説明

セメントホッパー

【課題】セメント粉体を取り扱う作業現場でのセメント粉塵の飛散による作業環境の悪化と作業者の健康に悪影響を与えていた。
【解決手段】セメントを投入するセメントホッパー2の上部開口縁部5に複数の蓋部3Aが開閉自在に取付けられて蓋体3を構成し、蓋体3の閉蓋の状態で、一部がセメントホッパー2の開口縁部5を塞がないように孔部を形成して作業孔7とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッチャープラント用のセメントホッパーに関し、さらに具体的に説明すると、袋入りセメントを投入して重量を計測し、セメントと水を攪拌・混練してセメントミルクを製造するバッチャープラントに装備されるセメントホッパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に使用されているコンクリート用のプラントは、バッチ式であるために、このバッチ式コンクリートプラントをバッチャープラントと呼んでいる。バッチ式は、セメントや骨材の計量・混合・排出を一回ごとに区切って行うもので、コンクリートの種類に応じて配合の切換や、混練時間及び混練容量の管理が正確に行える利点がある。
【0003】
以下の実施の形態において、セメントミルクを製造するバッチャープラントを例にとり説明するが、本発明のセメントホッパーはこの種のバッチャープラント用に限定されないことは言うまでもない。
【0004】
本発明のセメントホッパーは、バッチャープラントのセメント用サイロの上部に設けて、袋入りセメントを投入するためのものである。投入されたセメント袋は、セメント用サイロ内に配置されたカッター刃物で破いてコンクリートを袋から移し変え、バッチャープラントの重量計測器で重量を計測する。セメント用サイロに移し変えられたセメントは重量計測器で所定の重量が計量され、バッチャープラント内で水が添加され攪拌・混練されてセメントミルクが製造される。セメントミルクは、例えば、プレボーリング工法に使用されるもので、あらかじめ地盤をオーガーで所定の深さまで掘削したのち、削孔部に根固め用の前記セメントミルクを注入しておき、杭沈設後その硬化とともに支持力を発現させる。
【0005】
この種従来のセメントホッパーは、下部が狭くなり上部が開口した四角錘台の箱体であって、上部は開放されたままの構造であった。
【特許文献1】特開平11−107251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のこの種のセメントホッパーでは、上部が開口したままであるので、袋入りセメントをサイロ内に投入して、袋を破いた際に、粉体状のセメントが粉塵として舞い上がり、このセメント粉塵が作業場付近に漂い、セメント粉塵の飛散が収まるまで作業を一時中断しなければならないという状態であった。さらに、作業の中断ばかりでなく、作業者が防護マスクを着用したとしても飛散するセメント粉塵を呼吸器内に吸入するのを完全に阻止することは困難で、作業者の労働衛生上と、作業環境上の問題があった。
【0007】
本発明はかかる従来の問題点を解決するもので、セメントホッパーにセメントを投入して移し変える際に粉塵が作業場の雰囲気中に舞い上がるのを極力抑えることのできるセメントホッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のセメントホッパーは、バッチャープラントに設けられてセメントを投入するセメントホッパーにおいて、上記セメントホッパーの上部開口縁部に複数の蓋部が開閉自在に取付けられて蓋体を構成し、この蓋体の閉蓋の状態で、蓋体の一部にセメントホッパーの上部を開口する孔部を形成して作業孔とする。
【0009】
前記の構成により、粉体をセメントホッパー内に投入した際に、前記蓋体によりセメント用サイロ内に飛散する粉塵が拡散するのを防止することができる。
また、本発明は蓋体の上部に、前記蓋体全体を覆う第2の蓋体をセメントホッパーの開口縁部に設けている。この第2の蓋体により、内側の蓋体に空いた作業孔を塞ぎ雨水や異物の混入を防止できる。
【0010】
また、本発明はセメントホッパー内部と連通する集塵機を設置したことを特徴とする。この集塵機で蓋体を閉蓋した状態のサイロ本体内の飛散する粉塵を吸引、ろ過する。
また、本発明はセメントホッパーに作業者用の作業台を取付けたことを特徴とする。この作業台により、作業者は作業が容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記蓋体を閉蓋することによりセメントホッパー内に飛散する粉塵を大気中に拡散するのを防止でき、作業環境を改善すると共に、作業者の労働衛生の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下において、本発明のセメントホッパーの実施の形態1について図面を用いて説明する。
【0013】
図1は本発明のセメントホッパーを設けたセメント用サイロの正面図、図2は蓋体の一部を破断した平面図、図3は上部の蓋体を開いた状態の部分拡大図である。このセメント用サイロ1のセメントホッパー2は、鉄板で製作されており、上部が直方体又は立方体の箱体であり、下部が狭まった角錐台形状をしている。なお、本発明のセメントホッパーはバッチャープラントのセメント用サイト1と一体のものでもよいし、セメントホッパー2をユニット化して別体として後に組み込んだり取り外したりできるような構成のものであってもよい。
【0014】
セメントホッパー2の上部には、図2及び図3に示すような第1の蓋体3と、第2の蓋体4が取付けられている。第1の蓋体3は本実施の形態ではセメントホッパー2の内蓋と成るものであって、図2の平面視において、4枚の台形状の蓋部3Aからなり台形の下底部がセメントホッパー2の開口縁部5にヒンジ6によって開閉自在に取付けられている。
【0015】
4枚の蓋部3Aから構成された第1の蓋体3は、蓋部3Aの端部に三角形状の止板3Bを設けることにより、この止板3Aがセメントホッパー2の内周に当接して、第1の蓋体3が閉蓋の状態では図3の実線で示すように、セメントホッパー2の中央に向かって緩やかに登り勾配となるように傾斜する構造となっている。開蓋の際は図3の仮想線F1で示すように、ヒンジ部6を中心にして回転して、第1の蓋体3が上方に向かって開放するように構成されている。
【0016】
この第1の蓋体3を閉蓋した場合には、図2に示すように中央部に、セメントホッパー2内部の状態が観察できると共に、用済みのセメント袋を取り出すための正方形状の作業孔7が出来るように構成されている。即ち、この作業孔7から内部の状態が観察でき、セメントホッパー2内に投入して破れて後述するカッター刃物8に引っ掛かったセメント袋を第1の蓋体3を閉めた状態で取り出すことができる。この実施の形態では、第1の蓋体3を構成する蓋部3Aの先端部が一部切り欠いて台形状とし、閉蓋した際に中央部に正方形の作業孔7ができるように構成されている。作業孔7はセメント袋を取り出すことができる大きさで、セメントホッパー2内で飛散しているセメント粉塵が外部にあまり出ない大きさに設定する必要があるが、その形状はかかる形状に限定されない。
【0017】
なお、第1の蓋体3の4枚の蓋部3Aの先端には第1の蓋体3を開閉するときに作業者が手で開けるための取っ手9が取付けられている。
前記第1の蓋体3の全体を覆うために、第2の蓋体4がセメントホッパー2の開口縁部5にヒンジ10で開閉自在に取付けられている。この第2の蓋体4は図3の仮想線F2で示すように、第1の蓋体3の全体を覆う大きさである。この第2の蓋体4の役割は前記第1の蓋体3に作業孔7があるため、雨水や異物等が前記作業孔7から入らないように設けられたものである。この第2の蓋体4の構成は、第1の蓋体3より一回り大きく、外形は中央部が高くなるような角錐台形状をしている。なお、この第2の蓋体4は本発明では必ずしも必須ではなく、前記のような不都合の無い設置場所では設けなくてもよい。
【0018】
セメントホッパー2内にはカッター刃物8が設けられている。このカッター刃物8は図4の平面視において十字形をしており、図1、図3の正面視においては頂点8Aが尖った三角形状をした板体を2枚十字に組み合わせたものである。このカッター刃物8の中央部の頂点8Aが前記第1の蓋体3の作業孔7の中央に位置するように配置している。なお、このカッター刃物8の構成については特に図示するものに限定されない。
【0019】
セメントホッパー2の下部は底部開口部11を有し、この底部開口11と連通するようにスクリューコンベヤ12が設けられている。即ち、スクリューコンベヤ11はセメントホッパー2の下部に図1の左右方向で水平に取付けられている。セメントホッパー2の下部に集まったセメントはこのスクリューコンベヤ12により、一端側(図1の左側)から他端側(図1の右側)に搬送される。スクリューコンベヤ12の他端下部には、バッチャープラント側へセメントを送るための連結管13が接続されている。なお、スクリューコンベヤ12はセメントホッパー2の下部に設けられたモータ14によって駆動させる。
【0020】
構造フレーム15上に、集塵機16が設置されている。この集塵機16は前記のセメントホッパー2内部で舞い上がっているセメント粉塵を吸引してバグフィルター(図示せず)によりろ過するものであり、セメントホッパー2の開口縁部5の前記第1と第2の蓋体3、4の開閉に邪魔にならない位置にダクト17の先端が接続されている。
【0021】
セメントホッパー2の外周部上端には作業台18が設置されている。この作業台18は蓋体を開閉する際に作業者が乗って第1の蓋体3、第2の蓋体4を開閉するものである。なお、蓋体3,4の重量が重い場合はクレーンや滑車などを使って開閉する。さらに、セメント用サイロ1の構造フレーム15には、作業者が前記作業台18に登るための梯子19が取付けられている。
【0022】
次に上記実施の形態の使用状態を説明する。
図5はセメント用サイロ1をバッチャープラント20に設置した状態の正面図である。作業は第1の蓋体3と第2の蓋体4を開くことから始める。即ち、図3に示すように、第2の蓋体4をヒンジ部10を中心にして回転して、第2の蓋体4を開蓋状態にする。前記のように、セメント用サイロ1が大型となって作業者の人手で開けることが困難な場合はクレーンや滑車を使って第2の蓋体4を開蓋する。
【0023】
次に、第1の蓋体3の開蓋を行う。第1の蓋体3は4分割されているので、1つの蓋部3Aの重量がさほど重くない場合は作業者は作業台18に登り、作業者自身で開蓋を行う。大型のサイロで第1の蓋体3が重い場合は当然にクレーンや滑車を使用する。この第1の蓋体3を開蓋した状態で集塵機16を作動させてセメントホッパー2内の空気の吸引を開始する。
【0024】
第1の蓋体3と第2の蓋体4を開蓋した状態で、作業者はセメントホッパー2の上部開口からセメント袋を投入して袋をカッター刃物8の鋭利に尖った頂点8Aで破き、セメント袋からセメントを流出させる。その場合にセメントの粉塵が舞い上がるので第1の蓋体3を閉じて舞い上がった粉塵が飛散しなくなるまで待機する。集塵機16により、セメントホッパー2内に飛散する粉塵が吸引されるので、さほど時間を置かずに飛散は収まる。粉塵の飛散が収まった段階で破れて用済みのセメント袋は第1の蓋体3の作業孔7から抜き取る。
【0025】
さらに、所定の重量にセメントの量が達するまで、セメント袋をセメント用サイロ1に投入する作業を繰り返す。セメント袋の投入作業の際には第1の蓋体3の4枚の蓋部3Aを全部開ける必要はなく、1枚ないし2枚開けてセメント袋を投入してもよい。
【0026】
上記のようにしてセメント用サイロ1に貯留されたセメントは、バッチャープラント20の計量器により重量が計測される。所定の重量に達したセメントはスクリューコンベヤ12によりバッチャープラント20側へ搬送され、所定の量の水が添加されて攪拌・混練されてセメントミルクが製造される。前記のようにこのセメントミルクは、プレボーリング工法に使用される。
【0027】
作業が終了した場合は、清掃した後、第1の蓋体3と、第2の蓋体4を閉蓋する。この第2の蓋体4により第1の蓋体3の作業孔7から雨水が入ったり異物が混入することが防止できる。
【0028】
上記の実施の形態のセメント用サイロ1では、セメントと水を攪拌・混練するバッチャープラント20に使用した場合を説明したが、本発明はかかるバッチャープラント20用に限定されるものではなく、砂、砕石等の骨材を混練するバッチャープラントに使用してもよく、特別な用途のプラントに限定されるものではない。
【0029】
また、上記実施の形態は、セメントホッパー2が立方体又は直方体の形態であったが、このセメントホッパー2は上部が円筒形状で下部が円錐台形状のものであってもよく、上部の蓋体が3分割又は4分割され、中央部に円形の作業孔ができるようにしてもよい。もちろん、セメントホッパー2は5角形、6角形、8角形等の多角形の箱体であってもよい。
【0030】
さらに、上記の実施の形態では、第1の蓋体3が台形状の蓋部を用いて中央部に正方形の作業孔7が設けられるようにしたが、作業孔7の形状だけを円形としてもよい。
(実施の形態2)
以下において、本発明のセメントホッパーの実施の形態2について説明する。
図6は本発明のセメントホッパーを取り付けた全自動小型ミキシングプラントの正面図、図7は同プラントの側面図である。前記実施の形態1と同じ部材については図面の符号を同じくして詳細な説明は省略する。
【0031】
この実施の形態2は配合比もしくは材料の各重量を設定するだけで、全自動運転で高品質なセメントミルクを製造することが可能な全自動小型ミキシングプラントに本発明のセメントホッパー2を設けたものである。
【0032】
この全自動小型ミキシングプラントは、図6において、セメントホッパー2が構造フレームの左側上部に取り付けられている。この実施の形態2のセメントホッパー2も、前記の実施の形態1のセメントホッパー2と同様に、第1の蓋体3と第2の蓋体4が設けられている。第1の蓋体3は前記の第1の実施の形態と同様に台形状の4枚の蓋部3Aにより構成され、中央部に作業孔7が開口している。
【0033】
第2の蓋体4は第1の蓋体3を完全に覆い、作業孔7から雨水等がセメントホッパー2内に入るのを防止する。第2の蓋体4はセメントホッパー2の上部外周縁部にヒンジにて開閉自在に取り付けられている。この第2の蓋体4は雨等がかからない環境の下に設置する場合は省略してもよい。
【0034】
前記セメントホッパー2の下端部と連通してスクリューコンベヤ21が斜めに設けられている。さらに、このスクリューコンベヤ21の排出口21Aの下部に計量ミキサー22が配置され、計量ミキサー22に隣接してアジテータ23が設けられている。前記スクリューコンベヤ21によりセメントホッパー2に投入されたセメントを計量ミキサー22まで搬送して計量する。計量ミキサー22に搬入されたセメントは重量が計量されて所定の水が添加されて混練される。水と混練されたセメントはアジテータ23において攪拌羽根により攪拌されて貯留されている。
【0035】
本発明のセメントホッパー2は前記のような全自動小型ミキシングプラントにも対応でき汎用性が高い。しかも、セメントホッパー2をユニット化して取り付け、取り外しが可能なように構成してもよいし、一体化にしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のセメントホッパーは、セメント粉塵の飛散する作業現場で使用して、粉塵の飛散を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1のセメントホッパーの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1のセメントホッパーの平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1のセメントホッパーの部分拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態1のセメントホッパーの平面概略図である。
【図5】本発明の実施の形態1のセメントホッパーの使用状態図である。
【図6】本発明の実施の形態2のセメントホッパーの正面図である。
【図7】本発明の実施の形態2のセメントホッパーの側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 セメント用サイロ
2 セメントホッパー
3 第1の蓋体
3A 蓋部
4 第2の蓋体
5 開口縁部
7 作業孔
8 カッター刃物
12 コンベヤ装置(スクリューコンベヤ)
16 集塵機
18 作業台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチャープラントに設けられてセメントを投入するセメントホッパーにおいて、
上記セメントホッパーの上部開口縁部に複数の蓋部が開閉自在に取付けられて蓋体を構成し、この蓋体の閉蓋の状態で、蓋体の一部にセメントホッパーの上部を開口する孔部を形成して作業孔とすることを特徴とするセメントホッパー。
【請求項2】
前記蓋体の上部に、前記蓋体全体を覆う第2の蓋体を開閉自在にセメントホッパーの開口縁部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のセメントホッパー。
【請求項3】
セメントホッパー内部と連通する集塵機を設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のセメントホッパー。
【請求項4】
セメントホッパーに作業者用の作業台を取付けたことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のセメントホッパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−190782(P2007−190782A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10555(P2006−10555)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(394006059)岩水開発株式会社 (4)
【出願人】(599138537)有限会社辻井機販 (1)
【Fターム(参考)】