ズーム光学系
放射ビームに対して連続的に可変の焦点を提供すべく配置される第1レンズを具えているレンズシステムを有するズーム光学系を提供する。前記レンズシステムはさらに第1の流体、第2の流体、前記放射ビームを通過させるように配置した部分を有する波面修正器も具えている。前記切替可能な光学素子は第1モードでは第1流体形状を有し、この第1流体形状では前記部分が第1の流体でほぼ覆われ、第2モードでは、前記切替可能な光学素子は第2の異なる流体形状を有し、この第2流体形状では、前記部分が第2の流体でほぼ覆われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、これに限定されるものではないが、画像キャプチャー装置に使用するズーム光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカメラのような画像キャプチャー装置を用いて物体の像をキャプチャーするときにはしばしば、その像に対してズーム設定を変えられることが望まれる。カメラと物体との間の距離が一定のままの場合、高ズーム比では高倍率、且つ狭視野で物体の像をキャプチャーできる。低ズーム比では低倍率、且つ広視野で物体の画像をキャプチャーできる。カメラの例では、高ズーム比は望遠レンズ設定の特性であり、低ズーム比は広角レンズ設定の特性である。
【0003】
ズーム比が異なるとズーム光学系の異なる有効焦点距離を要する。望遠レンズ設定では有効焦点距離は相対的に長く、広角レンズ設定では有効焦点距離は相対的に短くなる。
【0004】
像を異なるズーム設定でキャプチャーするためには、物体の像に焦点を合わせたまま、カメラのズーム光学系の有効焦点距離を変えなければならない。このようなズーム光学系は、可変焦点をもたらす少なくとも2個のレンズを用いて構成することができる。
【0005】
既知のズーム光学系は共通光路に沿って並ぶ固体レンズのアレイを具えている。光路に沿ってこれらのレンズの位置を変えることにより、像に焦点を合わせたまま異なる有効焦点距離を得ることができ、したがって異なるズーム設定を有する画像をキャプチャーできる。しかしながら、このタイプのズーム光学系は比較的大きく、機械的にも複雑である。個々のレンズの移動は手動又は自動のどちらでも行えるが、これらの方法は一般的に比較的高価で、堅牢性に欠ける。このようなズーム光学系によるズーム比の範囲は、個々のレンズの集光力と光路に沿ったレンズ間の取り得る距離を含むパラメータに依存する。この種のズーム光学系におけるズーム比範囲の上限値が大きくなると、一般的にズーム光学系の容積と複雑さが増すことになる。
【0006】
望遠と広角ズーム機能の両方を有する単独のズーム光学系よりはむしろ、異なるズーム比範囲を得るためにカメラレンズを望遠系と広角系との間で取り替える必要がよくある。これは比較的時間がかかり、不便な手法であり、カメラユーザーはカメラに加えて別のレンズを持ち運ばなければならない。
【0007】
国際公開第03/069380号公報には、流体メニスカスレンズが記載されている。このレンズは第1の流体と第2の流体を分離し、曲率をもつ流体メニスカスを有する。この曲率を変えることでレンズの焦点距離と画像の焦点を変えることができる。レンズを様々な方向に向けて用いる用途では、これらの流体は不要な重力の影響を避けるために密度を整合させることが好適である。そのため、水と油のような、密度が釣り合う2つの流体が用いられている。
【0008】
このような2つの流体メニスカスレンズは異なるズーム比を有する画像をキャプチャーするためにズーム光学系に組み込むことができる。広い範囲のズーム比を実現するためには、各流体メニスカスにおいて大きく光パワーが変化することが求められる。2つの流体の屈折率に大きな差異がなく、さらに曲率変化の程度が制限されているため、流体メニスカスレンズの光パワーの範囲は比較的小さい。このことは、ズーム光学系が提供し得るズーム比の範囲を制限することになる。特に、ズームレンズシステムにおける1つのレンズ部品(一般的に画像キャプチャーデバイスの最近傍にある)はズーミング中に最大の光パワー範囲を要するので、前記1つのレンズ部品として用いる流体メニスカスレンズにおける光パワー範囲の相対的な制限が、ズーミング量を制約することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、光学系に必要な機械的な部品を減らしながら、改良したズーム機能を有する画像キャプチャー用のズーム光学系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、放射ビームに対して可変ズーム設定を与えるべく配置され、第1モードと第2モードを有する切替可能な光学素子からなる、レンズシステムを具えているズーム光学系において、前記切替可能な光学素子が第1の流体と、第2の流体と、前記放射ビームを通過させるように配置した部分を有する波面修正器とを含み、第1モードでは、前記切替可能な光学素子が第1の流体形状を有し、この第1の流体形状では前記部分が第1の流体でほぼ覆われ、第2モードでは、前記切替可能な光学素子が第2の異なる流体形状を有し、この第2の流体形状では、前記部分が第2の流体でほぼ覆われるようにしたことを特徴とするズーム光学系が提供される。
【0011】
本発明によればズーム光学系を比較的簡単で、小形で、安価で堅牢に製造することができる。このズーム光学系は、第1の流体配置において第1の有効焦点距離、第2の流体配置において第2の有効焦点距離を有し、前記第1及び第2の有効焦点距離が各自異なるズーム設定をもたらすように構成するのが好適である。
【0012】
第1モードにある光学素子では、前記レンズシステムは第1の光学ズーム設定を有する。第2モードにある光学素子では、前記レンズシステムはズーム比が増した第2の光学ズーム設定を有する。
【0013】
このレンズシステムには、連続的に可変の焦点を有する第1レンズを含めるのが好適である。第1ズーム設定又は第2ズーム設定を有する画像の焦点が正確に合うように第1レンズの焦点を変えることができる。2つのズーム設定間にて切替を行う場合には、第1レンズの焦点を段階的に変えて、正確なズーム機能をもたらすようにもする。従って、この光学系は2つの別個の光学ズーム設定を有するバイナリズーム光学系となる。
【0014】
2つのズーム設定の間にさらに追加のズーム比を設定するために、デジタルズーム機能を用いることができる。本発明の1つの実施形態では、画像キャプチャー装置が前記光学系を具え、さらに、第1モードでキャプチャーされる画像及び/又は第2モードでキャプチャーされる画像にデジタルズーム比を導入するように構成したデジタルズームシステムを具えるようにする。
【0015】
切替可能な光学素子は、第1の流体配置では、第1と第2の流体電極間に第1の電圧を印加して切替可能なエレクトロウェッティング力(electrowetting force)を提供し、第2の流体配置では、第1と第3の流体電極間に第2の異なる電圧を印加して異なる切替可能なエレクトロウェッティング力を提供するように構成するのが好適である。
【0016】
第1の流体は液体とし、第2の流体は気体とするのが好適である。ここで言う気体とは、液体の蒸気と気体との混合又は気体のみの場合を含む。これは、2つの流体の密度を整合させる必要がないので、切替可能な光学素子を様々な方向に向けて用いる場合でも可能であり、また、2つの流体間の屈折率の差を相対的に大きくするのに有利である。
【0017】
第1レンズは流体メニスカスレンズ形式のものとすることができる。本実施形態では、切替可能な光学素子が第1レンズの最大光パワー範囲よりも大きい最大光パワー範囲(その2者のモードの間で)を有するようにするのが好適である。このような構成にすれば、切替可能な光学素子をズーミング中にレンズシステムに最大光パワー範囲を要するレンズ部品として用いることができるため、ズーミング量は、流体メニスカスレンズの相対的に制限される光パワー範囲によって制約されなくなる。
【0018】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の添付図面を参照しての本発明の好適な実施例の説明により明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜図3は、従来技術による可変焦点レンズを示す。この可変焦点レンズは、毛細管を形成する円柱形の第1メニスカス電極2を具え、透明の前方素子3と透明の背面素子4によって2つの異なる流体を収容する流体チャンバーを形成するように封止められる流体メニスカスレンズである。第1のメニスカス電極2は毛細管の内壁上に塗布した導電性被膜とすることができる。
【0020】
前記2つの異なる流体は、ここでは以降「油」と称する、例えばシリコーンオイルやアルカンのような電気的に絶縁性の第1液体Aと、例えば食塩水を含む水のような導電性の第2液体Bとの2つの非混和性液体からなる。2つの液体は等しい密度を有するように構成して、向きとは無関係に、すなわち2つの液体間の重力の影響に依存することなく、メニスカスの形状を制御できるようにするのが好適である。これは第1液体の成分を適切に選択することにより実現できる。例えば、アルカン又はシリコーンオイルは分子成分を加えてその密度を増やして、食塩水と等しくなるように改質することができる。
【0021】
使用する油の選択に依存して、油の屈折率は1.25〜1.85の範囲内で変化する。同様に、加える食塩の量に依存して、食塩水の屈折率は1.33〜1.60の範囲内で変化する。流体は、第1液体Aが第2液体Bよりも高い屈折率を持つように選択する。
【0022】
第1のメニスカス電極2はその内径が一般的には1mm〜20mmとなるような円柱とする。第1のメニスカス電極2は金属製で、例えばパリレンのような絶縁層5で表面を覆う。絶縁層は50nm〜100μmの厚さを有し、一般的には1μm〜10μmの範囲の値をとる。絶縁層の表面を、流体接触層6で覆う。この流体接触層6は、流体チャンバーの円柱壁面とのメニスカスの接触角におけるヒステリシスを低減する。前記流体接触層は、デュポン社製のテフロン(登録商標)AF1600のようなアモルファスフルオロカーボンで形成することが好適である。流体接触層6は5nm〜50μmの厚さを有する。このAF1600被膜は第1メニスカス電極2を継続的に浸漬塗布することにより製造することができる。第1のメニスカス電極2の円柱側面は円柱電極とほぼ平行であるため、AF1600被膜は厚さがほぼ一様な均一な層を形成する。また浸漬塗布は電極をその軸方向に沿って浸漬溶液へ出し入れして浸すことにより行う。パリレン被膜は化学蒸着を用いて塗布できる。第1と第2のメニスカス電極7の間に電圧が印加されていないときは、メニスカス8と流体接触角6の交点の両側にて第2の流体による流体接触層の湿潤性がほぼ等しくなる。
【0023】
第2のメニスカス電極7は環状であり、これは流体チャンバーの一端、この場合は、後方素子に隣接して構成される。第2のメニスカス電極7の少なくとも一部分を流体チャンバー内に配置して、その電極が第2の流体Bに作用するようする。
【0024】
2つの流体AとBは非混和性であるため、曲率を有する流体メニスカス8により分離される2つの流体に分離する傾向がある。第1と第2のメニスカス電極間に電圧が印加されていない場合、流体接触層は第2の流体Bよりも第1の流体Aに対して高い湿潤性を呈する。メニスカスエレクトロウェッチング力により、第2の流体Bの湿潤性は第1メニスカス電極2と第2メニスカス電極7との間への電圧の付与のもとで変化し、3つの相ライン(流体接触層6と2つの液体A及びBとの間の接触ライン)でのメニスカスの接触角を変えていく。この流体メニスカスレンズの可変焦点は、印加電圧に依存して変化し得る流体メニスカスの曲率の変動分を含む。
【0025】
図1を参照するに、例えば0V〜20Vの低い電圧V1をメニスカス電極間に印加すると、メニスカスは第1曲率のメニスカス形状をとる。この形状で、流体B内で測定されるメニスカスと流体接触層6との間の初期接触角θ1は、例えば約140°になる。第1流体Aが第2流体Bよりも高い屈折率であるため、ここでメニスカスレンズと称するメニスカスが形成するレンズは、この形状で相対的に高い負のパワーを有する。
【0026】
メニスカス形状の凹面度を減らすためには、第1と第2のメニスカス電極間に高い値の電圧を印加する。図2を参照するに、絶縁層の厚さに依存して、例えば20V〜150Vの中間値の電圧V2をメニスカス電極間に印加すると、メニスカスは、図1のメニスカスに比べて大きい曲率を有する第2凹面のメニスカス形状をとる。この形状では、第1流体Aと流体接触層6との間の中間接触角θ2は例えば約100°になる。第1流体Aが第2流体Bよりも高い屈折率であるため、メニスカスレンズはこの形状では相対的に低い負のパワーを有する。
【0027】
凸面のメニスカス形状を作るためには、さらに高い値の電圧を第1と第2のメニスカス電極間に印加する。図3を参照するに、例えば150V〜200Vの相対的に高い電圧V3をメニスカス電極間に印加すると、メニスカスは凸面メニスカスの形状をとる。この形状では、第1流体Aと流体接触層6との間の最大接触角θ3が例えば約60°になる。第1流体Aが第2流体Bよりも高い屈折率であるため、メニスカスレンズはこの形状では正のパワーを有する。
【0028】
なお、図3の形状の実現が相対的に高いパワーを用いて可能であるも、前述したようなレンズを含むデバイスは、前述した範囲の低く中間のパワーのみを用いるように適合させるのが好適である。言い換えれば、印加する電圧は絶縁層における電界強度が20V/μmよりも小さくなるように制限し、流体接触層を帯電させ、従ってこの流体接触層を劣化させる過度な電圧は用いないようにする。
【0029】
さらに、最初の、低い電圧での形状は液体AとBの選択に依存して、即ちそれらの表面張力に依存して変化する。高表面張力の油を選択することにより、及び/又はエチレングリコールなどの成分を、表面張力を低減する食塩水に加えることにより、初期の接触角を小さくすることができる。この場合、レンズは図2の形状に対応する低光パワーの形状及び、図3の形状に対応する中間パワーの形状をとることができる。いずれの場合にも、低パワーの形状ではメニスカスは凹面のままであり、相対的に広い範囲のレンズパワーを、過度の電圧を用いることなく発生させることができる。
【0030】
図4及び図5は図1〜図3を用いて説明した流体メニスカスレンズの2つを具えるように構成できるズーム光学系を示す。
【0031】
図示した光学系では、第1流体メニスカスレンズ9と第2流体メニスカスレンズ10を光軸OAに沿って配置する。光軸OA上にあって、且つ第1と第2の流体メニスカスレンズ9と10間にはまた、光軸OAに沿って走行する所定の放射ビームの波面修正を補助する複数の光学素子11がある。この光学系は撮像シーンである所定物体の像をキャプチャーするように構成する。画像検出器12は、合焦機能と画像を担う所定の放射ビームへのズーム比導入に続いて、第1と第2の流体メニスカスレンズ9、10により撮像シーンの画像を検出するように構成する。本実施例では、画像検出器12を電荷結合素子(CCD)とする。
【0032】
ズーム範囲の、ある制限時での光学系を示す図4を参照するに、光軸OAに沿って見ると、この光学系は第1視野α1を有し、第1流体メニスカスレンズ9が凹形流体メニスカス13を有し、第2流体メニスカスレンズ10が凹形流体メニスカス14を有している。図4は、撮像シーンのキャプチャー画像に光学系が導入した、本光学系のズーム比範囲の最高限度におけるズーム設定を図解したものである。画像はCCD12によりキャプチャーされる。
【0033】
図5を参照し、光軸OAに沿って見ると、光学系は、CCDに対する視野角がα2の第2視野を有し、第1流体メニスカスレンズ9が凸面の流体メニスカス13を有し、第2流体メニスカスレンズ10が凸面の流体メニスカス14を有する。図5は、物体のキャプチャー画像に光学系が導入した、本光学系のズーム比範囲の最低限度におけるズーム設定を図解したものである。
【0034】
図4及び図5に示した光学系のズーム比は制限される。一般的な装置では、最高限度におけるズーム比は最低限度におけるキャプチャー画像のズーム比より約2倍大きい。従って、ズーム比差における上限値は約2倍で、これは比較的小さい。
【0035】
図6及び図7を参照するに、本発明の実施例による切替可能な光学素子はチャンバー20を具え、このチャンバーは2つの開口22、23を経て2つの対向する端部を有する導管24に流動的に連結されている。チャンバーの第1開口22は導管の第1端部に流動的に連結され、さらにチャンバーの第2開口23は導管の第2端部に流動的に連結されて、流体システムに対する流体密封包囲体を形成する。チャンバー20の内部に露出している面を有する部分28を具える波面修正器26がチャンバー20の一方の側面を包囲する。この波面修正器は例えば水性液に非可溶性のシクロオレフィンコポリマー(COC)であるゼオノックス(登録商標)のような透明の材料で形成する。これは例えば射出成型処理などで形成することができる。波面修正器26の部分28の面は実質的に非球面で、光軸OAを中心に回転対称とする。
【0036】
チャンバー20は別の波面修正器36を構成するカバープレートでさらに包囲し、この波面修正器は、ゼオノックス(登録商標)の例と同様の透明の材料で形成する他の部分32を有する。この他の部分32は透明の、例えばデュポン社製のテフロン(登録商標)AF1600で形成する疎水性の流体接触層で覆う。この疎水性の流体接触層の一方の表面はチャンバー20の内部に露出させる。
【0037】
前記他の部分32は非球面で光軸OAを中心に回転対称な面を有する。この他の部分32の面は部分28の面の非球面曲率とは異なる非球面曲率を有する。
【0038】
光軸OAに沿って走行する所定の放射ビームは部分28及び他の部分32を通過するように配置する。所定の放射ビームに対し、波面修正器26は第1の波面修正を行い、別の波面修正器36は第2の異なる波面修正を行う。第2の波面修正は第1の波面修正を補完するように行う。
【0039】
共通の第1の流体電極50は例えば金属製で、チャンバーの一方の開口22の近くの導管24内に位置させる。
【0040】
第2の流体電極34はカバープレート36と疎水性の流体接触層との間にある。この第2の流体電極34は例えば酸化インジウムスズ(ITO)のような透明性の導電性材料のシートで形成する。例えばパリレンで形成される絶縁層(図示せず)を流体接触層と第2の流体電極34との間に形成することができる。なお、第2の電極34は波面修正器26の部分28の面が占有する領域と完全に重複する動作領域を有する。疎水性の流体接触層は波面修正器の部分28の面に完全に重複する表面積を有する。
【0041】
包囲される流体システムは第1の流体44と第2の流体46からなる。第1の流体44は有極性及び/又は導電性の流体からなる。本例では、第1の流体44を約1.37の所定の屈折率を有する液体の食塩水とする。食塩水は非食塩水よりも低い凝固点を有する。本例の第2の流体は、第2の異なる約1の屈折率を有する空気とするのが好適である。本例では空気を食塩水44の飽和蒸気と混合させて、第1の流体と第2の流体の屈折率の差を約0.4とする。別の例では、第1の流体44は約1.49の屈折率を有し、第2の流体46との屈折率の差が約0.5となる約65重量%のKSCN水溶液とする。さらに別の例では、第1の流体44をアニリンやアナタビンのような、それぞれ約1.59又は1.57の屈折率を有し、第1と第2の流体の屈折率の差が約0.6となる有極性の有機液体とする。第2の流体を空気とすることの利点は、切替可能な光学素子を気密に製造しない場合でも、その素子の性能が実質上低減されないことにある。第1の流体44と第2の流体46は2つの流体メニスカス48、49にて互いに接触する。
【0042】
切替可能な光学素子の第1の流体形状では、図6及び図7に示すように、第1流体44がチャンバー20と導管24の一部をほぼ満たす。ほぼ満たすとは、第1流体44が少なくとも波面修正器26の部分28の大部分と、少なくとも別の波面修正器36の他の部分32の大部分を覆うことを意味する。この第1の流体形状では、第1流体がチャンバー内の疎水性の流体接触層の露出面の少なくとも大部分に接触する。第1流体電極50は第1流体44で満たされる導管の一部に接触する。
【0043】
導管24は導管壁41と導管カバープレート42との間に形成される。導管24内部にその1つの表面を露出している疎水性の流体接触層38が導管カバープレートを覆い、疎水性の流体接触層は例えばAF1600で形成される。第3の流体電極40は導管カバープレート42と疎水性の流体接触層38の間にある。この電極は導電性の材料、例えば酸化インジウムスズ(ITO)で形成する。なお、第3の流体電極40の表面領域は導管24の内部の大部分と重複している。
【0044】
前記光学素子の第1の流体形状では、第2流体46は、共通の第1の流体電極50と接触する第1流体44によって満たされる部分を除く導管24をほぼ満たす。
【0045】
切替可能な光学素子の第2の流体形状では、図8、図9に示すように、第1流体44が導管24をほぼ満たす。この第2の流体形状では、第1流体44が導管の前述した部分に位置する共通の第1の流体エレクトロウェッティング電極50に接触したままとなる。この際、第1流体44は、導管の疎水性流体層38に接触する。第2流体46はこの際、この第2流体46が少なくとも波面修正器26の部分28の大部分と少なくとも別の波面修正器36の他の部分32の大部分を覆うようにチャンバー20をほぼ満たす。さらに、導管24の一部は第2流体46によって満たされる。導管24のこの部分は共通の第1の流体電極50が位置している部分の反対側の端部にある。第2の流体形状では第1の流体電極50は導管24の部分を満たす第1流体44に接触する。
【0046】
流体切替システム(図示せず)は共通の第1流体電極、第2流体電極及び第3流体電極に接続されている。この流体切替システムは切替可能な光学素子に作用し、第1と第2の流体形状を切り替えるように構成されている。第1の流体形状では、流体切替システムは共通の第1流体電極50と第2流体電極34との間に適切な値の電圧V1を印加する。印加電圧V1は切替可能なエレクトロウェッティング力を提供して、本発明に係る切替可能な光学素子に第1の流体形状をとらせ、導電性の第1流体44がほぼチャンバー20を満たすべく移動し得るようにする。電圧V1を印加することにより、チャンバー20の疎水性の流体接触層が一時的に自然に少なくとも相対的に親水性となり、従って第1流体44が優先してチャンバー20をほぼ満たすようになる。第1の流体形状では、共通の第1電極50と第3のエレクトロウェッティング電極40との間に電圧を印可しなければ、導管内の流体接触層が相対的に高い疎水性に留まることが想定される。
【0047】
切替可能な光学素子の第1の流体形状と第2の流体形状とを切り替えるために、流体切替システムは印可電圧V1をオフにし、共通の第1流体電極50と第3の流体電極40との間に適切な値の電圧V2を印加する。共通の第1流体電極50と第2の流体電極34との間には電圧は印加しない。
【0048】
切替可能な光学素子はこの際、第2の流体形状にあり、印加電圧V2によって提供される切替可能なエレクトロウェッティング力を受けて、第1流体44が導管24をほぼ満たすようになる。印加電圧V2では、導管24の疎水性の流体接触層38が今は少なくとも相対的に親水性となり、第1流体44を引き付けるようになる。第1流体44は、共通の第1流体電極50が位置する導管24の部分を満たすように移動する。前述したように、第2流体46はこの際にチャンバー20をほぼ満たすようになる。チャンバー20の疎水性の流体接触層は今は相対的に高い疎水性を呈し、第2の流体形状における第2流体の配置を補助する。
【0049】
光学素子の第1から第2の流体形状への移行中には、流体切替システムによる制御によって、流体システムの第1及び第2の流体44、46が流体システムの中を循環して流れ、各々の流体がお互いに入れ換わる。この流体の第1から第2の形状への移行中における循環流体流では、第1流体44がチャンバー20から一方の開口22を経て一方の端部へと流入する。同様に、第2流体46は導管24の他方の端部からチャンバーの他方の開口23を経てチャンバー20の中へ流入する。第2から第1の流体形状への移行の間には、逆方向に流体が循環する流れが生じる。
【0050】
このように、第1の流体形状から第2の流体形状への移行時には、第3の流体電極40と共通の第1の流体電極50との間の印加電圧V2は導電性の第1の流体44をチャンバー20の中へ引き付け、よって電気的に絶縁性の第2の流体46をチャンバー20から移動させる。さらに、チャンバー20の疎水性の流体接触層32は導電性の第1の流体44をチャンバー20から導管24内へと押し出す。第2から第1の流体形状への移行は、第1から第2の流体形状への移行状態の逆となる。
【0051】
図10及び図11は、本発明の実施例によるカメラに用いるバイナリズーム光学系の略図を示す。図10は第1ズームモード時の光学系を示し、図11は第2の異なるズームモード時の光学系を示す。
【0052】
バイナリズーム光学系は、光軸OAに沿って走行する所定の放射ビームに対して連続的に可変の焦点を提供するように構成した第1レンズを具えている。本例では、第1レンズは図1から図3を用いて説明したものと同様な流体メニスカスレンズ52とする。バイナリズーム光学系はさらに、図6から図9を用いて説明したものと同様の切替可能な光学素子54と、これ以前に説明した第1と第2の流体形状の切替用と同様の流体切替システム56とを具えている。流体メニスカスレンズ52、切替可能な光学素子54、流体切替システム56の要素と機構は前述したものと同様である。そのような要素と機構には、100を足した同様な参照番号を用いている。これらは対応する説明についても言えることである。部分128(図示せず)の面と他の部分132(図示せず)の面は両者とも非球面形とし、これらは被写体のキャプチャー画像の周囲部における歪みが最小化となるように、被写体の視野の品質を改善するバイナリズーム光学系を実現するように構成する。
【0053】
光軸OA上で、且つ流体メニスカスレンズ52と切替可能な光学素子54の間には、2つの固体レンズ58、60を含む固体レンズ群が切替可能な光学素子54の近傍と流体メニスカスレンズ52の近傍に配置されている。これら2つの固体レンズ間には光遮蔽体(図示せず)がある。固体レンズ群の一方又は双方の固体レンズ58は切替可能素子54における第1の流体144の屈折率と同様の屈折率を有する。バイナリズーム光学系は、撮像シーンである所定の物体の像をキャプチャーするように構成する。画像検出器62、例えば電荷結合素子(CCD)は、流体メニスカスレンズ52と切替可能な光学素子54が画像を担う所定の放射ビームにもたらす光学ズーム設定にて撮像シーンの像を検出してキャプチャーするように構成する。本例では切替可能な光学素子54を流体メニスカスレンズ52と画像検出器62との間に配置し、流体メニスカスレンズ52の最大光パワー範囲よりも大きい最大光パワー範囲を(その2つのモードの間で)有するようにする。
【0054】
図10を参照するに、このバイナリズーム光学系は切替可能な光学素子54が第1の流体形状にある第1ズームモードにある。第1の流体形状では、バイナリズーム光学系は相対的に高いズーム比をもたらすように構成される相対的に長い有効焦点距離を有する。流体メニスカスレンズ52から切替可能な光学素子54を光軸OAに沿って見ると、流体メニスカス108は凹形曲率を有している。第1ズームモードでは光学系は、第1ズームモードにある切替可能な光学素子54がもたらす相対的に高いズーム比に対応した第3視野α3を有する。
【0055】
図11を参照するに、バイナリズーム光学系は切替可能な光学素子54が第2の流体形状にある第2ズームモードにある。流体切替システム56は、図6〜図9を用いて先に説明した方法と同じ方法で、第1の流体形状から第2の流体形状へと切替を行う。第2の流体形状では、バイナリズーム光学系は相対的に低いズーム比をもたらすように構成される相対的に短い第2有効焦点距離を有する。この第2有効焦点距離は第1有効焦点距離よりも短い。流体メニスカスレンズ52から切替可能な光学素子54を光軸OAに沿って見ると、流体メニスカス108は凸形曲率を有する。バイナリズーム光学系はさらに、第1と第2のメニスカス電極に接続され、且つこれらの電極間に電圧を印可して、エレクトロウェッティング力を用いて流体メニスカス108の曲率を変えて可変焦点を制御するように構成した制御システム64も具えている。
【0056】
第2ズームモードでは、光学系は第4視野α4を有する。この例の第2ズームモードにてキャプチャーされる像の第4視野α4は第1ズームモードにてキャプチャーされる像の第3視野α3よりも大きい。2つのモード間の光学ズーム比は2よりも大きく、さらには3よりも大きくすることが好適である。
【0057】
バイナリズーム光学系が第1ズームモードか第2ズームモードにあるとき、制御システム62は、第1と第2のメニスカス電極間に異なる電圧を印加して流体メニスカス108の曲率を変えることで、可変焦点を変えることができる。この曲率はパワー範囲の一方の限度では凸形、パワー範囲の他方の限度では凹形となるように変えることができる。
【0058】
図12は前述した本発明による実施例のバイナリズーム光学系と同様のバイナリズーム光学系68を具えている、画像キャプチャー装置66の略図を示す。バイナリズーム光学系68のそれぞれの要素及びそれらの機構は前述したものと同様である。そのような要素及び機構には、ここでは同じ参照番号に200を足して用いるものとする。これは対応するな説明についても言えることである。この例での画像キャプチャー装置はカメラとし、これは特徴部70を含む撮像シーンである所定の物体の像を記録するように構成する。装置制御システム72はカメラ機能を制御するように構成し、これに制御システム264、流体切替システム256、電源74、画像表示システム76、画像記憶システム78、ユーザー制御システム80を接続する。
【0059】
操作中、ユーザーはユーザー制御システム80を用いてカメラ機能を制御する。ユーザーはバイナリズーム光学系68の第1ズームモード又は第2ズームモードを選択できる。装置制御システム72は流体切替システム256を制御して、前述したように、第1ズームモードでは第1の流体形状、第2ズームモードでは第2の流体形状を選択する。カメラは、第1ズームモードでは望遠ズームモードとなり相対的に狭い撮像シーンの視野を有し、第2ズームモードでは広角ズームモードとなり相対的に広い撮像シーンの視野を有する。望遠ズームモード又は広角ズームモードのカメラで、バイナリズーム光学系68が正確に画像を記憶できるようにカメラを適切に撮像シーンに向ける間に、ユーザーは画像表示システム76を見て記録すべき撮像シーンの画像の特定のズーム比を選択する。そのようにすることで、装置制御システム72は前述したように、流体メニスカスの曲率を適切に変える制御システム264を制御する。
【0060】
バイナリズーム光学系により、記録すべき画像に対し、カメラの望遠ズームモードでは相対的に高いズーム設定を、カメラの広角ズームモードでは相対的に低いズーム設定を選択することができる。 画像修正システム82はデジタルズームシステムであり、これは、望遠ズームモード又は広角ズームモードでキャプチャーされる画像に可変のデジタルズーム比を導入して、それによりさらに別のズーム設定を得ることができるように構成する。このデジタルズーム比は例えば相対的に低いズーム比の広角ズームモードでのキャプチャー画像に、又は相対的に高いズーム比の望遠ズームモードでのキャプチャー画像に導入する。これにより、相対的に低いズーム設定から相対的に高いズーム設定の間のズーム設定を有する画像を記録することができる。デジタルズームシステム82は、望遠モードで、しかも相対的に高いズーム比で記録される画像に可変デジタルズーム比を導入することも可能である。これにより、望遠ズームモードの光学ズーム比よりも高いズーム比を有する画像を記録することができる。
【0061】
前述した本発明の実施例では、バイナリズーム光学系は連続的に可変の焦点をもたらすように構成したレンズを具え、このレンズを流体メニスカスレンズとする。本発明の別の実施例では、連続的に可変の焦点をもたらすレンズを固体レンズとする。この固体レンズは、光軸OAに沿って切替可能な光学素子に対して様々の空間的位置に動かせるように配置する。このレンズはそれ自体が固定の集光力を有する。バイナリズーム光学系を具える前述したものに代わる制御システムは、レンズの空間的な位置を変えることにより可変焦点を連続的に制御すべく構成する。様々の空間的な位置は、例えば光軸OAに沿ってレンズを動かすように歯車システムを駆動するモータにより得られる。制御システムで光軸OA上のレンズの空間的な位置を適切に変えることにより、集光力及び、バイナリ光学系によりキャプチャーされる所定物体画像のズーム比を、前述したものと同様に変えることができる。
【0062】
本発明の他の例では、レンズアレイが複数の固体レンズを具え、これらのレンズが機械的アクチュエータで光軸OAに沿って独立して異なる空間的な位置に移動し得るようにすることが想定される。
【0063】
本発明のさらに別の例では、連続的に可変の焦点をもたらすように構成されるレンズを液晶レンズとすることが想定され、そのようにすれば、レンズ部材を動かすための機械的なシステムが不要になる。
【0064】
流体メニスカスレンズの様々な流体及び切替可能な光学素子は前述したものとは異なるものとすることができ、各々が異なる屈折率を各々有することも想定される。また、切替可能な光学素子の第1流体及び第2流体をそれぞれ気体及び液体とするか、又は第1及び第2流体の双方を液体とすることも想定される。
【0065】
また、例えば波面修正器や電極のような、バイナリズーム光学系の要素を形成する材料は、前述したものとは別のものとすることも想定される。種々の材料は、例えば切替可能な光学素子の波面修正器の材料は第1流体又は第2流体内で非可溶性でなければならないといった、ある種の特性に応じて選択できる。
【0066】
切替可能な光学素子の前記部分及び/又は前記他の部分の面は異なる非球面形状とするか、又はどちらも球面とすることも想定される。さらに、前記部分又は前記他の部分の面は非周期構体(NPS)又は回折格子とすることもできることが想定される。
【0067】
前述した切替可能な光学素子は流体システムを介して循環的に動作する。第1流体と第2流体の流体形状の移行中における配列及び流動に関連する切替可能な光学素子は別の構成のものも用いることもできることも想定され、例えば、メインチャンバーと1つ以上の液だめとの間に非循環性の流動を用いることができる。
【0068】
さらに別の実施例では、切替可能な光学素子を前述したものとは異なる構成とし、カバープレートの第2流体電極が別の波面修正器を具えているものと同様に、波面修正器が別の流体電極を具えることが想定される。この別の流体電極は第2流体電極に電気的に接続し、印加電圧V1を第1の流体形状で共通の第1流体電極と、第2流体電極と、前記別の流体電極との間に印加する。さらに、波面修正器の部分は例えばテフロン(登録商標)AF1600から形成される疎水性の流体接触層でうことが想定される。この層の一方の面はチャンバー内部に露出させる。この想定される実施例では、第1と第2の流体形状間の移行中に、切替可能な光学素子の構成によりチャンバーと導管との間の流体の移動が一層効率的となる。
【0069】
切替可能な光学素子の異なる可能な実施例では、流体切替システムはエレクトロウェッティング力を伴わない機構、例えば機械式ポンピング機構を用いて第1と第2の流体形状を切り替える異なる構成とすることができる。
【0070】
なお、レンズアレイを有する従来のズーム光学系に、本発明によるバイナリズーム光学系を組み合わせると、さらに別のズーム設定を有する画像をキャプチャーできる。
【0071】
本発明のバイナリズーム光学系はカメラのような画像キャプチャー装置に組み込んで操作するものとして説明したが、例えばカメラ内蔵の携帯電話や、他のカメラ内蔵の装置といった種々の画像キャプチャー装置にこのバイナリズーム光学系を組み込むことが想定される。上記それぞれの実施例は、本発明の模範的な例と解されるべきである。本発明のさらなる実施形態もまた想定される。1つの実施例に関連して説明した特徴部は単独で、又は他の前述した特徴と組み合わせて用いることもでき、さらに他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせたり、又は他の任意の実施例を組み合わせて用いたりすることができる。さらに、本発明は請求の範囲を逸脱することなく、幾多の変更を加えうることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来技術による可変焦点レンズの概略図である。
【図2】従来技術による可変焦点レンズの概略図である。
【図3】従来技術による可変焦点レンズの概略図である。
【図4】本発明によらない2つの流体メニスカスレンズを有するズーム光学系を示す図である。
【図5】本発明によらない2つの流体メニスカスレンズを有するズーム光学系を示す図である。
【図6】本発明による第1の流体形状における切替可能な光学素子の(図7のA−A線上での)概略断面図である。
【図7】図6のB−B線上での概略断面図である。
【図8】本発明による第2の流体形状における切替可能な光学素子の(図9のC−C線上での)概略断面図である。
【図9】図8のD−D線上での概略断面図である。
【図10】本発明の一実施例による第1モードにおける光学系の概略図である。
【図11】本発明の一実施例による第2モードにおける光学系の概略図である。
【図12】本発明の一実施例によるズーム光学系を具えている画像キャプチャー装置の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、これに限定されるものではないが、画像キャプチャー装置に使用するズーム光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカメラのような画像キャプチャー装置を用いて物体の像をキャプチャーするときにはしばしば、その像に対してズーム設定を変えられることが望まれる。カメラと物体との間の距離が一定のままの場合、高ズーム比では高倍率、且つ狭視野で物体の像をキャプチャーできる。低ズーム比では低倍率、且つ広視野で物体の画像をキャプチャーできる。カメラの例では、高ズーム比は望遠レンズ設定の特性であり、低ズーム比は広角レンズ設定の特性である。
【0003】
ズーム比が異なるとズーム光学系の異なる有効焦点距離を要する。望遠レンズ設定では有効焦点距離は相対的に長く、広角レンズ設定では有効焦点距離は相対的に短くなる。
【0004】
像を異なるズーム設定でキャプチャーするためには、物体の像に焦点を合わせたまま、カメラのズーム光学系の有効焦点距離を変えなければならない。このようなズーム光学系は、可変焦点をもたらす少なくとも2個のレンズを用いて構成することができる。
【0005】
既知のズーム光学系は共通光路に沿って並ぶ固体レンズのアレイを具えている。光路に沿ってこれらのレンズの位置を変えることにより、像に焦点を合わせたまま異なる有効焦点距離を得ることができ、したがって異なるズーム設定を有する画像をキャプチャーできる。しかしながら、このタイプのズーム光学系は比較的大きく、機械的にも複雑である。個々のレンズの移動は手動又は自動のどちらでも行えるが、これらの方法は一般的に比較的高価で、堅牢性に欠ける。このようなズーム光学系によるズーム比の範囲は、個々のレンズの集光力と光路に沿ったレンズ間の取り得る距離を含むパラメータに依存する。この種のズーム光学系におけるズーム比範囲の上限値が大きくなると、一般的にズーム光学系の容積と複雑さが増すことになる。
【0006】
望遠と広角ズーム機能の両方を有する単独のズーム光学系よりはむしろ、異なるズーム比範囲を得るためにカメラレンズを望遠系と広角系との間で取り替える必要がよくある。これは比較的時間がかかり、不便な手法であり、カメラユーザーはカメラに加えて別のレンズを持ち運ばなければならない。
【0007】
国際公開第03/069380号公報には、流体メニスカスレンズが記載されている。このレンズは第1の流体と第2の流体を分離し、曲率をもつ流体メニスカスを有する。この曲率を変えることでレンズの焦点距離と画像の焦点を変えることができる。レンズを様々な方向に向けて用いる用途では、これらの流体は不要な重力の影響を避けるために密度を整合させることが好適である。そのため、水と油のような、密度が釣り合う2つの流体が用いられている。
【0008】
このような2つの流体メニスカスレンズは異なるズーム比を有する画像をキャプチャーするためにズーム光学系に組み込むことができる。広い範囲のズーム比を実現するためには、各流体メニスカスにおいて大きく光パワーが変化することが求められる。2つの流体の屈折率に大きな差異がなく、さらに曲率変化の程度が制限されているため、流体メニスカスレンズの光パワーの範囲は比較的小さい。このことは、ズーム光学系が提供し得るズーム比の範囲を制限することになる。特に、ズームレンズシステムにおける1つのレンズ部品(一般的に画像キャプチャーデバイスの最近傍にある)はズーミング中に最大の光パワー範囲を要するので、前記1つのレンズ部品として用いる流体メニスカスレンズにおける光パワー範囲の相対的な制限が、ズーミング量を制約することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、光学系に必要な機械的な部品を減らしながら、改良したズーム機能を有する画像キャプチャー用のズーム光学系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、放射ビームに対して可変ズーム設定を与えるべく配置され、第1モードと第2モードを有する切替可能な光学素子からなる、レンズシステムを具えているズーム光学系において、前記切替可能な光学素子が第1の流体と、第2の流体と、前記放射ビームを通過させるように配置した部分を有する波面修正器とを含み、第1モードでは、前記切替可能な光学素子が第1の流体形状を有し、この第1の流体形状では前記部分が第1の流体でほぼ覆われ、第2モードでは、前記切替可能な光学素子が第2の異なる流体形状を有し、この第2の流体形状では、前記部分が第2の流体でほぼ覆われるようにしたことを特徴とするズーム光学系が提供される。
【0011】
本発明によればズーム光学系を比較的簡単で、小形で、安価で堅牢に製造することができる。このズーム光学系は、第1の流体配置において第1の有効焦点距離、第2の流体配置において第2の有効焦点距離を有し、前記第1及び第2の有効焦点距離が各自異なるズーム設定をもたらすように構成するのが好適である。
【0012】
第1モードにある光学素子では、前記レンズシステムは第1の光学ズーム設定を有する。第2モードにある光学素子では、前記レンズシステムはズーム比が増した第2の光学ズーム設定を有する。
【0013】
このレンズシステムには、連続的に可変の焦点を有する第1レンズを含めるのが好適である。第1ズーム設定又は第2ズーム設定を有する画像の焦点が正確に合うように第1レンズの焦点を変えることができる。2つのズーム設定間にて切替を行う場合には、第1レンズの焦点を段階的に変えて、正確なズーム機能をもたらすようにもする。従って、この光学系は2つの別個の光学ズーム設定を有するバイナリズーム光学系となる。
【0014】
2つのズーム設定の間にさらに追加のズーム比を設定するために、デジタルズーム機能を用いることができる。本発明の1つの実施形態では、画像キャプチャー装置が前記光学系を具え、さらに、第1モードでキャプチャーされる画像及び/又は第2モードでキャプチャーされる画像にデジタルズーム比を導入するように構成したデジタルズームシステムを具えるようにする。
【0015】
切替可能な光学素子は、第1の流体配置では、第1と第2の流体電極間に第1の電圧を印加して切替可能なエレクトロウェッティング力(electrowetting force)を提供し、第2の流体配置では、第1と第3の流体電極間に第2の異なる電圧を印加して異なる切替可能なエレクトロウェッティング力を提供するように構成するのが好適である。
【0016】
第1の流体は液体とし、第2の流体は気体とするのが好適である。ここで言う気体とは、液体の蒸気と気体との混合又は気体のみの場合を含む。これは、2つの流体の密度を整合させる必要がないので、切替可能な光学素子を様々な方向に向けて用いる場合でも可能であり、また、2つの流体間の屈折率の差を相対的に大きくするのに有利である。
【0017】
第1レンズは流体メニスカスレンズ形式のものとすることができる。本実施形態では、切替可能な光学素子が第1レンズの最大光パワー範囲よりも大きい最大光パワー範囲(その2者のモードの間で)を有するようにするのが好適である。このような構成にすれば、切替可能な光学素子をズーミング中にレンズシステムに最大光パワー範囲を要するレンズ部品として用いることができるため、ズーミング量は、流体メニスカスレンズの相対的に制限される光パワー範囲によって制約されなくなる。
【0018】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の添付図面を参照しての本発明の好適な実施例の説明により明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜図3は、従来技術による可変焦点レンズを示す。この可変焦点レンズは、毛細管を形成する円柱形の第1メニスカス電極2を具え、透明の前方素子3と透明の背面素子4によって2つの異なる流体を収容する流体チャンバーを形成するように封止められる流体メニスカスレンズである。第1のメニスカス電極2は毛細管の内壁上に塗布した導電性被膜とすることができる。
【0020】
前記2つの異なる流体は、ここでは以降「油」と称する、例えばシリコーンオイルやアルカンのような電気的に絶縁性の第1液体Aと、例えば食塩水を含む水のような導電性の第2液体Bとの2つの非混和性液体からなる。2つの液体は等しい密度を有するように構成して、向きとは無関係に、すなわち2つの液体間の重力の影響に依存することなく、メニスカスの形状を制御できるようにするのが好適である。これは第1液体の成分を適切に選択することにより実現できる。例えば、アルカン又はシリコーンオイルは分子成分を加えてその密度を増やして、食塩水と等しくなるように改質することができる。
【0021】
使用する油の選択に依存して、油の屈折率は1.25〜1.85の範囲内で変化する。同様に、加える食塩の量に依存して、食塩水の屈折率は1.33〜1.60の範囲内で変化する。流体は、第1液体Aが第2液体Bよりも高い屈折率を持つように選択する。
【0022】
第1のメニスカス電極2はその内径が一般的には1mm〜20mmとなるような円柱とする。第1のメニスカス電極2は金属製で、例えばパリレンのような絶縁層5で表面を覆う。絶縁層は50nm〜100μmの厚さを有し、一般的には1μm〜10μmの範囲の値をとる。絶縁層の表面を、流体接触層6で覆う。この流体接触層6は、流体チャンバーの円柱壁面とのメニスカスの接触角におけるヒステリシスを低減する。前記流体接触層は、デュポン社製のテフロン(登録商標)AF1600のようなアモルファスフルオロカーボンで形成することが好適である。流体接触層6は5nm〜50μmの厚さを有する。このAF1600被膜は第1メニスカス電極2を継続的に浸漬塗布することにより製造することができる。第1のメニスカス電極2の円柱側面は円柱電極とほぼ平行であるため、AF1600被膜は厚さがほぼ一様な均一な層を形成する。また浸漬塗布は電極をその軸方向に沿って浸漬溶液へ出し入れして浸すことにより行う。パリレン被膜は化学蒸着を用いて塗布できる。第1と第2のメニスカス電極7の間に電圧が印加されていないときは、メニスカス8と流体接触角6の交点の両側にて第2の流体による流体接触層の湿潤性がほぼ等しくなる。
【0023】
第2のメニスカス電極7は環状であり、これは流体チャンバーの一端、この場合は、後方素子に隣接して構成される。第2のメニスカス電極7の少なくとも一部分を流体チャンバー内に配置して、その電極が第2の流体Bに作用するようする。
【0024】
2つの流体AとBは非混和性であるため、曲率を有する流体メニスカス8により分離される2つの流体に分離する傾向がある。第1と第2のメニスカス電極間に電圧が印加されていない場合、流体接触層は第2の流体Bよりも第1の流体Aに対して高い湿潤性を呈する。メニスカスエレクトロウェッチング力により、第2の流体Bの湿潤性は第1メニスカス電極2と第2メニスカス電極7との間への電圧の付与のもとで変化し、3つの相ライン(流体接触層6と2つの液体A及びBとの間の接触ライン)でのメニスカスの接触角を変えていく。この流体メニスカスレンズの可変焦点は、印加電圧に依存して変化し得る流体メニスカスの曲率の変動分を含む。
【0025】
図1を参照するに、例えば0V〜20Vの低い電圧V1をメニスカス電極間に印加すると、メニスカスは第1曲率のメニスカス形状をとる。この形状で、流体B内で測定されるメニスカスと流体接触層6との間の初期接触角θ1は、例えば約140°になる。第1流体Aが第2流体Bよりも高い屈折率であるため、ここでメニスカスレンズと称するメニスカスが形成するレンズは、この形状で相対的に高い負のパワーを有する。
【0026】
メニスカス形状の凹面度を減らすためには、第1と第2のメニスカス電極間に高い値の電圧を印加する。図2を参照するに、絶縁層の厚さに依存して、例えば20V〜150Vの中間値の電圧V2をメニスカス電極間に印加すると、メニスカスは、図1のメニスカスに比べて大きい曲率を有する第2凹面のメニスカス形状をとる。この形状では、第1流体Aと流体接触層6との間の中間接触角θ2は例えば約100°になる。第1流体Aが第2流体Bよりも高い屈折率であるため、メニスカスレンズはこの形状では相対的に低い負のパワーを有する。
【0027】
凸面のメニスカス形状を作るためには、さらに高い値の電圧を第1と第2のメニスカス電極間に印加する。図3を参照するに、例えば150V〜200Vの相対的に高い電圧V3をメニスカス電極間に印加すると、メニスカスは凸面メニスカスの形状をとる。この形状では、第1流体Aと流体接触層6との間の最大接触角θ3が例えば約60°になる。第1流体Aが第2流体Bよりも高い屈折率であるため、メニスカスレンズはこの形状では正のパワーを有する。
【0028】
なお、図3の形状の実現が相対的に高いパワーを用いて可能であるも、前述したようなレンズを含むデバイスは、前述した範囲の低く中間のパワーのみを用いるように適合させるのが好適である。言い換えれば、印加する電圧は絶縁層における電界強度が20V/μmよりも小さくなるように制限し、流体接触層を帯電させ、従ってこの流体接触層を劣化させる過度な電圧は用いないようにする。
【0029】
さらに、最初の、低い電圧での形状は液体AとBの選択に依存して、即ちそれらの表面張力に依存して変化する。高表面張力の油を選択することにより、及び/又はエチレングリコールなどの成分を、表面張力を低減する食塩水に加えることにより、初期の接触角を小さくすることができる。この場合、レンズは図2の形状に対応する低光パワーの形状及び、図3の形状に対応する中間パワーの形状をとることができる。いずれの場合にも、低パワーの形状ではメニスカスは凹面のままであり、相対的に広い範囲のレンズパワーを、過度の電圧を用いることなく発生させることができる。
【0030】
図4及び図5は図1〜図3を用いて説明した流体メニスカスレンズの2つを具えるように構成できるズーム光学系を示す。
【0031】
図示した光学系では、第1流体メニスカスレンズ9と第2流体メニスカスレンズ10を光軸OAに沿って配置する。光軸OA上にあって、且つ第1と第2の流体メニスカスレンズ9と10間にはまた、光軸OAに沿って走行する所定の放射ビームの波面修正を補助する複数の光学素子11がある。この光学系は撮像シーンである所定物体の像をキャプチャーするように構成する。画像検出器12は、合焦機能と画像を担う所定の放射ビームへのズーム比導入に続いて、第1と第2の流体メニスカスレンズ9、10により撮像シーンの画像を検出するように構成する。本実施例では、画像検出器12を電荷結合素子(CCD)とする。
【0032】
ズーム範囲の、ある制限時での光学系を示す図4を参照するに、光軸OAに沿って見ると、この光学系は第1視野α1を有し、第1流体メニスカスレンズ9が凹形流体メニスカス13を有し、第2流体メニスカスレンズ10が凹形流体メニスカス14を有している。図4は、撮像シーンのキャプチャー画像に光学系が導入した、本光学系のズーム比範囲の最高限度におけるズーム設定を図解したものである。画像はCCD12によりキャプチャーされる。
【0033】
図5を参照し、光軸OAに沿って見ると、光学系は、CCDに対する視野角がα2の第2視野を有し、第1流体メニスカスレンズ9が凸面の流体メニスカス13を有し、第2流体メニスカスレンズ10が凸面の流体メニスカス14を有する。図5は、物体のキャプチャー画像に光学系が導入した、本光学系のズーム比範囲の最低限度におけるズーム設定を図解したものである。
【0034】
図4及び図5に示した光学系のズーム比は制限される。一般的な装置では、最高限度におけるズーム比は最低限度におけるキャプチャー画像のズーム比より約2倍大きい。従って、ズーム比差における上限値は約2倍で、これは比較的小さい。
【0035】
図6及び図7を参照するに、本発明の実施例による切替可能な光学素子はチャンバー20を具え、このチャンバーは2つの開口22、23を経て2つの対向する端部を有する導管24に流動的に連結されている。チャンバーの第1開口22は導管の第1端部に流動的に連結され、さらにチャンバーの第2開口23は導管の第2端部に流動的に連結されて、流体システムに対する流体密封包囲体を形成する。チャンバー20の内部に露出している面を有する部分28を具える波面修正器26がチャンバー20の一方の側面を包囲する。この波面修正器は例えば水性液に非可溶性のシクロオレフィンコポリマー(COC)であるゼオノックス(登録商標)のような透明の材料で形成する。これは例えば射出成型処理などで形成することができる。波面修正器26の部分28の面は実質的に非球面で、光軸OAを中心に回転対称とする。
【0036】
チャンバー20は別の波面修正器36を構成するカバープレートでさらに包囲し、この波面修正器は、ゼオノックス(登録商標)の例と同様の透明の材料で形成する他の部分32を有する。この他の部分32は透明の、例えばデュポン社製のテフロン(登録商標)AF1600で形成する疎水性の流体接触層で覆う。この疎水性の流体接触層の一方の表面はチャンバー20の内部に露出させる。
【0037】
前記他の部分32は非球面で光軸OAを中心に回転対称な面を有する。この他の部分32の面は部分28の面の非球面曲率とは異なる非球面曲率を有する。
【0038】
光軸OAに沿って走行する所定の放射ビームは部分28及び他の部分32を通過するように配置する。所定の放射ビームに対し、波面修正器26は第1の波面修正を行い、別の波面修正器36は第2の異なる波面修正を行う。第2の波面修正は第1の波面修正を補完するように行う。
【0039】
共通の第1の流体電極50は例えば金属製で、チャンバーの一方の開口22の近くの導管24内に位置させる。
【0040】
第2の流体電極34はカバープレート36と疎水性の流体接触層との間にある。この第2の流体電極34は例えば酸化インジウムスズ(ITO)のような透明性の導電性材料のシートで形成する。例えばパリレンで形成される絶縁層(図示せず)を流体接触層と第2の流体電極34との間に形成することができる。なお、第2の電極34は波面修正器26の部分28の面が占有する領域と完全に重複する動作領域を有する。疎水性の流体接触層は波面修正器の部分28の面に完全に重複する表面積を有する。
【0041】
包囲される流体システムは第1の流体44と第2の流体46からなる。第1の流体44は有極性及び/又は導電性の流体からなる。本例では、第1の流体44を約1.37の所定の屈折率を有する液体の食塩水とする。食塩水は非食塩水よりも低い凝固点を有する。本例の第2の流体は、第2の異なる約1の屈折率を有する空気とするのが好適である。本例では空気を食塩水44の飽和蒸気と混合させて、第1の流体と第2の流体の屈折率の差を約0.4とする。別の例では、第1の流体44は約1.49の屈折率を有し、第2の流体46との屈折率の差が約0.5となる約65重量%のKSCN水溶液とする。さらに別の例では、第1の流体44をアニリンやアナタビンのような、それぞれ約1.59又は1.57の屈折率を有し、第1と第2の流体の屈折率の差が約0.6となる有極性の有機液体とする。第2の流体を空気とすることの利点は、切替可能な光学素子を気密に製造しない場合でも、その素子の性能が実質上低減されないことにある。第1の流体44と第2の流体46は2つの流体メニスカス48、49にて互いに接触する。
【0042】
切替可能な光学素子の第1の流体形状では、図6及び図7に示すように、第1流体44がチャンバー20と導管24の一部をほぼ満たす。ほぼ満たすとは、第1流体44が少なくとも波面修正器26の部分28の大部分と、少なくとも別の波面修正器36の他の部分32の大部分を覆うことを意味する。この第1の流体形状では、第1流体がチャンバー内の疎水性の流体接触層の露出面の少なくとも大部分に接触する。第1流体電極50は第1流体44で満たされる導管の一部に接触する。
【0043】
導管24は導管壁41と導管カバープレート42との間に形成される。導管24内部にその1つの表面を露出している疎水性の流体接触層38が導管カバープレートを覆い、疎水性の流体接触層は例えばAF1600で形成される。第3の流体電極40は導管カバープレート42と疎水性の流体接触層38の間にある。この電極は導電性の材料、例えば酸化インジウムスズ(ITO)で形成する。なお、第3の流体電極40の表面領域は導管24の内部の大部分と重複している。
【0044】
前記光学素子の第1の流体形状では、第2流体46は、共通の第1の流体電極50と接触する第1流体44によって満たされる部分を除く導管24をほぼ満たす。
【0045】
切替可能な光学素子の第2の流体形状では、図8、図9に示すように、第1流体44が導管24をほぼ満たす。この第2の流体形状では、第1流体44が導管の前述した部分に位置する共通の第1の流体エレクトロウェッティング電極50に接触したままとなる。この際、第1流体44は、導管の疎水性流体層38に接触する。第2流体46はこの際、この第2流体46が少なくとも波面修正器26の部分28の大部分と少なくとも別の波面修正器36の他の部分32の大部分を覆うようにチャンバー20をほぼ満たす。さらに、導管24の一部は第2流体46によって満たされる。導管24のこの部分は共通の第1の流体電極50が位置している部分の反対側の端部にある。第2の流体形状では第1の流体電極50は導管24の部分を満たす第1流体44に接触する。
【0046】
流体切替システム(図示せず)は共通の第1流体電極、第2流体電極及び第3流体電極に接続されている。この流体切替システムは切替可能な光学素子に作用し、第1と第2の流体形状を切り替えるように構成されている。第1の流体形状では、流体切替システムは共通の第1流体電極50と第2流体電極34との間に適切な値の電圧V1を印加する。印加電圧V1は切替可能なエレクトロウェッティング力を提供して、本発明に係る切替可能な光学素子に第1の流体形状をとらせ、導電性の第1流体44がほぼチャンバー20を満たすべく移動し得るようにする。電圧V1を印加することにより、チャンバー20の疎水性の流体接触層が一時的に自然に少なくとも相対的に親水性となり、従って第1流体44が優先してチャンバー20をほぼ満たすようになる。第1の流体形状では、共通の第1電極50と第3のエレクトロウェッティング電極40との間に電圧を印可しなければ、導管内の流体接触層が相対的に高い疎水性に留まることが想定される。
【0047】
切替可能な光学素子の第1の流体形状と第2の流体形状とを切り替えるために、流体切替システムは印可電圧V1をオフにし、共通の第1流体電極50と第3の流体電極40との間に適切な値の電圧V2を印加する。共通の第1流体電極50と第2の流体電極34との間には電圧は印加しない。
【0048】
切替可能な光学素子はこの際、第2の流体形状にあり、印加電圧V2によって提供される切替可能なエレクトロウェッティング力を受けて、第1流体44が導管24をほぼ満たすようになる。印加電圧V2では、導管24の疎水性の流体接触層38が今は少なくとも相対的に親水性となり、第1流体44を引き付けるようになる。第1流体44は、共通の第1流体電極50が位置する導管24の部分を満たすように移動する。前述したように、第2流体46はこの際にチャンバー20をほぼ満たすようになる。チャンバー20の疎水性の流体接触層は今は相対的に高い疎水性を呈し、第2の流体形状における第2流体の配置を補助する。
【0049】
光学素子の第1から第2の流体形状への移行中には、流体切替システムによる制御によって、流体システムの第1及び第2の流体44、46が流体システムの中を循環して流れ、各々の流体がお互いに入れ換わる。この流体の第1から第2の形状への移行中における循環流体流では、第1流体44がチャンバー20から一方の開口22を経て一方の端部へと流入する。同様に、第2流体46は導管24の他方の端部からチャンバーの他方の開口23を経てチャンバー20の中へ流入する。第2から第1の流体形状への移行の間には、逆方向に流体が循環する流れが生じる。
【0050】
このように、第1の流体形状から第2の流体形状への移行時には、第3の流体電極40と共通の第1の流体電極50との間の印加電圧V2は導電性の第1の流体44をチャンバー20の中へ引き付け、よって電気的に絶縁性の第2の流体46をチャンバー20から移動させる。さらに、チャンバー20の疎水性の流体接触層32は導電性の第1の流体44をチャンバー20から導管24内へと押し出す。第2から第1の流体形状への移行は、第1から第2の流体形状への移行状態の逆となる。
【0051】
図10及び図11は、本発明の実施例によるカメラに用いるバイナリズーム光学系の略図を示す。図10は第1ズームモード時の光学系を示し、図11は第2の異なるズームモード時の光学系を示す。
【0052】
バイナリズーム光学系は、光軸OAに沿って走行する所定の放射ビームに対して連続的に可変の焦点を提供するように構成した第1レンズを具えている。本例では、第1レンズは図1から図3を用いて説明したものと同様な流体メニスカスレンズ52とする。バイナリズーム光学系はさらに、図6から図9を用いて説明したものと同様の切替可能な光学素子54と、これ以前に説明した第1と第2の流体形状の切替用と同様の流体切替システム56とを具えている。流体メニスカスレンズ52、切替可能な光学素子54、流体切替システム56の要素と機構は前述したものと同様である。そのような要素と機構には、100を足した同様な参照番号を用いている。これらは対応する説明についても言えることである。部分128(図示せず)の面と他の部分132(図示せず)の面は両者とも非球面形とし、これらは被写体のキャプチャー画像の周囲部における歪みが最小化となるように、被写体の視野の品質を改善するバイナリズーム光学系を実現するように構成する。
【0053】
光軸OA上で、且つ流体メニスカスレンズ52と切替可能な光学素子54の間には、2つの固体レンズ58、60を含む固体レンズ群が切替可能な光学素子54の近傍と流体メニスカスレンズ52の近傍に配置されている。これら2つの固体レンズ間には光遮蔽体(図示せず)がある。固体レンズ群の一方又は双方の固体レンズ58は切替可能素子54における第1の流体144の屈折率と同様の屈折率を有する。バイナリズーム光学系は、撮像シーンである所定の物体の像をキャプチャーするように構成する。画像検出器62、例えば電荷結合素子(CCD)は、流体メニスカスレンズ52と切替可能な光学素子54が画像を担う所定の放射ビームにもたらす光学ズーム設定にて撮像シーンの像を検出してキャプチャーするように構成する。本例では切替可能な光学素子54を流体メニスカスレンズ52と画像検出器62との間に配置し、流体メニスカスレンズ52の最大光パワー範囲よりも大きい最大光パワー範囲を(その2つのモードの間で)有するようにする。
【0054】
図10を参照するに、このバイナリズーム光学系は切替可能な光学素子54が第1の流体形状にある第1ズームモードにある。第1の流体形状では、バイナリズーム光学系は相対的に高いズーム比をもたらすように構成される相対的に長い有効焦点距離を有する。流体メニスカスレンズ52から切替可能な光学素子54を光軸OAに沿って見ると、流体メニスカス108は凹形曲率を有している。第1ズームモードでは光学系は、第1ズームモードにある切替可能な光学素子54がもたらす相対的に高いズーム比に対応した第3視野α3を有する。
【0055】
図11を参照するに、バイナリズーム光学系は切替可能な光学素子54が第2の流体形状にある第2ズームモードにある。流体切替システム56は、図6〜図9を用いて先に説明した方法と同じ方法で、第1の流体形状から第2の流体形状へと切替を行う。第2の流体形状では、バイナリズーム光学系は相対的に低いズーム比をもたらすように構成される相対的に短い第2有効焦点距離を有する。この第2有効焦点距離は第1有効焦点距離よりも短い。流体メニスカスレンズ52から切替可能な光学素子54を光軸OAに沿って見ると、流体メニスカス108は凸形曲率を有する。バイナリズーム光学系はさらに、第1と第2のメニスカス電極に接続され、且つこれらの電極間に電圧を印可して、エレクトロウェッティング力を用いて流体メニスカス108の曲率を変えて可変焦点を制御するように構成した制御システム64も具えている。
【0056】
第2ズームモードでは、光学系は第4視野α4を有する。この例の第2ズームモードにてキャプチャーされる像の第4視野α4は第1ズームモードにてキャプチャーされる像の第3視野α3よりも大きい。2つのモード間の光学ズーム比は2よりも大きく、さらには3よりも大きくすることが好適である。
【0057】
バイナリズーム光学系が第1ズームモードか第2ズームモードにあるとき、制御システム62は、第1と第2のメニスカス電極間に異なる電圧を印加して流体メニスカス108の曲率を変えることで、可変焦点を変えることができる。この曲率はパワー範囲の一方の限度では凸形、パワー範囲の他方の限度では凹形となるように変えることができる。
【0058】
図12は前述した本発明による実施例のバイナリズーム光学系と同様のバイナリズーム光学系68を具えている、画像キャプチャー装置66の略図を示す。バイナリズーム光学系68のそれぞれの要素及びそれらの機構は前述したものと同様である。そのような要素及び機構には、ここでは同じ参照番号に200を足して用いるものとする。これは対応するな説明についても言えることである。この例での画像キャプチャー装置はカメラとし、これは特徴部70を含む撮像シーンである所定の物体の像を記録するように構成する。装置制御システム72はカメラ機能を制御するように構成し、これに制御システム264、流体切替システム256、電源74、画像表示システム76、画像記憶システム78、ユーザー制御システム80を接続する。
【0059】
操作中、ユーザーはユーザー制御システム80を用いてカメラ機能を制御する。ユーザーはバイナリズーム光学系68の第1ズームモード又は第2ズームモードを選択できる。装置制御システム72は流体切替システム256を制御して、前述したように、第1ズームモードでは第1の流体形状、第2ズームモードでは第2の流体形状を選択する。カメラは、第1ズームモードでは望遠ズームモードとなり相対的に狭い撮像シーンの視野を有し、第2ズームモードでは広角ズームモードとなり相対的に広い撮像シーンの視野を有する。望遠ズームモード又は広角ズームモードのカメラで、バイナリズーム光学系68が正確に画像を記憶できるようにカメラを適切に撮像シーンに向ける間に、ユーザーは画像表示システム76を見て記録すべき撮像シーンの画像の特定のズーム比を選択する。そのようにすることで、装置制御システム72は前述したように、流体メニスカスの曲率を適切に変える制御システム264を制御する。
【0060】
バイナリズーム光学系により、記録すべき画像に対し、カメラの望遠ズームモードでは相対的に高いズーム設定を、カメラの広角ズームモードでは相対的に低いズーム設定を選択することができる。 画像修正システム82はデジタルズームシステムであり、これは、望遠ズームモード又は広角ズームモードでキャプチャーされる画像に可変のデジタルズーム比を導入して、それによりさらに別のズーム設定を得ることができるように構成する。このデジタルズーム比は例えば相対的に低いズーム比の広角ズームモードでのキャプチャー画像に、又は相対的に高いズーム比の望遠ズームモードでのキャプチャー画像に導入する。これにより、相対的に低いズーム設定から相対的に高いズーム設定の間のズーム設定を有する画像を記録することができる。デジタルズームシステム82は、望遠モードで、しかも相対的に高いズーム比で記録される画像に可変デジタルズーム比を導入することも可能である。これにより、望遠ズームモードの光学ズーム比よりも高いズーム比を有する画像を記録することができる。
【0061】
前述した本発明の実施例では、バイナリズーム光学系は連続的に可変の焦点をもたらすように構成したレンズを具え、このレンズを流体メニスカスレンズとする。本発明の別の実施例では、連続的に可変の焦点をもたらすレンズを固体レンズとする。この固体レンズは、光軸OAに沿って切替可能な光学素子に対して様々の空間的位置に動かせるように配置する。このレンズはそれ自体が固定の集光力を有する。バイナリズーム光学系を具える前述したものに代わる制御システムは、レンズの空間的な位置を変えることにより可変焦点を連続的に制御すべく構成する。様々の空間的な位置は、例えば光軸OAに沿ってレンズを動かすように歯車システムを駆動するモータにより得られる。制御システムで光軸OA上のレンズの空間的な位置を適切に変えることにより、集光力及び、バイナリ光学系によりキャプチャーされる所定物体画像のズーム比を、前述したものと同様に変えることができる。
【0062】
本発明の他の例では、レンズアレイが複数の固体レンズを具え、これらのレンズが機械的アクチュエータで光軸OAに沿って独立して異なる空間的な位置に移動し得るようにすることが想定される。
【0063】
本発明のさらに別の例では、連続的に可変の焦点をもたらすように構成されるレンズを液晶レンズとすることが想定され、そのようにすれば、レンズ部材を動かすための機械的なシステムが不要になる。
【0064】
流体メニスカスレンズの様々な流体及び切替可能な光学素子は前述したものとは異なるものとすることができ、各々が異なる屈折率を各々有することも想定される。また、切替可能な光学素子の第1流体及び第2流体をそれぞれ気体及び液体とするか、又は第1及び第2流体の双方を液体とすることも想定される。
【0065】
また、例えば波面修正器や電極のような、バイナリズーム光学系の要素を形成する材料は、前述したものとは別のものとすることも想定される。種々の材料は、例えば切替可能な光学素子の波面修正器の材料は第1流体又は第2流体内で非可溶性でなければならないといった、ある種の特性に応じて選択できる。
【0066】
切替可能な光学素子の前記部分及び/又は前記他の部分の面は異なる非球面形状とするか、又はどちらも球面とすることも想定される。さらに、前記部分又は前記他の部分の面は非周期構体(NPS)又は回折格子とすることもできることが想定される。
【0067】
前述した切替可能な光学素子は流体システムを介して循環的に動作する。第1流体と第2流体の流体形状の移行中における配列及び流動に関連する切替可能な光学素子は別の構成のものも用いることもできることも想定され、例えば、メインチャンバーと1つ以上の液だめとの間に非循環性の流動を用いることができる。
【0068】
さらに別の実施例では、切替可能な光学素子を前述したものとは異なる構成とし、カバープレートの第2流体電極が別の波面修正器を具えているものと同様に、波面修正器が別の流体電極を具えることが想定される。この別の流体電極は第2流体電極に電気的に接続し、印加電圧V1を第1の流体形状で共通の第1流体電極と、第2流体電極と、前記別の流体電極との間に印加する。さらに、波面修正器の部分は例えばテフロン(登録商標)AF1600から形成される疎水性の流体接触層でうことが想定される。この層の一方の面はチャンバー内部に露出させる。この想定される実施例では、第1と第2の流体形状間の移行中に、切替可能な光学素子の構成によりチャンバーと導管との間の流体の移動が一層効率的となる。
【0069】
切替可能な光学素子の異なる可能な実施例では、流体切替システムはエレクトロウェッティング力を伴わない機構、例えば機械式ポンピング機構を用いて第1と第2の流体形状を切り替える異なる構成とすることができる。
【0070】
なお、レンズアレイを有する従来のズーム光学系に、本発明によるバイナリズーム光学系を組み合わせると、さらに別のズーム設定を有する画像をキャプチャーできる。
【0071】
本発明のバイナリズーム光学系はカメラのような画像キャプチャー装置に組み込んで操作するものとして説明したが、例えばカメラ内蔵の携帯電話や、他のカメラ内蔵の装置といった種々の画像キャプチャー装置にこのバイナリズーム光学系を組み込むことが想定される。上記それぞれの実施例は、本発明の模範的な例と解されるべきである。本発明のさらなる実施形態もまた想定される。1つの実施例に関連して説明した特徴部は単独で、又は他の前述した特徴と組み合わせて用いることもでき、さらに他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせたり、又は他の任意の実施例を組み合わせて用いたりすることができる。さらに、本発明は請求の範囲を逸脱することなく、幾多の変更を加えうることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来技術による可変焦点レンズの概略図である。
【図2】従来技術による可変焦点レンズの概略図である。
【図3】従来技術による可変焦点レンズの概略図である。
【図4】本発明によらない2つの流体メニスカスレンズを有するズーム光学系を示す図である。
【図5】本発明によらない2つの流体メニスカスレンズを有するズーム光学系を示す図である。
【図6】本発明による第1の流体形状における切替可能な光学素子の(図7のA−A線上での)概略断面図である。
【図7】図6のB−B線上での概略断面図である。
【図8】本発明による第2の流体形状における切替可能な光学素子の(図9のC−C線上での)概略断面図である。
【図9】図8のD−D線上での概略断面図である。
【図10】本発明の一実施例による第1モードにおける光学系の概略図である。
【図11】本発明の一実施例による第2モードにおける光学系の概略図である。
【図12】本発明の一実施例によるズーム光学系を具えている画像キャプチャー装置の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射ビームに対して可変ズーム設定を与えるべく配置され、第1モードと第2モードを有する切替可能な光学素子からなる、レンズシステムを具えているズーム光学系において、
前記切替可能な光学素子が第1の流体と、第2の流体と、前記放射ビームを通過させるように配置した部分を有する波面修正器とを含み、
第1モードでは、前記切替可能な光学素子が第1の流体形状を有し、この第1の流体形状では前記部分が第1の流体でほぼ覆われ、
第2モードでは、前記切替可能な光学素子が第2の異なる流体形状を有し、この第2の流体形状では、前記部分が第2の流体でほぼ覆われる、
ようにしたことを特徴とするズーム光学系。
【請求項2】
第1の流体を液体とし、且つ第2の流体を気体とする請求項1に記載のズーム光学系。
【請求項3】
前記切替可能な光学素子が共通の第1流体電極と、第2の異なる流体電極と、第3の異なる流体電極とを具え、
前記第1の流体形状では、前記第1と第2の流体電極間に第1の電圧を印加することにより切替可能なエレクトロウェッティング力を提供するように前記切替可能な光学素子を構成し、
前記第2の流体形状では、前記第1と第3の流体電極間に第2の異なる電圧を印加することにより異なる切替可能なエレクトロウェッティング力を提供するように前記光学素子を構成する、
請求項1または2のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項4】
前記切替可能な光学素子が前記放射ビームを通過させるように配置される他の部分を有する別の波面修正器を具え、
前記波面修正器が第1の波面修正を行うべく適合され、且つ、
前記別の波面修正器が前記第1の波面修正を補完するように配置される、第2の異なる波面修正を行うべく適合される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項5】
前記波面修正器が面を有し、この面がほぼ球形、または非球形であり、且つ
かつ前記部分が前記面上にある、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項6】
前記第1レンズが、曲率をもつ流体メニスカスにより分離される異なる流体からなる流体メニスカスレンズであり、
前記光学系がさらに制御システムを具え、且つ前記可変焦点が前記流体メニスカスの曲率の変化によって発現し、前記制御システムがメニスカスエレクトロウェッティング力を用いて前記可変焦点を制御するように構成されている、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項7】
前記流体メニスカスレンズがさらに第1電極と、第2の異なる電極とを有し、前記制御システムが前記エレクトロウェッティング力を提供すべく前記第1と第2の電極の間に電圧を印加するように構成される、
請求項6に記載のズーム光学系。
【請求項8】
前記レンズシステムが前記切替可能な光学素子に対して可変の空間的な位置に配置し得る固体レンズを具えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項9】
前記レンズシステムが可変の光パワーを有する液晶レンズを具えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のズーム光学システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のズーム光学系を具えている画像キャプチャー装置であって、前記光学系が前記第1モードにある場合に、前記装置は第1ズーム設定で画像をキャプチャーするように適合され、前記光学系が前記第2モードにある場合に、前記装置は第2の異なるズーム設定で画像をキャプチャーするように適合される、
画像キャプチャー装置。
【請求項11】
前記画像キャプチャー装置がさらに、前記第1モードでキャプチャーされる画像及び/又は前記第2モードでキャプチャーされる画像にデジタルズーム比を導入するように構成したデジタルズームシステムも具えている、
請求項10に記載の画像キャプチャー装置。
【請求項1】
放射ビームに対して可変ズーム設定を与えるべく配置され、第1モードと第2モードを有する切替可能な光学素子からなる、レンズシステムを具えているズーム光学系において、
前記切替可能な光学素子が第1の流体と、第2の流体と、前記放射ビームを通過させるように配置した部分を有する波面修正器とを含み、
第1モードでは、前記切替可能な光学素子が第1の流体形状を有し、この第1の流体形状では前記部分が第1の流体でほぼ覆われ、
第2モードでは、前記切替可能な光学素子が第2の異なる流体形状を有し、この第2の流体形状では、前記部分が第2の流体でほぼ覆われる、
ようにしたことを特徴とするズーム光学系。
【請求項2】
第1の流体を液体とし、且つ第2の流体を気体とする請求項1に記載のズーム光学系。
【請求項3】
前記切替可能な光学素子が共通の第1流体電極と、第2の異なる流体電極と、第3の異なる流体電極とを具え、
前記第1の流体形状では、前記第1と第2の流体電極間に第1の電圧を印加することにより切替可能なエレクトロウェッティング力を提供するように前記切替可能な光学素子を構成し、
前記第2の流体形状では、前記第1と第3の流体電極間に第2の異なる電圧を印加することにより異なる切替可能なエレクトロウェッティング力を提供するように前記光学素子を構成する、
請求項1または2のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項4】
前記切替可能な光学素子が前記放射ビームを通過させるように配置される他の部分を有する別の波面修正器を具え、
前記波面修正器が第1の波面修正を行うべく適合され、且つ、
前記別の波面修正器が前記第1の波面修正を補完するように配置される、第2の異なる波面修正を行うべく適合される、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項5】
前記波面修正器が面を有し、この面がほぼ球形、または非球形であり、且つ
かつ前記部分が前記面上にある、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項6】
前記第1レンズが、曲率をもつ流体メニスカスにより分離される異なる流体からなる流体メニスカスレンズであり、
前記光学系がさらに制御システムを具え、且つ前記可変焦点が前記流体メニスカスの曲率の変化によって発現し、前記制御システムがメニスカスエレクトロウェッティング力を用いて前記可変焦点を制御するように構成されている、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項7】
前記流体メニスカスレンズがさらに第1電極と、第2の異なる電極とを有し、前記制御システムが前記エレクトロウェッティング力を提供すべく前記第1と第2の電極の間に電圧を印加するように構成される、
請求項6に記載のズーム光学系。
【請求項8】
前記レンズシステムが前記切替可能な光学素子に対して可変の空間的な位置に配置し得る固体レンズを具えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のズーム光学系。
【請求項9】
前記レンズシステムが可変の光パワーを有する液晶レンズを具えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のズーム光学システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のズーム光学系を具えている画像キャプチャー装置であって、前記光学系が前記第1モードにある場合に、前記装置は第1ズーム設定で画像をキャプチャーするように適合され、前記光学系が前記第2モードにある場合に、前記装置は第2の異なるズーム設定で画像をキャプチャーするように適合される、
画像キャプチャー装置。
【請求項11】
前記画像キャプチャー装置がさらに、前記第1モードでキャプチャーされる画像及び/又は前記第2モードでキャプチャーされる画像にデジタルズーム比を導入するように構成したデジタルズームシステムも具えている、
請求項10に記載の画像キャプチャー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−518129(P2007−518129A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548494(P2006−548494)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050028
【国際公開番号】WO2005/069054
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050028
【国際公開番号】WO2005/069054
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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