説明

セメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材

【課題】 セメント・コンクリート用混和材の製造方法において、球状化した微粉末を安定した品質で低コストに得ること。
【解決手段】 分散剤を添加したスラリー状の無機質原料を高圧で対向衝突させて球状化した微粉末の混和材を作製する工程を有する。これにより、固形分濃度を調整することで、微粉末の粒子表面の凸部が削れてほぼ球状の粒子形状を安定した品質かつ凝集させることなく得ることができる。また、粒子表面の凸部が削られる粉砕が行われることから、粒子径0.5μm以下の超微粒子の微粉末が多く得られ、マイクロフィラー効果を伴って所望とする各種材料(高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等)の高強度化及び高流動性を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築・土木分野において用いられる高強度コンクリート、無収縮グラウト材、セルフレベリング材等に使用され、流動性・強度発現性に寄与するセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高強度コンクリート、無収縮グラウト材、セルフレベリング材等に用いる無機質材料の混和材としては、シリカフューム(非晶質のSiO)が広く知られている。このシリカフュームは、高価であると共に産業廃棄物であるために品質が安定しない又は良質なものが入手困難であるデメリットがある。このため、近年、シリカフュームの代替材料の開発や品質の安定した無機質混和材の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高強度コンクリートの製造に用いる無機質混和材として、シリカフューム、石灰石、珪石、高炉スラグ等をボールミル、堅型ローラミルで粉砕して得ることが記載されている。また、特許文献2には、堅型ローラミルによって石炭や石灰石の超微粒子を得るために、分級機を組み合わせて所定の粒径を得ることが記載されている。さらに、特許文献3には、消石灰スラリーにCO含有ガスを反応させる合成法で、球状微粒子を得る製造方法が開示されている。
なお、石灰石をボールやビーズを媒体として湿式粉砕し、超微粒子粉砕物を得る方法も知られており、それらには分散剤としてポリアクリル酸のアルカリ塩(Na,K)が通常用いられている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−199549号公報
【特許文献2】特開平10−28889号公報
【特許文献3】特開平7−33433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1及び2に記載の技術は、ローラミルやボールミル等の乾式粉砕機と分級機とを組み合わせて所定の粒径を得る方法であるが、粒子径が数ミクロンからサブミクロンオーダーの超微粒子粉砕物を得るには分級効率を高める必要があり、収率が悪くコスト的に好ましくない。また、これらの技術は、ボールやローラの落下衝撃や回転運動によって被粉砕物を圧縮、せん断することによって粉砕を行うため、粒子形状の凹凸が大きく粒子形状が混和材に適した球状にはならない。
また、特許文献3に記載の技術では、石灰石を粉砕する代わりに消石灰スラリーにCO含有ガスを反応させることで球状微粒子を得ているが、リン酸塩やアクリル酸等を添加する必要があり、混和材として用いるとコンクリートの流動性や強度発現性に悪影響を及ぼす不都合がある。また、この技術で作製された球状微粒子は、製法が煩雑であると共に製品が高価であり、粒子表面が粗く流動性が悪いため、コンクリート用混和材としては不適である。
さらに、ボールやビーズを媒体として湿式粉砕し、超微粒子粉砕物を得る方法では、所望する平均粒径の超微粒子粉砕物が電子顕微鏡観察で得られるものの、一次粒子が凝集してしまうため、混和材として用いる場合には、本来の粒径が有する性能を得ることができないという問題がある。また、この技術で作製された超微粒子粉砕物も、粒子形状が球状にならない。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、球状化した微粉末を安定した品質で低コストに得ることができるセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のセメント・コンクリート用混和材の製造方法は、分散剤を添加したスラリー状の無機質原料を高圧で対向衝突させて球状化した微粉末の混和材を作製する工程を有することを特徴とする。
このセメント・コンクリート用混和材の製造方法では、分散剤を添加したスラリー状の無機質原料を高圧で対向衝突させる対向衝突湿式粉砕法で微粉末化するので、スラリー濃度を調整することで、微粉末の粒子表面の凸部が削れてほぼ球状の粒子形状を安定した品質かつ凝集させることなく得ることができる。また、粒子表面の凸部が削られる粉砕が行われることから、粒子径0.5μm以下の超微粒子の微粉末が多く得られ、マイクロフィラー効果を伴って所望とする各種材料(高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等)の高強度化及び高流動性を実現することができる。さらに、得られた微粉末は、スラリー状態で上記各種材料の混和材としてそのまま利用できるだけでなく、気流乾燥機等によって乾燥させることで、粉体として他の添加材と混合して利用することもできる。また、遠心脱水等で水分を除去した後、クリンカーおよびせっこうと同時に粉砕して混合セメントとしても利用できる。
【0008】
また、本発明のセメント・コンクリート用混和材の製造方法は、スラリー状の前記無機質原料の固形分濃度を、10%〜50%の範囲内に設定することを特徴とする。すなわち、このセメント・コンクリート用混和材の製造方法では、スラリー状の無機質原料の固形分濃度を10%〜50%の範囲内に設定することにより、平均粒径2μm以下の微粉末を得ることができる。なお、平均粒径2μm以下で球状化された微粉末は、流動性及び強度発現性に優れ、高強度コンクリート用混和材として好適である。
【0009】
さらに、本発明のセメント・コンクリート用混和材の製造方法は、前記分散剤として、ポリカルボン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能AE減水剤を用いることを特徴とする。すなわち、このセメント・コンクリート用混和材の製造方法では、ポリカルボン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能AE減水剤を用いることにより、微粉末の分散効果を損なうことなく、粉砕後に微粉末に上記減水剤が吸着されるため、高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等に用いる混和材として、減水剤の添加量を削減することができ、経済的効果が高い。
【0010】
また、本発明のセメント・コンクリート用混和材の製造方法は、石灰石又は珪石の前記無機質原料を、前記対向衝突により平均粒径2μm以下かつ円形度0.90以上に球状化された微粉末とすることを特徴とする。
すなわち、このセメント・コンクリート用混和材の製造方法では、石灰石又は珪石の無機質原料を、対向衝突湿式粉砕法により平均粒径2μm以下かつ円形度0.90以上の高い円形度に球状化された微粉末とするので、ほぼ球状の微細な石灰石微粉末又は珪石微粉末として超高強度コンクリート用又は高強度コンクリート用などにより好適な流動性及び強度発現性の高い混和材を得ることができる。なお、ここで円形度は、(粒子の投影した面積に等しい円の周長)/(粒子の投影の輪郭長)として定義される。
【0011】
また、本発明のセメント・コンクリート用混和材の製造方法は、スラリー状の前記無機質原料として、石灰岩を砕いて石灰石を採取する際に発生する微粒末を含む廃スラリーを用いても構わない。
【0012】
また、本発明のセメント・コンクリート用混和材は、上記本発明のセメント・コンクリート用混和材の製造方法によって作製されたことを特徴とする。すなわち、このセメント・コンクリート用混和材は、上記本発明のセメント・コンクリート用混和材の製造方法によって作製されて、平均粒径が数ミクロンからサブミクロンオーダーでかつ円形度の高い球状化された微粉末であるので、高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等の各種材料に混和材として用いれば、高強度化及び高流動化を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材によれば、分散剤を添加したスラリー状の無機質原料を高圧で対向衝突させて微粉末を得るので、ほぼ球状の粒子形状を安定した品質かつ凝集させることなく低コストに得ることができ、高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等において高流動性及び高強度化を実現する混和材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材の一実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態のセメント・コンクリート用混和材は、例えば高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等の各種セメント材料の混和材として用いるものである。例えば、高強度コンクリート用としては、CS(2CaO・SiO)が多い中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントに添加するのが好適である。また、無収縮グラウト材では、早強ポルトランドセメントに添加し、セルフレベリング材では、普通又は早強ポルトランドセメントに添加することが好適である。
【0016】
このセメント・コンクリート用混和材の製造方法は、例えば石灰石又は珪石の無機質原料を乾式粉砕する工程と、この粉砕した無機質原料を水性スラリー状にすると共に分散剤を添加する工程と、スラリー状の無機質原料を高圧で対向衝突させて球状化した微粉末の混和材を作製する工程(対衝突式粉砕工程)とを有している。なお、スラリー状の上記無機質原料として、石灰岩を砕いてコンクリート用粗骨材や生石灰製造用の石灰石を採取する際に発生する微粒末が多く含まれる廃スラリーも使用できる。
【0017】
上記乾式粉砕では、例えば石灰石を用いる場合は、石灰石をローラミルで乾式粉砕した後、分級して例えば平均粒径18.6μmの石灰石粉砕原料とする。また、珪石を用いる場合は、珪石をボールミルで乾式粉砕した後、分級して例えば平均粒径8.5μmの珪石粉砕原料とする。
【0018】
石灰石は、その構成鉱物の50%以上が方解石またはアラゴナイト(CaCO)とドロマイト(CaMg(CO)よりなる堆積岩で、方解石またはアラゴナイトがドロマイトよりはるかに多い岩石である。本発明の石灰石は、方解石またはアラゴナイトが80%から100%のものを用いる。石灰石は、生成過程で、隠微晶質、粗粒結晶質のものがあるがどちらも使用できる。また、かき殻等の貝殻の成分もアラゴナイトであり、石灰石と同様に使用することが可能である。
【0019】
一方、珪石は、主に石英からなる鉱物や岩石のことで、白珪石、チャート(chart)、軟珪石、砂状の珪砂等があげられる。本発明の珪石は、化学成分(SiO)が80%から100%のものを用いる。また、石英と結晶構造の異なるクリストバル石や、生成過程の異なる珪藻土または、SiOの純度が80%以上の活性白土も珪石と同様に使用することが可能である。
【0020】
上記スラリー状の無機質原料の固形分濃度は、10%〜50%の範囲内に設定される。なお、上記固形分濃度は、好ましくは20%程度に設定される。また、上記分散剤は、ポリカルボン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能AE減水剤を用い、これをスラリー状の無機質原料の固形分に対して好ましくは0.2%〜3%の範囲内で添加する。なお、本実施形態では、例えばポリカルボン酸系コンクリート用高性能AE減水剤を用いる。このポリカルボン酸系コンクリート用高性能AE減水剤は、その添加量3%を超えて設定すると、泡立ちが多くなり、好ましくない。また、ポリカルボン酸系コンクリート用高性能AE減水剤の添加量が0.2%未満であると、十分な効果を得ることができない。
また、上記対向衝突湿式粉砕工程による粉砕条件は、例えば吐出圧力200MPa、固形分濃度20%、分散剤添加率1%による30分間の湿式粉砕とされる。
【0021】
なお、対向衝突式粉砕工程で所定の平均粒径及び円形度となるように超微粉末化した後、必要に応じて気流乾燥機によって乾燥させて本実施形態のセメント・コンクリート用混和材が作製される。本実施形態では、石灰石又は珪石の無機質原料を、対向衝突により平均粒径2μm以下かつ円形度0.90以上に球状化された微粉末とした。
【0022】
このように得られたセメント・コンクリート用混和材の円形度を、走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察し、これを画像処理することにより、以下の円形度の式(1)に基づいて求めた。なお、真円の円形度は、1.00である。また、石灰石を用いて作製したセメント・コンクリート用混和材の走査型電子顕微鏡写真の一例を、図1に示す。
円形度=(粒子の投影した面積に等しい円の周長)/(粒子の投影の輪郭長) …(1)
【0023】
上記製法により石灰石(試験例1:三菱マテリアル東谷鉱山産)及び珪石(試験例2:日窒鉱業製・珪砂3号)をそれぞれ用いて作製したセメント・コンクリート用混和材の円形度を、以下の表1に示す。なお、水性スラリーの溶媒は、水道水を用いている。
なお、比較例として、石灰石をローラミルにより乾式粉砕したままの石灰石微粉砕物(比較例1)と、さらに分級を進めて本実施形態の高強度コンクリート用混和材と同等の平均粒径とした石灰石微粉砕物(比較例2)と、珪石をボールミルにより乾式粉砕したままの珪石微粉砕物(比較例3)とを、走査型電子顕微鏡で粒子形状を観察し、同様に求めた円形度を併せて表1に示す。また、図2及び図3に、それぞれ比較例1及び比較例2における走査型電子顕微鏡写真の一例を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1にからわかるように、比較例1〜3は、円形度が低く粒子形状がいびつで球状になっていないのに対し、本実施形態の製法で作製したセメント・コンクリート用混和材(試験例1、2)では、比較例に比べて高い円形度を有し、真円の円形度1.00に近い球状になっていることがわかる。また、試験例1、2は、分級せずとも、いずれも平均粒径が0.5μm以下の微細な微粉末が得られていることがわかる。
【0026】
このように本実施形態のセメント・コンクリート用混和材の製造方法では、分散剤を添加したスラリー状の無機質原料を高圧で対向衝突させる対向衝突湿式粉砕法で微粉末化するので、固形分濃度を調整することで、微粉末の粒子表面の凸部が削れてほぼ球状の粒子形状を安定した品質かつ凝集させることなく得ることができる。また、粒子表面の凸部が削られる粉砕が行われることから、粒子径0.5μm以下の超微粒子の微粉末が多く得られ、マイクロフィラー効果を伴って所望とする各種材料(高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等)の高強度化及び高流動性を実現することができる。さらに、得られた微粉末は、スラリー状態で上記各種材料の混和材としてそのまま利用できるだけでなく、気流乾燥機等によって乾燥させることで、粉体として他の添加材と混合して利用することもできる。
【0027】
また、スラリー状の無機質原料の固形分濃度を10%〜50%の範囲内に設定することにより、平均粒径2μm以下の微粉末を得ることができる。
さらに、分散剤として従来の湿式粉砕で一般に用いられているポリアクリル酸のアルカリ塩に換えて、ポリカルボン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能AE減水剤を用いることにより、微粉末の分散効果を損なうことなく、粉砕後に微粉末に上記減水剤が吸着されるため、高強度コンクリート、高強度無収縮グラウト材、セルフレベリング材等に用いる混和材として、減水剤の添加量を削減することができ、経済的効果が高い。
【0028】
本実施形態の製法により、石灰石又は珪石の無機質原料を平均粒径2μm以下かつ円形度0.90以上の高い円形度に球状化された微粉末とすることで、ほぼ球状の微細な石灰石微粉末又は珪石微粉末として超高強度コンクリート用又は高強度コンクリート用などにより好適な流動性及び強度発現性の高い混和材を得ることができる。例えば、得られた石灰石微粉末を高強度コンクリートに用いることで、従来のシリカフュームを使用した高強度コンクリートに劣らない流動性を有し、しかも後述するように圧縮強度が材齢7日の初期強度において、シリカフュームを使用した高強度コンクリートを超えた高い強度発現性を得ることができる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明に係るセメント・コンクリート用混和材の製造方法を実際に用いて、セメント・コンクリート用混和材を作製して評価した実施例について具体的に説明する。
<実施例1>
上記乾式粉砕の工程で、珪石(日窒鉱業製・珪砂3号)をボールミルにて乾式粉砕し、平均粒径8.5μmの無機質原料を得た。そして、上記湿式粉砕の工程により、この無機質原料を本実施形態の対向衝突式粉砕法で湿式粉砕し、スラリー状の無機質原料の固形分濃度と平均粒径の関係を調べた。このときの粉砕時間は、十分な粉砕が行われる時間である30分とし、分散剤は、ポリカルボン酸系コンクリート用高性能AE減水剤(レオビルド(登録商標)SP8SBS・エヌエムビー社製)をスラリー状の無機質原料の固形分に対して1.5%添加した。この結果を以下の表2に示す。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分析計(島津製作所製 SALD-2100型)を使用してD50値を測定した。また、上記湿式粉砕で処理した粉砕物と未処理のものとを比較した粒度分布測定の結果を図4に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
この結果から明らかなように、本発明範囲内、すなわちスラリー状の無機質原料の固形分濃度10%〜50%の範囲内では、平均粒径2μm以下の微細な微粉末が得られている。特に、上記固形分濃度が、20%で最も平均粒径が小さい微粉末が得られている。
【0032】
<実施例2>
上記乾式粉砕の工程で、石灰石(三菱マテリアル東谷鉱山産)をローラミルにて乾式粉砕し、平均粒径18.6μmの無機質原料を得た。そして、上記湿式粉砕の工程により、この無機質原料を本実施形態の対向衝突式粉砕法で湿式粉砕し、分散剤の添加率と平均粒径との関係を調べた。このときの粉砕時間は、60分とし、スラリー状の無機質原料の固形分濃度は、20%とした。また、分散剤には、ポリカルボン酸系コンクリート用高性能AE減水剤(レオビルド(登録商標)SP8SBS・エヌエムビー社製)を用いた。この結果を以下の表3に示す。なお、比較例として、分散剤を添加しないもの(比較例6)及び分散剤として従来使用されているポリアクリル酸系ソーダ(市販品)を添加したもの(比較例8)についても、同様に調べた結果を表3に併せて示す。
【0033】
【表3】

【0034】
この結果から明らかなように、本発明範囲内では、いずれも平均粒径0.5μm以下の微細な微粉末が得られ、ポリカルボン酸系コンクリート用高性能AE減水剤を分散剤に用いたものでは、従来使用の分散剤と遜色はない。ただし、ポリカルボン酸系コンクリート用高性能AE減水剤をスラリー状の無機質原料の固形分に対して4%添加すると泡立ちが多くなるため、この添加量としては、0.2%〜3%の範囲内が好ましい。なお、分散剤を添加しない場合(比較例6)は、粉砕性が劣り、平均粒径が3μmを超えている。
【0035】
<実施例3>
上記試験例1のスラリー状の微粉末を気流乾燥機で乾燥し、これを低熱ポルトランドセメント(三菱マテリアル社製)90重量部に対して、10重量部の割合で50kg作製し、プロシェアー型ミキサーで15分混合して、混合セメントとした(試験例9(本発明品))。また、同様の方法で、(1)シリカフューム(市販品)、(2)比較例1の乾式粉砕物を分級して得た平均粒径0.58μmの微粉末について、混合セメントとした(比較例9(比較品1)、比較例10(比較品2))。
【0036】
そして、これらのセメントを日本建築学会JASS 5T 701-2005「高強度コンクリート用セメントの品質基準(案)」(NewRC試験とも称す)に準じて,セメントモルタルを作製した。そのモルタルについて、0打フロー(流動性評価)及び圧縮強度について性能を評価した。目標とする水セメント比は,超高強度コンクリート用セメントを考慮した0.18とした。
【0037】
この評価において、混和材以外の使用材料は、以下のものを用いた。
・セメント:低熱ポルトランドセメント(三菱マテリアル社製)
・砂:セメント試験用標準砂(社団法人セメント協会製)
・減水剤:ポリカルボン酸系高性能AE(air entraining)減水剤(レオビルド(登録商標)・SP8SBSエヌエムビー社製)
・水:水道水(水温20℃))
【0038】
上記0打フローは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」のフロー試験に従ってフローコーンを上方に取り去ったとき、広がった後のモルタルの直径である。減水剤の添加率は、このモルタルの直径が250〜270mmの範囲となるように調整した。
上記圧縮強度は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に従って試験した。円柱状の供試体の寸法は、50mmφ×100mmHとし、材齢は、7日、28日、91日とした。
この結果を以下の表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
この結果から、本実施例の混和材を用いたモルタル(試験例8)は、シリカフュームを用いたモルタル(比較例9)以上の流動性、強度発現性を有した。また、石灰石を乾式粉砕して得た混和材を用いたモルタル(比較例10)は、試験例8に比較して、基準となる0打フロー値を得るためには減水剤添加率を増加する必要があり、従って流動性が悪く、強度発現性も低い。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ベースセメントとしては、上述した中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメント以外にも、普通、早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、その他の混合セメントを採用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材の一実施形態において、セメント・コンクリート用混和材を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】本発明に係るセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材の従来例(比較例1)において、セメント・コンクリート用混和材を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明に係るセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材の従来例(比較例2)において、セメント・コンクリート用混和材を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明に係るセメント・コンクリート用混和材の製造方法及びセメント・コンクリート用混和材の実施例において、湿式粉砕で処理した粉砕物と未処理のものとを比較した粒度分布測定の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤を添加したスラリー状の無機質原料を高圧で対向衝突させて球状化した微粉末の混和材を作製する工程を有することを特徴とするセメント・コンクリート用混和材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセメント・コンクリート用混和材の製造方法において、
スラリー状の前記無機質原料の固形分濃度を、10%〜50%の範囲内に設定することを特徴とするセメント・コンクリート用混和材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセメント・コンクリート用混和材の製造方法において、
前記分散剤として、ポリカルボン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能AE減水剤を用いることを特徴とするセメント・コンクリート用混和材の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のセメント・コンクリート用混和材の製造方法において、
石灰石又は珪石の前記無機質原料を、前記対向衝突により平均粒径2μm以下かつ円形度0.90以上に球状化された微粉末とすることを特徴とするセメント・コンクリート用混和材の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のセメント・コンクリート用混和材の製造方法において、
スラリー状の前記無機質原料として、石灰岩を砕いて石灰石を採取する際に発生する微粒末を含む廃スラリーを用いることを特徴とするセメント・コンクリート用混和材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のセメント・コンクリート用混和材の製造方法によって作製されたことを特徴とするセメント・コンクリート用混和材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−239355(P2008−239355A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78000(P2007−78000)
【出願日】平成19年3月24日(2007.3.24)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】