説明

セルフロッククラッチ

【課題】ギア効率の高い食い違い軸歯車に好適であり、少ない部品点数で確実なセルフロックが可能であるセルフロッククラッチを提供する。
【解決手段】定位置で回動駆動する軸部材1と、軸部材1により同一軸芯L回りに駆動する第一ギア2と、第一ギア2と食い違い軸歯車の関係で第一ギア2の回動により定位置で回動する第二ギア3と、第一ギア2の軸芯L方向の両端に設けたロック部22と、軸部材1と第一ギア2との間にあり第一ギアの軸部材1に対する一定角度範囲の相対回動と軸芯L方向の一定範囲の相対移動とを許容する動力伝達部11、23とを備え、軸部材1が回動駆動したとき、第一ギア2が一定角度範囲の端部で軸部材1に係合し第一ギア2の駆動により第二ギア3が回動し、軸部材1が回動駆動しないとき、第二ギア3の回動により第一ギア2が一定範囲の端部に位置し第二ギア3の歯部31がロック部22に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側から駆動力を入力したときは出力側へ伝達し、出力側から駆動力を入力したときは自動的にロックを掛けて入力側へ伝達しないセルフロッククラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等の駆動軸が軸中心に嵌合され、駆動軸の回転駆動により回転する駆動側回転体と、駆動側回転体の外周を包む円筒状のカラーと、カラーの内側において駆動側回転体と同一軸芯上に配置され、回転方向に駆動側回転体と当接可能である当接面を有すると共に、回転方向の位置によってカラーの内周面との距離が異なるよう形成してある制御面を外周面に有する従動側回転体と、カラーの内周面と制御面との間に配置され、カラーの内周面に沿って移動可能な転動体とを備えたセルフロッククラッチがあった。
【0003】
このセルフロッククラッチは、駆動側回転体が回転し、当接面と駆動側回転体とが当接したとき、転動体は制御面と離間しておりカラーの内周面に沿って移動可能であるよう構成してある。このため、駆動側回転体と従動側回転体とが一体回動可能である。また、駆動側回転体が回転せず、従動側回転体が回転したとき、転動体がカラーの内周面と制御面との間に挟持されるよう構成してある。このため、従動側回転体のさらなる回動は禁止される。さらに、転動体が挟持されたときの制御面と転動体との接触範囲を長くするよう構成してあった。
【0004】
この技術によると、駆動側回転体が回転したとき、駆動側回転体と従動側回転体との一体回動が許容される。駆動側回転体が回転しないとき、従動側回転体が回転すると、自動的に従動側回転体の回動が禁止される。このため、確実なセルフロックが可能であるとされていた。
【0005】
さらに、制御面と転動体との接触範囲を長くするよう構成してあるため、セルフロッククラッチを大型化することなく、ロック保持力を向上することができるとされていた。
【0006】
【特許文献1】特開2001−336550号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のセルフロッククラッチは、部品点数が多い上に、構造が複雑であるため、費用が高く、動作の信頼性が低い虞があった。
【0008】
また、例えば、食い違い軸歯車であるウォームギアは、通常、減速比が高くウォームのリードが短い。このため、ウォームギア自身がセルフロック機能を有し、ウォームホイール側から駆動することはできない。しかし、ギア効率を高めるためにウォームのリードを長くした場合、ウォームのねじり角が安息角を越えるとウォームホイール側からの駆動が可能となってしまう。したがって、セルフロック機能を備えると共にギア効率を高めるには限界があった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑み、ギア効率の高い食い違い軸歯車に好適であり、少ない部品点数で確実なセルフロックが可能であるセルフロッククラッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るセルフロッククラッチの第1特徴構成は、定位置で回動駆動する軸部材と、前記軸部材によって同一軸芯回りに駆動される第一ギアと、該第一ギアと食い違い軸歯車の関係にあり、前記第一ギアの回動によって定位置で回動する第二ギアと、前記第一ギアの前記軸芯の方向の両端に設けられたロック部と、前記軸部材と前記第一ギアとの間に備えられると共に、前記第一ギアの前記軸部材に対する一定角度範囲の相対回動と、前記軸芯方向の一定範囲の相対移動とを許容する動力伝達部とを備え、前記軸部材が回動駆動したとき、前記第一ギアが前記一定角度範囲の何れか一方の端部で前記軸部材に係合して、前記第一ギアの駆動によって前記第二ギアが回動し、前記軸部材が回動駆動しないとき、前記第二ギアの回動によって前記第一ギアが前記一定範囲の何れか一方の端部に位置して、前記第二ギアの歯部が前記ロック部に当接するよう構成してある点にある。
【0011】
本構成のように、軸部材と第一ギアと第二ギアとロック部と動力伝達部とを備えると、軸部材が回動駆動するとき、第一ギアが一定角度範囲の何れか一方の端部に位置し軸部材と係合して、第一ギアが軸部材と一体回動し、第一ギアの駆動によって第二ギアが回動する。軸部材が回動駆動しないとき、第二ギアが回動すると、第一ギアが軸芯方向に相対移動して、一定範囲の何れか一方の端部に位置する。このとき、第一ギアのロック部と第二ギアの歯部とが当接するため、第二ギアのさらなる回動が禁止される。このように、第二ギアの回動によって自動的にセルフロックが掛かるため、逆駆動防止のための機構を別途備える必要がない。また、簡便な構造かつ少ない部品点数で構成してあるため、製造コストを抑えることができると共に、動作の信頼性が高まる。さらに、セルフロック保持力がロック部と歯部との当接に基づいているため、第二ギアからの回動負荷が大きくなっても、セルフロックが解除される虞が少ない。したがって、誤作動の少ないセルフロッククラッチとすることができる。
【0012】
本構成の機構は、セルフロック機能を有さない歯車、例えば、ギア効率を高めるがゆえにセルフロック機能を失ったウォームギアに適用すれば、高いギア効率を達成しつつ、ウォームホイール側からの逆駆動を禁止することができる。
【0013】
本発明に係るセルフロッククラッチの第2特徴構成は、前記第一ギアの外周部に備えられ、回動方向に前記一定角度範囲と一致する長さの対角線及び前記軸芯方向に前記一定範囲と一致する長さの対角線を有する菱形形状の開口部と、前記軸部材の外周部に備られた突起部材とを前記動力伝達部に備え、前記軸部材を前記第一ギアに挿入し、前記開口部の範囲内で前記突起部材が相対移動するよう構成した点にある。
【0014】
本構成によると、動力伝達部が、第一ギアの外周部に備えられた菱形形状の開口部と、軸部材の外周部に備られた突起部材とを有し、開口部の範囲内で突起部材が相対移動する。このような構成であると、軸部材が何れか一方向に回動駆動したとき、突起部材は菱形形状である開口部の何れか一辺に沿って回動方向の対角線の何れか一方の端部に案内される。軸部材が動方向にさらに回動駆動すると、突起部材が開口部に係合し、第一ギアは軸部材と一体となって回動駆動する。したがって、第一ギアの駆動によって第二ギアを回動させることができる。即ち、回動方向の対角線の長さによって、上述の一定角度範囲が決まる。
【0015】
また、軸部材が回動駆動していないとき、第二ギアが何れか一方向に回動すると、突起部材は開口部の何れか一辺に沿って軸芯方向の対角線の何れか一方の端部に案内される。突起部がこの端部に位置したとき、第二ギアの歯部がロック部に当接し、第二ギアのさらなる回動が禁止される。よって、第二ギア自身の回動により自動的にセルフロックを掛けることができる。即ち、軸芯方向の対角線の長さによって、上述の一定範囲が決まる。
【0016】
このような簡便な構成で確実なセルフロックが可能となり、故障が少なく信頼性の高いセルフロッククラッチとすることができる。さらに、製造コストを抑えることができると共に、修理や部品交換も簡単となる。
【0017】
本発明に係るセルフロッククラッチの第3特徴構成は、前記第一ギアおいて、歯部を備えた有歯部の径よりも前記軸芯方向の両端部を拡径することにより前記ロック部を構成してある点にある。
【0018】
本構成によると、第一ギアにおいて、歯部を備えた有歯部の径よりも軸芯方向の両端部を拡径することによりロック部を構成するため、ロック部の形成が簡便であり、また、当接可能な第二ギアの歯の形状やギア寸法のバリエーションが広がる。
【0019】
本発明に係るセルフロッククラッチの第4特徴構成は、前記一定範囲の端部から前記第一ギアが離れるよう付勢する付勢手段を備えた点にある。
【0020】
本構成にように、一定範囲の端部から第一ギアが離れるよう付勢する付勢手段を備えると、一定範囲の端部に第一ギアが位置する状態から軸部材が回動駆動し始めたとき、一定範囲の端部から第一ギアが円滑に離れる。したがって、第一ギアの相対移動が補助され、食い違い軸歯車の駆動を円滑に始動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るセルフロッククラッチを、ギア効率の良いウォームギアに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。各図面において、白抜き矢印は入力側の部材の回動方向を示し、単線の矢印は出力側の部材の回動又は移動方向を示す。
【0022】
(全体構成)
セルフロッククラッチCは、図1に示すごとく、軸部材1と、第一ギアとしてのウォーム2と、第二ギアとしてのウォームホイール3とを備えている。セルフロッククラッチCは、図示しないハウジングの内部に収容してある。ウォーム2とウォームホイール3とによって、食い違い軸歯車であるウォームギアを構成してあり、本ウォームギアは円筒ウォームギアである。
【0023】
軸部材1は、図1に示すごとく、駆動力の入力によって軸芯Lの回りに正逆両方向の回動駆動が可能である。軸部材1の駆動力源は、モータ等による電動であっても、手動であっても良い。軸部材1がガタつかないよう、モータ等はハウジングに確実に固定してある。
【0024】
ウォーム2は、図1に示すごとく、歯部21aを備えたウォーム部21と、ウォーム部21の両端部をウォーム部21よりも拡径した円筒状の拡径部22とを備えると共に、軸部材1と一体回動駆動したとき、ウォームホイール3を回動させる。ウォーム部21が、本発明における「有歯部」であり、拡径部22が、本発明における「ロック部」である。
【0025】
ウォームホイール3は、ウォーム部21と噛合う歯部31を外周に備え、定位置で回動可能なようにハウジングに枢支されている。本実施形態においては、ウォーム2が図1の白抜き矢印の方向に回動したとき、単線の矢印が示す反時計回りにウォームホイール3が回動するよう、歯部21aと歯部31とを構成してある。即ち、ウォーム2が白抜き矢印と反対方向に回動すると、ウォームホイール3は時計回りに回動する。
【0026】
また、ギア効率を良くするために、ウォーム部21のリードは通常のウォーム2のリードよりも長く設定してある。このため、ウォーム2のねじり角が安息角を越え、ウォームギア自体のセルフロック機能が働き難い。
【0027】
さらに、後述する動力伝達部の働きにより、ウォーム2は、軸芯Lの回り方向の一定角度範囲で軸部材1に対する相対回動が可能であると共に、軸芯Lの方向の一定範囲で軸部材1に対する相対移動が可能である。ウォーム2の回動と相対移動とを安定させるために、少なくとも軸部材1と反対側の拡径部22はハウジングに固定した支持部材(図示しない)によって保持してある。
【0028】
(動力伝達部)
図1において点線で示すごとく、拡径部22の一部を中空構造としており、その中空部分に軸部材1を摺動可能に挿入してある。このため、ウォーム2は軸部材1と同一の軸芯Lの回りに回動可能である。中空部分の外周面から内径方向に菱形形状の開口部23を開口してある。また、軸部材1は径方向外側に突出した円筒形状の突起部材11を外周面に備えており、突起部材11が開口部23の範囲内に位置するよう構成してある。例えば、突起部材11の形状に合わせた取付孔(図示しない)を軸部材1の外周面に形成した上で軸部材1をウォーム2に挿入する。この後、開口部23の範囲内に取付孔を位置させ、突起部材11を取付孔に固定する。即ち、ウォーム2の軸部材1に対する相対移動範囲及び相対回動範囲は、開口部23の内側で突起部材11が移動する範囲に規制される。
【0029】
菱形形状の一方の対角線が軸芯Lと平行となるよう開口部23の配置を決定してある。即ち、他方の対角線は回動方向に沿っている。図1は平面図であるため、開口部23の四辺が湾曲しているが、拡径部22を回動方向に展開すると、四辺は直線であり、開口部23は略菱形形状である。ただし、開口部23の四隅である第一端部24a、第二端部24b、第三端部24c及び第四端部24dは突起部材11の外周の形状が合致するようR状に面取りしてある。第一端部24aと第四端部24dとの間の辺が第一辺部25aであり、第一端部24aと第三端部24cとの間の辺が第二辺部25bである。また、第二端部24bと第三端部24cとの間の辺が第三辺部25cであり、第二端部24bと第四端部24dとの間の辺が第四辺部25dである。
【0030】
即ち、軸芯Lの回り方向のウォームの相対回動範囲は、第一端部24aと第二端部24bとの間で突起部材11が移動する範囲であり、この範囲が本発明における「一定角度範囲」である。また、軸芯Lの方向のウォーム2の相対移動範囲は、第三端部24cと第四端部24dとの間で突起部材11が移動する直線距離に等しく、この範囲が本発明における「一定範囲」である。
【0031】
さらに、突起部材11が第三端部24cに位置したとき、軸部材1と反対側の拡径部22の外周端部22aがウォームホイール3の歯部31と歯部31との間に噛み込むよう、軸部材1と反対側の拡径部22の径を決定してある。また、突起部材11が第四端部24dに位置したとき、軸部材1の側の拡径部22の外周端部22aがウォームホイール3の歯部31と歯部31との間に噛み込むよう、軸部材1の側の拡径部22の径を決定してある。したがって、ウォーム2が一定範囲の端部の何れか一方に位置したとき、ウォームホイール3と拡径部22とが当接して、ウォームホイール3の回動は禁止される。
【0032】
(セルフロッククラッチの動作)
上述のごとく構成してあるセルフロッククラッチCの動作を説明する。図2及び図3において、(a)図はセルフロッククラッチCの平面図を示し、(b)図は開口部23の断面図である。図4及び図5において、(a)図はセルフロッククラッチCの平面図を示し、(b)図は開口部23の展開図である。
【0033】
例えば、図1に示す状態から、軸部材1を白抜き矢印の方向に回動駆動したとき、図2に示すように突起部材11が開口部23の第一端部24aに位置する状態まではウォーム2は回動しない。突起部材11が開口部23の第一端部24aに位置した後、図3に示すごとく、さらに軸部材1が同方向に回動駆動すると、突起部材11が開口部23に係合してウォーム2が軸部材1と一体回動する。よって、ウォーム2の回動によりウォームホイール3も単線の矢印で示す反時計回りに適切に回動する。図示はしないが、軸部材1が白抜き矢印と反対側の方向に回動駆動した場合は、突起部材11が第二端部24b(図1参照)に位置し、突起部材11と開口部23とが係合して、ウォーム2は軸部材1と一体回動する。
【0034】
図3の状態で軸部材1の回動駆動を停止した後、例えば、図4に示すごとく、白抜き矢印で示す反時計回りにウォームホイール3が回動しようとすると、歯部31及び歯部21aの接触によりウォームホイール3の回動力が回動力及び軸力としてウォーム2に伝わる。このため、ウォーム2は回動力により単線の矢印の方向に相対回動しつつ、軸力により軸芯Lの右方向に相対移動する。突起部材11が第三端部24cに位置したとき、軸部材1と反対側の拡径部22に歯部31が当接し、ウォームホイール3のそれ以上の回動は禁止される。
【0035】
この際、突起部材11が開口部23の第二辺部25bに沿って第一端部24aから第三端部24cへ移動するため、ウォーム2の移動は円滑である。また、ウォーム2が単線矢印方向に相対回動するよう回動力が作用しているため、ウォーム2は一定範囲の端部にさらに円滑に移動する。
【0036】
また、図3の状態で軸部材1の回動駆動を停止した後、図5に示すごとく、白抜きの矢印で示す時計回りにウォームホイール3が回動しようとすると、同様に、歯部31及び歯部21aの接触によりウォームホイール3の回動力が回動力及び軸力としてウォーム2に伝わる。このため、ウォーム2は回動力により単線の矢印の方向に相対回動しつつ、軸力により軸芯Lの左方向に相対移動する。突起部材11が第四端部24dに位置したとき、歯部31が軸部材1の側の拡径部22に係止し、ウォームホイール3のそれ以上の回動は禁止される。
【0037】
この際、突起部材11が開口部23の第一辺部25aに沿って第一端部24aから第四端部24dへ移動するが、ウォーム2が単線矢印方向に相対回動するよう回動力が作用しているため、突起部材11は移動しづらい。したがって、第一辺部25aの傾きをある程度大きくし、第一辺部25aによる突起部材11への抵抗を小さくするべきである。
【0038】
図4に示す状態において、軸部材1を何れか一方向に回動駆動させると、突起部材11が第二辺部25b又は第三辺部25cに沿って相対移動し、ウォーム2は軸部材1に対して左方向に相対移動する。突起部材11が第一端部24a又は第二端部24bに位置したとき、ウォームホイール3と拡径部22との係止が外れており、ウォーム2は軸部材1と一体回動する。図5に示す状態において、軸部材1を回動駆動した場合も同様であるため、説明は省略する。
【0039】
このように、軸部材1が回動駆動していないとき、ウォームホイール3の回動によって自動的にロックが掛かるセルフロッククラッチCであるため、逆駆動防止のための機構を別途備える必要がない。また、簡便な構造かつ少ない部品点数であるため、製造コストを抑えることができると共に、動作の信頼性が高い。さらに、ロックの保持力が歯部31と拡径部22との当接に基づいているため、ウォームホイール3からの回動負荷が大きくなっても、セルフロックが解除されることがない。したがって、誤作動が少ないセルフロッククラッチCを提供できる。
【0040】
本実施形態において、ウォーム2が一定範囲の端部から離れるよう付勢する付勢手段(図示しない)を備えると好適である。付勢手段を備えていると、突起部材11が第三端部24c又は第四端部24dにある状態から軸部材1が回動駆動し始めたとき、突起部材11が第三端部24c又は第四端部24dから離れやすくなり、軸部材1の相対移動が補助される。よって、軸部材1の回動駆動によるウォームギアの動作が円滑に始動する。
【0041】
しかし、ウォームホイール3の回動駆動に基づく軸力によって、突起部材11が第三端部24c及び第四端部24dに位置するようウォームが相対移動する場合において、付勢手段の付勢力がウォーム2に働く軸力を上回っていると、ウォームホイール3と拡径部22とは当接が外しない。よって、付勢手段の付勢力は慎重に決定しなければならない。
【0042】
本実施形態における付勢手段は、例えば、ウォーム2の中空部分の底面と軸部材1の先端面との間に備えられたスプリングや板バネであって、突起部材11が開口部23の中心に位置するようウォーム2を付勢している。また、上述した支持部材とウォーム2との間にスプリングや板バネを備えても良い。
【0043】
上述の実施形態では、軸部材1をウォーム2に挿入してから突起部材11を取付孔に取付ける構成であったが、図6に示すごとく、開口部23に切欠部26を備え、先行して突起部材11を軸部材1に固定してから軸部材1をウォーム2に挿入する構成であっても良い。本構成によると、組付け手間を軽減することができる。この場合であっても、ウォーム2の軸方向の相対移動は両側の拡径部22の設置間隔で規制することができるため、作動上の問題は生じない。
【0044】
上述の実施形態では、ギア効率を高めた円筒ウォームギアに本発明に係るセルフロッククラッチを適用した例を示したが、出力側のギアが回動したとき、入力側のギアに軸力が発生する構造である食い違い軸歯車であって、セルフロック機能を有さない歯車であれば、適用することができる。例えば、ハイポイドギア等にも適用可能である。
【0045】
上述の実施形態では、ウォームホイール側からの回動は常時禁止されるが、手動によりセルフロックを解除する構成を備えても良い。本発明に係るセルフロッククラッチを車両のパワーバックドアに適用した場合、バックドアを自動で開けた後に、手動で閉めたい場合など、任意にセルフロックを解除する構成を備えていると好適である。例えば、ウォームにワイヤーで連結された解除ボタンを備え、解除ボタンを押すとウォームが一定位置の中間に位置するよう構成すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るセルフロッククラッチを示す平面図
【図2】軸部材を回動駆動したときのセルフロッククラッチの動作を示す図であって、(a)はセルフロッククラッチの平面図、(b)は開口部の断面図
【図3】ウォームが軸部材と一体回動するときのセルフロッククラッチの動作を示す図であって、(a)はセルフロッククラッチの平面図、(b)は開口部の断面図
【図4】ウォームホイールが回動するときのセルフロッククラッチの動作を示す図であって、(a)はセルフロッククラッチの平面図、(b)は開口部の展開図
【図5】ウォームホイールが回動するときのセルフロッククラッチの動作を示す図であって、(a)はセルフロッククラッチの平面図、(b)は開口部の展開図
【図6】開口部に切欠部を備えたセルフロッククラッチを示す図
【符号の説明】
【0047】
C セルフロッククラッチ
L 軸芯
1 出力軸(軸部材)
2 ウォーム(第一ギア)
3 ウォームホイール(第二ギア)
11 突起部材(動力伝達部)
21 ウォーム部(有歯部)
21a 歯部
22 拡径部(ロック部)
23 開口部(動力伝達部)
31 歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定位置で回動駆動する軸部材と、
前記軸部材によって同一軸芯回りに駆動される第一ギアと、
該第一ギアと食い違い軸歯車の関係にあり、前記第一ギアの回動によって定位置で回動する第二ギアと、
前記第一ギアの前記軸芯の方向の両端に設けられたロック部と、
前記軸部材と前記第一ギアとの間に備えられると共に、前記第一ギアの前記軸部材に対する一定角度範囲の相対回動と、前記軸芯方向の一定範囲の相対移動とを許容する動力伝達部とを備え、
前記軸部材が回動駆動したとき、前記第一ギアが前記一定角度範囲の何れか一方の端部で前記軸部材に係合して、前記第一ギアの駆動によって前記第二ギアが回動し、前記軸部材が回動駆動しないとき、前記第二ギアの回動によって前記第一ギアが前記一定範囲の何れか一方の端部に位置して、前記第二ギアの歯部が前記ロック部に当接するよう構成してあるセルフロッククラッチ。
【請求項2】
前記第一ギアの外周部に備えられ、回動方向に前記一定角度範囲と一致する長さの対角線及び前記軸芯方向に前記一定範囲と一致する長さの対角線を有する菱形形状の開口部と、前記軸部材の外周部に備られた突起部材とを前記動力伝達部に備え、
前記軸部材を前記第一ギアに挿入し、前記開口部の範囲内で前記突起部材が相対移動するよう構成してある請求項1に記載のセルフロッククラッチ。
【請求項3】
前記第一ギアにおいて、歯部を備えた有歯部の径よりも前記軸芯方向の両端部を拡径することにより前記ロック部を構成してある請求項1又は2に記載のセルフロッククラッチ。
【請求項4】
前記一定範囲の端部から前記第一ギアが離れるよう付勢する付勢手段を備えた請求項1から3の何れか一項に記載のセルフロッククラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−101419(P2010−101419A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273304(P2008−273304)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】