説明

セグメントの接合構造

【課題】雄型継ぎ手の接合用凸部を簡単な構造にすると共に、施工性の良いセグメントの接合構造の提供。
【解決手段】この発明の接合構造1では、構造上元々剛性の高い雌型継ぎ手4の接合用凹部3をセグメント2の接合面2aから突出させると共に、雄型継ぎ手7の接合用凸部6を接合面2aから引っ込ませた構造にする。また、接合構造1では、雌型継ぎ手4の接合用凹部3を二重管構造としたケース部8と支持用リング部10との間に弾性体のスペーサー9を入れ、施工時の「がた」を雌型継ぎ手4側のみで吸収することにより、雄型継ぎ手7の接合用凸部6を簡易的な構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールドトンネル覆工用の各セグメントリングを構成する各セグメントのリング間の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の接合構造としては、例えば、図8に示すように、接合すべき一方のセグメント30の接合面30aに、その接合面30aから接合用凸部31が突出した雄型継ぎ手32を設けていると共に、前記接合すべき他方のセグメント30の接合面30aに、その接合面30aに接合用凹部33を形成した雌型継ぎ手34を設けているものが一般に知られている(特開平6−146794号公報参照)。
【0003】
ところが、このような従来の接合構造における雄型継ぎ手の接合用凸部は、接合すべき一方のセグメントの接合面に、略棒状に形成したものを突出させて設けることで構成している。そのため、セグメントの接合時などの施工時に接合面から突出した接合用凸部をぶつけて変形させてしまう等の問題があった。
【0004】
また、雄型継ぎ手の接合用凸部と雌型継ぎ手の接合用凹部との接合時での「がた」を雄型継ぎ手の接合用凸部においても吸収していたので、雌型継ぎ手と共に複雑な構造に「なりがち」である。
【特許文献1】特開平6−146794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、セグメントの接合構造における雄型継ぎ手の接合用凸部を施工時に変形させやすいことと、「がた」を吸収できるようにすべく、雄型継ぎ手の接合用凸部も複雑な構造に「なりがち」であることであり、セグメントの接合構造全体を複雑な構造で施工性の悪いものにしていることである。
【0006】
この発明は前述した事情に鑑みて創案されたもので、その目的は雄型継ぎ手の接合用凸部を簡単な構造にすると共に、施工性の良いセグメントの接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の接合構造(シールドトンネル覆工用の各セグメントリングを構成する各セグメントのリング間の接合構造)では、構造上元々剛性の高い雌型継ぎ手の接合用凹部を接合面から突出させると共に、雄型継ぎ手の接合用凸部を接合面から引っ込ませた構造にする。
【0008】
従って、この発明の請求項1では、「接合すべき一方のセグメントのリング間方向の接合面には、その接合面から接合用凹部が突出した状態の雌型継ぎ手を設けていると共に、接合すべき他方のセグメントのリング間方向の接合面には、その接合面に形成した凹部内において接合用凸部が突出した状態の雄型継ぎ手を設ける。そして、雄型継ぎ手の接合用凸部を雌型継ぎ手の接合用凹部に嵌合させることで、各セグメントのリング間の接合を行なっている」となる。
【0009】
従って、この発明の接合構造では、雌型継ぎ手の接合用凹部を二重管構造としたケース部と支持用リング部との間に弾性体を入れ、施工時の「がた」を雌型継ぎ手側のみで吸収することにより、雄型継ぎ手の接合用凸部を簡易的な構造とする。
【0010】
即ち、この発明の請求項2では、「雄型継ぎ手の接合用凸部が嵌合する雌型継ぎ手の接合用凹部は、外周部分のケース部と、このケース部内に遊嵌していると共に、ケース部との間に介在させた弾性体のスペーサーで保持している支持用リング部とから二重管構造になっており、」となる。
【0011】
さらに、この発明の接合構造では、ケース部内での支持リング部の遊嵌状態が、即ち、支持リング部のケース部内での「がた」が大きくなるように製作しておき、この支持リング部のケース部内での「がた(遊嵌状態)」の大きさを、ケース部との間に介在させた調整材の大きさを変えることによって、自由に調整できるようにしている。
【0012】
従って、この発明の請求項3では、「支持リング部は、ケース部との間に介在させた弾性体のスペーサーによって、ケース部内での遊嵌状態を保持されていると共に、ケース部との間に介在させた調整材によって、ケース部内での遊嵌状態の大小を調整できるように保持されている」となる。
【0013】
そのため、接合構造における各部材の寸法を変更することなく、支持リング部のケース部内での遊嵌状態を調整できるため経済的であり、施工状況に応じて迅速に支持リング部の遊嵌状態を調整することが可能となる。
【0014】
また、支持用リング部が独立して動く構造であるため、支持用リング部の内径の遊びを小さくすることによって、雄型継ぎ手の接合用凸部の挿入時に調芯され、確実な締結が可能である。
【0015】
このように、この発明の接合構造では、剛性の高い雌型継ぎ手の接合用凹部を接合面から突出させて、雄型継ぎ手の接合用凸部を接合面から引っ込ませた構造にすると共に、雌型継ぎ手の接合用凹部を二重管構造として施工時の「がた」を雌型継ぎ手側のみで吸収することにより、各セグメントの接合時の施工性を改善した。
【発明の効果】
【0016】
この発明のセグメントの接合構造によれば、剛性の高い雌型継ぎ手の接合用凹部を接合面から突出させると共に、雄型継ぎ手の接合用凸部を接合面から引っ込ませた構造にしている。また、雌型継ぎ手の接合用凹部を二重管構造として、施工時の「がた」を雌型継ぎ手側のみで吸収できるようにしてる。
【0017】
そのため、雄型継ぎ手の接合用凸部を単純でシンプルなピン形状にすることができて、セグメントの接合構造全体を簡単な構造にすることができると共に、各セグメントの接合時の施工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施例1]
図1はこの発明のセグメントの接合構造における各セグメントの接合前の状態を示す概略断面図で、図2はこの発明のセグメントの接合構造における各セグメントの接合状態を示す概略断面図で、図3はこの発明の別形態の接合構造における各セグメントの接合前の状態を示す概略断面図で、図4は図3の形態の接合構造における各セグメントの接合状態を示す概略断面図で、図5はこの発明のさらに別形態の接合構造における各セグメントの接合前の状態を示す概略断面図で、図6はこの発明のさらに別形態の接合構造における各セグメントの接合状態を示す概略断面図で、図7は図5のA部拡大図で、図8は従来のセグメントの接合構造を示す概略断面図である。
【0019】
そして、各図において、符号1は接合構造で、2はセグメントで、3は雌型継ぎ手の接合用凹部で、4は雌型継ぎ手で、6は雄型継ぎ手の接合用凸部で、7は雄型継ぎ手である。
【0020】
セグメントの接合構造1は、図1および図2に示すように、シールドトンネル覆工用の各セグメントリング(図示せず)を構成する各セグメント2のリング間の接合構造である。
【0021】
接合すべき一方のセグメント2のリング間方向の接合面2aには、その接合面2aから接合用凹部3が突出した状態の雌型継ぎ手4を設けていると共に、接合すべき他方のセグメント2のリング間方向の接合面2aには、その接合面2aに形成した収納用凹部5内において接合用凸部6が突出した状態の雄型継ぎ手7を設けている。
【0022】
そして、雄型継ぎ手7の接合用凸部6を雌型継ぎ手4の接合用凹部3に嵌合させることで、各セグメント2のリング間の接合を行なっている。
【0023】
この実施形態での雌型継ぎ手4の接合用凹部3は、外周部分のケース部8と、このケース部8内に遊嵌している支持用リング部10とから二重管構造になっていると共に、ケース部8との間に介在させた弾性体のスペーサー9によって、支持用リング部10のケース部8内での遊嵌状態を保持している。
【0024】
この実施形態での支持用リング部10は、その内周面10aを、雄型継ぎ手4の接合用凸部6側の小径部10bと、接合用凸部6とは反対側の大径部10cとから形成している。そして、小径部10bは、接合用凸部6側の方向へ先細り状に形成されている。
【0025】
この支持用リング部10の内部には、接合用凸部6が嵌合する嵌合部11が装着されている。この嵌合部11は、接合用凸部6側の方向への進退移動が自在であると共に、小径部10bの方向へ付勢されることで、支持用リング部10の小径部10b内位置に保持されている。
【0026】
この実施形態での嵌合部11は、その内径が拡縮自在に形成されており、小径部10bの位置への保持時に縮径状態であると共に、雄型継ぎ手7の接合用凸部6の嵌合時に、接合用凸部6とは反対側の大径部10c側に移動して拡径し、接合用凸部6の嵌合状態を保持する。
【0027】
この実施形態での嵌合部11を支持用リング部10の小径部10bの方向へ付勢している付勢部12は、支持用リング部10の大径部10cの内部において、ケース部8に設けた後蓋13と嵌合部11との間に設けたばね部材で構成されている。
【0028】
この実施形態での接合用凹部3におけるケース部8は、アンカー筋14でセグメント2に固定されて、接合面2aから略半分突出している。そして、このケース部8内部の雄型継ぎ手4側に設けられており、接合用凸部6であるオスピンボルトが貫通する接合用挿入孔15aが形成されている前蓋15と、ケース部8の雄型継ぎ手4とは反対側に設けた後蓋13との間に、支持用リング部10が設けられている。
【0029】
この実施形態での雄型継ぎ手7の接合用凸部6は、単純な形状のオスピンボルトであり、その突出先端部が接合面2aに形成した収納用凹部5内に収まるように、インサート16でセグメント2に固定されている。
【0030】
このようなこの発明のセグメントの接合構造1において、各セグメント2の接合は、先ず、図1に示すように、セグメント2をリング間方向へ移動させて、雄型継ぎ手7の接合用凸部6が雌型継ぎ手4の接合用凹部3の内部に挿入されるようにする。
【0031】
この接合用凸部6が接合用凹部3の内部に挿入される時は、図2に示すように、接合用凸部6であるオスピンボルトが、ケース部8に設けた前蓋15の接合用挿入孔15aを貫通して、嵌合部11に拡径しながら嵌合する。
【0032】
そして、この接合用凸部6(オスピンボルト)の嵌合部11への嵌合状態は、嵌合部11が付勢部12で支持用リング部10の小径部10bの内部位置に保持されていることにより、嵌合部11が縮径しようとして、接合用凸部6の嵌合部11への嵌合状態も保持される。
【0033】
これらのことから、図2に示すように、接合すべき一方の各セグメント2のリング間方向の接合が行なわれる。
【0034】
このように、この発明のセグメントの接合構造1によれば、剛性の高い雌型継ぎ手4の接合用凹部3を突出させ、雄型継ぎ手7の接合用凸部6を接合面2aから控える構造にすることにより、施工時に接合用凸部6をぶつけて変形させる等の問題を無くし、施工性を改善している。
【0035】
また、雌型継ぎ手4の接合用凹部3を二重管構造とした、ケース部8と支持用リング部10との間に、弾性体のスペーサー9を入れて、施工時の「がた」を雌型継ぎ手4で吸収することにより、雄型継ぎ手7の接合用凸部6を簡易的な構造としている。
【0036】
なお、支持用リング部10の外形を変えることにより、雄型継ぎ手7の接合用凸部6、ケース部8を変更することなく、遊嵌状態を自由に調整するのことが可能である。また、支持用リング部10が独立して動く構造であるため、その内径の遊びを小さくすることによって、雄型継ぎ手7の接合用凸部6の挿入時に調芯され、確実な締結が可能である。
【0037】
[実施例2]
図3および図4は、この発明のセグメントの接合構造1の別形態を示すものである。
【0038】
この実施形態での付勢部12は、支持用リング部10の大径部10cの内部において、ケース部8に設けた後蓋13と嵌合部11との間に設けた、中空の円柱形状を含む等、略円柱形状に形成した弾性体で構成されている。
【0039】
なお、この図3および図4に示した実施形態のその他の構成や各セグメントの接合状態は、前述した図1および図2に示した実施形態と同様である。
【0040】
[実施例3]
図5および図6は、この発明のセグメントの接合構造1のさらに別形態を示すものである。
【0041】
この実施形態での雌型継ぎ手4の接合用凹部3におけるケース部8は、アンカー用ボルト17でセグメント2に固定されている。このアンカー用ボルト17は、そのボルト頭17aがセグメント2内に位置していると共に、そのボルトネジ部17bがケース部8の雄型継ぎ手4とは反対側に設けた後蓋13に螺合している。
【0042】
この実施形態での支持用リング部10は、ケース部8との間に介在させた弾性体のスペーサー9によって、ケース部8内での遊嵌状態を保持していると共に、ケース部8との間に介在させた鋼製等高弾性体である調整材18(図7参照)によって、ケース部8内での遊嵌状態の大小を調整できるように保持している。
【0043】
この実施形態での、ケース部8の雄型継ぎ手4とは反対側に設けた後蓋13は、ケース部8内部の雄型継ぎ手4側に設けた前蓋15と同様の構成で、その接合用挿入孔15aに相当する部分に形成された雌ネジに、アンカー用ボルト17のボルトネジ部17bが螺合している。
【0044】
このようなこの実施形態では、ケース部8内での支持リング部10の遊嵌状態(がた)を大きく製作しておき、調整材18のサイズを変えることによって、支持リング部10のケース部8内での遊嵌状態を自由に調整することができる。
【0045】
そのため、接合構造1の各部材寸法を変更することなく、遊嵌状態を調整できるため経済的であり、施工状況に応じて迅速に遊嵌状態を調整することが可能となる。
【0046】
なお、この図5および図6に示した実施形態も、その他の構成や各セグメントの接合状態は、前述した図1および図2に示した実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明のセグメントの接合構造における各セグメントの接合前の状態を示す概略断面図である。
【図2】この発明のセグメントの接合構造における各セグメントの接合状態を示す概略断面図である。
【図3】この発明の別形態の接合構造における各セグメントの接合前の状態を示す概略断面図である。
【図4】図3の形態の接合構造における各セグメントの接合状態を示す概略断面図である。
【図5】この発明のさらに別形態の接合構造における各セグメントの接合前の状態を示す概略断面図である。
【図6】この発明のさらに別形態の接合構造における各セグメントの接合状態を示す概略断面図である。
【図7】図5のA部拡大図である。
【図8】従来のセグメントの接合構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 接合構造
2 セグメント
2a 接合面
3 接合用凹部
4 雌型継ぎ手
5 収納用凹部
6 接合用凸部
7 雄型継ぎ手
8 ケース部
9 スペーサー
10 支持用リング部
10a 内周面
10b 小径部
10c 大径部
11 嵌合部
12 付勢部
13 後蓋
14 アンカー筋
15 前蓋
15a 接合用挿入孔
16 インサート
17 アンカー用ボルト
17a ボルト頭
17b ボルトネジ部
18 調整材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネル覆工用の各セグメントリングを構成する各セグメントのリング間の接合構造であり、
前記接合すべき一方のセグメントのリング間方向の接合面には、その接合面から接合用凹部が突出した状態の雌型継ぎ手を設けていると共に、前記接合すべき他方のセグメントのリング間方向の接合面には、その接合面に形成した凹部内において接合用凸部が突出した状態の雄型継ぎ手を設けており、
前記雄型継ぎ手の接合用凸部を前記雌型継ぎ手の接合用凹部に嵌合させることで、前記各セグメントのリング間の接合を行なっていることを特徴とするセグメントの接合構造。
【請求項2】
接合すべき一方のセグメントの雄型継ぎ手の接合用凸部を接合すべき他方のセグメントの雌型継ぎ手の接合用凹部に嵌合させることで、シールドトンネル覆工用の各セグメントリングを構成する前記各セグメントのリング間の接合を行なう接合構造であり、
前記雌型継ぎ手の接合用凹部は、外周部分のケース部と、このケース部内に遊嵌していると共に、前記ケース部との間に介在させた弾性体のスペーサーで保持している支持用リング部とから二重管構造になっており、
前記支持用リング部は、その内周面を、前記雄型継ぎ手の接合用凸部側の小径部と、接合用凸部とは反対側の大径部とから接合用凸部側の方向へ先細り状に形成されており、
前記支持用リング部の内部には、前記接合用凸部側の方向への進退移動が自在であると共に、前記小径部の方向へ付勢されて小径部の位置に保持されて、前記接合用凸部が嵌合する嵌合部が装着されており、
前記嵌合部は、その内径が拡縮自在に形成されており、前記小径部の位置への保持時に縮径状態に保持されていると共に、前記雄型継ぎ手の接合用凸部の嵌合時に、接合用凸部とは反対側の大径部側に移動して拡径し、接合用凸部の嵌合状態を保持することを特徴とするセグメントの接合構造。
【請求項3】
前記支持リング部は、前記ケース部との間に介在させた弾性体のスペーサーによって、ケース部内での遊嵌状態を保持されていると共に、ケース部との間に介在させた調整材によって、ケース部内での遊嵌状態の大小を調整できるように保持されていることを特徴とする請求項2記載のセグメントの接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−132164(P2007−132164A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328738(P2005−328738)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】