説明

セラミックス粒子及びその製造方法

【課題】骨格部が十分な強度を有し、粒子自体を小径化することなく、溶離液等との反応面積を大きくすることができるとともに、高い比表面積を得ることができ、触媒、細胞、タンパク質等の吸着性に優れるセラミックス粒子及びその製造方法の提供。
【解決手段】
本発明に係わるセラミックス粒子10は、外表面10aに開気孔20が複数設けられ、前記開気孔20は、平均気孔径が2μm以上50μm以下であり、前記開気孔20の前記外表面10a側の開口部の口径Oは、1μm以上30μm以下であり、前記開気孔20を構成する骨格部30は緻密体で構成され、前記外表面10a及び前記開気孔20の内壁面に、比表面積1m/g以上のセラミックス微粒子が付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス粒子は、触媒、細胞、タンパク質等の吸着性に優れていることから、触媒担体、細胞培養担体、液体クロマトグラフィ用充填剤等に広く使用されている。
【0003】
このようなセラミックス粒子は、他の物質等との反応性を高めるために、高い比表面積を備えることが要求されている。
【0004】
このような要求に対し、例えば、平均孔径が100〜4000Åの連続気孔を有し、全細孔容積の70%以上が、平均孔径の0.5〜2倍の範囲の孔径を有する細孔で占められており、粒子1g当たりの細孔容積が0.05ml以上であり、Ca/P比1.5〜1.80のリン酸カルシウム系化合物からなる平均粒径1〜40μmの球状粒子である多孔質リン酸カルシウム系化合物粒子が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、高い反応面積を得るために、粒子自体を小径化する技術も一般的に知られている。
【特許文献1】特公平8−32551号公報([請求項1]など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような平均孔径の連続気孔の内部には、溶離液やガス(以下、溶離液等という)が流れ込みにくいため、実質的な反応性を有する部分は、セラミックス粒子の外表面のみとなる可能性があった。そのため、溶離液等との反応面積を大きくすることができず、分離性能の向上には限界がみられた。
【0007】
また、高い反応面積を得るために、粒子自体を小径化する技術は、例えば、小径化した粒子をカラムに充填すると、カラムに送る溶離液等の送流抵抗が大きくなるため、圧力損失が増大し、装置負荷が大きくなるという問題が見られた。その上、セラミックス粒子も、圧力損失に耐えられる強度が求められていた。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、骨格部が十分な強度を有しているとともに、粒子自体を小径化することなく、溶離液等との反応面積を大きくすることができるセラミックス粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係わるセラミックス粒子は、外表面に開気孔が複数設けられたセラミックス粒子であって、前記開気孔は、平均気孔径が2μm以上50μm以下であり、前記開気孔の前記外表面側の開口部の口径は、1μm以上30μm以下であり、前記開気孔を構成する骨格部は緻密体で構成され、前記外表面及び前記開気孔の内壁面に、比表面積1m/g以上のセラミックス微粒子が付着していることを特徴とする。
【0010】
このような構成を備えているため、本実施形態に係わるセラミックス粒子は、骨格部が十分な強度を有するとともに、粒子自体を小径化することなく、溶離液等との反応面積を大きくすることができる。また、高い比表面積を得ることができ、触媒、細胞、タンパク質等の吸着性を効果的に向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係わるセラミックス粒子は、外表面に開気孔が複数設けられたセラミックス粒子であって、前記開気孔は、前記外表面に設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である第1の開気孔と、前記第1の開気孔の内壁面に連通して設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である第2の開気孔と、を備え、前記第1の開気孔の前記外表面側の開口部の口径及び前記第1の開気孔と前記第2の開気孔との間の連通部の口径は、1μm以上30μm以下であり、前記開気孔を構成する骨格部は緻密体で構成され、前記外表面及び前記開気孔の内壁面に、比表面積1m/g以上のセラミックス微粒子が付着していることを特徴とする。
【0012】
このような構成を備えているため、骨格部が十分な強度を有するとともに、セラミックス粒子の内部まで溶離液等が流れ込むため、溶離液等との反応面積を更に大きくすることができる。
【0013】
開気孔は、セラミックス粒子の一方の外表面から他方の外表面まで連通して設けられていることが好ましい。
【0014】
このような構成を備えているため、セラミックス粒子の内部に満遍なく溶離液等を流し込むことができるため、溶離液等との反応面積を最大にすることができる。
【0015】
セラミックス粒子は、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、リン酸カルシウム等の無機酸化物、炭化珪素、炭化硼素又は窒化珪素のいずれかで構成されている。
【0016】
このような構成を備えているため、本発明に係わるセラミックス粒子は、触媒担体、細胞培養担体、液体クロマトグラフィ用充填剤等に広く使用することができる。
【0017】
また、本発明に係わるセラミックス粒子の製造方法は、セラミックス粉体、バインダ、分散剤及び純水を含むスラリ(W)に、第1の油及び親水性の界面活性剤を添加し、前記第1の油にせん断応力を与えることにより、前記第1の油で構成された油滴粒子(O)を形成し、前記スラリ(W)中に前記油滴粒子(O)が分散されたO/Wエマルションを作製する工程と、前記O/Wエマルションを、親油性の界面活性剤を含む第2の油(O)に添加し、前記O/Wエマルションにせん断応力を与えることにより、前記油滴粒子(O)を内部に閉じ込めたスラリで構成された微小液滴(O/W)を形成し、前記第2の油(O)中に前記微小液滴(O/W)が分散されたO/W/Oエマルションを作製する工程と、前記微小液滴(O/W)を焼成する工程と、前記焼成した焼成体を、セラミックス粉体を含むスラリ(W)中に浸漬する工程と、前記浸漬した焼成体を乾燥させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このような製造方法により前述した本発明に係わるセラミックス粒子を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、骨格部が十分な強度を有し、粒子自体を小径化することなく、溶離液等との反応面積を大きくすることができるとともに、高い比表面積を得ることができ、触媒、細胞、タンパク質等の吸着性に優れるセラミックス粒子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1に本実施形態に係わるセラミックス粒子の外観の概念図を、図2に本実施形態に係わるセラミックス粒子の表面から内部にかけての断面の概念図をそれぞれ示す。
【0022】
本実施形態に係わるセラミックス粒子10は、図1に示すように、外表面10aに開気孔20を複数備える。
【0023】
開気孔20は、図2に示すように、外表面10aに設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である表面開気孔20aを備え、表面開気孔20aの外表面10a側の開口部の口径Oは、1μm以上30μm以下で構成されている。
【0024】
また、開気孔20を構成する骨格部30は、緻密体で構成されている。ここで緻密体とは、例えば骨格部の95%以上に空孔が存在しないことをいう。言い換えると、気孔率が5%未満のことを示している。
【0025】
更に、前記外表面及び前記開気孔の内壁面に、比表面積1m/g以上のセラミックス微粒子が付着されている。
【0026】
このような構成を備えているため、骨格部が十分な強度を有し、セラミックス粒子10の表面開気孔20a内に溶離液等が流れ込むため、本実施形態に係わるセラミックス粒子は、粒子自体を小径化することなく、溶離液等との反応面積を大きくすることができる。
【0027】
なお、平均気孔径が2μm未満である場合には、開口部の口径が500nm未満となる場合があり、溶離液等が表面開気孔内に流れ込みにくくなるため、溶離液等との反応面積を大きくすることが難しく、分離性能の向上には限界がある。また、平均気孔径が50μmを超える場合には、開口部の口径が30μmを超える場合があり、セラミックス粒子10自身の強度が低下する可能性があるため好ましくない。
【0028】
なお、セラミックス粒子10自身の強度の低下は、セラミックス粒子10の破壊を誘発し、これによってセラミックス粒子の小径化を引き起こすため、結果的に圧力損失が増大するという問題が発生する。しかしながら、本実施形態に係るセラミックス粒子10においては、骨格部が緻密体であるため、十分な強度を確保することができる。
【0029】
開気孔20は、図2に示すように、少なくとも外表面10aに設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である表面開気孔(第1の開気孔)20aと、表面開気孔20aの内壁面20a1に連通して設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である内部開気孔(第2の開気孔)20bと、を備え、表面開気孔20aの外表面10a側の開口部の口径O及び表面開気孔20aと内部開気孔20bとの間の連通部の口径Rt1は、1μm以上30μm以下で構成されていることが好ましい。
【0030】
このような構成を備えているため、セラミックス粒子10の内部(内部開気孔20b)まで溶離液等が流れ込むため、溶離液等との反応面積を更に大きくすることができる。
【0031】
更に、好ましくは、開気孔20は、セラミックス粒子10の一方の外表面から他方の外表面まで連通して設けられていることが好ましい。すなわち、図2に示すように、内部開気孔20bの内壁面20b1に連通して設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である第2の内部開気孔20cのように、複数の表面開気孔20a及び内部開気孔20b、20c・・・がセラミックス粒子10の一方の外表面から他方の外表面まで連通して設けられていることが好ましい。なお、この場合、同様に、内部開気孔20b、20c・・・間の連通部の口径Rt2は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0032】
このような構成を備えることで、セラミックス粒子の内部に満遍なく溶離液等を流し込むことができるため、溶離液等との反応面積を最大にすることができる。
【0033】
なお、平均気孔径は、セラミックス粒子を樹脂包埋し、表面を研磨したものを電子顕微鏡観察し、画像回折により算出した値である。また、口径O、Rt1、Rt2は、水銀ポロシメータを用いて水銀圧入法により測定した値である。
【0034】
上述した本実施形態に係わるセラミックス粒子10は、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、リン酸カルシウム等の無機酸化物、炭化珪素、炭化硼素又は窒化珪素のいずれかで構成されていることが好ましい。
【0035】
このような構成を備えることで、本発明に係わるセラミックス粒子は、触媒担体、細胞培養担体、液体クロマトグラフィ用充填剤等に広く使用することができる。
【0036】
このうち、リン酸カルシウムは、タンパク質などに対する吸着性が高いことから、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)などの液体クロマトグラフィ用充填剤として使用するのが好適であり、上述した構成のセラミックス粒子10を用いることで充填剤としてより高い効果を得ることができる。なお、ここでいうリン酸カルシウムとしては、Ca/P比が1.5から1.8の任意のリン酸カルシウムを使用することができ、リン酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイトなどが含まれる。また、本発明に係わるセラミックス粒子10をリン酸カルシウムで構成し、充填剤として用いる場合には、セラミックス粒子10として、10m/g以上の比表面積を備えていることが好ましい。このため、後述する製造方法において、焼成後の強度を高めるためにも、原料として用いるリン酸カルシウムは、50m/g以上の比表面積をもつことが好ましい。
【0037】
次に、本実施形態に係わるセラミックス粒子10の製造方法について図面を用いて説明する。図3は、本実施形態に係わるセラミックス粒子の製造方法を説明するための工程概念図である。
【0038】
最初に、セラミックス粉体、バインダ、分散剤及び純水を含むスラリ(W)50を作製する(図3(a))。
【0039】
ここで用いられるセラミックス粉体は、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、リン酸カルシウム等の無機酸化物、炭化珪素、炭化硼素又は窒化珪素のいずれかの粉体が用いられる。また、ここで用いられるバインダは、寒天を好適に用いることができる。また、ここで用いられる分散剤は、例えば、ポリアクリル酸アンモニウムを用いることができる。また、ここでいう純水は、半導体製造の分野で一般的に使用されているもので、一般に、工業用水、水道水等を原水として、その中の不純物を高純度イオン交換樹脂、高機能膜、脱気装置等を用いて精製分離されたものであり、例えば、一般家庭に用いられる水道水の比抵抗値が0.01〜0.05MΩ・cmであるのに対して、例えば、1MΩ・cm以上に精製されているものをいう。
【0040】
次に、スラリ(W)50に、第1の油51及び親水性の界面活性剤(図示せず)を添加し、第1の油51にせん断応力52を与える(図3(b))。
【0041】
ここで用いられる第1の油51は、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ヘキサデカン等を好適に用いることができる。また、親水性の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを好適に用いることができる。また、せん断応力52は、攪拌機によって与えることができる。
【0042】
このように、第1の油51にせん断応力52を与えることにより、前記第1の油51で構成された油滴粒子(O)53を形成し、スラリ(W)50中に油滴粒子(O)53が分散されたO/Wエマルション54を作製する(図3(c))。
【0043】
次に、親油性の界面活性剤を含む第2の油(O)55を作製し、作製したO/Wエマルション54を第2の油(O)55内に添加し、O/Wエマルション54にせん断応力56を与える(図3(d))。
【0044】
ここで用いられる第2の油55は、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ヘキサデカン等を好適に用いることができる。また、親油性の界面活性剤は、ソルビタンセスキオレエートを好適に用いることができる。また、せん断応力56は、攪拌機によって与えることができる。
【0045】
このように、O/Wエマルション54にせん断応力56を与えることにより、油滴粒子(O)53を内部に閉じ込めたスラリ50で構成された微小液滴(O/W)57を形成し、第2の油(O)55中に微小液滴(O/W)57が分散されたO/W/Oエマルション58を作製する(図3(e))。
【0046】
次いで、O/W/Oエマルション58から微小液滴(O/W)57を回収して、微小液滴(O/W)57を焼成することで、微小液滴(O/W)57中のスラリ(W)50を焼成すると共に、油滴粒子(O)53を気化させて、油滴粒子(O)53の部分が開気孔20となった微小液滴(O/W)57の焼成体を作製する。
【0047】
さらに、焼成処理したセラミックス粒子10の焼成体を、比表面積1m/g以上のセラミックス粒子が含有したスラリ中に浸漬させて、真空引きした後、スラリ中からセラミックス粒子10を取出して、乾燥を行う。乾燥後のセラミックス粒子10においては、外表面のみならず、表面開気孔、内部開気孔の内壁面の表面に比表面積1m/g以上のセラミック粒子が無数に付着している。そのため、高い比表面積を得ることができ、触媒、細胞、タンパク質等の高い吸着率を確保することができる。
【0048】
なお、この浸漬する回数は、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0049】
以上の方法にて、本実施形態に係わるセラミックス粒子10を製造することができる。
【0050】
なお、開気孔20の平均気孔径や口径O、Rt1、Rt2の制御は、第1の油51の使用量、親水性の界面活性剤の種類やその使用量、せん断応力52、56の強弱等により制御することができる。
【0051】
なお、セラミックス粒子10を製造する工程において、バインダとして寒天を用いた場合には、スラリ(W)50の作製から微小液滴(O/W)57の形成まで、加熱環境下(例えば、40℃以上)で行うことが好ましい。これによって、寒天が固化することなく、効率よく微小液滴(O/W)57を形成することができる。
【0052】
また、微小液滴(O/W)57を形成後、O/W/Oエマルション58から微小液滴(O/W)57の回収前に、O/W/Oエマルション58を冷却する工程を備えることが好ましい。これによって、微小液滴(O/W)57を形成後に、微小液滴(O/W)57内に含まれる寒天が固化し、これによって、微小液滴(O/W)57の全体がゲル化されるため、形状が安定するという効果を有する。
【0053】
また、ゲル化させた微小液滴(O/W)57を回収後、焼成前に、エタノール等の溶剤を用いて洗浄することが好ましい。これにより、微小液滴(O/W)57内に含まれる界面活性剤成分を除去すると共に、微小液滴(O/W)57内に含まれる水分を溶剤に置換する。これによって、焼成の際、早期に置換した溶剤成分を気化させることができるため、ゲル化した微小液滴(O/W)57の形状が安定したまま焼成を行うことができる。
【0054】
また、溶剤による洗浄後、焼成前に、乾燥処理を行っても良い。この乾燥処理は、例えば、減圧下で真空乾燥を行う。これにより、溶剤成分は焼成前に除去されるため、より微小液滴(O/W)57の形状が安定したまま焼成を行うことができる。
【0055】
また、溶剤洗浄後、乾燥処理前に、ゲル化した微小液滴(O/W)57に対し、油性成分を被膜させる被膜処理を行ってもよい。このような被膜処理を行うことで、更に、微小液滴(O/W)57の形状を安定させたまま焼成を行うことができる。油性成分は、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ヘキサデカン等を好適に用いることができる。
【0056】
なお、本実施形態に係わるセラミックス粒子10は、前述した方法により、O/Wエマルション54を作製した後、O/Wエマルション54を噴霧乾燥により造粒して造粒粉を生成し、造粒粉を焼成することでも製造することができる。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
寒天を純水に対して重量比0.5%の割合で添加した寒天水溶液に、ハイドロキシアパタイト粉末を寒天水溶液に対して重量比30%の割合で混合し、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムをハイドロキシアパタイト粉末に対して重量比で5%添加し、ボールミルにて10時間以上混合処理し、ハイドロキシアパタイト含有スラリを作製した。
【0058】
次に、得られたスラリに対してポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを純水に対して1%、イソパラフィンを純水に対して30%各々添加し、攪拌機を用いて攪拌した。この攪拌により、スラリ中でイソパラフィンは乳化して油滴粒子を形成し、油滴粒子が分散されたアパタイトスラリを作製した。
【0059】
次に、イソパラフィン及び界面活性剤(ソルビタンセスキオレエート:イソパラフィンに対して重量比で4%)をビーカーに入れ、加熱しながら攪拌機を用いて攪拌し、攪拌させた状態で、ビーカー内に作製した油滴粒子が分散されたアパタイトスラリを少量ずつ添加した。この攪拌により、ビーカー内に、油滴粒子を内部に閉じ込めたスラリで構成された微小液滴が形成された。
【0060】
なお、ここまでの処理はバインダである寒天が硬化しないように、温度を40℃以上に保持する環境下で行った。
【0061】
次に、ビーカーを冷却し、形成された微小液滴をゲル化した。その後、ゲル化した微小液滴を回収し、エタノールで溶剤洗浄した後、減圧下で真空乾燥し、1200〜1300℃で焼成処理した。係る温度での焼成処理中に骨格部に存在した微孔は埋まり、緻密な骨格部が得られた。
【0062】
焼成処理したセラミックス粒子を、比表面積50m/gのハイドロキシアパタイト粒子が含有したスラリ中に浸漬し、真空引きした。
【0063】
スラリ中からセラミックス粒子を取出して、700℃で乾燥させた。乾燥後のセラミックス粒子においては、外表面のみならず、表面開気孔、内部開気孔の表面にセラミック粒子が付着していた。微細なセラミック粒子が無数に付着していたため、高い比表面積を得ることができた。
【0064】
得られたセラミックス粒子を、平均粒径80μmに分級し、実施例1のサンプルとした。
【0065】
(比較例1)
寒天を純水に対して重量比0.5%の割合で添加した寒天水溶液に、ハイドロキシアパタイト粉末を寒天水溶液に対して重量比30%の割合で混合し、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムをハイドロキシアパタイト粉末に対して重量比で5%添加し、ボールミルにて10時間以上混合処理し、ハイドロキシアパタイト含有スラリを作製した。
【0066】
次に、得られたスラリに対してポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを純水に対して1%、イソパラフィンを純水に対して30%各々添加し、攪拌機を用いて攪拌した。この攪拌により、スラリ中でイソパラフィンは乳化して油滴粒子を形成し、油滴粒子が分散されたアパタイトスラリを作製した。
【0067】
次に、イソパラフィン及び界面活性剤(ソルビタンセスキオレエート:イソパラフィンに対して重量比で4%)をビーカーに入れ、加熱しながら攪拌機を用いて攪拌し、攪拌させた状態で、ビーカー内に作製した油滴粒子が分散されたアパタイトスラリを少量ずつ添加した。この攪拌により、ビーカー内に、油滴粒子を内部に閉じ込めたスラリで構成された微小液滴が形成された。
【0068】
なお、ここまでの処理はバインダである寒天が硬化しないように、温度を40℃以上に保持する環境下で行った。
【0069】
次に、ビーカーを冷却し、形成された微小液滴をゲル化した。その後、ゲル化した微小液滴を回収し、エタノールで溶剤洗浄した後、減圧下で真空乾燥し、1200〜1300℃で焼成処理した。係る温度での焼成処理中に骨格部に存在した微孔は埋まり、緻密な骨格部が得られた。
【0070】
得られたセラミックス粒子を、平均粒径80μmに分級し、比較例1のサンプルとした。
【0071】
(比較例2)
寒天を純水に対して重量比0.5%の割合で添加した寒天水溶液に、ハイドロキシアパタイト粉末を寒天水溶液に対して重量比30%の割合で混合し、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムをハイドロキシアパタイト粉末に対して重量比で5%添加し、ボールミルにて10時間以上混合処理し、ハイドロキシアパタイト含有スラリを作製した。
【0072】
次に、実施例1あるいは比較例1に示すような油滴粒子を形成しないで、イソパラフィン及び界面活性剤(ソルビタンセスキオレエート:イソパラフィンに対して重量比で4%)をビーカーに入れ、加熱しながら攪拌機を用いて攪拌し、攪拌させた状態で、ビーカー内に、作製したスラリを少量ずつ添加した。この攪拌により、ビーカー内に油滴粒子を内部に閉じ込めていないスラリで構成された微小液滴が形成された。
【0073】
なお、ここまでの処理はバインダである寒天が硬化しないように、温度を40℃以上に保持する環境下で行った。
【0074】
次に、ビーカーを冷却し、形成された微小液滴をゲル化した。その後、ゲル化した微小液滴を回収し、エタノールで溶剤洗浄した後、減圧下で真空乾燥し、1200〜1300℃で焼成処理した。
【0075】
得られたセラミックス粒子を、平均粒径80μmに分級し、比較例2のサンプルとした。
【0076】
次に、実施例1、比較例1および2で作製したサンプルについて、タンパク質分離特性試験を実施した。
【0077】
(タンパク質分離特性試験)
タンパク質分離特性試験は、高速液体クロマトグラフ装置(日立製Lachorm L-7000)を用いて行った。なお、分析に使用した溶離液・タンパク質サンプル・エンプティカラム・充填剤スラリや試験条件は下記の通りである。
【0078】
溶離液は、1mMリン酸ナトリウム緩衝液と400mMリン酸ナトリウム緩衝液を用いた。なお、いずれの溶離液もpH6.8に調整した。タンパク質サンプルは、アルブミン・リゾチーム・チトクロム−Cを用い、各種タンパク質が各々0.03mM入ったタンパク質サンプル液を用いた。なお、タンパク質サンプル液の溶媒として1mMリン酸ナトリウム緩衝液を使用した。エンプティカラムは、φ2mm×150mmのステンレス製カラムを使用した。
【0079】
充填剤スラリは、各種充填剤0.3gを400mMのリン酸ナトリウム緩衝液で粒子濃度10wt%に希釈したものを用いた。また、カラムへの充填は高速液体クロマトグラフィ装置にパッカーを取り付けたエンプティカラムを設置し、これに充填剤スラリを入れ、流量2mL/minで1mMのリン酸ナトリウム緩衝液を流して充填させた。
【0080】
タンパク質分離特性評価は、溶離液を流量1mL/minで流した。溶離液は1mMリン酸ナトリウム緩衝液を5分間流した後、1mMから200.5mM(1mM(50%)+400mM(50%))に15分間かけて線形に変化させた。
【0081】
実施例1、比較例1および比較例2におけるタンパク質分離特性の試験結果をそれぞれ比較すると、実施例でのタンパク質の分離特性が非常に高いとの結果が見られた。次いで、比較例2でのタンパク質の分離特性が高く、比較例1でのタンパク質の分離特性は非常に低いとの結果が見られた。
【0082】
なお、実施例1で作製したセラミックス粒子は、図1に示すように、外表面からその内部にかけて、平均気孔径が2μm以上50μm以下であり、開口部、連通部の口径が1μm以上30μm以下である複数の開気孔が設けられ、かつ、その骨格部は緻密体で構成され、さらに、セラミックス粒子の外表面及び開気孔の内壁面には、セラミックス微粒子が付着されていることが確認できた。
【0083】
なお、比較例1で作製したセラミックス粒子は、前記セラミックス微粒子の付着は確認されなかった。また、比較例2で作製したセラミックス粒子は、前記複数の開気孔が確認されなかった。
【0084】
(実施例2)
ハイドロキシアパタイト粉末の変わりにアルミナ粉末を用いた以外は実施例1と同様な方法でセラミックス粒子を作製した。
【0085】
その結果、実施例1と同様に、外表面からその内部にかけて平均気孔径が2μm以上50μm以下、開口部及び連通部の口径が1μm以上30μm以下の複数の開気孔を有するセラミックス粒子を得ることができた。
【0086】
(実施例3)
ハイドロキシアパタイト粉末の変わりにシリカ粉末を用いた以外は実施例1と同様な方法でセラミックス粒子を作製した。
【0087】
その結果、実施例1と同様に、外表面からその内部にかけて平均気孔径が2μm以上50μm以下、開口部及び連通部の口径が1μm以上30μm以下の複数の開気孔を有するセラミックス粒子を得ることができた。
【0088】
(実施例4)
ハイドロキシアパタイト粉末の変わりにムライト粉末を用いた以外は実施例1と同様な方法でセラミックス粒子を作製した。
【0089】
その結果、実施例1と同様に、外表面からその内部にかけて平均気孔径が2μm以上50μm以下、開口部及び連通部の口径が1μm以上30μm以下の複数の開気孔を有するセラミックス粒子を得ることができた。
【0090】
(実施例5)
ハイドロキシアパタイト粉末の変わりにジルコニア粉末を用いた以外は実施例1と同様な方法でセラミックス粒子を作製した。
【0091】
その結果、実施例1と同様に、外表面からその内部にかけて平均気孔径が2μm以上50μm以下、開口部及び連通部の口径が1μm以上30μm以下の複数の開気孔を有するセラミックス粒子を得ることができた。
【0092】
(実施例6)
ハイドロキシアパタイト粉末の変わりに炭化珪素粉末を用いた以外は実施例1と同様な方法でセラミックス粒子を作製した。
【0093】
その結果、実施例1と同様に、外表面からその内部にかけて平均気孔径が2μm以上50μm以下、開口部及び連通部の口径が1μm以上30μm以下の複数の開気孔を有するセラミックス粒子を得ることができた。
【0094】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態に係わるセラミックス粒子の外観の概念図。
【図2】本実施形態に係わるセラミックス粒子の表面から内部にかけての断面の概念図。
【図3】本実施形態に係わるセラミックス粒子の製造方法を説明するための工程概念図。
【符号の説明】
【0096】
10…セラミックス粒子
10a…外表面
20…開気孔
20a…表面開気孔
20b…内部開気孔
20c…内部開気孔
30・・・骨格部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に開気孔が複数設けられたセラミックス粒子であって、
前記開気孔は、平均気孔径が2μm以上50μm以下であり、前記開気孔の前記外表面側の開口部の口径は、1μm以上30μm以下であり、前記開気孔を構成する骨格部は緻密体で構成され、前記外表面及び前記開気孔の内壁面に、比表面積1m/g以上のセラミックス微粒子が付着していることを特徴とするセラミックス粒子。
【請求項2】
外表面に開気孔が複数設けられたセラミックス粒子であって、
前記開気孔は、前記外表面に設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である第1の開気孔と、前記第1の開気孔の内壁面に連通して設けられた平均気孔径が2μm以上50μm以下である第2の開気孔と、を備え、
前記第1の開気孔の前記外表面側の開口部の口径及び前記第1の開気孔と前記第2の開気孔との間の連通部の口径は、1μm以上30μm以下であり、前記開気孔を構成する骨格部は緻密体で構成され、前記外表面及び前記開気孔の内壁面に、比表面積1m/g以上のセラミックス微粒子が付着していることを特徴とするセラミックス粒子。
【請求項3】
前記開気孔は、前記セラミックス粒子の一方の外表面から他方の外表面まで連通して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス粒子。
【請求項4】
無機酸化物、炭化珪素、炭化硼素又は窒化珪素のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセラミックス粒子。
【請求項5】
セラミックス粉体、バインダ、分散剤及び純水を含むスラリ(W)に、第1の油及び親水性の界面活性剤を添加し、前記第1の油にせん断応力を与えることにより、前記第1の油で構成された油滴粒子(O)を形成し、前記スラリ(W)中に前記油滴粒子(O)が分散されたO/Wエマルションを作製する工程と、
前記O/Wエマルションを、親油性の界面活性剤を含む第2の油(O)に添加し、前記O/Wエマルションにせん断応力を与えることにより、前記油滴粒子(O)を内部に閉じ込めたスラリで構成された微小液滴(O/W)を形成し、前記第2の油(O)中に前記微小液滴(O/W)が分散されたO/W/Oエマルションを作製する工程と、
前記微小液滴(O/W)を焼成する工程と、
前記焼成した焼成体を、セラミックス粉体を含むスラリ(W)中に浸漬する工程と、
前記浸漬した焼成体を乾燥させる工程と、
を備えることを特徴とするセラミックス粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−100503(P2010−100503A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275837(P2008−275837)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】