説明

セルロースエーテル及びヒドロキシアルキル化セルロースエーテルの製造方法

【課題】生産性が高く効率的で、分子量低下が少なく、且つ水溶性の高いセルロースエーテル及びヒドロキシアルキル化セルロースエーテルを製造することができる、セルロースエーテル及びヒドロキシアルキル化セルロースの製造方法を提供する。
【解決手段】セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)及び塩基化合物の共存下で、セルロースの粉砕処理を行ない、該セルロースと該エーテル化剤との反応を行う工程を有するセルロースエーテルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルロースエーテル及びヒドロキシアルキル化セルロースエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性セルロース誘導体は、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分や分散剤、改質剤、凝集剤等に用いられ、その用途は多岐にわたる。この親水性セルロース誘導体の製造にあたっては、通常、原料となるセルロースは非常に結晶性が高く反応性に乏しいため、その結晶性を低減し、反応性を改善する操作が必要になる。最も一般的に行なわれるのは、セルロースと大量の水および大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合し、いわゆるアルカリセルロースとする、アルセル化又はマーセル化と呼ばれるセルロースの活性化処理の後、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロリド等のエーテル化剤やアルキレンオキシド等のヒドロキシアルキル化剤と反応し誘導体化する方法である。その他の方法としては、塩化リチウムを含むジメチルアセトアミドを溶媒として用い、更にアミン類や3級アルコラート触媒を添加してセルロースを溶解させ、その後誘導体化を行なう方法(例えば、特許文献1参照)や、予めボールミルやロッドミル等を用いたメカノケミカル的手法でセルロースの結晶性を低下させ、その後誘導体化を行なう方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−177002号公報
【特許文献2】特開2009−102587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルセル化による活性化法では、大過剰のアルカリを使用するため、過剰のアルカリと反応剤(特にエーテル化剤)との間で副反応が進行しやすいため効率が悪く、また大量のアルカリに由来する多量の中和塩の除去、並びに多量の副生成物の除去に、大きな負荷がかかるという課題があった。
【0005】
一方、特許文献1に記載された特定の溶媒にセルロースを溶解させ反応を行う方法においては、該溶媒に対するセルロースの溶解度が十分でないため、溶媒量としては極めて多量に、少なくともセルロースの10質量倍以上は必要となる。更には、添加剤である塩化リチウムも、セルロースとほぼ同量が必要となるため精製が必須であるなど、前述した方法と同様に工業的には負荷の大きい製造法となっていた。
【0006】
特許文献2に記載されたメカノケミカル的手法により予めセルロースの結晶性を低下させる方法は、上記の生産性や効率に関する課題を解決した優れた方法であるが、得られるセルロースエーテル又はその誘導体の応用に際して、セルロースエーテル又はその誘導体に十分な水溶性が必要な場合には、親水性置換基の導入率を増やすだけでは足りず、ほぼ完全に結晶がなくなるまで結晶性を低下させたセルロースを原料に用いることが必要であること、及びメカノケミカル的手法によるセルロースの結晶性の低下には、結晶性の低下と共にセルロース鎖の切断が伴うことが明らかになり、高分子量で且つ水溶性が高いセルロースエーテル又はその誘導体を得ることが困難であるという課題があることが明らかになった。
【0007】
本発明は、生産性が高く効率的に、且つ分子量低下が少なく、水溶性の高いセルロースエーテル及びヒドロキシアルキル化セルロースエーテルを製造することができる、セルロースエーテル及びヒドロキシアルキル化セルロースの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、塩基化合物の共存下で、セルロースにエーテル化剤を反応させるセルロースエーテルの製造において、特定のエーテル化剤及び塩基化合物の存在下で、セルロースの粉砕処理を行なうことで、セルロースの分子量低下を抑制しながら、且つ水溶性が高い、セルロースエーテルを製造しうることを見出した。また、更に該製造方法で得られたセルロースエーテルに、塩基化合物の共存下で、アルキレンオキシドを反応させることで、セルロースと比べて分子量低下が少なく、且つ水溶性が高いヒドロキシアルキル化セルロースエーテルを製造しうることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、下記工程1を有する、セルロースエーテルの製造方法である。
工程1:セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)及び塩基化合物の共存下で、セルロースの粉砕処理を行ない、該セルロースと該エーテル化剤との反応を行う工程
【0010】
また、本発明は、上記工程1を有し、工程1においてセルロースと、セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤とを反応させるセルロースエーテルの製造方法でセルロースエーテルを製造した後、該セルロースエーテルに更に炭素数2〜4のアルキレンオキシドを反応させるヒドロキシアルキル化セルロースエーテルの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、生産性が高く効率的に且つ分子量低下が少なく、水溶性の高いセルロースエーテル及びヒドロキシアルキル化セルロースエーテルの製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[セルロースエーテルの製造方法]
本発明のセルロースエーテル(以下「E−Cell」とも言う)の製造方法は、下記工程1を有する。
工程1:セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)及び塩基化合物の共存下で、セルロースの粉砕処理を行ない、該セルロースと該エーテル化剤との反応を行う工程。
上記工程1において、粉砕処理時にセルロースと、セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)(以下「エーテル化剤」ともいう)とが反応して生成されたE−Cellを含む粉砕処理物が得られる。
【0013】
本発明のE−Cellの製造方法によれば、セルロースの重合度の低下を抑制しながら、セルロースに対するエーテル化剤の反応性を向上できるため、生産性が高く効率的に、高分子量且つ水溶性の高いセルロースエーテルを製造することができる。その理由としては、以下のように考えられる。
一般にセルロースは水酸基間の水素結合により非常に高い結晶性を有し、一旦低結晶化したセルロースも容易に再結晶化が起きることが知られている。この再結晶化は、粉砕処理後に低結晶化したセルロースとエーテル化剤との反応を行う際にも起こっていると考えられる。そして、再結晶化してしまったセルロースは、エーテル化剤との反応がほとんど進行せず、置換基の導入が妨げられるため、再結晶化によって結晶化部の割合が高くなってしまったセルロースからは、水溶性の高いセルロースエーテルは得られないと考えられている。よって、低結晶化後にエーテル化剤との反応を行う従来の製造方法の場合、再結晶化後の結晶化部の割合を低く抑えるために、原料としてほぼ完全に結晶がなくなるまで結晶性を低下させたセルロースを用いられていた。
一方、本発明の製造方法においては、セルロースの低結晶化と同時にセルロースのエーテル化が進行し、導入された置換基が再結晶化を阻害するため、再結晶化は抑制されると考えられる。このため本発明の製造方法によれば、重合度の低下を伴いながらほぼ完全に結晶がなくなるまでセルロースの結晶性を低下させる従来の方法に比べ、生産性が高く、且つ分子量低下が少なく、結晶領域の割合の少ない、水溶性の高いセルロースエーテルを、得ることができると考えられる。
【0014】
<工程1>
(セルロース)
一般にセルロースは幾つかの結晶構造が知られており、その結晶化度とは一部に存在するアモルファス部と結晶部との割合として定義されるが、本発明におけるセルロースの結晶化度とは、天然セルロースの結晶構造に由来するI型の結晶化度を示し、X線結晶回折測定の結果を下記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度によって定義される。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 ・・・計算式(2)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
【0015】
一般的に知られているパルプ又はセルロースにも極めて少量のアモルファス部が存在するため、それらの結晶化度は、前記計算式(2)によれば、概ね60〜90%の範囲に含まれる。
低結晶化の処理を行ない、結晶部がほぼ消失したセルロースに対して計算式(2)を適用した場合、計算の結果得られる結晶化度が負の値をとることもありうるが、本発明においては、それらは全て「結晶化度0%」とみなす。
【0016】
本発明で用いるセルロース(以下、「原料セルロース」ともいう。)の結晶化度は、本発明の製造方法には影響を与えず、特に限定されない。しかしながら、本発明のE−Cellまたはヒドロキシアルキル化セルロースエーテル(以下、「HA/E−Cell」ともいう)の製造方法においては、製造時における分子量低下が小さいことから、特に平均重合度が高いE−CellまたはHA/E−Cellを所望する場合に顕著な効果を発揮する。一方、一般にセルロースの低結晶化処理にはセルロース鎖の切断による重合度低下が伴うことから、重合度低下の少ない、より結晶性が高い原料セルロースを用いることが好ましい。また逆に結晶化度が95%を超える極めて結晶化度の高い原料セルロースも入手が困難である。よって、平均重合度及び入手の容易さの観点から、原料セルロースの結晶化度は、好ましくは10〜95%、より好ましくは30〜90%、更に好ましくは60〜80%である。
【0017】
本発明において、平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいい、具体的には実施例に記載の方法により算出される。原料セルロースの平均重合度も本発明の製造方法には影響を与えず、特に限定されないが、本発明の製造方法において平均重合度の高いE−Cell、またはHA/E−Cellを得る観点から、原料セルロースの平均重合度は、100以上であることが好ましく、入手の容易さの観点から、3000以下が好ましい。上記観点から、原料セルロースの平均重合度は、より好ましくは200〜2500、更に好ましくは500〜2200、より更に好ましくは1000〜2000である。
【0018】
原料セルロースの形状は、製造装置内への導入に支障が出ない限り特に限定されないが、操作上の観点からシート状パルプやシート状パルプを裁断または粗粉砕して得られるペレット状又はチップ状パルプや、微粉砕して得られる粉末状セルロースを用いることが好ましい。これらの中でも、セルロースの高い分子量を維持する観点から、チップ状パルプが好ましい。
チップ状パルプは、シュレッダー(例えば、株式会社明光商会製、商品名:「MSX2000−IVP440F」)や、シートペレタイザー(例えば、株式会社ホーライ製、商品名:「SGG−220」)を用いることで得られる。
チップ状パルプの径としては、長径(1片のチップの内、最長の長さ)の100個の数平均で、エーテル化剤及び/又は塩基化合物との接触効率の観点から、好ましくは0.6〜100mm角、より好ましくは0.8〜30mm角、更に好ましくは1〜10mm角である。
【0019】
(エーテル化剤)
本発明で用いるエーテル化剤は、セルロースとの反応部位としてエポキシ基をするエーテル化剤のうち、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除いたものをいう。つまり、本発明におけるエーテル化剤は、セルロースの水酸基との反応部位として分子中にエポキシ基を有しており、反応時には、セルロースの水酸基によるエポキシ基の開環反応によってエーテル結合を形成するものである。
エーテル化剤としては、セルロースとの反応性、入手の容易さ、E−Cell又はHA/E−Cellの水溶性の観点から、下記一般式(1)で表されるエーテル化剤が好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
上記一般式(1)中、Zは下記一般式(2)で表される基、スルホン酸基、水酸基、及び炭素数1〜18のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されている炭素数1〜2の炭化水素基、又は下記一般式(2)で表される基、スルホン酸基、水酸基、及び炭素数1〜18のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数3〜18の炭化水素基を示す。
【0022】
【化2】

上記一般式(2)中、R1〜R3は、各々独立に炭素数1〜3の炭化水素基を示し、X-はアニオン性の原子または基を示す。
【0023】
前記置換基で置換されていてもよい炭素数3〜18の炭化水素基としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。当該炭化水素基の炭素数としては、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜6である。
また、炭素数1〜18のアルコキシ基としては、炭化水素鎖が直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基であるアルコキシ基が好ましい。当該アルコキシ基の炭素数としては、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、更に好ましくは1〜3である。
【0024】
E−Cellの水溶性の観点、及び反応設備の負荷の観点から、一般式(1)におけるZが、一般式(2)で表される基、スルホン酸基、水酸基、及び炭素数1〜3のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されている炭素数1〜2の炭化水素基、又は一般式(2)で表される基、スルホン酸基、水酸基、及び炭素数1〜3のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数3〜6の炭化水素基が好ましく、一般式(2)で表される基、スルホン酸基及び水酸基からなる群から選ばれる置換基で置換されている炭素数1〜3の炭化水素基が更に好ましく、一般式(2)で表される基、又は水酸基が置換したメチレン基がより更に好ましい。
【0025】
一般式(2)において、式中、R1〜R3は、各々独立に炭素数1〜3の炭化水素基を示す。
炭素数1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられるが、本発明で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性、及びエーテル化剤の反応性ならびに入手の容易さの観点から、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0026】
また、一般式(2)中、X-はアンモニウム基の対イオンであるアニオン性の原子または基を示し、ハロゲン化物イオンなどの無機イオン、アルキル硫酸イオンや脂肪酸イオンなどの有機イオンが挙げられるが、入手の容易さ、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、ハロゲン化物イオン及び炭素数1〜3のアルキル硫酸イオンが好ましく、水溶性の観点から、ハロゲン化物イオンがより好ましい。
ハロゲン化物イオンとしては、具体的に、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンやヨウ化物イオンが挙げられるが、化学的安定性及び入手の容易さの観点から、塩化物イオン及び臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0027】
Zが一般式(2)で表される基で置換されている炭素数1〜18の炭化水素基である一般式(1)で表されるエーテル化剤としては、例えば、1−トリメチルアンモニウム−19,20−エポキシエイコサン、1−トリメチルアンモニウム−9,10−エポキシデカン、1−トリメチルアンモニウム−7,8−エポキシオクタン、1−トリメチルアンモニウム−5,6−エポキシヘキサン、1−トリメチルアンモニウム−4,5−エポキシペンタン、1−トリメチルアンモニウム−3,4−エポキシブタン、グリシジルトリメチルアンモニウム、グリシジルトリエチルアンモニウム、又はグリシジルトリプロピルアンモニウムの、塩化物塩、臭化物塩、メチル硫酸塩などが挙げられる。これらの中でも、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、1−トリメチルアンモニウム−7,8−エポキシオクタン、1−トリメチルアンモニウム−5,6−エポキシヘキサン、1−トリメチルアンモニウム−4,5−エポキシペンタン、1−トリメチルアンモニウム−3,4−エポキシブタン、又はグリシジルトリメチルアンモニウムの塩化物塩又は臭化物塩が好ましく、1−トリメチルアンモニウム−4,5−エポキシペンタン、1−トリメチルアンモニウム−3,4−エポキシブタン、又はグリシジルトリメチルアンモニウムの塩化物塩がより好ましく、入手の容易さの観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム塩化物塩が更に好ましい。
【0028】
Zが水酸基で置換されている炭素数1〜18の炭化水素基である一般式(1)で表されるエーテル化剤としては、例えば、20−ヒドロキシ−1,2−エポキシエイコサン、10−ヒドロキシ−1,2−エポキシデカン、8−ヒドロキシ−1,2−エポキシオクタン、6−ヒドロキシ−1,2−エポキシヘキサン、5−ヒドロキシ−1,2−エポキシペンタン、4−ヒドロキシ−1,2−エポキシブタン、又はグリシドールなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、8−ヒドロキシ−1,2−エポキシオクタン、6−ヒドロキシ−1,2−エポキシヘキサン、5−ヒドロキシ−1,2−エポキシペンタン、4−ヒドロキシ−1,2−エポキシブタン、又はグリシドールが好ましく、5−ヒドロキシ−1,2−エポキシペンタン、4−ヒドロキシ−1,2−エポキシブタン、又はグリシドールが好ましく、入手の容易さの観点から、グリシドールがより好ましい。
【0029】
Zが炭素数1〜18のアルコキシ基で置換されている炭素数1〜18の炭化水素基である一般式(1)で表されるエーテル化剤としては、例えば、1−プロポキシ−19,20−エポキシエイコサン、1−プロポキシ−9,10−エポキシデカン、1−メトキシ−4,5−ペンタン、1−メトキシ−3,4−ブタン、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、オクタデシルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易さの観点から、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、又はオクタデシルグリシジルエーテルが好ましく、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、又はプロピルグリシジルエーテルがより好ましい。
【0030】
Zがスルホン酸基で置換されている炭素数1〜18の炭化水素基である一般式(1)で表されるエーテル化剤としては、例えば、19,20−エポキシエイコサン−1−スルホン酸、9,10−エポキシデカン−1−スルホン酸、7,8−エポキシオクタン−1−スルホン酸、5,6−エポキシヘキサン−1−スルホン酸、4,5−エポキシペンタン-1-スルホン酸、3,4−エポキシブタン-1-スルホン酸、2,3−エポキシスルホン酸のナトリウム塩又はカリウム塩が挙げられる。これらの中でも、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、7,8−エポキシオクタン−1−スルホン酸、5,6−エポキシヘキサン−1−スルホン酸、4,5−エポキシペンタン−1−スルホン酸、3,4−エポキシブタン−1−スルホン酸、2,3−エポキシ−1−スルホン酸のナトリウム又はカリウム塩が好ましく、4,5−エポキシペンタン−1−スルホン酸、3,4−エポキシブタン−1−スルホン酸、2,3−エポキシ−1−スルホン酸のナトリウム又はカリウム塩がより好ましく、入手の容易さの観点から、2,3−エポキシ−1−スルホン酸のナトリウム又はカリウム塩が更に好ましい。
【0031】
Zが置換基を持たない炭素数3〜18の炭化水素基である一般式(1)で表されるエーテル化剤としては、例えば、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシペンタンなどが挙げられる。これらの中でも、入手の容易さの観点から、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシペンタンが好ましく、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシペンタンがより好ましい。
これらエーテル化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
工程1において共存させるエーテル化剤の添加量は、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、原料セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり、0.01モル以上が好ましく、エーテル化剤の効率の観点から、原料セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり、5モル以下が好ましい。同様の観点から、エーテル化剤の添加量は、該セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり、より好ましくは0.03〜3モル、更に好ましくは0.05〜1.5モル、より更に好ましくは0.07〜1.0モルである。
【0033】
エーテル化剤を添加する際、添加方法には特に制限は無く、一括、分割、連続的添加でも、あるいはこれらを組み合わせて行うことができるが、エーテル化剤をセルロース中に効率的に分散させるという観点からは、原料セルロースを攪拌しながら、カチオン化剤を連続的あるいは分割添加することが好ましい。エーテル化剤を一括で添加した場合は、粉砕処理を行なう前に、原料セルロースとエーテル化剤を含む混合物を攪拌し、エーテル化剤を均一に分散させておくことが好ましい。
添加時のエーテル化剤の形態にも特に制限はない。前記一般式(1)で表されるエーテル化剤が液体状態である場合にはそのまま用いてもよいし、粘度の低減等による取り扱い性の向上のために、水等の良溶媒で希釈した形で用いてもよい。
【0034】
エーテル化剤を水溶液の形で添加する場合、エーテル化剤及び後述する工程1の塩基化合物添加後の系内水分量が、エーテル化剤の拡散効率の観点から、原料セルロースに対して5質量%以上、また後述する工程1における粉砕処理の効率の観点から、50質量%以下になるように、エーテル化剤の水溶液中の水分量を適宜調節して添加することが好ましい。同様の観点から、エーテル化剤及び後述する工程1の塩基化合物添加後の系内水分量が、原料セルロースに対して、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%の範囲になるようにエーテル化剤の水溶液を添加することが好ましい。なお、本願において、「系内水分量(質量%)」は、原料セルロース100質量%に対する量である(以下同じ)。
【0035】
エーテル化剤の添加は、後述する粉砕処理を行なう装置中で行なってもよいし、別装置中で添加、攪拌を行ない、その後、得られた混合物を、粉砕処理を行なう装置に移送してもよい。
該別装置の具体例としては、原料セルロースの攪拌が可能なレディゲミキサー等のミキサーの他、特開2002-114801号公報明細書段落〔0016〕で開示しているような、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を挙げることができる。
エーテル化剤の添加を、粉砕処理を行なう装置中で行なう場合、添加の時機は、粉砕処理の前であってもよいし、また粉砕処理を行ないながらであってもよい。
なお、本発明のエーテル化剤は、例えば下記反応式に示す様に、対応するハロヒドリン化合物から、系内で発生させることもできる。
【0036】
【化3】

〔式中、Zは、前記一般式(1)と同じ意味を表す。〕
【0037】
(塩基化合物)
本発明で用いる塩基化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミンやトリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類が挙げられる。これらの中ではアルカリ金属水酸化物及び/またはアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが最も好ましい。これらの塩基化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
添加時の塩基化合物の形態は、特に限定されないが、工程1で得られる混合物中への均一分散の観点から、塩基化合物を水に希釈した水溶液の形態が好ましい。塩基化合物を水溶液の形で添加する場合、前述のエーテル化剤及び塩基化合物添加後の系内水分量が、塩基化合物の拡散効率の観点から原料セルロースに対して5質量%以上、また後述する工程1における粉砕処理の効率の観点から50質量%以下になるように、塩基化合物の水溶液中の水分量を適宜調節して添加することが好ましい。同様の観点から、エーテル化剤及び塩基化合物添加後の系内水分量が、原料セルロースに対して、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%の範囲になるように塩基化合物の水溶液を添加することが好ましい。
【0039】
エーテル化剤及び塩基化合物添加後の系内水分量が上記好ましい範囲を越える場合、エーテル化剤の添加後、塩基化合物の添加後、エーテル化剤を添加しながら又は塩基化合物を添加しながら、減圧下における脱水などの通常の方法を用いて系内水分量を調節することもできるが、操作が煩雑になることや、本発明で得られるE−CellやHA/E−Cellの水溶性の観点から、エーテル化剤及び/又は塩基化合物の水溶液の水分量を、塩基化合物添加後の系内水分量が上記好ましい範囲内になる様に制御することが好ましい。
【0040】
塩基化合物の添加量は、原料セルロースのアンヒドログルコース単位1モルあたり0.01当量以上であれば、セルロースとカチオン化剤の反応は速やかに進行し、1当量以下であれば、セルロースとカチオン化剤の反応の収率は高い。同様の観点から、塩基化合物の添加量は、原料セルロースのアンヒドログルコース単位1モルあたり、より好ましくは0.02〜0.7当量、更に好ましくは0.05〜0.6当量であり、更に本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、より更に好ましくは0.1〜0.6当量である。
なお、本発明に用いるエーテル化剤には、その工業的製法上、少量のハロヒドリン体が含まれることがある。例えばグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドの場合、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが1〜2%程度含まれていることがある。これらハロヒドリン体は、量論的に塩基化合物を消費するので、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン化剤との反応を良好に進行させるためには、塩基化合物量はこのハロヒドリン体で消費される量を考慮し、上記範囲内になるよう添加することが好ましい。また、エーテル化剤を、対応するハロヒドリン化合物から系内で発生させる場合も同様である。
【0041】
塩基化合物の添加方法には特に制限は無く、一括、分割、連続的添加でも、あるいはこれらを組み合わせて行うことができるが、塩基化合物を混合物中に効率的に分散させるという観点からは、混合物を攪拌しながら、塩基化合物を連続的あるいは分割添加することが好ましい。塩基化合物を一括で添加した場合は、工程1における粉砕処理を行なう前に、混合物を攪拌し、塩基化合物を均一に分散させておくことが好ましい。
塩基化合物の添加は、後述の粉砕処理を行なう装置中で行なってもよいし、別装置中で添加及び攪拌を行い、その後、得られた混合物を、粉砕処理を行なう装置に移送してもよい。該別装置の具体例は、前述のエーテル化剤の項で記載したミキサーやニーダー等の別装置と同じである。塩基化合物の添加を、粉砕処理を行なう装置中で行なう場合、添加の時機は、粉砕処理の前であってもよいし、また、粉砕処理を行ないながらであってもよい。
【0042】
(工程1における粉砕処理)
本発明のセルロースエーテルの製造方法は、セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)及び塩基化合物の共存下で、セルロースの粉砕処理を行ない、該セルロースと該エーテル化剤との反応を行う工程を含む。
塩基化合物及びエーテル化剤を共存させ、粉砕処理を行なうことで、塩基化合物を触媒として、セルロースとエーテル化剤の反応が進行する。
工程1における粉砕処理時の系内水分量は、反応効率及び粉砕効率の観点から、セルロースに対し、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%である。
【0043】
工程1における粉砕処理は、セルロースとエーテル化剤の反応を極めて効率的に進行させる観点から、機械力によるセルロースの結晶化度の低下を伴う粉砕処理(以下、「機械力による結晶化度低下処理」ともいう)であることが好ましい。
機械力による結晶化度低下処理とは、衝撃、ずり、せん断又は圧力によりセルロースの粉砕及び結晶化度を低下させる処理のことをいい、溶媒等による溶解、膨潤や、アルカリ添加によるアルセル化などの化学的処理とは区別される。但し、結晶化度低下のための機械力に伴う熱、音等のセルロースの結晶化度低下への影響を排除するものではなく、主として機械力の他、これら熱、音等によりセルロースの結晶化度が影響を受ける場合も含む。
機械力による結晶化度低下処理に用いられる装置としては、例えば、高圧圧縮ロールミルやロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、又は石臼などが挙げられる。これらの中でも、結晶化度低下の効率の観点、及び生産性の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、中でも振動ボールミル、振動ロッドミルまたは振動チューブミル等の振動ミルが更に好ましい。
処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
機械力による結晶化度低下処理に用いる装置及び/又は媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられるが、結晶化度低下の効率の観点から、鉄、ステンレス、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素が好ましく、更に工業的な利用の観点から、鉄又はステンレスがより好ましい。
【0044】
結晶化度低下の効率の観点から、用いる装置が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、ロッドの外径としては、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の結晶化度となるように、効率的に結晶化度を低下させることができる。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な充填率が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、セルロースとロッドとの接触頻度が向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、振動ミルの攪拌部の容積に対するロッドの見かけの体積をいう。
なお、媒体がボールの場合のボールの外径の好ましい範囲、及び充填率の好ましい範囲は、前記ロッドの外径の好ましい範囲、及び充填率の好ましい範囲と同じである。
前記の機械力による結晶化度低下処理により、混合物中のセルロースの結晶化度の低下が進行すると同時に、セルロースとエーテル化剤の反応が極めて効率的に進行し、E−Cellが生成する。
【0045】
工程1における結晶化度の低下量(P1)は、下記計算式(1)で定義される。
1=工程1開始前のセルロースの結晶化度(%)−工程1終了後のセルロースエーテルの結晶化度(%)・・・計算式(1)
【0046】
計算式(1)における、「工程1開始前のセルロースの結晶化度(%)」とは、セルロース、エーテル化剤及び塩基化合物の3者が共存する前の状態におけるセルロースの結晶化度(%)をいう。具体的には、セルロースに対しエーテル化剤と塩基化合物を同時に添加する場合には、セルロースのX線結晶回折測定の結果を、前記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度として定義される。また、エーテル化剤と塩基化合物を順番に添加する場合には、後に添加される剤添加前の、セルロースと塩基化合物からなる混合物、又はセルロースとエーテル化剤からなる混合物のX線結晶回折測定の結果を、前記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度として定義される。
また、計算式(1)における、工程1終了後のセルロースエーテルの結晶化度(%)」とは、工程1における粉砕処理終了後の、E−Cellを含む混合物のX線結晶回折測定の結果を、前記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度として定義される。
【0047】
本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点からは、結晶化度の低下量(P1)が1%以上になるまで前記機械力による結晶化度低下処理を行なうことが好ましい。一方、工程1におけるセルロース鎖の切断を抑制し、原料セルロースからの平均重合度の低下が少ないE−Cell又はHA/E−Cellを得る観点からは、P1が80%以下であることが好ましい。これら水溶性と平均重合度の観点から、結晶化度の低下量(P1)としては、より好ましくは5〜80%、更に好ましくは10〜75%、より更に好ましくは20〜70%、特に好ましくは20〜65%である。
【0048】
機械力による結晶化度低下処理の処理時間は、所定の結晶化度の低下が得られるように、適宜調整すればよいが、好ましくは0.01〜28時間、より好ましくは0.05〜14時間、更に好ましくは0.1〜7時間、より更に好ましくは0.5〜4時間である。
機械力による結晶化度低下処理時の温度は、セルロース又はエーテル化剤の分解点を越えない限り特に制限はないが、工業的な観点から、好ましくは−20〜200℃であり、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、より好ましくは−10〜100℃、更に好ましくは0〜80℃、より更に好ましくは10〜60℃である。なお、処理時の発熱により所定の温度を超えて昇温が認められる場合には、冷却等の操作を行なうことができる。
【0049】
本発明の製造方法において、セルロースに対するエーテル化剤及び塩基化合物の添加順序に特に限定はないが、エーテル化剤の反応効率及び本発明の製造方法で得られるE−Cell又はHA/E−Cellの水溶性の観点から、以下の「第1の形態」もしくは「第2の形態」の工程を行うことが好ましく、第1の形態の工程を行うことがより好ましい。
第1の形態:工程1の前に、セルロースにセルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)を添加し、粉砕処理を行なう工程(以下「工程a」ともいう)を行い、その後、工程aで得られるセルロースとセルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤の混合物に、塩基化合物を添加して工程1を行う(以下「好ましい第1の様態」ともいう)。
第2の形態:工程1の前に、セルロースに塩基化合物を添加し、粉砕処理を行なう工程(以下「工程b」ともいう)を行い、その後、工程bで得られるセルロースと塩基化合物の混合物に、セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)を添加して工程1を行う(以下「好ましい第2の様態」ともいう)。
【0050】
<好ましい第1の様態>
(工程a)
工程aはセルロースにエーテル化剤を添加して粉砕処理を行なう工程である。工程1の前に工程aを行なうことによって、エーテル化剤を塩基化合物と接触させる前にセルロース中に分散させることができ、エーテル化剤とセルロースの反応収率を、より向上させることができる。
【0051】
〔エーテル化剤〕
工程aにおいて添加するエーテル化剤の種類、量、添加方法、形態、添加を行なう装置及びそれらの好ましい様態は、前記工程1の項に記載のエーテル化剤の種類、量、添加方法、形態、添加を行なう装置及びそれらの好ましい様態と同じである。
エーテル化剤を水溶液の形で添加する場合、エーテル化剤添加後の系内水分量が、エーテル化剤の拡散効率の観点から、原料セルロースに対して5質量%以上、また工程aにおける粉砕処理の効率の観点から、50質量%以下になるように、エーテル化剤の水溶液中の水分量を適宜調節して添加することが好ましい。同様の観点から、エーテル化剤添加後の系内水分量が、原料セルロースに対して、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%の範囲になるようなエーテル化剤の水溶液を添加することが好ましい。
【0052】
工程a後に添加する塩基化合物を水溶液の形で添加する場合は、エーテル化剤及び塩基化合物添加後の系内水分量が、エーテル化剤及び塩基化合物の拡散効率の観点から原料セルロースに対して、5質量%以上、また工程1における粉砕処理の効率の観点から50質量%以下になるように、エーテル化剤の水溶液中の水分量を適宜調節して添加することが好ましい。同様の観点から、エーテル化剤及び塩基化合物添加後の系内水分量が、原料セルロースに対して、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%の範囲になるようなエーテル化剤の水溶液を添加することが好ましい。
【0053】
〔工程aにおける粉砕処理〕
工程aにおける粉砕処理時の系内水分量は、反応効率及び粉砕効率の観点から、セルロースに対し、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%である。
系内水分量がこの範囲を外れる場合には、通常知られる方法、例えば水の添加や減圧下における脱水にて、エーテル化剤の添加後、又はエーテル化剤を添加しながら系内水分量を調節することができる。
【0054】
工程aにおける粉砕処理も、エーテル化剤のセルロースへの分散の効率の観点から、機械力による結晶化度低下処理であることが好ましい。
工程aにおける結晶化度低下処理に用いる装置、及びその好ましい様態は、工程1における結晶化度低下処理に用いる装置、及びその好ましい様態と同じである。
工程aにおける結晶化度の低下量(Pa)は、下記計算式(a)で定義される。
a=工程a開始前のセルロースの結晶化度(%)−工程a終了後のセルロースの結晶化度(%)・・・計算式(a)
【0055】
計算式(a)において、「工程a開始前のセルロースの結晶化度(%)」とは、エーテル化剤添加前のセルロースのX線結晶回折測定の結果を、前記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度として定義される。
また、「工程a終了後のセルロースの結晶化度(%)」とは、工程aにおける機械力による結晶化度低下処理終了後の、セルロースを含む混合物のX線結晶回折測定の結果を、前記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度として定義される。
本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点からは、結晶化度の低下量(Pa)が1%以上になるまで前記機械力による結晶化度低下処理を行なうことが好ましい。また、工程aにおけるセルロース鎖の切断を抑制し、原料セルロースからの重合度の低下が少ないE−Cell又はHA/E−Cellを得る観点からは、Paが60%以下であることが好ましい。これら水溶性と重合度の観点から、結晶化度の低下量(Pa)は、より好ましくは3〜50%、更に好ましくは5〜30%、より更に好ましくは5〜20%である。
【0056】
工程aの機械力による結晶化度低下処理の処理時間は、所定のPaの範囲になる様に、適宜調整すればよいが、好ましくは0.01〜20時間、より好ましくは0.05〜10時間、更に好ましくは0.1〜5時間である。
機械力による結晶化度低下処理時の温度は、セルロース又はエーテル化剤の分解点を越えない限り特に制限はないが、工業的な観点から、好ましくは−20〜200℃であり、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、より好ましくは−10〜100℃、更に好ましくは0〜80℃、より更に好ましくは10〜60℃である。なお、処理時の発熱により所定の温度を超えて昇温が認められる場合には、冷却等の操作を行なうことができる。
【0057】
(塩基化合物)
工程1の前に、工程aで得られるセルロースとエーテル化剤の混合物に、添加する塩基化合物の種類、量、添加方法、形態、水溶液として添加する場合の水分量、添加を行なう装置及びそれらの好ましい様態は、上述の前記工程1の項に記載した塩基化合物の好ましい様態と同じである。
第1の様態においては、工程aを経て、塩基化合物の添加後に前記工程1を行なうことが好ましい。
【0058】
<好ましい第2の様態>
(工程b)
工程bはセルロースにエーテル化剤を添加して粉砕処理を行なう工程である。工程1の前に工程bを行なうことによって、塩基化合物をエーテル化剤と接触させる前にセルロース中に分散させることができ、エーテル化剤とセルロースの反応収率を、より向上させることができる。
【0059】
〔塩基化合物〕
工程bにおいて添加する塩基化合物の種類、量、添加方法、形態、添加を行なう装置及びそれらの好ましい様態は、前記工程1の項に記載の塩基化合物の種類、量、添加方法、形態、添加を行なう装置及びそれらの好ましい様態と同じである。
塩基化合物を水溶液の形で添加する場合、塩基化合物添加後の系内水分量が、塩基化合物の拡散効率の観点から、原料セルロースに対して、5質量%以上、また工程bにおける粉砕処理の効率の観点から、50質量%以下になるように、塩基化合物の水溶液中の水分量を適宜調節して添加することが好ましい。同様の観点から、塩基化合物添加後の系内水分量が原料セルロースに対して、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%の範囲になるような塩基化合物の水溶液を添加することが好ましい。
【0060】
また、工程b後に添加するエーテル化剤を水溶液の形で添加する場合は、エーテル化剤及び塩基化合物添加後の系内水分量が、エーテル化剤及び塩基化合物の拡散効率の観点から、原料セルロースに対して、5質量%以上、また工程1における粉砕処理の効率の観点から50質量%以下になるように、塩基化合物の水溶液中の水分量を適宜調節して添加することが好ましい。同様の観点から、エーテル化剤及び塩基化合物添加後の系内水分量が原料セルロースに対して、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%の範囲になるような塩基化合物の水溶液を添加することがより好ましい。
【0061】
〔工程bにおける粉砕処理〕
工程bにおける粉砕処理時の系内水分量は、反応効率及び粉砕効率の観点から、セルロースに対し、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは8〜40質量%、更に好ましくは8〜30質量%である。
系内水分量がこの範囲を外れる場合には、通常知られる方法、例えば水の添加や減圧下における脱水にて、塩基化合物の添加後、又は塩基化合物を添加しながら系内水分量を調節することができる。
工程bにおける粉砕処理においても、塩基化合物のセルロースへの分散の効率の観点から、機械力による結晶化度低下処理であることが好ましい。
工程bにおける結晶化度低下処理に用いる装置、及びその好ましい様態は、工程1における結晶化度低下処理に用いる装置、及びその好ましい様態と同じである。
【0062】
工程bにおける結晶化度の低下量(Pb)は、下記計算式(b)で定義される。
b=工程b開始前のセルロースの結晶化度(%)−工程b終了後のセルロースの結晶化度(%)・・・計算式(b)
計算式(b)において、「工程b開始前のセルロースの結晶化度(%)」とは、塩基化合物添加前のセルロースのX線結晶回折測定の結果を、前記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度として定義される。また、「工程b終了後のセルロースの結晶化度(%)」とは、工程bにおける機械力による結晶化度低下処理終了後の、セルロースを含む混合物のX線結晶回折測定の結果を、前記計算式(2)に挿入して得られる結晶化度として定義される。
本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点からは、結晶化度の低下量(Pb)が1%以上になるまで前記機械力による結晶化度低下処理を行なうことが好ましい。一方、工程bにおけるセルロース鎖の切断を抑制し、原料セルロースからの重合度の低下が少ないE−Cell又はHA/E−Cellを得る観点からは、結晶化度の低下量(Pb)が60%以下であることが好ましい。これら水溶性と重合度の観点から、結晶化度の低下量(Pb)は、より好ましくは3〜50%、更に好ましくは5〜30%、より更に好ましくは5〜20%である。
【0063】
工程bの機械力による結晶化度低下処理の処理時間は、所定のPbの範囲になる様に、適宜調整すればよいが、好ましくは0.01〜20時間、より好ましくは0.05〜10時間、更に好ましくは0.1〜5時間である。
機械力による結晶化度低下処理時の温度は、セルロース又は塩基化合物の分解点を越えない限り特に制限はないが、工業的な観点から、好ましくは−20〜200℃であり、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、より好ましくは−10〜100℃、更に好ましくは0〜80℃、より更に好ましくは10〜60℃である。なお、処理時の発熱により所定の温度を超えて昇温が認められる場合には、冷却等の操作を行なうことができる。
【0064】
(エーテル化剤)
工程1の前に、工程bで得られるセルロースと塩基化合物の混合物に、添加するエーテル化剤の種類、量、添加方法、形態、水溶液として添加する場合の水分量、添加を行なう装置及びそれらの好ましい様態は、前記工程1の項に記載した好ましい様態と同様である。
また、好ましい第2の様態においては、工程bを経て、エーテル化剤の添加後に、前記工程1を行なうことが好ましい。
【0065】
<ポリエーテル>
前記工程a又はb、及び工程1の粉砕処理時には、更に、ポリエーテルを共存させることが好ましい。ポリエーテルを共存させることで、粉砕されたセルロース粒子又はE−Cell粒子の凝集を抑制できる。
とりわけ、原料セルロースに対し水分量が多い状態、または比較的高温で結晶化度低下処理を行なう場合は粒子の凝集が起こりやすく、ポリエーテルを共存させる効果は顕著である。
また、粉砕処理装置として容器駆動式媒体ミル等の媒体ミルを用いる場合、ポリエーテルを共存させる事により、ミルの媒体同士の衝突により生じる金属粉等を抑制することができる。この効果は、ポリエーテルの共存により、セルロース粒子又はE−Cell粒子の凝集による粒子サイズの不均化が抑制されるため、媒体同士の直接の衝突が抑制されたものと考えられる。
【0066】
本発明で用いるポリエーテルの重量平均分子量は、セルロース又はC−Cell粒子の凝集抑制の観点から、好ましくは100〜20000、より好ましくは200〜15000、更に好ましくは400〜5000である。なお、上記のポリエーテルの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される分子量既知のポリエチレングリコール換算の値である。
【0067】
本発明で用いるポリエーテルとしては、セルロース又はE−Cell粒子の凝集抑制の観点から、ポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレンオキシブチレングリコール等が挙げられる。これらのポリエーテルは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
ポリエーテルの添加量は、セルロース又はE−Cell粒子の凝集抑制及び低結晶化の効率の観点から、原料セルロースに対して、好ましくは0.1〜100質量%、より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは2〜20質量%である。なお、本願において、「ポリエーテルの添加量(質量%)」は、原料セルロース100質量%に対する量である(以下同じ)。
【0068】
ポリエーテルを添加する際、添加方法には特に制限は無く、一括、分割、連続的添加でも、あるいはこれらを組み合わせて行うことができる。
前記工程a又はbでポリエーテルを添加する場合は、ポリエーテルを、工程a又は工程bの粉砕処理を行なう装置中で添加してもよいし、別装置中で予めセルロースとポリエーテルとを混合し、攪拌を行ない、その後、得られた混合物を、粉砕処理を行なう装置に移送してもよい。該別装置の具体例は、前述の工程1の項で記載したミキサーやニーダー等の別装置と同じである。また、ポリエーテルは、エーテル化剤と共に添加してセルロースと混合してもよく、別々に添加してもよい。
前記工程1でポリエーテルを添加する場合も、工程aまたは工程bの場合と同様に、ポリエーテルを、工程1の粉砕処理を行なう装置中で添加してもよいし、別装置中で工程a又はbで得られたセルロースの粉砕処理混合物とポリエーテルとを予め混合し、攪拌を行ない、その後、得られた混合物を、粉砕処理を行なう装置に移送してもよい。また、ポリエーテルは、塩基化合物と共に添加してセルロースと混合してもよく、別々に添加してもよい。
なお、工程a又はb、及び工程1でポリエーテルを分割添加してもよい。
以上のポリエーテルの添加方法の中でも、粒子の凝集抑制及び低結晶化の効率の観点から、工程1において添加することが好ましく、工程1の粉砕処理を行なう装置中で添加することが好ましい。
<熟成>
工程1における粉砕処理時には、セルロースとエーテル化剤の間の反応が極めて効率的に進行するが、必要に応じて熟成を行なうことができる。熟成を行なう装置は特に限定されず、粉砕処理を行った装置、工程1で挙げたミキサーやニーダー等の混合機のほか、温度制御が可能な容器中で行なってもよい。
【0069】
(熟成条件)
熟成の温度としては、反応速度の観点から20℃以上が好ましく、原料の分解抑制の観点から200℃以下が好ましい。上記の観点から、熟成の温度としては、好ましくは20〜200℃、より好ましくは20〜100℃、更に好ましくは30〜80℃である。
熟成時間は、エーテル化剤量、混合物中の塩基化合物の含有量、水分量、熟成時の温度などにより適宜調整すればよいが、通常0.1〜72時間であり、好ましくは0.1〜36時間、より好ましくは0.1〜18時間、更に好ましくは1〜8時間である。
なお、熟成時には、着色を避ける観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0070】
熟成時の系内水分量は、反応速度の観点から工程1で用いた原料セルロースに対して、5質量%以上が好ましく、また、E−Cellを含む混合物の過度の凝集を抑制する観点から、原料セルロースに対して、100質量%以下であることが好ましい。これらの観点から、熟成時の系内水分量は、原料セルロースに対して、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜40質量%である。
なお、エーテル化剤及び/又は塩基化合物を水溶液で添加する等により系内水分量が上記の好ましい範囲を越える場合、減圧下脱水を行なって原料セルロースに対する水分含有量を前述した範囲に調整することが好ましい。
【0071】
熟成時においては、必要に応じてエーテル化剤を添加することもできる。添加するエーテル化剤、及びその好ましい様態は、前記工程1で記載したエーテル化剤、及びその好ましい様態と同じである。熟成工程で添加するエーテル化剤は工程1で添加したエーテル化剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、エーテル化剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて、同時に添加してもよいし、順次添加してもよい。
【0072】
熟成時に添加するエーテル化剤の添加量は、所望するエーテル基の導入量等に応じて、適宜変更すればよいが、本発明の製造方法で得られるE−CellまたはHA/E−Cellの水溶性の観点から、原料セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり、工程1で共存させたエーテル化剤と合わせて0.05モル以上であることが好ましく、効率的なエーテル化剤の導入の観点から、原料セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり、工程1で共存させたエーテル化剤と併せて5モル以下であることが好ましい。上記の観点から、熟成時に添加するエーテル化剤の量は、原料セルロースを構成するアンヒドログルコース単位1モルあたり、工程1で共存させたエーテル化剤と合わせて、好ましくは0.05〜5モル、より好ましくは0.1〜3モル、更に好ましくは0.2〜1.5モル、より更に好ましくは0.3〜0.8モルである。
なお、熟成時に添加するエーテル化剤の添加方法、添加時の形態、及びそれらの好ましい様態は、エーテル化剤を水溶液で添加する場合の水分量を除き、工程1に記載のしたものと同じである。また、エーテル化剤を水溶液で添加する場合、水溶液中の水分量は、添加後の系内水分量が上記熟成時の好ましい系内水分量になるように、調節することが好ましい。
【0073】
熟成は、E−Cellを含む混合物の攪拌を容易にする目的で、上記の水の他、非水溶媒の存在下に行なうこともできる。
非水溶媒としては、例えば、一般にアルセル化処理の際に用いられるようなイソプロパノールやtert−ブタノール等の2級または3級の低級アルコール;1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド等の親水性溶媒等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルスルホキシドやイソプロパノールが好ましく、溶媒自身が反応する可能性を避ける観点から、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
これらの非水溶媒の使用量としては、原料セルロースに対し、好ましくは0〜100質量%、より好ましくは0〜60質量%、更に好ましくは0〜40質量%である。
なお、熟成は、複数回に分けて行なうこともでき、熟成と熟成の間で後述する後処理で記載した中和や精製を行なってもよい。
【0074】
(装置)
熟成に用いる装置としては、工程1で挙げたミキサーやニーダー等の混合機のほか、工程1の粉砕処理で用いた装置を用いることもできる。
【0075】
<後処理>
工程1で得られた、又は工程1に続く熟成後に得られたE−Cellを含む混合物は、必要に応じて鉱酸又は有機酸による塩基化合物の中和、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等での洗浄等といった精製操作を行なって、E−Cellを単離することもできる。
HA/E−Cellを得るために、更に後述する炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加させる反応(以下「AO化」とも言う。)を行なう場合、製造工程の簡便化を目的として、塩基化合物の中和や精製等を省略し、そのままAO化を行なってもよい。
【0076】
[ヒドロキシアルキル化セルロースエーテル(HA/E−Cell)の製造]
<AO化>
本発明で得られたE−Cellに、更に炭素数2〜4のアルキレンオキシドを反応させて、HA/E−Cellを得ることもできる。
【0077】
(アルキレンオキシド)
AO化で用いられる炭素数2〜4のアルキレンオキシドの具体例としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、及び酸化ブチレンが挙げられるが、得られるHA/E−Cellの性能の観点から、酸化エチレンまたは酸化プロピレンが好ましい。
【0078】
アルキレンオキシドの使用量は、所望のヒドロキシアルキル基の導入量により適宜調整すればよいが、得られるHA/E−Cellの性能の観点から、E−Cell主鎖の構成アンヒドログルコース単位1モル当たり、好ましくは0.1〜12モル、より好ましくは0.5〜10モル、更に好ましくは1〜7モルである。
添加時のアルキレンオキシドの形態としては、操作性の観点から、有機溶媒等に溶解して添加してもよいが、本発明のAO化の反応条件において、添加時のアルキレンオキシドが気体または液体であるため、そのまま添加することが好ましい。
アルキレンオキシドの添加方法は、一括、分割、連続的添加、又はこれらを組み合わせることができるが、E−Cellに対し、アルキレンオキシドを均一に分散させ、反応を行う観点から、E−Cellを攪拌しながらアルキレンオキシドを分割または連続的に添加することが好ましい。
【0079】
(塩基化合物)
AO化反応は、塩基化合物の存在下に行うことが好ましい。塩基化合物の種類、添加量、形態、添加方法及びそれらの好ましい様態は、工程1記載の塩基化合物と同様である。
なお、AO化反応における塩基化合物は、工程1において共存させた塩基化合物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本発明のE−Cellの製造方法において、後処理での塩基化合物の中和及び精製を省略してそのままAO化を行なう場合は、新たに塩基化合物を添加することなく、AO化反応を行うことができる。
【0080】
(AO化反応条件)
AO化反応における、反応温度、反応時間、水分量、非水溶媒、及びそれらの好ましい様態は、前記E−Cellの製造方法の熟成で記載した対応する様態と同様である。AO化に用いる反応装置についても同様であるが、アルキレンオキシドとして、酸化エチレンを用いる場合、あるいは、酸化プロピレンを用いる場合であっても、比較的高温で反応を行う場合には、アルキレンオキシドが気化するため、気密性が高い耐圧反応装置を用いることが好ましい。
【0081】
AO化反応におけるE−Cellとアルキレンオキシドの反応終了後は、必要に応じて塩基化合物の中和、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等での洗浄等といった精製操作を行なって、HA/E−Cellを単離することもできる。
【0082】
[E−Cell及びHA/E−Cellの応用分野]
本発明の製造方法によれば、生産性が高く効率的に、製造時における分子量低下を抑え、且つ水溶性に優れたE−Cell又はHA/E−Cellの製造が可能である。得られたE−Cell又はHA/E−Cellは、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物や、乳液、クリーム等の化粧料組成物、および衣料用柔軟剤組成物等の配合成分として利用が可能であり、また高分子活性剤、分散剤、乳化剤、改質剤、凝集剤、粘度調整剤等として幅広い分野で利用することができる。
【実施例】
【0083】
以下において、「%」は特に断らない限り質量%を意味する。実施例において行った測定法の詳細を以下に纏めて示す。
【0084】
(1)水分含量の測定
パルプ及び各工程終了後の混合物の水分含量の測定には、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、製品名「FD−610」)を使用した。120℃にて測定を行い、30秒間の重量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。測定された水分量の値を、原料セルロース(100質量%)に対する質量%に換算し、水分含量とした。
【0085】
(2)結晶化度の算出
下記実施例及び比較例におけるパルプ、工程a又は工程b終了後の混合物中のセルロース、及び工程1終了後の混合物中のセルロースエーテルの結晶化度は、パルプ又は各工程終了後の混合物のX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、前記計算式(2)に基づいて算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kV,管電流:120mA, 測定範囲:2θ=5〜45°,X線のスキャンスピード:10°/minで測定した。測定用のサンプルは面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。
【0086】
(3)置換基の導入量の算出
(3−1)カチオン化セルロース及びカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースの置換基導入量の算出
下記実施例及び比較例においてセルロースとグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドを反応させて得られたカチオン化セルロース(以下「C−Cell」ともいう)、又はC−Cellに酸化プロピレンを反応させて得られたカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(以下「C−HPC」ともいう)に導入されたカチオン性の官能基の、C−CellまたはC−HPCの主鎖であるセルロース骨格のアンヒドログルコース単位1モルあたりのモル数(以下「カチオン基の置換度」とも言う)、及びC−HPCに導入されたプロピレンオキシ基の、C−HPCの主鎖のアンヒドログルコース単位1モルあたりのモル数(以下「プロピレンオキシ基の置換度」とも言う)は、元素分析による塩素元素量の測定値、及び分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなくC−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルセルロースの分析法に従って得られた値から求めた。
具体的には、実施例で得られたC−CellまたはC−HPCを透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−Cell(以下「精製C−Cell」ともいう)又は精製C−HPC(以下「精製C−HPC」ともいう)を得た。得られた精製C−Cell又は精製C−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、精製C−Cell又は精製C−HPC中に含まれるカチオン基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(3)から、C−Cell又はC−HPC単位質量中に含まれるカチオン基の量(a(モル/g))を求めた。
a(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100)・・・計算式(3)
次に分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、第十五改正日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、精製C−HPC中のヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(4)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(−OC36OH)=75.09〕(b(モル/g))を求めた。
b(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(75.09×100)・・・計算式(4)
得られたa及びbと下記計算式(5)、(6)からC−Cell又はC−HPCのカチオン基の置換度(k)及びプロピレンオキシ基の置換度(m)を算出した。
a=k/(162+k×152.5+m×58)・・・計算式(5)
b=m/(162+k×152.5+m×58)・・・計算式(6)
〔式中、kは、C−Cell又はC−HPCのカチオン基の置換度を示す。mはプロピレンオキシ基の置換度を示し、C−Cellの場合は0である。〕
【0087】
(3−2)ジヒドロキシプロピルセルロースの置換基導入量の算出。
実施例及び比較例において、セルロースとグリシドールを反応させて得られたジヒドロキシプロピルセルロース(以下「DHPC」ともいう)、DHPCにグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドを反応させて得られたカチオン化ジヒドロキシプロピルセルロース(以下「C−DHPC」ともいう)、又はC−Cellにグリシドールを反応させて得られたC−DHPCに導入されたグリセリル基の、DHPCの主鎖のアンヒドログルコース単位1モルあたりのモル数(以下「グリセリル基の置換度」ともいう)、及びC−DHPCに導入されたカチオン性の官能基の、C−DHPCの主鎖であるセルロース骨格のアンヒドログルコース単位1モルあたりのモル数(以下、これについても「カチオン基の置換度」という)は、元素分析による塩素元素量の測定値、及び分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなくジヒドロキシプロピルセルロースであることを除き、第十五改正日本薬局方に記載のヒドロキシプロピルセルロースの分析法に従って得られた値から求めた。
具体的には、実施例で得られたC−DHPC(混合溶液洗浄後、乾燥品)の塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、C−DHPC中に含まれるカチオン基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(7)から、C−DHPC単位質量中に含まれるカチオン基の量(d(モル/g))を求めた。
d(モル/g)=元素分析から求められる塩素含有量(%)/(35.5×100)・・・計算式(7)
次に分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく、実施例で得られたDHPC(混合溶液洗浄後、乾燥品)又はC−DHPC(混合溶液洗浄後、乾燥品)であることを除き、第十五改正日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に準じて、DHPC又はC−DHPC中のジヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(8)からジヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(−OC35(OH)2)=91.09〕(e(モル/g))を求めた。
e(モル/g)=ガスクロマトグラフ分析から求められるジヒドロキシプロポキシ基含有量(%)/(91.09×100)・・・計算式(8)
得られたd及びeと下記計算式(9)、(10)からC−DHPCのカチオン基の置換度(p)、及びC−DHPC又はDHPCのグリセリル基の置換度(q)を算出した。
d=p/(162+p×152.5+q×74)・・・計算式(9)
e=q/(162+p×152.5+q×74)・・・計算式(10)
〔式中、pは、C−DHPCのカチオン基の置換度を示し、DHPCの場合0である。qはグリセリル基の置換度を示す。〕
【0088】
(4)平均重合度測定法;銅−アンモニア法
(4−1)原料セルロースの粘度平均重合度の測定
((i)測定用溶液の調製)
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて、メスフラスコの標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したセルロースを加え、メスフラスコの標線まで上記アンモニア水を満たした。空気が入らないように密封し、マグネチックスターラーで12時間撹拌して溶解した。
同じように添加するセルロース量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
【0089】
((ii)粘度平均重合度の測定)
上記(i)で得られた測定用溶液(銅アンモニア水溶液)をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置したのち、液の流下速度を測定した。種々のセルロース濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とセルロース無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を以下の式より求めた。
ηsp/c=(t/t0−1)/c
(式中、cはセルロース濃度(g/dL)である。)
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、以下の式より粘度平均重合度(DPv)を求めた。
DPv=2000×[η]
(式中、2000はセルロースに固有の係数である。)
【0090】
(4−2)C−Cell、又はDHPCの粘度平均重合度の測定
((iii)測定溶液の調製)
精秤したセルロースの代わりに精秤したC−Cell、又はDHPCを用いた点を除き、上記(i)の測定溶液の調製と同様にして測定溶液を調製した。
((iv)粘度平均重合度の測定)
測定溶液の濃度としてセルロース換算濃度(g/dL)を用いた点を除き、上記(ii)の粘度平均重合度の測定と同様にして測定した。
ここで、セルロース換算濃度(Ccell)とは、測定溶液1dL中に含まれるセルロース骨格部分の質量(g)をいい、下記計算式(11)で定義する。
cell=u×162/(162+k×152.5+q×74)・・・計算式(11)
〔式中、uは測定溶液の調製時に用いた精秤したC−CellまたはDHPCの質量(g)を示し、kは前記計算式(5)、(6)で求められたカチオン基の置換度を表し、DHPCの場合0である。qは前記計算式(9)、(10)で求められたグリセリル基の置換度を表し、C−Cellの場合、q=0である〕
【0091】
(5)水可溶分率の算出
試料(精製C−Cell、DHPC(混合溶液洗浄後、乾燥品)、精製C−HPC、又はC−DHPC(混合溶液洗浄後、乾燥品))(0.50g)を50mLスクリュー管に秤量し、イオン交換水49.5gを加えて、マグネチックスターラーで12時間撹拌して溶解させた。この溶液を50ml遠沈管に移し、3000rpm(2000×g)で20分間遠心分離を行った。上澄み液5mlを減圧乾燥(105℃、3時間)して固形分質量を求め、下記式により水可溶分率を算出した。
水可溶分率(%)=(上澄み液5mL中の固形分質量(g)×10/試料質量)×100
【0092】
(6)メジアン径の測定
C−Cellのメジアン径は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、製品名「LA−920」)を用い、エタノール中に分散させて測定した。具体的にはメジアン径の測定前に、エタノールに添加し、1分間超音波分散処理した後、測定を行った。
【0093】
実施例1(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
セルロースとして、シート状木材パルプ〔テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.6%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ社製、製品名「SGG−220」)で処理してチップ状にした。
〔工程a:エーテル化剤としてカチオン化剤を添加し、粉砕処理を行う工程〕
得られたチップ状パルプ108gに、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(以下、「GMAC」ともいう。阪本薬品工業株式会社製、含水量20%、純度90%以上)を23.4g〔セルロースのアンヒドログルコース単位(以下、「AGU」ともいう)1モルあたり0.2モル〕乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物131g(水分含量12.3%対セルロース、平均重合度1350、結晶化度68%)を得た。
工程aで得られた粉末状混合物131gに、24.7%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液20g(AGU1モルあたり0.2モル)を乳鉢で混合した。
【0094】
〔工程1:塩基化合物とエーテル化剤の共存下に粉砕処理を行う工程〕
前記乳鉢で混合して得られた混合物をバッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ10mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド117本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で60分間結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、及びNaOHの粉末状混合物151g(水分含量27.4%対セルロース、平均重合度1330、結晶化度45%)を得た。
【0095】
〔熟成〕
得られた粉末状混合物から5gをスクリュー管に採取し、50℃で5時間熟成を行なった。この反応終了品を酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度1330、結晶化度45%)を得た。
分析の結果、カチオン基の置換度は、0.1と算出された。また水可溶分率は31%であった。結果を表1に示す。
【0096】
実施例2(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
〔熟成〕
実施例1の工程1終了後に得られた粉末状混合物78.9gに、実施例1で用いたGMAC19.7g(AGU1モルあたり0.32モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量37.2%対セルロース)を、還流管を取り付けた1Lニーダー(入江商会社製、製品名「PNV−1型」)に仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により50℃に加温して、窒素雰囲気下で5時間熟成を行った。
この反応終了品から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度1330、結晶化度45%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は100%であった。結果を表1に示す。
【0097】
実施例3(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
〔工程a〕
実施例1の工程aまでは同じ操作を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物131g(水分含量12.3%対セルロース、平均重合度1350、結晶化度68%)を得た。
工程aで得られた粉末状混合物131gに、31.4%水酸化カリウム(KOH)水溶液22g(AGU1モルあたり0.2モル)を乳鉢で混合した。
【0098】
〔工程1〕
乳鉢で混合して得られた混合物を実施例1で用いたバッチ式振動ミルに投入し、実施例1の工程1と同じ条件で結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、及びKOHの粉末状混合物153g(水分含量27.4%対セルロース、平均重合度1120、結晶化度48%)を得た。
【0099】
〔熟成〕
得られた粉末状混合物から78.9gを採取し、これに実施例1で用いたGMAC19.7g(AGU1モルあたり0.32モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量37.2%対セルロース)を、還流管を取り付けた1Lニーダー(入江商会社製、製品名「PNV−1型」)に仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により50℃に加温して、窒素雰囲気下で5時間熟成を行なった。
この反応終了品から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度1120、結晶化度44%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は84%であった。結果を表1に示す。
【0100】
実施例4(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
〔工程a〕
GMAC添加量をAGU1モルあたり0.1モルに変更した以外は、実施例1と同様の方法で工程aまでを行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物119g(水分含量12.3%対セルロース、平均重合度1330、結晶化度68%)を得た。
工程aで得られた粉末状混合物119gに、14.4%NaOH水溶液17g(AGU1モルあたり0.1モル)を乳鉢で混合した。
【0101】
〔工程1〕
乳鉢で混合して得られた混合物を実施例1で用いたバッチ式振動ミルに投入し、実施例1の工程1と同様の条件で結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、及びNaOHの粉末状混合物136g(水分含量27.4%対セルロース、平均重合度1020、結晶化度41%)を得た。
【0102】
〔熟成〕
得られた粉末状混合物100gを採取し、これに実施例1で用いたGMAC35.3g(AGU1モルあたり0.42モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量37.2%対セルロース)を、還流管を取り付けた1Lニーダー(入江商会社製、製品名「PNV−1型」)に仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により50℃に加温して、窒素雰囲気下で5時間熟成を行なった。
この反応終了品から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度1020、結晶化度41%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は93%であった。結果を表1に示す。
【0103】
実施例5(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.6%)を、実施例1と同様にシートペレタイザーで処理してチップ状にした。
〔工程a〕
得られたチップ状パルプ98gに、実施例1で用いたGMACを54.3g(AGU1モルあたり0.5モル)を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で60分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物152g(水分含量22.3%対セルロース、平均重合度1300、結晶化度61%)を得た。
工程aで得られた粉末状混合物152gに、48%NaOH水溶液9g(AGU1モルあたり0.2モル)を添加した。
【0104】
〔工程1〕
工程a終了後、NaOHを添加した混合物をバッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で60分間結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、及びNaOHの粉末状混合物161g(水分含量37.2%対セルロース、平均重合度1240、結晶化度38%)を得た。
【0105】
〔後処理〕
工程1で得られた粉末状混合物から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度1240、結晶化度38%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は98%であった。結果を表1に示す。
【0106】
実施例6(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
〔工程a〕
実施例5の工程aまでと同じ操作で、セルロースとGMACの粉末状混合物152g(水分含量22.3%対セルロース、平均重合度1300、結晶化度61%)を得た。
工程aで得られた粉末状混合物152gに、48%NaOH水溶液18g(AGU1モルあたり0.4モル)を添加した。
【0107】
〔工程1〕
工程a終了後、NaOHを添加した混合物を、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で120分間結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、及びNaOHの粉末状混合物170g(水分含量32.7%対セルロース、平均重合度860、結晶化度14%)を得た。
【0108】
〔後処理〕
工程1で得られた粉末状混合物から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度860、結晶化度14%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は93%であった。結果を表1に示す。
【0109】
実施例7(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
〔工程a〕
実施例5の工程aと同様の操作を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物152g(水分含量22.3%対セルロース、平均重合度1300、結晶化度61%)を得た。
工程aで得られた粉末状混合物152gに、NaOH水溶液23g(NaOH13gと水10gの水溶液。AGU1モルあたり0.6モル)を添加した。
【0110】
〔工程1〕
工程a終了後、NaOHを添加した混合物を、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で120分間結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、及びNaOHの粉末状混合物175g(水分含量32.7%対セルロース、平均重合度809、結晶化度9%)を得た。
【0111】
〔後処理〕
工程1で得られた粉末状混合物から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度809、結晶化度9%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は81%であった。結果を表1に示す。
【0112】
実施例8(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7%)を、実施例1と同様にシートペレタイザーで処理してチップ状にした。
〔工程a〕
実施例1で用いたGMACを54.3g(AGU1モルあたり0.5モル)用いた点を除き、実施例1の工程aと同様の操作を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物(水分含量22.3%対セルロース、平均重合度1350、結晶化度68%)を得た。
工程a終了後、得られた粉末状混合物に、48%NaOH水溶液20.1g(AGU1モルあたり0.4モル)を工程aで用いたバッチ式振動ミル中で添加した。
【0113】
〔工程1〕
工程a終了後、NaOHを添加した混合物を、前記バッチ式振動ミル中で、振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で20分間結晶化度低下処理を行ない、C−CellとGMAC、NaOHの粉末状混合物を得た。さらにポリエチレングリコール (和光純薬工業株式会社製,商品名;「ポリエチレングリコール600」(PEG600);重量平均分子量600)10g(工程aで用いた原料セルロースに対して10質量%)をバッチ式振動ミルに投入し、振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で120分間結晶化度低下処理及び微粒化処理を行ない、C−Cell、GMAC、NaOH、及びPEG600の粉末状混合物(水分含量32.5%対セルロース、平均重合度1006、結晶化度22%、メジアン径65μm)を得た。
【0114】
〔後処理〕
工程1で得られた粉末状混合物から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによってC−Cell 4g(平均重合度1006、結晶化度22%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は81%であった。結果を表1に示す。
【0115】
実施例9(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
〔工程a〕
実施例8の工程aと同じ操作を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物(水分含量22.3%対セルロース、平均重合度1350、結晶化度68%)を得た。
工程a終了後、得られた粉末状混合物に48%NaOH水溶液20.1g(AGU1モルあたり0.4モル)を工程aで用いたバッチ式振動ミル中で添加した。
【0116】
〔工程1〕
工程a終了後、NaOHを添加した混合物を、前記バッチ式振動ミル中で、振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で20分間結晶化度低下処理を行ない、C−CellとGMAC、水酸化ナトリウムの粉末状混合物を得た。さらにポリエチレングリコール (和光純薬工業株式会社製,商品名;「ポリエチレングリコール4000」(PEG4000);重量平均分子量4000)10g(工程aで用いた原料セルロース対して10質量%)をバッチ式振動ミルに投入し、振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で120分間結晶化度低下処理及び微粒化処理を行ない、C−Cell、GMAC、NaOH、及びPEG4000の粉末状混合物(水分含量32.5%対セルロース、平均重合1061、結晶化度30%、メジアン径74μm)を得た。
〔後処理〕
工程1で得られた粉末状混合物から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度1061、結晶化度30%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は79%であった。結果を表1に示す。
【0117】
実施例10(好ましい第1の様態によるC−Cellの製造)
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量8.5%)を、実施例1と同様にシートペレタイザーで処理してチップ状にした。
〔工程a〕
得られたチップ状パルプ2.1kgと実施例1で用いたGMAC1.2kg(AGU1モルあたり0.5モル)を袋中で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「FV−20」:容器全容積68.9L、ロッドとして、φ30mm、長さ590mm、断面形が円形のSUS304製ロッド114本、充填率70%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物(水分含量22.3%対セルロース、平均重合度1350、結晶化度68%)を得た。
工程a終了後、得られた粉末状混合物に、48%NaOH水溶液0.385kg(AGU1モルあたり0.4モル)を前記バッチ式振動ミル中で添加した。
【0118】
〔工程1〕
工程a終了後、NaOHを添加した混合物を、前記バッチ式振動ミル中で振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で20分間結晶化度低下処理を行ない、C−CellとGMAC、NaOHの粉末状混合物を得た。さらにポリプロピレングリコール (和光純薬工業株式会社製,商品名;「ポリプロピレングリコール ジオール型 平均分子量1000」(PPG1000);重量平均分子量1000)0.192kg(工程aで用いた原料セルロースに対して10質量%)をバッチ式振動ミルに投入し、振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で160分間結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、NaOH、及びPPG1000の粉末状混合物(水分含量32.5%対セルロース、平均重合829、結晶化度14%、メジアン径100μm)を得た。
【0119】
〔後処理〕
工程1で得られた粉末状混合物から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度829、結晶化度14%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.2と算出した。また水可溶分率は81%であった。結果を表1に示す。
【0120】
比較例1
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.6%)を実施例1と同様にシートペレタイザーで処理してチップ状にした。その後、80℃減圧下で12時間乾燥処理を行ない、チップ状の乾燥パルプ(水分含量0.4%)を得た。
得られたチップ状の乾燥パルプ100gをバッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30〜70℃の範囲で60分間結晶化度低下処理を行ない、平均重合度630、結晶化度0%の粉末セルロースを得た。
次に、得られた粉末セルロースから5gを採取し、16%水酸化ナトリウム水溶液1.5g(AGU1モルあたり0.2モル)を加えて乳鉢で混合した後、更に実施例1で用いたGMACを1.17g(AGU1モルあたり0.2モル)乳鉢で混合した。得られた混合物(水分含量30%対セルロース)をスクリュー管に入れ、50℃で5時間熟成をおこなった。この反応終了品を酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度630、結晶化度0%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.1と算出した。また水可溶分率は15%であった。結果を表1に示す。
【0121】
比較例2
比較例1の結晶化度低下処理で得られた粉末セルロースから5gを採取し、19%水酸化ナトリウム水溶液1.3g(AGU1モルあたり0.2モル)を加えて乳鉢で混合した後、更に実施例1で用いたGMACを2.33g(AGU1モルあたり0.4モル)乳鉢で混合した。得られた混合物(水分含量30%対セルロース)をスクリュー管に入れ、50℃で5時間熟成を行なった。この反応終了品を酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 4g(平均重合度630、結晶化度0%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は48%であった。結果を表1に示す。
【0122】
比較例3
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.6%)を実施例1と同様にシートペレタイザーで処理してチップ状にした。
【0123】
〔工程a(エーテル化剤なし)〕
得られたチップ状パルプ138gに、イオン交換水17gを乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間結晶化度低下処理を行ない、平均重合度1360、結晶化度64%の粉末セルロース155g(水分含量21.2%対セルロース)を得た。
【0124】
〔工程1(エーテル化剤なし)〕
この粉末セルロース155gと11%のNaOH水溶液22.4g(AGU1モルあたり0.1モル)を乳鉢で混合した後、前記バッチ式振動ミルに投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で60分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとNaOHの粉末状混合物177g(水分含量37.2%対セルロース、平均重合度1170、結晶化度64%)を得た。
【0125】
〔熟成〕
次に、得られた粉末状混合物から7gを採取し、実施例1で用いたGMAC3g(AGU1モルあたり0.5モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量48.9%対セルロース)をスクリュー管に入れ、50℃で5時間熟成を行なった。この反応終了品を酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 7g(平均重合度1170、結晶化度64%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は17%であった。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】

【0127】
表1の実施例1と比較例1の比較、及び実施例2〜9と比較例2の比較から、カチオン基の置換度が同等であっても、本発明の製造方法で得られたC−Cellは、結晶化度0%のセルロースを原料として得られたC−Cellよりも平均重合度が高く、且つ水溶性も高いことが分かる。
また比較例3から、工程1でエーテル化剤(GMAC)を添加しないで結晶化度低下処理を行なった場合、工程1では低結晶化が進行していない。これは、工程1において低結晶化と再結晶化が同時に進行した結果と考えられ、比較例3で得られたC−Cellは、平均重合度及びカチオン基の置換度は同等であっても、水可溶分率が著しく低下している。このことからも本発明の製造方法は、高重合度で且つ水溶性が高いC−Cellを得るために優れた方法であることが分かる。
【0128】
実施例11(好ましい第1の様態によるDHPCの製造)
原料のセルロースとして、シート状木材パルプ〔テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.6%〕をシートペレタイザー(株式会社ホーライ社製、製品名「SGG−220」)で処理して、チップ状1.5×3mm角にした後、窒素気流下、減圧条件(約70kPa)で12時間乾燥させ、チップ状パルプ(水分量0%、結晶化度74%)を得た。
【0129】
〔工程a:エーテル化剤としてグリシドールを添加し、粉砕処理を行う工程〕
得られたチップ状パルプ100gに、グリシドール(関東化学株式会社製)24.1g〔AGU1モルあたり0.5モル〕を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ211mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間粉砕処理を行ない、セルロースとグリシドールの粉末状混合物(水分含量0%対セルロース、平均重合度1360、結晶化度64%)124.1gを得た。
工程aで得られた粉末状混合物124.1gに27.2%NaOH水溶液10.0g(AGU1モルあたり0.2モル)を添加し、乳鉢で混合した。
【0130】
〔工程1:塩基化合物を添加し、粉砕処理を行う工程〕
前記乳鉢で混合して得られた混合物をバッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ10mm、長さ211mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド117本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,30℃以下で120分間粉砕処理を行ない、DHPCとNaOHの粉末状混合物134.1g(水分含量14%対セルロース、平均重合度946、結晶化度0%)を得た。
【0131】
〔後処理〕
得られた粉末状混合物の5gをスクリュー管に採取し、イオン交換水/メタノール/アセトン=2/4/4(体積比)の混合溶液100mLと混合した後、酢酸でpH6〜7に中和し、ろ過することで、前記粉末状混合物の洗浄を行った。更に2回、混合溶液100mLにより洗浄(酢酸は添加せず)を行い、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、DHPC4gを得た(平均重合度946、結晶化度0%)。グリセリル基の置換度は0.36であり、また、水可溶分率は21%であった。結果を表2に示す。
【0132】
実施例12(好ましい第1の様態によるDHPCの製造)
〔熟成〕
実施例11の工程1終了後に得られた粉末状混合物100gに、実施例11で用いたグリシドール16.8g(AGU1モルあたり0.5モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量14%対セルロース)を、1Lニーダー(入江商会社製、製品名「PNV−1型」)に仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成し、粉末状混合物を得た。
〔後処理〕
この粉末状混合物から5gを採取し、実施例11と同様の後処理を行い、DHPC4gを得た(平均重合度946、結晶化度0%)。グリセリル基の置換度は0.71であり、また、水可溶分率は51%であった。結果を表2に示す。
【0133】
実施例13(好ましい第1の様態によるDHPCの製造)
〔熟成〕
実施例12の熟成終了後に得られた粉末状混合物100gに対して、更に実施例11で用いたグリシドール28.9g(AGU1モルあたり1.0モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量14質量%対セルロース)を、実施例12で用いた1Lニーダーに仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成し、粉末状混合物を得た。
〔後処理〕
この粉末状混合物から5gを採取し、実施例11と同様の後処理を行い、DHPC4gを得た(平均重合度946、結晶化度0%)。グリセリル基の置換度は1.26であり、また、水可溶分率は64%であった。結果を表2に示す。
【0134】
実施例14(好ましい第1の様態によるDHPCの製造)
〔熟成〕
実施例13の熟成終了後に得られた粉末状混合物100gに対して、更に実施例11で用いたグリシドール28.9g(AGU1モルあたり1.0モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量14質量%対セルロース)を、実施例12で用いた1Lニーダーに仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成し、粉末状混合物を得た。
〔後処理〕
この粉末状混合物から5gを採取し、実施例11と同様の後処理を行い、DHPC4gを得た(平均重合度946、結晶化度0%)。グリセリル基の置換度は1.74であり、また、水可溶分率は63%であった。結果を表2に示す。
【0135】
比較例4
実施例1の前処理と同様の操作により得られたチップ状パルプ100gを、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ211mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で30分間粉砕処理を行い平均重合度796、結晶化度0%の粉末状セルロース100gを得た。
【0136】
〔熟成〕
得られた粉末状セルロース100gに、27.2%NaOH水溶液10.0g(AGU1モルあたり0.2モル)を乳鉢で混合した後、実施例11で用いたグリシドール48.1g(AGU1モルあたり1.0モル)を加えて乳鉢で混合し、得られた混合物(水分含量14%対セルロース)を、実施例12で用いた1Lニーダーに仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成を行い、粉末状混合物を得た。
〔後処理〕
この粉末状混合物から5gを採取し、実施例11と同様の後処理を行い、DHPC4gを得た。グリセリル基の置換度は0.58であり、また、水可溶分率は44%であった。結果を表2に示す
【0137】
比較例5
比較例4の熟成工程で得られた粉末状混合物100gに対して、更に実施例11で用いたグリシドール28.9g(AGU1モルあたり1.0モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量14%対セルロース)を、実施例12で用いた1Lニーダーに仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成し、粉末状混合物を得た。
この粉末状混合物から5gを採取し、実施例11と同様の後処理を行い、DHPC4gを得た。グリセリル基の置換度は1.12であり、また、水可溶分率は57%であった。結果を表2に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
表2の実施例と比較例の比較から、本発明の製造方法によれば、比較例の製造方法に比べ、平均重合度、及び水溶性の点で優れたDHPCを製造できることがわかる。
【0140】
実施例15(好ましい第2の様態によるC−Cellの製造)
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量8.0%)を実施例1と同様にシートペレタイザーで処理してチップ状にした。
【0141】
〔工程b:塩基化合物を添加し、粉砕処理を行う工程〕
得られたチップ状パルプ108gに、粉末状NaOH4.5g(AGU1モルあたり0.2モル)およびイオン交換水4.9gを乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとNaOHの粉末状混合物117g(水分含量12.8%対セルロース、平均重合度1500、結晶化度60%)を得た。
工程bで得られた粉末状混合物117gと実施例1で用いたGMAC21.5g(AGU1モルあたり0.2モル)を工程bで用いたバッチ式振動ミルに投入した。
【0142】
〔工程1:塩基化合物とエーテル化剤の共存下に粉砕処理を行う工程〕
工程bで得られた粉末状混合物にGMACを加えた混合物を、前記バッチ式振動ミル中で、振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で60分間結晶化度低下処理を行ない、C−CellとGMAC、NaOHの粉末状混合物138g(水分含量18.7%対セルロース、平均重合度1100、結晶化度38%)を得た。
【0143】
〔熟成〕
次に、得られた粉末状混合物から100gを採取し、実施例1で用いたGMAC24.8g(AGU1モルあたり0.3モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量34.8%対セルロース)をニーダーに入れ、50℃で5時間加熟成を行なった。この反応終了品から10gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 7g(平均重合度1100、結晶化度38%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は81%であった。結果を表3に示す。
【0144】
実施例16(好ましい第2の様態によるC−Cellの製造)
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量8.0%)を実施例1と同様にシートペレタイザーで処理してチップ状にした。
〔工程b〕
得られたチップ状パルプ108gに、粉末状NaOH4.5g(AGU1モルあたり0.2モル)およびイオン交換水4.9gを乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、製品名「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で60分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとNaOHの粉末状混合物117g(水分含量12.8%対セルロース、平均重合度1450、結晶化度54%)を得た。
工程bで得られた粉末状混合物117gと実施例1で用いたGMAC21.5g(AGU1モルあたり0.2モル)を工程bで用いたバッチ式振動ミルに投入した。
【0145】
〔工程1〕
工程bで得られた粉末状混合物にGMACを添加した混合物を、前記バッチ式振動ミル中で、振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間結晶化度低下処理を行ない、C−CellとGMAC、NaOHの粉末状混合物138g(水分含量18.7%対セルロース、平均重合度1400、結晶化度43%)を得た。
【0146】
〔熟成〕
次に、得られた粉末状混合物から100gを採取し、実施例1で用いたGMAC24.8g(AGU1モルあたり0.3モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物(水分含量34.8%対セルロース)をニーダーに入れ、50℃で5時間熟成を行なった。この反応終了品から10gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mlで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、C−Cell 7g(平均重合度1400、結晶化度43%)を得た。
分析の結果からカチオン基の置換度は、0.3と算出した。また水可溶分率は62%であった。結果を表3に示す。
【0147】
【表3】

【0148】
表3の実施例15〜16と表1の比較例1〜3との比較から、本発明の製造方法の好ましい第2の様態もまた、比較例の製造方法に比べ、C−Cellの平均重合度、並びに水溶性が高いC−Cellを得られる優れた製造方法であることが分かる。
【0149】
実施例17(C−HPCの製造)
〔AO化〕
実施例2の熟成後に得られたC−Cell 98.6g(未中和・未精製品)の入ったニーダーを70℃に昇温し、酸化プロピレン51.9g(AGU1モルあたり3モル、関東化学株式会社製、特級試薬)を滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで20時間反応を行なった。
生成物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末125gを得た。この反応終了品から10.0gを採取して酢酸で中和し、薄褐色固体を得た。生成物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行ない、精製C−HPCを得た。
分析の結果、カチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.3、および1.3と算出した。また得られたC−HPCの水可溶分率は64%であった。結果を表4に示す。
【0150】
実施例18(C−HPCの製造)
〔AO化〕
実施例3の熟成後に得られたC−Cell(未中和・未精製品)を反応原料に用いた以外は、実施例17の方法と同様に酸化プロピレンの付加反応を行った。得られたC−HPCのカチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.3、および1.9であった。また得られたC−HPCの水可溶分率は61%であった。結果を表4に示す。
【0151】
実施例19(C−HPCの製造)
〔AO化〕
実施例5の工程1終了後に得られたC−Cell(未中和、未精製品)を反応原料に用いた点、酸化プロピレンを34.6g(AGU1モルあたり2モル)用いた点を除き、実施例17の方法と同様に酸化プロピレンの付加反応を行った。得られたC−HPCのカチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.3、および1.1であった。また得られたC−HPCの水可溶分率は65%であった。結果を表4に示す。
【0152】
実施例20(C−HPCの製造)
〔AO化〕
実施例6の工程1終了後に得られたC−Cell(未中和、未精製品)を反応原料に用いた以外は、実施例19の方法と同様に酸化プロピレンの付加反応を行った。得られたC−HPCのカチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.3、および1.6であった。また得られたC−HPCの水可溶分率は82%であった。結果を表4に示す。
【0153】
実施例21(C−HPCの製造)
〔AO化〕
実施例1の熟成後に得られたC−Cell(未中和、未精製品)を反応原料に用いた点、酸化プロピレンを103.8g(AGU1モルあたり6モル)用いた点を除き、実施例17の方法と同様に酸化プロピレンの付加反応を行った。得られたC−HPCのカチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.1、および2.9であった。また得られたC−HPCの水可溶分率は71%であった。結果を表4に示す。
【0154】
実施例22(C−HPCの製造)
〔AO化〕
実施例10の工程1終了後に得られたC−Cell(未中和、未精製品)を反応原料に用いた点、酸化プロピレンを26g(AGU1モルあたり1.5モル)用いた点を除き、実施例17の方法と同様に酸化プロピレンの付加反応を行った。得られたC−HPCのカチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.2、および1.19であった。また得られたC−HPCの水可溶分率は75%であった。結果を表4に示す。
【0155】
比較例6(C−HPCの製造)
比較例1の熟成後に得られたC−Cell(未中和、未精製品)を反応原料に用いた以外は、実施例21の方法と同様に酸化プロピレンの付加反応を行った。得られたC−HPCのカチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.1、および2.8であった。また得られたC−HPCの水可溶分率は48%であった。結果を表4に示す。
【0156】
【表4】

【0157】
表4から明らかなように、実施例17〜22で得られたC−HPCは、比較例6で得られたC−HPCに比べて、高い重合度を有し、水溶性に優れたものであった。
【0158】
実施例23(好ましい第1の様態によるC−DHPCの製造)
実施例2の熟成までと同様の操作を行なって平均重合度1123、カチオン基の置換度0.3、結晶化度42%、水可溶分率100%のC−Cellを含む混合物を得た。
〔熟成〕
得られたC−Cellを含む混合物69.0gに対して、実施例11で用いたグリシドール16.5g(AGU1モルあたり1.0モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物を実施例12で用いた1Lニーダーに仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成し、C−DHPCを含む混合物を得た。
〔後処理〕
この混合物から5gを採取し、イオン交換水/イソプロピルアルコール=15/85(体積比)の混合溶液100mLと混合した後、酢酸でpH6〜7に中和し、ろ過を行なった。更に2回、前記イソプロパノール水溶液100mLにより洗浄を行い、脱塩・精製を行なった後、減圧乾燥する事によって、原料セルロースからの重合度低下が小さく水溶性の高いC−DHPC4gを得た(平均重合度1123、カチオン基の置換度0.3、グリセリル基の置換度0.54、水可溶分率74%)。
【0159】
実施例24(好ましい第1の様態によるC−DHPCの製造)
〔熟成〕
実施例23の熟成終了後に得られたC−DHPCを含む混合物60.5gに対して、実施例11で用いたグリシドール11.7g(AGU1モルあたり1.0モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物を実施例12で用いた1Lニーダーに仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成し、C−DHPCを含む混合物を得た。
〔後処理〕
この混合物から5gを採取し、実施例23の後処理と同様の操作を行なって、原料セルロースからの重合度低下が小さく水溶性の高いC−DHPC4gを得た(平均重合度1123、カチオン基の置換度0.3、グリセリル基の置換度1.03、水可溶分率63%)。
【0160】
実施例25(好ましい第1の様態によるC−DHPCの製造)
〔熟成〕
実施例24の熟成終了後に得られたC−DHPCを含む混合物47.2gに対して、実施例11で用いたグリシドール7.6g(AGU1モルあたり1.0モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物を実施例12で用いた1Lニーダーに仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により60℃に加温して、槽内温度を60℃とし、窒素雰囲気下で1.5時間熟成し、C−DHPCを含む混合物を得た。
〔後処理〕
この混合物から5gを採取し、実施例23の後処理と同様の操作を行なって、原料セルロースからの重合度低下が小さく水溶性の高いC−DHPC4gを得た(平均重合度1123、カチオン基の置換度0.3、グリセリル基の置換度1.37、水可溶分率61%)。
【0161】
実施例26(好ましい第1の様態によるC−DHPCの製造)
〔熟成〕
実施例12の熟成終了後に得られたDHPCを含む混合物5.0gに対して、実施例1で用いたGMAC0.7g(AGU1モルあたり0.2モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物をスクリュー管(株式会社マルエム社製、No.7)に仕込んだ後窒素によりサンプル瓶中の気体の置換を行い、50℃に加温した恒温槽にて5時間熟成し、C−DHPCを含む混合物を得た。
〔後処理〕
この混合物から5gを採取し、実施例23の後処理と同様の操作を行なって、原料セルロースからの重合度低下が小さく水溶性の高いC−DHPC4gを得た(平均重合度946、カチオン基の置換度0.12、グリセリル基の置換度0.71、水可溶分率76%)。
【0162】
実施例27(好ましい第1の様態によるC−DHPCの製造)
〔熟成〕
実施例13の熟成終了後に得られたDHPCを含む混合物5.0gに対して、実施例1で用いたGMAC0.55g(AGU1モルあたり0.2モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物をスクリュー管(株式会社マルエム社製、No.7)に仕込んだ後窒素によりサンプル瓶中の気体の置換を行い、50℃に加温した恒温槽にて5時間熟成し、C−DHPCを含む混合物を得た。
【0163】
〔後処理〕
この混合物から5gを採取し、実施例23の後処理と同様の操作を行なって、原料セルロースからの重合度低下が小さく水溶性の高いC−DHPC4gを得た(平均重合度946、カチオン基の置換度0.11、グリセリル基の置換度1.26、水可溶分率70%)。
【0164】
実施例28(好ましい第1の様態によるC−DHPCの製造)
〔熟成〕
実施例14の熟成終了後に得られたDHPCを含む混合物5.0gに対して、実施例1で用いたGMAC0.45g(AGU1モルあたり0.2モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物をスクリュー管(株式会社マルエム社製、No.7)に仕込んで窒素によりサンプル瓶中の気体の置換を行い、50℃に加温した恒温槽にて5時間熟成し、C−DHPCを含む混合物を得た。
〔後処理〕
この混合物から5gを採取し、実施例23の後処理と同様の操作を行なって、原料セルロースからの重合度低下が小さく水溶性の高いC−DHPC4gを得た(平均重合度946、カチオン基の置換度0.13、グリセリル基の置換度1.74、水可溶分率69%)。
【0165】
実施例29(好ましい第1の様態によるC−DHPCの製造)
〔熟成〕
実施例14の熟成終了後に得られたDHPCを含む混合物5.0gに対して、実施例1で用いたGMAC1.12g(AGU1モルあたり0.5モル)を加えて乳鉢で混合した後、得られた混合物をスクリュー管(株式会社マルエム社製、No.7)に仕込んで窒素によりサンプル瓶中の気体の置換を行い、50℃に加温した恒温槽にて5時間熟成し、C−DHPCを含む混合物を得た。
〔後処理〕
この混合物から5gを採取し、実施例23の後処理と同様の操作を行なって、原料セルロースからの重合度低下が小さく水溶性の高いC−DHPC4gを得た(平均重合度946、カチオン基の置換度0.36、グリセリル基の置換度1.74、水可溶分率75%)。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明によれば、セルロースの解重合を抑制しつつ、水溶性の高いE−Cell及びHA/E−Cellを製造可能であることが分かる。
本発明により得られるE−Cell及びHA/E−Cellは、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の洗浄剤組成物の配合成分や分散剤、改質剤、凝集剤等に好適に使用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1を有する、セルロースエーテルの製造方法。
工程1:セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)及び塩基化合物の共存下で、セルロースの粉砕処理を行ない、該セルロースと該エーテル化剤との反応を行う工程
【請求項2】
工程1における粉砕処理時の系内水分量が、前記セルロースに対し、5〜50質量%である、請求項1記載のセルロースエーテルの製造方法。
【請求項3】
工程1における塩基化合物の添加量が、セルロースのアンヒドログルコース単位1モルあたり、0.01〜1当量である、請求項1又は2に記載のセルロースエーテルの製造方法。
【請求項4】
下記計算式(1)で示される工程1における結晶化度の低下量(P1)が1〜80%である、請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。
1=工程1開始前のセルロースの結晶化度(%)−工程1終了後のセルロースエーテルの結晶化度(%)・・・計算式(1)
【請求項5】
工程1の前に下記工程aを行い、工程aで得られるセルロースと、該セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)との混合物に、塩基化合物を添加して工程1を行う、請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。
工程a:セルロースに前記エーテル化剤を添加し、粉砕処理を行なう工程
【請求項6】
下記計算式(a)で示される工程aにおける結晶化度の低下量(Pa)が1〜60%である、請求項5記載のセルロースエーテルの製造方法。
a=工程a開始前のセルロースの結晶化度(%)−工程a終了後のセルロースの結晶化度(%)・・・計算式(a)
【請求項7】
工程1の前に下記工程bを行い、工程bで得られるセルロースと、塩基化合物との混合物に、該セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)を添加して工程1を行う、請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。
工程b:セルロースに前記塩基化合物を添加し、粉砕処理を行なう工程
【請求項8】
下記計算式(b)で示される工程bにおける結晶化度の低下量(Pb)が1〜60%である、請求項7に記載のセルロースエーテルの製造方法。
b=工程b開始前のセルロースの結晶化度(%)−工程b終了後のセルロースの結晶化度(%)・・・計算式(b)
【請求項9】
前記エーテル化剤が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1〜8のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。
【化1】

〔式中、Zは下記一般式(2)で表される基、スルホン酸基、水酸基、及び炭素数1〜18のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されている炭素数1〜2の炭化水素基、又は下記一般式(2)で表される基、スルホン酸基、水酸基、及び炭素数1〜18のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい炭素数3〜18の炭化水素基を示す。〕
【化2】

〔式中、R1〜R3は、各々独立に炭素数1〜3の炭化水素基を示し、X-はアニオン性の原子または基を示す。〕
【請求項10】
工程1を経た反応混合物を、20〜200℃で熟成する工程を含む、請求項1〜9のいずれかに記載のセルロースエーテルの製造方法。
【請求項11】
下記工程1を有し、工程1においてセルロースと、セルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤とを反応させるセルロースエーテルの製造方法でセルロースエーテルを製造した後、該セルロースエーテルに更に炭素数2〜4のアルキレンオキシドを反応させるヒドロキシアルキル化セルロースエーテルの製造方法。
工程1:塩基化合物、及びセルロースとの反応部位としてエポキシ基を有するエーテル化剤(但し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを除く)及び塩基化合物の共存下で、セルロースの粉砕処理を行ない、該セルロースと該エーテル化剤との反応を行う工程

【公開番号】特開2012−140576(P2012−140576A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42453(P2011−42453)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】