的半減期は、配列をアミノ酸わずか7個まで短縮し非天然アミノ酸を取込むことによりさらに一層改善された。環状ペプチドにはその直鎖状類似体に比べて、代謝および分泌の両方におけるより優れた薬物動態およびタンパク質分解に対するより高い耐性を含めた数多くの利点がある。環状ペプチドは、より拘束され、より明確な分子構造で満たされ、このことがひいてはペプチド模倣体を構築する場合に適切なファーマコフォアのより良い推定を可能にしている。本出願人らは、定性的な20ピコ秒のMM2ベースの分子動力学シミュレーションを実施し、8Å(0.8nm)超であり得た直鎖状ペプチド内のシステイニル硫黄移動度とおよそ2Å(およそ0.2nm)であった環状ペプチドの間の差異は注目に値するものであった。
【0027】
本発明の代表的類似体
本発明の一態様は、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体において、前記類似体が三次構造を有し第1のSOD1モノマーおよび第2のSOD1モノマーを含み;前記第1のSOD1モノマーが第1の面および第1のα−アミノ酸残基を含み、前記第2のSOD1モノマーが第2の面と第2のα−アミノ酸残基を含み;前記第1のα−アミノ酸残基が第1の側鎖を含み、前記第2のα−アミノ酸残基が第2の側鎖を含み;第1のα−アミノ酸残基が1つの接続部により第2のα−アミノ酸残基に接続されている安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体である。
【0028】
類似体の一部の実施形態において、第1のα−アミノ酸残基と第2のα−アミノ酸残基の間の接続は、第1の側鎖と第2の側鎖の間にある。
【0029】
一部の実施形態において、本発明は、第1の側鎖および第2の側鎖が共有結合、イオン結合または非共有結合により接続されている、上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0030】
一部の実施形態において、本発明は、三次構造が、野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素と実質的に同じである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0031】
一部の実施形態において、本発明は、類似体の酵素活性が低下しないような場所に第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基の場所がある上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0032】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基の位置が、第1の面上に特定され、第2のα−アミノ酸残基の位置が第2の面上に特定される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0033】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基が同じ付番位置を占有している上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0034】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基が異なる付番位置を占有している上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0035】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基が111位にある上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0036】
一部の実施形態において、本発明は、第2のα−アミノ酸残基が111位にある上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0037】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0038】
一部の実施形態において、本発明は、第2のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0039】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基がシステインである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0040】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩であり、第2のα−アミノ酸残基がアルギニンである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0041】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がアルギニンであり、第2のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0042】
一部の実施形態において、本発明は、前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーの配列相同性が約85%以上である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0043】
一部の実施形態において、本発明は、前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーが実質的に同じアミノ酸配列を有する上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0044】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが0オングストローム(0nm)〜約30オングストローム(約3nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0045】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約2オングストローム(約0.2nm)〜約20オングストローム(約2nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0046】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約5オングストローム(約0.5nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0047】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約8オングストローム(約0.8nm)〜14オングストローム(1.4nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0048】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜11オングストローム(1.1nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0049】
一部の実施形態において、本発明は、接続部の長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜約13オングストローム(約1.3nm)である上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0050】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の第1のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0051】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の第2のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0052】
一部の実施形態において、本発明は、野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素の活性の少なくとも90%を約75℃の温度まで保持する前記類似体のいずれか一つに関する。
【0053】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約10度から約60度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0054】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約20度から約40度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0055】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約15度から約25度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0056】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約30度から約50度まで増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0057】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約20度増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0058】
一部の実施形態において、本発明は、前記類似体の安定化が、約40度増大させられる前記類似体のいずれか一つに関する。
【0059】
本発明の別の態様は、さらに架橋剤を含み、前記架橋剤が第1のアミノ酸残基と第2のアミノ酸残基を接続する、前記類似体のいずれか一つの安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体である。
【0060】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が、トリス[2−マレイミドエチル]アミン(TMEA)、ジチオ−ビスマレイミドエタン(DTME)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、(1,8−ビス−マレイミド−ジエチレングリコール(BM(PEG)2)、1,4−ビス(マレイミド)ブタン(BMB)およびビス(マレイミド)エタン(BMOE)からなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0061】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が、有機水銀化合物、マレイミド、ビニルスルホンおよびアルキル化剤からなる群から選択される上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0062】
一部の実施形態において、本発明は、第1のアミノ酸残基および第2のアミノ酸残基がリジンである上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0063】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が0オングストローム(0nm)〜約20オングストローム(約2nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0064】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が約3オングストローム(約0.3nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0065】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が約7オングストローム(約0.7nm)〜約11オングストローム(約1.1nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0066】
一部の実施形態において、本発明は、架橋剤が約9オングストローム(約0.9nm)の長さを有するスペーサーアームを含む上述の類似体のいずれか一つに関する。
【0067】
本発明の別の態様は、安定化されたSOD1類似体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0068】
本発明の代表的方法
本発明の別の態様は、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法であって、第1のSOD1モノマー、第2のSOD1モノマー、および架橋剤を反応させて前記類似体を形成するステップを含む製造方法である。
【0069】
本発明の別の態様は、第1のSOD1モノマーの第1のα−アミノ酸残基を第2のSOD1モノマーの第2のα−アミノ酸残基と接続するステップを含む、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法である。
【0070】
一部の実施形態において、本発明は、第1のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を第1のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含む上述の方法のいずれか一つに関する。
【0071】
一部の実施形態において、本発明は、第2のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を第2のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含む上述の方法のいずれか一つに関する。
【0072】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸および第2のα−アミノ酸が架橋剤により接続されている上述の方法のいずれか一つに関する。
【0073】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択される上述の方法のいずれか一つに関する。
【0074】
一部の実施形態において、本発明は、第2のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択される上述の方法のいずれか一つに関する。
【0075】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基がシステインである上述の方法のいずれか一つに関する。
【0076】
一部の実施形態において、本発明は、第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基がリジンである上述の方法のいずれか一つに関する。
【0077】
本発明の別の態様は、治療上有効な量の上述の類似体のいずれか一つの安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含む神経性疾患の治療方法である。
【0078】
本発明の別の態様は、治療上有効な量の上述の類似体のいずれか一つを、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含む神経変性疾患向けの予防的投与方法である。
【0079】
一部の実施形態において、本発明は、神経変性疾患が筋委縮性側索硬化症である上述の方法のいずれか一つに関する。
【0080】
定義
「類似体」という用語は、機能がSOD1タンパク質に類似している分子またはその断片を意味する。
【0081】
基準ペリペプチドに関して本明細書で使用されている「アミノ酸配列同一性百分率(%)」または「アミノ酸配列相同性百分率」または「〜パーセント(%)の同一性を有する」という用語は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部と考えることなく、最大配列同一性百分率を達成するために、必要な場合、配列を整列させギャップを導入した後の、基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一であるポリペプチド配列候補中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性百分率を決定するための整列は、当該技術分野において公知のさまざまな技術によって、例えばALIGNまたはMegalign(DNASTAR)などの公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用することによって達成可能である。当業者であれば、比較に使用されているペプチド配列の全長にわたり最大の整列を達成するのに必要とされるあらゆるアルゴリズムを含めて、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。例えば、本発明との関連において、SOD1の類似体は、前記類似体のアミノ酸配列が野生型と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約99%の同一性を有する場合に、SOD1と「実質的な相同性」を共有すると言われる。
【0082】
「薬学的に許容される」という成句は、哺乳動物において、適正な医学的判断の範囲内で、妥当な損益比に見合い、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題または合併症が無く、実質的に非発熱性で、人間および動物の組織と接触して使用するのに適しているリガンド、材料、組成物および/または剤形に言及するために用いられている。
【0083】
本明細書中で使用される「薬学的に許容される担体」という成句は、対象の化学物質を体の一器官または一部分からその別の器官または部分まで搬送または輸送することに関与する液体または固体充填材、希釈剤、賦形剤、溶剤または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各々の担体は、調合物の他の成分と相容性があり、患者にとって有害でなく実質的に非発熱性であるという意味において「許容される」ものでなくてはならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、次のものが含まれる:(1)糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;(3)セルロースとその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)トラガカント粉未;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばココアバターおよび坐薬用ロウ;(9)油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)製剤調合において用いられる他の非毒性で相容性ある物質。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、非発熱性である、すなわち患者に投与された場合に有意な温度上昇を誘発しない。
【0084】
「予防(する)」という用語は、当該技術分野において認められており、局所再発(例えば疼痛)などの身体条件、癌などの疾患、心不全などの複合症候群または他の何らかの病状に関係して使用される場合、当該技術分野において良く理解されるものであり、その組成物を受けていない対象に比べて或る対象の体内の病状の症候の頻度を削減するかまたはその開始を遅らせる組成物の投与を含む。こうして、癌の予防には、例えば、未処置の対照集団に比べ予防的処置を受けた患者の集団における検出可能な癌成長の数を削減させること、および/または未処置対照集団に比べて処置済み集団において例えば統計学的および/または臨床的に有意な量だけ検出可能な癌成長の出現を遅延させることが含まれる。感染予防には、例えば、未処置の対照集団に比べて処置済み集団において感染診断数を削減させること、および/または、未処置対照集団に比べて処置済み集団において感染の症候の開始を遅延させることが含まれる。疼痛予防には、例えば、未処置対照集団に比べて処置済み集団において対象が感じる疼痛の知覚の規模を削減させることまたはこの知覚を遅延させることが含まれる。
【0085】
治療における使用に関して、例えば本発明のポリペプチドまたはペプチド類似体などの化合物の「治療上有効な量」とは、所望の用法・用量の一部として(哺乳動物、好ましくはヒトに対し)投与された場合に、例えば任意の医療的処置に適用可能な妥当な損益比で、処置すべき障害または身体条件または化粧品用途のために、臨床的に許容できる標準規格にしたがって症候を軽減するか、身体条件を改善するかまたは疾病条件の開始を遅延させる、調製物中のポリペプチドまたはペプチドの量を意味する。
【0086】
「予防的」または「治療的」処置という用語は、当該技術分野において認知されたものであり、対象組成物の1つ以上を宿主に対し投与することを含む。望ましくない身体条件(例えば宿主動物の疾病または他の所望されない状態)の臨床的発現に先立ち投与された場合には、その処置は予防的処置であり(すなわち、それは宿主を、所望されない身体条件の発生に対し保護する)、一方それが、所望されない身体条件の発現の後に投与される場合には、処置は治療的処置である(すなわちそれは、既存の所望されない条件またはその副作用を低減、改善または安定化するように意図されている)。
【実施例】
【0087】
本発明について一般的に記述したが、限定的な意図なくその一部の態様および実施形態の例示のみを目的として含まれている以下の実施例を参照することによって本発明をさらに容易に理解することができるものである。
【0088】
タンパク質の発現と精製
WtSOD1をSigma−Aldrich(St.Louis、Missouri)から購入した。S・セレビシエ(S.cerevisiae)中のG93AおよびG85Rの発現のための構成体は、Dr.P.John Hart、Ph.D.(University of Texas Health Science Center、San Antonio)からの寛大な寄贈品である。G93AおよびG85Rの発現および精製は、先に公表された通り(26、67)に実施した。簡単に言うと、酵母発現ベクターYEp−351内の各構成体を、EGy118ΔSOD1酵母へと形質転換させ、30℃で36〜48時間成長させた。培養をペレット化し、0.5mmのガラスビーズおよびブレンダーを用いて分解し、60%の硫酸アンモニウムカットに付した。硫酸アンモニウム沈降の後、試料をペレット化し、上清を、硫酸アンモニウムの最終濃度が2.0Mになるまで0.19体積で希釈した。その後この試料を、高塩分緩衝液(2.0Mの硫酸アンモニア、50mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、0.1MのEDTA、0.25mMのDTT、pH7.0)から低塩分緩衝液(50mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、0.1MのEDTA、0.25mMのDTT、pH7.0)まで線形的に減少する300mLの塩勾配を用いて、フェニル−セファロース6高速流(high sub)疎水性相互作用クロマトグラフィカラム(GE Life Sciences)を使用して精製した。SOD1を含む試料を1.6〜1.1Mの間の硫酸アンモニアで溶離させ、SDS PAGE分析を用いて同定し、プールし、10mMのトリス、pH8.0緩衝液に対し交換した。その後タンパク質を、Mono Q10/100アニオン交換クロマトグラフィカラム(GE Life Sciences)に投入し、低塩分緩衝液(10mMトリス、pH8.0)から高塩分緩衝液(10mMのトリス、pH8.0、1Mの塩化ナトリウム)まで線形的に増加する200mLの塩勾配を用いて溶離した。勾配を、0〜30%の10mMトリス、pH8.0、1Mの塩化ナトリウムから実施し、SOD1を5〜12%の間の10mMトリス、pH8.0、1Mの塩化ナトリウムで溶離させた。SOD1タンパク質を、SDS PAGE、ウエスタンブロット、MALDI−TOFおよびFTMSを介して確認した。
【0089】
架橋およびウエスタンブロット
Wt、G93AまたはG85R SOD1をおよそ20分間、5〜25mMのDTTと共にインキュベートし、Amicon Ultra−4遠心分離スピンコンセントレーター(MWCo10K)を用いるかまたは逆相クロマトグラフィ(ZIPTIP、Millipore, Inc)を用いて、両方の緩衝液を交換した。ZIPTIPにより清浄した試料を、同様に、5mMのEDTAでのインキュベーションに付した。Amiconコンセントレーターを用いて緩衝液交換したSOD1試料をHPLC水に交換し、一方ZIPTIP試料は、ZIPTIPの後、pH7.4のPBSまたはHPLC水にさらに交換した。DTTで還元されたSOD1を、1:1(20μM:20μMまたは10μM:10μM)または1:3(20μM:60μMまたは10μM:30μM)のタンパク質対架橋剤比でインキュベートした。
【0090】
さまざまな架橋剤(Thermo−Fisher Scientific)を使用した:ジチオ−ビスマレイミドエタン(DTME、スペーサーアーム13.3Å)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB、スペーサーアーム10.2Å)、1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール(BM(PEG)2、スペーサーアーム14.7Å)、1,4ビスマレイミドブタン(BMB、スペーサーアーム10.9Å)、トリス[2−マレイミドエチル]−アミオン(TMEA、10.3Å)および1,6−ヘキサノール−ビス−ビニルスルホン(HBVS、スペーサーアーム14.7Å)。pH7.4のPBSまたは水のいずれかの中で、室温で1時間反応をインキュベートすることにより、架橋を達成した。1時間後に、未架橋対照と共に、15%のSDS−PAGEゲル上で反応を分析し、ニトロセルロース膜に移し、SOD1に対するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロットに付した。トリプリケートで反復した。
【0091】
さらに、DTMEは、分割可能なスルフヒドリル−スルフヒドリル架橋剤である。したがって、1:1のモル比でwtSOD1とDTMEを含む架橋反応を、室温で1時間実施した。架橋の後、反応を半分に分割し、試料の半分を、DTTを含む試料緩衝液(還元性)中で実施し、もう半分を、DTTを含まない試料緩衝液(非還元性)中で実施した。次に、これらの試料を未架橋対照と共に、15%のSDS PAGEゲル上で分析し、以上の通りにウエスタンブロットに付した。
【0092】
マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)−飛行時間質量分析(TOF)
WtSOD1およびG93A SOD1を上述の通りにDTT処理し、1:1のモル比で架橋した。wtSOD1は前述の全ての架橋剤で架橋されたが、一方G93Aは、DTMEおよびビス(マレイミド)エタン(BMOE、スペーサーアーム8.0Å(0.8nm))で架橋された。BMOEを使用したのは、そのスペーサーアームの長さが比較的短いからであった。架橋の後、1μlの試料を、1μlのマトリクス、20mg/mLのシニピン酸を含むMALDI標的上でスポッティングし、Bruker Daltonics Microflex上で分析した。MALDIは、毎回、高分子量タンパク質較正標準Protein Calibration Standard I(Bruker Daltonics)を用いて較正した。MALDI−TOFを、72〜90%の間のレーザー出力を用いて線形モードで作動させた。MALDI−TOFスペクトルは、架橋されたものについてのものであり、未架橋試料は、FlexAnalysis software(Bruker Daltonics)を用いて分析した。トリプリケートで反復した。
【0093】
液体クロマトグラフィ(LC)−フーリエ変換質量分析計(FTMS)およびファンネルスキマー解離(FSD)
前述の通り、1:1のモル比(5μM:5μM)でDMTEまたはBMOEを使用してG93Aを架橋させた。1時間後、3%のアセトニトリルおよび1%のギ酸を試料に加え、14,000RPMで10分間回転させて、沈殿したタンパク質を全てペレット化した。架橋した試料をオートサンプラ内に入れ、30分間3〜50%B、7分間50〜95%B、5分間95%B、1分間95〜3%Bそして15分間3%Bという勾配で、Proxeon 1D HPLCまたはEksigent 2D UPLCのいずれかの中に1μLの架橋した試料を吸引させた。緩衝液Aは、0.1%のギ酸を伴うHPLC水であり、緩衝液Bは100%のアセトニトリル、0.1%のギ酸である。液体クロマトグラフィの後、試料を、ナノスプレーイオン化を用いてイオン化し、94Tesla Bruker Daltonics FTMSを用いて分析した。FTMSを、Apex制御ソフトウェアを用いて制御し、Apollo IIソフトウェアを用いてソースパラメータを制御した。35〜40Vのスキマー1電圧を用いてスペクトル(モノマーおよびダイマーG93A)を収集し、一方、スキマー1の電圧を140Vに上昇させることにより架橋済みG93Aを断片化するためにファンネルスキマー解離を使用した。架橋されたおよび未架橋のG93AのLC−FTMSデータを、Date Analysisソフトウェア(Bruker Daltonics)を用いて分析した。これらの実験をトリプリケートで反復した。
【0094】
LC−FTMSを用いたペプチド配列決定(ボトムアップ分析)
前述の通りに、1:1のモル比(5μM:5μM)でBMOEを用いてG85Rを架橋した。1時間後、架橋されたタンパク質を99℃で30分間加熱し、次に10mMのTCEPで10分間インキュベートした。その後、加熱し還元した架橋済みG85Rを30℃で一晩、1.5μLの0.5mg/mLのGlu−Cと共にインキュベートした。消化した試料を14,000RPMで10分間回転させて、次に上記の勾配を用いてEksigent UPLC内に注入した。液体クロマトグラフィの後、ナノスプレーイオン化を用いて試料を導入し、CIDを用いてMS/MSデータを収集した。Bruker Daltonics Data Analysisソフトウェアを用いて化合物を同定し、デコンボリューションに付し、包括的マスコットファイルにエキスポートした。1.2Da(MS許容誤差)および0.6Da(MS/MS許容誤差)で、NCBIrデータベースを用いて、酵素として無しを選択するMASCOT検索エンジン内に包括的マスコットファイルをアップロードすることによって、架橋済みおよび未架橋分析を実施した。未架橋および架橋済み試料についてのMASCOT検索を比較し、架橋済み試料内では同定されたものの未架橋試料内では同定されなかったm/zを、架橋剤(220.05Da)としてBMOEを用いてMS Bridge(タンパク質プロスペクター、UCSF)検索に付した。MS Bridgeは、架橋済みペプチドの潜在的分子量全てに架橋剤の分子量に加えたものを検索する。架橋済みに関与するものとしてMS Bridge検索から同定されたペプチドを、データ分析ソフトウェア内で抽出イオンクロマトグラムによりさらに特徴づけした。
【0095】
金属分析
University of Georgia Chemical Analysis Lab(Athens、GA)において、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を用いて金属分析を実施した。簡単に言うと、各バリアント1μMと共に、ブランクとしての分析のために単独緩衝液を送った。分析はトリプリケートで反復した。さらに、各バリアント5μMを、直接注入法(direct infusion)を用いてESIモードでFTMSを使用して分析した。
【0096】
熱蛍光安定性検定
溶融温度の上昇がタンパク質安定性の結合および増加を示唆するG93AおよびG85R SOD1の溶融曲線を、DTMEまたはBMOEおよび余剰の銅および亜鉛の両方の存在下または不在下で監視した。したがって、タンパク質の安定性に対するDMSOの効果を判定するために、2〜4%のDMSOの存在下で、架橋剤(これはDMSO中に再懸濁している)または銅および亜鉛の不在下で、タンパク質試料を分析した。最初の反応シーケンスにおいては、0〜20μMの増大する濃度のDTMEまたはBMOEと共に10μMの変異体SOD1をインキュベートし、20X SYPRO(商標)Orangeと共にインキュベートし、96ウェル平板に加えた。あるいは、第2の反応シーケンスでは、10μMの変異体SOD1を20μMの銅、20μMの亜鉛そして0〜20μMのBMOEまたはDTMEと共にインキュベートした。タンパク質の溶融温度を、毎分0.3℃の温度上昇で25〜100℃の間、RT−PCRマシン(AppliedBiosystems)を用いて監視した。それぞれのウェル各々から染料単独のブランクをサブトラクトすることによってデータを分析し、1に正規化し、折り畳み不良タンパク質の画分に対する温度の関係をグラフにした。DTMEまたはBMOE、銅、亜鉛、染料ブランクのサブトラクションにより、染料単独のブランクのサブトラクションと類似の結果が得られた。トリプリケートで反復した。
【0097】
SOD1活性検定
ニトロブル−テトラゾリウム(NBT)ゲルベースの検定を用いて、SOD1活性を監視した(69−72)。80μMの銅および亜鉛および/または42μMのBMOEの存在下または不在下で、10μg(約42μM)のwtまたは変異体SOD1をインキュベートし、次に12.5%のポリアクリルアミドゲル上で分析した。あるいは、80μMの銅および亜鉛および/または42μMのDTMEの存在下または不在下で、10μg(約42μM)のwtまたは変異体SOD1をインキュベートした。DTMEで架橋された試料を二分し、ここで半分を10mMのTCEPでインキュベートし、残りの半分はインキュベートせずに、その後12.5%のポリアクリルアミドゲル上で分析した。50mMのリン酸カリウム、pH7.8、NBT1錠(10mg/錠)および0.1mg/mLのリボフラボンを含む溶液を用いて、ゲルを45分間暗所で染色した。45分のインキュベーションの後、1μL/mLのTEMEDを添加し、ゲルを2分間光に曝露した。スーパーオキシドラジカルが、NBTから不溶性ブルーホルマゾンを形成させる。SOD1はスーパーオキシドを除去して青色形成を阻害することから、SOD1の活性は、無色のバンドとして見える。トリプリケートで反復した。
【0098】
結果
ダイマーSOD1を安定化させるための外因性マレイミド官能基架橋剤を用いた架橋
8〜14Aの範囲内の鎖長を有する被験マレイミド架橋剤は全て、ジチオ−ビスマレイミドエタン(DTME、スペーサーアーム13.3Å)、1,4−ビスマレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB、スペーサーアーム10.2Å)、1,8−ビス−マレイミドジエチレングリコール(BM(PEG)2、スペーサーアーム14.7Å)、1,4ビスマレイミドブタン(BMB、スペーサーアーム10.9Å)およびトリス[2−マレイミドエチル]アミオン(TMEA、10.3Å)を含めたSOD1ダイマーの安定化を結果としてもたらした(図12)。あるいは、試験した1つのビニルスルホン、1,6−ヘキサノール−ビス−ビニルスルホン(HBVS、スペーサーアーム14.7Å)は、結果としてダイマーSOD1を形成しなかった(図12)。
【0099】
架橋剤の化学量論を調査するために本出願人らは、液体クロマトグラフィ(LC)−フーリエ変換質量分析法(FTMS)を用いて、架橋済み(DTMEまたはBMOE)のG93Aバリアントと未架橋のG93Aバリアントの分子量を比較した。モノマー未架橋種についての実験上の分子量は、15851.055Daであると判定され(理論値15850.889Da)、ダイマー架橋された種についての実験上の分子量は32013.904Daであると判定された(2つのG93Aモノマーの分子量の理論値に1つのDTME(312.37Da)を加えたものとは0.244Daの差異)。ダイマーDTME架橋済みG93Aの実験上の分子量、32013.904Daは、1当量の架橋剤が1当量のダイマーを産生し(図8)、このことは2つのモノマーに対する単一の架橋剤の結合と整合性をもつということを示唆している。G93AおよびBMOE架橋についても類似の結果が得られた(データ示さず)。
【0100】
架橋剤を触媒とする反応の発生を排除するため、還元的に不安定な架橋剤DTMEを使用し、ウエスタンブロット法を用いて架橋を監視した。DTMEを使用した架橋の結果ダイマーSOD1がもたらされたが、還元剤の存在下ではモノマーのみが観察され(図8E)、SOD1ダイマーの形成が特異的に、結合された化学的架橋剤に起因していたことを示唆していた。
【0101】
チオール−ジスルフィド交換を媒介にしたSOD1ダイマーの安定化
DTMEで架橋されたG93Aバリアント(前駆体イオン)のファンネルスキマー解離(FSD)を用いた無傷のSOD1の質量およびMS/MS断片化データから、SOD1を架橋するための独特の反応機序であるチオール−ジスルフィド交換が明らかになった(図13)。第1に、無傷のSOD1および1/2のDTMEを伴うSOD1は、液体クロマトグラフィのランにおいて異なる保持時間で溶離し、それらが唯一の種でありしたがってDTMEのジスルフィドにおける断片化の可能性が排除されることを示唆している。第2に、断片化は、架橋の部位で優先的に発生する。半分のDTMEにより修飾された種は、DTMEのスペーサー内部のスルフヒドリル−スルフヒドリル結合とG93A上のシステイン残基のチオール部分との間で交換が起こったことを示唆している。最終的に、チオール−ジスルフィド交換の可能性は、SOD1構造のダイマー界面、具体的にはCys111においてDTMEの半分をモデル化することによってさらに確認された((2C9V(Strange、2006#95)))(図7)。こうして、本出願人らは、数多くの分子(図12)および2つの全く異なる反応機序、すなわちマレイミド(図8、図11および図12)およびチオール−ジスルフィド交換(図13)を用いて(ペプチドベースの治療戦略のためには後者が適している)効率良くSOD1モノマーを架橋することができた。
【0102】
Cys111が化学的架橋部位である
架橋部位を同定するために、本出願人らは、未架橋試料と架橋済み試料について、消化されたペプチドの配列データを提供するタンパク質分解およびLC−FTMS/MSデータを比較した(図14)。WTおよびG93A SOD1のプロテアーゼ耐性がおそらくは金属結合および分子内ジスルフィド結合を介して付与されていることから、プロテアーゼ耐性が比較的低いG85Rバリアントが使用された。m/z487.790(Mr973.563;残基1〜9、アセチル化N末端)は両方の試料中で観察され、未架橋試料と架橋済み試料におけるペプチドの類似の強度を浮彫りにする陽性対照として提示されている。本出願人らは、5232.674(m/z873.120)および5347.700(m/z892.291)という、架橋済み試料内にはあるものの未変性試料内には無い2つのMrを観察した。MS−Bridgeは、それぞれ架橋(BMOEを介して第2のモノマーの残基103〜126に架橋された1つのモノマーの残基103〜125)および(BMOEにより第2のモノマーの残基103〜126に架橋された1つのモノマーの残基103〜126)に関与しているものとして5232.674および5347.740の両方を同定した。5232.674についての予測された架橋は、6.19ppmの精度を有し、一方5347.700は、5.88ppmの精度を有していた。したがって、質量分析法では、架橋が化学量論的であり主としてCys111を通して発生したこと、そして他のSOD1システイン残基Cys6、Cys57およびCys146との交叉反応が比較的低いものであったことが確認された(図14)。注目すべきことに、架橋の複雑さに起因して、架橋されたペプチドの前駆体イオン断片化が欠如していた。
【0103】
化学的架橋がG93AおよびG85Rダイマーを安定化させる
Sypro orangeは、タンパク質が変性されるにつれて露呈状態となる疎水性パッチに優先的に結合する。温度の関数としてのSypro orange結合を監視する蛍光ベースの検定を用いて、G93AとG85Rの両方の変性温度の傾向を観察した。この検定は、おそらくはSOD1の凝集の結果として可逆的でなく、変性温度は以前に観察されたSOD1の溶融温度に似ているものの、適切な熱力学的安定性を示さない。WT SOD1は、その溶融温度が検出限界(約100℃)にあることから、この検定を用いて監視できなかった。本出願人らは、分析した2つの変異体の安定性の空前の増加を観察した(図9および図15)。例えばG93A SOD1は約20℃までに安定化し;余剰の銅および亜鉛とのインキュベーションはG93Aの安定性に対し一切影響を及ぼさず;架橋剤の濃度が低くなると、G93Aの安定性に対しさらに大きい効果が及ぼされた。一方、G85R SOD1は、余剰の銅および亜鉛の存在下において約20℃で安定化し;銅、亜鉛および架橋剤の存在下において約45℃(約40℃〜85℃)でさらに増大し、架橋剤の濃度が高くなると、G85Rの安定性にさらに大きい効果がもたらされた。したがって、ここで、本質的に(共有の)薬理学的シャペロンであるものによって達成される安定化度は、本出願人らの知るかぎりいずれの疾病関連タンパク質に関してもSOD1についてこれまで達成された最高のものである。
【0104】
fALSバリアントS85R SOD1の活性はSOD1ダイマーを安定化することによって回復される
安定性に加えて、本出願人らは、ゲルベースの検定を用いて、化学的架橋がSOD1活性に対して及ぼす影響を調査した。WTおよびG93A SOD1活性は、銅、亜鉛または化学的架橋の添加により影響されなかった。しかしながら、G85R SOD1の熱安定性を増大させることに加えて、化学的架橋は、その定性的金属結合親和力を増大させ、その結果として、G85R SOD1を、試験管内および生体内で触媒不活性であるタンパク質から、試験管内でそして潜在的には生体内でも活性であるタンパク質へと変換させた(図10)。DTME架橋中に観察されたG85R活性の増大は、TCEPを用いたDTMEの内部ジスルフィド結合の分割時点で逆転した(図16)。したがって、G85R SOD1の熱安定性の改善に加えて、これらの化合物は、酸化的ストレスに対する生命体の耐性を増大させる潜在的可能性を有し、本出願人らのアプローチは他の機能喪失疾患について考慮されてもよい。
【0105】
SOD1の金属含有量が、SOD1の安定化において1つの役割を果たす
単離されたままのWT、G93AおよびG85R SOD1の金属含有量は誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を用いて決定され、これらは補足的表1の中に列挙されている。すなわち、単離されたままのWT SOD1はモノマー1個あたりおよそ2個の銅および亜鉛分子を含み、単離されたままのG93Aは、モノマー1個あたり1個の銅分子と1.5個の亜鉛分子を含み、G85Rはモノマー1個あたり1個未満の銅と1.5個の亜鉛を含んでいた。これらのデータから、WTおよびG93A SOD1は金属を十分に含み、さらに幾分かの偶発的な(非活性部位)金属結合が発生していたように思われる。したがって本出願人らは、FTMSを用いて金属含有量も同様に分析し、脱溶媒和プロセスが大部分の偶発的な金属を除去する傾向をもつことを観察した。すなわち、単離されたままのWT SOD1は、完全に金属化されているように思われ、単離されたままのG93A SOD1は約95%金属化されているように思われ、単離されたままのG85R SOD1は部分的に金属化され、金属化されていないまたは一価金属化(singly metallated)された画分のさらに大きい集団で約70%が金属化されていると思われた。これらのデータによって、G85Rの集団がより大きい割合の部分金属化形態および未金属化形態で構成されていることを理由として、G93A試料の場合に比べてG85R試料に対し外因性金属が添加された場合に観察された安定性の増大の説明がつくかもしれない。
【0106】
参照による援用
本明細書中で引用されている全ての米国特許および米国公開特許出願は、本明細書に参照により援用される。
【0107】
均等物
当業者であれば、本明細書中で記述された本発明の具体的実施形態に対する数多くの均等物を認識し、日常的なものにすぎない実験を用いてそれらを確認できるものである。このような均等物は、以下のクレームにより包含されるように意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体において、前記類似体が三次構造を有し第1のSOD1モノマーおよび第2のSOD1モノマーを含むこと;前記第1のSOD1モノマーが第1の面と第1のα−アミノ酸残基を含み、前記第2のSOD1モノマーが第2の面と第2のα−アミノ酸残基を含むこと;前記第1のα−アミノ酸残基が第1の側鎖を含み、前記第2のα−アミノ酸残基が第2の側鎖を含むこと;前記第1のα−アミノ酸残基が1つの接続部により前記第2のα−アミノ酸残基に接続されていることを特徴とする、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体。
【請求項2】
前記第1の側鎖が前記第2の側鎖に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の類似体。
【請求項3】
前記第1の側鎖および前記第2の側鎖が共有結合、イオン結合または非共有結合により接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の類似体。
【請求項4】
前記三次構造が、野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素と実質的に同じであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項5】
前記第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基の場所は、前記類似体の前記酵素活性が低下しないような場所であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項6】
前記第1のα−アミノ酸残基の位置が前記第1の面上に特定され、前記第2のα−アミノ酸残基の位置が前記第2の面上に特定されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項7】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基が同じ付番位置を占有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項8】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基が異なる付番位置を占有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項9】
前記第1のα−アミノ酸残基が111位にあることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項10】
前記第2のα−アミノ酸残基が111位にあることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項11】
前記第1のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項12】
前記第2のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項13】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基がシステインであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項14】
前記第1のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩であり、前記第2のα−アミノ酸残基がアルギニンであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項15】
前記第1のα−アミノ酸残基がアルギニンであり、前記第2のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項16】
前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーの配列相同性が約85%以上であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項17】
前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーが実質的に同じアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項18】
前記接続部の長さが0オングストローム(0nm)〜約30オングストローム(約3nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項19】
前記接続部の前記長さが約2オングストローム(約0.2nm)〜約20オングストローム(約2nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項20】
前記接続部の前記長さが約5オングストローム(約0.5nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項21】
前記接続部の前記長さが8オングストローム(0.8nm)〜約13オングストローム(約1.3nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項22】
前記接続部の前記長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜約11オングストローム(約1.1nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項23】
前記接続部の前記長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜約13オングストローム(約1.3nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項24】
前記類似体の前記第1のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含むことを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項25】
前記類似体の前記第2のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含むことを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項26】
前記野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素の活性の少なくとも90%を約75℃の温度まで保持することを特徴とする、請求項1〜25のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項27】
前記類似体の安定化が、約10度から約60度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項28】
前記類似体の安定化が、約20度から約40度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項29】
前記類似体の安定化が、約15度から約25度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項30】
前記類似体の安定化が、約30度から約50度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項31】
前記類似体の安定化が、約20度増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項32】
前記類似体の安定化が、約40度増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項33】
さらに架橋剤を含み、前記架橋剤が前記第1のアミノ酸残基と前記第2のアミノ酸残基を接続することを特徴とする、請求項1〜32のいずれか一項に記載の安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体。
【請求項34】
前記架橋剤が、DTME、TMEA、BMDB、BM(PEG)2、BMBおよびBMOEからなる群から選択されることを特徴とする、請求項33に記載の類似体。
【請求項35】
前記架橋剤が、有機水銀化合物、マレイミド、ビニルスルホンおよびアルキル化剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項33に記載の類似体。
【請求項36】
前記第1のアミノ酸残基および前記第2のアミノ酸残基がリジンであることを特徴とする、請求項33〜35のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項37】
前記架橋剤が0オングストローム(0nm)〜約20オングストローム(約2nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項38】
前記架橋剤が約3オングストローム(約0.3nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項39】
前記架橋剤が約7オングストローム(約0.7nm)〜約11オングストローム(約1.1nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項40】
前記架橋剤が約9オングストローム(約0.9nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項41】
請求項1に記載の安定化されたSOD1類似体と薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項42】
安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法であって、第1のSOD1モノマー、第2のSOD1モノマー、および架橋剤を反応させて前記類似体を形成するステップを含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項43】
第1のSOD1モノマーの第1のα−アミノ酸残基を第2のSOD1モノマーの第2のα−アミノ酸残基と接続するステップを含む、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法。
【請求項44】
前記第1のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を前記第1のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記第2のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を前記第2のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1のα−アミノ酸および前記第2のα−アミノ酸が架橋剤により接続されていることを特徴とする、請求項43〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第1のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項43〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記第2のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項43〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基がシステインであることを特徴とする、請求項43〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基がリジンであることを特徴とする、請求項43〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項1〜41のいずれか一項に記載の治療上有効な量の安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含むことを特徴とする、神経性疾患の治療方法。
【請求項52】
請求項1〜41のいずれか一項に記載の治療上有効な量の安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含むことを特徴とする、神経変性疾患向けの予防的投与方法。
【請求項53】
前記神経変性疾患が、筋委縮性側索硬化症であることを特徴とする、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳動物が霊長類、ウシ科動物、ヒツジ科動物、ウマ科動物、ブタ科動物、ゲッ歯類、ネコ科動物またはイヌ科動物であることを特徴とする、請求項51〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする、請求項51〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体において、前記類似体が三次構造を有し第1のSOD1モノマーおよび第2のSOD1モノマーを含むこと;前記第1のSOD1モノマーが第1の面と第1のα−アミノ酸残基を含み、前記第2のSOD1モノマーが第2の面と第2のα−アミノ酸残基を含むこと;前記第1のα−アミノ酸残基が第1の側鎖を含み、前記第2のα−アミノ酸残基が第2の側鎖を含むこと;前記第1のα−アミノ酸残基が1つの接続部により前記第2のα−アミノ酸残基に接続されていることを特徴とする、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体。
【請求項2】
前記第1の側鎖が前記第2の側鎖に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の類似体。
【請求項3】
前記第1の側鎖および前記第2の側鎖が共有結合、イオン結合または非共有結合により接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の類似体。
【請求項4】
前記三次構造が、野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素と実質的に同じであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項5】
前記第1のα−アミノ酸残基および第2のα−アミノ酸残基の場所は、前記類似体の前記酵素活性が低下しないような場所であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項6】
前記第1のα−アミノ酸残基の位置が前記第1の面上に特定され、前記第2のα−アミノ酸残基の位置が前記第2の面上に特定されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項7】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基が同じ付番位置を占有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項8】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基が異なる付番位置を占有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項9】
前記第1のα−アミノ酸残基が111位にあることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項10】
前記第2のα−アミノ酸残基が111位にあることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項11】
前記第1のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項12】
前記第2のα−アミノ酸残基がリジン、システイン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリンおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項13】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基がシステインであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項14】
前記第1のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩であり、前記第2のα−アミノ酸残基がアルギニンであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項15】
前記第1のα−アミノ酸残基がアルギニンであり、前記第2のα−アミノ酸残基がアスパラギン酸塩であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項16】
前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーの配列相同性が約85%以上であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項17】
前記第1のSOD1モノマーと前記第2のSOD1モノマーが実質的に同じアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項18】
前記接続部の長さが0オングストローム(0nm)〜約30オングストローム(約3nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項19】
前記接続部の前記長さが約2オングストローム(約0.2nm)〜約20オングストローム(約2nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項20】
前記接続部の前記長さが約5オングストローム(約0.5nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項21】
前記接続部の前記長さが8オングストローム(0.8nm)〜約13オングストローム(約1.3nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項22】
前記接続部の前記長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜約11オングストローム(約1.1nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項23】
前記接続部の前記長さが約9オングストローム(約0.9nm)〜約13オングストローム(約1.3nm)であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項24】
前記類似体の前記第1のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含むことを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項25】
前記類似体の前記第2のSOD1モノマーが野生型配列であるか、またはG93A、G85R、D90A、A4V、E100G、H46R、C6GおよびI113Tからなる群から選択された変異を含むことを特徴とする、請求項1〜24のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項26】
前記野生型スーパーオキシドジスムターゼ酵素の活性の少なくとも90%を約75℃の温度まで保持することを特徴とする、請求項1〜25のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項27】
前記類似体の安定化が、約10度から約60度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項28】
前記類似体の安定化が、約20度から約40度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項29】
前記類似体の安定化が、約15度から約25度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項30】
前記類似体の安定化が、約30度から約50度まで増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項31】
前記類似体の安定化が、約20度増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項32】
前記類似体の安定化が、約40度増大させられることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項33】
さらに架橋剤を含み、前記架橋剤が前記第1のアミノ酸残基と前記第2のアミノ酸残基を接続することを特徴とする、請求項1〜32のいずれか一項に記載の安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ類似体。
【請求項34】
前記架橋剤が、DTME、TMEA、BMDB、BM(PEG)2、BMBおよびBMOEからなる群から選択されることを特徴とする、請求項33に記載の類似体。
【請求項35】
前記架橋剤が、有機水銀化合物、マレイミド、ビニルスルホンおよびアルキル化剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項33に記載の類似体。
【請求項36】
前記第1のアミノ酸残基および前記第2のアミノ酸残基がリジンであることを特徴とする、請求項33〜35のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項37】
前記架橋剤が0オングストローム(0nm)〜約20オングストローム(約2nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項38】
前記架橋剤が約3オングストローム(約0.3nm)〜約15オングストローム(約1.5nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項39】
前記架橋剤が約7オングストローム(約0.7nm)〜約11オングストローム(約1.1nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項40】
前記架橋剤が約9オングストローム(約0.9nm)の長さを有するスペーサーアームを含むことを特徴とする、請求項33〜36のいずれか一項に記載の類似体。
【請求項41】
請求項1に記載の安定化されたSOD1類似体と薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項42】
安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法であって、第1のSOD1モノマー、第2のSOD1モノマー、および架橋剤を反応させて前記類似体を形成するステップを含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項43】
第1のSOD1モノマーの第1のα−アミノ酸残基を第2のSOD1モノマーの第2のα−アミノ酸残基と接続するステップを含む、安定化されたスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)類似体の製造方法。
【請求項44】
前記第1のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を前記第1のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記第2のSOD1モノマーの天然に発生するアミノ酸を前記第2のα−アミノ酸残基で置換するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項42〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1のα−アミノ酸および前記第2のα−アミノ酸が架橋剤により接続されていることを特徴とする、請求項43〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第1のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項43〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記第2のα−アミノ酸残基がリジン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン酸、セリン、システインおよびトレオニンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項43〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基がシステインであることを特徴とする、請求項43〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1のα−アミノ酸残基および前記第2のα−アミノ酸残基がリジンであることを特徴とする、請求項43〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
請求項1〜41のいずれか一項に記載の治療上有効な量の安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含むことを特徴とする、神経性疾患の治療方法。
【請求項52】
請求項1〜41のいずれか一項に記載の治療上有効な量の安定化されたSOD1類似体を、それを必要としている哺乳動物に対して投与するステップを含むことを特徴とする、神経変性疾患向けの予防的投与方法。
【請求項53】
前記神経変性疾患が、筋委縮性側索硬化症であることを特徴とする、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳動物が霊長類、ウシ科動物、ヒツジ科動物、ウマ科動物、ブタ科動物、ゲッ歯類、ネコ科動物またはイヌ科動物であることを特徴とする、請求項51〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記哺乳動物がヒトであることを特徴とする、請求項51〜54のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図18F】
【図18G】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図12】
【図14】
【図15】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図18E】
【図18F】
【図18G】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図9】
【図12】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−528595(P2012−528595A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514093(P2012−514093)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037104
【国際公開番号】WO2010/141613
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(502361511)ブランデイス ユニヴァーシティー (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/037104
【国際公開番号】WO2010/141613
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(502361511)ブランデイス ユニヴァーシティー (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]