説明

セメント系浅溝用充填材、化粧板、およびその製造方法等

【課題】深さ2mm未満の浅溝に充填したときでも硬化不良を起こさず下地との良好な接着性を示し、浅溝以外の表面に付着したものを洗浄作業によって容易に除去することができるセメント系浅溝用充填材を提供し、また、この充填材を用いた美観に優れた化粧板等およびその製造方法を提供する。
【手段】水硬性充填材であって、セメントと、無機粉粒体と、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対して有機樹脂1〜3重量部とを含有し、浅溝に用いることを特徴とするセメント系浅溝用充填材であり、好ましくは、溝の深さ(D)が0.2mm以上〜2mm未満であって溝幅(W)が0.1D〜20Dの浅溝に対して特に有効であり、さらに、板表面の浅溝に上記充填材を充填し、浅溝以外の板表面に付着した充填材を洗浄して除去し、浅溝に沿った目地模様を板表面に形成したことを特徴とする化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系浅溝用充填材に関し、詳しくは、深さ2mm未満の浅溝に充填したときに良好な硬化性状および接着性を有し、浅溝の周囲に付着したものを水または酸で容易に洗浄除去することができるセメント系浅溝用充填材に関する。また、本発明は上記充填材を用いた化粧板、およびその製造方法、並びに化粧壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に、建築物の壁や床等においてタイル模様、即ち多数の四角形の陶磁器製タイルとその周囲を格子状に取り囲む模様が好まれて使用されている。しかし、壁面全てをタイルとセメント系目地材とによって施工すると施工手間やコストが嵩むため、化粧板にタイル模様を印刷することが提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、印刷した化粧板は、遠く離れた位置からはタイル模様に見えても、近づいて見ると質感がなく、実際のタイルを用いた壁面とは明らかに異なる。
【0003】
そこで、実際の陶磁器製タイルを用い、このタイル表面に浅溝を設けておき、この浅溝に目地材を充填することによって目地模様を形成することが提案されている(例えば特許文献2参照)。目地に充填する目地材は、一般にセメントモルタルまたはポリマーセメントモルタル等からなるセメント系目地材が用いられている(例えば特許文献3参照)。
【0004】
タイルの目地に効率よく目地材を充填する方法として、目地1本づつを充填するのではなく、ゴムごて等を用いて目地部分を含む周囲の表面全体に目地材をこすり付けて目地部分に充填する方法が一般に行われている。このような施工方法の場合、目地以外のタイル表面にもごく薄く目地材が付着するので、目地の周囲に付着した余分な目地材を洗浄して除去している。この洗浄作業は、目地材の充填作業から数時間ないし数日経過後に、水洗または水で希釈した塩酸による酸洗い、または水洗と酸洗いの併用により行われている。通常、酸洗いには水で30倍程度に希釈した工業用塩酸を用いている。
【0005】
一般に、セメントモルタルやポリマーセメントモルタル等のセメント系材料は、塗り厚みや充填深さ等の施工厚さが薄い場合、直射日光や風の影響により材料中の水分が空気中に蒸発し易く、セメントの硬化に必要な水分が不足して硬化不良を生じ、著しく施工下地との接着性が低下する。この為、目地以外のタイル表面にごく薄く付着したセメント系目地材は、硬化不良となるので上記洗浄作業によって除去することができる。一方、タイル目地に充填されたセメント系目地材は、目地の深さが通常は3〜5mm程度であり、目地材が充分に厚いので硬化不良とならずに洗浄作業によっては除去されない。
【0006】
ところが、溝の深さが概ね2mm未満の浅溝では、従来のセメント系目地材を用いると硬化不良を生じて浅溝から剥離し易いと云う問題がある。例えば、陶磁器製タイルを用い、このタイル表面に溝を設けて目地模様を形成する場合、タイル表面の溝はタイルの強度、重量等を考慮すると深さ2mm未満の浅溝に限られる。この深さ2mm未満の浅溝に従来のセメント系目地材を充填する場合、目地を含む周囲の表面全体に目地材をこすりつけて目地を充填した後に、目地以外の周囲に付着した目地材を洗浄して除去すると、浅溝に充填した目地材も剥離する場合が暫々ある。
【0007】
このような施工厚さが薄い際に生じる硬化不良の解決策として、施工厚さ2mm以下に用いるセメント系塗り材料では、スチレン・アクリル共重合体、酢酸ビニル・アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の有機樹脂を含有させたものが用いられている。しかし、このセメント系塗り材料は、有機系樹脂の種類や添加量によっては必要以上に接着性が強く、目的の施工部分からはみ出したものを洗浄除去するのが困難な場合があり、従って、タイル表面に設けた浅溝の充填材としては適さない。
【特許文献1】特開2001−173201号公報
【特許文献2】特開2001−123630号公報
【特許文献3】特開平11−29350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の上記問題を解決したものであり、深さ2mm未満の浅溝に充填した場合においても、硬化不良を起こさず、かつ下地との良好な接着性を示し、浅溝以外の表面に付着したものを洗浄作業によって容易に除去することができるセメント系浅溝用充填材を提供する。また、本発明は美観に優れた化粧板およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明はタイル模様を本物と同じ質感で容易に化粧板に形成することができる化粧壁の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の構成を有するセメント系浅溝用充填材、および該充填材を用いた化粧板とその製造方法、並びに該充填材を用いた化粧壁の製造方法に関する。
(1)水硬性充填材であって、セメントと、無機粉粒体と、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対して有機樹脂1〜3重量部とを含有し、浅溝に用いることを特徴とするセメント系浅溝用充填材。
(2)溝の深さ(D)が0.2mm以上〜2mm未満であって、溝幅(W)が0.1D〜20Dの浅溝に用いる上記(1)に記載の充填材。
(3)板表面に浅溝を有し、該浅溝に上記(1)または上記(2)の充填材を充填して板表面に目地模様を形成したことを特徴とする化粧板。
(4)板表面の浅溝に上記(1)または上記(2)の充填材を充填し、浅溝以外の板表面に付着した充填材を洗浄して除去し、浅溝に沿った目地模様を板表面に形成したことを特徴とする化粧板。
(5)板表面の浅溝に上記(1)または上記(2)の充填材を充填した後に、浅溝以外の板表面に付着した充填材を洗浄して除去することにより、浅溝に沿った目地模様を板表面に有する化粧板を製造することを特徴とする化粧板の製造方法。
(6)板表面に浅溝を有するタイルを板下地に複数枚並べて貼り付け、これらのタイル表面の浅溝に上記(1)または上記(2)の充填材を充填した後に、浅溝以外のタイル表面に付着した充填材を洗浄除去することにより、浅溝に沿った目地模様を有する壁面を形成することを特徴とする化粧壁の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、深さ2mm未満の浅溝に充填した場合においても、硬化不良を起こさず下地との良好な接着性を示し、浅溝以外の表面に付着したものを洗浄作業によって容易に除去することができるセメント系浅溝用充填材を得ることができる。
【0011】
また、本発明の製造方法によれば、浅溝を有するタイルを用い、浅溝に本発明の充填材を施工することによって、サイディングボード、壁、床、天井等について、質感、明暗、色彩などいずれについても個々のタイルを張り合わせて形成した場合と同様の美観に優れた目地模様を有する化粧板ないし化粧壁を容易に形成することができる。このように、本発明の製造方法によれば、タイル模様等を有する美観に優れた化粧板ないし化粧壁を容易に作製でき、これらの化粧板はサイディングボードや内装板等として好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施例と共に具体的に説明する。
本発明の充填材は、水硬性充填材であって、セメントと、無機粉粒体と、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対して有機樹脂1〜3重量部とを含有し、浅溝に用いることを特徴とするセメント系浅溝用充填材である。
【0013】
本発明の充填材は浅溝用の充填材である。本発明において浅溝とは、溝の深さ(D)が0.2mm以上〜2mm未満であるものを云い、好ましくは、溝の深さ(D)が0.2mm以上〜2mm未満であって、溝幅(W)が0.1D〜20D、更に好ましくは、溝の深さ(D)が0.2mm以上〜2mm未満であって、溝幅が0.5D〜15Dのものである。なお、本発明の充填材は浅溝用の充填材であるが、深さが2mm以上の溝についても用いることができる。
【0014】
本発明の充填材に使用するセメントは、水和反応により硬化する水硬性セメントであれば何れのものでも良く、例えば普通,早強,超早強,低熱,中庸熱,白色等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらポルトランドセメントまたはエコセメントにフライアッシュ,高炉スラグ,シリカヒューム等を混合した各種混合セメント、カラーセメント、アルミナセメント、カルシウムアルミネート,カルシウムナトリウムアルミネート,カルシウムサルホアルミネート等の急硬成分を主体とする急硬性セメント、超速硬セメント、無水石膏、半水石膏等が例示でき、これらを単独で使用または二種以上を併用できる。
【0015】
上記セメントは、好ましくは、水との練り混ぜから充填作業するための適切な可使時間を確保できることから、普通、早強または白色ポルトランドセメントの一種または二種以上を使用する。また、セメントの使用量としては下地との接着性および耐ひび割れ性を考慮し、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対し15〜70重量部が好ましく、15重量部未満では強度が不足し、下地との充分な接着性が得られ難く、70重量部を超えると硬化後の充填材にひび割れが発生する危険性が高くなる。更に好ましくは、充填時の作業性からセメントと無機粉粒体の合計100重量部に対し20〜50重量部とする。
【0016】
本発明の充填材に使用する無機粉粒体は、水に不溶性または難溶性の無機物質の粉粒体であれば良く、例えば川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、軽量細骨材、寒水石粉や石灰石粉等の石粉、セピオライト等の粘土鉱物、スラグ、フライアッシュ等が挙げられ、これを単独で使用または二種以上を併用できる。例えば、粒径の異なる二種以上の無機粉粒体を用いることによって充填性を高めることができる。また、この無機粉粒体は、深さ2mm未満の浅溝への充填性を考慮すると、最大粒径が2mm未満、即ち目開き2mmの篩を全通するものが好ましく、目開き0.6mmの篩を全通するものがより好ましい。
【0017】
上記無機粉粒体の使用量は、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対して、30〜85重量部が好ましく、30重量部未満では浅溝に傾斜がある場合に充填後の充填材が垂れ易く、85重量部を超える場合は充填し難い。硬化後の充填材にひび割れが発生する虞が低いことから、更に好ましくはセメントと無機粉粒体の合計100重量部に対し50〜80重量部が好ましい。
【0018】
本発明の充填材に使用する有機樹脂は、天然ゴム等の天然高分子、スチレン・ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体およびメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等のゴムラテックス、ポリプロピレン、ポリクロロプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、酢酸ビニル・アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・ビニルバーサテート共重合体、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂およびエポキシ樹脂等の合成樹脂、セルロース誘導体等の天然高分子誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩およびフルフリルアルコール等の水溶性ポリマー等の粉末、エマルション、水溶液を含む溶液が挙げられ、これを単独で使用または二種以上を併用できる。保水性能の高い有機樹脂と、乾燥により強度が高まる有機樹脂とを少なくとも一種ずつ併用することが、充填材の付着性や充填性を良くすることができるので好ましい。
【0019】
上記有機樹脂の使用量は、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対して、1.0〜3.0重量部が好ましい。1.0重量部未満では深さ2mm未満の浅溝に充填した場合に硬化不良を生じ、3.0重量部を超える場合は浅溝以外の表面に付着した充填材を洗浄作業で容易に除去できない。更に好ましくは、硬化不良を起し難く下地への付着が良いことと、浅溝以外の表面に付着した充填材を洗浄作業で容易に除去し易いことのバランスから、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対し1.5〜2.5重量部が適当である。有機樹脂がエマルションや水溶液を含む溶液である場合の有機樹脂の使用量は固形分換算で定めればよい。
【0020】
本発明のセメント系浅溝用充填材は水硬性であり、施工する際に水を加えて使用する。この水は、水道水等を加えても良いし、有機樹脂の形態がエマルションや水溶液の場合、エマルションや水溶液中に含まれる水分でも良い。水の使用量は、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対し10〜50重量部とするのが好ましい。
【0021】
本発明のセメント系浅溝用充填材には、セメント、無機粉粒体、有機樹脂、水以外に、本発明の効果を損なわない範囲でモルタルやコンクリートに使用できる混和材料を添加することができる。この混和材料としては例えば高性能減水剤,高性能AE減水剤,AE減水剤,流動化剤を含む減水剤、膨張材(剤)、急結剤(材)、急硬剤(材)、顔料、撥水剤、表面硬化剤、消泡剤、遅延剤、硬化促進剤、収縮低減剤等が挙げられる。
【0022】
本発明のセメント系浅溝用充填材を、施工時に水を加えて練り混ぜて使用する場合、その混練方法は限定されない。例えば、各原材料を一緒にミキサで練り混ぜても良い。あるいは練り混ぜ時に各原材料を別々に混合容器に投入しても良いし、事前に一部をミキサで混合しておいても良い。混合する順序は特に限定されない。なお、練り混ぜ時には、水、エマルション水溶液等、液状の材料にセメント等の固体の材料を添加して練り混ぜるのが好ましい。
【0023】
本発明の充填材は、タイル、サイディングボード、壁、床、天井等に形成された深さ2mm未満の浅溝について好適に適用することができる。特に0.2mm以上〜2mm未満の浅溝に対して有効である。また、深さ2mm以上の溝にも適用することができる。本発明の充填材を適用した溝を有するタイル、サイディングボード、壁、床、天井等は、本発明の充填材を適用した溝に沿って目地模様が形成され、質感、明暗、色彩などのいずれについても個々のタイル等を張り合わせて形成した目地と同様の美観に優れたタイル、サイディングボード、壁、床、天井等を得ることができる。形成される目地模様は、格子模様,幾何学模様,ロゴマークやキャラクターデザイン等の特定の図柄等について、所望の形状にあわせた溝を、タイル、サイディングボード、壁、床、天井等に形成しておくことで、自在に得ることができる。
【0024】
また、本発明の充填材を用いることによって、表面に目地模様を有する化粧板を容易に得ることができる。すなわち、浅溝を表面に有するタイルなどの板材を用い、本発明の上記充填材を浅溝に充填し、浅溝以外の板表面に付着した充填材を洗浄して除去することによって、浅溝に沿った目地模様を板表面に有する化粧板を得ることができる。
【0025】
本発明の化粧板は、板表面に浅溝を有し、この浅溝に上記浅溝用充填材を充填したものであれば良く、使用する板材は使用目的、用途、その他の形状、材質、大きさ等は限定されない。例えば、表面に2mm未満の浅溝を有するタイル、サイディングボード、壁板、床板、天井板、耐火板、ドア板、石膏ボード、市販の化粧板等を広く用いることができる。浅溝の形成方法も限定されない。
【0026】
また、本発明の充填材を浅溝に充填する方法も限定されない。例えば、本発明の充填材に水を加えて練り混ぜたものを、ゴムごて等によって、浅溝を含む周辺の板表面に擦るようにして塗りつけて浅溝に充填し、その後、浅溝以外の板表面に付着した充填材を洗浄して除去すれば良い。この洗浄作業は、水洗い、酸洗い、または水洗いと酸洗いの併用によって行い、本発明の充填材が乾燥硬化した後に行うことが好ましい。また、酸洗いに用いる酸は20〜100倍に希釈した塩酸を用いることが好ましい。
【0027】
さらに、本発明の充填材および化粧板を用いることによって、目地模様を有する化粧壁を容易に形成することができる。具体的には、例えば、板表面に浅溝を有するタイルを板下地に複数枚並べて貼り付け、これらのタイル表面の浅溝に本発明の充填材を塗り込めた後に、浅溝以外のタイル表面に付着した充填材を洗浄除去することにより、浅溝に沿った目地模様を有する壁面を容易に形成することができる。使用するタイルは、表面に浅溝を有するものであれば良く、その他の形状、材質、大きさ等は限定されない。さらに、使用する下地板の形状、材質、大きさ等も限定されない。タイルを下地板に付ける方法も限定されず、乾式方法、湿式方法のどちらでも良い。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。
〔実施例〕
表1示す配合に従い、20℃の環境下で、本発明のセメント系浅溝用充填材約2kgを調製した。すなわち、水または水とエマルジョンを金属製円筒管内(容量約5L)に所定量投入し、次いで、予め混合しておいた他の粉末原料を所定量投入した後、ハンドミキサ(回転数1000r.p.m、芝浦製作所製品:スーパーベビーミックスSBM-150E1)を用いて60秒間攪拌し、セメント系浅溝用充填材を調製した。使用材料は以下に示すものを用いた。なお、有機樹脂Aおよび有機樹脂Bは乾燥によって強度が高まる有機樹脂であり、有機樹脂Cは保水性能の高い有機樹脂である。
【0029】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製品)
無機粉粒体A:寒水石粉(比重2.7、目開き0.15mmの篩全通)
無機粉粒体B:山砂(粗粒率1.19、比重2.65、目開き0.6mmの篩全通)
減水剤:メラミンスルホン酸系縮合物(デグサコンストラクションシステムズ社製品:メルメントF10M)
有機樹脂A:アクリル系エマルション(太平洋マテリアル社製品:商品名太平洋モルヒットエマルション、固形分量45%)
有機樹脂B:エチレン酢酸ビニル系化合物(旭化成ワッカーシリコン社製品:商品名ビナパスRE524Z、再乳化型粉末樹脂)
有機樹脂C:ヒドロキシエチルメチルセルロース(信越化学工業社製品:商品名メトローズSEB−04T)
水:水道水
【0030】
【表1】

【0031】
〔比較例〕
表2に示す配合量に従う以外は実施例と同様にしてセメント系充填材を調製した。
【0032】
【表2】

【0033】
作製した各セメント系浅溝用充填材の洗浄性、接着性について以下に示す試験を行った。
<試験方法>
(1)試験用基板作製
図1に示すように、表面に深さ1mm、幅6mmの十字状浅溝を有する陶器製タイル(寸法:幅45mm×長さ95mm×厚さ6mm、表面の色:ベージュ)を用い、このタイルをセメント板(寸法;300×300×4mm)に二液硬化型エポキシ系接着剤を用いて、図2のように縦6枚、横3枚、各タイル間に5mmの目地が出来るように張付けた後、24時間静置して試験用基板とした。なお、図中、1−タイル、2−溝の深さ、3−浅溝以外のタイル表面、4−タイル長さ、5−タイル高さ、6−溝幅、7−タイル幅、8−タイル表面の浅溝、9−タイル表面の浅溝で区切られた部分の幅、10−タイル表面の浅溝で区切られた部分の長さ、11−タイル目地、12−セメント板、13−試験用基板である。また、用いたタイルの浅溝8の溝幅6は溝の深さ2(D)の6倍(6D)である。
(2)セメント系浅溝用充填材の施工
セメント系浅溝用充填材の各試料を、20℃、80%RHの環境下にて、ゴムごてを用いて上記試験用基板表面に擦りつけ、該試験用基板のタイル目地およびタイル表面の浅溝に充填して試験体を作製した。
(3)評価試験
充填材の施工から2時間経過時に、充分に水を含ませたスポンジでタイル表面を擦ることによって、浅溝以外のタイル表面に付着した充填材の水洗いを行った後、20℃、60%RHの環境下にて7日間静置した。その後、30倍に希釈した工業用塩酸を含ませたスポンジでタイル表面を擦ることによって酸洗いを行い、更に再度水洗いを行い、浅溝以外のタイル表面に付着した充填材の洗浄除去を実施した。この洗浄除去によって、浅溝以外のタイル表面に付着した充填材の除去効果を評価した。除去できたものを洗浄性○、除去できなかったものを洗浄性×とした。また、洗浄作業時にタイル浅溝に充填した充填材が剥がれなかったものを接着性○、剥がれてタイル浅溝が露出したものを接着性×と評価した。この結果を表3に示した。
【0034】
【表3】

【0035】
本発明の充填材は、何れも、浅溝以外のタイル表面に薄く付着したものを容易に洗浄除去することができ、かつ深さ1mmのタイル表面の浅溝に充填されたものは水洗いおよび酸洗いによっても剥がれ落ちることは無く、タイル表面と良好な接着性を示した。また、本発明の充填材を用いた評価試験後の試験体は、タイル目地に充填した充填材と浅溝に充填した充填材の見分けがつかず、何れも目視で濃度の等しい灰色であり、幅19.5mm、長さ44.5mmの小さいベージュ色のモザイクタイルを多数張り付けたタイル模様に見え、タイル表面と充填材との質感、明暗、および色彩が陶磁製タイルを張り合わせて形成した目地と同様の目地模様が形成されており、大変美観に優れた化粧板であった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】表面に浅溝を有するタイルの模式的な斜視図。
【図2】試験用基板の模式的な平面図。
【符号の説明】
【0037】
1−浅溝を有するタイル、2−溝の深さ、3−浅溝以外のタイル表面、4−タイル長さ、5−タイル高さ、6−溝幅、7−タイル幅、8−タイル表面の浅溝、9−タイル表面の浅溝で区切られた部分の幅、10−タイル表面の浅溝で区切られた部分の長さ、11−タイル目地、12−セメント板、13−試験用基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性充填材であって、セメントと、無機粉粒体と、セメントと無機粉粒体の合計100重量部に対して有機樹脂1〜3重量部とを含有し、浅溝に用いることを特徴とするセメント系浅溝用充填材。
【請求項2】
溝の深さ(D)が0.2mm以上〜2mm未満であって、溝幅(W)が0.1D〜20Dの浅溝に用いる請求項1に記載の充填材。
【請求項3】
板表面に浅溝を有し、該浅溝に請求項1または請求項2の充填材を充填して板表面に目地模様を形成したことを特徴とする化粧板。
【請求項4】
板表面の浅溝に請求項1または請求項2の充填材を充填し、浅溝以外の板表面に付着した充填材を洗浄して除去し、浅溝に沿った目地模様を板表面に形成したことを特徴とする化粧板。
【請求項5】
板表面の浅溝に請求項1または請求項2の充填材を充填した後に、浅溝以外の板表面に付着した充填材を洗浄して除去することにより、浅溝に沿った目地模様を板表面に有する化粧板を製造することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
板表面に浅溝を有するタイルを板下地に複数枚並べて貼り付け、これらのタイル表面の浅溝に請求項1または請求項2の充填材を充填した後に、浅溝以外のタイル表面に付着した充填材を洗浄除去することにより、浅溝に沿った目地模様を有する壁面を形成することを特徴とする化粧壁の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−119308(P2007−119308A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314662(P2005−314662)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】