説明

セメント製造方法及び製造装置

【課題】セメントの品質に影響を与えることなく、セメント製造装置の安全性も確保し、環境負荷を増加させることなく、セメント製造工程から重金属類を効率よく分離する。
【解決手段】固定炭素を含む物質(重油灰等)と、塩素分を含む物質(ASR等)とを混合して造粒し、該ペレットPを乾燥させて乾燥ペレットDとし、セメントキルン7のキルン中間から、該セメントキルン7に付設されているプレヒータの最下段サイクロン8までの区間に供給し、セメントキルン7の窯尻7aから最下段サイクロン8に至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、該燃焼ガスに含まれるダストを集塵し、該集塵したダストから重金属類を分離する。ペレットPを直接前記区間に供給してもよく、この際、粒径5mm以上50mm以下に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造方法及び製造装置に関し、特に、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気したガスに含まれるダストから鉛等の重金属類を分離する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント中の鉛(Pb)は固定化されるため、土壌への溶出はないと考えられてきた。しかし、近年のセメント製造におけるリサイクル資源の活用量の増加に伴い、セメント中の鉛の量も増加し、これまでの含有量を大幅に上回りつつある。濃度増加に伴い土壌への溶出の危険性が増加する虞もあるため、セメント中の鉛濃度をこれまでの含有量程度まで低減する技術が必要である。
【0003】
また、近年、廃棄物のセメント原料化又は燃料化によるリサイクルが推進され、廃棄物の処理量が増加するに従い、セメントキルンに持ち込まれる塩素、硫黄、アルカリ等の揮発成分も増加し、それに伴い塩素バイパスダストの発生量も増加している。塩素バイパスダストは、セメント粉砕工程で利用しているが、その発生量の増加や、鉛を含む重金属類のセメント許容濃度の超過が予想されることから、余剰となる塩素バイパスダストの処理法やセメント製造工程からの重金属の除去・回収法の開発が求められていた。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、セメント製造工程に供給される廃棄物中の塩素分及び鉛分を効果的に分離除去するため、廃棄物の水洗工程と、ろ別した固形分のアルカリ溶出工程と、このろ液から鉛を沈澱させて分離する脱鉛工程と、脱鉛したろ液からカルシウムを沈澱させて分離する脱カルシウム工程と、ろ液を加熱して塩化物を析出させて分離回収する塩分回収工程とを有する廃棄物の処理方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、飛灰等の廃棄物から鉛及び亜鉛を分別して除去するにあたって、カルシウムイオンを含む溶液を混合してスラリーを得た後、固液分離して、亜鉛を含む固形分と、鉛を含む水溶液とを得る工程と、鉛を含む水溶液に硫化剤を添加した後、固液分離して、硫化鉛と、カルシウムイオンを含む溶液とを得る工程等を含む廃棄物の処理方法が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、セメント製造工程からセメントキルン燃焼ガスの一部を抽気し、抽気した燃焼ガスに含まれるダストを集塵し、タリウム、鉛、セレンから選択される1つ以上を除去又は回収することを特徴とするセメント製造工程からの重金属除去・回収方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、セメントキルンの窯尻の燃焼ガスのO2濃度を5%以下及び/又はCO濃度を1000ppm以上に制御することで、セメントキルン内の原料温度が800〜1100℃の領域を還元雰囲気化して鉛の揮発を促進し、その上で、セメントキルンの燃焼ガスの一部を抽気して燃焼ガスに含まれるダストを集塵し、集塵したダストから鉛を回収する鉛除去方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−1218号公報
【特許文献2】特開2003−201524号公報
【特許文献3】特開2006−347794号公報
【特許文献4】国際公開2008/050678号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1〜3に記載の方法においては、塩素バイパスダスト等に含まれる鉛等の重金属類を除去しているが、塩素バイパスダストを通じて系外に除去される重金属類の割合は、全体の30%程度に過ぎず、たとえ、塩素バイパスダスト中の重金属類を100%除去したとしても、残りの70%程度は、依然としてセメントキルンで製造されるクリンカに取り込まれるため、セメントの重金属類含有率を低下させるのは容易ではない。そこで、セメントキルン内の重金属類の揮発を促進し、塩素バイパスダスト等への重金属類の濃縮率を高めることが重要である。
【0010】
ここで、重金属類の揮発技術には、塩化揮発法と還元揮発法が知られている。しかし、一般的に行われる塩化揮発法をセメント焼成工程に適用すると、セメント製造において常識的な量を遙かに上回る量の塩素を投入する必要がある。一方、還元揮発法を適用するのは、セメントの色が黄色を呈することとなるため、セメントの品質面で問題となる。
【0011】
また、特許文献4に記載の方法においては、重金属類の揮発率を上昇させるため、セメントキルンの窯尻部の酸素濃度を抑え、COガスを発生させるような雰囲気を形成するが、この場合、セメントキルン燃焼ガスに含まれるダストを集塵するための電気集塵機の爆発や、ダイオキシン類のような有害物質の発生する虞があるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、セメントの品質に影響を与えることなく、セメント製造装置の安全性も確保し、環境負荷を増加させることなく、セメント製造工程から重金属類を効率よく分離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、セメント製造方法であって、固定炭素を含む物質と、塩素分を含む物質とを混合して造粒し、該造粒物を、セメントキルンのキルン中間から、該セメントキルンに付設されているプレヒータの最下段サイクロンまでの区間に供給し、該セメントキルンの窯尻から前記最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、該燃焼ガスに含まれるダストを集塵し、該集塵したダストから重金属類を分離することを特徴とする。
【0014】
そして、本発明によれば、セメントキルンのキルン中間から、該セメントキルンに付設されているプレヒータの最下段サイクロンの区間から、固定炭素を含む物質と、塩素分を含む物質との混合造粒物を供給することにより、キルン内での重金属類の揮発率を高め、また、セメントキルンの燃焼ガスの一部を抽気する位置での重金属類の濃縮率を高めることができる。そのため、セメントキルンの燃焼ガスの一部を抽気する際に、その燃焼排ガスに同伴して抽気される重金属類が増加するため、塩素バイパスダスト等で効率よく重金属を回収することが可能になる。ここで、固定炭素を含む物質と、塩素分を含む物質とを混合した造粒物を用いることで、セメントキルン内等の重金属類の効率的な揮発、濃縮ができる目標位置、温度範囲900℃〜1300℃への固定炭素と塩素分の両方の供給が可能となり、重金属の揮発率を高く維持するとともに、燃焼ガスの一部を抽気する位置での重金属類の濃縮率を高めることができる。さらに、セメント製造装置の安全性も確保し、環境負荷を増加させることなく実施することが可能になる。
【0015】
上記セメント製造方法において、前記造粒物を粒径5mm以上50mm以下に調整した後、前記区間に供給することができる。これによって、セメント製造工程からの重金属回収・除去を促進することが可能になる。
【0016】
また、上記セメント製造方法において、前記固定炭素を含む物質を、コークス、石炭、無煙炭、瀝青炭、褐炭、黒鉛、木炭、ミックスコークス、ファインコークス、活性コークス、電極くず、廃トナー、重油灰及びフライアッシュに含まれる未燃カーボンの各々0.1μm以上1mm以下の微粉、並びに難燃性プラスチック、フェノール樹脂、フラン樹脂、熱硬化性樹脂及びセルロースの各々炭化物の0.1μm以上1mm以下の微粉からなる群より選択される1又は2以上とすることができる。
【0017】
さらに、上記セメント製造方法において、前記塩素分を含む物質をNaCl、KCl、CaCl2等のアルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物、FeCl2、CuCl2等の金属塩化物、含塩素廃プラスチック、塩化ビニル、都市ごみ焼却灰、浚渫土、廃自動車シュレッダーダストからなる群より選択される1又は2以上とすることができる。
【0018】
また、本発明は、セメント製造装置であって、固定炭素を含む物質と、塩素分を含む物質とを混合して造粒する造粒装置と、セメントキルンのキルン中間から、該セメントキルンに付設されているプレヒータの最下段サイクロンまでの区間から前記造粒装置で造粒された造粒物を供給する供給装置と、該セメントキルンの窯尻から前記最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気する抽気装置と、該抽気装置によって抽気された燃焼ガスに含まれるダストを集塵する集塵装置と、該集塵装置によって集塵されたダストから重金属類を分離する重金属類分離装置とを備えることを特徴とする。本発明によれば、上述の発明と同様に、セメント製造装置の安全性を確保し、環境負荷を増加させることなく、効率よく重金属類を回収することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、セメントの品質に影響を与えることなく、セメント製造装置の安全性も確保し、環境負荷を増加させることなく、セメント製造工程から重金属類を効率よく分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるセメント製造装置の一実施の形態を示す概略図である。
【図2】セメントキルンに付設される塩素バイパス装置の全体構成を示すフローチャートである。
【図3】本発明にかかるセメント製造装置の実施例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明においては、固定炭素を含む物質として重油灰を用い、塩素分を含む物質として自動車シュレッダーダスト(以下、「ASR」という)を用い、重金属の一つである鉛を分離する場合を例にとって説明する。
【0022】
図1は、本発明にかかるセメント製造装置の一実施の形態を示し、このセメント製造装置1は、重油灰とASRと水とを混練/混合する混練/混合機2と、混練/混合した原料を造粒する造粒機3と、造粒された造粒物(以下、「ペレット」という)Pを乾燥させる乾燥機4と、乾燥物(以下、「乾燥ペレット」という)Dをセメントキルン(以下、「キルン」と略称する)7のキルン中間から、キルン7に付設されているプレヒータの最下段サイクロ8ンまでの区間(本実施形態では窯尻7aから)に投入するための投入装置5等を備える。
【0023】
混練/混合機2は、重油灰に水を添加して造粒に必要な粘性を得るとともに、重油灰とASRとを混合するために備えられ、例えば、コンティニュアスニーダーやパグミキサー、レディゲミキサー、プロシェアミキサー等のバッチ式、連続式の混練/混合機を用いることができる。尚、バッチ式の混練/混合機を用いる場合には、造粒機3への供給を一定に保つための装置を設ける。
【0024】
造粒機3は、混練/混合機2からの混練/混合物Mを造粒してペレットPとするために備えられ、例えば、押出式(ディスクペレッタ、プレスペレッタ等)、圧縮式(タブレットマシーン、ブリケットマシーン等)、転動式(パンペレタイザー等)を用いることができる。
【0025】
乾燥機4は、ペレットPを乾燥させてハンドリング性を向上させるために設けられ、キルン7やプレヒータの排ガス、クリンカクーラの排ガス、塩素バイパスの排ガス等を利用してペレットPを乾燥させることができる。尚、ペレットPの強度が十分な場合には、乾燥機4を省略することができる。
【0026】
投入装置5には、ベルトフィーダー、エプロンフィーダー、振動フィーダーのような定量的に投入できる装置を用い、キルン7にはシュート6より乾燥ペレットDを自然に落下投入してもよく、空気等を利用して窯尻7aからキルン7の内部に噴出してもよく、キルン7の胴体部より投入することもできる。また、造粒機3での造粒量を固定することができるのであれば、造粒機3からキルン7の内部に直接ペレットPを投入することもできる。
【0027】
一方、図2に示すように、キルン7には塩素バイパス装置20が備えられ、キルン7の窯尻7aから最下段サイクロン8(図1参照)に至るまでのキルン排ガス流路からの抽気ガスG1は、プローブ22において冷却ファン23からの冷却空気Aによって冷却された後、分級機24に導入され、粗粉ダストD1と、微粉D2及びガスG2とに分離される。粗粉ダストD1は、キルン7に戻され、微粉D2及びガスG2は、冷却器25により冷却後、塩化カリウム(KCl)等を含む微粉(塩素バイパスダスト)D2を集塵機27で回収する。尚、集塵機27から排出された排ガスG3は、排気ファン29を経てキルン7に付設されたプレヒータ、又はプレヒータの出口等の排ガス流路に戻される。
【0028】
次に、上記セメント製造装置1を用いた本発明にかかるセメント製造方法について説明する。
【0029】
図1に示すように、ASRと重油灰とを混練/混合機2に所定の塩素濃度になるように定量性のある供給機を用いて投入し、水を所定の水分となるように添加し、混練/混合する。その際、ASRは、ペレットPの強度確保のために、篩い分けや磁力選別器による異物除去や、破砕による粒度調整等の前処理を施したものを利用した方がよい。
【0030】
混練/混合機2における水分添加量は、造粒前のドライベースの重油灰に対して、15質量%以上50質量%以下の水分となるように添加することが好ましい。添加する水分の質量が15質量%未満の場合には、重油灰をペレット化することができず、所望の粒度の物が得られないという問題があり、一方、50質量%を超える場合には、混練/混合での粘着性の増加により造粒ができなかったり、造粒後にペレット同士が粘着するという問題がある。尚、所望の強度が得られない場合には、ベントナイト、リグニン、水ガラス、ポリビニルアルコール等の添加材を適宜加えることも可能である。
【0031】
次に、造粒機3により、混練/混合した重油灰及びASRを造粒し、水分を調整したペレットPを得る。尚、造粒機3によってペレットPとするのは、窯尻7a等から投入した際に、粒径が小さすぎるとキルン排ガス流路を流れるガスに同伴して最下段サイクロン8側に重油灰、ASRが流れ、その結果、鉛の揮発領域への重油灰、並びに鉛濃縮領域へのASR供給量が減少し、効率的な鉛揮発・回収ができなくなることを回避するためである。
【0032】
造粒機3において、ペレットPの粒径が5〜50mmとなるように造粒し、その後乾燥機4で乾燥ペレットDとすることが好ましい。乾燥ペレットDの粒径が5mm未満の場合には、キルン7に投入した乾燥ペレットDが飛散し、鉛の揮発温度域への乾燥ペレットDの供給量が減少し、効率的な揮発率を確保できなくなるとともに、効率的な鉛の濃縮・回収ができなくなる。一方、乾燥ペレットDの粒径が50mmを超える場合には、セメントの色が黄色を呈してセメントの品質面で問題となることが懸念される。
【0033】
次に、キルン7によるセメント焼成中に、投入装置5によって乾燥ペレットDをキルン7の窯尻7aから投入し、キルン7内での鉛の揮発を促進する。
【0034】
キルン7で揮発した鉛は、図2において、プローブ22によって抽気されたガスに含まれ、抽気ガスG1は、プローブ22において冷却された後、分級機24に導入され、粗粉ダストD1と、微粉D2及びガスG2とに分離され、最終的に、微粉D2が集塵機27で回収される。この微粉D2には、鉛がより多く揮発した分、鉛が従来よりも多く濃縮されているため、この鉛を分離することによりセメント製造工程から鉛を効率よく除去し、キルン7で製造されるセメントクリンカの鉛含有率を低下させることができる。
【0035】
尚、上記実施の形態においては、塩素バイパスダストから鉛を分離する場合を例示したが、亜鉛、カドミウム、アンチモン、セレン、砒素、タリウムについても上記と同様の要領にて分離することができる。
【0036】
また、塩素バイパスダスト以外にも、キルン7の窯尻7aから最下段サイクロン8に至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、抽気した燃焼ガスに含まれるダストであれば、上記と同様の方法にて上記重金属類を分離することができる。
【0037】
尚、上記実施の形態においては、固定炭素を含む物質として重油灰を例示したが、石炭、無煙炭、瀝青炭、褐炭、黒鉛、木炭、コークス、ミックスコークス、ファインコークス、活性コークス、電極くず、廃トナー、重油灰及びフライアッシュに含まれる未燃カーボンの各々0.1μm以上1mm以下の微粉、並びに難燃性プラスチック、フェノール樹脂、フラン樹脂、熱硬化性樹脂及びセルロースの各々炭化物の0.1μm以上1mm以下の微粉等を用いることができる。
【0038】
また、塩素分を含む物質としてASRを例示したが、NaCl、KCl、CaCl2等のアルカリ塩、FeCl2、CuCl2等の金属塩、含塩素廃プラスチック、塩化ビニル、都市ごみ焼却灰、浚渫土、廃自動車シュレッダーダスト等を用いることもできる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の実施例について図3を参照しながら説明する。本実施例においては、表1に示したセメント製造装置1と、図2に示した塩素バイパス装置20とを使用し、固定炭素を含む物質として重油灰を用い、塩素分を含む物質としてCaCl2を用い、重金属の一つである鉛を分離した。
【0040】
図3において、混練/混合機2には、コンティニュアスニーダー(株式会社ダルトン社製)を用い、造粒機3には、ディスクペレッタ(株式会社ダルトン社製)乾燥機4には、箱型乾燥機(自社製、ジェットヒーターにより熱風を発生し、乾燥させる)を用いた。
【0041】
重油灰120kg/hとCaCl2を、図1に示す配合で混練/混合機2によって混練/混合後、造粒機3にて10mmφのペレットPを製造した。ペレットPの水分は30質量%で調整した。また、CaCl2は、所定の水分、投入量となるように水溶液として混練/混合機2に添加した。乾燥機4によって、造粒後のペレットPを水分2質量%以下になるまで乾燥させた。
【0042】
乾燥機4よって乾燥した乾燥ペレットDをキルン7の窯尻7aより投入し、鉛揮発率((1−クリンカ鉛濃度/最下段サイクロン8の原料中の鉛濃度)×100)と、塩素バイパス装置20における微粉D2の鉛濃度を測定した。上記鉛揮発率と、鉛濃度の測定結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
同表において、ブランクは、重油灰及びCaCl2ともに添加しなかった場合、水準1は、重油灰のみを用いて乾燥ペレットDを製造して窯尻7aより投入した場合を示す。同表より、重油灰及びCaCl2を混合して造粒し、窯尻7aより投入することで、鉛揮発率及び微粉D2の鉛濃度が上昇し、特に、水準4においてブランク等と比較して大幅にこれらの値が上昇し、鉛を効率よく分離できていることが判る。
【符号の説明】
【0045】
1 セメント製造装置
2 混練/混合機
3 造粒機
4 乾燥機
5 投入装置
6 シュート
7 セメントキルン
7a 窯尻
8 最下段サイクロン
20 塩素バイパス装置
22 プローブ
23 冷却ファン
24 分級機
27 集塵機
29 排気ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定炭素を含む物質と、塩素分を含む物質とを混合して造粒し、
該造粒物を、セメントキルンのキルン中間から、該セメントキルンに付設されているプレヒータの最下段サイクロンまでの区間に供給し、
該セメントキルンの窯尻から前記最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気し、
該燃焼ガスに含まれるダストを集塵し、
該集塵したダストから重金属類を分離することを特徴とするセメント製造方法。
【請求項2】
前記造粒物を粒径5mm以上50mm以下に調整した後、前記区間に供給することを特徴とする請求項1に記載のセメント製造方法。
【請求項3】
前記固定炭素を含む物質を、コークス、石炭、無煙炭、瀝青炭、褐炭、黒鉛、木炭、ミックスコークス、ファインコークス、活性コークス、電極くず、廃トナー、重油灰及びフライアッシュに含まれる未燃カーボンの各々0.1μm以上1mm以下の微粉、並びに難燃性プラスチック、フェノール樹脂、フラン樹脂、熱硬化性樹脂及びセルロースの各々炭化物の0.1μm以上1mm以下の微粉からなる群より選択される1又は2以上とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のセメント製造方法。
【請求項4】
前記塩素分を含む物質を、アルカリ金属塩化物、アルカリ土類金属塩化物、金属塩化物、含塩素廃プラスチック、塩化ビニル、都市ごみ焼却灰、浚渫土、廃自動車シュレッダーダストからなる群より選択される1又は2以上とすることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のセメント製造方法。
【請求項5】
固定炭素を含む物質と、塩素分を含む物質とを混合して造粒する造粒装置と、
セメントキルンのキルン中間から、該セメントキルンに付設されているプレヒータの最下段サイクロンまでの区間から前記造粒装置で造粒された造粒物を供給する供給装置と、
該セメントキルンの窯尻から前記最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より燃焼ガスの一部を抽気する抽気装置と、
該抽気装置によって抽気された燃焼ガスに含まれるダストを集塵する集塵装置と、
該集塵装置によって集塵されたダストから重金属類を分離する重金属類分離装置とを備えることを特徴とするセメント製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−180063(P2010−180063A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22126(P2009−22126)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】