説明

セラミックコンデンサ

【課題】セラミックコンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴りを抑制すること。
【解決手段】セラミックコンデンサ1は、セラミックコンデンサ素子10と、一対の外部電極20、30と、一対の接続端子40、50と、を有する。一対の外部電極20、30は、セラミックコンデンサ素子10の対向する端面をそれぞれ別個に覆う。一対の接続端子40、50は、それぞれの外部電極20、30と電気的に接続される。そして、接続端子40、50は、ヤング率の異なる材料が少なくとも2層積層されるとともに、最も厚みが大きい層である基材層のヤング率は、他の層のヤング率よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に実装されるセラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)又は携帯電話等の電子機器は、コンデンサ、インダクタ、バリスタ又はこれらを複合した複合部品が表面実装された回路基板を有する。このような構造により、前記電子機器は、高密度に電子部品を搭載して回路基板全体を小型化している。回路基板に搭載されるコンデンサとしては、例えば、セラミックコンデンサがある。
【0003】
セラミックコンデンサは、誘電体と内部電極とが交互に積層されている。誘電体を形成するセラミック材料には、誘電率が高いチタン酸バリウム等の強誘電体材料が用いられている。セラミックコンデンサに交流電圧を印加すると、誘電体を形成するセラミック材料は電歪現象を発生し、機械的な歪みを生じる。このため、交流電圧が印加されたセラミックコンデンサは振動する。この振動は、セラミックコンデンサが表面実装された回路基板にも伝達し、これを振動させる。その結果、セラミックコンデンサが表面実装された回路基板は、振動音を発生する(音鳴り)。このような、セラミックコンデンサの電歪現象に起因した回路基板の振動音、すなわち音鳴りを低減するため、コンデンサ素子の外部電極の側面に一対の金属端子を当接し、コンデンサ素子の下側に引き出して、回路基板へ接合する電子部品が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−223357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電子部品は、セラミックコンデンサと回路基板との間に空隙を設け、セラミックコンデンサで発生した振動が基板に伝播するのを抑制している。このように、特許文献1に記載された電子部品は、音鳴りを抑制できるが、近年においては、さらなる音鳴りの抑制が求められている。本発明は、セラミックコンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、セラミックコンデンサの外部電極の両端面を接続端子で挟持し、この外部電極を介して回路基板にセラミックコンデンサを実装する場合、外部電極のばね定数を小さくすることが有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るセラミックコンデンサは、誘電体と内部電極とが交互に積層された誘電体素体及び前記誘電体素体の対向する端面をそれぞれ別個に覆う一対の外部電極を有するセラミックコンデンサ素子と、ヤング率の異なる材料が少なくとも2層積層されるとともに、最も厚みが大きい層である基材層のヤング率は、他の層のヤング率よりも小さく、かつ、前記外部電極の端面と電気的に接続される一対の接続端子と、を含むことを特徴とする。
【0008】
このような構造により、本発明に係るセラミックコンデンサは、セラミックコンデンサの外部電極に接続される接続端子の導電層を金属材料とし、導電層よりもヤング率の小さい基材層の前記導電層を設ける。このため、接続端子全体のヤング率は、導電層のヤング率よりも小さくなり、また、接続端子をすべて金属材料で構成した場合よりも小さくすることができる。その結果、ばね定数が小さく、かつ導電性を有する接続端子でセラミックコンデンサを回路基板に実装できるので、電歪現象に起因した音鳴りを効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記基材層の材料は、樹脂であることが好ましい。樹脂は、金属と比較してヤング率は低い。このため、基材層に樹脂を用いることにより、接続端子のヤング率をより小さくすることができる。また、樹脂は、金属と比較して振動を減衰させる能力は高い。このため、樹脂を基材層として用いた接続端子は、セラミックコンデンサの振動を回路基板に伝えにくくするという作用も得られる。その結果、本態様に係るセラミックコンデンサは、電歪現象に起因する音鳴りをより効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記基材層の表面には、導電層が設けられることが好ましい。この導電層により、セラミックコンデンサの外部電極と回路基板のランドとの間を電気的に接続することができる。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記基材層と前記導電層とは、接着剤で接合されることが好ましい。導電層を接着剤で基材層に接着することにより、簡単に接続端子を作製することができる。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記基材層はポリイミドであり、前記導電層は銅であることが好ましい。ポリイミドは耐熱性が高いので、接続端子がセラミックコンデンサの外部電極にはんだ付けされる際や、セラミックコンデンサが回路基板に実装される際のリフロー時における加熱に対しても十分に耐えられる。また、ポリイミドは、強度も比較的高いので、コンデンサ素子を回路基板に確実に保持できるとともに、落下等の衝撃に対しても耐性が高いという利点もある。銅は電気伝導率が高いため、接続端子の導電層として好適である。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記導電層の表面はニッケルの層が設けられ、前記ニッケルの層の表面にスズの層が設けられることが好ましい。接続端子は、セラミックコンデンサの外部電極及び回路基板のランドとはんだによって接合されるが、導電層の表面にスズの層を設けることにより、はんだ付け性を改善できる。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記一対の接続端子は、前記外部電極から離れた位置で、前記外部電極と接続される側とは反対側の端面が、それぞれ前記セラミックコンデンサ素子の外側を向くように曲げられることが好ましい。このような構造により、接続端子がセラミックコンデンサの外部電極と接続される面(電極接続面)と、回路基板のランドと接続される面(基板接続面)とは、同じ導電層の表面に形成される。その結果、電極接続面と基板接続面とを電気的に接続する構造を簡単に実現できる。
【0015】
本発明の望ましい態様としては、前記一対の接続端子は、それぞれの前記外部電極から離れた位置で、前記外部電極と接続される側とは反対側の端面が互いに対向するように曲げられることが好ましい。このような構造とすることで、接続端子の回路基板と接続される部分がセラミックコンデンサ素子の長手方向外側に張り出すことを抑制できる。その結果、本態様は、回路基板へのセラミックコンデンサの実装密度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、セラミックコンデンサの電歪現象に起因して発生する音鳴りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す側面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の断面図である。
【図5】図5は、接続端子の寸法を示す説明図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の構造を示す断面図である。
【図7】図7は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の構造を示す断面図である。
【図8】図8は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の構造を示す断面図である。
【図9】図9は、本実施形態の変形例に係るセラミックコンデンサの側面図である。
【図10】図10は、本実施形態の変形例に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の構造を示す断面図である。
【図11】図11は、音圧の測定を行なう際に用いた試験装置の構成を簡略に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
図1は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るセラミックコンデンサを示す側面図である。セラミックコンデンサ1は、セラミックコンデンサ素子(以下、必要に応じてコンデンサ素子という)10と、一対の外部電極(端子電極)20、30と、一対の接続端子40、50と、を含む。このように、セラミックコンデンサ1は、コンデンサ素子10の外部電極20、30に、接続端子40、50を取り付けた構造の電子部品である。コンデンサ素子10は、積層型のセラミックコンデンサであり、その形状は、略四角柱形状である。コンデンサ素子10の構造については後述する。
【0020】
それぞれの外部電極20、30は、略四角柱形状の誘電体素体11の対向する端面をそれぞれ別個に覆っている。外部電極20、30は、導電性の材料であり、後述するように、誘電体素体11の内部電極と電気的に接続されている。外部電極20、30は、例えば、パラジウム(Pd)又は銀/パラジウム合金(Ag/Pd)に、ニッケル(Ni)及びスズ(Sn)をこの順で積層した構造である。なお、外部電極20、30は、複数の金属電極層で構成されていてもよく、例えば、外部電極20、30は、Cuを主成分とした下地電極に、Niめっき層、Snめっき層を形成するようにしてもよい。本実施形態において、外部電極20、30は、コンデンサ素子10の端面と、当該端面と接続している側面のうち前記端面側の部分との両方を覆う。このように、外部電極20、30は、誘電体素体11の両方の端部(端面及び当該端面と接続する側面の前記端面側の部分)を覆う。このため、外部電極20、30は、端面21、31と、側面22、32とを有する。
【0021】
一対の接続端子40、50とそれぞれの外部電極20、30の端面21、31とは、それぞれ電気的に接続される。このため、本実施形態において、外部電極20、30は、少なくともコンデンサ素子10の両方の端面を覆っていればよく、必ずしもコンデンサ素子10の側面まで覆う必要はない。接続端子40、50は、ヤング率の異なる材料が少なくとも2層積層されるとともに、最も厚みが大きい層である基材層のヤング率は、他の層のヤング率よりも小さい。接続端子40、50の構造については後述する。
【0022】
図2に示すように、それぞれの接続端子40、50は、外部電極20、30と電気的に接続される脚部40A、50Aと、回路基板60のランド(基板電極)61と電気的に接続される基板取付部40B、50Bとを有する。以下において、接続端子40に対応する脚部と基板取付部とはそれぞれ符号40A、40Bで表すものとし、接続端子50に対応する脚部と基板取付部とはそれぞれ符号50A、50Bで表すものとする。
【0023】
脚部40A、50Aと基板取付部40B、50Bとは、それぞれ板状の構造体であり、両者の板面は互いに直交している。このため、接続端子40、50は、脚部40A、50A及び基板取付部40B、50Bと直交する平面で切った場合の断面が、L字形状をしている。本実施形態において、接続端子40、50は、脚部40A、50Aと基板取付部40B、50Bとを連続した一つの構造体として一体に構成したものである。
【0024】
脚部40A、50Aは、コンデンサ素子10の外部電極20、30の端面21、31と電気的に接続される。本実施形態において、脚部40A、50Aの基板取付部40B、50Bが突出している側とは反対側の面が、外部電極20、30の端面21、31と電気的に接続される。外部電極20、30の端面21、31と電気的に接続される脚部40A、50Aの面は、電極接続面44、54である。本実施形態において、脚部40A、50Aの電極接続面44、54と、外部電極20、30の端面21、31とは、それぞれ、はんだ2、3で接続される。図2に示すように、セラミックコンデンサ1は、一対の接続端子40、50が、それぞれの外部電極20、30からコンデンサ素子10の外側に向かって離れた位置で、外部電極20、30と接続される側とは反対側の端面40t、50tが、それぞれコンデンサ素子10の外側を向くように曲げられる。
【0025】
接続端子40、50の基板取付部40B、50Bは、回路基板60のランド61と電気的に接続される基板接続面43、53を有する。本実施形態において、基板接続面43、53は、脚部40A、50Aの電極接続面44、54と連続する面である。基板取付部40B、50Bの基板接続面43、53は、例えば、はんだによって回路基板60のランド61と電気的に接続される。
【0026】
本実施形態において、脚部40A、50Aの電極接続面44、54と、外部電極20、30の端面21、31とを接続するはんだ2、3が融解する温度は、基板取付部40B、50Bの基板接続面43、53とランド61とを接続するはんだが融解する温度よりも高いことが好ましい。セラミックコンデンサ1は、ランド61にはんだペーストが塗布された回路基板60に実装された後、リフロー炉内で加熱されることによりはんだペーストが融解し、基板取付部40B、50Bとランド61とが電気的に接続される。はんだ2、3が融解する温度を上述したように設定すれば、前記加熱においてはんだ2、3は融解しないので、接続端子40、50とコンデンサ素子10の外部電極20、30との接続不良を回避しつつ、セラミックコンデンサ1を確実に回路基板60へ実装できる。次に、セラミックコンデンサ1が有するコンデンサ素子10について説明する。
【0027】
図3は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の斜視図である。コンデンサ素子10の長手方向、すなわち、一対の外部電極20、30の端面21、31と直交する方向をY軸とし、Y軸に直交する軸をそれぞれX軸、Z軸とする。コンデンサ素子10に設けられる外部電極20、30の端面21、31は、略正方形形状である。コンデンサ素子10は、外部電極20、30の端面21、31を底面とし、これらにつながる4個の側面(素子側面)12を有する略四角柱形状、すなわち略直方体の電子部品である。
【0028】
外部電極20、30が有する端面21、31の辺の長さは、X軸方向がLa、Z軸方向がLbである。本実施形態において、端面21、31は略正方形形状なので、La=Lbである。コンデンサ素子10のY軸方向の長さ、すなわち、コンデンサ素子10の長手方向の長さはLcである。Lcは、一対の端面21、31間の最短距離である。
【0029】
コンデンサ素子10は、上述したように略直方体形状であるので、平面視(Z軸又はX軸方向から見た状態)は矩形の形状(素子側面12の形状が矩形)である。コンデンサ素子10は、平面視において、長手方向(Y軸方向)及び短手方向(X軸又はZ軸方向)がある。本実施形態のセラミックコンデンサ1は、コンデンサ素子10の寸法は問わないが、特に、コンデンサ素子10の寸法が1608M(C5101−21:2006(IEC60384−21:2004)に規定される寸法記号)以上のものに好適である。なお、前記寸法記号において、1608Mとは、Lcが1.6mm±0.1mm、LaとLbとのうち大きい方が0.8mm±0.1mmである。次に、コンデンサ素子10の内部構造について、簡単に説明する。
【0030】
図4は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有するセラミックコンデンサ素子の断面図である。同図は、コンデンサ素子10を、外部電極20、30の端面21、31及び内部電極17、18と直交する平面で切った断面を示している。コンデンサ素子10は、誘電体素体11と、外部電極20、30とを有する。誘電体素体11は、内部電極17、18と誘電材料の誘電体11aとを含む。内部電極17、18は、例えば、パラジウム、銀/パラジウム合金、ニッケル、銅(Cu)等である。誘電体11aは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)等である。本実施形態において、誘電体素体11は、誘電体11aと内部電極17、18とが交互に積層される。誘電体素体11は、セラミックグリーンシート(未焼成セラミックシート)を複数枚積層した積層体を加熱圧着して一体化して、切断し、脱脂し、焼成することにより得られた直方体状の焼結体である。そして、誘電体素体11は、内部電極17に外部電極20が電気的に接続され、かつ内部電極18に外部電極30が電気的に接続されてコンデンサ素子10となる。コンデンサ素子10が有する誘電体素体11は、内部電極と絶縁体とを有していれば、本実施形態の構造に限定されるものではない。
【0031】
誘電体素体11の端面(外部電極形成面)13、14には、それぞれ内部電極17、18が露出している。上述したように、一対の外部電極20、30は、それぞれ外部電極形成面13、14を別々に覆うとともに、複数の内部電極17、18が電気的に接続される。本実施形態において、外部電極20、30は、端面21、31と側面22、32とを有する。外部電極20、30の側面22、32は、端面21、31とつながり、かつ素子側面12の外部電極形成面13、14に延出する。
【0032】
セラミックコンデンサ1が有するコンデンサ素子10は、図4に示す誘電体11aに誘電材料が用いられる。コンデンサ素子10が、外部電極20をランドに直接接続することにより回路基板60に実装した場合、外部電極20、30から交流電圧が印加されると、誘電体11aに電歪現象が発生し、コンデンサ素子10が変形する。すなわち、強誘電性を有するセラミックの誘電体11aの電歪現象効果により、コンデンサ素子10の積層方向に伸縮が生じる。そして、誘電体の一般的なポアソン比(=0.3)にしたがって、積層方向と直交する方向、すなわち、回路基板60の基板面に平行な方向にも伸縮が生じる。コンデンサ素子10は、積層方向に伸びると積層方向と直交する方向には縮み、積層方向に縮むと積層方向と直交する方向には伸びる。交流電圧がコンデンサ素子10に印加されることにより、コンデンサ素子10は、積層方向への伸縮と、積層方向と直交する方向への伸縮(積層方向への伸縮と位相が90度ずれる)とが繰り返される。その結果、コンデンサ素子10が実装された回路基板60は、基板面と略直交する方向へ振動する。コンデンサ素子10の振動の振幅は微少(1pmから1nm程度)であり、そのままでは音としてほとんど人間には認識されない。しかし、コンデンサ素子10が回路基板に実装されると、回路基板が音響インピーダンス変換器として働く。そして、振動の周波数が人間の可聴周波数帯域(20Hzから20kHz)になったときに、音として人間の耳に検知される。このように、セラミックコンデンサは、回路基板に実装されると、誘電材料の電歪現象に起因する音鳴りが発生することがある。
【0033】
セラミックコンデンサ1は、コンデンサ素子10の両方の外部電極20、30の端面21、31を接続端子40、50で挟持する。そして、セラミックコンデンサ1は、接続端子40、50を介して回路基板60に実装される。このような構造により、接続端子40、50がコンデンサ素子10の振動を吸収するので、コンデンサ素子10から回路基板60へ伝達される振動が抑制される。その結果、セラミックコンデンサ1が実装された回路基板60は、コンデンサ素子10の電歪現象に起因する音鳴りが抑制される。
【0034】
図5は、接続端子の寸法を示す説明図である。接続端子40、50の厚さをt、幅をb、回路基板60の基板面62から脚部40A、50Aとコンデンサ素子10の外部電極20、30とを接続するはんだ2、3の基板面62側までの距離(接続端子取付長さ)をLとする。このとき、接続端子40、50のばね定数Kは、式(1)で表すことができる。式(1)中のEは、接続端子40、50のヤング率である。
【0035】
【数1】

【0036】
接続端子40、50のばね定数Kが小さい程、コンデンサ素子10の電歪現象に起因する音鳴りを抑制する効果が高くなることが見出された。これは、接続端子40、50のばね定数Kが小さい程、コンデンサ素子10からの振動を接続端子40、50が吸収しやすくなるからであると考えられる。接続端子40、50は、コンデンサ素子10の外部電極20、30と回路基板60のランド61とを電気的に接続するものであるため、導電性が必要である。導電性を有する材料としては金属材料があるが、金属材料は一般にヤング率が高い。このため、金属材料のみで接続端子40、50を製造すると、接続端子40、50のばね定数Kを小さくすることには限界がある。また、ヤング率の低い材料は樹脂材料があるが、一般に樹脂材料は導電性が極めて低い物がほとんどである。このため、接続端子40、50が導電性を有し、かつばね定数Kを小さくすることは、単一の材料では困難である。
【0037】
本実施形態では、セラミックコンデンサ1の有する接続端子40、50を、ヤング率の異なる材料を少なくとも2以上積層させて構成する。より具体的には、接続端子40、50は、ヤング率の異なる材料が少なくとも2層積層されるとともに、最も厚みが大きい層である基材層のヤング率を、他の層のヤング率よりも小さくする。このような構造により、基材層には一般的にヤング率の低い樹脂材料を用い、コンデンサ素子10の外部電極20、30と接続される層には一般的に導電性の高い金属材料を用いることができる。その結果、セラミックコンデンサ1は、導電性を有し、かつばね定数Kの低い接続端子40、50を備えることができ、電歪現象に起因した音鳴りを効果的に抑制することができる。なお、基材層に樹脂材料を用いて、接着剤により基材層に導電層を設ける構造を採用する場合、接着剤の層は基材層に含めてもよい。次に、ヤング率の異なる少なくとも2種類の材料を積層した接続端子40、50の具体的な構造を説明する。
【0038】
図6から図8は、本実施形態に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の構造を示す断面図である。これらの図は、接続端子40、50の電極接続面44、54及び基板接続面43、53と直交する平面で接続端子40、50を切った場合の断面を示している。図6に示す接続端子40、50は、基材層41、51を有し、基材層41、51の片方の表面41s、51sに、接着剤の層(接着層)45、55を介して導電層46、56を設けてある。すなわち、接着層45、55が導電層46、56と基材層41、51とを接合している。このような構造により、例えば、樹脂の基材層41、51に接着剤で金属箔を貼り付けて導電層46、56とすることができるので、基材層41、51に樹脂材料を用いた場合でも、簡単に導電層46、56を基材層41、51の表面41s、51sに設けることができる。また、接着剤を用いれば、無電解めっきやスパッタリング等のような、比較的大掛かりな設備が不要になるので、簡単な設備で導電層46、56を基材層41、51の表面41s、51sに設けることができる。
【0039】
なお、導電層46、56を基材層41、51の表面41s、51sに設ける手法は上述したものに限定されるものではない。例えば、スパッタリングや無電解めっき等を用いて導電層46、56を基材層41、51の表面41s、51sに設けてもよい。導電層46、56の表面が、コンデンサ素子10の外部電極20、30と電気的に接続される電極接続面44、54となり、また、回路基板60のランド61と電気的に接続される基板接続面43、53となる。
【0040】
基材層41、51は、接続端子40、50の強度を担い、コンデンサ素子10を回路基板60の表面に支持するための構造部材である。基材層41、51は、接続端子40、50が有する複数の層の中で最も厚みが大きい。このような構造により、基材層41、51のヤング率を前記複数の層の中で最も小さくしても、基材層41、51は構造部材としての機能を発揮して、コンデンサ素子10を回路基板の表面に支持することができる。基材層41、51の材料である樹脂は、一般的に金属と比較して振動を減衰させる能力は高い。このため、樹脂を基材層41、51として用いた接続端子40、50は、コンデンサ素子10の振動を回路基板に伝えにくくするという作用が得られる。その結果、セラミックコンデンサ1は、電歪現象に起因する音鳴りをより効果的に抑制することができる。
【0041】
基材層41、51は、例えば、ポリイミド樹脂(ヤング率は2.5×10Pa程度)、エポキシ樹脂(ヤング率は3.0×10Pa〜4.0×10Pa程度)、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂(ヤング率は5.0×10Pa程度)等のような樹脂を用いることができる。この中では、特に、ポリイミドは耐熱性が高いので、接続端子40、50がコンデンサ素子10の外部電極20、30にはんだ付けされる際や、セラミックコンデンサ1が回路基板に実装される際のリフロー時における加熱に対しても十分に耐えられる。また、ポリイミドは、強度も比較的高いので、構造部材としての機能を十分に発揮して、コンデンサ素子10を回路基板に確実に保持できるとともに、落下等の衝撃に対しても耐性が高いという利点もある。
【0042】
接着層45、55は、例えば、エポキシ系の接着剤(ヤング率は3.2×10Pa〜2.0×1010Pa程度)である。導電層46、56は、例えば、銅(ヤング率は1.1×1011Pa程度)のような金属材料である。銅は電気伝導率が高いため、接続端子40、50の導電層46、56として好適である。このように、接続端子40、50は、ヤング率の異なる材料が少なくとも2層積層されるとともに、最も厚みが大きい層である基材層41、51のヤング率は、他の層、すなわち導電層46、56及び接着層45、55のヤング率よりも小さい。
【0043】
複数の層が積層された場合の合成ヤング率Esは、それぞれの層のヤング率をE、厚みをtとすると、式(2)で求めることができる。なお、nは2以上の整数である。式(2)から分かるように、接続端子40、50が有する基材層41、51のヤング率を他の層、特に金属材料を用いる導電層46、56のヤング率よりも低くすることにより、全体のヤング率は、金属材料を用いる導電層46、56よりも小さくすることができる。このように、接続端子40、50は、導電層46、56に導電性の高い金属材料を用いても、基材層41、51にヤング率の低い樹脂材料を用いることにより、導電性を有し、かつばね定数Kが低くなる。
【0044】
【数2】

【0045】
接続端子40、50は、電極接続面44、54と基板接続面43、53との間が電気的に接続されている必要がある。上述したように、それぞれの接続端子40、50は、外部電極20、30と接続される側とは反対側の端面40t、50tが、外部電極20、30から離れた位置で、それぞれコンデンサ素子10の外側を向くように曲げられる(図2)。このような構造により、電極接続面44、54と基板接続面43、53とは、同じ導電層46、56の表面に形成される。その結果、電極接続面44、54と基板接続面43、53とを電気的に接続する構造を簡単に実現できる。
【0046】
図7に示す接続端子40a、50aは、図6に示す接続端子40、50の導電層46、56の表面に、第1金属被覆層47、57を設け、さらに第1金属被覆層47、57の表面に第2金属被覆層48、58を設けたものである。他の点は、図6に示す接続端子40、50と同様である。接続端子40a、50aは、上述したように、はんだによってコンデンサ素子10の外部電極20、30と電気的に接続され、かつ、はんだによって回路基板60のランド61と接続される。このため、接続端子40a、50aの導電層46、56のはんだ付け性を改善するために、接続端子40a、50aは、はんだとなじみやすい金属(例えば、スズ)の第2金属被覆層48、58を、接続端子40a、50aの最も外側に有する。
【0047】
本実施形態において、第2金属被覆層48、58は、スズ(ヤング率は4.0×1010Pa程度)である。銅の導電層46、56の表面には、ニッケル(ヤング率は2.0×1011Pa程度)の第1金属被覆層47、57が設けられる。第1金属被覆層47、57及び第2金属被覆層48、58は、それぞれ電解めっきやスパッタリング等によって形成される。第1金属被覆層47、57の存在により、スズの第2金属被覆層48、58を導電層46、56の表面に設けることができる。第2金属被覆層58の表面が、コンデンサ素子10の外部電極20、30と電気的に接続される電極接続面44、54となり、また、回路基板60のランド61と電気的に接続される基板接続面43、53となる。
【0048】
このように、接続端子40a、50aが有する基材層41、51のヤング率を他の層、特に金属材料を用いる導電層46、56、第1金属被覆層47、57及び第2金属被覆層48、58のヤング率よりも低くすることにより、接続端子40a、50aをすべて金属材料で構成した場合よりも、全体のヤング率を低下させることができる。その結果、導電層46、56に導電性の高い金属材料を用い、さらに、実装を考慮して他の金属材料で導電層46、56を被覆しても、導電性を有し、かつばね定数Kを低くした接続端子40a、50aを得ることができる。
【0049】
図8に示す接続端子40b、50bは、図7に示す接続端子40a、50aの両方の表面41s、51sに、接着層45、55により導電層46、56を設け、さらに導電層46、56の表面に、第1金属被覆層47、57と第2金属被覆層48、58とをこの順に設けたものである。他の点は、図7に示す接続端子40a、50aと同様である。このようにしても、接続端子40b、50bが有する基材層41、51のヤング率を、金属材料が用いられる導電層46、56等のヤング率よりも低くすることにより、全体のヤング率は、接続端子40b、50bをすべて金属材料で構成した場合よりも小さくすることができる。その結果、導電性を有し、かつばね定数Kを低くした接続端子40b、50bを得ることができる。
【0050】
(変形例)
図9は、本実施形態の変形例に係るセラミックコンデンサの側面図である。図10は、本実施形態の変形例に係るセラミックコンデンサが有する接続端子の構造を示す断面図である。同図は、接続端子40c、50cの電極接続面44、54及び基板接続面43、53と直交する平面で切った場合の断面を示している。本変形例において、セラミックコンデンサ1cが有する接続端子40c、50cは、コンデンサ素子10の外部電極20、30から離れた位置で、外部電極20、30と接続される側とは反対側の端面40ct、50ctが互いに対向するように曲げられている。このような構造とすることで、脚部40Ac、50Acとつながっている基板取付部40Bc、50Bcがコンデンサ素子10の長手方向外側に張り出すことを抑制できる。その結果、回路基板60に対するセラミックコンデンサ1cの実装密度は向上するので好ましい。
【0051】
セラミックコンデンサ1cが有する接続端子40c、50cは、電極接続面44、54と基板接続面43、53との間で導電層46、56が電気的に接続している必要がある。このため、接続端子40c、50cは、導電層46、56を基材層41、51の両方の表面41s、51sに設けるとともに、電極接続面44、54の端部で両者を電気的に接続している。電極接続面44、54と基板接続面43、53との間で導電層46、56を電気的に接続する手段は、上記手段に限定されるものではなく、例えば、スルーホールによって基材層41、51の両面に設けられた導電層46、56同士を電気的に接続してもよい。なお、本変形例においては、導電層46、56の表面に、さらに金属被覆層(例えば、上述した第1金属被覆層47、57及び第2金属被覆層48、58、図8参照)を設けてもよい。
【0052】
以上、本実施形態及びその変形例は、ヤング率の異なる材料を少なくとも2層積層させ、かつ最も厚みが大きい層である基材層のヤング率を、他の層のヤング率よりも小さくして一対の接続端子を構成し、この一対の接続端子を、コンデンサ素子の対向する外部電極の端面にそれぞれ電気的に接続する。このような構造により、外部電極に接続される接続端子の導電層を金属材料とし、この導電層を基材層に設けると、基材層は導電層よりもヤング率が低くなる。その結果、接続端子全体のヤング率は、導電層のヤング率よりも小さくすることができ、また、接続端子をすべて金属材料で構成した場合よりも小さくすることができる。その結果、導電性を有し、かつばね定数Kを低くした接続端子を得ることができるので、電歪現象に起因した音鳴りを効果的に抑制することができる。
【0053】
セラミックコンデンサの振動は、主に内部電極と誘電体とが積層される方向に生ずるものと考えられる。このため、誘電体と内部基板とが積層される方向が回路基板の基板面と直交するようにセラミックコンデンサが回路基板へ実装される場合に、音鳴りは大きくなると考えられる。本実施形態に係るセラミックコンデンサは、接続端子のばね定数を小さくして、電歪現象に起因する振動の回路基板への伝達を抑制できる。このため、誘電体と内部基板とが積層される方向が回路基板の基板面と直交するようにセラミックコンデンサが回路基板へ実装された場合でも、前記振動の回路基板への伝達を抑制し、音鳴りを低減させることができる。
【0054】
(評価)
上述した実施形態で説明したセラミックコンデンサの接続端子を、材料、各層の厚みを変更することにより複数種類作成して、音圧を測定した。比較例として、Fe−42Ni合金を基材層とし、その表面に第1金属被覆層としてニッケルを被覆し、第1金属被覆層の表面に第2金属被覆層としてスズを被覆した接続端子を有するセラミックコンデンサを作成し、音圧を測定した。接続端子の構造及び音圧の測定結果を、表1から表5に示す。表1は第1評価例を、表2は第2評価例を、表3は第3評価例を、表4は第4評価例を、表5は第5評価例を示す。表1から表5中のPIRはポリイミド樹脂を表し、EPRはエポキシ樹脂を表し、PARはポリアミド樹脂を表し、SiRはシリコーン樹脂を表し、ERはエポキシ系接着剤を表す。表1から5の全体のヤング率は、それぞれの評価例に係る接続端子全体の合成ヤング率である。合成ヤング率は、式(2)で求めることができる。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
(測定に供したセラミックコンデンサの作製方法及び各評価例の構造)
それぞれの評価例の接続端子は、次のようにして作製された。まず、基材層(第1層)がアルミニウム(Al)である場合、基材層にスパッタリングニッケルの層(第2層)を設け、ニッケルの層にスパッタリングでスズの層(第3層)を設けた。なお、基材層がアルミニウムである場合、基材層は導電層を兼ねており、ニッケルの層が第1金属被覆層、スズの層が第2金属被覆層である。基材層(第1層)が樹脂材料の場合、樹脂の板材にエポキシ系の接着剤を塗布して接着層(第2層)とし、接着層の表面に導電層(第3層)として圧延銅を貼り付けた。そして、必要に応じて、導電層の表面に第1金属被覆層(第4層)と、第1金属被覆層(第5層)とをそれぞれ電解めっきによって形成した。
【0061】
(1)第1評価例:基材層(第1層)の厚みを100μm、接着層、導電層等を基材層の片側のみ積層した。
(2)第2評価例:基材層(第1層)の厚みを100μm、接着層、導電層等を基材層の両側に積層した。
(3)第3評価例:基材層(第1層)の厚みを300μm、接着層、導電層等を基材層の片側のみ積層した。
(4)第4評価例:基材層(第1層)の厚みを100μm、接着層、導電層等を基材層の片側のみ積層した。接着層、導電層、第1金属被覆層及び第2金属被覆層の厚みを、第1評価例に対して変更した。
(5)第5評価例:基材層(第1層)の厚みを30μm、接着層、導電層等を基材層の片側のみ積層した。
【0062】
第1評価例から第5評価例に係る接続端子は、厚み以外はすべて同じ寸法である。図5に示す幅bは3.2mm、接続端子取付長さLは0.7mmである。また、接続端子を取り付けたコンデンサ素子は、寸法記号3225Mで表されるものを用いた。
【0063】
(音圧の測定方法)
図11は、音圧の測定を行なう際に用いた試験装置の構成を簡略に示す図である。試作したセラミックコンデンサを基板106に実装して交流電圧を印加した際に、基板106から発生する振動音の大きさ(音圧)を測定した。試験装置100は、無響箱101と、集音マイク(商品名:MI−1233、小野測器社製)102と、電源装置103と、FFTアナライザ(商品名:DS2100、小野測器社製)104とを備えている。そして、測定対象となるセラミックコンデンサ1は、基板106に設置された状態で、無響箱101内に設置される。
【0064】
セラミックコンデンサ1を設置した基板106は、その両端に正負一対の電極がそれぞれ設けられる。なお、基板106の寸法は、厚みが1.6mm、幅が40mm、長さが100mmである。無響箱101は、箱状に形成され、その内壁に吸音材107が設けられている。吸音材107は、グラスウール等を用いており、その表面を波型等に形成することで、音波の接触面積を拡大させ、吸音効果を高めている。
【0065】
電源装置103は、一対の配線108を介して、基板106の正負一対の電極にそれぞれ電気的に接続されている。基板106は、配線108に吊り下げられた状態で、セラミックコンデンサ1が無響箱101内の底面101Bに対向するように、無響箱101の中央部分に配置される。電源装置103は、セラミックコンデンサ1に対してDCバイアスを与えながら交流電圧を印加した。DCバイアスは20Vとした。交流電圧は、周波数を1kHz〜10kHzとした。また、交流電圧は、3Vp−p(peak to peak)となるように、すなわち、DCバイアスの20Vを中心として、交流電圧が±3Vの範囲で変化するように印加された。
【0066】
集音マイク102は、無響箱101内の底面101Bに設けられ、無響箱101の中央部分に設置されたセラミックコンデンサ1と所定距離(本評価例では5cm)を保つようにして配置される。FFTアナライザ104は、集音マイク102により集音された振動音の大きさ(音圧)を解析した。なお、ISO226に規定される等感度曲線から、人間の耳の感度は3kHzから4kHzで最も鋭くなる。このため、本評価例においては、人間の耳の感度がもっと鋭くなる周波数(より具体的には3kHz)での音圧を測定した。
【0067】
試験装置100の電源装置103が基板106に実装されたセラミックコンデンサ1に上述した交流電圧及びDCバイアスを印加すると、セラミックコンデンサ1で振動が発生し、セラミックコンデンサ1の振動が基板106に伝達される。その結果、基板106から振動音が発生する。この振動音を、集音マイク102を用いて集音し、集音した振動音を、FFTアナライザ104で解析することで、基板106から発生する振動音の大きさ(音圧)を得た。
【0068】
(評価結果)
表1から表5に示す評価結果から、第1評価例から第5評価例は、いずれも比較例より音圧を低減できることがわかる。基材層の片側のみに導電層等を有している第1評価例と、基材層の両側に導電層等を有している第2評価例とを比較すると、第2評価例の方が音圧は高い。これは、基材層の両面に導電層等を有している結果、接続端子全体のヤング率が高くなったことが原因であると考えられる。
【0069】
第4評価例の結果から、接着層や導電層等の厚みを変更しても、音圧には大きな影響を与えないといえる。また、第1評価例と第3評価例と第5評価例とは、基材層の厚みがそれぞれ100μm、300μm、30μmである以外は同じである。第1評価例と第3評価例と第5評価例とは、同じ材料・構造であれば音圧がほとんど変化していないことから、基材層の厚みは音圧に大きな影響を与えないといえる。
【0070】
第1評価例と第3評価例と第5評価例とは、基材層(導電層)をアルミニウムとした例がある。基材層(導電層)をアルミニウムとし、基材層よりもヤング率が大きいニッケルを基材層の表面に設けてニッケルの層とした場合も、比較例より音圧は低減できることが分かる。この結果から、最も厚みが大きい層である基材層のヤング率は、他の層のヤング率よりも小さいという条件を満たしていれば、基材層は樹脂材料に限定されるものではないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明に係るセラミックコンデンサは、回路基板に実装されたときにおいて音鳴りを抑制することに有用である。
【符号の説明】
【0072】
1、1c セラミックコンデンサ
10 コンデンサ素子(セラミックコンデンサ素子)
11 誘電体素体
11a 誘電体
12 素子側面
13、14 外部電極形成面
17、18 内部電極
20、30 外部電極
21、31 端面
22、32 側面
40B、50B、40Bc、50Bc 基板取付部
40A、50A、40Ac、50Ac 脚部
40、50、40a、50a、40b、50b、40c、50c 接続端子
40t、50t、40ct、50ct 端面
41、51、41c、51c 基材層
41s、51s 表面
43、53 基板接続面
44、54 電極接続面
45、55 接着層
46、56 導電層
47、57 第1金属被覆層
48、58 第2金属被覆層
60 回路基板
61 ランド
62 基板面
100 試験装置
101 無響箱
101B 底面
102 集音マイク
103 電源装置
104 FFTアナライザ
106 基板
107 吸音材
108 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と内部電極とが交互に積層された誘電体素体及び前記誘電体素体の対向する端面をそれぞれ別個に覆う一対の外部電極を有するセラミックコンデンサ素子と、
ヤング率の異なる材料が少なくとも2層積層されるとともに、最も厚みが大きい層である基材層のヤング率は、他の層のヤング率よりも小さく、かつ、前記外部電極の端面と電気的に接続される一対の接続端子と、
を含むことを特徴とするセラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記基材層の材料は、樹脂である請求項1に記載のセラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記基材層の表面には、導電層が設けられる請求項1又は2に記載のセラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記基材層と前記導電層とは、接着剤で接合される請求項3に記載のセラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記基材層はポリイミドであり、前記導電層は銅である請求項3又は4に記載のセラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記導電層の表面はニッケルの層が設けられ、前記ニッケルの層の表面にスズの層が設けられる請求項3から5のいずれか1項に記載のセラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記一対の接続端子は、前記外部電極から離れた位置で、前記外部電極と接続される側とは反対側の端面が、それぞれ前記セラミックコンデンサ素子の外側を向くように曲げられる請求項1から6のいずれか1項に記載のセラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記一対の接続端子は、それぞれの前記外部電極から離れた位置で、前記外部電極と接続される側とは反対側の端面が互いに対向するように曲げられる請求項1から6のいずれか1項に記載のセラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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