説明

セルロースエーテルを挽く方法

本発明は,a)セルロースエーテルと水との合計重量に基づいて20〜90重量%の水とカチオン性界面活性剤とを含むセルロースエーテルをミルにおいて挽くステップ;及びb)挽く間に、挽くステップの前又は挽くステップに続いて、該混合物を乾燥させる任意的なステップを含む,セルロースエーテルを挽く方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,セルロースエーテルを挽く方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は米国特許第6,509,461から公知である。該方法において,膨潤された及び/又は溶解されたセルロース誘導体及び水のフィード組成物が,ふるいなしの高回転速度ガスジェットインパクトミルにおいて担体及び熱交換ガス,例えば空気又は水蒸気/空気の混合物と接触される。
【0003】
米国特許第4,076,935号は,空気及び十分な水の存在下で,振動ミルを使用してセルロース化合物を挽いて,2〜10重量%の水分含有量を有する生成物を得る方法を開示している。
【0004】
米国特許第2,720,464号は,セルロースエーテル及び界面活性剤を含むセルロースエーテル組成物を開示している。界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであることができる。セルロースエーテル組成物は,乾燥粉末の形態であり,まず組成物を乾燥させ,次にそれを挽くことにより製造される。
【0005】
独国特許第1068685号は,ハンマーミルを使用して,界面活性剤の存在下でセルロースエーテルを挽く方法を開示している。界面活性剤は,セルロースエーテルが挽かれている間,ハンマーミル内でセルロースエーテル上に噴霧される。
【0006】
先行技術の方法は,湿ったセルロースエーテルが塊になる及び/又はミルの壁に付着して,製品の損失をもたらすという問題を有する。さらに,これらの方法で得られた製品は,取り扱いのとき,及び保存されるとき,粉塵爆発の危険がかなりある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は,セルロースエーテルを挽くための改良された方法を提供すること,及び粉塵爆発の危険の少ないセルロースエーテル製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は
a)セルロースエーテルと水との合計重量に基づいて20〜90重量%の水を含むセルロースエーテルと、カチオン性界面活性剤とをミルにおいて挽くステップ;及び
b)挽く間に、挽くステップの前又は挽くステップに続いて、該混合物を乾燥させる任意的なステップ
を含む,セルロースエーテルを挽く方法により達成される。
【0009】
本発明の方法は,抗静電性であり,その結果,塊にならない又は凝集しない、細かなサイズの生成物をもたらす。さらなる利点は,セルロースエーテルがミルの壁に付着しないために,より高い生成収率をもたらすことである。カチオン性界面活性剤の使用は,アニオン性界面活性剤を含む組成物より生分解性の低いセルロースエーテル組成物をもたらす。これは、(生)分解に対する良好な安定性が重要である用途,例えば壁紙の接着剤用途,において特に有利である。改良された生分解性は,セルロースエーテルのストック溶液のより長い保存寿命をもたらし得る。さらに,その正電荷のために,カチオン性界面活性剤はアニオン性界面活性剤より効率的にセルロースに吸着することができ,より抗静電性があり,凝集がより少なく,取り扱い及び保存における粉塵爆発の危険を低下させる細かなサイズのセルロースエーテル製品をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法で使用されるセルロースエーテルは,セルロース及び水の合計重量に基づいて20〜90重量%の水を含む。好ましくは,セルロースエーテルは25〜85重量%の水,より好ましくは30〜80重量%の水,最も好ましくは40〜80重量%の水を含む。
【0011】
本発明のセルロースエーテルは,先行技術で公知の任意のセルロースエーテルであることができる。セルロースエーテルは,ノニオン性及びアニオン性であることができる。ノニオン性セルロースエーテルの例はメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,メチルヒドロキシエチルセルロース,エチルヒドロキシエチルセルロース,メチルエチルヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,及びエチルヒドロキシプロピルセルロースであることができる。アニオン性セルロースエーテルの例は,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロース,スルホエチルセルロース,ヒドロキシエチルスルホエチルセルロース,及びヒドロキシプロピルスルホエチルセルロースである。これらのセルロースエーテルのさらなる例は,疎水的に変性されたセルロースエーテルであり,該エーテルは,例えば欧州特許出願公開第0991668号及び欧州特許出願公開第1117694号から先行技術において公知である。上記セルロースエーテルの任意の混合物もまた本発明の方法において使用されることができる。
【0012】
カチオン性界面活性剤は,先行技術において公知である任意のカチオン性界面活性剤であることができる。好ましくは,カチオン性界面活性剤は4級アンモニウム化合物である。カチオン性界面活性剤は式I〜IIIの4級アンモニウム化合物であり得る。
【0013】




【0014】
ここでR1〜R3は同一であるか又は異なり,8〜22の炭素原子を有する炭化水素であるか,又はR1〜R3の少なくとも1が2〜20のEO単位を有するポリエトキシレート基であり,R1〜R3の残りの基は8〜22の炭素原子を有する炭化水素であり,Xは,塩素,臭素又はメチルサルフェートから選択されたアニオンである。好ましくは,R1〜R3は,10〜20の炭素原子を有する炭化水素である。
【0015】
カチオン界面活性剤の例は,テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド,ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド,ココトリメチルアンモニウムクロライド,タロートリメチルアンモニウムクロライド,水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド,オレイルトリメチルアンモニウムクロライド,水素化タロートリメチルアンモニウムメトサルフェート,ジデシルジメチルアンモニウムクロライド,ジココジメチルアンモニウムクロライド,ジ(水素化タロー)ジメチルアンモニウムクロライド,ジタロージメチルアンモニウムクロライド,ココベンジルジメチルアンモニウムクロライド,アルキルポリグリコールエーテルアンモニウムメチルクロライド,及びアルキルポリグリコールエーテルアンモニウムメチルサルフェートである。カチオン性界面活性剤の市販品の例は,Akzo Nobel NVの2002年6月のパンフレット「製品総覧界面活性剤ヨーロッパ」において見ることができる。好ましいカチオン性界面活性剤は,ジデシルジメチルアンモニウムクロライドである。この界面活性剤は,他のカチオン性界面活性剤と比較して強化された殺生物性を有し,もし必要であれば,バクテリアにより悪化されることなくセルロースエーテルのより長い保存寿命を可能にする。
【0016】
セルロースエーテル中のカチオン性界面活性剤の量は,乾燥セルロースエーテルの合計重量に基づいて少なくとも0.001重量%,好ましくは少なくとも0.005重量%,最も好ましくは少なくとも0.01重量%であり,かつ1重量%以下,好ましくは0.5重量%以下,最も好ましくは0.1重量%以下である。
【0017】
本発明の方法において使用されるミルは,セルロースエーテルを挽くために適する任意のミルであることができる。そのようなミルの例は,ハンマーミル,ボールミル,振動ミル,及びインパクトミルである。そのようなミルにおいて,液体,気体フロー又は両者の組合せがミル中に存在するセルロースエーテルに添加される及び/又はセルロースエーテル上を流されることができる。もし液体又は気体/液体混合物が使用されるならば,セルロースエーテルは極低温条件下で挽かれることができる。好ましいミルは,セルロースエーテルが挽かれている間,セルロースエーテル上を気体の流れが流されることができるものである。そのようなミルの例は、欧州特許出願公開第0347948号,独国特許出願公開第3811910号又は欧州特許出願公開第0775526号に記載されているインパクトミルである。気体の流れは,不活性ガス(例えば窒素及び二酸化炭素),空気,不活性ガスと水蒸気との混合物,又は水蒸気と空気との混合物であることができる。気体の流れは加熱されてもよく,環境温度であってもよく,又は冷却されてもよい。好ましくは,気体の流れは100℃〜250℃の間の温度に加熱される。インパクトミルにおいて加熱された気体の流れを使用することは,特に,セルロースエーテルを同時に挽き、かつ効果的に乾燥することを可能にし,より費用効果的であり,工程を簡単にする。
【0018】
カチオン性界面活性剤は,セルロースエーテルがミルに導入される直前にセルロースエーテルに好ましくは添加される。このようにして,例えばセルロースエーテルの製造又はミルへの輸送の間の界面活性剤の損失が防がれる。
【0019】
本発明は,上記方法のいずれかにより得られ得るカチオン性界面活性剤を含むセルロースエーテルに,さらに関する。
【0020】
本発明のセルロースエーテルにおける水の量は,乾燥セルロースエーテルの重量に基づいて10重量%未満,好ましくは6重量%未満,より好ましくは4重量%未満,最も好ましくは2重量%未満である。
【0021】
本発明の方法により得られたセルロースエーテル粒子の平均粒子サイズは,先行技術において入手可能な任意の平均粒子サイズであることができる。平均粒子サイズは,典型的には0.05〜1mmである得る。
【0022】
本発明のセルロースエーテルは広い範囲の用途,例えばセメント,石膏,コーティング組成物において増粘剤として、又は着色剤においてバインダーとして,又は医薬品において適切に使用されることができる。
【0023】
本発明は以下の実施例において説明される。
【0024】
実施例
【0025】
「プラスチック袋」試験
エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)の乾燥重量に基づいて計算されて50重量%の水を含むEHECの100重量部の3部が3つのプラスチック袋に入れられた。EHEC/水の塊は10〜20mmの直径を有する。1つの袋(袋A)において,0.01重量部のジデシルジメチルアンモニウムクロライドが添加された。第二の袋(袋B)において,0.01重量部のC14〜C16オレフィンのスルホネートが添加された。第三の袋(袋C)には界面活性剤は添加されなかった。袋A〜Cの中の成分は,各袋の外側への機械的力で激しく攪拌された。
【0026】
カチオン性界面活性剤を含む袋1中のEHEC/水の塊は,攪拌の後よく分散され,粉々に砕かれ,2〜5mmの直径を有する粒子を形成した。プラスチック袋の壁に吸着は観察されなかった。
【0027】
袋2におけるアニオン性界面活性剤を含むEHEC/水の塊は,攪拌の後,分散され,粉々に砕かれ,5〜8mmの直径を有する粒子を形成した。いくらかの固体物質が袋2の内壁に吸着した。内壁はべたついていることがさらに観察された。
【0028】
袋3における界面活性剤なしのEHEC/水の塊は凝集して,一つの大きな塊を形成した。プラスチック袋の内壁はべたついていた。
【0029】
これらの実験は,アニオン性界面活性剤を使用する又は界面活性剤を全く使用しないよりカチオン性界面活性剤を使用することにより、EHEC/水の塊はより容易により小さな粒子に、挽かれることができることを示す。
【0030】
乾燥挽き
エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)の乾燥重量に基づいて計算されて50重量%の水を含む100重量部のEHECが,0.01重量部のジデシルジメチルアンモニウムクロライド(カチオン性界面活性剤)と攪拌された。EHECは、混合物中でよく分散された。塊は観察されなかった。次に,混合物はインパクトミルに導入され,そこで乾燥されて,200μm未満の粒子サイズを有する粉末を形成した。ミルの壁にEHECはなかった。
【0031】
比較のため,界面活性剤が添加されないことを除いて,同じ実験が繰り返された。ミルへの導入の前に,湿ったEHECは,わずかな分散を示し,大きな塊が観察された。乾燥及び挽いた後のミルの検査は,ミルの壁にかなりの量のセルロースエーテルの付着を明らかにし,カチオン性界面活性剤を添加したときに観察されたより低い生成物収率をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)セルロースエーテルと水との合計重量に基づいて20〜90重量%の水を含むセルロースエーテルと、カチオン性界面活性剤とをミルにおいて挽くステップ;及び
b)挽く間に、挽くステップの前又は挽くステップに続いて、該混合物を乾燥させる任意的なステップ
を含む,セルロースエーテルを挽く方法。
【請求項2】
カチオン性界面活性剤が、8〜22の炭素原子を含む少なくとも1の炭化水素基を含む4級アンモニウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カチオン性界面活性剤が混合物の合計重量に基づいて0.001〜 2重量%, 好ましくは0.01〜0.5 重量%の量で存在する、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
セルロースエーテルが、メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,メチルヒドロキシエチルセルロース,エチルヒドロキシエチルセルロース,メチルエチルヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース,メチルヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,メチルヒドロキシプロピルセルロース,及びエチルヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択されたノニオン性セルロースエーテルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られ得る、カチオン性界面活性剤を含むセルロースエーテル。
【請求項6】
セメント,石膏,又はコーティング組成物において増粘剤として、着色剤においてバインダーとして,又は医薬品において請求項5に記載のセルロースエーテルを使用する方法。

【公表番号】特表2008−540759(P2008−540759A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510569(P2008−510569)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062159
【国際公開番号】WO2006/120194
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】