説明

セルロースナノファイバーを含有する紙

【課題】透気抵抗度、平滑度が顕著に向上した紙を提供すること。
【解決手段】濃度2%(w/v)の水分散液のB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・s、好ましくは2000mPa・sであるセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤を用いて透気抵抗度及び平滑度が向上した紙を製造する。この添加剤は、(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物又はこれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いてセルロース系原料を酸化して酸化されたセルロースを調製し、該酸化されたセルロースを湿式微粒化処理してナノファイバー化させることを含む方法により製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度2%(w/v)のB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであるセルロースナノファイバー水分散液から成る製紙用添加剤、及びそれを含有する紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙は空隙を有するものであり、特に紙の厚さ方向に貫通した空隙は、酸素、水蒸気に対するバリア性や、塗料の浸透性に影響を与える。特許文献1には、塗料の原紙への浸透を抑制する浸透抑制剤として、カルボキシメチル置換度が0.25〜0.5で、1%濃度の水溶液粘度が5〜300mPa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いることが開示されている。また、紙の空隙の指標である透気抵抗度を向上させる方法として、特許文献2には、未糊化顆粒澱粉を剥離紙用原紙に含有させることが開示されている。また、特許文献3には、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂から成る表面紙質向上剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−300624号公報
【特許文献2】特公平4−57798号公報
【特許文献3】特開2003−49390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のカルボキシメチルセルロース、未糊化顆粒澱粉、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂を紙に適用することにより、紙の空隙を完全に埋める塗膜を形成させることは困難であり、十分な透気抵抗度を有する紙は得られていなかった。紙の透気抵抗度を向上させる他の方法として、パルプの叩解を強化して繊維間結合を向上させる、あるいは強いカレンダー処理で空隙を潰す等の方法があるが、これらの方法で紙の透気抵抗度を向上させると、紙の密度が大幅に上昇してしまい、特殊な用途以外には適用し難い紙となってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、紙の透気抵抗度を顕著に向上させることができる製紙用添加剤と、その剤を含有する紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いてセルロース系原料を酸化し、次いで酸化されたセルロース系原料を特定の手法で湿式微粒化処理して解繊することにより、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであり、紙などの基材に塗布することができる適度な粘調性を有するセルロースナノファイバーが得られることを見いだした。また、このセルロースナノファイバーから成る製紙用添加剤を紙に含有させることにより、紙の密度を上昇させることなく、高い透気抵抗度を有する紙が得られることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤は、澱粉やポリアクリルアミドに比べて、紙の透気抵抗度を向上させる効果が顕著に高く、本発明の製紙用添加剤を用いることで透気抵抗度の高い高品質な紙を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(セルロースナノファイバー)
本発明の製紙用添加剤は、セルロースナノファイバーからなる。セルロースナノファイバーとは、セルロース系原料を解繊することにより得られる幅2〜5nm、長さ1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルである。本発明では、特に、濃度2%(w/v)(すなわち、100mlの分散液中に2gのセルロースナノファイバー(乾燥質量)が含まれる)におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであるセルロースナノファイバーの水分散液を製紙用添加剤として用いる。本発明の製紙用添加剤は、適度な粘調性を有しており、所望の濃度に調整することで塗料として好適に使用できる。セルロースナノファイバーの2%(w/v)水分散液におけるB型粘度は、比較的低い方が、塗料を調製する際に取り扱いが容易であるため好ましく、具体的には、500〜2000mPa・s程度が好ましく、500〜1500mPa・s程度がより好ましく、500〜1000mPa・s程度がさらに好ましい。
【0009】
本発明のセルロースナノファイバーの水分散液のB型粘度は、公知の手法により測定することができる。例えば、東機産業社のVISCOMETER TV-10粘度計を用いて測定することができる。
【0010】
本発明に用いられる濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであるセルロースナノファイバーは、セルロース系原料を、(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物又はそれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、さらに該酸化されたセルロースを湿式微粒化処理して解繊し、ナノファイバー化することにより製造することができる。
【0011】
本発明のセルロースナノファイバーの原料となるセルロース系原料は、特に限定されるものではなく、各種木材由来のクラフトパルプ又はサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、あるいはそれらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末などを使用できる。また、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹等の植物を使用することもできる。このうち、漂白済みクラフトパルプ、漂白済みサルファイトパルプ、粉末セルロース、微結晶セルロース粉末を用いた場合、比較的低粘度(2%(w/v)水分散液のB型粘度において500〜2000mPa・s程度)のセルロースナノファイバーを効率よく製造することができるので好ましく、粉末セルロース、微結晶セルロース粉末を用いることがより好ましい。
【0012】
粉末セルロースとは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解処理で除去した後、粉砕・篩い分けすることで得られる微結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。体積平均粒子径が、100μm以下であると、流動性に優れるセルロースナノファイバー分散液を得ることができる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロックR(日本製紙ケミカル社製)、セオラスTM(旭化成ケミカルズ社製)、アビセルR(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。
【0013】
セルロース系原料を酸化する際に用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、本発明で使用されるN−オキシル化合物としては、下記一般式(式1)で示される物質が挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
(式1中、R1〜R4は同一又は異なる炭素数1〜4程度のアルキル基を示す。)
式1で表される化合物のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、TEMPOと称する)、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、4−ヒドロキシTEMPOと称する)を発生する化合物が好ましい。また、TEMPO又は4−ヒドロキシTEMPOから得られる誘導体も好ましく用いることができ、特に、4−ヒドロキシTEMPOの誘導体が最も好ましく用いることができる。4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を、炭素数4以下の直鎖或いは分岐状炭素鎖を有するアルコールでエーテル化して得られる誘導体か、あるいは、カルボン酸又はスルホン酸でエステル化して得られる誘導体が好ましい。4−ヒドロキシTEMPOをエーテル化する際には、炭素数が4以下のアルコールを用いれば、アルコール中の飽和、不飽和結合の有無に関わらず、得られる誘導体が水溶性となり、酸化触媒として良好に機能する4−ヒドロキシTEMPO誘導体を得ることができる。
【0016】
4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、例えば、以下の式2〜式4の化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
(式2〜4中、Rは炭素数4以下の直鎖又は分岐状炭素鎖である。)
さらに、下記式5で表されるN−オキシル化合物のラジカル、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルも、短時間で、均一なセルロースナノファイバーを製造できるため、特に好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
(式5中、R5及びR6は、同一又は異なる水素又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を示す。)
セルロース系原料を酸化する際に用いるTEMPOや4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物の量は、セルロース系原料をナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.01〜1mmol、さらに好ましくは0.05〜5mmol程度である。
【0023】
セルロース系原料の酸化の際に用いる臭化物またはヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などを使用することができる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.1〜100mmol、好ましくは0.1〜10mmol、さらに好ましくは0.5〜5mmol程度である。
【0024】
セルロース系原料の酸化の際に用いる酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。中でも、生産コストの観点から、現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが特に好適である。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.5〜500mmol、好ましくは0.5〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度である。
【0025】
本発明におけるセルロース系原料の酸化は、上記のとおり、(1)4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物と、(2)臭化物、ヨウ化物及びこれら混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて、水中で、セルロース系原料を酸化することを特徴とする。この方法は、温和な条件であってもセルロース系原料の酸化反応を円滑に効率良く進行させることができるという特色があるため、反応温度は15〜30℃程度の室温であってもよい。なお、反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率良く進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加することにより、反応液のpHを9〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが望ましい。
【0026】
上記のように、(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物、又はこれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて得られた酸化処理されたセルロース系原料を、湿式微粒化処理して解繊することにより、セルロースナノファイバーを製造することができる。湿式微粒化処理としては、例えば、高速せん断ミキサーや高圧ホモジナイザーなどの混合・攪拌、乳化・分散装置を必要に応じて単独もしくは2種類以上組合せて用いることができる。特に、100MPa以上、好ましくは120MPa以上、さらに好ましくは140MPa以上の圧力を可能とする超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理を行なうと、比較的低粘度(2%(w/v)水分散液のB型粘度において500〜2000mPa・s程度)のセルロースナノファイバーを効率よく製造することができるので好ましい。
【0027】
本発明のセルロースナノファイバーは、絶乾1gのセルロースナノファイバーにおけるカルボキシル基量として、0.5mmol/g以上、好ましくは0.9mmol/g以上、さらに好ましくは1.2mmol/g以上であると、均一な分散液の状態となるから望ましい。セルロースナノファイバーのカルボキシル基量は、セルロースナノファイバーの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
【0028】
カルボキシル基量[mmol/gパルプ]=a[ml]×0.05/セルロースナノファイバー質量[g]
(セルロースナノファイバーを含有する紙)
本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤を紙に含有させることにより、紙の透気抵抗度を向上させることができ、紙に塗料の浸透抑制やバリア性の向上等の機能を付与することができる。また、本発明の製紙用添加剤を紙に塗布または含浸させることにより、紙の平滑度を向上させることができ、紙の印刷適性を向上させることができる。また、本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤を塗布または含浸させて得られた紙は、バリア性、耐熱性に優れており、包装材料として使用することもできる。
【0029】
本発明のセルロースナノファイバーから成る製紙用添加剤を紙に適用する際には、紙に内添してもよいし、外添してもよいが、外添の方がセルローナノファバーを紙表面付近により多量に存在させることができ、紙の透気抵抗度及び平滑度をより向上させることができるから、好ましい。外添する方法としては、セルロースナノファイバーの水分散液を、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター等の塗工機によって塗工するか、あるいは、紙に含浸させればよい。
【0030】
本発明の紙における製紙用添加剤の好ましい含有量は、紙の乾燥質量当たりのセルロースナノファイバーの乾燥質量に基づいて、0.1〜10質量%であり、製紙用添加剤を外添する場合は、片面当たりの塗布量として0.01〜10g/m2、より好ましくは、0.1〜10g/m2が好ましい。
【0031】
本発明のセルロースナノファイバーを含有する紙は公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。抄紙機としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等が使用される。なお、多層紙や板紙を製造するには、円網式抄紙機を使用してもよい。
【0032】
本発明の紙は、1層の紙の他、2層以上の多層紙であってもよい。多層紙の場合は、本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤は少なくとも1層に含有させればよい。
【0033】
本発明の紙は、パルプ成分として、化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、脱墨パルプ(DIP)等の再生パルプを単独または任意の割合で混合して使用してもよい。抄紙時のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。
【0034】
また、本発明の紙は填料を含有してもよい。填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。中でも、環境面や紙の保存性等の観点から、炭酸カルシウムを使用して、紙面がpH6〜9となるように中性抄紙することが望ましい。
【0035】
さらに、本発明の紙は、必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、着色剤、染料、消泡剤、嵩高剤等を含有してもよい。
(印刷用紙)
本発明のセルロースナノファイバーを含有する紙は、顔料を含まない表面処理剤を塗工して印刷用紙としてもよい。表面処理剤としては、表面強度やサイズ性の向上の観点から、水溶性高分子を主成分とする表面処理剤が望ましい。水溶性高分子を用いる場合には、水溶性高分子と本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤とを混合して塗工してもよい。水溶性高分子としては、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の表面処理剤として通常使用されるものを単独で、あるいは混合して使用することができる。また、表面処理剤として、水溶性高分子の他に、耐水化及び表面強度の向上を目的とする紙力増強剤や、サイズ性付与を目的とする外添サイズ剤を用いてもよい。紙を中性抄紙する場合、外添サイズ剤としてはカチオン性表面サイズ剤が好ましい。
【0036】
表面処理剤は、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター等の塗工機によって塗布することができる。中でも、ゲートロールコーターのような被膜転写方式の塗工機を使用すると、2ロールサイズプレスコーターのような含浸方式の塗工機に比べて、表面処理剤中の有効成分が紙表面により多量に留まることとなるため、より少量の表面処理剤塗布量でも効果が得られるから好ましい。表面処理剤の塗布量としては、表面処理剤の乾燥質量として、片面当たり0.05g/m2以上3g/m2以下、好ましくは0.1/m2以上3g/m2以下が好ましい。
【0037】
本発明ではまた、印刷品質をより向上させるため、本発明の製紙用添加剤を内添または外添した紙の上に、顔料を含有する塗工層を設けて印刷用紙とすることもできる。また、所望の効果を阻害しない範囲で、カレンダー処理を施してもよい。カレンダーは通常の操業範囲内の線圧で用いられるが、嵩高な紙を製造する観点から、紙の平滑性を維持できる範囲でなるべく低線圧が好ましく、また、ソフトニップカレンダーが好ましい。
【0038】
本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤を印刷用紙に用いると、高い平滑性を付与でき、印刷品質を向上することができる。
例えば、新聞用紙は、印刷用紙の一種であり、一般に原料パルプとして100%の再生パルプ、又は再生パルプと、木材をほぐすことにより製造される少量の漂白した針葉樹パルプが混在する機械パルプとから製造される。その他、必要に応じて上述した各種パルプを混合して製造される。新聞用紙には、高速輪転機による印刷において紙切れしにくく、平滑で表裏差が少なく、不透明度が高く、かつ印刷適正が高いことが要求される。本発明の製紙用添加剤を新聞用紙に用いると、透気抵抗度を顕著に向上させることができ、新聞用紙に印刷インキが過度に浸透することを防ぎ、印字濃度の低下を防ぐことができる。また、紙表面が平滑になるため、印刷品質を向上させることができる。
【0039】
新聞用紙以外にも、本発明は、木材を化学処理してリグニンを除去し、セルロースとヘミセルロースから構成される化学パルプを100%使用する上級印刷用紙(上質紙)、40〜100%の化学パルプを使用する中級印刷用紙(中質紙および上更紙)などに適用することができる。各種紙の諸物性は、それぞれ求められる用途に応じて適宜設定され、例えば、新聞用紙の場合、坪量30〜60g/m2程度である。また、印刷方式は特に制限されず、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の各種印刷機に使用可能である。オフセット印刷方式としては、熱乾燥工程を含むヒートセット型、熱乾燥工程を含まず浸透乾燥型インキを用いるコールドセット型のいずれの印刷機にも使用することができる。
【0040】
(電子写真転写用紙、感熱記録用紙、加工用紙、板紙、衛生用紙など)
本発明のセルロースナノファイバーを含有する紙は、印刷用紙、新聞用紙の他、電子写真用転写紙、インクジェット記録用紙、感熱記録用紙、感圧記録用紙、フォーム用紙、加工用紙、衛生用紙等として使用することができる。加工用紙としてさらに詳しくは、積層板用原紙、壁紙用裏打ち紙、成型用途の原紙等が挙げられる。衛生用紙としてさらに詳しくは、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル等が挙げられる。また、段ボール原紙等の板紙として使用することもできる。
【0041】
本発明の製紙用添加剤を、電子写真転写用紙に用いると、平滑度及び透気抵抗度が高くなることから、トナーの転写性が向上し、高画質化することができる。
本発明の製紙用添加剤を、インクジェット記録用紙に用いると、平滑度及び透気抵抗度が高くなることから、インクの過度の浸透を抑制することができ、インキのにじみや定着性不良、印字濃度の低下を防ぐことができる。
【0042】
本発明の製紙用添加剤を、感熱記録用紙に用いると、平滑度及び透気抵抗度が高くなることから、感熱塗料が原紙に過度に浸透することを抑制し、また、感熱塗料が均一に塗布され、断熱効果が得られるため、発色感度を向上させることができる。
【0043】
本発明の製紙用添加剤を、感圧記録用紙に用いると、平滑度及び透気抵抗度が高くなることから、感圧塗料が原紙に過度に浸透することを抑制し、また、感圧塗料が均一に塗布されるので、発色感度を向上させることができる。
【0044】
本発明の製紙用添加剤を、壁紙用裏打ち紙に用いると、平滑度及び透気抵抗度が高くなることから、水系澱粉糊などの接着剤が原紙に過度に浸透することを抑制し、また原紙面の毛羽立ちを抑制して樹脂の突起物の発生を防ぐことができる。
【0045】
本発明の製紙用添加剤を、衛生用紙に用いると、平滑度及び透気抵抗度が高くなることから、紙表面を滑らかにすることができる。
本発明の製紙用添加剤を、ダンボール原紙等の板紙に用いると、平滑度及び透気抵抗度が高くなることから、印刷適正を向上することができる。
【0046】
(塗工紙用原紙)
さらに、本発明のセルロースナノファイバーを含有する紙は、塗工紙、インクジェット記録用紙、感熱記録用紙、感圧記録用紙、加工用紙等の、顔料を含む塗工層を有する紙の原紙としても使用することができる。塗工紙としてさらに詳しくは、アート紙、コート紙、微塗工紙、キャストコート紙、白板紙等が挙げられる。加工用紙としてさらに詳しくは、包装用紙、防湿紙、壁紙用裏打ち紙、紙器用原紙、成型用途の原紙等が挙げられる。特に、本発明のセルロースナノファイバーから成る製紙用添加剤を紙に外添した紙は、高い透気抵抗度及び平滑度を有するので、これを原紙として塗料を塗工すると、塗料の原紙中への浸透が抑制され、かつ平滑な塗工層が得られるので、印刷適性が良好な塗工紙を得ることができ、好ましい。例えば、上質紙(化学パルプ100%)又は中質紙(化学パルプに機械パルプを混合)からなるコート紙用原紙に、本発明のセルロースナノファイバーを外添することにより、コート紙用原紙の平滑度と透気抵抗度とを向上させることができ、顔料(カオリン、炭酸カルシウムなど)及びバインダー(澱粉、ラテックスなど)からなる塗料の原紙中への浸透を抑制して平滑な塗工層を得ることができ、それにより少ない塗工量で塗工紙(コート紙)の光沢を向上させたり、また、印刷適性を向上させることができる。
【0047】
また、本発明のセルロースナノファイバーを含有する紙を、インクジェット記録用紙、感熱記録用紙、及び感圧記録用紙の原紙として使用した場合にも同様に、平滑なインクジェット記録層、感熱記録層、感圧記録層が得られるので好ましい。また、本発明のセルロースナノファイバーを含有する紙は、その片面または両面に、1層以上の合成樹脂層を設けた積層紙の原紙として使用することもできる。
【0048】
本発明の塗工紙とは、本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤を含有する原紙に、顔料と接着剤とを有する塗工層を設けたものである。塗工層に用いる顔料としては、塗工紙用に従来から用いられている、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、およびプラスチックピグメントなどの有機顔料を用いることができ、これらの顔料は必要に応じて単独で、又は混合して使用することが出来る。
【0049】
塗工層に用いる接着剤は、塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤を、必要に応じて、単独で、又は混合して使用することができる。これらの接着剤は顔料100質量部当たり5〜50質量部程度の量で使用することができる。塗工層の表面強度をより良好にするためには、スチレン・ブタジエン系の共重合体ラテックスを10〜25質量部含有する接着剤を用いることが好ましい。また、柔軟性の点から、接着剤における澱粉の量は5質量部以下が好ましい。
【0050】
塗工層を形成させる際には、上記の顔料及び接着剤に加えて、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常の塗工紙用塗料に配合される各種助剤を適宜使用してもよい。
【0051】
原紙上に塗工層を設ける場合には、原紙の片面あるいは両面に、単層あるいは二層以上の塗工層を設けてもよい。塗工層のトータルの塗工量は、好ましくは片面当たり5〜30g/m2、より好ましくは8〜20g/m2である。また、アンダー塗工層を設ける場合の塗工量は、好ましくは2〜8g/m2である。
【0052】
顔料及び接着剤を主とする塗工層を原紙に塗工する際には、2ロールサイズプレスコーターや、ゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、及びシムサイザー等のフィルム転写型ロールコーター、フラデッドニップ/ブレードコーター、ジェットファウンテン/ブレードコーター、ショートドウェルタイムアプリケート式コーターの他、ブレードの替わりにグルーブドロッド、プレーンロッド等を用いたロッドメタリングコーター、カーテンコーター、ダイコーター等の公知のコーターにより塗工することができる。アンダー塗工液を塗工する際には、塗工液を原紙に適度にしみこませるために、ゲートロールコーターなどのフィルム転写方式のコーターを用いることが好ましい。
【0053】
また、平滑性及び印刷品質の向上等のため、上述の手法で得られた塗工紙を、表面処理してもよい。表面処理方法としては弾性ロールとしてコットンロールを用いたスーパーカレンダーや、弾性ロールとして合成樹脂ロールを用いたソフトニップカレンダー等、公知の装置を用いることができる。
【0054】
(本発明の作用)
本発明のセルロースナノファイバーからなる製紙用添加剤が、紙の平滑性と透気抵抗度を顕著に向上させる理由は明白ではないが、セルロースナノファイバーは澱粉等の水溶性高分子とは異なり、繊維状の形態であるため、紙表面のパルプ繊維の空隙を埋めるように架橋した状態で存在することが可能であるためと推察される。
【実施例】
【0055】
以下に実施例にて本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
<セルロースナノファイバーの製造例1>
粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、粒径24μm)15g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(7mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50ml添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応した後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化処理した粉末セルロースを得た。酸化処理した粉末セルロースの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpm、15分処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で5回処理したところ、透明なゲル状分散液が得られた。
【0056】
<セルロースナノファイバーの製造例2>
粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより120MPaの圧力で5回処理した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0057】
<セルロースナノファイバーの製造例3>
粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより100MPaの圧力で5回処理した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0058】
<セルロースナノファイバーの製造例4>
湿式微粒化処理において、超高圧ホモジナイザーの代わりに、回転刃ミキサー(周速37m/s、日本精機製作所社、処理時間30分)を用いた以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0059】
<セルロースナノファイバーの製造例5>
TEMPOの代わりに、4−メトキシTEMPOを用いた以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0060】
<セルロースナノファイバーの製造例6>
粉末セルロースの代わりに、漂白済みの未叩解サルファイトパルプ(日本製紙ケミカル社製)を用い、140MPaの超高圧ホモジナイザーで40回処理した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0061】
<セルロースナノファイバーの製造例7>
粉末セルロースの代わりに、漂白済みの未叩解サルファイトパルプ(日本製紙ケミカル社製)を用い、回転刃ミキサーで5時間処理した以外は、製造例5と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0062】
製造例1〜製造例7で得たセルロースナノファイバーのB型粘度(60rpm、20℃)をVISCOMETER TV-10粘度計(東機産業社)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
製造例1〜7の方法により、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・sであるセルロースナノファイバーを得ることができた。このうち、製造例1〜3及び製造例5で得られたセルロースナノファイバーは、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜2000mPa・sの範囲内であり、流動性がきわめて良好であり、紙などの基材に塗布しやすかった。また、製造例4、6及び7で得られたセルロースナノファイバーは、粘度が若干高めであり、紙に塗布した際に、紙への吸収が抑制されたため、同一塗工条件下で塗布した製造例1〜3及び5のセルロースナノファイバーに比べて、塗布量が若干少なくなった。
【0065】
次に、上記の方法により得られたセルロースナノファイバーを紙に塗布することにより、セルロースナノファイバーを含有する紙を製造した例を示す。
[実施例1]
上質紙(化学パルプの配合率が100%の洋紙、日本製紙(株)製、坪量79g/m2)に、製造例1により製造されたセルロースナノファイバー分散液を両面で塗布量1.4g/m2になるように、2ロールサイズプレス装置にて塗布した。
【0066】
[比較例1]
実施例1で使用した上質紙に水のみを2ロールサイズプレス装置にて塗布した。
[比較例2]
実施例1で使用した上質紙に酸化澱粉(商品名:SK200、日本コーンスターチ(株)製)の水溶液を両面で塗布量1.4g/m2になるように、2ロールサイズプレス装置にて塗布した。
【0067】
[比較例3]
実施例1で使用した上質紙にポリアクリルアミド(商品名:DS4340、星光PMC(株)製)の水溶液を両面で塗布量1.4g/m2になるように、2ロールサイズプレス装置にて塗布した。
【0068】
実施例1及び比較例1〜3にて作成した紙の厚さ、坪量を下記の方法で測定し、これを元に密度を算出した。さらに、裂断長、テーバーこわさ、白色度、不透明度、比散乱係数、平滑度、透気抵抗度を下記の方法で測定した。結果を表2に示す。
・厚さ:JIS P 8118:1998に従った。
・坪量:JIS P 8124:1998(ISO 536:1995)に従った。
・密度:塗布したシートの厚さ、坪量の測定値より算出した。
・裂断長:JIS P 8113:1998に従った。
・テーバーこわさ:JIS P 8125:1976(ISO 2493:1992)に従ってテーバーこわさを測定した。
・白色度:JIS P 8148:2001に準じて、ISO白色度を測定した。
・不透明度:JIS P 8149:2000に従った。
・比散乱係数:TAPPI T425 om−91に準拠して色差計(村上色彩製)で測定した。
・平滑度、透気抵抗度:Japan TAAPI 紙パルプ試験方法 No.5−2:2000に従い、王研式平滑度透気度試験器により測定した。
【0069】
【表2】

【0070】
表2に示されるように、本発明のセルロースナノファイバーを塗布した紙は酸化澱粉やポリアクリルアミドを塗布した紙に比較して、顕著に平滑度、透気抵抗度が向上した。
【0071】
[実施例2]
実施例1で得られたセルロースナノファイバーが塗布された紙に、下記の組成の感熱塗料をマイヤーバーで塗布量6g/m2となるように塗布し、ドライヤーで乾燥させ、カレンダーで王研式平滑度500秒になるように処理し、感熱記録層を得た。
感熱層組成:
顕色剤分散液(A液) 36.0部
ロイコ染料分散液(B液) 13.8部
増感剤分散液(C液) 36.0部
完全ケン化型ポリビニルアルコール(クラレ社商品名:PVA117)10%水溶液 25.0部
なお、上記の顕色剤分散液(A液)、ロイコ染料分散液(B液)、及び増感剤分散液(C液)は下記の通りであり、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径0.5ミクロンになるまで湿式磨砕処理を行った。
A液(顕色剤分散液)
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン 6.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液 18.8部
水 11.2部
B液(塩基性無色染料分散液)
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(ODB−2) 3.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液 6.9部
水 3.9部
C液(増感剤分散液)
シュウ酸ジベンジル 6.0部
ポリビニルアルコール10%水溶液 18.8部
水 11.2部
【0072】
[比較例4]
比較例1で得られた水のみが塗布された紙に、上記の感熱塗料を塗布した以外は、実施例2と同様にして感熱記録用紙を得た。
【0073】
実施例2及び比較例4にて作成した紙の発色感度を下記の方法で測定した。結果を表3に示す。
・発色感度:大倉電機社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.41mJ/dotで印字した。記録部の記録濃度は、マクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定し評価した。
【0074】
【表3】

【0075】
表3に示されるように、本発明のセルロースナノファイバーを塗布した原紙を用いた感熱記録用紙(実施例2)は、水を塗布した原紙を用いた感熱記録用紙(比較例4)と比較して、顕著に発色感度が向上した。これは、セルロースナノファイバーを塗布した原紙(実施例1)の平滑度及び透気抵抗度が、水のみを塗布した原紙(比較例1)に比べて、顕著に高いため、セルロースナノファイバーを塗布した原紙を用いた感熱記録用紙(実施例2)では、感熱塗料の原紙への過度の浸透が抑制され、また、感熱塗料が均一に塗布されて断熱効果が得られたため、発色感度が向上したと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)N−オキシル化合物、及び
(2)臭化物、ヨウ化物及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物
の存在下で、セルロース系原料を、酸化剤を用いて酸化して酸化されたセルロースを調製する工程、並びに
該酸化されたセルロースを湿式微粒化処理してナノファイバー化させる工程
を含む方法により得られる、絶乾質量に対して1.2mmol/g以上のカルボキシル基を有し、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・sであるセルロースナノファイバーと、パルプ成分とを含有する紙。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバーを、セルロースナノファイバーの乾燥重量に基づいて、紙の乾燥重量あたり0.1〜10質量%含有する、請求項1に記載の紙。
【請求項3】
原紙層、および当該原紙層の上に前記セルロースナノファイバーを含む層を有する、請求項1または2に記載の紙。
【請求項4】
前記セルロースナノファイバーを含む水分散液を原紙に塗布または含浸して得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の紙。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーの濃度2%(w/v)の水分散液のB型粘度(60rpm、20℃)が500〜2000mPa・sである、請求項1〜4のいずれかに記載の紙。
【請求項6】
前記湿式微粒化処理が、超高圧ホモジナイザーを用いて100MPa以上の圧力で前記酸化されたセルロースを解繊することを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の紙。
【請求項7】
前記セルロースナノファイバーが2〜5nmの繊維幅を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の紙。
【請求項8】
前記セルロース系原料が、漂白済みクラフトパルプ、漂白済みサルファイトパルプ、粉末セルロース、及び微結晶セルロース粉末からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の紙。
【請求項9】
前記粉末セルロースは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解処理で除去した後、粉砕・篩い分けすることで得られる微結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である、請求項8に記載の紙。
【請求項10】
前記N−オキシル化合物が、下記式2〜式4:
【化1】

【化2】

【化3】

(式2〜4中、Rは炭素数4以下の直鎖又は分岐状炭素鎖である)
で表わされる4−ヒドキシTEMPO誘導体から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の紙。

【公開番号】特開2010−242286(P2010−242286A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156657(P2010−156657)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2009−82161(P2009−82161)の分割
【原出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】