説明

セラミックス−樹脂複合ロールおよびその製造方法

【課題】耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性および耐腐食性を向上させたセラミックス−樹脂複合ロールを提供する。
【解決手段】セラミックス−樹脂複合ロール1は、金属製ロール芯2と、金属製ロール芯2の外周面に形成された下地層3と、下地層3の外周面に形成されたセラミックス溶射膜4とを備える。セラミックス溶射膜4は、隣接するセラミックス粒子5が溶融結合したセラミックス粒子層と、セラミックス粒子層の表面から下地層3の表面に至るまでセラミックス粒子5間の間隙内に充填された樹脂6の層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種工業に用いることのできるセラミックス−樹脂複合ロールに関するものであり、特に耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、耐腐食性に優れていて製紙用ロールとして好適に用いることができるセラミックス−樹脂複合ロールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙工程のプレスパート、塗工パート、ワイヤーパート等において、セラミックス溶射被膜を有するセラミックスロールが用いられている。セラミックス溶射被膜中のセラミックス粒子は、隣接した粒子同士が互いに溶融し合った強い結合を有しているので、セラミックスロールは、全体として、一般的に優れた強度および耐摩耗性を有している。
【0003】
その反面、セラミックス溶射被膜中において、溶融結合したセラミック粒子間には空隙が存在しているので、パルプ液に含まれる薬品や水分がロール表面から内部に浸透やすい。薬品や水分がロール内部に浸透すると、セラミックス溶射被膜やロール芯が腐食し、ロール破損の原因となる。このため、セラミックスロールの表面には一般的に封孔処理が施されるが、十分な封孔効果が得られていないのが現状である。
【0004】
特公平7−111036号公報(特許文献1)には、金属製芯体の外周に金属材料からなる下地層を形成し、その下地層の外周にセラミックス層を形成した抄紙機用プレスロールの製造方法が開示されている。この公報に記載されたプレスロールは、図4に模式的に示すように、ロール芯11と、ロール芯11の外周に形成された下地層12と、下地層12の外周に形成されたセラミックス層13とを備える。セラミックス層13は、セラミックス粉末の溶射により形成されている。また、セラミックス層13の表層部分に有機高分子物質をコーティングすることにより、セラミックス粒子14間の間隙に充填された有機高分子物質層15を形成する。特公平7−111036号公報によると、有機高分子物質は、セラミックス層13の表面からセラミックス層の厚みの1/4〜1/2の部分に充填するのが好ましいとされている(同公報第3頁左欄第39〜44行)。
【0005】
特開平6−81292号公報(特許文献2)には、母材表面に、プラスチックとセラミックスとの混合溶射被膜、またはプラスチックとサーメットとの混合溶射被膜を形成したプレスロールが開示されている。この公報によれば、溶射被膜の全体をプラスチックとセラミックスとの混合物、またはプラスチックとサーメットとの混合物で形成することができる。
【特許文献1】特公平7−111036号公報
【特許文献2】特開平6−81292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特公平7−111036号公報(特許文献1)に記載のプレスロールは、セラミックス溶射被膜の表層部分に有機高分子物質がコーティングされ、表層部分のセラミックス粒子間の間隙に有機高分子物質が充填されている。しかしながら、セラミックス溶射被膜の表層部分のみに有機高分子物質が充填されているだけでは、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、耐腐食性の点で不十分であることがわかった。また、特公平7−111036号公報に記載のプレスロールの場合、セラミックス粒子間の間隙に充填される有機高分子物質は、エポキシ樹脂の場合、粘度の小さなものが用いられるが、プレスロールは大型であるので樹脂の含浸に時間がかかり、含浸の途中で樹脂の硬化が進行してしまう。このため、セラミックス溶射被膜の内部にまで十分に樹脂を浸透させることが困難であった。また、有機高分子物質を溶剤で希釈した場合には、硬化の際に溶剤が抜けた後、溶射被膜の空隙率が大きくなってしまい、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、耐腐食性が不十分となってしまう。
【0007】
特開平6−81292号公報(特許文献2)に記載のプレスロールは、プラスチックとセラミックスとの混合材料、またはプラスチックとサーメットとの混合材料を溶射することにより被膜が形成される。しかしながら、混合材料を用いても、溶射をすればやはり空隙はできてしまうので、十分な封孔効果が得られない。また、混合材料を溶射した場合、セラミックス粒子間の空隙だけでなくセラミックス粒子同士の結合部分にもプラスチックが介在してしまうので、セラミックス粒子の溶融結合が不十分なために粒子が剥離しやすくなり、セラミックス単体よりもむしろ被膜の強度が劣ったものとなってしまう。
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、セラミックロールの耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、耐腐食性を向上させたセラミックス−樹脂複合ロールおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従ったセラミックス−樹脂複合ロールは、金属製ロール芯と、この金属製ロール芯の外周面に形成された下地層と、この下地層の外周面に形成されたセラミックス溶射被膜とを備える。セラミックス溶射被膜は、隣接するセラミックス粒子が溶融結合したセラミックス粒子層と、このセラミックス粒子層の表面から下地層の表面に至るまでセラミックス粒子間の間隙内に充填された樹脂層とを含む。
【0010】
上記の構成によれば、セラミックス溶射被膜が、セラミックス粒子同士の強い溶融結合を有しているので、セラミックス溶射被膜の特長である強度と耐摩耗性が保持できる。その上、溶射被膜の厚み全体に亘ってセラミックス粒子間の間隙内に充填された樹脂が、封孔材としての機能と補強材としての機能との両方を発揮する。従って、溶射被膜の表面から下地層までの溶射被膜全体に亘り、溶融結合したセラミックス粒子と、その粒子間に充填された樹脂との複合材料が形成されていることにより、ロールの耐衝撃性、耐磨耗性が向上し、また、下地層まで確実に封孔されていることにより耐薬品性および耐腐食性も向上する。
【0011】
上記の樹脂層を形成する樹脂は、好ましくは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂である。特にエポキシ樹脂を用いた場合、セラミックス−樹脂複合ロールの耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、耐腐食性が向上する。
【0012】
この発明に従ったセラミックス−樹脂複合ロールの製造方法は、以下の工程を備える。
【0013】
(a)金属製ロール芯の外周面に下地層を形成する下地層形成工程。
【0014】
(b)上記の下地層の外周面にセラミック粒子を溶射して隣接するセラミックス粒子が溶融結合したセラミックス粒子層を形成するセラミックス溶射工程。
【0015】
(c)上記のセラミックス粒子層のセラミックス粒子間の間隙内に熱硬化性液状樹脂を含浸させる樹脂含浸工程。
【0016】
(d)上記の樹脂含浸工程後のロール全体を加熱して液状樹脂を硬化させる樹脂硬化工程。
【0017】
上記の方法では、セラミックス溶射工程と、樹脂含浸工程とを別々の工程で行っている。すなわち、特開平6−81292号公報(特許文献2)に記載されているようなセラミックスと樹脂との混合溶射ではなく、セラミックス材料を単独で溶射しているので、セラミックス粒子同士の強い溶融結合が得られる。
【0018】
好ましくは、セラミックス粒子の溶射を水安定化プラズマ溶射法によって行う。水安定化プラズマ溶射法は、ガスプラズマ溶射法よりも熱量が大きいため、セラミックス粒子同士の結合力が強く、強度に優れた被膜を得ることができる。また、水安定化プラズマ溶射法では、ガスプラズマ溶射法の場合よりも大きな径の粒子を溶射することができるので、セラミックス粒子間の間隙を大きくすることができ、液状樹脂が浸透しやすくなる。
【0019】
さらに上記の方法では、樹脂含浸工程とは別工程で、ロール全体を加熱して液状樹脂を硬化させる工程を含んでいるので、硬化速度が遅く且つ硬化温度の高い樹脂を選択することができる。このため、樹脂含浸工程の途中で液状樹脂の硬化が進行するのを防ぐことができ、溶射被膜の表面から下地層にまで樹脂を十分に浸透させることができる。
【0020】
樹脂含浸工程においては、熱硬化性液状樹脂を、セラミックス粒子層の表面から下地層の表面に至るまでセラミックス粒子の間隙内に浸透させるようにするのが好ましい。これによって、セラミックス溶射被膜の封孔効果が著しく向上し、セラミックス−樹脂複合ロールの耐薬品性、耐腐食性を向上させることができる。また、セラミックス粒子間の間隙を縫うようにして、セラミックス溶射被膜の表面から下地層に至るまで樹脂の連続した相が形成されるので、樹脂が溶射被膜の補強材として作用し、セラミックス−樹脂複合ロールの耐衝撃性、耐摩耗性も向上する。
【0021】
硬化工程は、樹脂含浸工程後のロール全体を加熱炉に入れ、加熱炉内で行うのが好ましい。これにより、含浸した樹脂を均一かつ確実に硬化させることができ、セラミックスと樹脂との複合によってロールの強度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るセラミックス−樹脂複合ロールの要部断面図である。図2は、図1に示すロールの要部を詳細に示す拡大断面図である。セラミックス−樹脂複合ロール1は、金属製のロール芯2と、その外周面に形成された下地層3と、さらにその外周面に形成されたセラミックス溶射被膜4とで構成されている。このロール1は、製紙用ロールとして好適に用いることができる。ロール1全体のサイズに注目すると、直径が0.4〜2m、面長(両側部に突出している軸の長さを含まないロール表面の長さ)が2〜10m程度である。
【0024】
ロール芯2の材質は、例えば、鉄、ステンレススチール、銅、真ちゅうなどである。下地層3は、ニッケル・クロム合金、ニッケル・クロム・アルミニウム合金などからなり、ロール芯2と溶射被膜4との接合一体化およびロール芯2の防食のために設けられる。下地層2の厚みは約100〜800μmである。
【0025】
セラミックス溶射被膜4は、隣接するセラミックス粒子5が溶融結合したセラミックス粒子層と、セラミックス粒子層の表面から下地層3の表面に至るまでセラミックス粒子5間の間隙内に充填された樹脂6の層とを含む。すなわち、セラミックス溶射被膜4は、溶融結合したセラミックスと樹脂との複合材料からなっており、セラミックス材料単独での溶射によって形成されたセラミックス粒子5同士の溶融結合と、セラミックス粒子5間の間隙に充填された樹脂6とを含んでいる。セラミックス粒子5同士は、溶融結合の連続によって溶射被膜4の表面から下地層2にかけて繋がっている。一方、樹脂6も、セラミックス粒子5間の間隙を縫うようにして、セラミックス溶射被膜4の表面から下地層3にかけて、連続した相を形成している。
【0026】
セラミックス材料としては、グレイアルミナ(97%Al−3%TiO)、ホワイトアルミナ(Al)、チタニア(TiO)、アルミナ−チタニア(Al−TiO)、クロミア(CrO)、ジルコニア(ZrO)、ジルコニア−イットリア(ZrO−Y)等が挙げられる。これらは単独または混合して使用することができる。樹脂6としては、前述のとおり、熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
【0027】
次に、本発明に従ったセラミックス−樹脂複合ロールの製造方法の一実施形態について説明する。図3に示すように、セラミックス−樹脂複合ロールの製造方法は、下地層形成工程(a)と、セラミックス溶射工程(b)と、樹脂含浸工程(c)と、樹脂硬化工程(d)とを含む。
【0028】
まず、下地層形成工程によって、ロール芯2の外周面に下地層3を形成する。下地層3の形成は、アーク溶射、フレーム溶射、プラズマ溶射などにより行うことができる。
【0029】
次に、セラミックス溶射工程によって、下地層3の外周面にセラミックス粒子5の層を形成する。強い被膜強度を得るためには、セラミックス材料以外を混合することなく、セラミックス材料のみを溶射するのが好ましい。溶射材料の粒子径は10〜200μm程度である。溶射は水安定化プラズマ溶射法、ガスプラズマ溶射法等の公知の方法で行うことができるが、セラミックス粒子同士の強い結合力を得るためには水安定化プラズマ溶射法で行うのが好ましい。また、後の樹脂含浸工程において樹脂を充填しやすくする観点から、粒子径が比較的大きな溶射材料を用い、セラミックス粒子層の気孔率が大きくなるようにするのが好ましい。溶射による層の厚みは0.5〜3mm程度とされる。また、樹脂を充填する前のセラミックス粒子層の気孔率は5〜15%程度であるのが好ましい。
【0030】
次に、樹脂含浸工程によって、セラミックス粒子層に含まれるセラミックス粒子5間の間隙内に熱硬化性の液状樹脂6を含浸させる。液状樹脂の含浸方法としては、コーター、刷毛塗り、スプレー等の手段を用いることができ、これにより、溶射被膜の表面から液状樹脂をしみ込ませることができる。この際、セラミックス粒子層の表面から下地層3の表面に至るまでの厚み全体に亘ってセラミックス粒子5間の間隙内に液状樹脂6を浸透させるために、常温から予熱温度の範囲で100cps〜200cpsの低粘度を保つ樹脂を選択するのが好ましい。常温から予熱温度の範囲で硬化が進行するような樹脂を選択するのは、溶射被膜への含浸が不十分となるので好ましくない。
【0031】
次に、樹脂硬化工程で、樹脂含浸後のロール全体を加熱することにより、溶射被膜に含浸した液状樹脂6を硬化させる。硬化工程は、ロール全体を加熱炉7に入れ、加熱炉7内で行なうのが好ましい。加熱条件は、80〜120℃の温度で1〜10時間とするのが好ましい。
【0032】
最後に、ロールの表面を所定の寸法に切削し、さらに所定の表面粗さに研磨して、セラミックス−樹脂複合ロールが完成する。
【0033】
[実施例1]
まず、長さ5100mm、面長3400mm、直径550mmの鋳鉄製ロール芯の表面を洗浄、脱脂し、さらにサンドブラストによって粗面化した。次いで、このロール芯の表面に、アーク溶射装置を用いてニッケル−クロム合金を溶射し、厚さ0.5mmの下地層を形成した。次に、下地層を有するロール芯を回転させながら、水安定化プラズマ溶射装置を用いて、平均粒子径35μmのアルミナ−チタニア(Al−13%TiO)粉末を溶射し、厚み1.2mm、気孔率8%のセラミックス溶射被膜を形成した。
【0034】
次に、セラミックス溶射後のロールを70℃に予熱し、このロールの表面から、70℃に予熱した液状エポキシ樹脂原料を塗布して含浸させた。用いたエポキシ樹脂原料は、主剤としてのアラルダイト(VANTICO社製)100質量部と硬化剤としてのHY932(VANTICO社製)32質量部との混合液である。このエポキシ樹脂原料液の粘度は100〜200cpsであった。
【0035】
次に、エポキシ樹脂原料液を含浸したセラミックス溶射ロールを加熱炉内に入れ、110℃の温度で4時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ、セラミックスとエポキシ樹脂との複合層を形成した。
【0036】
次いで、セラミックス−樹脂複合層の厚みが1.0mmとなるように表面を切削し、最後にJIS−B0601に定義される算術平均粗さ(Ra)が1.0μmとなるように表面を研磨して、ロール外径553mmのセラミックス−樹脂複合ロールを得た。
【0037】
[比較例1]
セラミックス溶射工程までは実施例1と同様に行なった。セラミックス溶射後のロールを70℃に予熱し、このロールの表面から、70℃に予熱した液状エポキシ樹脂原料を塗布して含浸させた。但し、用いたエポキシ樹脂原料は、主剤としてのペルノックス106(日本ペルノックス社製)100質量部、硬化剤としてのペルキュアHV19(日本ペルノックス社製)80質量部及び反応促進剤としてのDY−070(VANTICO社製)4質量部の混合液とした。このエポキシ樹脂原料液の粘度は100〜200cpsであった。
【0038】
エポキシ樹脂原料液を含浸したセラミックス溶射ロールは加熱炉に入れることなく、余熱で4時間放置してエポキシ樹脂を硬化させ、セラミックスとエポキシ樹脂との複合層を形成した。その他の事項については、実施例1と同様とした。
【0039】
[比較例2]
セラミックス溶射工程までは実施例1と同様に行なった。但し、樹脂含浸工程及び硬化工程を行わなかった。表面の切削及び研磨は実施例1と同様に行ない、表面がセラミックスの単独層からなるセラミックスロールを得た。
【0040】
[評価]
実施例1、比較例1および比較例2の各ロールについて、以下の手法で比較試験を行い、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐腐食性の評価を行った。各試験の結果を表1に示す。
【0041】
樹脂含浸深さ
ロール表面に水滴を落とした。樹脂含浸をしていない比較例2のロールは、ロール表面から水滴がしみ込んだ。一方、実施例1及び比較例1のロールは、表面に水滴がしみ込まず、樹脂含浸による封孔効果を示した。さらに、実施例1および比較例1のロールを対象として、ロール表面を徐々に削りながら、同様に水滴落下試験を繰り返した。比較例1のロールは、表面から0.3mm程度削った段階で水滴がしみ込み、ロール表面にしか樹脂が含浸していないことがわかった。一方、実施例1のロールは、下地層に到達するまで削っても水滴がしみ込まず、下地層まで樹脂が十分に浸透していることがわかった。
【0042】
耐衝撃性
エコーチップ2−E型インパクト装置(プロセク社製)を用いて、エコーチップ硬さ(ASTM規格:A956−96)を測定した。
【0043】
耐摩耗性
ロール表面にブラスト材を吹きつけ、セラミックス層が無くなるまでに要する時間を測定した。
【0044】
耐薬品性・耐腐食性
耐アルカリ性試験として、ロール表面上に水酸化ナトリウム溶液(pH=12)を4日間溜め続けた後、エコーチップ硬さを測定した。
【0045】
また、耐酸性試験として、ロール表面に硫酸アルミニウム溶液(pH=5)を5日間溜め続けた後、エコーチップ硬さを測定した。
【0046】
以上の結果から、実施例1のロールは、比較例1および比較例2のロールに比べ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐腐食性の何れにおいても優れていることがわかった。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明によるセラミックス−樹脂複合ロールは、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性および耐腐食性に優れており、各種工業用、特に製紙用ロールとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明に従ったセラミックス−樹脂複合ロールの一実施形態の要部断面図である。
【図2】この発明に従ったセラミックス−樹脂複合ロールの一実施形態の要部を模式的に示す拡大断面図である。
【図3】この発明に従ったセラミックス−樹脂複合ロールの製造方法の工程を順に示す図である。
【図4】従来のセラミックスロールを模式的に示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 セラミックス−樹脂複合ロール、2 ロール芯、3 下地層、4 セラミックス溶射被膜、5 セラミックス粒子、6 樹脂、7 加熱炉、11 ロール芯、12 下地層、13 セラミックス層、14 セラミックス粒子、15 有機高分子物質層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ロール芯と、
前記金属製ロール芯の外周面に形成された下地層と、
前記下地層の外周面に形成されたセラミックス溶射被膜とを備え、
前記セラミックス溶射被膜は、
隣接するセラミックス粒子が溶融結合したセラミックス粒子層と、
前記セラミックス粒子層の表面から前記下地層の表面に至るまでセラミックス粒子間の間隙内に充填された樹脂層とを含む、セラミックス−樹脂複合ロール。
【請求項2】
前記樹脂層を形成する樹脂は、熱硬化性樹脂である、請求項1に記載のセラミックス−樹脂複合ロール。
【請求項3】
前記樹脂層を形成する樹脂は、エポキシ樹脂である、請求項1に記載のセラミックス−樹脂複合ロール。
【請求項4】
金属製ロール芯の外周面に下地層を形成する下地層形成工程と、
前記下地層の外周面にセラミック粒子を溶射して隣接するセラミックス粒子が溶融結合したセラミックス粒子層を形成するセラミックス溶射工程と、
前記セラミックス粒子層のセラミックス粒子間の間隙内に熱硬化性液状樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、
前記樹脂含浸工程後のロール全体を加熱して前記液状樹脂を硬化させる樹脂硬化工程とを備える、セラミックス−樹脂複合ロールの製造方法。
【請求項5】
前記セラミックス粒子の溶射を、水安定化プラズマ溶射法によって行う、請求項4に記載のセラミックス−樹脂複合ロールの製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性液状樹脂を、前記セラミックス粒子層の表面から前記下地層の表面に至るまでセラミックス粒子の間隙内に浸透させる、請求項4または5に記載のセラミックス−樹脂複合ロールの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂硬化工程を加熱炉内で行う、請求項4〜6のいずれかに記載のセラミックス−樹脂複合ロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−231427(P2007−231427A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51080(P2006−51080)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】