説明

セメント含有泥状物の処理方法及びセメント含有泥状物からの再生泥水

【課題】セメント含有泥状物からセメント成分をシルトとともに分離・除去することによってセメント含有泥状物の減容化を図って処理を容易とする。
【解決手段】セメント含有泥状物に希釈水を添加して比重を下げた後に、段階的に分級する。希釈水を添加することによって一旦はセメント含有泥状物の量が増加するが、最終的にはセメント含有泥状物から効果的にセメント成分をシルトとともに分離・除去することができ、セメント含有泥状物の減容化を効果的に図ることができるとともに、硬化することのない程度にまでセメント成分を分離・除去した残部から掘削泥水として使用可能な泥水を再生する手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤にセメントミルクを注入しつつ、原位置土の掘削撹拌を行う各種工事において大量に発生するセメント含有泥状物の処理方法に関する。特にはセメント含有泥状物からセメント成分をシルトとともに分離・除去することによってセメント含有泥状物の減容化を図って処理を容易とするとともに、硬化することのない程度にまでセメント成分をシルトとともに分離・除去した残部から掘削泥水として使用可能な泥水を再生するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント含有泥状物とは、セメントミルクを使用した各種の現位置土撹拌工法から生じるセメント成分を含有した余剰泥水や掘削泥土をいう。セメントミルクを使用した各種の現位置土撹拌工法、例えば地盤改良のための高圧ジェット攪拌工法,CDM工法,エココラム工法等や、土留め遮水壁を構築するためのSMW工法,トレーダー工法等においては、大量のセメント含有泥状物が発生する。例えば、高圧ジェット攪拌工法では改良体積と同等のセメント含有泥状物が排出され、土留め遮水工法では深度が深くなると掘削体積の略1.5倍のセメント含有泥状物が排出されることもある。
【0003】
このセメント含有泥状物にはセメント成分が含まれているため、このセメント成分を硬化させて養生する時間が取れない場合には、「廃棄物処理及び清掃に関する法律」(以下、廃棄物処理法という)に規定する「産業廃棄物汚泥」として処理する必要がある。一方、セメント成分によって硬化した場合には「産業廃棄物ガラス陶磁器くず」として処理する必要がある。
【0004】
そのため、セメント含有泥状物の処分には多大な廃棄処理費用が必要となるばかりでなく、近年これらの産業廃棄物を処分する最終処分場の受入能力が限界に近づいている。更に、近年は掘削体積が10万m、15万mといった大規模の工事も増え、処理すべきセメント含有泥状物の体積も15万m、22.5万mとなっている。そのため、セメント含有泥状物を効率的に減容化して、処理費用を低減することが喫緊の課題となっている。更に、セメント含有泥状物から再利用可能な有効資源を回収し、再生することも強く求められている。何より、最終的にはセメント含有泥状物を環境に負荷を与えないように処理することが求められている。
【0005】
従来、掘削された土砂を地上に排出してセメントと水と混練して製造するソイルセメントを利用したソイル柱造成時において、セメント含有泥状物の利用手段が提供されている。例えば、ソイル柱列造成時に排出された土砂と固結材等との混合物に、所定量の水を加えて、その後のソイル柱の打設に使用する手段が提供されている(特許文献1)。また、ソイル柱の造成時に発生する余剰液を土砂成分とセメント成分とに分離して、分離されたセメント成分含有液をソイル柱の造成に再利用するために、セメントの硬化を遅延させるセメント混和剤を添加する手段(特許文献2)やソイル柱列造成時に排出された土砂とセメントとの混合物を加熱乾燥あるいは自然乾燥させてから粉砕機によって粉砕することによって粉末化したソイル柱素材を得て、このソイル柱素材に所定量の水を加えてソイル柱を打設する手段が提供されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−212726号
【特許文献2】特開昭60−5910号
【特許文献3】特開平10−273911号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示す手段は、一の現場で残ったセメント含有泥状物を他の現場で使用する手段に過ぎない。そのため、セメント含有泥状物の処理を単に先延ばしにしているに過ぎず、何らセメント含有泥状物の処理手段を示しているものではなく、他の現場で使用するまでの間に硬化したり、或いは他の現場までの輸送の問題もあり、著しく実用性に欠ける。
【0008】
また、特許文献2に示す手段では、セメント含有泥状物からセメント成分含有液を分離し、セメント混和剤を添加してセメントの硬化を遅延させることによって再利用を可能としようとするものである。しかしながら、セメント成分の水和反応は既に始まっており、セメント成分の硬化を遅延させたとしても再利用できる期間は限られており、又セメント成分は経時変化によって性状が変化してしまい、所定の設計強度を得ることが困難である。
【0009】
更に、特許文献3によれば、セメント含有泥状物を一旦乾燥させてから粉砕する手段であって、乾燥・粉砕の処理を行う必要があり、煩雑で実用性に欠けるとともに、セメント成分の性状が変化してしまい、所定の設計強度を得ることが困難である。
【0010】
即ち、従来のセメント含有泥状物の処理方法は、いずれもセメント成分を残したまま処理を行い、セメント成分の有効利用・再利用を図ろうとするものである。しかしながら、セメント含有泥状物、特にセメントミルクを使用した各種の現位置土撹拌工法によって発生するセメント含有泥状物では、セメントミルクの作液時からセメントの水和反応が始まっており経時変化によって性状が変化しており、翌日に持ち越せば再利用は不可能となる。一方において、現位置土撹拌工法では大量のセメント含有泥状物が発生する。
【0011】
そのため、セメント含有泥状物の処理はセメント成分の再利用を主眼とするのではなく、大量に発生するセメント含有泥状物の減容化、即ち、廃棄物処理法によって処理しなければならないセメント含有泥状物の量を減らすことを主眼とすべきである。
【0012】
そこで、本発明はセメント含有泥状物からセメント成分をシルトとともに分離・除去することによってセメント含有泥状物の減容化を図るとともに、セメント含有泥状物から再利用可能な砂分と泥水を再生するためのセメント含有泥状物の処理方法及びセメント含有泥状物からの再生泥水を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
セメント含有泥状物は、そのままでは比重が大きいため、分級装置を使用することによりセメント成分を濃縮して分級することが困難である。そこで、本発明者は減容化を容易とするために、セメント含有泥状物に希釈水を添加して比重を下げた後に、段階的に分級することとした。希釈水を添加することによって一旦はセメント含有泥状物の量が増加するが、最終的にはセメント含有泥状物から効果的にセメント成分をシルトとともに分離・除去することができる。そのため、セメント含有泥状物の減容化を効果的に図ることができるとともに、硬化することのない程度にまでセメント成分を分離・除去した残部から掘削泥水として使用可能な泥水を再生することができる。
【0014】
本発明はその目的を達成するために、下記工程A〜工程Eの処理を順次行うことによって、セメント含有泥状物からセメント成分を除去することを特徴とするセメント含有泥状物の処理方法を基本として提供する。
工程A:セメント含有泥状物を希釈水で希釈するとともに所定サイズ以上の礫を除去することにより、所定比重に調整した第1セメント泥水とする工程。
工程B:第1セメント泥水から砂分を分級して排出し、砂分分級後の第2セメント泥水を粒径74μm程度を分級点として、第1濃縮泥水と第1分級泥水とに分級し、第1濃縮泥水を第1セメント泥水とともに分級して砂分を排出する工程。
工程C:第1分級泥水を粒径25μm程度を分級点として、第2濃縮泥水と第2分級泥水とに分級する工程。
工程D:第2濃縮泥水を廃液槽に貯留するとともに、第2分級泥水を粒径10μm程度を分級点として、第3濃縮泥水と第3分級泥水とに分級する工程。
工程E:第3濃縮泥水を廃液槽に貯留するとともに、粒径10μm以上のセメント成分を除去した第3分級泥水を処理水槽に貯留して沈殿させる工程。
【0015】
そして、工程Aにおける所定サイズ以上の礫を除去する手段として、トロンメルバケットを使用し、工程Aにおいて、5mm程度以上の礫を除去し、工程Aにおける第1セメント泥水の比重を1.2以下に調整するとともに、工程Aにおける第1セメント泥水が硬化することを防止するために撹拌してから工程Bに供給する。
【0016】
また、工程Bにおける砂分を分級する手段として、スパイラル分級機を使用して粒径74μm程度を分級点として砂分と、第2セメント泥水とに分級し、工程Bにおいて第1セメント泥水及び第1濃縮泥水から分級された砂分を埋戻し材として使用し、工程Bにおける第2セメント泥水を分級する手段として、デサンダーを使用するとともに、工程Bにおける第1分級泥水が硬化することを防止するために撹拌してから工程Cに供給する。
【0017】
更に、工程Cにおける第1分級泥水を分級する手段として、デシルターを使用し、工程Dにおける第2分級泥水を分級する手段として、マイクロクローンを使用する。そのため、第3分級泥水は、セメント成分が硬化することのない程度にまで除去されており、具体的には第3分級泥水は70重量%以上のセメント成分が除去されている。
【0018】
一方、処理水槽に貯留して沈殿させた第3分級泥水の上澄み液を工程Aにおける希釈水として使用し、処理水槽に貯留して沈殿させた第3分級泥水の沈殿泥水を掘削泥水として使用するとともに、廃液槽に貯留した第2濃縮泥水及び第3濃縮泥水を硬化させてから廃棄する。
【0019】
また、これらのセメント含有泥状物の処理方法で得られた沈殿泥水からなる再生泥水、及びこれらのセメント含有泥状物の処理方法で得られた沈殿泥水からなる再生泥水であって、掘削孔の掘削泥水として使用される再生泥水を提供する。
【発明の効果】
【0020】
上記構成の本発明によれば、比重の大きいセメント含有泥状物を希釈水で希釈することにより、セメント成分を分級可能な状態まで比重を下げ、その後段階的に分級し、最終的に10μmを分級点として分級することによって、セメント成分の70%以上をシルトとともに分離して除去することができる。そのため、セメント含有泥状物を大きく減容化できる。また、セメント成分を除去した残る30%未満のセメント成分ではもはやセメント含有泥状物が硬化することがなく、むしろ凝集効果を促してセメント含有泥状物に含まれる土粒子を沈殿させる作用を発揮する。そのため、本発明によれば、セメント含有泥状物から10μm以上の粒子径を有するセメント成分をシルトとともに段階的に分離・除去することによってセメント含有泥状物の減容化を図るとともに、10μm以上のセメント成分とともに、礫,粘性土,砂分及びシルトを分離・除去した残部から掘削泥水として使用可能な泥水を再生することができる。また、セメント含有率が低い礫砂を分離して再利用することもできる。これによって、セメント含有泥状物を大幅に減容化できるとともに、有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかるセメント含有泥状物の処理方法を概略的に示す部分システム図。
【図2】本発明にかかるセメント含有泥状物の処理方法を概略的に示す部分システム図。
【図3】本発明にかかるセメント含有泥状物の処理装置の全体側面配置図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面に基づいて本発明にかかるセメント含有泥状物の処理方法及びセメント含有泥状物からの再生泥水の実施形態を説明する。本発明は、地盤改良や土留め遮水壁構築等のために、セメントミルクを使用した各種の現位置土撹拌工法から生じるセメント成分を含有した余剰泥水や掘削泥土からなるセメント含有泥状物全般を対象としている。また、セメント成分を含有している泥状物であれば、その種類や発生原因には限定はない。
【0023】
高炉B種セメントの粒度分布表によれば、セメント含有泥状物に含有されているセメント成分の粒子は74μm以下であって、その中でも10μm以上の粒子が70%を占めている。そして、セメント成分を70%以上分離・除去すれば、残る30%未満のセメント成分ではもはやセメント含有泥状物を硬化することはできない。むしろ凝集効果を促してセメント含有泥状物に含まれる土粒子を沈殿させる作用を発揮する。そこで、本発明では、10μm以上の粒子径を有するセメント成分をシルトとともに段階的に分離・除去することによってセメント含有泥状物の減容化を図るとともに、10μm以上のセメント成分を分離・除去した残部から掘削泥水として使用可能な泥水を再生するものである。
【0024】
図1,図2は、本発明にかかるセメント含有泥状物の処理方法を概略的に示す部分システム図、図3は、その処理装置の全体側面配置図である。なお、図1,図2は本発明にかかるシステムを分割して示しており、同一部材には同一の符号を付してある。先ずセメントミルクを注入し原位置土と攪拌する各種工事から発生した余剰のセメント含有泥状物1を余剰泥状物槽2に貯留し、次の工程A〜工程Eの処理を順次行うことによって、セメント含有泥状物1からセメント成分を除去する。
【0025】
[工程A]
工程Aとして、図1に示すようにセメント含有泥状物1を希釈水3で希釈するとともに所定サイズ、例えば5mm以上の礫や希釈水に溶解しない硬質粘性土を除去することにより、所定比重、例えば1.2以下、好ましくは1.1以下の比重に調整した第1セメント泥水4を得る。具体的には、図3に示すように、アーム6aの先端にアタッチメントとして、第1分級装置として使用するトロンメルバケット5を装着したバックホウ6を余剰泥状物槽2まで移動させて、トロンメルバケット5にセメント含有泥状物1を掬い取ることができる位置に設置する。
【0026】
本発明で使用するトロンメルバケット5そのものはバックホウ6のアーム6aの先端に装着されて使用される公知の構成であって、円筒形の所定サイズのスクリーンからなる回転篩として回転自在に構成されている。このトロンメルバケット5はバックホウ6の油圧ユニットからの油圧によって所定速度で回転し、バケット内の収納物を天地反転させて、収納物を篩い分けて分級することができる。
【0027】
そして、アーム6aを駆動させてトロンメルバケット5内にセメント含有泥状物1を掬い取って、撹拌装置であるアジテータ7まで移動させて、その上方に設置する。次に希釈水槽8に設置した泥水ポンプ9を駆動させて、希釈水槽8に貯留した希釈水3をトロンメルバケット5に供給しながら、トロンメルバケット5を回転駆動する。この希釈水3の供給とトロンメルバケット5の回転を連続的に行うことによって、トロンメルバケット5内に収納されたセメント含有泥状物1を所定の比重になるまで希釈するとともに、トロンメルバケット5のスクリーンサイズによって分級する。なお、トロンメルバケット5のスクリーンサイズとしては礫や希釈水に溶解しない硬質粘性土を分級して除去することが目的であるため、5mm程度が適当である。なお、希釈水3の供給は1.2以下等の目的とする比重になれば停止すればよい。
【0028】
トロンメルバケット5のスクリーンを通過したセメント含有泥状物1は5mm以上の礫10が除去されるとともに比重が調整された第1セメント泥水4としてアジテータ7内に供給されて撹拌される。第1セメント泥水4をアジテータ7で撹拌するのは、第1セメント泥水4にはセメント成分がそのまま含まれているため、処理途中における水和反応による硬化を防止するためである。アジテータ7を通過した第1セメント泥水4は泥水ポンプ11によって、再びトロンメルバケット5に供給されて、トロンメルバケット5による礫除去と分級を必要回数行う。そして、充分に礫10の除去と比重調整の行われた第1セメント泥水4を泥水ポンプ12によって工程Bに供給する。なお、図1において、泥水ポンプ11と泥水ポンプ12を図示の制約から直列して表示してあるが、両者は並列的に配置されて、ともに独立してアジテータ7に連結されている。よって、泥水ポンプ11と泥水ポンプ12が連結されているわけではない。
【0029】
一方、セメント含有泥状物1に含まれている礫10はトロンメルバケット5によって分級されて、トロンメルバケット5のスクリーンのサイズ以上の礫10はトロンメルバケット5内に残留する。そこで、バックホウ6のアーム6aを移動させてトロンメルバケット5を排礫槽13まで移動させてトロンメルバケット5から排出する。そして、再び余剰泥状物槽2からセメント含有泥状物1を掬い取って前記と同様の処理を行う。
【0030】
[工程B]
次に工程Bとして、第1セメント泥水4を泥水ポンプ12によって、第2分級装置として使用するスパイラル分級機15に供給する。このスパイラル分級機15は、傾斜したタンク内に設置されたらせん状の掻き寄せリングが回転することによって、スパイラル分級機15内に供給された第1セメント泥水4に沈殿している砂分16を掻き上げて排砂槽17に排出するとともに、砂分16を分級して除去した後の第2セメント泥水18を第2セメント泥水槽19に排出して貯留する。このスパイラル分級機15の分級点は74μm程度であり、排砂槽17に排出される砂分16には、第1分級装置としてのトロンメルバケット5のスクリーンサイズ、例えば5mm以下であって、74μm以上の粒径の砂や細礫が含まれ、全体の性状としては砂である。よって、この砂分16は埋戻し材として再利用が可能である。なお、スパイラル分級機15に代えて、他の分級機、例えば振動スクリーンも使用可能であるが、近隣住民に対する振動騒音問題を考慮すると、騒音の少ないスパイラル分級機15が適している。
【0031】
セメント含有泥状物1に含まれているセメント成分は、74μm以下の粒子で構成されているため、第2セメント泥水18にはそのまま含有されている。そこで、第2セメント泥水槽19に貯留された第2セメント泥水18から、先ず粒径74μm以上の砂分16を確実に分級するために、第2セメント泥水18を第3分級装置として使用するデサンダー20に供給し、粒径74μm程度を分級点として、デサンダーアンダーの第1濃縮泥水21と、デサンダーオーバーの第1分級泥水22とに分級するとともに、第1濃縮泥水21を第2分級装置として使用するスパイラル分級機15に供給する。以後この処理を繰り返す。このデサンダー20によれば、74μm以上の粒子を95%以上、分級することが可能である。
【0032】
[工程C]
次に工程Cとして、図2に示すように、先ず第1分級泥水22をアジテータ24に供給して撹拌する。第1分級泥水22をアジテータ24で撹拌するのは、第1分級泥水22には、未だセメント成分がそのまま含まれているため、処理途中における水和反応による硬化を防止するためである。アジテータ24で撹拌した第1分級泥水22を泥水ポンプ25によって、第4分級装置として使用するデシルター26に供給し、粒径25μm程度を分級点として、デシルターアンダーの第2濃縮泥水27とデシルターオーバーの第2分級泥水28とに分級する。このデシルター26によれば、25μm以上のセメント粒子やシルトを殆どすべて分級することが可能である。
【0033】
第2分級泥水28からは、粒径25μm以上のセメント成分は分級されて除去されているが、10μm以上の粒子が70%を占めているセメント成分を硬化することがない程度にまで除去するためには、10μmを分級点としてセメント成分を除去する必要がある。
【0034】
[工程D]
次に工程Dとして、第2濃縮泥水27を廃液槽30に貯留するとともに、第2分級泥水28を中間水槽31に貯留する。そして、第2分級泥水28を泥水ポンプ32によって、第5分級装置として使用するマイクロクローン33に供給し、粒径10μm程度を分級点として、マイクロクローンアンダーの第3濃縮泥水34とマイクロクローンオーバーの第3分級泥水35とに分級する。このマイクロクローン33によれば、10μm以上のセメント粒子やシルトを分級することが可能である。
【0035】
[工程E]
次に工程Eとして、第3濃縮泥水34を廃液槽30に貯留するとともに、粒径10μm以上のセメント成分を除去した第3分級泥水35を処理水槽36に貯留して沈殿させる。そして、処理水槽36に貯留して沈殿させた第3分級泥水35の上澄み液35aを工程Aにおける希釈水3として使用するために、希釈水槽8に供給する。この上澄み液35aは、粒径10μm以上のセメント粒子やシルトが除去された第3分級泥水35を沈殿させた後の上澄み液であり、もはやセメント成分によって硬化することがないため、希釈水3として循環利用できる。このように、セメント含有泥状物1から希釈水3を得ることによって、セメント含有泥状物1の希釈倍率を上げることができる。そして、セメント含有泥状物1の希釈倍率を上げることによって、スパイラル分級機15,デサンダー20,デシルター26,マイクロクローン33の各分級装置の分級性能の向上と安定を図ることができる。
【0036】
一方、第3分級泥水35の沈殿泥水35bに必要な添加剤を添加し、先行掘削水等の掘削用泥水として再利用することができる。即ち、セメント含有泥状物1を処理した沈殿泥水35bからなる再生泥水を得ることができる。
【0037】
また、廃液槽30に貯留した第2濃縮泥水27及び第3濃縮泥水34は硬化させてから、或いはそのまま廃棄する。これにより、最終的に処理すべきセメント含有泥状物1は、廃液槽30に貯留された第2濃縮泥水27及び第3濃縮泥水34のみとなり、大幅に減容化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかるセメント含有泥状物の処理方法及びセメント含有泥状物からの再生泥水によれば、比重の大きいセメント含有泥状物を希釈水で希釈することにより、セメント成分を分級可能な状態まで比重を下げ、その後段階的に分級し、最終的に10μmを分級点として分級することによって、セメント成分の70%以上をシルトとともに分離して除去することができる。そのため、セメント含有泥状物を大きく減容化できる。また、セメント成分を除去した残部には残る30%未満のセメント成分ではもはやセメント含有泥状物が硬化することがなく、むしろ凝集効果を促してセメント含有泥状物に含まれる土粒子を沈殿させる作用を発揮する。そのため、本発明によれば、セメント含有泥状物から10μm以上の粒子径を有するセメント成分をシルトとともに段階的に分離・除去することによってセメント含有泥状物の減容化を図るとともに、10μm以上のセメント成分とともに、礫,粘性土,砂分及びシルトを分離・除去した残部から掘削泥水として使用可能な泥水を再生することができる。また、セメント含有率が低い礫砂を分離して再利用することもできる。これによって、セメント含有泥状物を大幅に減容化できるとともに、有効利用を図ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…セメント含有泥状物
2…余剰泥状物槽
3…希釈水
4…第1セメント泥水
5…トロンメルバケット
6…バックホウ
7,24…アジテータ
8…希釈水槽
9,11,12,32…泥水ポンプ
10…礫
13…排礫槽
15…スパイラル分級機
16…砂分
17…排砂槽
18…第2セメント泥水
19…第2セメント泥水槽
20…デサンダー
21…第1濃縮泥水
22…第1分級泥水
26…デシルター
27…第2濃縮泥水
28…第2分級泥水
30…廃液槽
31…中間水槽
33…マイクロクローン
34…第3濃縮泥水
35…第3分級泥水
35a…上澄み液
35b…沈殿泥水
36…処理水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程A〜工程Eの処理を順次行うことによって、セメント含有泥状物からセメント成分を除去することを特徴とするセメント含有泥状物の処理方法。
工程A:セメント含有泥状物を希釈水で希釈するとともに所定サイズ以上の礫を除去することにより、所定比重に調整した第1セメント泥水とする工程。
工程B:第1セメント泥水から砂分を分級して排出し、砂分分級後の第2セメント泥水を粒径74μm程度を分級点として、第1濃縮泥水と第1分級泥水とに分級し、第1濃縮泥水を第1セメント泥水とともに分級して砂分を排出する工程。
工程C:第1分級泥水を粒径25μm程度を分級点として、第2濃縮泥水と第2分級泥水とに分級する工程。
工程D:第2濃縮泥水を廃液槽に貯留するとともに、第2分級泥水を粒径10μm程度を分級点として、第3濃縮泥水と第3分級泥水とに分級する工程。
工程E:第3濃縮泥水を廃液槽に貯留するとともに、粒径10μm以上のセメント成分を除去した第3分級泥水を処理水槽に貯留して沈殿させる工程。
【請求項2】
工程Aにおける所定サイズ以上の礫を除去する手段として、トロンメルバケットを使用する請求項1記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項3】
工程Aにおいて、5mm程度以上の礫を除去する請求項1又は2記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項4】
工程Aにおける第1セメント泥水の比重を1.2以下に調整する請求項1,2又は3記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項5】
工程Aにおける第1セメント泥水が硬化することを防止するために撹拌してから工程Bに供給する請求項1,2,3又は4記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項6】
工程Bにおける砂分を分級する手段として、スパイラル分級機を使用して粒径74μm程度を分級点として砂分と、第2セメント泥水とに分級する請求項1,2,3,4又は5記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項7】
工程Bにおいて第1セメント泥水及び第1濃縮泥水から分級された砂分を埋戻し材として使用する請求項1,2,3,4,5又は6記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項8】
工程Bにおける第2セメント泥水を分級する手段として、デサンダーを使用する請求項1,2,3,4,5,6又は7記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項9】
工程Bにおける第1分級泥水が硬化することを防止するために撹拌してから工程Cに供給する請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項10】
工程Cにおける第1分級泥水を分級する手段として、デシルターを使用する請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項11】
工程Dにおける第2分級泥水を分級する手段として、マイクロクローンを使用する請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項12】
第3分級泥水は、セメント成分が硬化することのない程度にまで除去されている請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10又は11記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項13】
第3分級泥水は70重量%以上のセメント成分が除去されている請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11又は12記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項14】
処理水槽に貯留して沈殿させた第3分級泥水の上澄み液を工程Aにおける希釈水として使用する請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12又は13記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項15】
処理水槽に貯留して沈殿させた第3分級泥水の沈殿泥水を掘削泥水として使用する請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12又は13記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項16】
廃液槽に貯留した第2濃縮泥水及び第3濃縮泥水を硬化させてから廃棄する請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14又は15記載のセメント含有泥状物の処理方法。
【請求項17】
請求項15のセメント含有泥状物の処理方法で得られた沈殿泥水からなることを特徴とするセメント含有泥状物からの再生泥水。
【請求項18】
請求項15のセメント含有泥状物の処理方法で得られた沈殿泥水からなる再生泥水であって、掘削孔の掘削泥水として使用されることを特徴とするセメント含有泥状物からの再生泥水。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−236145(P2012−236145A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106605(P2011−106605)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(509134569)友弘エコロジー株式会社 (4)
【Fターム(参考)】