説明

セキュリティーリング

【課題】レンタル用物品のように、物品の表面に直接貼り付けるのではなく、物品の一部の目立たない部位に一定期間長期に取り付け可能で、取り外す行為が故意なのか過失なのかの判別が容易で、且つ目視と機器検証のいずれでも不正行為の有無が判別可能な、模造が難しいセキュリティーリングの提供を目的とした。
【解決手段】長尺状樹脂の端部を赤外吸収性色素を含有する接着剤で固定したことを特徴とするセキュリティーリングであって、長尺状樹脂には蛍光体が分散されているか、長尺樹脂の端部に、互いに嵌合するように凹凸を設けたことを特徴とするセキュリティーリングである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包袋の開封検知や物品の真贋判定又は貸し出し品の管理等に使用するセキュリティーリングに関する。
【背景技術】
【0002】
貴重な物品が収容されているケースを不正に開封して模造品とすりかえる、健康食品が内蔵されている製品に手を加える、レンタルした高級バッグ、アクセサリー、衣類、シューズ等を模造品とすりかえる、あるいはコピー品を単に本物として流通させるなどの不正行為は巷に氾濫している。
【0003】
これらの不正行為を防止するために、不正開封検知用の封印シールをケースの開口部を跨ぐように貼付したり、有価証券、パスポート、IDカード、海外輸出品等においては、本物とニセモノを区別する目印としてホログラムを物品に貼付することが行われてきた。最近ではRFIDと融合させたICホログラムあるいは高機能な光学フィルム等、より偽造がむずかしい偽造防止媒体が貼り付けられている。しかしながら、ホログラム類は薄い製品には組み込みやすいが、レンタル製品などバルキーな製品に対しては貼付が難しいとか意匠性が使用の妨げになるという問題がある。
【0004】
パチンコ台等の遊戯器具については、これら器具を制御しているROMを、収容されているケースを壊して入れ替えてしまうことが行われており、このような不正開封を検知するためにケースに封印シールを貼付することが行われている。しかしながら、封印シールの粘着部分に特殊な溶剤を浸透させて、ゆっくり剥がすとシールはきれいに剥がされてしまい、不正開封検知として不十分という問題がある。
【0005】
また、特許文献1に開示されているように、粘着部分を脆性化して、剥がしたことが検知されるようにしても、故意に剥がしたものか自然劣化や搬送中の事故によって剥がれたものなのかの判別が容易につかないという問題もある。さらに、脆性シールでは被着体に粘着成分が表面にこびりつくと、商品価値が低下したり消費者心理に悪影響を及ぼすことがある。さらにまた、レンタル製品に多く見られる布製品あるいは皮革製品に対しては、ホログラム等のラベルがしっかりと貼れないので使用できないというセキュリティー以前の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−125110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、物品の表面に直接貼り付けるのではなく、物品の一部の目立たない部位にかなり長期の一定期間にわたって取り付け可能で、取り外す行為が故意なのか過失なのかの判別が容易で、且つ目視と機器検証のいずれでも不正行為の有無が識別可能な模倣の難しいセキュリティーリングの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため請求項1に記載の発明は、2端部を有する長尺状フィルムの端部あるいは板状又は棒状の樹脂形成物の端部を、赤外吸収性色素を含有する接着剤でリング状に両端部を固定したことを特徴とするセキュリティーリングとしたものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記長尺状フィルムあるいは板状又は棒状の樹脂形成物はシリコンを含有することを特徴とする請求項1に記載のセキュリティーリングとしたものである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記長尺状フィルムあるいは板状又は棒状の樹脂形成物には蛍光体が分散されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセキュリティーリングとしたものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記板状の樹脂形成物の端部には、互いに嵌合するように凹凸を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセキュリティーリングとしたものである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記棒状の樹脂形成物の一方の端部には、他方の端部が貫通する貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセキュリティーリングとしたものである。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記凹凸部にセキュリティーインキを塗布したことを特徴とする請求項4に記載のセキュリティーリングとしたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、物品の一部を、長尺の樹脂材料で形成したセキュリティーリング内を貫通させることで物品の目立たない位置に容易に取り付けることが可能である。セキュリティーリングは赤外線吸収性の接着剤で両端を固定してあるので、端部が分離してあれば当該部位に赤外線を照射し、赤外透過性を検証することで、故意に引きちぎったことが容易に推察される。端部の接合部分を取り去って新たに接続し直しても赤外透過性の有無で真贋判定ができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、セキュリティリングを物品に取り付ける時に、シリコンを含有してあれば柔らかいため作業性も良く、手を切るなどの怪我のリスクが少ない。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、セキュリティーリングを組成する樹脂中に蛍光体が分散されているので、紫外線を直接照射するか、断裁して断面に紫外線を照射して蛍光が生じるか否かで、セキュリティーリングが真正かどうか、すなわち物品の真贋判定が非破壊的に可能である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、セキュリティーリングの両端をセキュリティーリングの端部に形成した凹凸で嵌合するように接着させているので、容易に分離できないという効果がある。
【0018】
請求項5に記載の発明は、一方の端部に形成した貫通孔を他方の端部を通すようにすることで、レンタル衣装などに簡単に取り付けることができる。
【0019】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、凹凸部分のような嵌合部位に何らかの不可視のセキュリティーインキを塗布しておけば、無理に破断してセキュリティーリングの模造品を取り付けても、セキュリティーインキの有無あるいは光学特性の検証によりすりかえの識別はより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明になるセキュリティーリングの取り付け形態を説明する図である。(a)、はフィルムタイプのセキュリティーリングをスリットを貫通させた様子、(b)はリングをファスナーのスライダーの引き手に取り付けた場合である。
【図2】セキュリティーリングをリング化する前のバンド状態の端部の構造を説明する図である。(a)板状、(b)棒状。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図1と図2を参照して説明する。
【0022】
本発明になるセキュリティーリング1は、両端が接合されてリング状となるものであれば、図1(a)、(b)にそれぞれ示すようにフィルム状であれ棒状、板状のものであれ、貼付する物品の形状や取り付け位置に応じて多様な形態をとりえる。セキュリティーリング1の素材としては、プラスチックフィルムや樹脂類が望ましく、リングに物品の一部を通すか、リングを物品の一部を貫通させて物品に取り付けて使用するものである。取り外すためには、故意にリングを切断するか壊して開環する必要があり、偶然外れるということは想定されないものである。
【0023】
セキュリティーリング1を組成する材料としては、熱を加えると変形しやすくなり加熱により成形できる熱可塑性樹脂が好適である。もちろん溶液製膜からフィルム化したものでも構わない。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト等から用途に応じて適宜選択して使用することができる。
【0024】
セキュリティーリング1の使用形態として2,3の例をあげると、先ず貴重品を収納するケース類の開封探知用については、図1(a)に示すように一対の観音開きの扉部材にスリット3を設け、扉を跨ぐように帯状のセキュリティーリング1を巻きつけ、しかる後両端を赤外吸収性の接着剤11を用いて接着する使用形態がある。接着固定手段については、熱硬化性の接着剤でもUV硬化性の接着剤のいずれでも構わない。
【0025】
第二の使用形態は、バッグ、スーツケース、アクセサリー、高級衣類等の貸し出し物品に貼付する場合である。図1(b)に示すように当該物品の意匠性を損ねないように目立たぬ位置に樹脂製環状のセキュリティーリング1を取り付けるのが好ましい。ファスナーのスライダーの引き手に設けた開口部2や取っ手を通してセキュリティーリング1を取り付けたり、裏ポケットのボタン穴に通して使用することができる(図示せず)。スーツケース等では、取っ手に複数回巻きつけることも可能である。
【0026】
フィルム状あるいは棒状、板状のプラスチックの両端については、簡単に外れないように赤外吸収性の接着剤を使用して接着するのであるが、接合部の形状自体も重要である。図2(a)中に実線で示すように、一方の端部に凸部7を形成し、他方の端部に凹部6を互いに嵌合するように形成する。あるいは、同図に破線で示すように、双方に同じ周期で凹凸8を形成して嵌合せてもよい。さらにまた、一方の端部に円筒部12を形成し、該円筒に他方の楔状先端を通すタグ・リング形式にして、接着剤で固定することも可能である(図2(b))。
【0027】
また、セキュリティーリング1には蛍光色素を分散させることができる。蛍光色素としては、ぺリレン系化合物、ナフタルイミド系化合物、あるいは、これらを化合欝を混合したものが好ましい。これら以外の蛍光色素も使用できるが、ぺリレン系化合物、ナフタルイミド系化合物は、引きちぎられたり破断されると破断面からの蛍光発光が強調されるという効果がある。これら化合物の添加量としては、0.001質量%〜5質量%が好ましいが、0.01質量%〜0.05質量%であることがより好ましい。蛍光色素を分散しただけのセキュリティーリングで、単に両端を接着するだけでも構わない。
【0028】
セキュリティーリング1の両端を接着する赤外吸収性の接着剤11は、赤外吸収性色素として、ジイモニウム塩化合物、該ジイモニウム塩化合物とは吸収極大波長の相違するアミニウム系化合物、アントラキノン系化合物、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン化合物、ベンゾピリイウム系化合物、及びチオ金属錯体化合物から選択するか、あるいは混合させたものエポキシ系接着剤あるいはゴム系接着剤に分散させたホットメルトタイプとして使用することができる。これら化合物の添加量としては、0.001質量%〜5質量%が好ましいが、0.01質量%〜0.05質量%であることがより好ましい。
【0029】
接合部では、赤外吸収性の接着剤11を使用して固定するのに加え、機器検証に適した媒体10を凹凸部8に形成することができる。機器検証用媒体10としては、赤外蛍光顔料が好ましく、印刷部分は不可視であるが、赤外線照射で検証することができる。別の例としては、光反射性の粉体を溶媒分散したキュリティーインキを塗布して形成することができる。粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機顔料、又はマイカ等のフレークに酸化物を被覆したパール顔料が好ましい。あるいは、接合部位に局所的に無機薄膜を積層した多層干渉膜を形成しても構わない。
【0030】
蛍光色素を内部に含有し、赤外吸収性の接着剤を使用して機能検証部位を備える嵌合部を接合したセキュリティーリングは、セキュリティーリング自体の真贋を判定するのに複数の条件があり、全部もしくは複数の組み合わせを満足しなければセキュリティーリングは偽造と判断される。本発明では、蛍光発光性、接合部分の機能検証媒体の有無とその光学的特性、接着剤の赤外吸収特性である。
【0031】
また、フィルム状のセキュリティーリング1は、接合部分は凹凸がなく平坦であるが、接着面積が広いので接着力が十分にある。棒状又は板状の物は、凹凸部を嵌合させた上で接着しているのでこの場合も接着力は十分である。いずれの場合も故意にリング部を破壊しなければセキュリティーリング1を取り付けられた物品から取り外すことはできない。
【実施例1】
【0032】
先ず、ポリプロピレンと蛍光色素(BASF社製 ルモゲンF Red300)を0.02質量%の割合で溶融温度300℃にて混錬して、蛍光性のあるペレットを得た。
【0033】
次に、図2(a)に示すセキュリティーリング1が収まる所定の内部形状とした凹部を予め形成している一対の金型を用意した。引き延ばしたときのセキュリティーリング1のサイズは、長さ5cm、幅0.5cm、厚み0.2cmで、先端部5mmには、ぴったりと嵌合するように一対の凹凸8が形成してある。詳細な構造は省略するが、金型としては蓋となる板状の上金型と、溶融した充填用ポリプロピレン樹脂を注入する注入口と連通する凹形状部を内部空間として形成した下金型との2枚構成とし、下金型の凹部に前記樹脂を装填後し、上金型で下金型に蓋をして型締めするものである。
【0034】
次に、注入口から、凹部(内部空間)内に前記ぺレットを300℃にて加熱溶融したポリプロピレン樹脂を注入して、上金型で型締めすると開口部の樹脂が成型されてセキュリティーリング形状が得られる。成型後、冷却してから上金型を外し、セキュリティーリングを下金型から取り出す。これにより、先端に凹凸部を有するバンド状のセキュリティーリング1が複数同時に製造される。
【0035】
次に、バンドの端部の凹凸部に検証用媒体を塗布する方法を記す。この検証用媒体としては赤外蛍光顔料があげられる。ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、などのベース樹脂に赤外蛍光顔料を分散させてインキをつくり、PAD印刷などでバンド凹凸部に印刷を施す。
【0036】
次に、赤外吸収性色素を分散させたポリエステル系ホットメルトタイプの接着剤シートを凹凸部の形状に合わせて断裁し、凹凸部に仮止めした。次に、前記バンドをスーツケースの取って部分をくぐらせてから端部の凹凸をホットプレスで加圧圧着して接着した。このセキュリティーリングは、ブラックライトで照射すると全体から赤色の蛍光発光が確認され、接続部分の接着層は赤外吸収があり可視部の吸収が弱い所定のスペクトルを示した。
【実施例2】
【0037】
実施例1に記載のペレットをT−ダイ押出装置を用いて、300℃で溶融押出して厚さ150μm、幅60cmのフィルム基材を得た。この長尺フィルムを幅1cm、長さ5cmの帯状に断裁した。これは様々な物品の開口部を通して巻きつけて両端を赤外吸収性接着剤で接着すれば軽い偽造防止媒体として使用できる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・ セキュリティーリング
2・・・ ファスナーの引き手と開口部
3・・・ 扉と扉に形成したスリット
4・・・ 開口部
5・・・ 板状のセキュリティーリングの側面図
6・・・ 凹部
7・・・ 凸部
8・・・ 凹凸部
9・・・ ハンドバッグ
10・・・ 機能検証媒体
11・・・ 接着剤(赤外吸収性)
12・・・ 円筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2端部を有する長尺状フィルムの端部あるいは板状又は棒状の樹脂形成物の端部を、赤外吸収性色素を含有する接着剤でリング状に両端部を固定したことを特徴とするセキュリティーリング。
【請求項2】
前記長尺状フィルムあるいは板状又は棒状の樹脂形成物はシリコンを含有することを特徴とする請求項1に記載のセキュリティーリング。
【請求項3】
前記長尺状フィルムあるいは板状又は棒状の樹脂形成物には蛍光体が分散されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセキュリティーリング。
【請求項4】
前記板状の樹脂形成物の端部には、互いに嵌合するように凹凸を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセキュリティーリング。
【請求項5】
前記棒状の樹脂形成物の一方の端部には、他方の端部が貫通する貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセキュリティーリング。
【請求項6】
前記凹凸部にセキュリティーインキを塗布したことを特徴とする請求項4に記載のセキュリティーリング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−103585(P2012−103585A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253655(P2010−253655)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】