説明

セメント混和剤及びセメント組成物

【課題】分散性及び保持性に優れたセメント混和剤及びセメント組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを含んでなる共重合体を必須成分として含み、且つ、特定の条件を満たすセメント混和剤。


(式(1)中、Yは、炭素数4から8のアルケニル基を表し、Tは同一または異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキレン基または炭素数6〜9のアリール基を示し、mは0または1を示し、ROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜500の数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤及びセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、建築物外壁材・建築物構造体などでは、セメントに水を添加したセメントペーストやセメントペーストに細骨材である砂を混合したモルタル、モルタルに粗骨材である小石を混合させたコンクリートなどにセメント混和剤を加えて加工することで、セメント硬化物の強度や耐久性を高めている。上記セメント混和剤には、セメント組成物の含水量(減水)を低下させても充分な分散性・流動性・施工性を確保できると共に、減水によって耐久性や強度を向上できることが要求される。それ以外に、セメント組成物の分散性が経時的に悪化すると作業し難くなることから、セメント混和剤にはセメント組成物の分散性を低下し難くする(保持性に優れている)ことが要求される。
上記セメント混和剤の中でもポリカルボン酸系のセメント混和剤は、ナフタレン系などの他のセメント混和剤と比べてセメント組成物に高い分散性能を付与できることから、好適に用いられている。例えば、特許文献1には、特定の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体からなる共重合体を含むセメント 混和剤が開示されている。
従来のセメント添加剤としては、種々のポリカルボン酸系のセメント混和剤が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。しかしながら、高い分散性とより高い保持性という観点から更に改良の余地があった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−220417号公報
【特許文献2】特開2002−121055号公報
【特許文献3】特開2002−121056号公報
【特許文献4】特開2004−519406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、高い分散性を発揮すると共に、しかも、高い保持性を発現することができるポリカルボン酸系セメント混和剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリカルボン酸系ポリマーにおいて、特定の製造方法で得られ、かつ特定の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位を多く含むポリマーを必須成分とすることにより、高い分散性と高い保持性の発現性が良好なポリカルボン酸系セメント混和剤が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、
下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを含んでなる共重合体を必須成分として含有するセメント混和剤であって、該共重合体は以下の条件(A)で共重合することにより得られ、
かつ、該共重合体は、該下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを実質的にメルカプト基含有化合物を存在させないで共重合することにより得られることを特徴とするセメント混和剤である。
(A)下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)を、該下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の合計を100質量とした場合に92質量%以上となるように共重合する
【0006】
【化1】

【0007】
(式(1)中、Yは、炭素数4から8のアルケニル基を表し、Tは同一または異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキレン基または炭素数6〜9のアリール基を示し、mは0または1を示し、ROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜500の数を表す。)
【0008】
【化2】

【0009】
(式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を示し、Mは水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。)
本発明はまた、下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを含んでなる共重合体の製造方法であって、該下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とを実質的にメルカプト基含有化合物を存在させないで共重合することを特徴とする共重合体の製造方法でもある。
【0010】
【化3】

【0011】
(式(1)中、Yは、炭素数4から8のアルケニル基を表し、Tは同一または異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキレン基または炭素数6〜9のアリール基を示し、mは0または1を示し、ROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜500の数を表す。)
【0012】
【化4】

【0013】
(式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を示し、Mは水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。)
本発明は、また、上記セメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなるセメント組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明のセメント分散剤は、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを含み、しかも、上述した条件(A)で共重合することにより得られ、しかも、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを実質的にメルカプト基含有化合物を存在させないで共重合することにより得られる共重合体(本発明において共重合体Aとも言う)を含有するものである。
【0014】
本発明において、上記一般式(1)において、Yで示されるアルケニル基の炭素原子数としては、4〜8が適当であるが、5以下がより好ましい。炭素原子数4〜8のアルケニル基としては、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基が好適であるが、これらの中でも、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基が好ましい。上記一般式(1)において、Yで示されるアルケニル基の炭素原子数が2〜3である場合、すなわち不飽和アルコールがアリルアルコールやビニルアルコール等である場合には、Yが炭素数4〜8のアルケニル基である場合、すなわち不飽和アルコールがメタリルアルコールや3−メチル−3−ブテン−1−オール等である場合よりも共重合性が低くなる。重合性の低下に起因して、得られる共重合体の添加効果、具体的には高い保持性の発現効果が得られないこととなる。
【0015】
上記一般式(1)中のTは、同一または異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキレン基または炭素数6〜9のアリール基を表し、mは0または1を表す。
上記一般式(1)において、オキシアルキレン基ROにおけるRの炭素原子数としては、2〜18が適当であるが、2〜8が好ましく、2〜4がより好ましい。また、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物については、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれでも用いることができる。なお、親水性と疎水性のバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましく、全オキシアルキレン基100モル%に対し、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0016】
上記一般式(1)において、オキシアルキレン基の平均付加モル数nは、1〜500であることが適当である。この平均付加モル数が小さいほど、得られる重合体の親水性が低下して分散性能が低下する傾向があり、500を超えると、共重合反応性が低下する傾向となる。好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは10以上であり、特に好ましくは15以上であり、特に好ましくは20以上であり、また、300以下である。また、好適範囲としては、2〜500が好ましく、より好ましくは5〜500、更に好ましくは10〜500、特に好ましくは15〜500、最も好ましくは20〜300である。
なお、前記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)は、オキシアルキレン基の平均付加モル数nが1〜500の範囲において異なる2種以上の組み合わせであってもよい。
【0017】
前記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)としては、例えば、ポリアルキレングリコールビニルエーテル類、ポリアルキレングリコールアリルエーテル類等が挙げられ、より具体的には、アリルアルコール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
上記一般式(2)において、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基(プロトン化された有機アミン)を表すが、一価金属原子としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が好ましく、二価金属原子としては、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価の金属原子等が好適である。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好適である。
【0019】
上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、またはこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも特に、アクリル酸、メタクリル酸またはその塩が好ましい。
【0020】
本発明において、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とを含む単量体成分を共重合して得られる重合体が高い保持性を発現するためには、該共重合体は、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とを以下の条件(A)で共重合することにより得られるものであることが重要である。
(A)上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)を、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の合計を100質量とした場合に92質量%以上となるように共重合する。好ましくは92.5質量%以上であり、より好ましくは93質量%以上であり、さらに好ましくは93.5質量%以上である。92質量%未満であれば、保持性が低下する傾向にある。
【0021】
本発明において、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とを含む単量体成分を共重合して得られる共重合体が高い保持性と分散性を発現するためには、更に、該共重合体は、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とをメルカプト基含有化合物の含有量が少ない条件下で共重合させることを必須として得られたものである。好ましくは、実質的にメルカプト基含有化合物を存在させないで共重合することにより得られたものであることが好ましい。具体的には、メルカプト基含有化合物の使用量が上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の総モル数100に対して0.4以下であればよく、0.25以下であることがより好ましく、0.05以下であることが更に好ましく、0であることが最も好ましい。0.4を超えて存在させた場合、保持性が低下する傾向にある。保持性が低下する原因としては、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)とメルカプト基含有化合物相互作用により重合性が低下することによるものと考えられる。重合性の低下は、重合率の低下や、得られる共重合体中の単量体構造の配列順(ポリアルキレングリコール鎖の存在位置等)の変化を引き起こす。なお、本発明において、上記重合率は、後述する通り、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)で全体のピークに占めるポリマーに相当するピークの割合から算出できる。
【0022】
前記共重合体は、前記構成単位(I)および構成単位(II)のほかに、単量体(a)および/または単量体(b)と共重合可能な単量体(c)由来の構成単位(III)を含むものでもよい。単量体(c)としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩類;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;前記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。特に、不飽和モノカルボン酸系単量体(b)以外のカルボキシル基を有する単量体(c)として、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体が好適である。
【0023】
本発明のセメント混和剤は、上記共重合体(共重合体A)を含むものであるが、共重合体Aは、重合反応後に精製してセメント混和剤に添加しても良いが、精製せずに、すなわち水等の重合溶媒や開始剤残渣等を含んだまま(本発明において重合体組成物と言う)で添加することがコスト低減の面から望ましい。
【0024】
本発明の共重合体の製造方法は、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを含んでなる共重合体の製造方法であって、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とをメルカプト基含有化合物の含有量が少ない条件下で共重合することを特徴とする共重合体の製造方法である。メルカプト基含有化合物を実質的に存在させないで共重合することにより得られたものであることが好ましい。具体的には、使用量が上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の総モル数100に対して0.4以下であればよく、0.25以下であることがより好ましく、0.01以下であることが更に好ましく、0であることが最も好ましい。0.4を超えて存在させた場合、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)の重合性が低下し、重合率の低下等を引き起こす。重合率が低下する原因としては、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)とメルカプト基含有化合物相互作用により重合が阻害されることによるものと考えられる。なお、本発明において、上記重合率は、後述する通り、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフィー)で全体のピークに占めるポリマーに相当するピークの割合から算出できる。
【0025】
本発明の共重合体の製造方法は、更に、以下の条件(B)を満たす事が好ましい。
(B)上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)を、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の合計を100質量とした場合に92質量%以上となるように共重合する
該製造方法により得られた共重合体は、セメント混和剤の添加剤として有用であり、該共重合体を含有するセメント混和剤は、高い分散性を発揮すると共に高い保持性を発現することができるという本発明の作用効果を奏する。
なお、本発明で、上記一般式(1)中、Yの炭素数を4〜8に限定している理由は、炭素数が2〜3である場合、すなわち不飽和アルコールがアリルアルコールやビニルアルコール等である場合には、Yが炭素数4〜8のアルケニル基である場合、すなわち不飽和アルコールがメタリルアルコールや3−メチル−3−ブテン−1−オール等である場合よりも共重合性が低くなり、重合性の低下に起因して、所望の物性の共重合体が得られなくなるからである。具体的には高い保持性と分散性を発現する共重合体が得られないこととなる。
【0026】
上記共重合体を得る際の共重合は、溶液重合や塊状重合等の公知の方法で行なうことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行なうことができ、その際に使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられるが、原料単量体および得られる共重合体の溶解性から、水および炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶剤工程を省略できる点でさらに好ましい。
【0027】
上記水溶液重合を行なう場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2, 2'−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2, 2'−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。
【0028】
また、低級アルコール、芳香族あるいは脂肪族炭化水素、エステル化合物、あるいはケトン化合物を溶媒とする溶液重合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0029】
上記塊状重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が用いられる。
【0030】
上記共重合の際の反応温度は、特に制限はないが、例えば、過硫酸塩を開始剤とした場合、反応温度は40〜95℃の範囲が適当であり、42〜93℃の範囲が好ましく、45〜90℃の範囲がさらに好ましい。また、過酸化水素と促進剤としてL−アスコルビン酸(塩)とを組み合わせて開始剤とした場合、反応温度は30〜95℃の範囲が適当であり、35〜93℃の範囲が好ましく、40〜90℃の範囲がさらに好ましい。
共重合の際の重合時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜10時間の範囲が適当であり、好ましくは0.5〜9時間、さらに好ましくは1〜8時間の範囲が良い。重合時間が、この範囲より、長すぎたり短すぎたりすると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
【0031】
上記共重合の際の全単量体成分の使用量は、他の原料を含む全原料に対して30〜95重量%、好ましくは40〜93重量%、さらに好ましくは50〜90重量%、とりわけ好ましくは60〜90重量%の範囲が良い。特に、全単量体成分の使用量がこの範囲より低すぎると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
【0032】
上述した各単量体の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割もしくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割もしくは連続投入する方法のいずれでも良い。具体的には、単量体(a)の全量と単量体(b)の全量を反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の全量を反応容器に連続投入する方法、あるいは、単量体(a)の一部と単量体(b)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の残りをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法等が挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的または段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入重量比を連続的または段階的に変化させることにより、構成単位(I)と構成単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでも良く、反応容器へ滴下しても良く、また目的に応じてこれらを組み合わせても良い。
【0033】
共重合の際には、得られる共重合体の分子量調整のため、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤を用いることができ、2種類以上の連鎖移動剤の併用も可能である。さらに、共重合体の分子量調整のためには、単量体(c)として、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。上述した通り、本発明では、メルカプト基含有化合物を使用する場合には、十分にその使用量を少なく設計する必要があり、実質的に存在させないで共重合することにより得られたものであることが好ましい。連鎖移動剤を使用しない場合においても、開始剤添加量を多くする等の方法により、得られる共重合体を所望の分子量に調整することができる。
【0034】
所定の分子量の共重合体を再現性よく得るには、共重合反応を安定に進行させることが重要であることから、溶液重合を行なう場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01〜4ppm、さらに好ましくは0.01〜2ppm、最も好ましくは0.01〜1ppmの範囲がよい。なお、溶媒に単量体を添加後、窒素置換等を行なう場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲とすればよい。
なお、溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行なってもよく、あらかじめ溶存酸素量を調整した溶媒を用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げることにより、溶媒中の酸素分圧を低くする。窒素気流下で密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま、液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に、窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
【0035】
上述したように得られた共重合体は、そのままでもセメント分散剤の主成分として用いることもできるが、取り扱い性の観点からは、pHを5以上に調整しておくことが好ましい。重合をpH5以上で行なってもよいが、その場合、重合率の低下が起こると同時に、共重合性が悪くなりセメント分散剤として性能が低下するので、pH5未満で共重合反応を行い、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属または二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行なうことができる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。また、前記共重合体は、水溶液の形態でそのままセメント分散剤の主成分として使用しても良いし、あるいは、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用しても良い。
【0036】
上記共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で10,000〜300,000の範囲が好ましい。このような重量分子量範囲を選ぶことで、より高い分散性能を発揮するセメント分散剤が得られる。より好ましくは、10,000〜200,000の範囲であり、更に好ましくは10,000〜170,000の範囲であり、特に好ましくは10,000〜150,000の範囲である。このような重量平均分子量の範囲を選ぶことで、より高い分散性能を発揮するセメント分散剤が得られる。
【0037】
本発明のセメント分散剤は、上記共重合体を必須とするものである。本発明のセメント分散剤における前記共重合体の含有量は、特に制限されないが、分散剤中の固形分、すなわち不揮発分の20重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。
【0038】
本発明のセメント混和剤は、2種以上の共重合体が組み合わせされたものであってもよい。例えば、構成単位(I)と構成単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体の組み合わせや、上記単量体(a)により導入された構成単位(I)のオキシアルキレン基の平均付加モル数が異なる2種以上の共重合体の組み合わせ等が可能である。また、上記の条件(a)又は(b)を満たす共重合体と、該条件のうち該共重合体とは別の条件を満たす共重合体とを含むものであってもよい。
【0039】
本発明のセメント混和剤の必須成分である共重合体は、上述した方法により得ることができるが、これに限定されない。例えば、単量体(a)の代わりに、アルキレンオキシドを付加する前の単量体、すなわちアリルアルコール等の不飽和アルコールを用い、これを重合開始剤の存在下で単量体(b)と共重合させた後(必要に応じ、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体(c)をさらに共重合させてもよい)、アルキレンオキシドを平均1〜500モル付加する方法によっても、本発明の共重合体を得ることができる。
【0040】
本発明のセメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と本発明のセメント分散剤とを含有し、さらに必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。
上記例示の水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、そのような本発明のセメント組成物は、上記本発明のセメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなるセメント組成物もまた、本発明の一つである。
【0041】
上記セメント組成物において、セメントとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加しても良い。又、骨材として、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0042】
上記セメント組成物においては、その1m3 あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比にはとりたてて制限はなく、単位水量100〜185kg/m3 、使用セメント量250〜800kg/m3 、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m3 、使用セメント量270〜800kg/m3 、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.65が推奨される。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3 以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0043】
上記セメント組成物における本発明のセメント分散剤の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント重量の0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%となる比率の量を添加すれば良い。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01重量%未満では性能的に不十分であり、逆に10重量%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0044】
上記セメント組成物はまた、本発明のセメント組成物は、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0045】
本発明のセメント組成物は、公知のセメント分散剤を含有していても良い。使用可能な公知のセメント分散剤としては、特に限定はなく、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤が挙げられる。スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系等が挙げられる。
【0046】
上記ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(あるいはビニルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で2〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体にさらに(メタ)アクリルアミド及び/又は2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合した共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で5〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体とエチレンオキシドを平均付加モル数で1〜30付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の4種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸のポリアルキレングリコールエステル系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;等が挙げられる。尚、上記公知のセメント分散剤は、複数の併用も可能である。
【0047】
なお、上記公知のセメント分散剤を用いる場合、本発明のセメント分散剤と公知のセメント分散剤との配合重量比は、使用する公知のセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10の範囲内である。
【0048】
上記セメント組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ( メチレンホスホン酸) 、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ( メチレンホスホン酸) 、ジエチレントリアミンペンタ( メチレンホスホン酸) 及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0049】
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0050】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS (アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS (直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0051】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2 個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0052】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0053】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、たとえば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。なお、上記公知のセメント添加剤(材)は、複数の併用も可能である。
【0054】
本発明のセメント組成物において、セメントおよび水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の1)〜7)が挙げられる。
1)(1)本発明のセメント混和剤、(2)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(2)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(1)のセメント混和剤に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
2)(1)本発明のセメント混和剤、(2)炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体およびこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報、特開平9−241056号公報等参照)、(3)オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。なお、(1)のセメント分散剤と(2)の共重合体との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。(3)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(1)のセメント混和剤と(2)の共重合体との合計量に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
【0055】
3)(1)本発明のセメント混和剤、(2)分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。なお、(1)のセメント分散剤と(2)のスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
4)(1)本発明のセメント混和剤、(2)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(1)のセメント分散剤と(2)のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
【0056】
5)(1)本発明のセメント混和剤、(2)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルローズエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。なお、(1)のセメント混和剤と(2)の材料分離低減剤との配合重量比としては、10:90〜99.99:0.01の範囲が好ましく、50:50〜99.9:0.1の範囲がより好ましい。この組み合わせからなるセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
6)(1)本発明のセメント分散剤、(2)遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ( メチレンホスホン酸) 等のホスホン酸類等が使用可能である。なお、(1)のセメント分散剤と(2)の遅延剤との配合重量比としては、50:50〜99.9:0.1の範囲が好ましく、70:30〜99:1の範囲がより好ましい。
7)(1)本発明のセメント分散剤、(2)促進剤の2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。なお、(1)のセメント分散剤と(2)の促進剤との配合重量比としては、10:90〜99.9:0.1の範囲が好ましく、20:80〜99:1の範囲がより好ましい。
【発明の効果】
【0057】
本発明のセメント混和剤は、高い分散性を発揮すると共に、保持性に優れるものであり、このようにセメント混和剤を含んでなるセメント組成物は、土木・建築分野等、種々の分野において非常に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。なお、下記実施例、比較例および表中、特にことわりのない限り、「%」は重量%を、「部」は重量部を表すものとする。
【0059】
<共重合体の重量平均分子量測定条件>
GPC測定条件:
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumnSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウムでpH6.0に調整したものを用いる。
打ち込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、
7100、1470
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
<共重合におけるポリマー分の測定方法>
上記GPC測定チャートにおいて、GPCのRIのチャートを利用し、上記測定条件により検出されるピークのうち、Mp(ピークトップの分子量)が不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体に相当するもの、2量体に相当するもの、3量体以上に相当するものに分割し、3量体以上に相当するものを目的とする重合体のピークとする。単量体以上のピーク総面積を100とした場合に、3量体以上のピーク面積が占める割合をポリマー分とした。
【0060】
<単量体(a)と単量体(b)との質量割合の計算>
本発明において、上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と上記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の合計を100質量とした場合の単量体(a)又は単量体(b)の質量割合を算出する際に、単量体(a)に含まれる不純物のポリエチレングリコールは、除いて計算するものとする。単量体(b)は、対応するナトリウム塩に換算して計算するものとする。
【0061】
[共重合体の製造]
実施例1
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を515.55g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1061.06gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、アクリル酸33.87gを水178.30gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸1.24gを水60.88gに溶解させた還元剤水溶液、及び、過硫酸ナトリウム4.45gを水84.48gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量64320の共重合体(1)の水溶液(重合体組成物)を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は67.3%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0062】
実施例2
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を515.55g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1061.06gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で73℃に昇温した後、アクリル酸33.87gを水178.30gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸1.24gを水60.88gに溶解させた還元剤水溶液、及び、過硫酸ナトリウム4.45gを水84.48gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き73℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量45000の共重合体(2)の水溶液(重合体組成物)を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は68.5%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0063】
参考例1
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を515.26g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1060.45gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、アクリル酸33.87gを水178.30gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸0.62g、メルカプトエタノール0.62gを水60.88gに溶解させた移動剤水溶液、及び、過硫酸ナトリウム4.44gを水84.44gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量31250の共重合体(3)の水溶液を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は62.7%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0064】
実施例3
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を510.01g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1049.65gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で78℃に昇温した後、アクリル酸46.81gを水172.34gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム3.54gを水217.66gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き78℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量42000の共重合体(4)の水溶液(重合体組成物)を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は80.2%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0065】
実施例4
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を510.01g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1049.65gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、アクリル酸46.81gを水172.34gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム3.54gを水217.66gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き80℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量39280の共重合体(5)の水溶液(重合体組成物)を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は79.8%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0066】
実施例5
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を510.01g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1049.65gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で83℃に昇温した後、アクリル酸46.81gを水172.34gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、過硫酸アンモニウム3.54gを水217.66gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き83℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量34700の共重合体(6)の水溶液(重合体組成物)を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は78.9%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0067】
参考例2
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を509.93g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1049.48gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で78℃に昇温した後、アクリル酸46.8gを水86.23gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、2−メルカプトプロピオン酸0.17gを水86.22gに溶解させた移動剤水溶液、及び、過硫酸アンモニウム3.54gを水217.62gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き78℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量39300の共重合体(7)の水溶液を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は78.3%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0068】
参考例3
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を509.93g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)1049.48gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で78℃に昇温した後、アクリル酸46.8gを水86.23gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、2−メルカプトプロピオン酸0.34gを水86.22gに溶解させた移動剤水溶液、及び、過硫酸アンモニウム3.54gを水217.62gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き78℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量35153の共重合体(8)の水溶液を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は75.7%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0069】
比較例1
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を247.55g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド平均付加モル数50モル、ポリエチレングリコールを6.7質量%含む)509.49g、不飽和カルボン酸単量体として、アクリル酸0.96g仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、アクリル酸32.86gを水59.70gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を5時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時にメルカプトエタノール0.79g、水77.07gからなる、連鎖移動剤水溶液、及び、過硫酸ナトリウム3.46gを水65.68gに溶解させた開始剤水溶液を5.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続きていて、58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、30℃まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0まで中和して、重量平均分子量30,000の共重合体(9)の水溶液を得た。また、GPC(ゲルパーミッションクロマトクロマトグラフィ)で不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系の2量体及び単量体相当分(Mw4400、2200)のピークを除くポリマー分は80.2%であった。共重合における重合条件と、重合結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1から、同一組成の共重合体の製造において、メルカプト基含有化合物を使用した場合にポリマー分(%)の低下が起こることが明らかである。
【0072】
<モルタル試験条件>
得られたセメント混和剤(共重合体水溶液)を所定量、セメント、ISO強さ試験用砂を使用して、セメントの保持性能を確認した。
使用材料
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
細骨材:ISO基準砂
水:イオン交換水(共重合体と消泡剤を含む)
消泡剤:NMB社製の商品名:MA404を共重合体の10重量%使用
W/C=40
水=220.0g、セメント=550.0g、砂=1350.0g
モルタル調整方法、及び、フロー値測定方法はJIS R5201に示される強さ試験での練り混ぜ方法、及び、フロー試験に準じて行った。
【0073】
【表2】

【0074】
実施例5と参考例3の比較より、同一分子量、同一単量体組成比で重合時にメルカプト基含有化合物を実質的に使用しなかった場合に保持性が良好であることは明らかであり、実施例5と比較例1との比較により仕込みの不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体が仕込み組成で94質量%以下の場合には保持性が低下することも明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを含んでなる共重合体を必須成分として含有するセメント混和剤であって、
該共重合体は以下の条件(A)で共重合することにより得られ、
かつ、該共重合体は、該下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とを実質的にメルカプト基含有化合物を存在させないで共重合することにより得られることを特徴とするセメント混和剤。
(A)下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)を、該下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の合計を100質量とした場合に92質量%以上となるように共重合する
【化1】

(式(1)中、Yは、炭素数4から8のアルケニル基を表し、Tは同一または異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキレン基または炭素数6〜9のアリール基を示し、mは0または1を示し、ROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜500の数を表す。)
【化2】

(式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を示し、Mは水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構成単位(I)と、下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)由来の構成単位(II)とを含んでなる共重合体の製造方法であって、
該下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)とを実質的にメルカプト基含有化合物を存在させないで共重合することを特徴とする共重合体の製造方法。
【化3】

(式(1)中、Yは、炭素数4から8のアルケニル基を表し、Tは同一または異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキレン基または炭素数6〜9のアリール基を示し、mは0または1を示し、ROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜500の数を表す。)
【化4】

(式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素またはメチル基を示し、Mは水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表す。)
【請求項3】
さらに、以下の条件(B)を満たす、請求項2に記載の共重合体の製造方法。
(B)下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)を、該下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)と該下記一般式(2)で示される不飽和モノカルボン酸系単量体(b)の合計を100質量とした場合に92質量%以上となるように共重合する
【請求項4】
請求項1に記載のセメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなることを特徴とするセメント組成物。

【公開番号】特開2008−230899(P2008−230899A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72512(P2007−72512)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】