説明

セルロースアシレートフィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】逆分散性が大きく、透湿度およびヘイズが低く、偏光板保護フィルムとして使用した場合に高温高湿下での液晶表示装置の表示性能劣化が小さいセルロースアシレートフィルム、前記フィルムを透明保護膜として用いた偏光板、及び前記偏光板を有する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物を含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム、これを用いた偏光板及び液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆分散性が大きいセルロースアシレートフィルム、前記フィルムを透明保護膜として用いた偏光板及び前記偏光板を有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々その用途が広がっている。従来、液晶表示装置は表示画像の視野角依存性が大きいことが大きな欠点であったが、VAモード等の広視野角液晶モードが実用化されており、これによってテレビ等の高品位の画像が要求される市場でも液晶表示装置の需要が急速に拡大しつつある。VAモード液晶表示装置は他の液晶表示モードに比べてコントラストが高いというメリットがあるが、視角によるコントラスト及び色味の変化が大きいという問題を有している。
【0003】
この問題の解決法として、波長が大きくなるにつれて位相差が大きくなる逆分散性(正の波長分散特性と称することもある)を有する位相差フィルムを用いる方法が有力であり、例えば、特許文献1には、面内レターデーション(Re)及び厚み方向のレターデーション(Rth)がともに逆分散性を有する2枚の2軸フィルムを用いる方法が、また特許文献2にはReが逆分散性、Rthが順分散性を有する2枚の2軸フィルムを組み合わせる方法が開示されている。
【0004】
セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマーが単体の場合にはRe、Rthともに逆分散性を有しており上記目的に適している。また、透明性が高く偏光子に使用されるポリビニルアルコールとの密着性付与が容易であることから偏光板保護フィルムとして広く使用されてきた。近年液晶表示装置の薄型化の要求が高まるにつれて、セルロースアシレートフィルムに位相差を付与することにより、偏光板保護フィルムと位相差フィルムの双方の機能を併せ持たせること、さらにはフィルム自体を薄膜化することが検討されるようになってきている。しかし、セルロースアシレート単体からなるフィルムを薄膜化した場合、透湿度が大きくなり高温高湿下において液晶表示装置の表示性能が低下する問題がある。
【0005】
この問題に対して、セルロースアシレートよりも疎水的な化合物をフィルムに添加する方法が試みられており、例えば特許文献3にはケトン樹脂を添加する方法が開示されている。しかし、これらの化合物はセルロースアシレートフィルムの透湿度の低下が十分ではないか、レターデーションの逆分散性を小さくしてしまうという問題を抱えており改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第08/102647号パンフレット
【特許文献2】特開2006−291192号公報
【特許文献3】特開2003−183417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、逆分散性が大きく、透湿度およびヘイズが低く、偏光板保護フィルムとして使用した場合に高温高湿下での液晶表示装置の表示性能劣化が小さいセルロースアシレートフィルム、前記フィルムを透明保護膜として用いた偏光板、及び前記偏光板を有する液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の構造を有するケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物を含有するセルロースアシレートフィルムは、逆分散性が大きく、ヘイズが低く、透湿度が低いことを見出した。
また、230〜700nmの波長範囲におけるモル吸光係数が2000以下のケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、これをセルロースアシレートフィルムに添加することにより、より逆分散性が大きく、ヘイズが低く、透湿度の低いセルロースアシレートフィルムが得られることを見出した。
【0009】
本発明は、上述の点から、さらに前記課題を解決すべく検討した結果完成されたものである。すなわち、本発明は、以下のセルロースアシレートフィルム、これを用いた偏光板及び液晶表示装置、及び前記フィルムに含まれる化合物に関する。
<1>ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物を含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
<2>前記ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体が、アルキルアリールケトン−ホルムアルデヒド重合物還元体である請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
<3>前記アシル変性化合物が下記一般式(I)で示される化合物である<1>又は<2>に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1,Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基又は炭素数2〜15のアルキルカルボニル基を表すが、全てが水素原子であることはない。A,Bは、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール基を表し、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す。m,nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数であるが同時に0であることはなく、p,qは、それぞれ独立して、0又は1〜2の整数を表す。)
<4>前記ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の230〜700nmの波長範囲におけるモル吸光係数が2000以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
<5>前記ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の数平均分子量が500以上1500以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
<6>測定波長548nmにおける面内レターデーション(Re)及び厚み方向レターデーション(Rth)が下記式(1)及び(2)の関係を満たし、かつRe及びRthが共に測定波長が大きくなるにつれて大きくなる逆分散性を有する<1>〜<5>のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
30nm≦Re (548)≦150nm ・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
70nm≦Rth(548)≦300nm ・・・・・・・・・・・・・・・式(2)
(式中、Re(548)及びRth(548)は、それぞれ波長548nmにおける面内レターデーション及び厚み方向レターデーションを表す。)
<7>偏光膜及びその両側に配置された二枚の透明保護膜を有する偏光板であって、透明保護膜の少なくとも一方が、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
<8>液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が<7>に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
<9>表示モードがVAモードである<8>に記載の液晶表示装置。
<10>下記一般式(I)で示される、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、R1,Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基又は炭素数2〜15のアルキルカルボニル基を表すが、全てが水素原子であることはない。A,Bは、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール基を表し、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す。m,nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数であるが同時に0であることはなく、p,qは、それぞれ独立して、0又は1〜2の整数を表す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、逆分散性が大きく、透湿度およびヘイズが低く、偏光板保護フィルムとして使用した場合に高温高湿下での液晶表示装置の表示性能劣化が小さいセルロースアシレートフィルム、前記フィルムを透明保護膜として用いた偏光板、及び前記偏光板を有する、コントラストが高く、視角による色味変化の小さい液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液晶表示装置の表示モードの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の他の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0017】
[セルロースアシレートフィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記一般式(I)で示されるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物を含有するものが好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
一般式(I)中、R1,Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基又は炭素数2〜15のアルキルカルボニル基を表すが、全てが水素原子であることはない。A,Bは、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール基を表し、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す。m,nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数であるが同時に0であることはなく、p,qは、それぞれ独立して、0又は1〜2の整数を表す。)
なお、m、nがともに0でないとき、一般式(I)で表される重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0020】
以下、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物、セルロースアシレート、添加剤、製膜方法の順に説明する。ここで、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体は、アシル化し得る水酸基を有するものであればよく、アシル変性化合物とは、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体の水酸基がアシル化されたものを指す。ケトン化合物の例としては、アセトフェノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらのうちアセトフェノンが好ましい。
【0021】
[ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物]
本発明のセルロースアシレートフィルムに添加するケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物としては、前記一般式(I)で示されるアシル変性化合物が好ましい。アシル基としては、ホルミル基、炭素数2〜15の置換又は無置換のアルキルカルボニル基が好ましく、なかでもアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基がより好ましく、アセチル基が最も好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物、好ましくは一般式(I)で示されるアシル変性化合物を含有することにより、逆分散性が大きく、ヘイズが低く、透湿度を低くすることができる。
【0022】
本発明におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物は、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体の水酸基をアシル化することが必要であり、前記水酸基の50〜100%をアシル化するのが好ましい。アシル化率としては、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%である。アシル化率を高めることで該樹脂の疎水性が向上し、セルロースアシレートフィルムの透湿度を抑えることができる。
【0023】
ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体の水酸基のアシル化は、前記水酸基のアシル化ができればその製造方法は問わない。前記アシル化の例としては、ホルミル化、アセチル化、プロピオニル化、ブチリル化、イソブチリル化、バレリル化、イソバレリル化等が挙げられるが、これらのうち好ましいものはアセチル化である。アセチル化の場合、J.Mol.Biol.,1972,72,219, 及び Synthesis.,1975,222に記載されているように、無水酢酸又はアセチルクロリド等のアセチル化剤を使用する一般的な方法で行うことができる。同様に、プロピオニル化、ブチリル化等も対応する酸クロリドを使用する公知のエステル化法で製造することができる。
【0024】
アシル化するベースのケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体は、入手容易な市販の原料(デグサ(degussa)製品など)を用いることができるほか、既知の方法により製造してもよい。例えば、西ドイツ国特許第870022号にはケトン化合物としてアルキルアリールケトンを用いたホルムアルデヒド重合物の還元方法が記載されている。また、特開平11−12338号公報にはケトン化合物として環状ケトン(例としてシクロヘキサノン)−ホルムアルデヒド重合物の還元方法が記載されている。これらはいずれも前駆体となるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物を、ニッケル、パラジウム又はルテニウム触媒の存在下で水素化還元することで、カルボニル基が水酸基へと還元されたケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体を得ている。
【0025】
前駆体となるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物としては、各種ケトン化合物とホルムアルデヒドとをアルカリ性触媒存在下に公知の方法で反応させて得られる各種重合体が使用できる(例えば西ドイツ国特許第892975号)。ケトン化合物としては、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、アセチルエチルベンゼン、アセチルプロピルベンゼン、アセチルクロロベンゼン及び長鎖アルキル基を有するアルキルフェニルケトン、例えば、プロピオフェノン、ブチロフェノン又はアセチルテトラヒドロナフタリンなどが例示できる。これらのうち、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、アセチルエチルベンゼンが好ましく、アセトフェノンがより好ましい。また、アルカリ性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示できる。
【0026】
一般式(I)で示されるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の具体例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。なお、式中、Meはメチル基を表す。
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
<モル吸光係数>
本発明におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の230〜700nmの波長範囲におけるモル吸光係数は2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の230〜700nmの波長範囲におけるモル吸光係数が上記の範囲であると、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物のレターデーション発現による波長分散変化が小さいため、より逆分散性が大きく、ヘイズが低く、透湿度の低いセルロースアシレートフィルムが得られる。モル吸光係数は、所定の質量濃度の溶液の吸光度を市販の分光光度計(例えば(株)日立社製 UV3150(商品名)等)により測定し、得られた吸光度を数平均分子量で除することにより測定することができる。
【0030】
<数平均分子量>
本発明に用いられるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の数平均分子量は、500〜6000が好ましく、500〜3000がより好ましく、500〜2000がさらに好ましく、500〜1500が最も好ましい。数平均分子量が500以上であればフィルム保留性に優れ、数平均分子量が6000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が十分となり、ヘイズの上昇を防ぐことができるので好ましい。
【0031】
<分散度>
本発明に用いられるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の分散度(分子量分布)は、通常1.05〜3.0であり、好ましくは1.1〜2.5、より好ましくは1.1〜2.0の範囲のものが使用される。
【0032】
<添加量>
本発明におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、1〜30質量部とするのが好ましく、2〜25質量部とすることがより好ましく、5〜20質量部とすることがさらに好ましい。添加量が30質量部以下であればヘイズが上昇しないという利点があり、添加量が1質量部以上であれば透湿度低減効果が大きいという利点がある。
【0033】
<フィルム中の存在量>
本発明において、少なくとも一方の面のフィルム表層におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の存在量を、フィルム内部における存在量よりも高くするのが好ましい。ここでフィルム表層とは、フィルム表面からフィルム厚み方向3μm以内の範囲内をいい、フィルム内部とはフィルム全体よりフィルム表層を除いた範囲をいう。
フィルムの表層とフィルムの内部におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の存在量は、共流延あるいは逐次流延により、組成の異なるドープを流延することにより調節することができる。ドープの組成としては、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物濃度の異なるドープを使用するのが好ましい。また、アシル置換度の高いセルロースアシレートを含むドープを表層に、アシル置換度の低いセルロースアシレートを含むドープを基層に用いることでも、フィルム表層におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の存在量を、フィルム内部における存在量より大きくすることができる。
このような方法により、フィルム表層におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の存在量をフィルム内部における存在量より大きくすることができ、本発明のケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物による透湿度低下をさらに大きくすることが可能となる。
フィルム表層におけるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の存在量は、フィルム内部における存在量に対する比率1.05〜1.5倍で存在するのが好ましく、1.05〜1.4倍がより好ましい。前記比率が1.05倍未満では透湿度低減効果が不十分であり、1.5倍より大きいとフィルム強度の不均一性が大きくなり加工時のフィルム力学強度が不足する問題がある。
本発明において、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物は、単独で配合してもよいし、2種以上を併用して配合してもよい。
【0034】
[セルロースアシレート]
本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられるセルロースアシレートは、その原料として、公知の原料綿を用いることができる(例えば、発明協会公開技報2001−1745)。また、セルロースアシレートの合成も、公知の方法で行なうことができる(例えば、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年))。
【0035】
本発明に用いることのできるセルロースアシレートとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
本発明に用いることのできるセルロースアシレートのアシル置換度は、2.0〜2.97が好ましい。全アシル基の置換度は、ASTM D817に従って算出することができる。
【0036】
セルロースアシレートは、250〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、300〜600の質量平均重合度を有することがより好ましい。またセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがより好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
また質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、2.0〜4.0が好ましく、2.0〜3.5がより好ましい。
【0037】
[添加剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物以外にレターデーション発現剤、可塑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0038】
[レターデーション発現剤]
レターデーション発現剤(Re発現剤)としては、特開2008−20896号公報段落[0047]〜[0077]に記載の化合物、同段落[0078]〜[0096]に記載の化合物、特開2001−166144号公報段落[0016]〜[0107]に記載の化合物、および特開2003−344655号公報段落[0022]〜[0057]に記載の化合物などを好ましく用いることができる。
【0039】
本発明におけるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部が最も好ましい。
【0040】
本発明におけるレターデーション発現剤の添加方法は、アルコール、メチレンクロリド、およびジオキソランのような有機溶媒にRe発現剤を溶解してから、セルロースアシレート溶液(ドープ)に添加してもよいし、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0041】
[逆分散化剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物と逆分散化剤を併用するのが好ましい。逆分散化剤としては、延伸方向に対して略垂直に遅相軸を発現する、いわゆる負の固有複屈折性の化合物を用いることができる。本発明において、逆分散化剤は、230〜400nmの波長領域に吸収極大を有することが好ましく、250〜380nmの波長領域に吸収極大を有することがより好ましい。本発明に用いられる逆分散化剤としては、側鎖に芳香環を有するアクリル系ポリマー、ビニル系ポリマーが好ましい。例えば、芳香環にヒドロキシル基等電子供与性基を有するポリスチレン系樹脂は、本発明の逆分散化剤として特に好ましく用いることができる。ポリスチレン系樹脂の芳香環としては、炭素数6〜15のアリール基が好ましく、フェニレン基、ナフチレン基又はアントラセニレン基がより好ましく、セルロースアシレート樹脂との相溶性の観点からフェニレン基が最も好ましい。電子供与性基としては、ヒドロキシル基及びアミノ基が好ましく、ヒドロキシル基がより好ましい。
【0042】
本発明で用いることのできる逆分散化剤として好ましいポリスチレン系化合物を以下に挙げるが、以下に限定されるものではない。
PHSC20A30S(商品名、東邦化学社製)、質量平均分子量2000、吸収極大波長279nm、ヒドロキシスチレン/スチレン=70/30(モル比)。PHSC40A30S(商品名、東邦化学社製)、質量平均分子量4000、吸収極大波長279nm、ヒドロキシスチレン/スチレン=70/30(モル比)。PHSC60A10S(商品名、東邦化学社製)、質量平均分子量6000、吸収極大波長279nm、ヒドロキシスチレン/スチレン=90/10(モル比)。マルカリンカーM−S1P(商品名、丸善石油化学社製)、質量平均分子量1900、吸収極大波長279nm、ヒロドキシスチレン単独。マルカリンカーM−S2P(商品名、丸善石油化学社製)、質量平均分子量5000、吸収極大波長279nm、ヒロドキシスチレン単独。PHSC100A15S(商品名、東邦化学社製)、質量平均分子量10000、吸収極大波長279nm、ヒドロキシスチレン/スチレン=70/30(モル比)。
【0043】
ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物と逆分散化剤との組合せとしては、アシル化率が90%以上のケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物と、共重合比がヒドロキシスチレン/スチレン=50/50〜100/0のポリスチレン系化合物との組み合わせが、レターデーション発現性と逆分散性の両立の点から好ましい。ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物/逆分散化剤の含有量の比は、質量比で5/95〜95/5が好ましく、30/70〜90/10がより好ましい。
【0044】
[可塑剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。本発明の可塑剤としては、単糖又は2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体(以下、多糖又は炭水化物系可塑剤という)が特に好ましい。
【0045】
炭水化物系可塑剤を構成する単糖又は多糖は、分子中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基など)が置換されていることを特徴とする。置換基の例としては、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを挙げることができる。
単糖又は2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
【0046】
これらのうち、好ましいものは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、より好ましいものは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましいものは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
【0047】
また、炭水化物系可塑剤の置換基の例としては、エーテル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキルエーテル基、例えば、メチルエーテル基、エチルエーテル基、プロピルエーテル基、ヒドロキシエチルエーテル基、ヒドロキシプロピルエーテル基、2−シアノエチルエーテル基、フェニルエーテル基、ベンジルエーテル基など)、エステル基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアシルエステル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、フタリル基など)、アミド基(好ましくは炭素数1〜22、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアミド、例えばホルムアミド基、アセトアミド基など)、イミド基(好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは炭素数4〜8のアミド基、例えば、スクシイミド基、フタルイミド基など)を挙げることができる。これらの中で、さらに好ましいものはエーテル基又はエステル基であり、特に好ましいものはエステル基である。
【0048】
本発明で用いることができる炭水化物系可塑剤の好ましい例としては、以下のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
すなわち、キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラブチレート、グルコースペンタブチレート、フルクトースペンタブチレート、マンノースペンタブチレート、ガラクトースペンタブチレート、マルトースオクタブチレート、セロビオースオクタブチレート、スクロースオクタブチレート、キシリトールペンタブチレート、ソルビトールヘキサブチレート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートが好ましく、これらのうち、キシローステトラアセテート、グルコースペンタアセテート、フルクトースペンタアセテート、マンノースペンタアセテート、ガラクトースペンタアセテート、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシリトールペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシリトールペンタプロピオネート、ソルビトールヘキサプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートがより好ましく、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートが特に好ましい。
【0049】
本発明の炭水化物系可塑剤は、市販品((株)東京化成製、アルドリッチ製等)が入手可能であり、又は、市販の炭水化物を既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報等に記載の方法)により合成可能である。本発明において、炭水化物系可塑剤は、単独で配合してもよいし、2種以上を併用して配合してもよい。また、他の可塑剤と併用して配合してもよい。他の可塑剤としては、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などを好ましく用いることができる。
【0050】
これらの可塑剤の添加量は、セルロースアシレートに対して1〜20質量%であるのが好ましい。1質量%以上であれば、液晶性化合物の配向を促進する効果を得やすく、また20質量%以下であれば、ブリードアウトも発生しにくい。より好ましい添加量は2〜15質量%であり、最も好ましい添加量は3〜10質量%である。
【0051】
[マット剤としての微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えるのが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。これらの微粒子の中ではケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子サイズが1〜20nmであり、かつ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径は1〜20nmであることが好ましく、5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズをより下げることができるので、より好ましい。見かけ比重は、90〜200g/Lが好ましく、100〜200g/Lがより好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0052】
これらの微粒子は、通常、平均粒子サイズが0.05〜2.0μmの2次粒子を形成し、フィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.05〜2.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは、0.05〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.7μmがより好ましく、0.1〜0.4μmが最も好ましい。1次、2次粒子サイズは、フィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
【0053】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、いずれも商品名、日本アエロジル(株)製)として市販されており、これらを使用することができる。
【0054】
これらの中で、アエロジル200V、およびアエロジルR972Vは、それぞれ、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0055】
本発明で用いるマット剤は、以下の方法により調製するのが好ましい。すなわち、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液を予め作成し、この微粒子分散液を、別途用意したセルロースアシレート濃度が5質量%未満で分子量200〜2000の第1の添加剤溶液に加えて撹拌溶解した後、さらに第2の添加剤溶液を加えて撹拌溶解した後、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法が好ましい。
【0056】
マット剤の表面は疎水化処理されているため、疎水的な添加剤が添加されると、マット剤の表面に添加剤が吸着され、これを核として、添加剤の凝集物が発生しやすい。相対的に親水的な添加剤を予めマット剤分散液と混合したのち、疎水的な添加剤を混合することにより、マット剤表面での添加剤の凝集が抑制され、ヘイズが低く、液晶表示装置に組み込んだ際の黒表示における光漏れが少ないので好ましい。
【0057】
マット剤の分散剤と添加剤溶液の混合、及びセルロースアシレート液との混合にはインラインミキサーを使用するのが好ましい。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が同量の添加量に対する濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は、0.001〜1.0質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.1質量%が最も好ましい。
【0058】
[セルロースアシレートフィルムの製造]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造するのが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。
【0059】
有機溶媒は、炭素数が3〜12のエーテル、炭素数が3〜12のケトン、炭素数が3〜12のエステル及び炭素数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含んでいるのが好ましい。エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素数は、いずれかの官能基を有する溶媒についての上記した好ましい炭素数の範囲内が好ましい。
【0060】
炭素数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。炭素数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。炭素数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
【0061】
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。ハロゲン化炭化水素の炭素数は、1又は2が好ましく、1が最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素が好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましく、35〜65モル%がさらに好ましく、40〜60モル%が最も好ましい。代表的なハロゲン化炭化水素はメチレンクロリドである。
【0062】
本発明において、有機溶媒は、メチレンクロリドとアルコールを混合して用いるのが好ましく、メチレンクロリドに対するアルコールの比率は1〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、12〜30質量%が最も好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、及びn−ブタノールが好ましく、2種類以上のアルコールを混合して使用してもよい。
【0063】
セルロースアシレート溶液は、0℃以上の温度(常温又は高温)で処理する一般的な方法で調製することができる。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法では、有機溶媒として、ハロゲン化炭化水素特にメチレンクロリドを用いるのが好ましい。
【0064】
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に、溶液全体量に対して好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%含まれるように調整することができる。有機溶媒(主溶媒)中には、前述の任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0065】
セルロースアシレート溶液は、常温(0〜40℃)で、セルロースアシレートと有機溶媒とを混合し、撹拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で撹拌してもよい。具体的には、例えば、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら撹拌すればよい。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、より好ましくは80〜110℃である。
【0066】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。撹拌調製に用いる容器は、撹拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、圧力下で各成分を添加してもよい。
【0067】
加熱する場合、容器の外部より加熱するのが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
【0068】
容器内部に撹拌翼を設けて、これを用いて撹拌するのが好ましい。撹拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。撹拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けるのが好ましい。
【0069】
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解することができる。調製したドープは、冷却後容器から取り出すか、又は取り出した後、熱交換器等を用いて冷却することができる。
【0070】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にも、セルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られる効果がある。
【0071】
冷却溶解法では、最初に、室温で撹拌しながら、有機溶媒中にセルロースアシレートを徐々に添加することができる。セルロースアシレートの量は、この混合物中に好ましくは10〜40質量%含まれるように、より好ましくは10〜30質量%含まれるように調整することができる。さらに、混合物中には、前述の任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0072】
次に、混合物を、−100〜−10℃、好ましくは−80〜−10℃、より好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃に冷却することができる。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)、又は冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。冷却により、セルロースアシレートと有機溶媒の混合物を固化させることができる。
【0073】
冷却速度は、4℃/分以上が好ましく、8℃/分以上がより好ましく、12℃/分以上が最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0074】
さらに、これを、0〜200℃、好ましくは0〜150℃、より好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃に加温することにより、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解させることができる。昇温は、室温中に放置するだけでもよく、温浴中で加温してもよい。
【0075】
加温速度は、4℃/分以上が好ましく、8℃/分以上がより好ましく、12℃/分以上が最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
【0076】
以上のようにして、均一な溶液を得ることができる。なお、溶解が不充分である場合は、冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0077】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
【0078】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することができる。ドープにはレターデーション上昇剤を添加するのが好ましい。
【0079】
ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35質量%となるように濃度を調整するのが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
【0080】
ソルベントキャスト法における乾燥方法については、例えば、米国特許第2336310号、米国特許第2367603号、米国特許第2492078号、米国特許第2492977号、米国特許第2492978号、米国特許第2607704号、米国特許第2739069号及び米国特許第2739070号の各明細書、英国特許第640731号及び英国特許第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、特公昭49−5614号、特開昭60−176834号、特開昭60−203430号及び特開昭62−115035号の各公報に記載がある。バンド又はドラム上での乾燥は、空気、窒素などの不活性ガスを送風することにより行うことができる。
【0081】
本発明のセルロースアシレートフィルムのバンド又はドラム上の乾燥は、できるだけ低温でおこなうのが好ましい。残留溶媒含量が30質量%以上における乾燥温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、90℃以下が最も好ましい。上記範囲で乾燥を行うことにより、フィルム中の微結晶の生成を低減することができる。
【0082】
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて二層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製するのが好ましい。ドープは、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成すればよい。流延前のドープは、固形分量が10〜40質量%の範囲となるように濃度を調整するのが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
【0083】
[延伸処理]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムの搬送方向(長手方向)及び/又はこれと垂直な方向(幅方向)に延伸処理を行うことにより得るのが好ましい。
【0084】
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、特開平11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くすることによりフィルムを延伸することができる。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸することができる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いる延伸、好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸をすることもできる。
【0085】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、一定以下の残留溶媒含量で一定の延伸速度により延伸するのが好ましい。延伸開始時の残留溶媒含量は、通常0〜80質量%であり、0〜70質量%が好ましく、0〜60質量%がより好ましい。
【0086】
また延伸温度は、120〜200℃の範囲が好ましい。フィルムの延伸倍率は、1〜100%が好ましく、5〜90%がより好ましい。なお、本発明において、フィルムの延伸倍率とは、下記数式(22)で求められる数値を指すものとする。
数式(22):{(延伸後の寸法/延伸前の寸法)−1}×100(%)
(幅方向の延伸倍率/長手方向の延伸倍率)の比は、1〜10が好ましく2〜8がより好ましい。
【0087】
[セルロースアシレートフィルムの特性]
<フィルムの厚み>
本発明のセルロースアシレートフィルムの厚みは、近年の液晶表示装置の薄型化に伴い100μm以下であることが好ましく、より好ましくは40〜80μmであり、さらに好ましくは40〜70μmである。フィルム厚みが30μm未満となると製長尺ロール製造時の搬送が不安定になる場合があり、クニックや傷等の故障が多くなる。
【0088】
<フィルムのレターデーション>
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
【0089】
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0090】
【数1】

【0091】
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表わす。
式(A)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0092】
Rth=((nx+ny)/2 - nz) × d --- 式(B)
【0093】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
【0094】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0095】
本発明において、レターデーションの波長分散が逆分散性であるとは、測定波長が大きくなるにつれてレターデーションの値が大きくなることを意味する。
【0096】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、測定波長548nmにおけるRe及びRthが下記式(1)及び(2)の関係を満たし、かつRe及びRthが共に測定波長が大きくなるにつれて大きくなる逆分散性を有することが好ましい。
30nm≦Re (548)≦150nm ・・・式(1)
70nm≦Rth(548)≦300nm ・・・式(2)
【0097】
また、下記式(3)及び(4)を満たすことが好ましい。
0.7≦Re (446)/Re (548)<1.00 ・・・式(3)
0.7≦Rth(446)/Rth(548)<1.00 ・・・式(4)
【0098】
式(1)は、より好ましくは、下記式(1−b)であり、最も好ましくは、下記式(1−c)である。
30nm≦Re(548)≦100nm ・・・式(1−b)
35nm≦Re(548)≦80nm ・・・式(1−c)
式(2)は、より好ましくは、下記式(2−b)であり、最も好ましくは、下記式(2−c)である。
90nm≦Rth(548)≦300nm ・・・式(2−b)
100nm≦Rth(548)≦270nm ・・・式(2−c)
式(3)は、より好ましくは、下記式(3−b)であり、最も好ましくは、下記式(3−c)である。
0.70≦Re(446)/Re(548)≦0.97 ・・・式(3−b)
0.75≦Re(446)/Re(548)≦0.95 ・・・式(3−c)
式(4)は、より好ましくは、下記式(4−b)であり、最も好ましくは、下記式(4−c)である。
0.7≦Rth(446)/Rth(548)≦0.97・・・式(4−b)
0.75≦Rth(446)/Rth(548)≦0.95・・・式(4−c)
上記範囲にレターデーションを調製することにより、光学補償シート部材として液晶表示装置に組み込んだ際に、視角による色味変化の小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0099】
また、好ましくは、特定の置換基及び置換度を有するセルロースアシレートと特定のケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物とを組み合わせることにより、より逆分散性が大きく、ヘイズが低く、透湿度の低いセルロースアシレートフィルムを得ることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、アシル置換度が2.0〜2.97のセルロースアシレートと230〜700nmの波長範囲におけるモル吸光係数が2000以下のケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物とを含み、測定波長550nmにおけるRe及びRthが前記式(1)及び(2)の関係を満たし、かつRe及びRthが共に測定波長が大きくなるにつれて大きくなる逆分散性を有するものがより好ましい。
【0100】
例えば、セルロースアシレート材料を選択したり、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物および/又はレターデーション発現剤の添加量を調節したり、延伸条件を調節するなどより、前記式(1),(2)を満足したフィルムを得ることができる。具体的には、実施例において詳述する。
【0101】
<ヘイズ>
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズ値が0.1〜0.8であることが好ましい。より好ましくは、0.1〜0.7であり、最も好ましくは0.1〜0.6である。ヘイズ値は、通常当該分野で使用されるヘイズ計の何れを用いても測定することができる。例えば、ヘイズ計(1001DP型、商品名、日本電色工業(株)製)を用いて測定することができる。本発明では、ヘイズメーター(HGM−2DP、商品名、スガ試験機)によりJIS K−6714に従って測定した値を用いた。前記範囲にヘイズを制御することにより、偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に高コントラストの画像を得ることができる。
【0102】
<透湿度>
本発明のセルロースアシレートフィルムの60℃95%RH環境下における透湿度は、1000〜2500g/m・24h以下が好ましい。1000〜2200g/m・24hがより好ましく、1000〜2000g/m・24hが特に好ましい。2500g/m・24hを超えると、経時による偏光子の偏光性能劣化が著しくなる場合がある。一方、セルロースアシレートフィルムの透湿度が1000g/m・24h未満では、偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる場合がある。
【0103】
透湿度の測定法は、JIS Z−0208の要件を満たす測定装置を用いて行えばよい。すなわち、容器内部に塩化カルシウムを10g程度入れ、容器外部の環境を60℃95%RHとした際の24時間放置後の容器全体の重量増加分を測定し(重量増加分=調湿後重量−調湿前重量)、開口部の面積で重量増加分を割ることで、単位面積あたりの透水量(g/m/24h)を算出することができる。
【0104】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光膜及びその両側に配置された2枚の透明保護膜を有する偏光板であって、透明保護膜の少なくとも一方が、本発明のセルロースアシレートフィルムである。本発明のセルロースアシレートフィルムは、アルカリ鹸化処理することによりポリビニルアルコールのような偏光子の材料との密着性を付与し、偏光板保護フィルムとして用いることができる。鹸化の方法については、例えば、特開2007−86748号公報段落[0211]及び[0212]に記載され、偏光板の偏光子の作り方、偏光板の光学特性等については、例えば、同じく特開2007−86748号公報段落[0213]〜[0255]に記載されており、これらの記載を基に本発明のフィルムを保護フィルムとして用いた偏光板を作製することができる。
【0105】
本発明のセルロースアシレートフィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸が実質的に平行となるように貼り合せるのが好ましい。本発明の液晶表示装置において、第1偏光板の透過軸と第1位相差フィルムの遅相軸が、実質的に平行であり、第2偏光板の透過軸と第2位相差フィルムの遅相軸が、実質的に平行であることが好ましい。ここで、実質的に平行であるとは、本発明に用いる第1位相差フィルムおよび第2位相差フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが1°以内であることをいい、1°以内、好ましくは0.5°以内であるのが好ましい。ずれが1°より大きいと、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じるので好ましくない。
【0106】
偏光板の単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTは、UV3100PC(商品名、島津製作所社製)を用いて測定した。測定では、380〜780nmの範囲で測定し、単板、平行、直交透過率ともに、10回測定の平均値を用いた。偏光板耐久性試験は、(1)偏光板のみの測定と、(2)偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けたガラス貼り付け状態の、2種類の形態で次のように行った。
(1)偏光板のみの測定は、2つの偏光子の間に光学補償膜が挟まれるように組み合わせて直交させ、同じものを2つ用意し測定した。
(2)ガラス貼り付け状態のものは、ガラスの上に偏光板を光学補償膜がガラス側にくるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作成した。単板透過率測定では、このサンプルのフィルムの側を光源に向けてセットして測定した。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を単板の透過率とした。
【0107】
偏光性能の好ましい範囲としては、単板透過率TT、平行透過率PT、直交透過率CTの順で、それぞれ、
40.0≦TT≦45.0、30.0≦PT≦40.0、CT≦2.0であり、
より好ましい範囲としては、
41.0≦TT≦44.5、34≦PT≦39.0、CT≦1.3(単位はいずれも%)である。また偏光板耐久性試験では、その変化量はより小さいほうが好ましい。また、本発明の偏光板は、60℃95%RHに500時間静置させたときの直交単板透過率の変化量ΔCT(%)、偏光度変化量ΔPが下記式(j)、(k)の少なくとも1つ以上を満たしている。
(j)− 6.0≦ΔCT≦6.0
(k)−10.0≦ΔP ≦0.0
ここで、変化量とは、試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値である。この要件を満たすことによって、偏光板の使用中あるいは保管中の安定性が確保される。
【0108】
<偏光板の機能化>
本発明における偏光板は、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルム、又はハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板としても使用される。機能化のための反射防止フィルム、輝度向上フィルム、他の機能性光学フィルム、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア層については、例えば、特開2007−86748号公報段落[0257]〜[0276]に記載され、これらの記載を基に機能化した偏光板を作成することができる。
【0109】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が本発明の偏光板であることを特徴とする。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は、特に液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の偏光板は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。表示モードとしては、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。本発明の偏光板は、これらのうち、OCBモード又はVAモードに好ましく用いられ、特にVAモードに好ましく用いられる。
【0110】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置である。OCBモードの液晶セルは、例えば、米国特許第4583825号、米国特許第5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速い利点がある。
【0111】
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、
(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(例えば特開平2−176625号公報)に加えて、
(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(例えばSID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845)、
(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(例えば日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998))及び
(4)SURVAIVALモードの液晶セル(例えばLCDインターナショナル98で発表)が含まれる。OCBモード及びVAモードの液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に二枚の偏光板を配置してもよいし、VAモードの場合、偏光板をセルのバックライト側に配置してもよい。液晶セルは、通常、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
【0112】
以下に、図面を参照しながら、本発明の液晶表示装置について説明する。図1は、本発明の液晶表示装置の表示モードの一例を示す模式図であり、図2は、本発明の液晶表示装置の他の一例を示す概略図である。
図1に示す液晶表示装置は、VAモード液晶セル(31)の片面に上側偏光板(30)を、他面に下側偏光板(32)を貼り合わせてなる。両偏光板(30)、及び(32)は、それぞれ、偏光膜(34)の両側面にセルロースアシレートフィルム(33)を貼り合わせてなる。
図2に示す液晶表示装置(10)は、液晶層(7)の両面に液晶セル上電極基板(5)及び液晶セル下電極基板(8)貼り合わせて液晶セルを形成してなり、さらに液晶セルの両面に上側偏光板(1)及び下側偏光板(12)を貼り合わせてなる。そして、上側偏光板吸収軸の方向(2)、上基板の配向制御方向(6)、下基板の配向制御方向(9)、下側偏光板吸収軸の方向(13)は、それぞれ図に示す方向となっている。
【実施例】
【0113】
以下に、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0114】
合成例1:ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体アシル変性化合物Bの合成
ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体として、市販のアセトフェノン−ホルムアルデヒド重合物還元体(数平均分子量800)を80g、及びピリジン400mLを仕込み、氷冷下、塩化アセチル78.5g(1.00モル)をこれに滴下した。滴下後、35℃で5時間撹拌したのち、反応液を1規定の塩酸500mL中に注ぎ込んで、有機層を酢酸エチル300mLで抽出した。その後、抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、酢酸エチルを減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:n-ヘキサン/酢酸エチル=3/7(体積比))で精製し、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体アシル変性化合物B(表1,2中、アセチル変性高分子化合物Bと記載)を得た(収量120g)。
【0115】
【化6】

【0116】
(Acはアセチル基を表す。)
合成例2:ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体アシル変性化合物C〜Hの合成
合成例1において、出発物質として数平均分子量の異なるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体を用い、アシル化剤として、塩化アセチル、塩化プロピオニル、及び塩化ブチリルを用いることにより、異なるケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体アシル変性化合物C〜F(表1,2中、アセチル変性高分子化合物C〜D,プロピオニル変性高分子化合物E,ブチリル変性高分子化合物Fと記載)を得た。また、塩化アセチルの添加量を調節することにより、アセチル化率の異なるアセトフェノン−ホルムアルデヒド重合物還元体アシル変性化合物G〜H(表1,2中、アセチル変性高分子化合物G〜Hと記載)を得た。
【0117】
【表1】

【0118】
実施例1:セルロースアシレートフィルム1の作製
[セルロースアシレート溶液101の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液101を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液101の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.75、重合度380のセルロースアセテート
100.0質量部
ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体アシル変性化合物B
10.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール (第2溶媒) 60.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0119】
[マット剤溶液102の調製]
下記の組成物を分散機に投入し、撹拌して各成分を溶解し、マット剤溶液102を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液102の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972,商品名、日本アエロジル(株)製)
2.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 75.0質量部
メタノール (第2溶媒) 12.7質量部
セルロースアシレート溶液101 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0120】
[レターデーション発現剤溶液103の調製]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら撹拌して、各成分を溶解し、レターデーション発現剤溶液103を調製した。
【0121】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤溶液103の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤A 20.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 67.2質量部
メタノール (第2溶媒) 10.0質量部
セルロースアシレート溶液101 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0122】
【化7】

【0123】
上記マット剤溶液102の1.3質量部と、レターデーション発現剤溶液103の8.7質量部を、それぞれ、ろ過後に、インラインミキサーを用いて混合し、さらに、セルロースアシレート溶液101を90.0質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、バンド流延機を用いて流延し、100℃で残留溶媒含量40%まで乾燥し、フィルムを剥ぎ取った。150℃の雰囲気温度で残留溶媒含量20%のフィルムを、テンターを用いて延伸倍率40%で横延伸したのち、さらに130℃で3分間保持した。その後、クリップを外して130℃で30分間乾燥させ、セルロースアシレートフィルム101を製造した。作製されたセルロースアシレートフィルム101の残留溶媒量は0.1%であり、膜厚は70μmであった。
【0124】
実施例2〜10:セルロースアシレートフィルム2〜10の作製
実施例1において、セルロースアシレートの置換度、添加剤の種類および量、膜厚を表1の内容にした以外は同様にして、セルロースアシレートフィルム2〜10を作製した。
【0125】
比較例1〜3:セルロースアシレートフィルム11〜13の作製
実施例1において、セルロースアシレートの置換度、および添加剤の種類および量、膜厚を表1の内容にした以外は同様にして、セルロースアシレートフィルム11〜13を作製した。
【0126】
【表2】

【0127】
化合物I(特開2003−183417号公報中の例示化合物)
【化8】

【0128】
化合物J(特開2003−183417号公報中の例示化合物)
【化9】

【0129】
[レターデーションの測定]
作製した各セルロースアセテートフィルムについて、KOBRA WR(商品名、王子計測機器(株)製)を用いて、相対湿度25℃60%の環境下で、波長446nm、548nm、629nmにおけるReレターデーション値及びRthレターデーション値を測定した。また、相対湿度25℃10%の環境下及び相対湿度25℃80%の環境下についても、波長548nmにおけるReレターデーション値及びRthレターデーション値を測定した。
[ヘイズの測定]
フィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHで、ヘイズメーター(HGM−2DP、商品名、スガ試験機)により、JIS K−6714に従って測定した。
[透湿度]
透湿度の測定法は、JIS Z−0208の要件を満たす測定装置を用いて行った(カップ法)。容器内部に塩化カルシウムを10g程度入れ、容器外部の環境を60℃95%RHとした際の24時間放置後の容器全体の重量増加分を測定した。(重量増加分=調湿後重量−調湿前重量)。さらに、開口部の面積で重量増加分を割ることで、単位面積当たりの透水量(g/m/24h)を算出した。ここで、フィルム試料は、70mmφとし、測定容器の開口部を60mmφとした。これらの結果を表3に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
表3の結果から、本発明のケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物を使用したフィルム1〜10は、該化合物を添加していない比較例のフィルム11,12に対して透湿度が低い点で好ましいことがわかる。また、比較例のフィルム12が順分散性を有しているのに対して、本発明のケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物を使用したフィルム1〜10は逆分散性を有している点で好ましいことが判る。
【0132】
実施例11:偏光板1の作製
[セルロースアシレートフィルムの鹸化処理]
実施例1で作製されたセルロースアシレートフィルム1を、1.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬し、次いで室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した後、再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルム101の表面を鹸化し、以下の偏光板試料作製に供した。
また、市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、商品名、富士フイルム(株)製)を同条件で鹸化し、以下の偏光板試料作製に供した。
【0133】
[偏光膜の作製]
延伸したポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上記で鹸化処理したセルロースアシレートフィルム1を、偏光膜の片側に、透明保護膜としてセルロースアシレートフィルム1からなる光学補償シートを貼り付けた。偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。
さらに上記で鹸化処理したセルローストリアセテートフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板1を作製した。
【0134】
実施例12:偏光板2〜10の作製
セルロースアシレートフィルム2〜10についても偏光板1と同様にして偏光板2〜10を作製した。
【0135】
比較例4:偏光板11〜13の作製
セルロースアシレートフィルム11〜13についても偏光板1と同様にして偏光板11〜13を作製した。
【0136】
実施例13:VA液晶表示装置の作製と評価1
[液晶セルの作製]
ポリビニルアルコール3質量%水溶液100質量部に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(カップリング剤)を1質量部添加した。これを、ITO電極付のガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるようにした。セルギャップ(d)が5μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.08)を注入し、垂直配向液晶セルを作製した。Δnとdとの積は410nmであった。
【0137】
上記で作製した垂直配向液晶セルの両面に、偏光板1を粘着シートを用いて貼り付けて、液晶表示装置1を作製した。
さらに、本発明の偏光板2〜10及び比較例の偏光板11〜13についても液晶表示装置1の作製と同様にして、液晶表示装置2〜10及び11〜13を作製した。
【0138】
[色味視野角の変化]
上記で作製した液晶表示装置1〜10及び11〜13について、極角60°において、方位角0°と方位角80°との色味変化をEzcontrast(商品名、ELDIM社製)により測定し、正面コントラスト及びxy色度図上での色味変化の絶対値Δx,Δyを求めたところ、本発明の液晶表示装置1〜10は、比較例の液晶表示装置13に対して正面コントラストが高く、かつ視角による色味変化が小さい点で好ましかった。
さらに、上記で作製した液晶表示装置1〜10及び11〜13を、60℃90%RHの環境下で500時間保管した後の表示性能を比較したところ、本発明の液晶表示装置1〜10は比較例の液晶表示装置12に対して正面コントラストの低下が少ない点で好ましいことがわかった。
また、本発明の液晶表示装置1〜10は、比較例の液晶表示装置11に対して透湿度が低く抑えられており、高温高湿下における表示性能の低下が少ない点において優れていた。
【符号の説明】
【0139】
1 上側偏光板
2 上側偏光板吸収軸の方向
5 液晶セル上電極基板
6 上基板の配向制御方向
7 液晶層
8 液晶セル下電極基板
9 下基板の配向制御方向
10 液晶表示装置
12 下側偏光板
13 下側偏光板吸収軸の方向
30 上側偏光板
31 VAモード液晶セル
32 下側偏光板
33 セルロースアシレートフィルム
34 偏光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物を含有することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【請求項2】
前記ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体が、アルキルアリールケトン−ホルムアルデヒド重合物還元体である請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項3】
前記アシル変性化合物が下記一般式(I)で示される化合物である請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化1】

(式中、R1,Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基又は炭素数2〜15のアルキルカルボニル基を表すが、全てが水素原子であることはない。A,Bは、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール基を表し、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す。m,nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数であるが同時に0であることはなく、p,qは、それぞれ独立して、0又は1〜2の整数を表す。)
【請求項4】
前記ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の230〜700nmの波長範囲におけるモル吸光係数が2000以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項5】
前記ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物の数平均分子量が500以上1500以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項6】
測定波長548nmにおける面内レターデーション(Re)及び厚み方向レターデーション(Rth)が下記式(1)及び(2)の関係を満たし、かつRe及びRthが共に測定波長が大きくなるにつれて大きくなる逆分散性を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
30nm≦Re (548)≦150nm ・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
70nm≦Rth(548)≦300nm ・・・・・・・・・・・・・・・式(2)
(式中、Re(548)及びRth(548)は、それぞれ波長548nmにおける面内レターデーション及び厚み方向レターデーションを表す。)
【請求項7】
偏光膜及びその両側に配置された二枚の透明保護膜を有する偏光板であって、透明保護膜の少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項8】
液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、少なくとも1枚の偏光板が請求項7に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
表示モードがVAモードである請求項8に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
下記一般式(I)で示される、ケトン化合物−ホルムアルデヒド重合物還元体のアシル変性化合物。
【化2】

(式中、R1,Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R,R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基又は炭素数2〜15のアルキルカルボニル基を表すが、全てが水素原子であることはない。A,Bは、それぞれ独立して、炭素数6〜10のアリール基を表し、R,Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はアルコキシ基を表す。m,nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数であるが同時に0であることはなく、p,qは、それぞれ独立して、0又は1〜2の整数を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235878(P2010−235878A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87820(P2009−87820)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】