説明

セグメントの締結構造およびセグメントの締結方法

【課題】周方向において互いに隣接するセグメント相互間を任意の位置で締結可能とし、肉厚が薄いセグメントにも適用可能とするセグメントの締結構造を提供すること。
【解決手段】隣り合うセグメント10を相互に締結するセグメント10の締結構造において、セグメント10の内側に形成した凹部16,21に筒状のインサート18を予め埋設し、インサート18にカスガイ状の継手30を嵌挿し、隣り合うセグメント10を相互に締結するようにしたので、周方向において互いに隣接するセグメント10相互間を任意の位置で締結でき、肉厚が薄いセグメント10にも適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘削工法における、トンネル覆工壁を施工する際に用いるセグメントの締結構造およびセグメントの締結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セグメントとセグメントとを容易に締結するセグメントの締結構造が各種提案されている。たとえば、各セグメントの外周面に開口する凹部を形成し、周方向において互いに隣接するセグメントの凹部内にカスガイ状の継手を差し込むことにより、周方向において互いに隣接するセグメント相互間を締結し、各セグメントの軸方向一端面に凹部を形成し、軸方向他端面に取り付けたカスガイ状の継手を差し込むことにより、軸方向において互いに隣接するセグメント(セグメントリング)相互間を締結するセグメントの締結構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−331594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、周方向において互いに隣接するセグメント相互間を締結する場合に、セグメントの外周面側から継手を差し込むことができないので、セグメントの外周面に開口する凹部をセグメントの軸方向端面に形成しなければならなかった。このため、セグメントを締結できる箇所も軸方向端面に限られていた。
【0005】
また、軸方向において互いに隣接するセグメント(セグメントリング)相互間を締結する場合に、上述した軸方向一端面に凹部を形成する必要があった。このため、鋼繊維補強コンクリート(Steel Fiber Rein Forced Concrete)製等の肉厚が薄いセグメントへの適用が困難であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周方向において互いに隣接するセグメント相互間を任意の位置で締結可能とし、肉厚が薄いセグメントにも適用可能とするセグメントの締結構造およびセグメントの締結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、隣り合うセグメントを相互に締結するセグメントの締結構造において、セグメントの内側に形成した凹部に筒状のインサートを予め埋設し、該インサートにカスガイ状の継手の脚部を嵌挿し、隣り合うセグメントを相互に締結したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記インサートが合成樹脂製であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、内側に形成した凹部に筒状のインサートを予め埋設したセグメントを隣り合わせに配設した後に、内側から各セグメントのインサートにカスガイ状の継手の脚部を嵌挿し、隣り合うセグメントを相互に締結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るセグメントの締結構造は、セグメントの内側に形成した凹部に筒状のインサートを予め埋設し、インサートにカスガイ状の継手の脚部を嵌挿し、隣り合うセグメントを相互に締結するので、周方向において互いに隣接するセグメント相互間を任意の位置で締結でき、肉厚が薄いセグメントにも適用できる。
【0011】
また、本発明に係るセグメントの締結方法は、内側に形成した凹部に筒状のインサートを予め埋設したセグメントを隣り合わせに配設した後に、内側から各セグメントのインサートにカスガイ状の継手の脚部を嵌挿し、隣り合うセグメントを相互に締結するので、軸方向において互いに隣接するセグメント相互間を締結する場合であっても、従来のように、セグメントに予め継手を取り付ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施例に係るセグメントの締結構造を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、シールド掘削工法における、トンネル覆工壁を施工する際に用いるセグメントの締結構造を例に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
図1は本発明に係るセグメントの締結構造を適用したトンネルの覆工壁を坑口側から切羽側に向けて見た正面図、図2は図1に示したセグメントリングの展開図、図3および図4は周方向において隣接するセグメントの締結構造を示す図、図5は締結する切羽側のセグメントの端面と坑口側のセグメントの端面とを示した拡大図、図6および図7は軸方向において隣接するセグメントの締結構造を示す図である。
【0014】
シールド掘削工法により、掘削されたトンネルを覆工する覆工壁1は、複数のセグメント10を組み合わせて、輪環(セグメントリング2)を構成している。本実施例に係るトンネルの覆工壁1は、図1および図2に示すように、一対のA型セグメント11、B1型セグメント12、B2型セグメント13およびK型セグメント14の五つのセグメントにより、セグメントリング2を構成する。したがって、各セグメント10は、輪環をその円周方向に分割した形状の円弧状を呈する。
【0015】
A型セグメント11は、図2に示すように、展開した場合に、矩形を成すように形成してあり、一対のA型セグメント11は隣り合うように配設される(図1参照)。B1型セグメント12およびB2型セグメント13は、展開した場合に、切羽側よりも坑口側が長辺となる台形を成すように形成してある。また、B1型セグメント12とB2型セグメント13とは対称形を有し、一対のA型セグメント11を挟んで対向するように配設される(図1参照)。K型セグメント14は、展開した場合に、切羽側が坑口側よりも長辺となる左右対称の台形であって、B1型セグメント12とB2型セグメント13との間に配設される。
【0016】
図1および図2に示すように、各セグメント10の中央部には、セグメント10を貫通するグラウト孔15が設けてある。グラウト孔15は、地質の不良・湧水箇所、空隙などの改良と防水を目的として、セメントミルクや薬液を注入するためのものである。グラウト孔15の内周面には、螺旋状のネジ溝が形成してあり、外周面に螺旋状のネジ山を形成したソケット(図示せず)が螺合される。また、ソケットは、軸方向に貫通し、その内周面に螺旋状に形成したネジ溝が形成してあり、外周面に螺旋状のネジ山を形成したプラグ(図示せず)を螺合することにより、封止可能である。
【0017】
図2〜図4に示すように、各セグメント10の側部には、凹部16が形成してある。凹部16は、周方向において隣り合うセグメント10を相互に締結するカスガイ状の継手30を収容する部分であり、セグメント10を周方向に配設した場合に、各セグメント10に形成した凹部16が隣接し、覆工壁1の内周側から見た場合に一つの矩形の凹部17を構成することになる。本実施例では、周方向において隣り合うセグメント10を一つの継手で締結することとしたため、各セグメント10の一側部に一つの凹部16が形成してある。
【0018】
各凹部16には、インサート18が予め埋設してある。インサート18は、継手30の脚部31が嵌挿される部分であり、たとえば、ポリプロピレン等の合成樹脂等、継手30より軟らかい材料により形成してある。インサート18は、有底の円筒形状を有し、その内径は、継手30の脚部31よりも、僅かに小径に形成してある。
【0019】
カスガイ状の継手30は、基部32と基部32の両端部からセグメント10の径外方向に延在する脚部31とを有するものであり、上述したように、継手30の脚部31をインサート18に嵌挿(圧入)し、基部32を凹部17に収容すると、周方向において隣り合うセグメント10の相互間が締結される。
【0020】
また、図1および図5に示すように、軸方向において隣り合うセグメント10の接合面となる坑口側端面には、半球状に凸設した緩衝キー19が形成してあり、切羽側端面には、半球状に凹設した緩衝キー20が形成してある。これらの緩衝キー19,20は、セグメントリング2を構成した場合に、当該セグメントリング2を円周方向に等分するように形成してある。本実施例では、セグメントリング2を13等分するように緩衝キー19,20が形成してある。
【0021】
坑口側端面に形成した緩衝キー19の半径は、切羽側に形成した緩衝キー17の半径よりも小さく、セグメント10を軸方向において隣接させた場合に、坑口側端面に形成した緩衝キー19が切羽側端面に形成した緩衝キー20に収容されることになる。この結果、応力を放射状に分散させながらせん断力を滑らかに伝達可能である。
【0022】
また、図2および図6、図7に示すように、各セグメント10の坑口側端部と切羽側端部とにも、凹部21が形成してある。これらの凹部21は、各セグメント10を締結して構成したセグメントリング2とセグメント10とを軸方向に締結するカスガイ状の継手30を収容する部分であり、セグメントリング2を構成した場合に、当該セグメントリング2を円周方向に等分するように形成してある。本実施例では、セグメントリング2を13等分するように凹部21が形成してある。
【0023】
したがって、軸方向におけるセグメント10の位相を一致させて配設した場合(いわゆるイモ(通し)目地に配設した場合)、位相をずらして千鳥状に配設した場合(いわゆる馬踏み(破れ)目地に配設した場合)にも、軸方向において、隣り合うセグメント10に形成した凹部21が隣接し、覆工壁1の内周側から見た場合に一つの矩形の凹部22を構成することになる。
【0024】
これらの各凹部21にも、上述したインサート18が予め埋設してある。したがって、カスガイ状の継手30の脚部31をインサート18に嵌挿(圧入)し、基部32を凹部22に収容すると、軸方向において隣り合うセグメント10の相互間が締結される。
【0025】
上述した実施例によれば、周方向において隣り合うセグメント10を一つの継手30で締結することとしたため、各セグメント10の一側部に一つの凹部16を形成したが、任意の数の継手で締結するものとし、継手の数に対応する数の凹部16を各セグメント10の一側部に形成してもよい。
【0026】
このため、上述したセグメント10の締結構造は、周方向において互いに隣接するセグメント10相互間を任意の位置で締結でき、肉厚が薄いセグメント10にも適用できる。
【0027】
また、軸方向において隣り合うセグメント相互間を締結するために、セグメントリング2を13等分した位置に凹部21を形成したが、13等分に限られるものではなく、任意の数で等分して凹部21を形成してもよい。
【0028】
上述した実施例に係るセグメントの締結構造は、内側に形成した凹部16,21に筒状のインサート18を予め埋設したセグメント10を隣り合わせに配設した後に、内側から各セグメント10のインサート18にカスガイ状の継手30の脚部31を嵌挿し、隣り合うセグメント10を相互に締結することにより構成される。
【0029】
このため、軸方向において互いに隣接するセグメント10相互間を締結する場合であっても、従来のように、セグメントに予め継手を取り付ける必要がない。
【0030】
なお、上述したセグメント10の締結構造を適用したセグメントリング2に係る力は、円周方向に向けた圧縮力であるので、組立時にセグメント10を締結するものであれば良く、組立後の締結力を考慮する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明に係るセグメントの締結構造および締結方法は、肉厚の薄いセグメント相互の締結に有用であり、特に、鋼繊維補強コンクリート製のセグメントの締結構造および締結方法に適している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るセグメントの締結構造を適用したトンネルの覆工壁を坑口側から切羽側に向けて見た正面図である。
【図2】図1に示したセグメントリングの展開図である。
【図3】周方向において隣接するセグメントの締結構造を示す断面図である。
【図4】周方向において隣接するセグメントの締結構造を内周側から見た図である。
【図5】締結する切羽側のセグメントの端面と坑口側のセグメントの端面とを示した拡大図である。
【図6】軸方向において隣接するセグメントの締結構造を示す断面図である。
【図7】軸方向において隣接するセグメントの締結構造を内周側から見た図である。
【符号の説明】
【0033】
1 覆工壁
2 セグメントリング
10 セグメント
11 A型セグメント
12 B1型セグメント
13 B2型セグメント
14 K型セグメント
15 グラウト孔
16 凹部
17 凹部
18 インサート
19 緩衝キー
20 緩衝キー
21 凹部
22 凹部
30 継手
31 脚部
32 基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うセグメントを相互に締結するセグメントの締結構造において、
セグメントの内側に形成した凹部に筒状のインサートを予め埋設し、
該インサートにカスガイ状の継手の脚部を嵌挿し、隣り合うセグメントを相互に締結したことを特徴とするセグメントの締結構造。
【請求項2】
前記インサートが合成樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載のセグメントの締結構造。
【請求項3】
内側に形成した凹部に筒状のインサートを予め埋設したセグメントを隣り合わせに配設した後に、内側から各セグメントのインサートにカスガイ状の継手の脚部を嵌挿し、隣り合うセグメントを相互に締結することを特徴とするセグメントの締結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−233505(P2006−233505A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47496(P2005−47496)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】