説明

セルロースインターポリマー及び酸化方法

本発明は、セルロースエステルインターポリマー並びにセルロースインターポリマー及びセルロースエステルインターポリマーの酸化方法を提供する。本発明はまた、高い酸価を有するカルボキシル化セルロースエステル誘導体(前記カルボキシル基は炭素−炭素結合によってセルロース主鎖に直接結合している)を利用する経路を提供する。中間体アルデヒドの官能基化によって、対応するカチオン性又は両イオン性セルロースエステル誘導体を利用することもできる。本発明のインターポリマーは、多数の最終用途を有し、例えば種々の型の被覆組成物中のバインダー樹脂として及び薬物送達剤として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステルインターポリマー、セルロースインターポリマー並びにセルロースインターポリマー及びセルロースエステルインターポリマーの酸化方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエステルはよく知られた化合物である(非特許文献1)。最も一般的なセルロースエステルは脂肪族C2〜C4置換基を有する。このようなセルロースエステルの例としては、セルロースアセテート(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)及びセルロースアセテートブチレート(CAB)が挙げられる。このようなセルロースエステルの有用性の例は、非特許文献2に記載されている。セルロースエステルは一般に、最初にセルロースをセルローストリエステルに転化してから、セルローストリエステルを酸性水性媒体中で所望の置換度(DS,アンヒドログルコースモノマー当たりの置換基の数)まで加水分解することによって製造される。セルローストリアセテートの水性酸触媒加水分解は、最終DSに応じて8種の異なるモノマーからなることができるランダムコポリマーを生成する(非特許文献3)。
【0003】
セルローストリエステルの加水分解によって非ランダムコポリマーを生成する方法は知られている。完全には置換されていないセルロースエステルへの直接エステル化も知られている。正確な反応条件によるが、この型の方法によれば非ランダムセルロースエステルを得ることが可能である。
【0004】
最近では、位置選択的に置換されたセルロース誘導体の製造の試みが報告されている。本発明の目的に対して、位置選択的置換は、セルロースのアンヒドログルコースモノマーのC2、C3又はC6ヒドロキシルの置換基の排他的又は優先的配置又は除去を意味する。置換基の配置の制御は、特定のモノマー分を有するセルロースのホモポリマー又はコポリマーを生成できる。即ち、アンヒドログルコースモノマー内に特定の置換型を有し且つセルロースポリマー鎖に沿った制御された配列を有するセルロース誘導体が得られる。
【0005】
位置選択的置換セルロース誘導体の形成をもたらす先行技術の方法は、一時的保護基の使用に依存し、保護基を均質反応混合物中に組み込むことができるようなセルロース溶媒、又は充分な反応性を有するマーセル化セルロース溶媒の使用を必要とする。
【0006】
炭水化物及び多糖類のいくつかの蟻酸エステルの製造が知られている。蟻酸エステルの不安定性及び他の官能基に対する反応性が報告されているため、単離されたセルロースホルメートは、典型的には次の反応のための不安定な中間体として使用される。その結果、混合セルロースホルメート誘導体の形成はほとんど注目されず、混合セルロース蟻酸エステルの形成の報告はほとんど存在しない。特許文献1は、セルロースを触媒の存在下で酢酸及び蟻酸混合無水物と混合することによって製造されるセルロースアセテートホルメートの製造を教示している。
【0007】
カルボキシル化セルロースエステルはわずかの種類しか知られていない。この種類のセルロースエステル誘導体の一例は、例えば特許文献2、3及び4に記載されたカルボキシメチルセルロースエステルである。これらのセルロース誘導体は、介在するエーテル結合によってセルロース鎖のアンヒドログルコース単位にカルボキシレートが結合されたセルロースエーテルエステルである。これらの誘導体は、カルボキシメチルセルロース(エーテル)を全置換カルボキシメチルセルロースエステルまでエステル化した後に所望のエステルDSまで加水分解することによって形成される。この種類のカルボキシル化セルロースエステルは、非加水分解性カルボキシレート結合という利点を提供する。欠点は、この製造方法が、エステル化の前にカルボキシメチルセルロースの製造及び単離を必要とする2段法であることである。その上、セルロース主鎖に沿ってカルボキシメチル置換基の一貫性のある均一な分布が得られない。
【0008】
別の種類のカルボキシル化セルロースエステルは、カルボキシレート官能基がエステル結合によってセルロース主鎖に結合されたものである。この種類の一例は、特許文献5に記載されたセルロースアセテートフタレートなどである。一般に、これらのセルロースエステル誘導体は、最初に中性のランダム置換セルロースエステル、例えばCAを所望のDSで製造することによって形成される。第2の反応において、セルロースエステルを無水フタル酸のような無水物で処理することによって、カルボキシレート官能基が導入される。
【0009】
更に別の種類のカルボキシル化セルロースエステルは、固体状態のセルロースエステルのオゾン分解によって得られるものである(非特許文献4;特許文献6)。セルロースエステルのオゾン分解は、カルボキシレートだけでなくアルデヒド、ケトン及びペルオキシドをも含むポリマーを生成する。この方法は、ポリマー分子量の著しい低下及び比較的低レベルの酸化をもたらす。更に、この方法は、セルロースエステルヒドロキシルの全てが酸化され得る点で特異的でない。
【0010】
炭水化物及び多糖類の酸化は、化学工業において非常に重要な方法であり、この転位に有用な触媒は多数開発されている。最も有用な触媒のいくつかは、ニトロキシル又はニトロキシドラジカルと称される化合物の種類に属する。典型的には、これらの化合物は、以下に示される一般構造を有する第二アミンニトロキシドである。
【0011】
【化1】

【0012】
第二アミンN−オキシドのうち、ピペリジン系に属する環状ヒンダードニトロキシルが最も魅力的であることがわかっている。ピペリジン系の環状ニトロキシル誘導体の合成には多くの経路がある。大部分の方法は、共通の出発原料として4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペルジン(トリアセトンアミン)を用い、これは一般にアセトン及びアンモニアの環化縮合によって製造される(非特許文献5)。トリアセトンアミンは、下記スキーム1に示されるような多数の種々の誘導体の合成のための共通中間体となる。スキーム1に示される誘導体のうち、2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−N−オキシル(5,TEMPO)は、アルコールの酸化を伴うほとんどの研究に使用される環状ニトロキシルであることがわかっている。
【0013】
【化2】

【0014】
酸性条件下におけるTEMPOによるアルコールの酸化は、第一及び第二アルコールをそれぞれアルデヒド及びケトンに転化する(非特許文献6)。一般に、過酸化は観察されないが、基材モル当たり2モル当量のTEMPOがアルコールの酸化に必要とされる。即ち、この反応は触媒によらない。
【0015】
アルコールの酸化への化学量論量のTEMPO又はその類似体の使用は費用がかかり、生成物の単離の問題を生じる可能性がある。その結果、この分野の研究は、一次及び/最終酸化体の使用によってその場で(in situ)ニトロソニウムを再生する触媒方法に向けられてきた。一次酸化体は、ヒドロキシアミンをニトロソニウムイオンに酸化し戻し、最終酸化体は一次酸化体を再生する働きをする。場合によっては、一次酸化体は、一次酸化体と最終酸化体の両方の役割を果たす。
【0016】
触媒量のTEMPO又はその類似体を用いて酸性条件下でアルコールを酸化することは可能である。しかし、この方法の溶媒は限られ、酸感受性の基材は典型的には、これらの条件下で破壊される。更に、第一及び第二アルコールは典型的には、カルボン酸にではなく、アルデヒド及びケトンにそれぞれ転化される。
【0017】
酸性条件下(pH<4)における非水反応媒体中における第一アルコールのTEMPO触媒酸化は、対応するアルデヒドをほぼ例外なく生じ得る。水性媒体中においては、アルデヒドのカルボキシレートへのその後の転化が若干観察されるが、アルデヒド対カルボン酸の比は依然として高い。その結果、先行技術のTEMPO触媒条件を用いる酸性条件下における多糖類及び炭水化物の第一アルコールの酸化は、酸化度が限られ且つ反応媒体が多くの基材に適さないという事実のためにあまり役立たない。
【0018】
このため、TEMPO及びTEMPO類似体による多糖類及び炭水化物の第一アルコールの酸化に関する研究は、アルカリ性条件下における酸化に向けられてきた。ほとんどの多糖類及び炭水化物は有機溶媒中への溶解度が限られるため、ほとんどの研究は水性反応媒体の使用に向けられてきた。
【0019】
多糖類、例えば、澱粉のTEMPO触媒酸化に典型的なpH及び温度は、−10〜25℃の温度において8.5〜11.5の範囲である(非特許文献7〜12、特許文献7、非特許文献13〜15、特許文献8並びに非特許文献17及び18)。ほとんどの場合、一次酸化体はNaBrであり、最終酸化体はNaOClである。
【0020】
TEMPOの類似体及び他の一次酸化体を用いる、アルカリ性条件下における多糖類及び炭水化物の酸化もまた、研究されている(非特許文献18〜22及び特許文献9〜11)。
【0021】
アルカリ性条件下におけるTEMPOを用いたセルロースエステルの酸化は、不可能ではないが困難である。問題の1つは、ほぼ全てのセルロースエステルが水に不溶であることである。更に、よく使用されるpH及び温度は、アシル置換基の急速で不所望な開裂を引き起こすおそれがある。その上、これらの反応条件下ではポリマー主鎖が急速に切断される。
【0022】
多糖類のTEMPO触媒酸化を伴う研究のほとんどは、水溶性多糖類、又はH2O中の懸濁液として処理できるように充分に反応性の多糖類を必要としている。TEMPO介在酸化をセルロースまで拡大する試みは、たいした成果を得られなかった。セルロースは、NaOH中におけるマーセル化後に又はセルロースの再生後に、水溶性ポリウロン酸に酸化される可能性がある(非特許文献23及び24)。
【0023】
【特許文献1】英国特許第568,439号(1945)
【特許文献2】米国特許第5,668,273号
【特許文献3】米国特許第5,792,856号
【特許文献4】米国特許第5,994,530号
【特許文献5】米国特許第3,489,743号
【特許文献6】米国特許第4,590,265号
【特許文献7】国際出願公開第WO96/38484号
【特許文献8】欧州特許第1077221 A1号
【特許文献9】欧州特許第0979826 A1号
【特許文献10】米国特許第5,831,043号
【特許文献11】米国特許出願公開2001/0034442 Al号
【0024】
【非特許文献1】”Cellulose Derivatives”,Ben P.Rouse,Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,vol. 4,1964,616〜683
【非特許文献2】Prog.Polym.Sci.2001,26,1605〜1688
【非特許文献3】Macromolecules 1991,24,3050
【非特許文献4】Sand,I.D.,Polymer Meterial Science Engineering,1987,57〜63
【非特許文献5】Sosnovsky,G.;Konieczny,M.,Synthesis,1976,735〜736
【非特許文献6】Bobbit,J.M.;Ma,Z.,J.Org.Chem.1991,56,6110〜6114
【非特許文献7】Tetrahedron Letters 1999,40,1201〜1202
【非特許文献8】Macromolecules 1996,29,6541〜6547
【非特許文献9】Tetrahedron 1995,51,8023〜32
【非特許文献10】Carbohydr.Polym.2000,42,51〜57
【非特許文献11】Carbohydr.Res.2000,327,455〜461
【非特許文献12】Carbohydr.Res.1995,269,89〜98
【非特許文献13】Recl.Trav.Chim.Pays−Bas 1994,113,165〜6
【非特許文献14】Carbohydr.Res.2001,330,21〜29
【非特許文献15】Carbohydr.Lett.1998,3,31〜38
【非特許文献16】Synthesis 1999,5,864〜872
【非特許文献17】J.Mol.Catal.A:Chem.1999,150,31〜36
【非特許文献18】Carbhydrate Research 2000,328,355−363
【非特許文献19】J.Mol.Catal.A.:Chem.2001,170,35〜42
【非特許文献20】J.Catal.2000,194,343〜351
【非特許文献21】Proc.Electrochem.Soc.1993,260〜7
【非特許文献22】Carbohydr.Res.1995,268,85〜92
【非特許文献23】Cellulose 2002,9,75〜81
【非特許文献24】Cellulose 1998,5,153〜164
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
前記の考察に鑑みて、カルボキシル基を炭素−炭素結合によってセルロース主鎖に直接結合させる、高い酸価を有するカルボキシル化セルロースエステル誘導体を利用する経路があれば有用であろう。好ましくは、このような経路は用途が広く、広範囲の酸価を有するカルボキシル化セルロースエステルの利用を可能にするものである。また、カルボキシレートはセルロースエステルポリマー内部にランダムに分布しているのが望ましいであろう。中間体アルデヒドの官能基化によって、対応するカチオン性又は両性イオン性セルロースエステル誘導体も利用できるとよい。
【課題を解決するための手段】
【0026】
一つの側面において、本発明は、セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあるセルロースエステルインターポリマーであって、式:
【0027】
【化3】

【0028】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシルである場合には酸価は10より大きい]
のアンヒドログルコース単位を含んでなり、アンヒドログルコース単位A及びBがセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成するセルロースエステルインターポリマーを提供する。
【0029】
別の側面において、本発明は、C2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が少なくとも約0.6であり且つ酸価が10より大きい、C6カルボキシ基を有する複数のアンヒドログルコース単位を含んでなるセルロースエステルインターポリマーを提供する。
【0030】
別の側面において、本発明は、重合度が少なくとも10であり、酸価が10より大きく且つC6カルボキシ基を有するアンヒドログリコースがセルロースインターポリマー全体にランダムに分布している酸化セルロースインターポリマーを提供する。
【0031】
別の側面において、本発明は、式:
【0032】
【化4】

【0033】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、C2〜C12アシル基からなる群から選ばれ;Xはヒドロキシメチルである]
のアンヒドログルコース単位を含んでなり、アンヒドログルコース単位A及びBがセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成し且つC2〜C12アシル基のアンヒドログルコース単位当たりの置換度が約1.5〜約2.5であるセルロースエステルインターポリマーを提供する。
【0034】
別の側面において、本発明は、ホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度が0.5〜1.3であり且つC2〜C12の置換度が1.5〜2.5であるセルロースエステルインターポリマーを提供する。
【0035】
別の側面において、本発明は、セルロースポリマーのアンヒドログルコース単位のC6ヒドロキシルをホルミル基又はカルボキシル基に転化する方法であって、アミノ置換環状ニトロキシル誘導体、一次酸化体及び最終酸化体をpH4未満のセルロース混合物(前記セルロース混合物は、C2〜C12アルキル酸、水、及びC6ヒドロキシル基を有するアンヒドログルコース単位を含むセルロースポリマーから構成される)に添加して反応混合物を形成し;C6ヒドロキシル基をホルミル基又はカルボキシ基に転化することによって酸化セルロースインターポリマーを生成するのに充分な反応時間を経過させることを含む方法を提供する。別の実施態様においては、酸化セルロースインターポリマーをC1〜C12アシル無水物又はそれらの混合物と反応させることを更に含む前記方法が提供される。
【0036】
別の側面において、本発明は、セルロースエステルポリマーのアンヒドログルコース単位のC6ヒドロキシルをホルミル基又はカルボキシル基に転化する方法であって、アミノ置換環状ニトロキシル誘導体、一次酸化体及び最終酸化体をpH4未満のセルロース混合物(前記セルロース混合物は、C2〜C12アルキル酸、水、及びC6ヒドロキシル基を有するアンヒドログルコース単位を含むセルロースエステルポリマーから構成される)に添加して反応混合物を形成し;C6ヒドロキシル基をホルミル基又はカルボキシ基に転化することによって酸化セルロースエステルインターポリマーを生成するのに充分な反応時間を経過させることを含む方法を提供する。
【0037】
本発明の更なる側面において、(1)第1の接触温度において蟻酸、水及びC2〜C12アシル無水物を混合して混合無水物混合物を形成し;(2)第2の接触温度において前記混合無水物混合物とセルロース化合物とを接触させて反応混合物を形成し;(3)前記反応混合物に酸触媒を添加し;(4)ホルミル化時間を経過させることを含む、安定な型の蟻酸セルロースエステルインターポリマーの製造方法が提供され、得られる蟻酸セルロースエステルインターポリマーは、ホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度が約0.5〜約1.5である。
【0038】
本発明の更なる側面において、(1)第1の接触温度において蟻酸、水及びC2〜C12アシル無水物を混合して混合無水物混合物を形成し;(2)第2の接触温度において前記混合無水物混合物とセルロース化合物とを接触させて反応混合物を形成し;(3)前記反応混合物に酸触媒を添加し;(4)ホルミル化時間を経過させ;(5)反応混合物にC2〜C12アシル無水物を添加し;(6)反応混合物を第3の接触温度に加熱し;(7)アシル化時間を経過させることを含む、安定な型のセルロースエステルインターポリマーの製造方法が提供され、得られるセルロースエステルインターポリマーは、C2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの置換度が約1.5〜約2.5で且つホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度が約0.5〜約1.5である。
【0039】
別の側面において、本発明は、第一アルコールをホルミル、カルボキシレート又はそれらの混合物に転化する方法であって、4−置換ピペルジンニトロキシル誘導体(置換基は、一次酸化体及び最終酸化体を水素結合させることができる)を混合物(前記混合物は約4未満のpHを有し、且つ第一アルコール官能基を含む化合物から構成される)に添加して、反応混合物を形成し;前記第一アルコール官能基を転化するのに充分な反応時間を経過させることを含んでなる方法を提供する。別の実施態様において、一次酸化体はMn(III)塩である。
【0040】
別の側面において、本発明はアニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルインターポリマー;樹脂;有機溶剤;及び場合によっては顔料を含む被覆組成物を提供する。
【0041】
別の側面において、本発明は、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルインターポリマー;樹脂;有機溶剤;水;基材(base);及び場合によっては顔料を含んでなる水性被覆組成物を提供する。
【0042】
別の側面において、本発明は、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルインターポリマー及び治療活性のある薬剤を含む薬物送達組成物を提供する。
【0043】
別の側面において、本発明は、酸化セルロースエステルは、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス、又は性感染する細菌感染の伝染頻度を低下させる又は抑えるのに有効な薬剤である、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルインターポリマーを含む治療用組成物を提供する。
【0044】
別の側面において、本発明は、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルインターポリマー熱可塑性相溶化剤;1種又はそれ以上のセルロースエステル;ポリマー;及び場合によっては天然繊維を含む熱可塑性組成物を提供する。
【0045】
別の側面において、本発明は、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルインターポリマー熱可塑性相溶化剤;1種又はそれ以上の天然セルロースエステル;及び天然繊維を含む複合材料を提供する。
【0046】
別の側面において、本発明は、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルインターポリマー;樹脂;溶剤;添加剤;及び場合によっては顔料を含むパーソナルケア組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明は、記載された特定の方法、製剤及び条件には限定されないので、当然変更可能であることを理解されたい。また、本明細書中で使用する用語は、個々の側面の説明のためにのみ使用するのであって、限定することを目的としないことを理解されたい。
【0048】
本明細書及び添付した「特許請求の範囲」中において、以下の意味を有するものと定義する多数の用語に言及する:
単数形は、前後関係からそうでないことが明白に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0049】
範囲は、本明細書中では、約を前置した「一方の特定値」から及び/又は約を前置した「もう一方の特定値」までと表すことができる。このような範囲が表される場合、「一方の特定値」から及び/又は「もう一方の特定値」までは別の態様である。同様に、値が、先行詞「約」を用いて近似値として表される場合には、特定値は別の態様を形成することを理解されたい。
【0050】
本明細書全体にわたって、特許を参照する場合、本発明が関連する最新技術をより詳細に説明するために、これらの特許の開示全体を引用することによって本明細書中に組み入れるものとする。
【0051】
天然セルロース(I)から出発する図1によって示されるように、本発明の目的の1つは、全置換セルロースエステル又は混合エステルを形成することにある。適当な置換基又は反応条件を選択することによって、C6の1級ヒドロキシルに結合されたアシル置換基を一部又は全て除去することができる。C6置換基の除去後、適当な触媒及び酸化体の使用によって、DS及び分子量を保持しながら、カルボン酸と水との混合物中においてセルロースエステルを酸化することが可能である。図1に示されるアルデヒド(III)は、重要な中間体である。適当な反応条件の選択によって、アルデヒドは、図1に示されるカルボキシレート(IV)に酸化することができる。更に、本発明者らは、中間体アルデヒドをアミンで遮断してカチオン性官能基を導入できるように反応条件を変更することが可能であったことに気付いた。次いで、これにより、図1に示されるカチオン性(V)又は両性イオン性(VI)セルロースエステルが生成される。この多段反応の間における中間体の単離は可能であり、場合によっては望ましいが、一実施態様においては、中間誘導体を単離せずにセルロースエステルを酸化セルロースエステルに転化することが特に望ましい。
【0052】
本発明者らはまた、エステル化によって酸化セルロースエステルを形成する前にセルロースを活性化及び酸化することができる別の方法をも開発しようとしていた。このような方法の重要なポイントは、セルロース鎖により均一に接近できるような酸性環境中におけるセルロースの活性化である。これは、酸価が高く且つ酸化C6ヒドロキシルの分布が比較的均一なセルロースエステルが得られるように酸化を進行させる。
【0053】
本発明において加水分解及び酸化させるセルローストリエステルは、炭素数2〜10のアルカノイルから独立して選ばれた3個の置換基を有することができる。セルローストリエステルの例としては、セルローストリアセテート、セルローストリプロピオネート及びセルローストリブチレート又はセルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートのようなセルロースの混合トリエステルが挙げられる。これらのセルロースエステルは、当業者に知られた多数の方法によって製造できる。例えば、セルロースエステルは、カルボン酸及び無水物の混合物中でH2SO4のような触媒の存在下で、セルロースの不均一アシル化を行うことによって製造できる。セルローストリエステルはまた、LiCl/DMAc又はLiCl/NMPのような適当な溶媒中に溶解されたセルロースの均一アシル化によっても製造できる。
【0054】
当業者ならば、セルローストリエステルの商業的用語は、アシル基で完全には置換されていないセルロースエステルを包含することがわかるであろう。例えば、Eastman Chemical Company,Inc.(Kingsport,TN,U.S.A.)から商業的に入手可能なセルローストリアセテートは典型的には約2.85〜約2.95のDSを有する。このため、本発明に有用なセルローストリエステルは、少なくとも2.85のDSを有するセルロースエステルを意味する。
【0055】
セルロースをトリエステルにエステル化後、アシル置換基の一部を加水分解又はアルコール分解によって除去して、二次セルロースエステルを生成する。前述のように、使用する個々の方法に応じて、アシル置換基の分布はランダム又は非ランダムであることができる。二次セルロースエステルはまた、限界量のアシル化試薬を用いることによって加水分解なして直接製造することもできる。この方法は、セルロースを溶解するであろう溶媒中で反応を実施する場合に特に有用である。これらの方法は全て、酸化セルロースエステルの製造に有用なセルロースエステルを生成する。
【0056】
一実施態様において、本発明において有用な二次セルロースエステルは、GPCによって測定した場合に、約5,000〜約400,000の重量平均分子量(Mw)を有する。更なる実施態様において、Mwは約10,000〜約300,000である。更に別の実施態様において、Mwは約25,000〜約250,000である。一実施態様において、本発明において有用なセルロースエステルのDSは約0.5〜約2.8である。更なる実施態様において、DSは約1.7〜約2.7である。
【0057】
最も一般的な市販の二次セルロースエステルは、セルロースの最初の酸触媒不均一アシル化によってセルローストリエステルを形成することによって製造される。セルローストリエステルの対応するカルボン酸中の均一溶液を得た後、セルローストリエステルは次に、所望の置換度が得られるまで加水分解に供される。単離後、ランダムに二次的なセルロースエテルが得られる。即ち、各ヒドロキシにおける相対置換度(RDS)はほぼ等しい。
【0058】
図1に示されるように、セルロースエステルを酸化できる程度は、酸化に利用できるC6ヒドロキシルの量によって決定される。この意味で、ランダム置換セルロースエステルは、達成できる酸化レベルを制限する。このため、高C6ヒドロキシル分を有するセルロースエステルを提供する方法があれば有利である。
【0059】
これに関連して、本発明者らは意外なことに、蟻酸及びアシル無水物からその場で製造された蟻酸無水物又は混合蟻酸無水物でセルロースを最初に処理することによって、位置選択的置換セルロースエステルを容易に且つ迅速に製造できることを見出した。第2の無水物又は無水物混合物を転化し、所望の分子量のトリエステルが形成されるまで反応を続ける。意外なことに、蟻酸エステルは安定であり、この段階で単離及び特性決定が可能である。典型的には、本発明者らはこの段階で、トリエステルが主に2種のモノマー:6−O−ホルメート−2,3−O−アシル置換モノマー及び2,3,6−O−アシル置換モノマーからなることを見出した。より好ましくは、蟻酸セルロースエステルは単離せず、他のアシル置換基に影響を及ぼすことなく、ホルメート置換基を選択的に除去するように水又はアルコールで処理する。単離後、位置選択的置換セルロースエステルが、公知方法に比較して高いC6ヒドロキシレベルで得られる。典型的には、本発明者らはこの段階で、セルロースエステルが主に2種のモノマー:2,3−O−アシル置換モノマー及び2,3,6−O−アシル置換モノマーを含むことを見出した。2,3,6−O−アシル置換モノマーに対する2,3−O−アシル置換モノマーの比は、少なくとも0.67である、即ち、2,3−O−アシル置換モノマーが少なくとも約40%であるのが好ましい。
【0060】
位置選択的反応に使用できるセルロースは多数の供給源から得ることができる。有用なセルロースの例としては、木材パルプからのセルロース、バクテリアセルロース又は綿若しくはトウモロコシのような一年生植物からのセルロースが挙げられる。本発明においては、エステル化の前にセルロースの水素結合を活性化する、即ち、分裂させるために、水又は別の薬剤でセルロースを処理することは必要ない。しかし、特定の場合には、当業者は、エステル化の前におけるセルロースの活性化の方が好ましいことがあることがわかるであろう。
【0061】
蟻酸無水物又は混合蟻酸無水物の製造に使用できる蟻酸は市販されており、典型的には1〜15%のH2Oを含む。蟻酸及び蟻酸無水物は本質的に安定ではなく、H2Oは蟻酸の安定化に役立つ。本発明においては、蟻酸溶液を約−10℃〜約15℃の第1の接触温度まで冷却した後、水のモルに基づき等モル量又はわずかに過剰量のアシル無水物を蟻酸水溶液に添加する。好ましいアシル無水物は2〜12個の炭素原子を含む。好ましいアシル無水物は、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物又はそれらの混合物である。好ましい温度は約−5℃〜約10℃である。
【0062】
その場で形成された無水物は、約10〜約70℃の望ましい第2の接触温度に調整する。別の実施態様においては、第2の接触温度は約15〜約25℃である。第2の接触温度に達した後、セルロースを無水物溶液に添加する。或いは、無水物溶液をセルロースに添加することもできる。セルロースを無水物溶液と接触させた後、触媒を添加する。触媒は、セルロースのエステル化を促進できる任意の酸である。このような触媒の例としては、H2SO4、HBr、HCl、HClO4又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の実施態様において、触媒はH2SO4である。触媒の添加量は、セルロースの重量に基づき約0.25〜約15重量%である。別の実施態様において、触媒の量は約2.5〜約7.5重量%である。
【0063】
触媒の添加後、セルロースのスラリーを接触時間の間、第2の接触温度に保持する。一実施態様において、接触時間は約10〜約60分である。別の実施態様において、接触時間は約20〜約40分である。
【0064】
その場で形成された無水物溶液との接触時間の完了後、第2のC2〜C12無水物又はC2〜C12無水物の混合物を添加する。一実施態様において、無水物又はその混合物はC2〜C4無水物である。別の実施態様において、無水物は無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物又はそれらの混合物である。
【0065】
第2の無水物又は無水物の混合物の添加完了後、セルロース含有溶液を第3の接触温度に調整する。一実施態様において、第3の接触温度は約30〜約95℃である。別の実施態様において、第3の接触温度は約40〜約60℃である。セルロース含有溶液は、所望の分子量のセルローストリエステルが得られるまで第3の接触温度に保持する。別の実施態様において、第2の接触時間は、約0.1〜約24時間である。別の実施態様において、第2接触時間は約2〜約8時間である。一実施態様において、重量平均分子量は約5,000〜約600,000g/モルである。別の実施態様において、分子量は約25,000〜約250,000g/モルである。更に別の実施態様において、分子量は約50,000〜約150,000g/モルである。
【0066】
所望の分子量を有するセルローストリエステルが得られたら、触媒を適当な塩基で中和し且つ非溶媒の添加によって単離することができる。適当な塩基の例としては、NaOH、KOH、MgCO3、Mg(OAc)2、CaCO3、Na(OAc)2、Na2CO3、K2CO3、NaHCO3又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。非溶媒の例としては、H2O、MeOH、EtOH、n−PrOH、i−PrOH、i−BuOH又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。当業者に知られた方法による濾過及び乾燥により、セルローストリエステルが得られる。
【0067】
新たに形成されたトリエステルにおいて、好ましくはホルメート置換基をセルロースのC6ヒドロキシルに結合させる。一実施態様において、総ホルメートDSは約0.7〜約1.3である。更なる実施態様において、総ホルメートDSは約0.9〜約1.1である。別の実施態様において、C6におけるホルメートRDSは少なくとも0.4である。更に別の実施態様において、ホルメートRDSは少なくとも0.6である。
【0068】
高C6ヒドロキシル含量を有する位置特異的置換セルロースエステルが望ましい場合には、好ましい接触温度及び時間で、全置換蟻酸セルロースエステルとH2O又はアルコールとを接触させることによって、蟻酸エステルを選択的に除去できる。一実施態様において、アルコールはメタノールである。加水分解又はアルコール分解の前に触媒を中和することは、必要ではないが好ましい。一実施態様において、H2O又はアルコールの量は約5〜約35重量%である。別の実施態様において、H2O又はアルコールの量は約10〜約25重量%である。一実施態様において、接触温度は約25〜約95℃である。別の実施態様において、接触温度は約40〜約60℃である。別の実施態様において、接触時間は約4〜約36時間である。更に別の実施態様において、接触時間は約8〜約24時間である。いくつかの用途では、二次セルロースエステル中に低レベルの蟻酸エステルを保持するのが望ましい場合がある。二次エステル中の蟻酸エステルのレベルは、適当な接触時間及び温度を選択することによって制御できる。二次位置特異的置換セルロースエステルは、セルローストリエステルと同様にして単離できる。一般に、
二次エステルのRDSは、トリエステル段階で確立されたRDSを反映するであろう。
【0069】
本発明において酸化できる多糖類エステルは、カルボン酸とH2Oとの混合物中に可溶であり且つ酸化に利用できる第1級ヒドロキシルを有するものである。このような多糖類エステルの例としては、α−1,4グリコシド結合を有する澱粉エステル及び他の多糖類エステル、α−1,3−グリコシド結合を有するプルランエステル及び他の多糖類エステル、β−1,4−グリコシド結合を有するセルロースエステル及び他の多糖類エステル、並びにβ―グルカンエステル、例えばキチン、キトサン、フルクタン、グラクトマンナン、グルコマンナン、キシログルカン、アラビノキシランなどが挙げられる。最も好ましい多糖類は、酸化に利用可能な第1級ヒドロキシルを有するC2〜C10セルロースエステルである。従って、本発明の更なる側面において、第一アルコールをホルミル、カルボキシレート又はそれらの混合物に転化する方法であって、4−置換ピペルジンニトロキシル誘導体(置換基は、一次酸化体及び最終酸化体を水素結合させることができる)を混合物(前記混合物は、約4未満のpHを有し、且つ第一アルコール官能基を含む化合物から構成される)に添加して反応混合物を形成し;第一アルコール官能基(前記第一アルコール基は多糖類エステルの前記列挙に見られる)を転化させるのに充分な反応時間を経過させることを含んでなる方法が提供される。本発明のこの側面の別の実施態様において、一次酸化体はMn(III)塩である。
【0070】
一実施態様において、酸化のための反応媒体は、カルボン酸とH2Oとの混合物である。別の実施態様において、カルボン酸はC2〜C10脂肪族カルボン酸又はそれらの混合物である。更に別の実施態様において、カルボン酸は、多糖類エステルに結合されるアシル基に対応するものである。例えば、セルロースプロピオネートの酸化におけるカルボン酸はプロピオン酸であることができ、セルロースアセテートプロピオネートの酸化におけるカルボン酸混合物はプロピオン酸と酢酸との混合物であることができる。一実施態様において、カルボン酸中の水の量は、液体の総重量に基づき、約1〜約60重量%である。別の実施態様において、カルボン酸中の水の量は約5〜約30重量%である。
【0071】
本発明の一実施態様において、多糖類エステルの酸化のための触媒又はメディエーター(mediator)は、α−水素原子を持たない有機ニトロキシル化合物である。一実施態様において、有機ニトロキシル化合物は、ピペリジン又はピロリジン系から得られるものである。更なる実施態様において、有機ニトロキシル化合物は、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペルジンから得ることができるものである。カチオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造に関しては、最も好ましい有機ニトロキシル化合物は2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−N−オキシル(TEMPO)である。カチオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造においてTEMPOが好ましいのは、適当な一次酸化体との併用時に酸化によって高アルデヒド対カルボキシレート比が得られると言う事実による。カチオン性官能基への以後の転化(以下参照)には、高濃度のアルデヒド官能基が必要である。アニオン性又は両性イオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造に関しては、一実施態様において、有機ニトロキシル化合物は4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−N−オキシル及びその誘導体並びに2−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−N−オキシル及びその誘導体である。別の実施態様において、アニオン性又は両性イオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造のために最も好ましい有機ニトロキシル化合物は、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペルジン−N−オキシル(NHAcTEMPO)である。一実施態様において、有機ニトロキシル化合物の量は、多糖類エステルモノマーのモル当たり約0.0001〜約0.1モル当量である。別の実施態様において、有機ニトロキシル化合物の量は、多糖類エステルモノマーのモル当たり約0.0025〜約0.075モル当量である。更に別の実施態様において、有機ニトロキシルの量は、選択された反応条件下で所望の酸化度を与える量である。従って、広範囲の有機ニトロキシル化合物が考えられる。
【0072】
好ましい一次酸化体は、有機ニトロキシルの還元によって生じるヒドロキシアミンを酸化することができる酸化剤である。一次酸化体の例としては、ハロゲン化塩、例えばKCl、KBr、NaCl、NaBr、NaIなど;次亜ハロゲン酸塩、例えばNaOCl、NaOBrなど;金属、例えば、Fe(III)、Mn(II)、Mn(III)、Cu(II)など、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アニオン性又は両性イオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造に関しては、一実施態様において、一次酸化体としては、KMnO4、Mn(OAc)3、Mn23、MnO2、Mn(NO32、MgCl2、Mg(OAC)2、Cu(NO32、KCl、KBr、NaBr、NaCl及びNaOClが挙げられる。カチオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造に関しては、一実施態様において、一次酸化体としては、Mn(NO32、Cu(NO32又はそれらの混合物が挙げられる。TEMPOを用いるカチオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造に関しては、一実施態様において、一次酸化体はMn(NO32とCu(NO32との1/1混合物である。別の実施態様において、一次酸化体の量は、多糖類エステルモノマーのモル当たり、約0.0001〜約0.1モル当量である。更に別の実施態様において、一次酸化体の量は、多糖類エステルモノマーのモル当たり、約0.001〜約0.075モル当量である。一般に、一次酸化体の量は、選択された反応条件下において所望の酸化度を与える量である。従って、広範囲の一次酸化体が考えられる。
【0073】
一実施態様において、最終酸化体(terminal oxidant)は、有機ニトロキシルの還元によって生じるヒドロキシルアミンを直接酸化できる、又は有機ニトロキシルの還元によって生じるヒドロキシルアミンを次に酸化する一次酸化体を再酸化することができる任意の酸化剤である。最終酸化体の例としては、酸素;オゾン;次亜ハロゲン酸塩、例えば、NaOClなど;過酸化物、例えば、過酸化水素など;過酸、例えば、過酢酸など;並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。一実施態様において、最終酸化体は、酸素NaOCl、過酢酸、及びカルボン酸水溶液中過酸化水素などである。一実施態様において、最終酸化体の量は、多糖類エステルモノマーのモル当たり、約0.1〜約10モル当量である。更なる実施態様において、一次酸化体の量は、多糖類エステルモノマーのモル当たり、約2〜約5モル当量である。更に別の実施態様において、最終酸化体の量は、選択された反応条件下において所望の酸化度を与える量である。従って、広範囲の最終酸化体が考えられる。
【0074】
セルロースエステル及び他の多糖類エステルの酸化に関しては、広範な接触温度、時間及びpHが考えられる。正確な値は、触媒及び酸化体の添加量、必要な酸化度並びに必要とされる他の性質、例えば分子量によって異なる。一実施態様において、酸化における接触温度は約25〜約80℃である。別の実施態様において、接触温度は約50〜約60℃である。別の実施態様において、接触時間は約0.1〜約36時間である。更なる実施態様において、接触時間は約3〜約12時間である。更に別の実施態様において、接触時間は最終酸化体の添加に必要な時間に等しいか又はそれよりわずかに長い(約0.01〜約1時間)。一実施態様において、最終酸化体の添加時間は、約0.1〜約35時間である。別の実施態様において、最終酸化体の添加時間は、約2〜約11時間である。一実施態様において、接触pHは約0.1〜約4の範囲であることができる。正確な値は、カルボン酸のpH、及び多糖類のエステル化又は加水分解に使用される酸が酸化前に中和されていたか否かによって決まる。別の実施態様において、接触pHは約2.0未満である。pHは制御可能であるが、本発明においては、反応の間にはpHを特定の値に制御せずに、反応の間中ドリフトさせるのが好ましいことを理解すべきである。
【0075】
酸化セルロースエステルは、多数の方法によって、例えば非溶媒中における沈澱、噴霧乾燥(spray drying)、繊維の紡糸(spinning)などによって単離できる。一実施態様において、この方法は、H2O、H2O/C2〜C4カルボン酸混合物、C1〜C4アルコール、酢酸又はプロピオン酸のC1〜C4エステルなどのような非溶媒中への沈澱による。使用溶媒は、酸化度、酸化多糖類の分子量及びアシル置換基中の炭素数によって異なる。酸化セルロースアセテートのような酸化セルロースエステルに関しては、好ましい非溶媒は、イソプロピルアルコール又はn−ブタノールのようなC2〜C4アルコールである。酸化セルロースブチレートのような酸化セルロースエステルの場合には、好ましい非溶媒は、約5重量%〜約25重量%のC1〜C4カルボン酸を含むH2Oである。
【0076】
酸化セルロースエステルの場合には、酸化量は、酸価の測定によって測定するのが最も都合良い。酸価は、酸化セルロースエステル1gを中和するのに必要な塩基(KOH)のmgと定義される。セルロースエステルに関しては、酸化セルロースエステルの酸価は、目的とする最終用途によって決まるので、非常に広範な酸価が予想される。一実施態様においては、酸価は10より大きい。別の実施態様においては、酸価は30より大きい。別の実施態様においては、酸価は30より大きく150より小さい。別の実施態様においては、酸価は30より大きく130より小さい。別の実施態様において、酸価は30より大きく90より小さい。
【0077】
当業者ならば、多糖類エステルのアシルDSの測定に多数の方法を使用できることがわかるであろう。酸化セルロースエステルの場合には、アシルDS値は、DSの測定に使用する方法によっても異なる。セルロースエステルのアシルDSの測定には、プロトンNMRが一般的で好ましい方法である。この方法は、セルロースエステルの主鎖領域を積分し、次いでグルコースモノマーに通常結合されるプロトンの数である7でそれを割ることによってグルコースモノマーの量を算出することに基づく。しかし、グルコースモノマーの酸化は、酸化度によってはプロトンの数を減少させるであろう。このため、酸化の間にアシル置換基の加水分解が起こらない場合には、通常のNMR法は、酸化と共に直線的に増加するアシルDSを生じるであろう。アシル置換基の加水分解が起こっている場合には、DSの増加は直線的でないであろう。従って、プロトンNMRは、個々のサンプルに関する酸化の判定の指標となることができる。酸化セルロースエステルに関してプロトンNMRによって得られるアシルDSを、見掛けアシルDSと称する。
【0078】
酸化セルロースエステルの見掛けアシルDSは、ほとんど全ての用途に関して非常に重要な性質であり、好ましい見掛けアシルDSは、目的用途によって異なる。本発明の一実施態様において、見掛けアシルDSは少なくとも0.6となる。更なる実施態様において、見掛けアシルDSは約1.5〜約3.1である。更なる実施態様において、見掛けアシルDSは約1.7〜約2.8である。
【0079】
酸化セルロースエステルの分子量は、ほとんどの用途に関して重要なもう一つの性質であり、好ましい分子量は目的用途によって異なる。分子量については、セルロースポリマーに結合するアシル基の選択によって、及び適当な反応条件の選択によって最終生成物中のアルデヒド及びヒドロキシル官能基を制御することによって、酸化に使用されるセルロースエステルの分子量よりも小さい又は大きい酸化セルロースエステルの分子量を得ることが可能である。セルロースエステルの出発分子量よりも高い値への分子量の増加は、アセタール又はヘミアセタール結合の形成によって酸化セルロースエステルの効果的な架橋をもたらす小濃度のアルデヒド官能基によると考えられる。酸化セルロースエステルの見掛け分子量については、一実施態様において、重量平均分子量が少なくとも5,000g/モルである。別の実施態様においては、分子量の範囲は約10,000〜約900,000g/モルである。更なる実施態様において、この範囲は約20,000〜約400,000g/モルである。
【0080】
前述のように、カルボキシレート対アルデヒドの比は、酸化セルロースエステルの分子量測定値の調整に用いることができる。この比はまた、多数の独特の酸化セルロースエステル誘導体への導入に用いることができる。カルボキシレート対アルデヒドの比は、適当な反応条件の選択によって調整できる。この比に影響を与える可能性のある反応パラメーターとしては、反応媒体中の水の濃度、有機ニトロキシル化合物の型及び濃度、一次及び最終酸化体の濃度、反応温度及び時間並びに酸化されるセルロースエステルの型が挙げられる。当業者ならば、これらのパラメーターの間に複雑な相互関係があること、及びこれらのパラメーターを変更することによって同じカルボキシレート対アルデヒド比を得る多くの方法があることがわかるであろう。本発明の開示は、個々のカルボキシレート対アルデヒド値を得る方法を当業者に教示するのに充分なものである。
【0081】
アニオン性C2〜C10酸化セルロースエステルについては、一実施態様において、カルボキシレート対アルデヒドの比は少なくとも5:1となる。別の実施態様においては、カルボキシレート対アルデヒドの範囲は約6:1〜約100:1である。別の実施態様においては、この範囲は、約10:1〜約50:1である場合がある。場合によっては、アルデヒドが存在しないのが望ましいことがある。
【0082】
カチオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの前駆体としては、一実施態様において、カルボキシレート対アルデヒドの比は1:5未満となる。場合によっては、カルボキシレートが存在しないのが好ましい。一実施態様において、カルボキシレート対アルデヒドの範囲は約1:6〜約1:100である。別の実施態様においては、カルボキシレート対遊離アルデヒドの範囲は、約1:10〜約1:50である。
【0083】
一実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは少なくとも10の重合度を有する。別の実施態様においては、セルロースエステルインターポリマーは少なくとも25の重合度を有する。更なる実施態様においては、セルロースエステルインターポリマーは25〜50の重合度を有する。更に別の実施態様においては、セルロースエステルインターポリマーは少なくとも250の重合度を有する。
【0084】
両性イオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの前駆体としては、カルボキシレート対アルデヒドの比は約5:1〜約1:5であるのが好ましい。より好ましい範囲は、カルボキシレート対アルデヒドの比が約4:1〜約1:4の場合である。更に好ましい範囲は約2:1〜約1:2である。
【0085】
カチオン性又は両性イオン性C2〜C10酸化セルロースエステルの製造においては、アルデヒド官能基をカチオン性官能基に転化する。アルデヒド官能基の転化は、酸化の間に又は酸化直後であって酸化生成物の単離の前に行われることができる。或いは、カチオン性又は両性イオン性酸化セルロースエステル前駆体は、単離して、後反応においてカチオン性又は両性イオン性酸化セルロースエステルに転化することができる。カチオン性又は両性イオン性酸化セルロースエステルへの転化の前の酸化セルロースエステルの単離に関しては、還元的アミノ化工程の前に酸化セルロースエステルは乾燥しないのが好ましい。例えば、酸化セルロースエステルは、メタノールのような非溶媒中で沈殿し得る。次いで、酸化セルロースは、使用の直前までメタノールで湿潤した状態で貯蔵する。メタノールは、反応試薬、例えば酢酸及びベンジルアミン中に酸化セルロースエステルを溶解させ、そしてメタノールを除去するために溶液中に空気又はN2を通して泡立てることによって除去できる。酸化セルロースエステルの乾燥に比べてアセタール結合の形成が少ないので、この方法では、反応溶媒中への酸化セルロースの溶解がより容易になる。
【0086】
アルデヒド官能基は、アルデヒドをNH3の供給源又は第一アミンと水素及び水素添加触媒の存在下で処理することによってカチオン性官能基に転化できる(還元的アミノ化)。一実施態様において、NH3の供給源は、アンモニアガス又はNH4Clのような他の供給源である。好ましいアミンは、炭素数1〜14の第一アミンである。アミンの例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。一実施態様において、水素添加触媒は、炭素のような不活性物資上に担持されたPdである。シアノ水素化硼素ナトリウム、水素化硼素ナトリウム又は蟻酸のアミン塩のような他の還元剤もまた使用できる。
【0087】
カチオン性又は両性イオン性酸化セルロースエステル中に存在するアミンの量は、種々の方法によって、例えば、酸価の測定に使用されるのと同様な滴定法によって又はプロトンNMRのような他の方法によって測定できる。本発明に関しては、カチオン性又は両性イオン性酸化セルロースエステル中のアミンの量は、可能であればプロトンNMRで測定するのが好ましい。これに関しては、アミンのDSを、前述と同様な理由から見掛けアミンDSと称する。本発明の一実施態様において、見掛けアミンDSは少なくとも約0.05である。別の実施態様において、見掛けアミンDSは約0.2〜約0.7である。
【0088】
場合によっては、最初に多糖類を酸化し、次いで酸化多糖類をエステル化するのが好ましいこともある。このため、本発明の別の側面は、カルボン酸とH2Oとの混合物中における、利用可能な第1級ヒドロキシルを有する多糖類の酸化である。このような好ましい多糖類の例としては、α―1,4グリコシド結合を有する澱粉及び他の多糖類、α−1,3グリコシド結合を有するプルラン及び他の多糖類、β−1,4グリコシド結合を有するセルロース及び他の多糖類並びにキチン、キトサン、フルクタン、グラクトマンナン、グルコマンナン、キシログルカン、アラビノキシランなどからのような他のβ―グルカンが挙げられる。最もこの好ましい多糖類はセルロースである。多糖類エステルに関する前記制限はまた、多糖類の酸化にも適用できる。多糖類の酸化に関する本発明において、一実施態様においては酸化の間のpHは約4未満であり、別の実施態様においては約2未満であるのが好ましい。塩基性媒体中におけるセルロースの酸化とは異なり、本発明の方法によるセルロースの酸化のための反応媒体は天然セルロースの結晶性を阻害するのに充分であるので、セルロースの前処理は必要ない。一実施態様において、本発明の方法によって酸化されたセルロースは、少なくとも10の酸価を有する。別の実施態様において、本発明の方法によって酸化されたセルロースは、少なくとも30の酸価を有する。また、本発明の方法によって製造された酸化セルロースは水中にほとんど溶解しないのが好ましい。即ち、第1級ヒドロキシルの利用可能性がより均一であり且つ得られるカルボキシレートの分布が均一であるため、生成物は、水溶性の低い又は水不溶性のフラクションのみを有することを特徴とする。本発明の方法は、セルロースのエステル化に一般に使用される方法と相性がいい。即ち、濾過によって液体を除去した後、酸化セルロースは、当業者によく知られた方法によってエステル化できる。
【0089】
本発明のセルロースエステルインターポリマー及び本明細書中に開示した他の組成物、例えばセルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあり且つ式:
【0090】
【化5】

【0091】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;Xはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(ここでR6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシルである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含むセルロースエステルインターポリマーは、多くの種々の型の用途において有用であることができる。これらのセルロースエステルインターポリマーは、種々の被覆組成物、例えば、医薬品用腸溶コーティング、建築被覆、メインテナンス被覆、工業被覆、自動車被覆、織物コーティング、インキ、接着剤並びに金属、紙、木材及びプラスチック用被覆において、バインダー樹脂として有用であることができる。セルロースエステルインターポリマーは、顔料を含む水性被覆用途において特に有用であることができる。
【0092】
更に、本発明の酸化セルロースエステルは、薬物送達組成物中で、抗ウイルス剤として、熱可塑性組成物中の相溶化剤として、及びパーソナルケア組成物中で有用であることができる。
【0093】
従って、1つの側面において、本発明は、本発明の酸化セルロースエステルを含む被覆組成物に関する。本発明の酸化セルロースエステルは、既知のセルロースエステルと同様にして被覆組成物中に混和することができ、このような組成物の常用成分及び/又は添加剤と共に使用する。被覆組成物は透明であってもよいし、又は着色されていてもよい。カルボキシル化セルロースエーテルエステルを含む被覆組成物は、公知であり、例えば米国特許第5,668,273号に記載されている。この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0094】
一実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは被覆組成物中で有用であり、被覆組成物は、例えばセルロースエステルのインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあり且つ前記セルロースエステルインターポリマーが式:
【0095】
【化6】

【0096】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、アミノメチル、R6−NH−CH2−(ここでR6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含む本発明のセルロースエステルインターポリマーを使用する。
【0097】
従って、一実施態様において、本発明は、
(i)組成物中の(i)及び(ii)の総重量に基づき、約0.1〜約50重量%のセルロースエステルインターポリマー{前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位はアルコール酸化状態にあり、且つ前記セルロースエステルインターポリマーは式:
【0098】
【化7】

【0099】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログリコース単位を含んでなる};
(ii)組成物中の(i)及び(ii)の総重量に基づき約50〜99.9重量%の、(i)以外の樹脂;並びに
(iii)少なくとも1種の有機溶剤[(i)及び(ii)の総重量は(i)、(ii)及び(iii)の総重量の約5〜70重量%である]
を含んでなる被覆組成物を提供する。
【0100】
一実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは、約10〜約200の酸価を有するアニオン性C2〜C8セルロースエステルである。更なる実施態様において、酸化セルロースエステルは、約30〜約80の酸価を有するアニオン性C2〜C4セルロースエステルである。被覆組成物において、酸化セルロースエステルの濃度は、典型的には、酸化セルロースエステル及び添加樹脂の総重量に基づき、約0.1〜約50重量%である。別の実施態様において、酸化セルロースエステルの濃度は約3〜30重量%である。
【0101】
セルロースエステルインターポリマーは、被覆及びインキ組成物に使用されるもののような広範な樹脂材料と相溶性であることができる。カルボキシル化セルロースエステルと相溶性である樹脂の種類としては、ポリエステル、ポリエステル−アミド、セルロースエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ビニルポリマー、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、シリコーン樹脂及びニトロセルロースが挙げられるが、これらに限定するものではない。典型的には、被覆組成物中のセルロースエステルインターポリマーの濃度は、酸化セルロースエステル及び樹脂の総重量に基づき、約0.1〜約50重量%である。別の実施態様において、セルロースエステルインターポリマーの濃度は約5〜約30重量%である。
【0102】
本発明のセルロースエステルインターポリマーは、多数の溶剤と相溶性である。これらの溶剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。メタノール;エタノール;塩化メチレン;ジアセトンアルコール;低級アルカン酸;例えば蟻酸、酢酸及びプロピオン酸;低級アルキルケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン及びメチルn−アミルケトン;エステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸イソブチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸1−メトキシ−2−プロピル、酢酸2−エトキシ−エチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、イソ酪酸イソブチル及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート;エーテル、例えばエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール及び2−ブトキシエタノール;並びにそれらの混合物。セルロースエステルを含む被覆組成物中の溶剤の濃度は典型的には、酸化セルロースエステル、樹脂及び溶剤の総重量に基づき約30〜約95重量%である。当業者ならば、相溶性溶剤の選択は、酸化セルロースエステルのDS、置換基の型、酸化度、分子量などを含む多数の因子に左右されることがわかるであろう。
【0103】
本発明のセルロースエステルインターポリマーを含む被覆製剤は、種々の表面、基材又は製品、例えば紙;プラスチック;金属、例えばスチール及びアルミニウム;木材;石膏ボード;コンクリート;れんが;メーソンリー;又は亜鉛メッキシート材料に適用できる。一般に、使用する被覆製剤の型は、被覆される表面、基材又は製品の型によって決まる。被覆製剤は公知の手段を用いて適用できる。例えば、被覆製剤は、噴霧、刷毛塗、ロール塗り又は基材に被覆する任意の他の適用方法によって適用できる。
【0104】
本発明のセルロースエステルインターポリマーは、木材被覆の硬化性及び非硬化性仕上げ材料のいずれにおいても主な被覆形成性成分として有用である。従って、本発明はまた、約5〜約20重量%の本発明の酸化セルロースエステル、約15〜約25重量%のアルキド樹脂、約2〜約5重量%のメラミン樹脂又は約5以下〜約10重量%のユリアホルムアルデヒド樹脂、比較的少量のシリコーン樹脂並びにキシレン、トルエン、エタノール、n−ブチルアルコール及びメチルエチルケトンのような適当な溶剤を含む溶剤系を含んでなる硬化型木材仕上げ材料に関する。艶消し剤、例えばW.R.Graceから入手可能なSYLOID 83及びSYLOID 378も使用できる。
【0105】
本発明のセルロースエステルインターポリマーは、インキ製剤中にも配合できる。この場合、酸化セルロースエステルは、インキ用顔料を分散させるための媒体の役割をし、また、主な被覆形成性樹脂の役割もする。従って、本発明の別の実施態様は、約30〜約70重量%の酸化セルロースエステル、約30〜約70重量%のインキ顔料及び所望の条件下でインキ組成物を適用するのに適当な粘度を与えるのに有効な量で存在する溶剤を含むインキ組成物に関する。
【0106】
本発明のインキ組成物はまた、個々のインキ又は印刷方法の必要に応じて通常のインキ添加剤を含むことができる。このようなインキ添加剤としては、湿潤剤、レベリング剤、レオロジー添加剤、印刷機上における再溶解性/再湿潤を促進するための添加剤、融合助剤、顔料湿潤剤、分散剤、界面活性剤、ワックス、脱泡剤、消泡剤、及び改質用ポリマー又はコレジンが挙げられるが、これらに限定するものではない。顔料の濃度は、使用する個々の顔料並びにインキ組成物中で求められる色及び被覆度によって異なる。本発明のインキ組成物中で有用な顔料は当業界でよく知られたものであり、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,2d Ed.,Vol.11,613〜615頁に記載されている。本発明のインキ組成物において有用な溶剤もまた、当業界でよく知られており、例えばKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,2d Ed.,Vol.11,621〜623頁に記載されている。好ましい溶剤としては、エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びそれらの混合物が挙げられる。
【0107】
本発明のセルロースエステルインターポリマーは、顔料分散剤として特に有用である。非酸化セルロースエステルは、セルロースエステル及び顔料を熱及び/又は剪断力によってブレンドして顔料を分散させることによって、顔料分散体中で有用であった。このように、顔料を被覆配合物中に分散させることができるので、最小量の顔料を用いながら、高い着色力及び良好な透明度を実現できる。このような顔料分散体は、従来のセルローステルの代わりに本発明の酸化セルロースエステルを用いることによって改良できる。本発明者らは、本発明の酸化セルロースエステルが、顔料分散体に著しく改善された湿潤性を与えることを見い出した。酸化セルロースエステルと顔料との重量比約20:80〜50:50の混合物を製造できる。これらの分散体は、二本ロールミル又はボールミル、Kadyミル、サンドミルなどで製造できる。
【0108】
従って、一実施態様において、本発明は、約40〜90重量%の少なくとも1種の顔料及びそれに対応して約10〜60重量%のセルロースエステルインターポリマーを含む顔料分散体であって、前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位はアルコール酸化状態にあり、且つ前記セルロースエステルインターポリマーが式:
【0109】
【化8】

【0110】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、アミノメチル、R6−NH−CH2−(ここでR6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含む顔料分散体を提供する。
【0111】
酸化セルロースエステル及び顔料分散体は、改善されたアルミニウムフレーク配向性及び改善された硬度を提供するレオロジー改質剤及び/又はバインダー成分として有用であることが期待される場合には、ラッカー又はエナメル型被覆中に配合できる。これらは、有機溶剤溶液、アミン中和水性分散液、完全に中和された水性/有機コロイド分散液の形態で、又はアンモニア水溶液中のゼロVOC分散液として基材に適用できる。更に、これらは、種々の基材、特に金属及び木材のための無色透明で高光沢度の保護被覆を提供すると予想される。
【0112】
本発明のセルロースエステルインターポリマーは、比較的硬質のポリマーであり且つ高いガラス転移温度を有することができる。これらは、被覆の硬度を改善し且つ滑り、垂れ抵抗性、耐擦傷性、流れ、レベリング及び乾燥時間のような性質を改善するために、他の樹脂に添加できる。靭性を更に改善するために、メラミン類又はイソシアネート類のような架橋剤を添加して、ヒドロキシル含有酸化セルロースエステルと又は他の樹脂と反応させることができる。好ましいメラミン架橋剤としては、、ヘキサメトキシメチルアミン、テトラメトキシメチルベンゾ−グアナミン、テトラメトキシメチル尿素、混合ブトキシ/メトキシ置換メラミンなどが挙げられる。典型的なイソシアネート架橋剤及び樹脂としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトルエンジイソシアネートが挙げられる。
【0113】
本発明の一部のセルロースエステルインターポリマーにはカルボキシレートが存在するため、カルボキシル官能性樹脂、例えばエポオキシ樹脂又はグリシジル官能性樹脂と共に使用される普通の架橋剤及び樹脂を用いることができるであろう。好ましいエポキシ官能性樹脂は一般に、約300〜約4000の分子量を有し、樹脂100g当たり約0.05〜約0.99個のエポキシ基(即ち、エポキシ当たりの重量(WPE)100〜2000)を有する。このような樹脂は広く知られており、Shell Chemical CompanyからEPON(登録商標)として、CIBA−GeigyからARALDITE(登録商標)として、Dow Chemical CompanyからD.E.R.樹脂として市販されている。
【0114】
前述のように、本発明のセルロースエステルインターポリマーは、水性被覆組成物中で特に有用である。好ましいセルロースエステルインターポリマーは、約10〜約200の酸価を有するアニオン性C2〜C8セルロースエステルである。最も好ましいセルロースエステルインターポリマーは、約30〜約80の酸価を有するアニオン性C2〜C4セルロースエステルである。
【0115】
本発明のセルロースエステルインターポリマーは、有機溶剤中に溶解させ、部分的に中和し、且つ水に分散させることができる。このような有機溶剤の例としては、2−ブタノン、メチルアミルケトン、メタノール、エタノール、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の変性セルロースエステルの水への分散には、アミンによるペンダントカルボキシレート基の約10〜約100%の中和が必要である。典型的なアミンとしては、アンモニア、ピペリジン、4−エチルモルホリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エタノールアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン及びジメチルアミノエタノールが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0116】
水性被覆組成物において、被覆組成物中の樹脂の濃度は、酸化セルロースエステル及び樹脂の総重量に基づき、約0.1〜約50重量%である。より好ましいのは、樹脂濃度が約5〜約30重量%の場合である。セルロースエステルインターポリマーの濃度は、典型的には、酸化セルロースエステル及び添加樹脂の総重量に基づき、約0.1〜約50重量%である。より好ましいのは、酸化セルロースエステルの濃度が約0.5〜約30重量%である場合である。総組成物中の樹脂及び酸化セルロースエステルの重量は、約5〜約70重量%である。より好ましいのは、総組成物中の樹脂及び酸化セルロースエステルの重量が約10〜約50重量%の場合である。有機溶剤は好ましくは、総組成物の約0〜約20重量%を構成する。より好ましいのは、有機溶剤が好ましくは総組成物の約5〜約15重量%を構成する場合である。
【0117】
従って、一実施態様において、本発明は、
(i)組成物中の(i)及び(ii)の総重量に基づき、約0.1〜約50重量%のセルロースエステルインターポリマー{前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位はアルコール酸化状態にあり、且つ前記セルロースエステルインターポリマーは式:
【0118】
【化9】

【0119】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(ここでR6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成し;前記インターポリマー状の全遊離カルボキシル基の少なくとも約25%は塩基で中和されている]
のアンヒドログルコース単位を含む};
(ii)少なくとも1種相溶性水溶性又は水分散性樹脂;
(iii)水;並びに
(iv)少なくとも1種の有機溶剤[(i)及び(ii)の総重量は総組成物の5〜50重量%であり、前記有機溶剤は組成物の総重量の20重量%以下を構成する]
を含んでなる水性被覆組成物を提供する。
【0120】
本発明の更なる側面として、前記組成物は更に、1種又はそれ以上の被覆添加剤を含む。このような添加剤は一般に、組成物の総重量に基づき、約0.1〜15重量%の範囲で存在する。このような被覆添加剤の例としては、以下のものが挙げられる。レベリング、レオロジー及び流れ調整剤、例えばシリコーン樹脂、フルオロカーボン樹脂又はセルロース樹脂;艶消し剤;顔料湿潤及び分散剤;界面活性剤;紫外線(UV)吸収剤;紫外線安定剤;着色顔料;脱泡及び消泡剤;沈澱防止、垂れ防止及び粘度付与剤;皮張り防止剤;色別れ防止剤;殺真菌剤及び防かび剤;腐蝕防止剤;増粘剤;又は融合助剤。
【0121】
更なる被覆添加剤の具体例は、Raw Materials Index(National Paint & Coatings Association発行,1500 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington,D.C.20005)に記載されている。
【0122】
艶消し剤の例としては、Davison Chemical Division of W.R.Grace & CompanyからSYLOID(登録商標)として入手可能な合成シリカ;Hercules Inc.からHERCOFLAT(登録商標)として入手可能なポリプロピレン;J.M Huber CorporationからZEOLEX(登録商標)として入手可能な合成シリケートが挙げられる。
【0123】
分散剤及び界面活性剤の例としては、以下のものが挙げられる。ナトリウムビス(トリデシル)スルホスクシネート、ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウムスルホスクシネート、ナトリウムジヘキシルスルホスクシネート、ナトリウムジシクロへキシルスルホスクシネート、ジアミルナトリウムスルホスクシネート、ナトリウムジイソブチルスルホスクシネート、二ナトリウムイソデシルスルホスクシネート、スルホコハク酸のエトキシル化アルコール半エステルの二ナトリウム塩、二ナトリウムアルキルアミドポリエトキシスルホスクシネート、四ナトリウムN−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホスクシナメート、二ナトリウムN−オクタスルホスクシナメート、硫酸化エトキシル化ノニルフェノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなど。
【0124】
粘度、懸濁及び流れ調整剤の例としては、ポリアミノアミドホスフェート、ポリアミンアミドの高分子量カルボン酸塩、及び不飽和脂肪酸のアルキルアミン塩(全てBYK Chemie U.S.A.からANTI TERRA(登録商標)として入手可能)が挙げられる。更なる例としては、ポリシロキサンコポリマー、ポリアクリレート溶液、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシドが挙げられる。
【0125】
いくつかの有標消泡剤は、例えばBuckman Laboratories Inc.からBRUBREAK(登録商標)として、BYK Chemie,U.S.A.からBYK(登録商標)として、Henkel Corp./Coating ChemicalsからNOPCO(登録商標)として、Drew Industrial Division of Ashland Chemical CompanyからDREWPLUS(登録商標)として、Troy Chemical CorporationからTROYSOL及びTROYKYD(登録商標)として、並びにUnion Carbide CorporationからSAG(登録商標)として市販されている。
【0126】
殺真菌剤、防かび剤及び殺生剤の例としては、以下のものが挙げられる。4,4−ジメチルオキサゾリジン、3,4,4−トリメチルオキサゾリジン、変性メタ硼酸バリウム、カリウムN−ヒドロキシメチルーN−メチルジチオカルバメート、2−(チオシアノ−メチルチオ)ベントチアゾール、カリウムジメチルジチオカルバメート、アダマンタン、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、オルトフェニルフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、デヒドロ酢酸、ナフテン酸銅、オクタン酸銅、有機砒素、トリブチル錫オキシド、ナフテン酸亜鉛、及び8−キノリン酸銅。
【0127】
紫外線吸収剤及び紫外線安定剤の例としては、置換ベンゾフェノン、置換ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、及びヒンダードベンゾエート(American Cyanamide Companyから商品名Cyasorb UVとして及びCiba GeigyからTINUVIN(登録商標)として入手可能)、並びにジエチル−3−アセチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン及びレゾルシノールモノベンゾエートが挙げられる。
【0128】
本発明によって想定される被覆組成物への使用に適当な顔料は、表面被覆の業界において通常の技術を有する者によく知られた典型的な有機及び無機顔料、特に、Society of Dyers and ColouristsとAmerican Association of Textile Chemists and Coloristsによって共同出版されたColour Index,3d Ed.,2d Rev.,1982によって記載されたものである。例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。CI Pigment White 6(二酸化チタン);CI Pigment Red 101(赤色酸化鉄);CI Pigment Yellow 42、CI Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4(銅フタロシアニン類);CI Pigment Red 49:1及びCI Pigment Red 57:1。
【0129】
本発明はまた、本発明のセルロースエステルインターポリマーを含む経口用薬物送達組成物に関する。一側面において、セルロースエステルインターポリマーは、治療薬を含む固体コアのための腸溶コーティングとして使用する。別の側面において、セルロースエステルインターポリマーは、腸溶コーティングとして使用されるブレンド中の一成分として使用する。更に別の側面において、セルロースエステルインターポリマーは、固体コアからの治療薬の放出速度調整剤又は溶解調整剤として使用する。更に別の側面において、セルロースエステルインターポリマーと溶解調整剤との物理的混合物を、固体コアからの治療薬の放出制御に使用する。更なる側面において、治療薬を含むセルロースエステルインターポリマーの小胞は、固体コアからの治療薬の放出制御において放出速度及び溶解調整剤として働く。更に別の側面において、セルロースエステルインターポリマーは、固体コア中の生体接着剤成分であり、治療薬の生体吸収を増加させる働きをする。
【0130】
薬物送達組成物において、一実施態様では、セルロースエステルインターポリマーは、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルである。好ましいセルロースエステルインターポリマーは、経口製剤からの治療薬の送達のために選択される様式によって決定されるであろう。
【0131】
一実施態様において、本発明は、1種若しくはそれ以上のセルロースエステルインターポリマーを含む組成物が被覆されたか又は1種若しくはそれ以上のセルロースエステルインターポリマーを含む組成物と混合された1種若しくはそれ以上の治療薬を含んでなる経口医薬組成物であって、前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあり且つ前記セルロースエステルインターポリマーが、式:
【0132】
【化10】

【0133】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(ここでR6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含んでなる組成物を提供する。
【0134】
セルロースエステルインターポリマーを、少なくとも1種の治療薬を含む固体コアの腸溶コーティングとして使用する場合には、一実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは、約30〜約120の酸価を有するアニオン性C2〜C4セルロースエステルである。更なる実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは、約40〜約100の酸価を有するアニオン性C2セルロースエステルである。腸溶コーティングは、単一の好ましい酸化セルロースエステル又はセルロースエステルインターポリマーの混合物からなることができる。
【0135】
セルロースエステルインターポリマーがブレンドの1種又はそれ以上の成分である腸溶コーティング用のブレンドである場合には、一実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは、約30〜約120の酸価を有するアニオン性C2〜C4セルロースエステルである。更なる実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは、約40〜約100の酸価を有するアニオン性C2セルロースエステルである。このブレンドのその他の成分は、腸溶コーティングにおいて有用な1種又はそれ以上の任意の水溶性、pH感受性又は水不溶性ポリマーであることができる。有用な水溶性ポリマーの例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定するものではない。pH感受性ポリマーの例としては、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートが挙げられるが、これらに限定するものではない。有用な水不溶性ポリマーの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、又はセルロースアセテートブチレートが挙げられるが、これらに限定するものではない。当業者ならば、これらのブレンド成分の比が、個々の製剤及び治療薬の目的とする放出速度によって決まることがわかるであろう。このため、非常に広範囲のブレンド成分及び成分比が考えられる。
【0136】
腸溶コーティングにおいては、セルロースエステルインターポリマー又はそのブレンド及び任意の添加剤を、適当な溶剤又は溶剤混合物中に溶解させる。治療薬を含む固体コアには、当業者によく知られた多くの方法によって、例えば流動床又はサイドベント式パン(side vented pan)法によってこれらのセルロースエステルインターポリマーを被覆することができる。本発明における好ましい溶剤の例としては、アルコール、ケトン、エステル及び塩素化炭化水素が挙げられる。これらの溶剤の具体例としては、エタノール、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロベンゼンなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。任意成分として、これらの溶剤は約0.01〜約50重量%のH2Oを含むことができる。任意の添加剤としては、可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、酸化防止剤及びワックスが挙げられる。一般に使用される可塑剤としては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、トリアセチン、ポリエチレングリコールなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0137】
一実施態様において、本発明は、治療を必要とする哺乳動物を少なくとも1種の治療薬で治療する方法であって、セルロースエステルインターポリマーを含む組成物が被覆されたか又はセルロースエステルインターポリマーを含む組成物と混合された治療薬を含んでなる経口医薬組成物であって、前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあり且つ前記セルロースエステルインターポリマーが、式:
【0138】
【化11】

【0139】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(ここでR6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含む組成物を前記哺乳動物に投与することを含む治療方法を提供する。
【0140】
セルロースエステルインターポリマーを固体コアからの治療薬の放出速度調整剤として使用する場合には、好ましいセルロースエステルインターポリマーは、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C8セルロースエステルである。最も好ましいセルロースエステルインターポリマーは約40〜約120の酸価を有するアニオン性C2〜C4セルロースエステルである。放出速度調整剤としては、調整剤は単一の好ましい酸化セルロースエステル又はセルロースエステルインターポリマーの混合物であることができる。
【0141】
セルロースエステルインターポリマーは、当業者によく知られた多くの方法によって、治療薬と共に固体コア中に混和することができる。固体コアは、1種又はそれ以上の酸化セルロースエステル、医薬として許容され得る担体、及び治療有効量の治療薬を含む。場合によっては、フィルムコーティングが固体コアを取り囲む。これらの固体コアは、一例としては、チュアブルバー、カプセル、繊維、フィルム、ゲル、顆粒、チュウインガム、ペレット、粉末、錠剤、スティック、ストリップ及びウエハースの形態であることができるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
対象投与経路としては、経口投与又は口腔投与が挙げられる。本発明の固体コア製剤は一般に、医薬として許容され得る担体又は希釈剤と共に投与し、それらの割合及び性質は、選択される治療薬の溶解度及び化学的性質、選択される剤形並びに標準的製薬技法によって決定される。固体経口剤型は、常用の賦形剤、例えば、ラクトース、スクロース、ステアリン酸マグネシウム、樹脂及び類似材料、矯味矯臭剤、着色剤、緩衝剤、保存料又は安定剤を含むことができる。
【0143】
本明細書中で使用する「放出速度調整剤(release rate modifier)」は、治療薬の放出速度を調整するのに役立つセルロースエステルインターポリマーを意味する。放出速度調整剤は、治療薬の放出の制御を補助するものであり、製剤中の他の成分と協力して、治療薬の遅延送達、持続送達、時限送達、pH依存的送達、標的送達又は更なる制御送達を実現できる。従って、更なる実施態様において、本発明は、セルロースエステルインターポリマーが治療薬の普通の放出速度プロファイルを調整する方法を提供する。これに関連して、所定の治療薬が吸収される胃腸管の箇所が調整されるであろう。
【0144】
これに関連して、本発明者らは、セルロースエステルインターポリマーと共に固体コア中にある種の溶解増強剤を含めることは、治療薬の溶解度及び経口バイオアベイラビリティの増大の実現に役立つことができると予想する。溶解増強剤は、治療薬の水溶性の増大を助ける任意の薬剤であることができる。溶解増強剤は、酸化セルロースエステル放出調整剤及び治療薬と共に物理的混合物として混和できる。或いは、場合によっては、溶解増強剤及び治療薬を、酸化セルロースエステル放出調整剤と共に固体コア中に複合体又は小胞として混和することができる。溶解増強剤の例としては、水溶性シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、及びポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドブロックコポリマーが挙げられる。好ましいシクロデキストリン誘導体としては、ヒドロキシブテニルシクロデキストリン{米国特許第6,479,467号(引用することによって本明細書中に組み入れる)}及びスルホヒドロキシブテニルシクロデキストリン{米国特許第6,610,671号(引用することによって本明細書中に組み入れる)}が挙げられる。好ましいポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドブロックコポリマーは、BASF Corporationから商品名Pluronicsとして入手できる。
【0145】
詳細には、本発明の医薬組成物は、水溶性CD又はCD誘導体を含むことができる。CD又はCD誘導体は、α、β若しくはγ−シクロデキストリン(これらに限定するものではない)を含む任意の環サイズを有するCDであるか、又はそれから誘導される。いくつかの実施態様においては、ヒドロキシブテニルシクロデキストリンは、ヒドロキシブテニル−α、β又はγ−シクロデキストリンである。また、いくつかの実施態様においては、ヒドロキシブテニルシクロデキストリン誘導体は、スルホン化ヒドロキシブテニル−α、β又はγ−シクロデキストリンである。また、いくつかの実施態様においては、ヒドロキシブテニルシクロデキストリンは、ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンであり、ヒドロキシブテニルシクロデキストリン誘導体はスルホン化ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンである。
【0146】
いくつかの実施態様において、ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンは、約1〜約12のモル置換(MS(MSは、CDに結合した置換基の総数である))を有する。いくつかの実施態様において、ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンは、約3〜約10のMSを有するヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンである。いくつかの実施態様において、ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンは、水溶性であり、約4〜約7のMSを有する。いくつかの実施態様において、ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンは、水溶性であり、約4.5〜約5.5のMSを有する。いくつかの実施態様において、ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンは、水溶性であり、約5のMSを有する。
【0147】
いくつかの実施態様において、ヒドロキシブテニルシクロデキストリン誘導体は、スルホン化ヒドロキシブテニル−α、β又はγ−シクロデキストリンである。いくつかの実施態様において、スルホン化ヒドロキシブテニルシクロデキストリンは、少なくとも1個のヒドロキシブチルスルホネート置換基を含むスルホン化ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンである。いくつかの実施態様において、スルホン化ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンは、約0.02〜約7のヒドロキシブチルスルホネートのMSを有する。いくつかの実施態様において、ヒドロキシブテニル−β−シクロデキストリンは、約0.1〜約2のヒドロキシブチルスルホネートのMSを有する。スルホン化ヒドロキシブテニル−α、β又はγ−シクロデキストリンの場合には、当業者は、これらのシクロデキストリンエーテルがヒドロキシブテニル置換基とヒドロキシブチルスルホネート置換基を両方含むことがわかるであろう。この場合には、総MSは、ヒドロキシブテニルMSとヒドロキシブチルスルホネートの合計によって示される。いくつかの実施態様において、総MSは、約0.02〜約12である。いくつかの実施態様において、少なくとも1個のヒドロキシブチルスルホネート置換基を含むシクロデキストリンエーテルは場合よっては更に、更なるアルキル、スルフィネート又はジスルホネート置換基を含む。
【0148】
場合によっては、セルロースエステルインターポリマーは、固体コア中の1種又はそれ以上の治療薬の溶解調整剤として働くことができる。
【0149】
一実施態様において、セルロースエステルインターポリマーは、治療薬の溶解調整剤として働き、好ましいセルロースエステルインターポリマーは、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルである。より好ましいセルロースエステルインターポリマーは、約40〜約120の酸価を有する1種又はそれ以上のアニオン性C2〜C8セルロースエステルである。より好ましいセルロースエステルインターポリマーは、約40〜約120の酸価を有する1種又はそれ以上のアニオン性C2〜C4セルロースエステルである。セルロースエステルインターポリマーが固体コア中で溶解調整剤として働く場合には、酸化セルロースエステル及び治療薬は固体コア中で物理的混合物として合することができる。
【0150】
或いは、セルロースエステルインターポリマーが固体コア中で溶解調整剤として働く場合には、治療薬及び酸化セルロースエステルを合してブレンド、ミクロスフェア、ナノスフェア又はヒドロゲルを形成してから、固体コア中に混和することができる。このブレンドは、最初にセルロースエステルインターポリマーを適当な溶媒中に溶解し、そして治療薬を同一の又は第2の溶媒中に溶解することによって形成できる。次に、当業者に知られた方法によって、2つの溶液を混合してから溶媒を除去することによって、ブレンドを形成する。ミクロスフェア、ナノスフェア又はヒドロゲルは、乳化−界面架橋法によって又は反対の極性に帯電している巨大分子間における錯形成によって形成できる。反対の極性に帯電している巨大分子間における錯形成の場合には、セルロースエステルインターポリマーにとって補完的な帯電巨大分子は、補完的帯電セルロースエステルインターポリマーであることができる。例えば、約40〜約120の酸価を有するアニオン性C2〜C12セルロースエステルは、治療薬の存在下で本発明のカチオン性C2〜C12セルロースエステルと錯形成して、所望のミクロスフェア又はナノスフェアを形成できる。両性イオン性C2〜C12セルロースエステルの場合には、所望のミクロスフェア又はナノスフェアの形成をもたらす錯形成は、内部イオン相互作用によって起こることができる。補完的帯電巨大分子は酸化セルロースエステルである必要はない。アニオン性セルロースエステルインターポリマーの補完的帯電巨大分子の例は、約40%〜約60%のN−アセチル基を有するキトサン及びその誘導体であるが、これに限定するものではない。カチオン性セルロースエステルインターポリマーの補完的帯電巨大分子の例は、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、キサンタン、ヒアルロン酸及びそれらの誘導体であるが、これらに限定するものではない。必要な場合には、ミクロスフェア、ナノスフェア又はヒドロゲルは、噴霧乾燥又は凍結乾燥のような、当業者に知られた方法によって粉末として単離することができる。
【0151】
本明細書中で使用する「溶解調整剤(solubility modifier)」は、それを用いなければ水に難溶性(poorly water−soluble)である治療薬の溶解度を調整する働きをするセルロースエステルインターポリマーを意味する。場合によっては、セルロースエステルインターポリマーは、治療薬の放出速度調整剤及び溶解調整剤のいずれとしても働くことができる。従って、更なる実施態様において、本発明は、少なくとも1種の治療薬の溶解度を増大し、それによってその経口バイオアベイラビリティを増加する方法を提供する。
【0152】
本発明の別の側面において、固体コア成分として混和したセルロースエステルインターポリマーは、生体接着剤(bioadhesive)の役割を果たすことができる。生体接着剤は、粘膜又は皮膚組織のような生体表面に接着する又は生体表面と強く相互作用する材料と定義する。正味の効果は、治療薬を局在化させ、それによってそのバイオアベイラビリティを増大させることである。好ましいセルロースエステルインターポリマーは、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルである。より好ましいのは、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C8セルロースエステルである。
【0153】
薬物送達組成物に関しては、治療薬とは、経口又は口腔投与時に、必要とされる又は目的とする治療反応を患者から引き出すことができる任意の生物活性剤を意味する。患者は、任意の生きているヒト又は動物である。治療薬の例としては以下のものが挙げられる。抗新生物薬、抗ウイルス剤、抗糖尿病薬、抗うつ薬、抗真菌剤、抗細菌剤、片頭痛薬、抗原虫剤、アンチセンス剤、アンドロゲン、エストロゲン、鎮静剤、セロトニン拮抗薬、麻酔拮抗薬、麻酔作用薬、タンパク質、ペプチド、ステロイド、精神安定剤、抗精神病薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、抗狭心症薬、抗関節炎薬、抗ぜんそく薬、抗糖尿病薬、抗下痢薬、抗痙攣薬、抗痛風薬、抗ヒスタミン薬、かゆみ止め薬、抗凝血剤、催吐薬、制吐薬、鎮痙薬、食欲抑制剤、神経刺激性物質、神経伝達物質作用薬、拮抗薬、受容体遮断薬及び再摂取調節剤、β−アドレナリン遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジスルファリン(disulfarim)及びジスルファリン様薬、筋肉弛緩剤、鎮痛剤、解熱剤、興奮誘発剤、抗コリンエステラーゼ薬、副交感神経興奮薬、ホルモン、抗血栓剤、血栓溶解薬、免疫グロブリン、免疫抑制剤、ホルモン作用薬/拮抗薬、ビタミン類、抗菌剤、抗新生物薬、制酸剤、消化薬、緩下薬、瀉下薬、防腐薬、利尿薬、消毒薬、殺真菌剤、外部寄生虫撲滅薬、抗寄生虫薬、重金属、重金属拮抗薬、キレート化剤、気体及び蒸気、アルカロイド、塩、イオン、オータコイド、ジギタリス、強心配糖体、抗不整脈薬、抗高血圧薬、血管拡張薬、血管収縮薬、抗ムスカリン薬、神経説刺激薬、神経節遮断薬、神経筋遮断薬、アドレナリン作用性神経阻害剤、抗酸化剤、化粧品、抗炎症薬、創部ケア製品、抗腫瘍薬、抗血管新生薬、麻酔薬、抗原、創傷治療薬、植物エキス、成長因子、皮膚軟化剤、保湿剤、拒絶反応/抗拒絶反応剤、殺精子剤、コンディショナー、抗生物質、コレステロール降下剤、パーキンソン病若しくはアルツハイマー病治療薬、ビタミン類/栄養因子、鎮咳薬、ヒスタミン遮断薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、又は前記のいずれかの医薬として許容され得る塩若しくは代謝産物。いくつかの実施態様において、医薬として活性のある薬物は、疎水性で、水難溶性の薬物である。
【0154】
治療薬の非限定的例としては、以下のものの経口で活性のある形態が挙げられる。アバカビル、アカルボーズ、アセブトロール、アセタゾールアミド、アセトヘキサミド、アクリバスチン、アクトレチン(acutretin)、アシクロビル、アラトロフロキサシン、アルベンタゾール、アルブテロール、アルクロフェナック、アレンドロネート、アロプリノール、アロキシプリン、アルプラゾラム、アルプレノロール、アルプロスタジル、アマンタジン、アミロリド、アミノグルテチミド、アミオダロン、アミトリプチリン、アムロジピン、アモジアキン、アモキサピン、アモキサピン、アンフェタミン、アンフォテリシン、アムプレナビル、アムリノン、アムサクリン、硝酸アミル、アミロバルビタール、アミロバルビトン、アナストロゾール、アルゾキシフェン、アスピリン、アステミゾール、アテノロール、アトルバスタチン、アトバクオン、アトロピン、オーラノフィン、アザプロパゾン、アザチオプリン、アゼラスチン、アジスロマイシン、バクロフェン、バルビタール、バルビトン、ベカプレルミン、ベクラミド、ベクロメタソン、ベンドロフルアジド、ベネタミン、ベネタミンペニシリン、ベネゼプリル、ベニジピン、ベノリレート、ベンタゼパム、ベンズヘキソール、ベンズニダゾール、ベンゾナテート、ベンズトロピン、ベフェニウムヒドロキシナフトエート、ベタメタゾン、ベキサロテン、ベザフィブラート、ビカルタミド、ビフォナゾール、ビペリデン、ビサコジル、ビサントレン、ウシ成長ホルモン、ブロマゼパム、ブロムフェナク、ブロモクリピチン、メシル酸ブロモクリピチン、ブロモペリドール、ブロモフェニラミン、ブロチゾラム、ブデソニド、ブメタニド、ブプロピオン、ブスルファン、ブテナフィン、ブトバルビタール、ブトバルビトン、ブトコナゾール、硝酸ブトコナゾール、カルシフェジオール、カルシプロチエン、カルシトニン、カルシトリオール、カンベンダゾール、カミダゾール、カンプトセカン(camptothecan)、カンプトセシン、カンデサルタン、カペシタビン、カプサシン、カプサイシン、カプトプリル、カルバマゼピン、カルビマゾール、カルビノキサミン、カルブロマール、カロチン類、セファゾリン、セフォキシチンナトリウム、セレコキシブ、セファドリン、セファレキシン、セリビスタチン、セトリジン、クロフェニラミン、クロフェニサミン、クロプログアニル、クロラムブシル、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロロキン、クロロチアジド、クロルプロマジン、クロルプロパミド、クロルプロチオセン、クロルプロチキセン、クロルタリドン、コレカルシフェロール、シロスタゾール、シメチジン、シンナリジン、シノキサシン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、シトリジン、クラリスロマシン、クレマスチン、フマル酸クレマスチン、クレミゾール、クレンブテロール、クリノフィブレート、クリオキノール、クロバザム、クロファジミン、クロフィブレート、クロミフェン、クロミプラミン、クロナゼパム、クロピドロゲル、クロチアゼパム、クロトリマゾール、クロキサシリン、クロザピン、コデイン、抱合卵胞ホルモン、酢酸コルチゾン、酢酸コルチゾン、クロマリンナトリウム、クロモグリケート、クロモリン、シクリジン、シクロスポリン、シプロヘプタジン、デカルバジン、ダナゾール、ダントロレン、ダロジピン、デコキネート、デラビルジン、デメクロサイクリン、デスオキシメタゾン、デキサンフェタミン、デキサナビノール、デクスクロフェニラミン、デクスフェンフルラミン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、ジアゼパム、ジアゾキシド、ジクロロフェン、ジクロフェナク、ジクロキサシリン、ジクマロール(dicoumarol)、ジクマロール(dicumarol)、ジダノシン、ジエチルプロピオン、ジフルニサル、ジギトキシン、ジゴキシン、ジヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエルゴタミエン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロタキステロール、ジヨードヒドロキシキノリン、ジリタゼム、ジロキサニドフロエート、ジメンヒドリネート、ジニトルミド、ジフェンヒドラミン、ジフェノオキシレート、ジフェニルイミダゾール、ジフェニルピラリン、ジピリダモール、ジリスロマイシン、ジソピラミド、ジバルプロエン、ドセタキセル、ドコナゾール、ドキュセート、ドラセトロン、ドンペリドン、ドネペジル、ドキセルカルシフェロール、ドキサゾシン、ドキシサイクリン、ドキソルビシン、ドロロキシフェン、ドロナビノール、ドロペリドール、デュタステライド、エコナゾール、硝酸エコナゾール、エディトロネート、エファビレンツ、エラナプリル、エリプチシン、エナラプリル、エンケファリン、エノキサシン、エノキシモン、エンロフロキサシン、エパルレステート、エペリゾン、エフェドリン、エポサルタン、エポサルタンロサルタン、エルゴカルシフェロール、エルゴタミン、エリスロマイシン、エリスロポエチン、必須脂肪酸、エストラムスチン、エタクリン酸、エタンブトール、エチナメート、エチニロエストラジオール(ethinyloestradiol)、エチオナミド、エトプロパジン、エトトイン、エトドラク、エトペリドン、エトポシド、エトレチネート、エキセメスタン、ファドロゾール、ファムシクロビル、ファモチジン、フェルバメート、フェロジピン、フェンベンダゾール、フェンブフェン、フェンフルラミン、フェノフィブレート、フェノルクロパム、フェノルドパム、フェノプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、フェンタニル、フェンチコナゾール、フェキソフェナジン、フィナステライド、フレカイニド、フルコナゾール、フルコルトロン、フルシトシン、フルドロコルチゾン、フルナニゾン、フルナリジン、フルニソリド、フルニトラゼパム、フルプロマジン、フルオキセチン、フルオキシミステロン、デカン酸フルペンチキソール(flupenthixol)、フルペンチキソール(flupentixol)、フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、フルラゼパム、フルルビプロフェン、フルリスロマイシン、フルチカゾン、フルバスタチン、フォルメスタン、フォスカーネット、フォシノプリル、フォスフェニトイン、フロバトリプタン、フルセミド、フルマジリン、フラゾリドン、フロセミド、フルゾリドン、ガバペンチン、ガンシクロビル、ゲムフィブロジル、ゲンタマイシン、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、グルカゴン、グリベンクラミド、グリブリド、ニトログリセリン、グリムピライド(glymepiride)、グリムプライド(glymepride)、グラニセトロン、顆粒球刺激因子、グレパフロキサシン、グリセオフルビン、ゴセレリン、グアナベンズ、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロコルチゾン、ヒヨスチアミン、イブフェナク、イブプロフェン、イミペネム、イダルビシン、インディナビル、インディビル、インドメタシン、インスリン、インターフェロン、ペグインターフェロン、インターロイキン−3、イルベサルタン、イリノテカン、イソコナゾール、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、イソトレチノイン、イソキサゾール、イスラジピン、イトラコナゾール、イベルメクチン、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトロラク、ケトチフェン、ラベタロール、ラミブジン、ラモトリジン、ラナトシドC、ラノスプラゾール、レフルノミド、レトロゾール、レボフロキサシン、レボチロキシン、リシノプリル、リネゾリド、ロンバゾール、ロメフロキサシン、ロムスチン、ロペラミド、ロピナビル、ロラタジン、ロラゼパム、ロレフロキサシン、ロルメタゼパム、ロサルタン、ロトリミン、ロバスタチン、L−トリロキシン、リスリド、マレイン酸リスリド、マプロチリン、マジンドール、メベンダゾール、メクロフェナム酸、メクロジン、メダゼパム、メジゴキシン、酢酸メドロキシプロゲステロン、メフェナム酸、メフロキン、酢酸メゲステロール、メロニカム、メロキシカム、メルファラン、メパクリン、臭化メペンゾレート、メプロバメート、メプタジノール、メルカプトプリン、メサラジン、メソリダジン、メソリジアジン、メストラノール、メトホルミン、メタドン、メタクアロン、メトイン、メトトレキセート、メトキサレン、メトスクシミド、メチルフェニデート、メチルフェノバルビタール、メチルフェノバルビトン、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メチセルギド、マレイン酸メチセルギド、メトクロプラミド、メトラゾン、メトプロロール、メトロニダゾール、ミアンセリン、ミコナゾール、ミダゾラム、ミグリトール、ミノキシジル、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モフェチル、モリンドン、モンテルカスト、モルフィン、モルトリプチリン、モキシフロキサシン、ミコフェノレート、ナブメトン、ナドロール、ナルブフィン、ナリジクス酸、ナプロキセン、ナラトリプタン、ナタマイシン、ネドクロミルナトリウム、ネファゾドン、ネルフィナビル、ネルテポルフィン、ニュートンチン、ネビラピン、ニカルジピン、ニコチン、ニクマロン、ニフェジピン、ニルタミド、ニメスリド、ニモジピン、ニモラゾール、ニソルジピン、ニトラゼパム、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ニザチジン、非必須脂肪酸、ノルエチステロン、ノルフロキサシン、ノルゲストレル、ノルトリプチリンHCl、ナイスタチン、エストラジオール、オフロキサシン、オランザピン、オメプラゾール、オンダンセトロン、オプレルベキン、オミダゾール、オルコナゾール、オスペミフェン、オキサシリン、オキサムニキン、オキサンテル、エンボン酸オクサンテル、オキサプロジン、オキサトミド、オキサゼパム、オキサカルバゼピン、オクスフェンダゾール、オキサコナゾール、オクスメチジン、オクスプレノロール、オキシブチニン、オキシフェンブタゾン、オキシフェンシルシミン(oxyphencylcimine)、パクリタキセル、パミドロネート、パラメタジオン、パルコナゾール、パリカルシトール、パロキセチン、ペニシリン類、四硝酸ペンタエリスリトール、ペルタゾシン、ペントバルビタール、ペントバルビトン、ペントキシフィリン、ペルクロロペラジン、ペルフロキサシン、ペリシクロビル、ペルフェナジン、ペルフェナジンピモジド、フェナセミド、フェンベンザミン、フェニンジオン、フェニラミン、フェノバルビタール、フェノバルビトン、フェノキシベンザミン、フェンスキシミド、フェンテルミン、フェニルアラニン、フェニルブタゾン、フェニトイン、フィゾスチグミン、フィトノジオン、ピモジド、ピンドロール、ピオグリタゾン、ピロキシカム、ピゾチフェン、マレイン酸ピゾチフェン、ポサコナゾール、プラミペキソール(pramipexole)、プランルカスト、プラバスタチン、プラジカンテル、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレガバリン、プリミドン、プロベネシド、プロブコール、プロカルバジン、プロクロルペラジン、プロゲステロン、プログアニル、プロポフォール、プロプラノロール、プロピルチオウラシル、プソイドエフェドリン、ピランテル、エンボン酸ピランテル、ピリドスチグミン、ピリメタミン、クエチアピン、キナプリル、キニジン、キニン、ラベプラゾール、ラロキシフェン、ラニチジン、ラブコナゾール、組み換え型ヒト成長ホルモン、レフォコキシブ、レミフェンタニル、レパグリニド、レセルピン、レシドロネート、レチノイド、リコベンダゾール、リファブチン(rifabutin)、リファンピシン、リファンピン、リファペンチン、リマンタジン、リメキソロン、リスペロドン、リトナビル、リザトリプタン、安息香酸リザトリプタン、ロピニロール、ロシグリタゾン、ロキサチジン、ロキシスロマイシン、サルブタモール、サーモン・カルシトニン(sCT)、サキナビル、セレギリン、セルチンドール、セルトラリン、シブトラミン、シルデナフィル、シムバスタチン、シロリムス、セファゾリンナトリウム、ソマトスタチン、スパルフロキサシン、スピラマイシン類、スピロノラクトン、スタノゾロール、スタブジン、スタブエリン、スチボエストロール、スルコナゾール、スルファベンズアミド(sulfabenzamide)、スルフ
ァセタミド(sulfacetamide)、スルファジアジン(sulfadiazine)、スルファドキシン(sulfadoxine)、スルファフラゾール(sulfafurazole)、スルファルネラジン(sulfarnerazine)、スルファメトキサゾール(sulfamethoxazole)、スルファピリジン(sulfapyridine)、スルファサラジン(sulfasalazine)、スリンダク、スルファベンズアミド(sulphabenzamide)、スルファセタミド(sulphacetamide)、スルファジアジン(sulphadiazine)、スルファドキシン(sulphadoxine)、スルファフラゾール(sulphafurazole)、スルファメラジン(sulphamerazine)、スルファメトキサゾール(sulphamethoxazole)、スルファピリジン(sulphapyridine)、スルファサラジン(sulphasalazine)、スルフィンピラゾン、スルピリド、スルチアム、スマトリプタン、タクリン、タクロリムス、タモキシフェン、タムスロシン、タルグレチン、タザロテン、テルミサルタン、テマゼパム、テニポシド、テラゾシン、テルビナフィンHCl、テルブタリン、硫酸テルブタリン、テルコナゾール、テレナジン、テルフェナジン、テストラクトン、テストステロン、テトラサイクリン、テトラヒドロカナビノール、テトラミゾール、チアベンダゾール、チオグアニン、チオリダジン、チアガビン、チボロン、チクリドピン、チクロピジン、チルドロネート、チモロール、チニダゾール、チオコナゾール、チロフィブラン、チザニジン、トラザミド、トルブタミド、トルカポン、トルメチン、トルテロジン、トピラメート、トポテカン、トレミフェン、トラマドール、トラゾドン、トレチノイン、トリアムシノロン、トリアムテレン、トリアゾラム、トリフルオペラジン、トリメトプリム、トリミプラミン、トログリタゾン、トロメタミン、トロピカミド、トロバフロキサシン、ツブラゾール(tubulazole)、腫瘍壊死因子、ウンデセン酸、ウルソデオキシコール酸、バラシルコビル(valacylcovir)、バルコナゾール、バルプロ酸、バルサルタン、バンコマイシン、バソプレシン、ベンラファクシンHCl、ベルテポルフィン、ビガバトリン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンE及びビタミンK、ビタミンK5、ビタミンK6、ビタミンK7、ビタミンK−S(II)、ボリコナゾール、ザフィルルカスト、ジレウトン、ジプラシドン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム及びゾピクロン。
【0155】
場合によっては、本発明のセルロースエステルインターポリマーは、治療薬の役割を果たすことができると考えられる。詳細には、高濃度のイオン電荷の局在化のために、セルロースエステルインターポリマーは、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス又は性感染する細菌感染の伝染率低下又は伝染防止において、抗ヒト免疫不全ウイルス量又は抗ヘルペスウイルス量又は抗細菌量の酸化セルロースエステルをヒトに投与することによって有効であることができると考えられる。抗ウイルス又は抗細菌酸化セルロースエステルは、単独で、又は医薬として許容され得る担体若しくは希釈剤と組合せて使用できる。この目的で現在使用されている硫酸デキストラン又はセルロースアセテートフタレート(J.Experimental Med.2000,192,1491〜1500;国際出願公開第01/05377 A1号、BMC Infectious Diseases,2002、2:6;BMC Infectious Diseases,2001,1:17; Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2000,44,3199〜3202;米国特許第6,165,493号;Antimicrobial Agents and Chemotherapy,1990、34,1991〜1995)とは異なり、本発明のセルロースエステルインターポリマーのイオン電荷は、炭素−炭素結合によって多糖類の主鎖に供給結合しており、多糖類誘導体を不活性にするであろう加水分解を受けやすくはない。この利点のため、セルロースエステルインターポリマーは、長い保存寿命及び使用寿命を有する安定製剤へとより簡便に製剤化できる。好ましいセルロースエステルインターポリマーは、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルである。より好ましいセルロースエステルインターポリマーは、約30〜約200の酸価を有するC2〜C8セルロースエステルである。最も好ましいアニオン性セルロースエステルは、約60〜約150の酸価を有する。
【0156】
本発明はまた、本発明のセルロースエステルインターポリマーを含む熱可塑性相溶化剤に関する。ポリマーのうち1種がセルロースエステルである2種又はそれ以上のポリマーのブレンド中に混和する場合には、酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤は、イオン相互作用によって有利なエンタルピー効果を提供することによって2種のポリマー間の混和性を改善することが予想される。同様に、酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤は、イオン相互作用によって有利なエンタルピー効果を提供することによってセルロースエステル天然繊維複合材料中における界面接着を改善すると予想される、更に、場合によっては、酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤は、ブレンド又は複合材料の生分解速度を増加させることが予想される。
【0157】
熱可塑性相溶化剤としては、好ましいセルロースエステルインターポリマーは、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルである。より好ましいセルロースエステルインターポリマーは、約40〜約120の酸価を有するC2〜C4セルロースエステルである。最も好ましいアニオン性セルロースエステルは約40〜約90の酸価を有し、置換基型はポリマーブレンド又は複合材料中の天然セルロースエステル成分と適合する。
【0158】
アニオン性セルロースエステルは、酸型で使用することもできるし、アニオン性官能基が中和された場合には塩で使用することもできる。一実施態様において、アニオン性セルロースエステルは、NaOH、KOH、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(OAc)2、Mg(OH)2、MgCO3又はMg(OAc)2から選ばれた塩基で中和する。別の実施態様においては、アニオン性セルロースエステルは、中和されており、ブレンド又は複合材料中にCa又はMg塩として混和する。
【0159】
本発明のセルロースエステルインターポリマーは、ブレンドにおける相溶性及び複合材料における界面接着を改善できると予想される。一実施態様において、酸化セルロースエステルの量は、混合物の総重量に基づき、約1〜約15重量%である。別の実施態様において、酸化セルロースエステルの量は、混合物の総重量に基づき、約2〜約5重量%である。
【0160】
酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤と共に使用できる中性セルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートのような二次セルロースエステルである。これらのセルロースエステルは、Eastman Chemical Company,Inc.,Kingsport,TN,U.S.A.から市販されている。
【0161】
一実施態様において、本発明において有用な中性セルロースエステルは、GPCによって測定されたMwが約5,000〜約400,000である。別の実施態様において、MWは約100,000〜約300,000である。更なる実施態様において、Mwは約125,000〜約250,000である。一実施態様において、本発明において有用な中性セルロースエステルのDSは、約0.7〜約3.0である。別の実施態様において、DSは約1.7〜約2.8である。更なる実施態様において、DSは約1.9〜約2.6である。好ましいMw及びDSは、セルロースエステルを用いる用途によって異なる。いくつかの場合には、各アシル置換基のDSは、セルロース混合エステルの性質に影響を与える。セルロースのエステルの例としては、セルローストリアセテート(CTA)、セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)などが挙げられる。
【0162】
酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤を含むポリマーブレンド中の第2のポリマー成分はポリエステル、ポリカーボネート、セルロースエステル、ポリアルカノエート、ポリアミド、ポリエステルアミドから選ばれる。
【0163】
酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤及び中性セルロースエステルは、天然繊維複合材料中に混和する前は、粉末、ビーズ、ペレット又は繊維の形態であることができる。
最も好ましいのは、酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤及び中性セルロースエステルが繊維の形態である場合である。
【0164】
多くの場合、酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤及び中性セルロースエステルは、繊維の形態で複合材料への混和前に又は複合材料の形成の間に可塑化する。好ましい可塑剤の例としては以下のものが挙げられる。フタル酸エステル(例えばフタル酸ジエチル又はジブチル)、グリセロール、トリアセチン、クエン酸エステル(例えばクエン酸トリエチル)、脂肪族ジエステル、(例えばアジピン酸ジオクチル)、燐酸エステル(例えば燐酸トリフェニル)、低分子量ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのエステル及び炭水化物又はポリオールエステル{2003年1月10日に出願された米国出願第10/340,012号及び米国特許出願公開第2003/0171458号(これらを引用することによって本明細書中に組み入れる)を参照}。最も好ましい可塑剤は炭水化物又はポリオールエステルである。適切な可塑剤及び可塑剤量の選択は、可塑剤とセルロースエステルとの相溶性及び最終製品に求められる性質に基づく。これに関連して、各可塑剤の相溶性は各セルロースエステルによって異なることに留意するのが重要である。例えばアジピン酸ジオクチルは、セルロースアセテートとの相溶性は悪いが、ほとんどのセルロースアセテートブチレートとの相溶性は良好である。
【0165】
複合構造の天然繊維は大麻、サイザル麻、亜麻、ケナフ麻、綿、アバカ、黄麻、カポック、パピルス、カラムシ、ココナッツ(コイア)、麦わら、稲わら、広葉樹材パルプ、針葉樹材パルプ及び木粉を含むのが好ましい。より好ましくは、天然セルロース繊維は大麻、サイザル麻、亜麻、ケナフ、綿、黄麻及びコイアからなる群から選ばれる。本発明の天然セルロース繊維成分の適当な繊維長は0.01〜10.2cmである。
【0166】
複合構造は少なくとも約50重量%の天然繊維を含んでなるのが好ましい。より好ましいのは、天然繊維が約60〜約75重量%であり且つ残りが酸化セルロースエステル熱可塑性相溶化剤及び中性セルロースエステルを含んでなる場合である。
【0167】
当業者ならば、最も好ましい組成物、複合材料の好ましい形成方法及び好ましい加工条件が、対象とする用途及び求められる物理的性質によって異なることがわかる。このため、広範な組成範囲及び加工ウインドウが考えられる。
【0168】
本発明はまた、パーソナルケア製剤における被覆形成剤、増粘剤、レオロジー調整剤、湿潤剤及び分散剤としての本発明のセルロースエステルインターポリマーの使用に関する。パーソナルケア製剤の例としては、ヘアケア、マニキュア、スキングロス及びメークアップ、リップスティック及びリップグロス、デオドラント、マスカラ、並びにアイライナー製剤が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0169】
パーソナルケア組成物において、好ましいセルロースエステルインターポリマーはアニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C12セルロースエステルである。より好ましいセルロースエステルインターポリマーはアニオン性、カチオン性又は両性イオン性C2〜C4セルロースエステルである。より好ましい酸化セルロースエステルは酸価が約40〜約120のアニオン性C2〜C4セルロースエステルである。当業者ならば、最も好ましい酸化セルロースエステルが個々のパーソナルケア製剤及び目的用途によって決定されることがわかるであろう。
【0170】
多くのパーソナルケア製剤においては、典型的には、好ましいセルロースエステルインターポリマーのカルボキシル基の一部又は全てを中和して、分散液の溶解度又は透明度を増加させ、連続フィルムを形成する。中和は、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム又はそれらの組合せを用いて行うことができる。有機塩基もまた使用でき、その例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール(AMP)、モノイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン及びそれらの組合せが挙げられる。
【0171】
中和度(塩基で中和される酸基の%)は、パーソナルケア製剤中の他の成分並びにパーソナルケア製剤の目的とする機能及び性能特性によって異なる。一般に、中和度は、約20〜100%である。好ましい中和は約40〜90%であり、最も好ましいのは約50〜80%である。
【0172】
全てではないとしても多くのパーソナルケア製剤が、パーソナルケア製剤の性能を改善及び増強するために、他の樹脂及び添加剤を含む。各添加剤の好ましい量は個々の用途に非常に左右され、このため非常に広範な範囲が予想される。
【0173】
本発明のセルロースエステルインターポリマーを含むパーソナルケア製剤に含ませることができる樹脂の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。硝酸セルロース、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)のエチル、イソプロピル若しくはn−ブチルエステル、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテート、ビニルピロリドンとメタクリル酸メチルとのコポリマー、ビニルピロリドンとジメチルアミノプロピルメタクリルアミドとのコポリマー、メタクリレート/メタクリル酸コポリマー、ポリ(エチルアクリレート/アクリル酸/N−tert−ブチルアクリルアミド)、PVP/エチルメタクリレート/メタクリル酸ターポリマー、PVP/ビニルカプロラクタム/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドターポリマー、ポリ(ビニルアセテート/クロトン酸)、ビニルアセテート/クロトネート/ビニルネオデカーエートコポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、PVAとクロトン酸とのコポリマー、PVAと無水マレイン酸とのコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、スルホポリエステル及びそれらの混合物。
【0174】
分散剤として働く本発明のセルロースエステルインターポリマーの有効性のため、パーソナルケア組成物中の好ましいセルロースエステルインターポリマーと併用できる樹脂は、実質的に疎水性である。このような疎水性樹脂としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。中性セルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートブチレート、ワックス;シリコーン樹脂;フルオロカーボン樹脂;紫外線吸収剤;光開始剤;塩素化及び非塩素化ポリオレフィン;ヒドロキシ官能性樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル及びポリエーテル;アクリレート官能性樹脂、例えばアクリル化アクリル樹脂、アクリル化ポリエステル、アクリル化ポリエーテル、アクリル化ポリウレタン及びアクリル化エポキシ樹脂;アミン変性アクリル化アクリル樹脂、ポリエステル及びポリエーテル;不飽和ポリエステル;アリル官能性ポリマー;アミノプラスト樹脂など。
【0175】
添加剤の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。可塑剤、融合助剤、シリコーン樹脂、皮膚軟化剤、乳化剤、潤沢剤、浸透剤、例えば種々のラノリン化合物、タンパク質加水分解物、若しくは他のタンパク質誘導体、粘度増加及び低下剤、エチレン付加物及びポリオキシエチレンコレステロール、染料、色味剤及び他の着色剤、パーフューム若しくはフレグランス、保存剤、消泡剤、キレート化剤、ポリマー及び樹脂、コンディショナーなど。
【0176】
本発明のセルロースエステルインターポリマーを含むパーソナルケア製剤に含ませることができる添加剤のいくつかの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない。ポリシロキサンポリエーテルコポリマー、ポリシロキサンポリジメチルジメチルアンモニウムアセテートコポリマー、アセチル化ラノリンアルコール、ラウリルジメチルアミンオキシド、ステロールエステルのラノリン由来抽出物、ラノリンアルコール濃縮物、ラノリン脂肪酸のイソプロピルエステル、硫黄高含有アミノ酸濃縮物、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ステアロアミドプロピル=ジメチル=ミリスチルアセテート、ポリオール脂肪酸、脂肪族アミドアミン、グアーヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、セチル/ステアリルアルコール、ケラチン蛋白誘導体、イソステアロアミドプロピルジメチルアミン、ステアロアミドプロピルジメチルアミン、アミノ官能性シリコーン、エトキシル化(30)ヒマシ油、アセチル化ラノリンアルコール、ラノリンの脂肪族アルコールフラクション、鉱油及びラノリンアルコール混合物、ラノリンの高分子量エステル、N−ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、大豆ステロールのエチレンオキシド付加物、エトキシル化メチルグルコシドのステアリン酸エステル、ポリヒドロキシカルボン酸のナトリウム塩、ヒドロキシル化ラノリン、コカミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、コカミドプロピル=ジメチルアミンプロピオネート、コカミドプロピル=モルホリンラクテート、イソステアロアミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、イソステアロアミドプロピル=モルホリンラクテート、オレアミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、リノレアミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、ステアロアミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、エチレングリコールモノステアレート及びプロピレングリコール混合物、ステアロアミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、アセトアミドモノエタノールアミン、ラクトアミドモノエタノールアミン、ステアロアミドモノエタノールアミン、ベヘナルコニウムクロリド、ベへニルトリメチルアンモニウムメトスルフェート及びセテアリルアルコール混合物、セテアリルアルコール、牛脂イミダゾリナムメトスルフェート、混合エトキシル化及びプロポキシル化長鎖アルコール、ステアロアミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、オレアミンオキシド、ステアロアミドキシド、大豆エチルジアンモニウムエトスルフェート、リシノールアミドプロピル=エチルジモニウム=エトスルフェート、N−(3−イソステアロアミドプロピル)−N,N−ジメチルアミノグリコレート、N−(3−イソステアロアミドプロピル)−N,N−ジメチルアミノグルコネート、加水分解動物ケラチン、エチル加水分解動物ケラチン、ステアロアミドエチル=ジエチルアミン、コカミドプロピル=ジメチルアミン、ラウリンアミドプロピル=ジメチルアミン、オレアミドプロピル=ジメチルアミン、パルミタミドプロピル=ジメチルアミン、ステアロアミドプロピル=ジメチルアミンラクテート、アボカド油、アーモンド油、グレープシードオイル、ホホバ油、杏仁油、ゴマ油、ベニハナ油、小麦胚芽油、コカミドアミンラクテート、リシノレアミドアミンラクテート、ステアロアミドアミンラクテート、ステアロアミドモルホリンラクテート、イソステアロアミドアミンラクテート、イソステアロアミドモルホリンラクテート、小麦胚芽アミド=ジメチルアミンラクテート、小麦胚芽アミドプロピル=ジメチルアミンオキシド、二ナトリウム=イソステアロアミド=モノエタノールアミン=スルホスクシネート、二ナトリウム=オレアミドPEG−2スルホスクシネート、二ナトリウム=オレアミド=モノエタノールアミン=スルホスクシネート、二ナトリウム=リシノレイル=モノエタノールアミン=スルホスクシネート、二ナトリウム=小麦胚芽アミド=モノエタノールアミン=スルホスクシネート、二ナトリウム=小麦胚芽アミドPEG−2スルホスクシネート、ステアロアミドアミン、ステアロアミドモルホリン、イソステアロアミドアミン、イソステアロアミドモルホリン、ポリエチレングリコール及びジステアレート、合成珪酸カルシウム、イソステアリン酸アルコールアミド、加水分解動物タンパク質のエチルエステル、セチル及びステアリルアルコールとエトキシル化セチル又はステアリルアルコールとのブレンド、アミドアミン、ポリアミドアミン、プロポキシル化ラノリンアルコール、イソステアロアミドジエタノールアミン並びに加水分解コラーゲンタンパク質。
【0177】
可塑剤添加剤の例としては、グリコール、アジピン酸エステル、クエン酸エステル、フタル酸エステル、炭水化物又はポリオールエステル、エポキシ化植物油、グリセリン並びにポリマー可塑剤が挙げられるが、これらに限定するものではない。本発明に係るより好ましい可塑剤は、例えばジエチルヘキシルアジペート、フタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、n−ブチルベンジルフタレート、1,3−ブチレングリコール/アジピン酸ポリエステル、燐酸トリクレジル、安息香酸ベンジル、燐酸トリフェニル、ステアリン酸ブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、トリブチルアセチルシトレート、樟脳、エポキシ化大豆油、プロピレングリコールアジペート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(TXIB)、2−アミノ−2−メチルプロパノール、及びセバシン酸ジブチルである。他の可塑剤としては、Dimethiconeコポリオール、PEG−6カプリン酸/カプリル酸グリセリド、フェニルトメチコン、プロピレングリコール並びにジプロピレングリコールである。
【0178】
添加剤の他の例としては、乳化剤、例えばエトキシル化脂肪族アルコール及びエステル、エトキシル化グリセリド、ジメチコンコポリオールエステル、グリセリルエステル、水素添加脂肪族グリセリド、及び脂肪酸のナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。保存剤、例えばベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン及びイミダゾリジニル尿素も使用できる。使用できる粘度増加剤としては、1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、カルボマー、アクリレート/アルキルアクリレートクロスポリマー、長鎖脂肪酸のジエタノールアミド、脂肪族アルコール(例えばステアリルアルコール)、セルロースガム、塩化ナトリウム及び硫酸ナトリウムが挙げられる。使用できる粘度低下剤としては、例えばエチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール及びエトキシジグリコールが挙げられる。パーソナルケア製剤のpHは、pH調整剤、例えばクエン酸、コハク酸、水酸化ナトリウム及びトリエタノールアミンを用いて調整できる。パーソナルケア製剤に使用する着色剤は、例えばFood,Drug and Cosmetics(FD&C)又はDrug and Cosmetics(D&C)染料のいずれかである。漂白剤、例えば過酸化水素、過ホウ酸塩、過硫酸塩及び過炭酸塩も使用できる。香油も多くのパーソナルケア製品によく使用され、本発明でも使用できる。キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)も使用できる。
【0179】
本発明のパーソナルケア製剤に有用な溶媒は水、有機溶剤又はそれらの混合物であることができる。本発明の別の側面において、好ましい酸化セルロースエステルは、相溶性溶媒に溶解し、混和するための樹脂又は添加剤を添加し、酸化セルロースエステルを所定の中和度まで中和し、溶剤連続相から水性連続相に溶液を反転させる。この側面において、セルロースエステルインターポリマーはまた、パーソナルケア製剤中の分散剤の役割を果たしている。或いは、好ましい酸化セルロースエステルは、水、基材及び有機溶剤を含む溶液に直接添加して溶液を得ることができる。
【0180】
有機溶媒の例としては、アルコール、ケトン、アルキルエステル、ポリオール、エーテル、芳香族炭化水素及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましい有機溶媒の例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレンモノエチルエーテル、トルエン、キシレン及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0181】
本明細書中で使用する用語「インターポリマー」は、2種又はそれ以上の異なるモノマー単位を含んでなるポリマーを含む。インターポリマーは、コポリマー及びターポリマーを含む。更に、インターポリマーは、別のポリマー、例えばポリエチレングリコール(これに限定するものではない)にグラフトされたセルロースポリマーを含んでなるグラフトコポリマーを含む。
【0182】
本明細書中で使用する「セルロースポリマー上のカルボキシ基のランダム分布」は、C6カルボキシ基を有するアンヒドログルコース単位が一方又は両方位置する、C6カルボキシ基を有するアンヒドログルコース単位による確率が予測不可能なセルロースポリマーと定義する。
【0183】
本明細書中で使用する「C6カルボキシ基」は、アンヒドログルコース単位の6位が−CO2H基であって、−CO2Hが遊離酸、アルカリ土類金属の塩並びにアンモニウム及び置換アンモニウム塩を含むことを意味する。
【0184】
本明細書中で使用する「C6ホルミル基」は、アンヒドログルコース単位の6位が−C(O)H基であることを意味する。
【0185】
本明細書中で使用する「安定型のセルロースエステルインターポリマー」は、空気中加水分解に対して安定であり、単離可能であり、特性決定でき且つ純粋な化合物として貯蔵可能なものである。更に、これに関連して、一実施態様において、用語「安定(性)」は、それが単離でき且つ6ヶ月以下の期間貯蔵でき、アシル置換基の加水分解が5%未満であることを意味する。
【0186】
本明細書中で使用する「アミノ置換環状ニトロキシル誘導体」は、環員の1つとしてニトロキシル基を含み、ニトロキシル基にとってαのプロトンがない炭素環式環を有する化合物を意味し、アミノ置換基はニトロキシル基にとってα以外の、炭素環式環上の位置に位置する。炭素環式環の大きさは、アミノ置換環状ニトロキシル誘導体がセルロース又はセルロースエステルインターポリマーのアンヒドログルコース単位のC6位を酸化するように動作可能ならば特に制限されない。一実施態様において、炭素環式環は6個の原子を含む。別の実施態様において、炭素環式環は5個の原子を含む。アミノ基は、アミン又は置換アミンを含んでなることができ、置換基はアルキル基又はC2〜C12アシル基を含むことができる。別の実施態様において、アミノ置換環状ニトロキシル誘導体は、4−アミノ置換2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル誘導体である。別の実施態様において、アミノ置換環状ニトロキシル誘導体は、4−アミノ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。別の実施態様において、アミノ置換環状ニトロキシル誘導体は、4−(C1〜C4アシルアミド)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。別の実施態様において、アミノ置換環状ニトロキシル環状誘導体は4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。
【0187】
本明細書中で使用する、「アルコール酸化状態の」C2、C3及び/又はC6位を有するアンヒドログルコース単位は、アルコール酸化状態の位置がアルデヒド、ケトン又はカルボキシ基でないアンヒドログルコースを含む。その結果、アルコール酸化状態の位置は、ヒドロキシル基及びヒドロキシル基誘導体、例えばアルキルエーテル及びO−アシル基を含む。
【0188】
本発明に関しては、「AN」は、酸価を意味し;「MEK」はメチルエチルケトンを意味し;「PMアセテート」はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味し;「ジアセトンアルコール」は4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンを意味し;「MPK」はメチルプロピルケトンを意味し:「EB」はエチレングリコールモノブチルエーテルを意味し;「EP」はエチレングリコールモノプロピルエーテルを意味し;「PM」はプロピレングリコールモノメチルエーテルを意味し;「PB」はプロピレングリコールモノブチルエーテルを意味し;「EBアセテート」はエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを意味し;「PP」はプロピレングリコールモノプロピルエーテルを意味し;「2−EHアセテート」は2−エチル−1−ヘキサノールアセテートを意味し;「EEP」は3−エトキシプロピオン酸エチルを意味し;「MIBK」はメチルイソブチルケトンを意味し:「MAK」はメチルアミルケトンを意味し;「IBIB」はイソブチルイソブチレートを意味し;「Texanol(登録商標)」は2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを意味し;「RDS」は、セルロースのアンヒドログルコースモノマーの3つのヒドロキシルの相対置換度を意味し;「Eqs」は当量を意味する。
【0189】
本明細書中で使用する「アルキル基」は、特に断らない限り、好ましくはC1〜C12直鎖炭化水素基を意味する。
【0190】
本明細書中で使用する用語「アリール」は、好ましくはフェニル、ナフチル、フェナントリル、ビフェニルなどのような基を意味する。
【0191】
本明細書中で使用する「ヒドロキシメチレン」は式−CH2OHの基を意味する。
【0192】
本明細書中で使用する用語「アルキレンアリール」は好ましくは、アリール基が結合したC1〜C12アルキレン基を意味する。
【実施例】
【0193】
例1〜5
機械的撹拌機、還流冷却器、熱電対、添加用漏斗及び温度調節循環浴を装着した5Lの5つ口丸底ジャケット付きフラスコに、88%蟻酸溶液(表I参照)を添加した。この溶液を5℃に冷却してから、20分間にわたってAc2O 318mLを添加した。この溶液に、セルロース125g、次いで酢酸55mL中H2SO4 9.35gの溶液を添加した。H2SO4の添加後、フラスコの温度を15℃に調整した。不均一混合物を同温度で70分間撹拌してから、分量のAc2O(表I参照)をゆっくり添加した(添加3.2時間)。Ac2Oの添加の間に、内部反応温度が37℃に達した。Ac2Oの添加完了後、反応温度は58℃に上昇した。反応混合物は、セルロースの添加後6.8時間で均一混合物になった。均一溶液を得た後、反応温度を更に4時間58℃に保持した。反応混合物を酢酸500mLで希釈してから、高速で攪拌しながらH2O 5L中にゆっくり注いだ。これによって、白色微粉が得られ、これを濾過によって単離し、乾燥させた。
【0194】
【表1】

【0195】
図4は、例1〜4の1H NMRスペクトルを示す。ホルメート又はアセテート置換基を有する炭素のC6プロトンによる共鳴を6F及び6Aと表示してある。このデータは、蟻酸の当量数の増加につれて、ホルメートのDS及びC6ホルメート/アセテートの比が増加することを示している。蟻酸の濃度が一定に保たれ且つAc2Oの量が減少する場合には(例5)、ホルメートのDS及びC6ホルメート/アセテートの比はほとんど変わらない。このデータは、蟻酸の濃度が、ホルメートのDS及びホルメートに関するC6における選択性を制御する特性の1つであることを示している。
【0196】
例6〜8
機械的撹拌機、還流冷却器及び添加用漏斗を装着した1Lの3つ口丸底フラスコに、88%蟻酸100mL(セルロースに基づき15モル当量)を添加した。この溶液を0℃に冷却してから、10分間にわたってAc2O 65mLを添加した。周囲温度まで加温した後、この溶液にセルロース25g、次いで酢酸15mL中H2SO4 1.88gの溶液を添加した。不均一混合物を30分間撹拌してから、フラスコを30℃の水浴中に入れた。この不均一混合物に172mLのAc2O(セルロースに基づき9モル当量,添加20分)を添加した。Ac2Oの添加完了後、反応混合物を10分間攪拌してから、反応温度を50℃に上昇させた。反応混合物は、セルロースの添加後1.7時間で均一溶液になった。反応温度を50℃に保持し、種々の時間間隔でアリコートを除去した。各サンプルを、酢酸6.7mL中Mg(OAc)2 0.43gで処理してから、サンプルを5重量%酢酸水溶液中に注いだ。これにより、白色固体が得られた。これを濾過によって単離し、充分に洗浄し、乾燥させた。この反応を更に2回繰り返し、反応温度はAc2O添加後に58℃及び65℃に上昇させた。結果を表II、III及びIVに要約する。
【0197】
【表2】

【0198】
【表3】

【0199】
【表4】

【0200】
これらの例において、セルロースアセテートホルメートは、反応温度を除いては同一の条件下で製造した。セルロースの完全エステル化を示す均一反応混合物が得られたらすぐに、第1のサンプルを除去し、単離した。いずれの場合にも、セルロースアセテートホルメートが得られ(エントリ6−A、7−A、8−A)、重量平均分子量は約300,000〜約100,000の範囲であり、ホルメートDSは約0.9〜約1.05であった。表2、3及び4中のデータは、トリエステル段階に達した後に反応を種々の温度に保持する場合の分子量、ホルメートDS及びアセテートDSの変化を示す。65℃(表II)においては、ホルメートDSは5.8時間では比較的未変化であったが、反応時間が長くなるにつれて低下し、それに対応してアセテートDSが増加した。これは、この温度においては長い反応時間ではエステル交換が起こり得ることを示している。重量平均分子量は、65℃においては調査した時間枠の間に302,000から6,200まで低下した。58℃においても、観察は極めて類似していた。50℃の反応温度においては、ホルメートDSは、約24時間後までほとんど変化しなかった。重量平均分子量もまた、はるかにゆっくりと低下し、24.8時間の反応時間後に最終的に42,000に達した。
【0201】
例9
機械的撹拌機、還流冷却器、熱電対、添加用漏斗及び温度調節循環浴を装着した5Lの5つ口丸底ジャケット付きフラスコに、88%蟻酸500mL(セルロースに基づき15モル当量)を添加した。この溶液を4℃に冷却してから、20分間にわたってPr2O 430mLを添加した。この溶液を20℃に加温してから、水活性化セルロース125gを加えた。この不均一混合物に、プロピオン酸80.5mL中H2SO4 9.35gの溶液を添加した。H2SO4の添加後、フラスコの温度を30℃に調整してから、Pr2O885mL(セルロースに基づき9モル当量,添加30分)を添加した。Pr2Oの添加の間に達した最大内部反応温度は37℃であった。セルロースの添加後55分で、反応混合物は均一溶液になった。反応温度を50℃に上昇させ、均一溶液を同温度に更に5時間保持してから、プロピオン酸150mL中Mg(OAc)2 2.5gを添加した。70〜100μのガラスフリット漏斗を通して濾過後、この透明な溶液を、高速攪拌しながら5重量%の酢酸水溶液5L中にゆっくりと注いだ。これにより、白色固体が得られ、これを濾過によって単離した。乾燥後、白色微粉215.2gが得られた。
【0202】
1H NMR及びGPCによるこの材料の特性決定から、生成物はホルメート及びプロピオネートのDSがそれぞれ1.05及び1.74で且つMwが120,295であるセルロースプロピオネートホルメートであることが明らかになった。炭素13NMRは、ホルメートの大部分がC6に位置することを示した。少量のホルメートがC2に位置したが、C3には検出されなかった。対応して、プロピオネートのほとんどはC2及びC3に結合され、C6には比較的少量のプロピオネートしか位置しなかった。
【0203】
例10
機械的撹拌機、還流冷却器、熱電対、添加用漏斗及び温度調節循環浴を装着した5Lの5つ口丸底ジャケット付きフラスコに、88%蟻酸500mL(セルロースに基づき15モル当量)を添加した。この溶液を4℃に冷却してから、20分間にわたってBu2O 325mLを添加した。この溶液を20℃に加温してから、水活性化セルロース125gを加えた。この不均一混合物に、酪酸75mL中H2SO4 9.4gの溶液を添加した。H2SO4の添加後、フラスコの温度を30℃に調整し、Bu2O1060mL(セルロースに基づき8.4モル当量,添加25分)を添加した。Bu2Oの添加の間に達した最大内部反応温度は49℃であった。セルロースの添加後60分で、反応混合物は均一溶液になった。反応温度を58℃に上昇させ、均一溶液を同温度に更に4.3時間保持してから、酪酸150mL中Mg(OAc)2 2.5gを添加した。70〜100μのガラスフリット漏斗を通して濾過後、この透明な溶液を酢酸1Lで希釈し、高速攪拌しながら5LのH2O中にゆっくりと注いだ。これにより、白色固体が得られ、これを濾過によって単離した。乾燥後、白色微粉211.6gが得られた。
【0204】
1H NMR及びGPCによるこの材料の特性決定から、生成物はホルメート及びブチレートDSがそれぞれ1.16及び1.75で且つ分子量が49,226であるセルロースブチレートホルメートであることが明らかになった。炭素13NMRは、ホルメートの大部分がC6に位置することを示した。少量のホルメートがC2に位置したが、C3には検出されなかった。対応して、ブチレートのほとんどはC2及びC3に結合され、C6には比較的少量のブチレートしか位置しなかった。
【0205】
例11
機械的撹拌機、還流冷却器、及び添加用漏斗を装着した1Lの3つ口丸底フラスコに、88%蟻酸100mL(セルロースに基づき15モル当量)を添加し、次いでAc2O 65mLを添加した。この溶液に水活性化セルロース25gを添加し、次いで酪酸15mL中H2SO4 1.88gの溶液を添加した。この不均一混合物に334mLのBu2O(セルロースに基づき13.3モル当量,添加45分)を添加した。Bu2Oの添加完了後、反応混合物を35分間攪拌してから、反応温度を50℃に上昇させた。反応混合物は、セルロースへのBu2Oの添加開始後9時間で均一溶液になった。この反応溶液にH2Oを添加し、濾過し且つ乾燥することによって、セルロースエステルを単離した。
【0206】
プロトンNMRは、生成物がDSF=0.98、DSAc=1.07及びDSBu=0.92のセルロースアセテートブチレートホルメートであることを示した。重量平均分子量は46,000であった。
【0207】
例12
セルロースアセテートホルメート(10g,DSF=0.93,DSAc=2.0)を、60℃において酢酸120mL中に溶解させた。この溶液に、H2O 13.3mLを添加した。サンプルを異なる時間間隔で除去し、サンプルをH2O中に注ぐことによって単離した。白色固体を濾過によって単離し、洗浄し、乾燥してから、1H NMRによる分析に供して、ホルメート及びアセテートDSを算出した。得られたデータを、図3に要約する。図3は、ホルメートDSの変化を時間の関数として示す。ホルメートの最初の加水分解は速いが、加水分解速度は経時的に減速する。これらの条件下で、ホルメートの完全な加水分解には約24時間を要した。1H NMR分析もまた、アセテートDSが未変化であることを示した。
【0208】
例13
DSAc=1.80及びDSF=0.68を有するセルロースアセテートホルメートを、例12の一般的手順に従って24時間加水分解させた。このセルロースアセテートの関連する物理的性質を、Eastman Chemical CompanyによってCA320Sとして商業的に製造されたランダム置換セルロースアセテートに比べて表Vに示す。
【0209】
【表5】

【0210】
表5のデータは、セルロースアセテートはいずれも、同じDSAc及び同様なMwを有することを示している。しかし、CAFから製造されたCAは、CA320Sのほぼ1/2のRDS6を有する。CA320Sに関しては、3つのヒドロキシルのRDSが1:1:1に非常に近い。これは、ランダム置換CAには典型的である。CAFから製造されたCAの場合には、RDS6は、2位及び3位に関して観察される値よりもはるかに小さい。2種のセルロースアセテートに関する13C NMRカルボニル共鳴の比較から、CAFから製造されたCAはランダム置換CAよりも2,3−ジアセテートモノマーを多く有することが示される。
【0211】
例14
例6〜8の一般的手順に従って、セルロースアセテートホルメートを製造し、次いで単離を行わずに、例12の一般的手順に従って24時間加水分解させた。Eastman Chemical CompanyからCA355として商業的に製造された非選択的置換セルロースアセテートに比較した、このセルロースアセテートの関連する物理的性質を表VIに示す。
【0212】
【表6】

【0213】
表VI中のデータは、セルロースアセテートはいずれも、ほぼ同じDS及びほぼ同様なMwを有することを示している。しかし、CAFから製造されたCAは、CA355よりも著しく低いRDS6を有する。CA355に関しては、3つのヒドロキシルにおけるRDSが1:1:1に近い。CAFから製造されたCAに関しては、RDS6は、2位及び3位に関して観察される値よりもはるかに小さい。これは、本発明の方法によって製造される位置選択的置換セルロースエステルには典型的である。2種のセルロースアセテートに関する13C NMRカルボニル共鳴の比較から、CAFから製造されたCAはCA355よりも2,3−ジアセテートを多く有することが示される。
【0214】
例15
DSPr=1.74及びDSF=1.05を有するセルロースプロピオネートホルメートを、例12の一般的手順に従って24時間加水分解させた。プロトンNMRは、CPが1.67のDSを有することを示した。このCPのMwは93,420であった。第1走査のDSCスペクトルから取ったTmは229℃であり、第2走査Tgは180℃であった。6位、3位及び2位におけるRDSは、それぞれ0.26、0.69及び0.71であった。これは、CPが高量の2,3−ジプロピオネート置換モノマーを含んでいたことを示している。
【0215】
例16
例6〜8の一般的方法に従って製造したDSAc=2.03を有する位置選択的置換セルロースアセテート2g及びプロピオン酸20mLを、100mLの3つ口丸底フラスコに添加した。均一な溶液が得られるまで、このCAを80℃において攪拌した。50℃に冷却後、プロピオン酸無水物2.12gを添加し、次いでプロピオン酸0.5mL中H2SO4 0.05gを添加した。反応混合物を50℃において4時間撹拌してから、この溶液を水中に注いだ。生成物を濾過によって単離し、H2Oで洗浄し、乾燥させた。
【0216】
プロトンNMRは、生成物がDSAc=1.93及びDSPr=1.08を有することを示した。このCAPのMwは108,827であった。炭素−13 NMRから、プロピオネートのほとんどが6位に位置するのに対し、アセテートの大部分は2位及び3位に位置することが明らかになった。
【0217】
例17
CA(例6〜8及び例12の一般的方法に従って製造)7g(29.8mmol)及び酢酸115mLを、300mLの3つ口丸底フラスコに添加した。均一な溶液が得られるまで、この混合物を50℃において攪拌した。この溶液に、H2O 20mL、次いでNHAcTEMPO 317.8mg(1.49mmol,0.05eq)及びNaBr 153.3mg(1.49mmol,0.05eq)をそれぞれ添加した。この溶液に、32%過酢酸31.3mL(148.9mmol,2.5eq,7.2分/mL)をポンプ輸送した。約4mLの過酢酸の添加後、溶液の粘度が増加するのが観察された。7mLの過酢酸の添加後、粘度は反応の出発時の値に戻った。過酢酸添加の開始から4時間、5.6時間、7.3時間及び8.6時間において反応からアリコートを除去した。各アリコートを冷EtOH中に注ぎ、得られた固体を濾過によって単離し、冷EtOHで充分に洗浄し、乾燥させた。
【0218】
表VIIは各サンプルの特性医決定を要約する。
【0219】
【表7】

【0220】
例17−Aは、過酢酸の添加開始後4時間で(過酸添加完了の15分後)採取した第1アリコートである。表からわかるように、例17−Aは酸価が97.5であり、見掛けDSが2.0に増加し、観察されたMwが426,173である。反応進行につれて、酸価及びDSは比較的一定のままであるが、例17−Dに関してはMwが低下し、43,061に達している。比較的一定のDSは、これらの条件下では、アシル置換基の加水分解がほとんど又は全く起こっていないことを示している。
【0221】
この例は、これらの反応条件下ではセルロースエステルの酸化が急速に起こり得るが、アシル置換基の加水分解がほとんど起こらないことを示している。見掛けMwの増加は、アルデヒドの存在によって起こる架橋のためと考えられる。Mwのその後の低下は、著しい鎖の開裂ではなく、アルデヒドの更なる酸化によると考えられる。
【0222】
例18〜19
例17の一般的手順に従って、セルロースアセテート(例6〜8及び12の一般的方法に従って製造)を酸化させた。反応温度及び過酢酸の添加速度のみが異なる2つの実験を行った。反応条件及び生成物の特性決定を表VIII及びIXに要約する。
【0223】
【表8】

【0224】
【表9】

【0225】
表VIII及びIX中の結果の比較から、2組の反応条件は共にセルロースアセテートの著しい酸化をもたらしたことが示される。40℃においては、セルロースアセテートの酸化は、60℃において得られた値よりもわずかだけ低い酸価を生じた。40℃におけるセルロースアセテートの酸化は、はるかに高い分子量を有する酸化セルロースアセテートを生じた。いずれの場合にも、見掛けDSは2.0超のままであった。これは、セルロースアセテートの加水分解は、あったとしてもほとんど起こらなかったことを示している。
【0226】
例18−A(40℃において7.4時間)及び例19−A(60℃において2.9時間)の1H NMRスペクトル:例18−Aに関する約9.5ppmにおける共鳴の存在はアルデヒドの共鳴に対応する。この共鳴は、19−Aに関する1H NMRスペクトルには存在しない。アルコールの存在下におけるアルデヒドは、アセタールの形成によって架橋点として働き、表VIII中の例にして観察されたより高い分子量をもたらすことができる。19−Aに関する1H NMRスペクトルにおけるアルデヒド共鳴の欠如は、アルデヒドが架橋できる前にアルデヒドがカルボキシに酸化されたことを示す。
【0227】
表VIII及びIX中のデータは、40〜60℃の反応温度範囲においては、反応時間を24時間未満に保持しながら110より上の酸価を得ることができることを示している。表VIII及びIXのこのデータはまた、400,000〜15,000の範囲の見掛け分子量を有する酸化セルロースアセテートを生成できることを示している。更にまた、表VIII及びIXのデータは、ポリマー中に存在するアルデヒドの量は、反応条件の選択によって制御できることを示している。
【0228】
例20〜23
セルロースアセテート(例6〜8及び12の一般的方法に従って製造)を、例17の一般的手順に従って50℃において酸化させた。
【0229】
【表10】

【0230】
図4は、例20〜23に関する13C NMRのC6炭素共鳴を示す。C6置換(約63.5ppm)及び非置換(約59ppm)の炭素に対応する共鳴が示される。図4から、NHAcTEMPOを用いた酸化(例23)では、C6非置換炭素の酸化によってC6非置換炭素ピークのほとんど完全な消失が起こったことがわかる。TEMPOを含む反応(例20〜22)では、セルロースアセテートの酸化は、ごく微量しか起こらなかった。
【0231】
例24〜39
Eastman Chemical CompanyからCA320Sとして市販されているセルロースアセテート(DS=1.79)を、種々の一次酸化体を用いて例17の一般的手順に従って酸化した。各エントリーに関して、反応温度は50℃であり、1.0当量の過酢酸を最終酸化体として用いた。これらの実験の結果を表XIに要約する。
【0232】
【表11】

【0233】
一次酸化体としてNaBrを用いたこのCAの酸化からは、86の酸価を有するアニオン性CAが生成された(例24)。NaBrをNaCl又はNaOClのような(例25及び例26)他の金属ハロゲン化物で置き換えるとまた、このCAの著しい酸化が引き起こされた。硫黄をベースとする塩又は酸は、酸価が低い酸化CAを生じた(例37〜39)。先行技術はH2SO4のような強酸は多糖類のTEMPOに基づく酸化における重要な成分であることを教示しているので、例37は特に意外である。例27〜32は、Mn塩がセルロースエステルのような多糖類の酸化における一次酸化体として有用であることを示している。即ち、ハロゲンを含まない酸化が可能である。特に興味深いのは、39.8の酸価を示したMn(OAc)3を含む例28である。この場合には、塩はハロゲンを含まない。アセテートの酸化は、良好な一次酸化体の不存在下では低レベルの酸化しかもたらさない過酢酸を生じる。このため、酸価の観察された増加は、Mnによる。一次酸化体としてのMnに関連して、例29及び30は特に興味深い。KMnO4は、多糖類の公知の酸化体であるが、高レベルのKMnO4が必要であること及びこれが分子量をほとんど減少させずに非選択的酸化を引き起こすこともわかる。例29は、本発明の方法に従ってNHAcTEMPOを共に用いた場合に、KMnO4が触媒として用いられて、酸化レベルが高く且つ良好な分子量を有するセルロースエステルを生成できることを示している。これに比較して、NHAcTEMPOの不存在下(例30)では、得られる酸価及び分子量ははるかに低い。例33〜36は、Mg、Cu及びFeのような他の金属塩も、セルロースエステルの酸化において一次酸化体として使用できることを示している。
【0234】
この例は、NaBr以外の一次酸化体が本発明の方法によるセルロースエステルの酸化において有用であることを示している。特に顕著であるのは、ハロゲンを用いない酸化へのMn、Mg、Fe及びCuをベースとする金属塩の使用である。また、この例は、先行技術において提案されるH2SO4のような強酸の存在が、多糖類エステルの酸化に必要ないことを示している。この場合には、強酸の存在はセルロースエステルの酸化をほとんど引き起こさない。
【0235】
例40〜46
可変量のNaBrを用いて例17の一般的手順に従ってセルロースアセテート(例6〜8及び12の一般的方法に従って製造)を酸化した。各実験において、NHAcTEMPOの当量数は0.05eqであり、反応温度は50℃であった。これらの実験結果を表XIIに要約する。
【0236】
【表12】

【0237】
表XII中のデータは、多数の点を示している。第一に、約50℃の反応温度においては、酸化を得るのに一次酸化体は必要ない(例40〜42参照)。しかし、NaBrはごく少量であっても添加すると、全く用いなかった場合に比べて酸化レベルが増加した(例43及び44参照)。NaBrの量の増加につれて、酸価及び分子量はいずれも増加することが観察された。酸化セルロースエステルの酸価及び分子量は、一定の温度及びNHAcTEMPOの濃度を保持しながらNaBrの量を変えることによって制御できる。
【0238】
例47〜49
可変のNHAcTEMPOを用いて例17の一般的手順に従って、セルロースアセテート(例6〜8及び12の一般的方法に従って製造)を酸化した。各実験において、NaBrの当量数は0.025eqであり、反応温度は50℃であった。これらの実験結果を表XIIIに要約する。
【0239】
【表13】

【0240】
例47〜49に関する表XIII中のデータは、一定量のNaBr及び一定温度を保持しながらNHAcTEMPO当量数を増加させると、生成物の酸価及び分子量が増加することを示している。
【0241】
例50〜55
Eastman Chemical Co.からCAP504及びCAB553として市販されているセルロースアセテートプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートを、1.0eqのpPAA、0.005eqのNaBr及び0.075eqのNHAcTEMPOを用いて例17の一般的手順に従って50℃において酸化させた。CAP504の場合には、酢酸の代わりにプロピオン酸を用いた。CAB553の場合には、酢酸の代わりに酪酸を用いた。酸化セルロースエステルは、5%酢酸水溶液中で沈殿させることによって単離した。これらの実験の結果を表XIVに要約する。
【0242】
【表14】

【0243】
これらの実施例に関する表XIV中のデータは、CAP及びCABのようなセルロースエステルを本発明の方法に従って酸化できることを示している。
【0244】
例56
水活性化セルロース(10g)を、NHAcTEMPO(0.99g)及びNaBr(0.032g)を含む酢酸/H2O(85/15,wt./wt.)の混合物400g中に、50℃において懸濁させた。攪拌しながら、32%過酢酸溶液25.9mLをこの混合物に3時間でゆっくり添加することによって酸化を開始させた。4.5時間の反応後に酸化セルロースを濾過によって単離し、洗浄し、真空オーブン中で50℃において乾燥させた。
【0245】
酸化セルロースを、触媒として硫酸を用いて無水酢酸によってアセチル化した。詳細には、酸化セルロース(10g)を水で活性化し、酢酸で脱水し、次いで13〜15℃において酢酸(100g)と無水酢酸(28g)との混合物中に懸濁させた。前記のセルロース、酢酸及び無水酢酸の低温混合物に激しく混合しながら、硫酸(0.75g)と酢酸(20g)との混合物を添加することによって、エステル化を開始させた。この反応混合物を20〜23℃に約20〜30分間保持し、次いで粘稠な溶液が得られるまで50℃において加熱した。未反応無水酢酸を、水/酢酸混合物の添加によって破壊した。触媒として用いた硫酸を酢酸ナトリウムで中和した後、アセチル化酸化セルロースを水からの沈澱によって回収した。乾燥後、酸化CAの酸価は10であることがわかった。可溶化(下記参照)による生成物の減量は観察されなかった。これは、カルボキシレートの分布が均一であることを示唆している。
【0246】
例57(比較例)
最初に、セルロース(Placetate F)を0〜10℃において10〜20分間、10%NaOH水溶液で活性化させた。次いで、NaOH溶液を、濾過及び蒸留水による洗浄によってセルロースから除去した。この活性化セルロースのpHを次に、0.5M NaOHを用いて10.8〜10.9に調整した。3口丸底フラスコ中において攪拌しながら活性化セルロース(10g)、TEMPO(0.1g)、NaBr(3.2g)及び蒸留水(400g)の混合物にNaOClの11.5%溶液(85ml)をゆっくり添加することによって、酸化を開始させた。反応温度は25℃であり、反応混合物のpHは0.5M NaOHによって10.8〜10.9に保持した。NaOCl溶液の添加の最後(120分)には、セルロースは溶解していた。酸化セルロースを、エタノールからの沈澱によって回収し、エタノールで洗浄し、真空オーブン中で50℃において乾燥させた。乾燥後、酸化セルロースの酸価は133と測定された。
【0247】
NaOClを25.5mLのみ用いる以外は、前記反応を繰り返した。接触時間の最後に、不溶性繊維を濾過によって反応混合物から除去した。可溶性セルロースフラクションを前述のようにして単離した。生成物の37重量%は可溶性部分であり且つ生成物の63%は濾過によって除去される不溶性繊維部分であることがわかった。不溶性セルロースフラクションは酸価が5.6であることがわかった。
【0248】
総合すると、このデータは、これらの条件下におけるセルロースの酸化が、繊維表面からのセルロースの酸化及び可溶化によって進行することを示している。即ち、この反応は不均一であり、カルボキシレートの分布はランダムでない。
【0249】
例58
Eastman Chemical Companyから入手できる市販セルロースエステル(CA320S、CA398−30、CAP504−0.2、CAB553−0.4)を、例17及び50に記載した方法に従って酸化させた。これらの酸化セルロースエステルの溶解度を種々の溶媒中で、溶媒1.8g中に酸化セルロース0.2gを約16時間混合することによって評価した。サンプルを調べ、以下の基準で等級分けした:1=不溶性;3=部分溶解性;5=ゲル化;7=可溶性であるが濁った溶液;9=可溶性で透明な溶液。結果を表XVに要約する。非酸化市販セルロースエステルの同一溶媒への溶解度を、各サンプルに関して丸括弧の内側に示す。
【0250】
【表15】

【0251】
これから、酸化セルロースエステルが、多くの被覆用途に典型的に用いられる種々の溶媒中に可溶であることがわかる。データから示されるように、溶解度は、置換基の型、DS及び酸価によって異なる。
【0252】
例59
例6〜8及び12の一般的方法に従って製造した位置特異的置換セルロースアセテート(DS=1.72)の2つのサンプルを、例17の一般的手順に従って酸化させた。比較のために、ほぼ同一のDS(1.79)を有するランダム置換セルロースアセテートの2つのサンプルも、例17の方法によって酸化させた。各実験において、NHAcTEMPOの当量数は0.075eqであり、NaBrの当量数は0.005であり、PAAの当量数は1.0であり、反応温度は50℃であり、反応時間は約8時間であった。2つの酸化位置選択的置換セルロースアセテートの酸価は109及び104であった。2つのランダム置換セルロースアセテートの酸価は79及び86であった。
【0253】
この例は、同一置換度においては、位置選択的置換セルロースエステルは、同等のランダム置換セルロースアセテートから得られたものよりも高い酸価を有する酸化セルロースアセテートを生成できることを示している。
【0254】
例60
セルロースアセテート(42.8mmol,DS=1.79)を氷酢酸100mL及び水20mL中に溶解させた。50℃に加温後、0.02eqのMn(NO32、0.02eqのCu(NO32、及び0.104eqのTEMPOをそれぞれ添加した。反応は、環境に開放して、50℃において攪拌した。TEMPO添加の約4時間後に、溶液の粘度は劇的に増加した。反応溶液の粘度を低下させるために、75%酢酸水溶液32mLを添加した。
【0255】
23時間の反応時間後、反応混合物をオムニ(Omni)ブレンダー中に注ぎ、H2Oと氷との混合物を添加した。混合後、酸化CAが沈殿した。生成物を水で2回洗浄してから、エタノールで洗浄した。60℃で65時間真空乾燥することによって、白色固体を得た(収率84%)。乾燥後、生成物は、新しく形成されたアルデヒドと、セルロースエステル中にセルロースエステル中に存在する未反応ヒドロキシルとの間のアセタール形成による架橋のため、ほとんどの溶媒に溶解が極めて困難であった。それにもかかわらず、生成物の1H NMR(DMSO−d6)は、所望のアルデヒド基による共鳴(9〜10ppm)を示した。6ppm近くに中心を有する共鳴は、未反応ヒドロキシルとアルデヒド官能基との反応によって形成されたアセタールによると考えられる。
【0256】
前述のようにして製造した酸化セルロースアセテートの一部(8.6mmol)を氷酢酸20mL及びベンジルアミン13eq中に溶解させた。この溶液に10%Pd/Cを0.4g添加してから、この溶液を40℃に加熱した。次いで、この溶液をプラスの水素雰囲気でガスシールした。
【0257】
21時間後、反応混合物を濾過して、Pd/Cを除去した。次いで、溶液を水中に注ぎ、一晩中0℃に保持した。生成物を濾過によって単離し、洗浄し、60℃で16時間真空乾燥させた(収率=44%)。
【0258】
生成物の1H NMRを用いて、アセテートの見掛けDS 2.14及びアミンの見掛けDS 0.60を算出した。定量的炭素13 NMRも、ベンジルアミンが成功裏に導入されたことを確認した。これは、芳香族炭素による共鳴(122〜140ppm参照)及びNHに結合したCH2による共鳴(44〜50ppm参照)の存在によって示される。
【0259】
例61
例60に記載した方法に従って、セルロースアセテート(240g,1.03モル,DS=1.79)を酸化させた。反応の終わりに、酸化セルロースアセテートを、冷MeOH中における沈澱によって単離した。生成物を濾過によって単離し、MeOHで洗浄し、MeOH中に湿潤状態で貯蔵した。存在する固形分を測定し且つ分析サンプルを得るために、一部分を除去して、60℃において真空乾燥させた。生成物はMeOHを68.5重量%含むことがわかった。
【0260】
メタノール湿潤酸化セルロースアセテート(6.35g,8.6mmol)をベンジルアミン(25eq)及び氷酢酸(82mL)中に溶解させた。溶液を通してN2を泡立てることによってMeOHを除去した。全てのMeOHが除去された後、10%Pd/C 0.4gを溶液に添加し、溶液をプラスのH2雰囲気下に置いた。反応を25℃において16時間撹拌してから、水素をガス抜きした。液体を遠心分離し且つデカントすることによって、Pd/Cを除去した。酢酸の約70%が真空中で除去された後、冷水を加えて、セルロースアセテートベンジルアミンを沈殿させた。生成物を、濾過によって単離し、洗浄し、60℃において真空乾燥させた。この材料のプロトンNMRによる分析から、見掛けDSアセテートが1.73であること、見掛けDSアミンが0.26であることがわかった。GPCは、生成物が22,700の重量平均分子量を有することを示した。
例62
1.42のヒドロキシル分を有するセルロースアセテートブチレートエステルの製造及び酸化CABへの酸化
高ヒドロキシル分を有するランダム置換セルロースエステルを生成するためのセルロースエステルの加水分解
機械的撹拌機、還流冷却器、温度調節用の再循還浴及び添加用漏斗を装着した12Lの5つ口ジャケット付き丸底フラスコに、ゆっくりと攪拌しながら氷酢酸2410.5g、酪酸2140.0g、脱イオン水1190.0g及びセルロースアセテートブチレート(CAB381−20,Eastman Chemical Company)1260.1gを添加した。CAB381−20の添加後、温度を70〜71℃に上昇させ、均一溶液が得られるまで混合物を攪拌させた。この混合物に、氷酢酸100g中硫酸19gを添加した。硫酸混合物の添加後、反応混合物を全反応時間の間、70℃に保持した。12時間の反応時間後、脱イオン水240gを添加した。24時間の反応時間後、更に400gの脱イオン水をゆっくりと添加した。36時間の反応時間後、酢酸1560.0g、酪酸72.0g、及び脱イオン水324.0g、及び酢酸マグネシウム四水和物152.8gからなる最終添加を行った。特性決定のために、得られたCABのごく一部を、反応溶液を脱イオン水に加え、濾過し、固体を水洗し、乾燥することによって単離した。残りのCAB反応混合物をフラスコから排出し、酸化反応に用いられるまで10℃で貯蔵した。プロトンNMRは、単離された生成物がDSBu=1.13、DSAc=0.44、及びDSOH=1.42を有することを示した。重量平均分子量(GPC)は104,681であった。
【0261】
高ヒドロキシル分を有するランダム置換セルロースエステルの酸化
前記で生成したCABについて、例17の一般的手順によって6つの酸化実験を行った。2種の異なる型の一次酸化体を3種の異なる濃度で用い、NHAcTEMPOは一定濃度とした(0.075eq)。これらの実験の結果を表XVIに示す。
【0262】
【表16】

【0263】
この例は、CABのようなセルロースエステルを酸性水性媒体中で加水分解して、ヒドロキシル分の高いランダム置換セルロースエステルを生成できることを示す。
異なる一次酸化体を用いたこのCABの酸化は、一定の範囲の酸価(11〜98)及び重量平均MW(約5000〜36000)を有する酸化CABを生成した。従って、適当な反応条件を選択することによって、広範囲の酸価CABを生成できる。
例63
1.81のヒドロキシル分を有するセルロースアセテートブチレートエステルの製造及び酸化CABへの酸化
ヒドキシル分の高いランダム置換セルロースエステルを生成するためのセルロースエステルの加水分解
例62の手順を用いて、ヒドロキシル分の高いCAB381を生成した。この例は、反応温度を71℃に保持し且つ36時間目に添加する液体の組成が酢酸990g、酪酸48g及び脱イオン水560g及び酢酸マグネシウム四水和物51gとした点で異なる。特性決定のために、得られたCABのごく一部を、反応溶液を脱イオン水に添加し、濾過し、固体を水洗し且つ乾燥させることによって単離した。残りのCAB反応混合物を、フラスコから排出し、酸化反応に用いるまで10℃において貯蔵した。プロトンNMRから、単離生成物がDSBu=0.96、DSAc=0.22及びDSOH=1.81を有することが示された。重量平均分子量(GPC)は66,097であった。
【0264】
ヒドロキシル分の高いランダム置換セルロースエステルの酸化
NHAcTEMPO 0.075eq及び臭化ナトリウム0.75eqを用いて例17の一般的手順によって、前記で生成されたCABを酸化させた。得られた生成物は、酸価が104(mgKOH/g)及び重量平均分子量が4847であった。
【0265】
この例は、CABを酸性水性媒体中で加水分解して、ヒドロキシ分が高いランダム置換CABを生成できることを示している。NaBr 0.75eqを用いたこのCABの酸化により、高い酸価及び低い重量平均分子量を有する酸化CABが生成された。
【0266】
例64
酸化セルロースエステルの溶解度
いくつかの酸化セルロースエステルの溶解度を、被覆用途に一般に使用される溶剤中における溶解度を測定するために評価した。サンプルを固形分10重量%で製造し、可溶性(S)、若干のゲルを有するが可溶性(SG)、部分溶解性(PS)、又は不溶性(I)と表した。この例(表XVII)から、エステル置換基の組成及びポリマーの酸価はいずれも溶解度に影響を与えることがわかる。
【0267】
【表17】

【0268】
例65
酸化セルロース樹脂の水性溶液の製造
カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical,CMCAB)のような典型的な水性セルロースエステルは、溶剤、水及びアミンの組合せを用いて水中に可溶化することができる。一定固形分においてセルロースエステルの水溶液中の溶剤の割合が増加すると、溶液の粘度は低下する。ジメチルエタノールアミン(Aldrich)を用いて酸官能基を100%中和させて固形分10%で製造された酸化セルロースエステルアセテートブチレート(酸価=104)の水溶液は水に直接可溶であり、更に溶剤を添加しなくても粘度が低かった。この例においては、脱イオン水5.4gを酸化セルロースアセテートブチレート0.6g及びジメチルエタノールアミン0.099gと合し、一晩中回転して、透明な、非常に淡い黄色の溶液を低粘度で生成した。
【0269】
例66
酸化セルロースアセテートを含む錠剤からの薬物の溶解
酸化セルロースアセテート(3.7g,酸価=88)及びNFアスピリン1.5gを、SPEX液体窒素フリーザーミル中で75%の最大速度で6分間微粉砕した。この粉末に、カーボンブラック中に予め分散させたステアリン酸マグネシウム粉末(0.04g)(ステアリン酸マグネシウム1.0gに対してカーボンブラック0.13g)を加えて、均一な薄い灰色が得られるまで混合した。5000psiでタブレット成形機を用いて、錠剤(0.34〜0.37g)を個々にプレスした。同様に、セルロースジアセテート(CA−398−30)6.0gを、ステアリン酸Mg0.04g/カーボンブラックを添加したNF Gradeアスピリン1.5gと共に微粉砕した。錠剤(0.32〜0.37g)をまた、5000psiでプレスした。
【0270】
テフロン(登録商標)パドルを有するUSP#2目盛り付き装置を用いて、溶解試験を行った。緩衝剤溶液を、0.45ミクロンのナイロンフィルターを通して41℃において脱ガスし、更に5分間真空下に保持した。溶解容器に溶液を添加した後、溶液を37.3℃に30分間保持して、温度を一定にした。錠剤をUSP 1.2pH緩衝液900mL又はUSP H6.8緩衝液900mLに添加した。錠剤を、Varian 3つ又カプセルウェイトを用いて押し下げた。各実験の最初に、錠剤は1000mlの容器の底部に沈め、撹拌機を50rpmで作動させ、ポリプロピレンシリンジを用いて時間の関数としてサンプルを採取した。サンプルを0.45ミクロンのフィルターを通して濾過し、直ちに、Varian UV−Vis Spectrophotometer及び石英吸収セルを用いて溶液中のアスピリンの量に関して分析した。pH1.2及び6.8においてサリチル酸の量を測定するための波長はそれぞれ、278nm及び235nmであった。各実験セットは、定量分析の参照用の適当な標準を有していた。
【0271】
実験の最初の1時間の間に、酸化セルロースアセテート(CAOX)錠剤はpH1.2において亀裂を生じたが、pH6.8においては最初の形状を持ち続けた。3時間後、pH6.8緩衝溶液中のCAOX錠剤はほとんど完全に消失し、透明な溶液を残した。pH1.2では、CAOX錠剤は、緩衝液中で10分後の形状と同一の形状を持ち続けた。これら2つと異なり、CA−398−30の錠剤は、pH1.2又は6.8における実験過程によって形状を変化させなかった。
【0272】
図5は、これらの実験の結果を要約する。pH1.2において200分後には、無傷のCAOX錠剤から、アスピリン最大量のわずか23%しか放出されなかった。これに対して、pH6.8では、利用可能な最大アスピリンの84%が媒体中に放出された。CA398の錠剤の場合には、200分にはpH1.3及び6.8においてそれぞれ、利用可能なアスピリンの27%及び45%が放出された。これは、CAOXがpH1.2においては溶解度が低く、拡散による高水溶性アスピリンのかなりの放出を防ぐのに充分に疎水性でることを示している。pH6.8においては、CAOXは溶解して、マトリックスから薬物を放出した。これに対して、セルロースアセテートから製造された錠剤は、このpH6.8においても依然として無傷であり、拡散制御法によって薬物のわずか45%しか放出しなかった。
【0273】
この例は、本発明の酸化セルロースエステルを用いて圧縮成形によって錠剤を形成できることを示している。錠剤構造はpH感受性であるので、pH1.2(正常の胃のpH)において放出される薬物の量はより少なく、より高いpH(小腸の正常のpH勾配は4.5〜7.2)では高量の薬物が放出される。この型の製剤は、胃の過酷な環境ではなく、小腸において薬物活性物質の制御された放出を実現するのに特に有用である。
【0274】
例67
水難溶性の薬物との酸化セルロースアセテートブレンド
CA 400mgをpH4.8の0.1Nクエン酸塩緩衝液15gに添加することによって、酸化セルロースアセテート(酸価=88)の溶液を製造した。不均一な混合物をよく混合してから、CAが溶解して透明な溶液を生成するまで、pHを0.1N NaOHで慎重に調整した。CA水溶液のpHは約3.8であることがわかった。4種の独立したCA水溶液をこの方法によって製造した。同時に、リトナビル、アナストロゾール、タモキシフェン、又はレトロゾール40〜41mgを含む独立した溶液を、各薬物を無水エタノール5mL中に溶解させることによって製造した。これらの薬物はいずれも、水難溶性である。各薬物のエタノール溶液を次に、予め製造したCA水溶液にゆっくりと添加した。各薬物溶液の添加後、各溶液のpHを測定し、4.0〜4.3であることがわかった。次いで、酸化CA:薬物溶液を凍結乾燥させ、各混合物の白色粉末を生成した。
【0275】
酸化CA:薬物混合物のそれぞれの溶液を、Millipore水(23.0〜26.5g/L)中で製造した。サンプルは全て、測定の前に0.45ミクロンのシリンジフィルターを通して濾過した。濾過後の各溶液のpHは、3.9〜4.1の範囲であった。酸化CA:薬物混合物のそれぞれの溶液をまた、50/50のエタノール/Millipore水中で製造した。酸化CA:薬物混合物は全て、エタノール/水混合物中に溶解し、透明な溶液を生成したので、各サンプルに関して測定できる薬物の最大量を測定できた。サンプルを全て直ちに、UV−Vis Spectrophtometerを用いて、溶液中の薬物の量に関して分析した。結果を表XVIIIに要約する。表18は、酸化CA:薬物混合物を水中に再溶解させた場合に可能な最大量に基づく、可溶化された薬物の%を示す。可溶化された薬物の量(Sw)対薬物の固有溶解度(So)の比も示す。
【0276】
【表18】

【0277】
表XVIII中に要約された結果は、多数の有効な点を示す。この一組の条件に関して、水中に溶解された場合には医薬製剤中のニトナビル28%が可溶化され、これは酸化セルロースアセテートの不存在下で測定された場合のニトナビルの溶解度の24.6倍に相当する。アナストロゾールの場合には、可溶化された薬物の%は90%であり、Sw/Soは1.9であった。タモキシフェンに関しては、可溶化された薬物の%は89%であり、Sw/Soは1869であった。タモキシフェンの場合には、このデータは、酸化CAが薬物の可溶化において有効であると同時に、タモキシフェン溶解度の著しい増加を実現した。レトロゾールの場合には、効率(可溶化された薬物7%)及びSw/So(1.2)は比較的低かった。
【0278】
これらの塩基性薬物のそれぞれに関するpKaも、表XVIIIに示す。ニトナビル及びレトロゾールの場合には、製剤のpH及び水性薬物溶液のpHは、薬物のpHよりも高かったことに注目されたい。即ち、これらの塩基性薬物はほとんどイオン化されなかった。これらの薬物のいずれに関しても、可溶化薬物の%は比較的低かった。アナストロゾールの場合には、製剤のpH及び薬物水溶液のpHは、アナストロゾールのpKaにほぼ近い。タモキシフェンの場合には、製剤のpH及び薬物水溶液のpHは、他のキシフェンのpKaよりも約4.6単位低い。タモキシフェンに関して記載された、可溶化された薬物の%及びSw/Soは大きい。よく知られたHenderson−Hasselbalch式に基づき、この例の塩基性薬物に関して以下の関係を得ることができる:Stotal=Sintrinsic(1+10(pKa-pH))。従って、イオン化型及び非イオン型の薬物の濃度に厳密に基づき、製剤のpHと薬物のpKaがおよそ等しい場合には、総溶解度は固有溶解度の2倍に等しい。これは、アナストロゾールの場合に観察されることである(Sw/So=1.9)。薬物のpKaと製剤のpHとの間の各単位差のために、総薬物溶解度は1オーダー変化する。タモキシフェンの場合には、これは、可溶化された薬物の%及び大きいSw/So値の両方に反映される。リトナビルの場合には、pKaは、媒体pHよりも小さく、総溶解度へのイオン化種の寄与は小さいが、Sw/Soは比較的大きい。この観察は、特定の薬物:酸化セルロースアセテートの相互作用、例えば、水素結合もまた、総溶解度に寄与していることを示唆する。レトロゾールの場合には、pKaはまた、媒体pHよりも小さく、低いSw/So値は、薬物と酸化セルロースアセテートとの間の相互作用が小さいことを示している。
【0279】
この例は、適切に製剤化された場合に、本発明のセルロースエステルインターポリマーが水性媒体への薬物の溶解度を調整する働きをすることができることを示している。理論によって拘束するつもりはないが、セルロースエステルインターポリマーは、イオン化種濃度の変化及び薬物と酸化セルロースエステルインターポリマーとの特有の相互作用によって薬物溶解度を調整すると考えられる。
【0280】
例68
酸化セルロースアセテートで被覆されたカプセルからの薬物の溶解
ロックリングデザインを有するTopac Inc.ゼラチンカプセル(#3,0.30ml)に、USPグレードの純粋なアスピリン約0.17〜0.19gを充填した。次いで、このカプセルを、セルロースアセテート溶液(CA398−10NF 2g,DEP 0.22g,アセトン20g,木炭着色剤0.10g)又は酸化セルロースアセテート溶液(酸化セルロースアセテート(AN=88)2g,DEP 0.22g,アセトン18g,脱イオン水2,木炭着色剤0.10g)で3回浸漬被覆するか、或いは非被覆のままにしておいた。カプセルが均一に被覆されているか否かを確認するために、木炭粉末を着色剤として用いた。被覆されたカプセルを一晩空気乾燥させた。
【0281】
テフロン(登録商標)パドルを有するUSP#2目盛り付き装置を用いて、溶解試験を行った。緩衝液を、41℃において0.45μのナイロンフィルターを通して脱ガスし、更に5分間真空下に保持した。溶液を溶解容器に加えた後、溶液を37.3℃に30分間保持して、温度を一定にした。カプセルをUSPのpH1.2緩衝液900mL又はUSPのpH6.8緩衝液900mLに加えた。錠剤を、Varian 3つ又カプセルウェイトを用いて押し下げた。各実験の最初に、錠剤は1000mlの容器の底部に沈め、撹拌機を50rpmで作動させ、ポリプロピレンシリンジを用いて時間の関数としてサンプルを採取した。実験は21時間連続して行った。サンプルを0.45ミクロンのフィルターを通して濾過し、直ちに、Varian UV−Vis Spectrophotometer及び石英吸収セルを用いて溶液中のアスピリンの量に関して分析した。pH1.2及び6.8においてアスピリン酸の量を測定するための波長はそれぞれ、280nm及び298nmであった。各実験セットは、定量分析の参照用の適当な標準を有していた。
【0282】
CA398−10を被覆したカプセルは、実験の過程において物理的に変化しないようであった。図6に示すように、実験の過程においてpH1.2及びpH6.8のいずれにおいて溶解したアスピリンも2%未満であった。pH1.2及びpH6.8で300分後に媒体中に放出されたのは、利用可能なアスピリンの0.1%未満であった。
【0283】
酸化セルロースアセテートが被覆されたカプセルの場合には、実験のpHによって異なる結果が得られた。pH1.2においては、酸化セルロースアセテート被覆カプセルは物理的に変化しないようであった。pH1.2において300分後に無傷の被覆カプセルから放出されたのは、アスピリン最大量の10%未満であった。pH6.8においては、酸化セルロースアセテート被覆カプセルは、pH6.8における非被覆カプセルと同様な挙動をした(図6)。視覚的には、15分までに、酸化セルロースアセテート被膜が完全に消失し、ゼラチンカプセルが著しく溶解した。pH6.8において300分後に、最大利用可能アスピリンの65%が媒体中に放出され、この量はまさに非被覆カプセルの量である。
【0284】
この例は、pH1.2(胃のpH)における薬物の溶解を防ぐが、小腸の正常pH(4.5〜7.2)における急速な薬物放出を可能にする腸溶コーティングとして、酸化セルロースインターポリマーを使用できることを示している。セルロースエステルインターポリマーが被覆されたカプセルはpH感受性であるので、正常の胃pHで放出される薬物の量はより低いが、腸のpHでは高量の薬物が放出される。即ち、本発明のセルロースエステルインターポリマーは腸溶コーティングの役割を果たす。
例69
CA 400mgをpH4.8の0.1Nクエン酸塩緩衝液15gに添加することによって、酸化セルロースアセテート(酸価=88)の溶液を製造した。不均一混合物をよく混合してから、CAの溶解によって透明な溶液が得られるまで、0.1N NaOHでpHを慎重に調整した。CA水溶液のpHは約3.8であることがわかった。4種の独立したCA溶液をこの方法で製造した。同時に、リトナビル、アナストロゾール、タモキシフェン又はレトロゾールを40〜41mg含む独立した溶液を、各薬物を無水エタノール5mL中に溶解させることによって製造した。これらの薬物はいずれも水難溶性である。次いで、各薬物のエタノール溶液を、予め製造したCA水溶液にゆっくりと添加した。各薬物溶液の添加後、各溶液のpHを測定し、4.0〜4.3であることがわかった。次に、酸化CA:薬物溶液を凍結乾燥し、各混合物の白色粉末を得た。
【0285】
酸化CA:薬物混合物のそれぞれの溶液を、Millipore水中で製造した。予想薬物濃度が12〜125mg/Lとなるように充分な酸化CA:薬物混合物を添加した。各溶液のpHは4.2〜5.7の範囲であった。リトナビルの場合には、サンプルを、測定前に0.45ミクロンのシリンジフィルターに通して濾過した。他のサンプル(目に見える固形分を含まない透明な溶液)については、濾過の必要はなかった。直ちにUV−Vis Spectrophotometerを用いて溶液中の薬物量に関してサンプルを分析した。
【0286】
図7は、この実験において得られた結果を要約する。
【0287】
例70
本発明の酸化セルロースエステルを含む水性被覆製剤を、以下のようにして製造した:
【0288】
【表19】

【0289】
*例63からの酸化CABサンプルを、Eastman EB溶剤8g/水77g中に分散させて固形分15%を生成した(DMEAでpH8に調整)
【表20】

【0290】
得られた製剤を、ASTM D4400−898を用いて垂れ抵抗性について試験した。ペイントは、酸化セルロースエステルを含まない対照に比較して著しく改善された垂れ抵抗性を示した。(CABは、Eastman Chemical Companyから入手できるセルロースアセテートブチレートを意味する。)
【0291】
本発明を、好ましい実施態様及び実施例に関して記載したが、当業者には明らかなように明白な変更及び修正が行えることは言うまでもない。このような変更及び修正は、添付した「特許請求の範囲」に定義される本発明の限界及び範囲内と見なすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0292】
【図1】種々の合成経路を示すスキームである。
【図2】例1〜4に記載されたセルロースエステルインターポリマーの1H NMRスペクトルの収集である。
【図3】加水分解反応時における、時間の関数としてのアンヒドログルコース単位当たりのホルメートの置換度を示すグラフである。
【図4】例20〜23に関するC6炭素共鳴の13C NMRスペクトルの収集である。
【図5】37℃、pH1.2及び6.8における、酸化セルロースアセテートを含む圧縮錠剤中のアスピリンに関する溶解対時間(分)のプロットである。
【図6】37℃、pH1.2及び6.8における、被覆カプセル剤からのアスピリンの溶解を示す。
【図7】酸化セルロースアセテート:薬物混合物からの、水難溶性薬物の溶解を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあるセルロースエステルインターポリマーであって、式:
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そして、Xはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(式中、R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBは前記セルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を有するセルロースエステルインターポリマー。
【請求項2】
Xのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が0.05〜1.0であり且つC2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が少なくとも0.6である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項3】
Xのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が0.2〜1.0であり且つC2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が1.7〜2.8である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項4】
酸価が10より大きい請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項5】
酸価が30より大きい請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項6】
酸価が30より大きく且つ150未満である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項7】
酸価が30より大きく且つ130未満である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項8】
酸価が30より大きく且つ90未満である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項9】
Xがホルミル、カルボキシ又はそれらの混合物である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項10】
Xがカルボキシである請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項11】
Xがホルミルである請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項12】
Xがアミノメチル、R6−NH−CH2−又はそれらの混合物である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項13】
1、R2、R3、R4及びR5が、独立して、水素、アセチル、プロピオニル、ブチリル又はそれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項14】
重量平均分子量が少なくとも5,000g/モルである請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項15】
重量平均分子量が10,000g/モル〜900,000g/モルの範囲である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項16】
重合度が少なくとも10である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項17】
重合度が少なくとも25である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項18】
重合度が25〜50である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項19】
重合度が少なくとも250である請求項1に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項20】
カルボキシ対ホルミルの比がそれぞれ5:1又はそれより大きい請求項9に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項21】
カルボキシ対ホルミルの比がそれぞれ1:5又はそれより小さい請求項9に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項22】
カルボキシ対ホルミルの比がそれぞれ5:1〜1:5である請求項9に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項23】
C6カルボキシ基を有する複数のアンヒドログルコース単位を含んでなり、且つセルロースエステルインターポリマーが少なくとも0.6のC2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度及び10超の酸価を有するセルロースエステルインターポリマー。
【請求項24】
2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が1.7〜2.8である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項25】
2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が1.7〜2.8であり且つ酸価が30より大きく150未満である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項26】
2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が1.7〜2.8であり且つ酸価が30より大きく130未満である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項27】
2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの見掛け置換度が1.7〜2.8であり且つ酸価が30より大きく90未満である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項28】
前記C2〜C12アシルがアセチル、プロピオニル、ブチリル又はそれらの混合物である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項29】
セルロースエステルインターポリマー全体にC6カルボキシ基を有するアンヒドログルコース単位のランダム分布を有する請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項30】
重量平均分子量が少なくとも5,000g/モルである請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項31】
分子量範囲が10,000g/モル〜900,000g/モルである請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項32】
重合度が少なくとも10である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項33】
重合度が少なくとも25である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項34】
重合度が25〜50である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項35】
重合度が少なくとも250である請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項36】
C6ホルミル基を有する複数のアンヒドログルコース単位を更に含む請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項37】
C6アミノメチル基を有する複数のアンヒドログルコース単位を更に含む請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項38】
C6置換アミノメチル基を有する複数のアンヒドログルコース単位を更に含み、且つ前記アミノメチル基がアルキル、アリール及びアルキレンアリールからなる群から選ばれた置換基で置換されている請求項23に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項39】
C6カルボキシ基対C6ホルミル基の比がそれぞれ5:1又はそれより大きい請求項36に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項40】
C6カルボキシ基対C6ホルミル基の比がそれぞれ1:5又はそれより小さい請求項36に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項41】
C6カルボキシ基対C6ホルミル基の比がそれぞれ5:1〜1:5である請求項36に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項42】
重合度が少なくとも10であり、酸価が10より大きく、且つセルロースインターポリマー全体にC6カルボキシ基を有するアンヒドログルコース単位のランダム分布を有するセルロースインターポリマー。
【請求項43】
酸価が30より大きい請求項42に記載のセルロースインターポリマー。
【請求項44】
酸価が30より大きく150未満である請求項42に記載のセルロースインターポリマー。
【請求項45】
重量平均分子量が少なくとも5,000g/モルである請求項42に記載のセルロースインターポリマー。
【請求項46】
C6ホルミル基を有する複数のアンヒドログルコース単位を更に含む請求項42に記載のセルロースインターポリマー。
【請求項47】
C6カルボキシ基対C6ホルミル基の比がそれぞれ5:1又はそれより大きい請求項46に記載のセルロースインターポリマー。
【請求項48】
C6カルボキシ基対C6ホルミル基の比がそれぞれ1:5又はそれより小さい請求項46に記載のセルロースインターポリマー。
【請求項49】
C6カルボキシ基対C6ホルミル基の比がそれぞれ5:1〜1:5である請求項46に記載のセルロースインターポリマー。
【請求項50】
請求項46に記載のセルロースインターポリマーとC2〜C12アシル無水物又はその混合物との反応生成物。
【請求項51】
式:
【化2】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、C2〜C12アシル基からなる群から選ばれ;Xはヒドロキシメチレンであり;アンヒドログルコース単位A及びBは前記セルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成し;C2〜C12アシル基のアンヒドグルコース単位当たりの置換度は1.5〜2.5である]
のアンヒドログルコース単位を含んでなるセルロースエステルインターポリマー。
【請求項52】
アンヒドログルコース単位A及びBが、セルロースエステルインターポリマーの総アンヒドログルコース単位の70%超を構成する請求項51に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項53】
アンヒドログルコース単位A及びBが、セルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の80%超を構成する請求項51に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項54】
アンヒドログルコース単位A及びBが、セルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の90%超を構成する請求項51に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項55】
2〜C12アシル基の置換度が1.7〜約2.3であり、且つ重量平均分子量が少なくとも5,000g/モルである請求項51に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項56】
重合度が少なくとも10である請求項51に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項57】
重合度が少なくとも25である請求項51に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項58】
ホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度が0.5〜1.3であり、且つC2〜C12アシルの置換度が1.5〜2.5であるセルロースエステルインターポリマー。
【請求項59】
ホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度が0.7〜1.2であり、且つC2〜C12アシルの置換度が1.8〜2.3である請求項58に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項60】
ホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度が0.9〜1.1であり、且つC2〜C12アシルの置換度が1.9〜2.1である請求項58に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項61】
セルロースエステルインターポリマーの総アンヒドログルコース単位の少なくとも70%が6−O−ホルメート−2,3−O−C2〜C12アシル置換アンヒドログルコース単位及び2,3,6−O−C2〜C12アシル置換アンヒドログルコース単位からなる群から選ばれる請求項58に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項62】
セルロースエステルインターポリマーの総アンヒドログルコース単位の少なくとも80%が6−O−ホルメート−2,3−O−C2〜C12アシル置換アンヒドログルコース単位及び2,3,6−O−C2〜C12アシル置換アンヒドログルコース単位からなる群から選ばれる請求項58に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項63】
セルロースエステルインターポリマーの総アンヒドログルコース単位の少なくとも90%が6−O−ホルメート−2,3−O−C2〜C12アシル置換アンヒドログルコース単位及び2,3,6−O−C2〜C12アシル置換アンヒドログルコース単位からなる群から選ばれる請求項58に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項64】
重量平均分子量が少なくとも5,000g/モルである請求項58に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項65】
セルロースポリマーのアンヒドログルコース単位のC6ヒドロキシルをホルミル基又はカルボキシル基に転化させる方法であって、
アミノ置換環状ニトロキシル誘導体、一次酸化体及び最終酸化体を、pH4未満のセルロース混合物に添加して、反応混合物を形成し(ここでセルロース混合物はC2〜C12アルキル酸、水及びC6ヒドロキシル基を有するアンヒドログルコース単位を含むセルロースインターポリマーから構成される);そして
C6ヒドロキシルをホルミル基又はカルボキシ基に転化することによって酸化セルロースインターポリマーを生成するのに充分な反応時間を経過させる
ことを含んでなる方法。
【請求項66】
前記C2〜C12アルキル酸が酢酸、プロピオン酸、酪酸又はそれらの混合物を含む請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記セルロース混合物のpHが1.5〜3である請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アミノ置換2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル誘導体である請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アミノ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−(C1〜C4アシルアミド)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体の量がセルロースインターポリマー中のアンヒドログルコース単位モノマーのモル当たり約0.0025〜約0.1モル当量の範囲である請求項65に記載の方法。
【請求項73】
前記一次酸化体がNa、K、Mn、Mg、Fe若しくはCuの塩又はそれらの混合物を含む請求項65に記載の方法。
【請求項74】
前記一次酸化体がKCl、KBr、NaCl、NaBr、NaI、NaOCl、NaOBr、オキソン(oxone)、Mn(NO32、Mn(OAc)3、KMnO4、Mn23、MnO2、Mg(NO32、FeCl3、Cu(NO32又はそれらの混合物を含む請求項65に記載の方法。
【請求項75】
前記一次酸化体がMn(OAc)3である請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記一次酸化体がMn(OAc)3であり且つ前記最終酸化体が過酢酸である請求項65に記載の方法。
【請求項77】
前記一次酸化体がKMnO4である請求項65に記載の方法。
【請求項78】
一次酸化体の量がセルロースインターポリマー中のアンヒドログルコース単位モノマーのモル当たり約0.0001〜約0.1モル当量の範囲である請求項65に記載の方法。
【請求項79】
前記最終酸化体がO2、オゾン、NaOCl、NaOBr、H22又はCH3CO3Hを含む請求項65に記載の方法。
【請求項80】
前記最終酸化体がCH3CO3Hである請求項65に記載の方法。
【請求項81】
前記反応混合物の温度が40℃より高く60℃未満である請求項65に記載の方法。
【請求項82】
水が、反応混合物の総重量に基づき、1〜60重量%の範囲の量で存在する請求項65に記載の方法。
【請求項83】
前記酸化セルロースインターポリマーが10超の酸価を有する請求項65に記載の方法。
【請求項84】
前記酸化セルロースインターポリマーが30超の酸価を有する請求項65に記載の方法。
【請求項85】
前記酸化セルロースインターポリマーが30〜130の酸価を有する請求項65に記載の方法。
【請求項86】
酸化セルロースインターポリマーを単離する工程を更に含む請求項65に記載の方法。
【請求項87】
前記セルロースインターポリマーをC2〜C12アシル無水物又はその混合物と反応させることを更に含む請求項65に記載の方法。
【請求項88】
セルロースエステルポリマーのアンヒドログルコース単位のC6ヒドロキシルをホルミル基又はカルボキシル基に転化させる方法であって、
アミノ置換環状ニトロキシル誘導体、一次酸化体及び最終酸化体を、pH4未満のセルロースエステル混合物に添加して、反応混合物を形成し(ここでセルロースエステル混合物はC2〜C12アルキル酸、水及びC6ヒドロキシル基を有するアンヒドログルコース単位を含むセルロースエステルインターポリマーから構成される);そして
C6ヒドロキシルをホルミル基又はカルボキシ基に転化することによって、酸化セルロースエステルインターポリマーを生成するのに充分な反応時間を経過させる
ことを含んでなる方法。
【請求項89】
前記セルロースエステルインターポリマーが少なくとも0.5のC2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの置換度を有する請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記セルロースエステル混合物のpHが1.5〜3である請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アミノ置換2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル誘導体である請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アミノ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−(C1〜C4アシルアミド)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項88に記載の方法。
【請求項95】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体の量がセルロースエステルインターポリマー中のアンヒドログルコース単位モノマーのモル当たり約0.0025〜約0.1モル当量の範囲である請求項88に記載の方法。
【請求項96】
前記一次酸化体がNa、K、Mn、Mg、Fe若しくはCuの塩又はそれらの混合物を含んでなる請求項88に記載の方法。
【請求項97】
前記一次酸化体がKCl、KBr、NaCl、NaBr、NaI、NaOCl、NaOBr、オキソン、Mn(NO32、Mn(OAc)3、KMnO4、Mn23、MnO2、Mg(NO32、FeCl3、Cu(NO32又はそれらの混合物を含む請求項88に記載の方法。
【請求項98】
前記一次酸化体が三酢酸マンガンである請求項88に記載の方法。
【請求項99】
前記最終酸化体が過酢酸である請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記一次酸化体がKMnO4である請求項88に記載の方法。
【請求項101】
一次酸化体の量が、セルロースエステルインターポリマー中のアンヒドログルコース単位モノマーのモル当たり、約0.0001〜約0.1モル当量の範囲である請求項88に記載の方法。
【請求項102】
前記最終酸化体がO2、オゾン、NaOCl、NaOBr、H22又はCH3CO3Hを含んでなる請求項88に記載の方法。
【請求項103】
前記最終酸化体がCH3CO3Hである請求項88に記載の方法。
【請求項104】
最終酸化体の量が、セルロースエステルインターポリマー中のアンヒドログルコース単位モノマーのモル当たり、約0.1〜約10モル当量の範囲である請求項88に記載の方法。
【請求項105】
前記反応混合物の温度が40℃より高く60℃未満である請求項88に記載の方法。
【請求項106】
前記接触時間が10超の重合度を有する酸化セルロースエステルインターポリマーを生成することができる持続時間である請求項88に記載の方法。
【請求項107】
前記接触時間が10超の重合度を有する酸化セルロースエステルインターポリマーを生成することができる持続時間である請求項88に記載の方法。
【請求項108】
水が、反応混合物の総重量に基づき、1〜60重量%の量で存在する請求項88に記載の方法。
【請求項109】
前記酸化セルロースエステルインターポリマーが10超の酸価を有する請求項88に記載の方法。
【請求項110】
前記酸化セルロースエステルインターポリマーが30超の酸価を有する請求項88に記載の方法。
【請求項111】
酸化セルロースエステルインターポリマーを単離する工程を更に含む請求項88に記載の方法。
【請求項112】
安定型の蟻酸セルロースエステルインターポリマーの製造方法であって、
(1)第1の接触温度において蟻酸、水及びC2〜C12アシル無水物を混合して混合無水物混合物を形成し;
(2)第2の接触温度において前記混合無水物混合物とセルロース化合物とを接触させて反応混合物を形成し;
(3)前記反応混合物に酸触媒を添加し;
(4)ホルミル化時間を経過させる
ことを含んでなり、得られる蟻酸セルロースエステルインターポリマーが、0.5〜1.5のホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度を有する方法。
【請求項113】
得られる蟻酸セルロースエステルインターポリマーが、0.7〜1.2のホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度を有する請求項112に記載の方法。
【請求項114】
得られる蟻酸セルロースエステルインターポリマーが、0.9〜1.1のホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度を有する請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記酸触媒が硫酸である請求項112に記載の方法。
【請求項116】
前記酸触媒を、セルロース化合物の重量に基づき、約0.25〜約15重量%の範囲の量で添加する請求項112に記載の方法。
【請求項117】
工程(1)で添加する蟻酸の量が、セルロース化合物のモルに基づき、約4〜約15モル当量である請求項112に記載の方法。
【請求項118】
前記第1の接触温度が−10℃〜15℃の範囲である請求項112に記載の方法。
【請求項119】
前記第2の接触温度が10〜70℃の範囲である請求項112に記載の方法。
【請求項120】
得られる蟻酸セルロースエステルインターポリマーを単離する工程を更に含む請求項112に記載の方法。
【請求項121】
安定型のセルロースエステルインターポリマーの製造方法であって、
(1)第1の接触温度において蟻酸、水及びC2〜C12アシル無水物を混合して混合無水物混合物を形成し;
(2)第2の接触温度において前記混合無水物混合物とセルロース化合物とを接触させて反応混合物を形成し;
(3)前記反応混合物に酸触媒を添加し;
(4)ホルミル化時間を経過させ;
(5)反応混合物にC2〜C12アシル無水物を添加し;
(6)反応混合物を第3接触温度に加熱し;
(7)アシル化時間を経過させる
ことを含んでなり、得られるセルロースエステルインターポリマーが約1.5〜約2.5のC2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの置換度及び約0.5〜約1.5のホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度を有する方法。
【請求項122】
得られるセルロースエステルインターポリマーが1.8〜2.3のC2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの置換度及び0.7〜1.2のホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度を有する請求項121に記載の方法。
【請求項123】
得られるセルロースエステルインターポリマーが1.9〜2.1のC2〜C12アシルのアンヒドログルコース単位当たりの置換度及び0.9〜1.1のホルメートのアンヒドログルコース単位当たりの置換度を有する請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記酸触媒が硫酸である請求項121に記載の方法。
【請求項125】
前記酸触媒を、セルロース化合物の重量に基づき、0.25〜約15重量%の範囲の量で添加する請求項121に記載の方法。
【請求項126】
工程(1)で添加する蟻酸の量が、セルロース化合物のモルに基づき、4〜13モル当量である請求項121に記載の方法。
【請求項127】
前記第1接触温度が−10℃〜15℃の範囲である請求項121に記載の方法。
【請求項128】
前記第2接触温度が10〜70℃の範囲である請求項121に記載の方法。
【請求項129】
前記第3接触温度が約40〜約60℃の範囲である請求項121に記載の方法。
【請求項130】
前記C2〜C12アシル無水物が無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物又はそれらの混合物を含む請求項121に記載の方法。
【請求項131】
セルロースエステル上において置換された蟻酸エステル基を加水分解又はアルコール分解によって除去する工程を更に含む請求項121に記載の方法。
【請求項132】
セルロースエステルインターポリマーを単離する工程を更に含む請求項121に記載の方法。
【請求項133】
反応混合物に、アミノ置換環状ニトロキシル誘導体、一次酸化体及び最終酸化体を添加し(ここで反応混合物は4未満のpHを有する);そして、セルロースエステルインターポリマーのアンヒドログルコース単位のC6ヒドロキシルの転化を行うのに充分な反応時間を経過させる工程を更に含む請求項121に記載の方法。
【請求項134】
第一アルコールをホルミル、カルボキシレート又はそれらの混合物に転化する方法であって、
4−置換ピペリジンニトロキシル誘導体(この置換基は一次酸化体及び最終酸化体を水素結合させることができる)を混合物(前記混合物は約4未満のpHを有し、且つ第一アルコール官能基を含む化合物から構成される)に添加して、反応混合物を形成し;
第一アルコール官能基の転化を行うのに充分な反応時間を経過させる
ことを含んでなる方法。
【請求項135】
前記第一アルコールがα−1,4グリコシド結合を有する澱粉エステル及び他の多糖類エステル、α−1,3−グリコシド結合を有するプルランエステル及び他の多糖類エステル、β−1,4−グリコシド結合を有するセルロースエステル及び他の多糖類エステル、並びにキチン、キトサン、フルクタン、グラクトマンナン、グルコマンナン、キシログルカン及びアラビノキシランから選ばれたβ―グルカンエステルから選ばれた多糖類上の基である請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記一次酸化体がMn(III)塩である請求項134に記載の方法。
【請求項137】
前記Mn塩が三酢酸マンガンである請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記一次酸化体がCu、Mg、Fe、Na、Kの塩基又はそれらの混合物を更に含む請求項134に記載の方法。
【請求項139】
前記反応混合物が更に水を含む請求項134に記載の方法。
【請求項140】
前記反応混合物が更に水及びC2〜C12アルキル酸を含む請求項134に記載の方法。
【請求項141】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アミノ置換2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル誘導体である請求項134に記載の方法。
【請求項142】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アミノ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項134に記載の方法。
【請求項143】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−(C1〜C4アシルアミド)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項134に記載の方法。
【請求項144】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである請求項134に記載の方法。
【請求項145】
前記アミノ置換環状ニトロキシル誘導体が不活性樹脂上に固定されている請求項134に記載の方法。
【請求項146】
(i)組成物中の(i)及び(ii)の総重量に基づき約0.1〜約50重量%のセルロースエステルインターポリマー{前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位はアルコール酸化状態にあり、且つ前記セルロースエステルインターポリマーは式:
【化3】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(式中、R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含む};
(ii)前記組成物中の(i)及び(ii)の総重量に基づき約0.1〜50重量%の(i)以外の樹脂;並びに
(iii)有機溶剤又は溶剤混合物[(i)及び(ii)の総重量は(i)、(ii)及び(iii)の総重量の5〜70重量%である]
を含んでなる被覆組成物。
【請求項147】
(i)以外の前記樹脂がポリエステル、ポリエステル−アミド、セルロースエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ビニルポリマー、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、シリコーン樹脂及びニトロセルロースからなる群から選ばれる請求項146に記載の組成物。
【請求項148】
レベリング、レオロジー及び流れ調整剤;艶消し剤;顔料湿潤及び分散剤;界面活性剤;紫外線吸収剤;紫外線安定剤;顔料;脱泡及び消泡剤;沈澱防止、垂れ防止及び粘度付与剤;皮張り防止剤;色別れ防止剤;殺真菌剤及び防かび剤;腐蝕防止剤;増粘剤;並びに融合助剤からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の被覆添加剤を、組成物の重量に基づき、約0.1〜約15重量%更に含む請求項146に記載の組成物。
【請求項149】
(i)組成物中の(i)及び(ii)の総重量に基づき0.1〜約50重量%のセルロースエステルインターポリマー{前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位はアルコール酸化状態にあり、且つ前記セルロースエステルインターポリマーは式:
【化4】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成し;前記インターポリマー上の全遊離カルボキシル基の少なくとも約25%は塩基で中和されている]
のアンヒドログルコース単位を含んでなる};
(ii)少なくとも1種の相溶性水溶性又は水分散性樹脂;
(iii)水;並びに
(iv)少なくとも1種の有機溶剤[(i)及び(ii)の総重量は総組成物の5〜50重量%であり、前記有機溶剤は組成物の総重量の20重量%未満を構成する]
を含んでなる水性被覆組成物。
【請求項150】
約40〜90重量%の少なくとも1種の顔料及びそれに対応して約10〜60重量%のセルロースエステルインターポリマーを含んでなる顔料分散体であって、前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあり、且つ前記セルロースエステルインターポリマーが式:
【化5】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含んでなる顔料分散体。
【請求項151】
セルロースエステルインターポリマーを含む組成物が被覆されたか又はセルロースエステルインターポリマーを含む組成物と混合された治療薬を含んでなる経口医薬組成物であって、前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあり、且つ前記セルロースエステルインターポリマーが、式:
【化6】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含んでなる医薬組成物。
【請求項152】
前記組成物がヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートブチレートからなる群から選ばれた水溶性ポリマーを更に含む請求項151に記載の医薬組成物。
【請求項153】
少なくとも1種の溶解増強剤を更に含む請求項151に記載の医薬組成物。
【請求項154】
治療を必要とする哺乳動物を少なくとも1種の治療薬で治療する方法であって、セルロースエステルインターポリマーを含んでなる組成物が被覆されたか又はセルロースエステルインターポリマーを含んでなる組成物と混合された治療薬を含んでなる経口医薬組成物であって、前記セルロースエステルインターポリマーの各アンヒドログルコース単位のC2及びC3位がアルコール酸化状態にあり且つ前記セルロースエステルインターポリマーが、式:
【化7】

[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素及びC2〜C12アシル基からなる群から選ばれ、R1、R2、R3、R4及びR5の少なくとも1つはC2〜C12アシル基であり;そしてXはホルミル、ヒドロキシメチレン、アミノメチル、R6−NH−CH2−(R6は、アルキル、アリール又はアルキレン−アリールからなる群から選ばれる)若しくはカルボキシ又はそれらの混合物であるが、Xの少なくとも一部がカルボキシである場合には酸価は10より大きく;アンヒドログルコース単位A及びBはセルロースエステルインターポリマーのセルロース部分の総アンヒドログルコース単位の65%超を構成する]
のアンヒドログルコース単位を含んでなる医薬組成物を前記哺乳動物に投与することを含んでなる治療方法。
【請求項155】
前記セルロースエステルインターポリマーが治療薬の通常の放出速度プロファイルを調整する請求項154に記載の方法。
【請求項156】
前記セルロースエステルインターポリマーが少なくとも1種の治療薬の溶解度を増大させ、それによって経口バイオアベイラビリティを増加させる請求項154に記載の方法。
【請求項157】
放出速度調整剤として使用するための、請求項1、23、42又は51のいずれか1項に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項158】
溶解増強剤として使用するための、請求項1、23、42又は51のいずれか1項に記載のセルロースエステルインターポリマー。
【請求項159】
請求項146に記載の被覆組成物が被覆された製品。
【請求項160】
請求項149に記載の被覆組成物が被覆された製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−515515(P2007−515515A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541671(P2006−541671)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039390
【国際公開番号】WO2005/054297
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】