説明

セルロース製品

【課題】改良された特性、特に改良された多孔率およびエッジウィック抵抗を示す、熱可塑性ミクロスフェアを含有するセルロース製品を提供する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含有するセルロース製品に関する。本発明はさらに、セルロース繊維を含有する水性懸濁物を用意する段階、該懸濁物に熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを添加する段階、および得られた懸濁物を脱水する段階を含む、セルロース製品を製造する方法に関する。本発明はまた、該セルロース製品を液体包装板紙として使用する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ミクロスフェアを含有するセルロース製品、ならびにその製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ミクロスフェアを含有するセルロース製品は、従来技術で知られており、特許文献1〜11および非特許文献1を参照せよ。
【0003】
熱可塑性ミクロスフェアは、セルロース製品中に取り込まれて、低比重、高比容積の紙および板紙物品、例としてたとえば紙カップのような断熱容器をもたらし、これは熱いおよび冷たい飲料を供するために使用されることができる。しかし、このようなセルロース製品の多孔率は高すぎることがあり、それによってガスおよび水性液体の浸透に対する抵抗、とりわけ熱可塑性ミクロスフェアを含有するサイズ処理されたセルロース製品についての水性液体の浸透に対するエッジウィック抵抗(端部浸透防止性)を下げることがあることが経験されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,556,934号明細書
【特許文献2】米国特許第4,133,688号明細書
【特許文献3】米国特許第5,125,996号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0152724号明細書
【特許文献5】特開2002−254532号公報
【特許文献6】特開2003−105693号公報
【特許文献7】特許第2689787号公報
【特許文献8】国際公開第2001/54988号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2004/099499号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2004/113613号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2006/068573号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】O.Soderberg、World Pulp & Paper Technology 1995/96、「The International Review for the Pulp & Paper Industry」、143〜145ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
改良された特性、特に改良された多孔率およびエッジウィック抵抗を示す、熱可塑性ミクロスフェアを含有するセルロース製品を提供することができるならば、好都合であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含有するセルロース製品に関する。
【0008】
本発明は、さらに
(i)セルロース繊維を含有する水性懸濁物を用意する段階、
(ii)該懸濁物に熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを添加する段階、および
(iii)得られた懸濁物を脱水する段階
を含む、セルロース製品を製造する方法に関する。
【0009】
本発明は、熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含有するセルロース製品を使用する方法にも関する。
【発明の効果】
【0010】
熱可塑性ミクロスフェアをセルロース製品中に含めることは、熱可塑性ミクロスフェアを含有していないセルロース製品と比較して、一般に多孔率を増加し、比容積を増加し、かつ密度を下げる。本発明に従うと、熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含有するセルロース製品によって、多孔率の増加量が、対応する比容積の増加量においてより低く、かつ改良された、より低い多孔率が得られることが発見された。この文脈において、改良された多孔率とは、ガスおよび/または水性液体の浸透に対する抵抗の増加および熱可塑性ミクロスフェアを含有するサイズ処理されたセルロース製品についての水性液体の浸透に対するエッジウィック抵抗の改良の指標である。これによって、本発明は、セルロース製品に改良された特性をもたらすことを可能にする。
【0011】
本明細書で使用される「セルロース製品」とは、あらゆる種類のセルロース製品、たとえばパルプベールならびにシートおよびウェブの形態をしたセルロース製品、好ましくは紙および板紙を意味する。セルロース製品は、セルロース繊維を含有する1または数個の層(plyまたはlayer)、たとえば単層および多層の紙および板紙生成物を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に従うと、セルロース製品は、熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを水性セルロース懸濁物に添加する段階、そして次に、得られた懸濁物を脱水して、セルロース製品を形成する段階を含む方法によってもたらされる。好まれる実施態様では、本発明は、熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含んでいる単層のセルロース製品、たとえば紙および板紙であって、該熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとが好ましくはセルロース製品全体に分配されており、より好ましくはセルロース製品全体に実質的に均一に分配されているものを提供する。
【0013】
他の実施態様では、本発明は、セルロース繊維を含有する2以上の層を含んでいる多層のセルロース製品、たとえば紙および板紙であって、当該2以上の層のうちの少なくとも1層が熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含んでいるものを提供する。好ましくは、熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとは、当該2以上の層のうちの少なくとも1層の全体に分配されており、より好ましくは当該2以上の層のうちの少なくとも1層の全体に実質的に均一に分配されている。本発明に従う多層のセルロース製品は、セルロース繊維と、熱可塑性ミクロスフェアと、アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含んでいる少なくとも1の層を形成する段階、そして当該少なくとも1の層を、セルロース繊維を含んでいる1以上の層に付着させて、多層セルロース製品を形成する段階によって製造されることができる。たとえば、多層セルロース製品は、1または数基のウェブ形成装置において別々に個々の層を形成する段階、そして次にこれらを湿った状態で一緒にクーチ(couch)する段階によって製造されることができる。本発明の多層セルロース製品の好適なグレードの例は、セルロース繊維を含んでいる3〜7層、および熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含んでいる当該セルロース層のうちの少なくとも1層を含んでいるものを含む。3以上の層を有する多層セルロース製品では、好ましくは中層のうちの少なくとも1層が熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含んでいる。
【0014】
単層および多層生成物、たとえば紙および板紙を包含する、シートまたはウェブの形態をした本発明に従うセルロース製品は、好ましくは約50〜約500g/m、最も好ましくは約100〜約300g/mの坪量を有する。
【0015】
本明細書で使用される「板紙」の語は、セルロース繊維を含んでいる様々な種類の板紙をいい、一枚物の板紙、たとえば一枚物の晒硫酸塩板紙(SBS)および一枚物の未晒硫酸塩板紙(SUS);カートン用板紙、たとえば折りたたみ箱用板紙(FBB)、折りたたみカートン用板紙、液体包装板紙(LPB)、たとえばゲーブルトップの、無菌充填の、長方形の、非無菌充填の包装用およびレトルト可能板紙;裏白チップボード(WLC)、未晒クラフト板紙、グレイチップボードおよび再生板紙;ライナー用板紙および紙器用板紙、たとえば白硫酸塩クラフトライナー、完全晒クラフトライナー、テストライナー、白硫酸塩テストライナー、未晒クラフトライナー、未晒テストライナーおよび再生ライナー;段ボール原紙およびコルゲート段ボール原紙を包含する。本発明の好まれる実施態様では、セルロース製品は液体包装板紙である。
【0016】
本発明に従うと、セルロース製品および懸濁物は、様々な種類のセルロース繊維を含有することができ、乾燥物質当たりこのような繊維好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%を含有する。セルロース製品および懸濁物は、様々な種類のパルプ、たとえば未使用のおよび/またはリサイクルされた繊維に基づいた晒または未晒パルプのセルロース繊維からつくられ、かつそれを含有することができる。該パルプは、化学パルプ、たとえば硫酸塩、亜硫酸およびオルガノソルブパルプ、機械パルプ、たとえば熱機械パルプ(TMP)、化学熱機械パルプ(CTMP)、叩解パルプおよび砕木パルプであって針葉樹および広葉樹の双方からのもの、からの繊維に基づいていることができ、またリサイクルされた繊維、任意的に脱インクパルプ(DIP)からのもの、およびこれらの混合物に基づいていることもできる。セルロース製品は、エレファントグラス、バガス、亜麻、わら等のような一年生植物から誘導された繊維からつくられることもできる。セルロース製品は、同じまたは異なった種類のパルプからの1層または数層を含んでいることができる。数層の組み合わせの例は、晒化学パルプの上層/DIP、CTMPまたは機械パルプの中層/晒化学パルプの裏層;晒化学パルプの上層/DIP、CTMPまたは機械パルプの中層/機械パルプの裏層;晒化学パルプの上層/DIP、CTMPまたは機械パルプの中層/未晒化学パルプの裏層;および晒化学パルプの上層/未晒化学パルプの裏層であって、上面が任意的にコーティングされかつ裏面が任意的にコーティングされたものを含む。上面とは、完成された生成物または包装物の外側に面することを意図された面をいう。
【0017】
本発明に従うと、セルロース製品は熱可塑性ミクロスフェアを含有し、これは膨張されたまたは膨張されていない熱膨張可能なミクロスフェアであることができる。熱可塑性ミクロスフェアは、予め膨張されたミクロスフェアとしてか、あるいは膨張されていない熱膨張可能なミクロスフェアとして、好ましくは膨張されそしてセルロース製品の製造プロセスにおいてセルロース懸濁物すなわち紙料に添加され、後者は好ましくはセルロース製品の製造プロセスにおいて、たとえば熱がかけられる乾燥段階の間に、または別のプロセス段階において、たとえばシリンダーヒーターまたはラミネーター中で加熱によって膨張される。セルロース製品がまだ湿っているときにまたはセルロース製品が完全にもしくはほとんど完全に乾燥されたときに、ミクロスフェアは膨張されることができる。ミクロスフェアは、好ましくは水性スラリーの形で添加され、これはセルロース懸濁物に供給するのが望ましい他の添加剤を任意的に含有することができる。
【0018】
本発明に従う熱可塑性ミクロスフェアは、好ましくは発泡剤を封じ込めている熱可塑性ポリマーのシェルを含んでいる。発泡剤は、好ましくは熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度よりも高くない沸騰温度を有する液体である。熱膨張可能な熱可塑性ミクロスフェアが加熱されると、シェルが軟化するのと同時に発泡剤は内部圧力を増加させて、ミクロスフェアの有意の膨張をもたらす。膨張性のおよび予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアの双方が、Expancel(商標)(Akzo Nobel社)の商標下に商業的に入手可能であり、各種の形態で、たとえば乾燥自由流動性粒子として、水性スラリーとして、または部分的に脱水されたウェットケーキとして市販されている。これらはまた文献に、たとえば米国特許第3,615,972号、第3,945,956号;第4,287,308号;第5,536,756号;第6,235,800号;第6,235,394号および第6,509,384号;米国特許出願公開第2005/0079352号;欧州特許第486080号および第1288272号;国際公開第2004/072160号;ならびに特開昭62−286534号;特開2005−213379号および2005−272633号にも十分に記載されており、これによってこれらの内容は引用により本明細書に取り込まれる。
【0019】
熱可塑性ミクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、好ましくはエチレン性不飽和モノマーを重合することによって得られたホモポリマーまたはコポリマーからつくられる。これらのモノマーは、例としてニトリル含有モノマー、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリルまたはクロトニトリル;アクリルエステル、たとえばメチルアクリレートまたはエチルアクリレート;メタクリルエステル、たとえばメチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートまたはエチルメタクリレート;ハロゲン化ビニル、たとえば塩化ビニル;ビニルエステル、たとえば酢酸ビニル、ビニルエーテル、たとえばメチルビニルエーテルまたはエチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル、他のビニルモノマー、たとえばビニルピリジン;ハロゲン化ビニリデン、たとえば塩化ビニリデン;スチレン類、たとえばスチレン、ハロゲン化スチレンまたはα−メチルスチレン;またはジエン、たとえばブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンであることができる。上述のモノマーの任意の混合物が使用されることもできる。
【0020】
熱可塑性ミクロスフェアの発泡剤は、炭化水素、たとえばプロパン、ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタンもしくはイソオクタン、またはこれらの混合物を含んでいることができる。これらの他に、他の種類の炭化水素、たとえば石油エーテル、または塩素化もしくはフッ素化炭化水素、たとえば塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、パーフッ素化炭化水素等が使用されることもできる。
【0021】
本発明に適した膨張性熱可塑性ミクロスフェアは、好ましくは約1〜約500μm、より好ましくは約5〜約100μm、最も好ましくは約10〜約50μmの体積中位直径を有する。膨張が開始する温度は、T開始と呼ばれ、好ましくは約60〜約150℃、最も好ましくは約70〜約100℃である。最大膨張に達する温度は、T最大と呼ばれ、好ましくは約90〜約180℃、最も好ましくは約115〜約150℃である。
【0022】
本発明に適した予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアは、好ましくは約10〜約120μm、最も好ましくは約20〜約80μmの体積中位直径を有する。密度は好ましくは約5〜約150g/dm、最も好ましくは約10〜約100g/dmである。予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアそのものは商業的に入手可能であるけれども、たとえば膨張されていない膨張可能な熱可塑性ミクロスフェアがセルロース懸濁物に添加される直前にこれらを熱的に現場膨張することによって、予め膨張された熱可塑性ミクロスフェアを準備することも可能であり、加熱媒体として水蒸気が使用されることができるように膨張性ミクロスフェアが約100℃未満のT開始を有するならば、これは容易に行われる。
【0023】
セルロース製品の製造プロセスにおいて、本発明に従うアクリアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、好ましくは、濾水性および/または乾燥紙力増強剤としての機能を、セルロース懸濁物への他の添加剤、たとえばシリカ質物質、凝集剤および他の有機ポリマーと任意的に組み合わされて果たす。本明細書で使用される「歩留まり・濾水性向上剤」の語は、セルロース製品の製造プロセスにおいて改良された歩留まりおよび/または濾水性をもたらす、セルロース懸濁物への1以上の添加剤をいう。本明細書で使用される「乾燥紙力増強剤」の語は、セルロース製品に改良された乾燥紙力を与える、セルロース懸濁物への1以上の添加剤をいう。
【0024】
本発明に従うアクリアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、同じまたは異なった種類の1以上の荷電された、すなわちイオン性の基を有する。該1以上の荷電基は、アニオン性、カチオン性、またはアニオン性とカチオン性との双方の組み合わせの基であることができる。本発明の1の実施態様では、該ポリマーは、同じまたは異なった種類の1以上のカチオン性基を有する。あるいは、またはこれに追加して、ポリマーは同じまたは異なった種類の1以上のアニオン性基を有することができる。アクリアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、したがって、アニオン性、両性およびカチオン性有機ポリマーから選択されることができる。好適なカチオン性基の例は、スルホニウムおよび1級、2級、3級および4級アンモニウム基を含み、好ましくは4級アンモニウム基である。好適なアニオン性基の例は、カルボキシレート、スルフォネート、サルフェート、ホスフェートおよびホスフォネート基を含む。
【0025】
本発明に従うアクリアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、同じまたは異なった種類の1以上の芳香族基を含んでいる。該芳香族基はポリマー骨格(主鎖)中にまたはポリマー骨格に結合された置換基中に存在することができる。好適な芳香族基の例は、アリール、アラルキルおよびアルカリール基、たとえばフェニル、フェニレン、ナフチル、キシリレン、ベンジルおよびフェニルエチル;窒素含有芳香族(アリール)基、たとえばピリジニウムおよびキノリニウム、ならびにこれらの基、たとえばベンジルの誘導体を含む。
【0026】
本発明に従うアクリアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、重合された形で、アクリルアミドに基づいた1以上の重合性モノマー、たとえばアクリルアミドおよび/または置換アクリルアミド、たとえばメタクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、およびN−メチルアリル(メタ)アクリルアミドを含んでいる。本発明に従う好適なアクリアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーの例は、アクリルアミドまたはメタクリルアミド、すなわち(メタ)アクリルアミド、好ましくはアクリルアミドを含んでいるモノマー混合物の重合によって得られたポリマーを含む。モノマー混合物は、1以上の共重合性のカチオン性、アニオン性および/または非イオン性のモノマーを含有することもできる。好まれる実施態様に従うと、モノマー混合物は、カチオン性および/またはアニオン性であることができる1以上の荷電芳香族モノマーを含有する。あるいは、またはこれに追加して、モノマー混合物は、アニオン性および/またはカチオン性モノマーならびに非イオン性芳香族モノマーを含有する。
【0027】
好適なカチオン性芳香族モノマーの例は、一般構造式(I)

によって表されるモノマーを含み、この式で、RはHまたはCHであり;RおよびRはそれぞれ、H、または好ましくは炭化水素基、好適には1〜3の炭素原子、好ましくは1〜2の炭素原子を有するアルキルであり;AはOまたはNHであり;Bは2〜8の炭素原子、好適には2〜4の炭素原子を有するアルキルもしくはアルキレン基、またはヒドロキシプロピレン基であり;Qは芳香族基、好適にはフェニル基もしくは置換フェニル基を有する置換基であって、普通には1〜3の炭素原子、好適には1〜2の炭素原子を有するアルキレン基によって窒素に結合されることができるものであり、好適にはQはベンジル基(−CH−C)であり;ならびにXはアニオン性対イオン、普通にはハロゲンイオン、たとえば塩素イオンである。一般式(I)によって表される好適なモノマーの例は、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル4級塩およびジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル4級塩を含む。さらなる好適な共重合性カチオン性モノマーの例は、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの酸付加塩および4級塩ならびにジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよびトリアリルアンモニウム塩を含む。
【0028】
アニオン性モノマーの例は、水性溶液中でアニオン性にされるモノマーを含む。好適なアニオン性芳香族モノマーの例は、スチレンスルフォネートおよびその塩、たとえばナトリウムおよび他のアリカリ金属の塩を含む。さらなる好適な共重合性アニオン性モノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸およびマレイン酸ならびにこれらの塩を含み、好ましくはこれらの塩、たとえばナトリウムおよび他のアリカリ金属の塩である。
【0029】
好適な非イオン性芳香族モノマーの例は、スチレン、置換スチレンおよびジビニルベンゼンを含む。さらなる好適な共重合性非イオン性モノマーの例は、アクリレートに基づいたモノマー、たとえばジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートおよびビニルアミドを含む。
【0030】
好まれる本発明に従うアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーの例は、カチオン性芳香族モノマー、または(メタ)アクリルアミドと一般構造式(I)によって表されたカチオン性芳香族モノマーとを含んでいるモノマー混合物を、任意的にアニオン性モノマーと組み合わせて重合することによって得られたカチオン性および両性カチオン性ポリマーを含む。他の例は、(メタ)アクリルアミドと、アニオン性芳香族モノマー、たとえばスチレンスルフォネートおよびその塩とを含んでいるモノマー混合物を、任意的にカチオン性モノマーと組み合わせて重合することによって得られたアニオン性および両性ポリマーを含む。
【0031】
本発明に従うアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、芳香族基を有するモノマー、たとえばそれぞれ、芳香族基およびカチオン性基もしくはアニオン性基を有するモノマー、または芳香族基を有するモノマー、およびカチオン性もしくはアニオン性基を有するモノマーを一般には1〜99モル%、好適には2〜50モル%、好ましくは5〜20モル%と、好ましくはアクリルアミドまたはメタクリルアミド((メタ)アクリルアミド)を含んでいる他の共重合性モノマー99〜1モル%、好適には98〜50モル%、好ましくは95〜80モル%とを含んでいるモノマー混合物であって、(メタ)アクリルアミドを好適には98〜50モル%、好ましくは95〜80モル%含んでいるモノマー混合物から調製されることができ、ここでパーセントの総計は100である。
【0032】
本発明に従うアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、直鎖状、分枝状または架橋状であることができる。アクリルアミドに基づいた芳香族ポリマーは、好適には水溶性または水膨潤性、好ましくは水溶性であり、好ましくはこれの水性溶液または分散物の形でセルロ−ス懸濁物に添加される。
【0033】
本発明に従うアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、約0.5〜約10ミリ当量/g、好ましくは約1〜約8ミリ当量/gの電荷密度を有することができる。本発明に従って使用されることができる芳香族ポリマーの例は、国際公開第2002/12626号、第2003/064767号および第2006/123989号に開示されたものを含み、これによってこれらの内容は引用により本明細書に取り込まれる。
【0034】
通常、アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーは、少なくとも約50,000、または少なくとも約100,000、好適には少なくとも約500,000、または少なくとも約1,000,000の重量平均分子量を有する。ほとんどの場合、重量平均分子量は約5千万以下、特に約1千万または約5百万以下であることが好まれる。
【0035】
好適なシリカ質物質の例は、シリカに基づいたアニオン性粒子およびスメクタイト型のアニオン性粘土を含む。好ましくは、シリカ質物質は、コロイド領域の粒子サイズにある粒子を有する。シリカに基づいたアニオン性粒子、すなわちSiOまたはケイ酸に基づいた粒子が好ましくは使用され、このような粒子は普通、水性コロイド分散物、いわゆるゾルの形態で供給される。シリカに基づいた好適な粒子の例は、コロイドシリカ、および異なった種類のポリケイ酸であって単独重合されたものか、あるいは共重合されたものを含む。シリカに基づいたゾルは修飾されて、他の元素、たとえばアルミニウム、ホウ素、窒素、ジルコニウム、ガリウム、チタン等を有することができ、これらは水性相中におよび/またはシリカに基づいた粒子中に存在することができる。この種類のシリカに基づいた好適な粒子の例は、アルミニウム修飾されたコロイドシリカおよびアルミニウムシリケートを含む。このようなシリカに基づいた好適な粒子の混合物が使用されることもできる。シリカに基づいたアニオン性粒子を含んでいる好適な濾水性・歩留り向上剤の例は、米国特許第4,338,150号、第4,927,498号、4,954,220号、第4,961,825号、4,980,025号、5,127,994号、5,176,891号、5,368,833号、5,447,604号、5,470,435号、5,543,014号、5,571,494号、5,573,674号、5,584,966号、5,603,805号、5,688,482号および第5,707,493号に開示されたものを含み、これによってこれらの内容は引用により本明細書に取り込まれる。
【0036】
シリカに基づいた好適なアニオン性粒子の例は、約100nm未満、好ましくは約20nm未満、より好ましくは約1〜約10nmの範囲の平均粒子サイズを有するものを含む。シリカの化学において慣習であるように、粒子サイズとは一次粒子の平均サイズをいい、これは凝集されたものも凝集されていないものもある。シリカに基づいた粒子の比表面積は好適には50m/g超、好ましくは100m/g超である。一般に、比表面積は約1700m/gまで、好ましくは1000m/gまでであることができる。比表面積は、NaOHを用いる滴定によって周知の様式で、たとえばG.W.SearsによってAnalytical Chemistry、1956年、第28巻、第12号、1981〜1983ページおよび米国特許第5,176,891号に記載されたように測定される。示された面積が、このようにして粒子の平均比表面積を表す。
【0037】
好ましくは、シリカに基づいたアニオン性粒子は50〜1000m/g、より好ましくは100〜950m/gの範囲内の比表面積を有する。シリカに基づいたこれらの種類の粒子のゾルは修飾されたもの、たとえば上述の元素のいずれかによって修飾されたものも包含する。好ましくは、シリカに基づいた粒子は、8〜50%、好ましくは10〜40%の範囲のS値を有するゾル中に存在し、該ゾルは300〜1000m/g、好適には500〜950m/g、好ましくは750〜950m/gの範囲の比表面積を有する、シリカに基づいた粒子を含有し、該ゾルは上述のように修飾されることができる。IlerおよびDaltonによってJ.Phys.Chem.1956年、第60巻、955〜957ページに記載されたように、S値は測定され計算されることができる。S値は凝集またはミクロゲルの形成の程度を示し、より低いS値はより高い凝集度を示す。
【0038】
本発明のさらに他の好まれる実施態様では、シリカに基づいた粒子は、高い比表面積、好適には約1000m/g超の比表面積を有するポリケイ酸であって、単独重合されたものかあるいは共重合されたものから選択される。比表面積は1000〜1700m/g、好ましくは1050〜1600m/gの範囲内であることができる。修飾されたまたは共重合されたポリケイ酸のゾルは、上述の他の元素を含有することができる。従来技術では、ポリケイ酸は、ポリマー状ケイ酸、ポリケイ酸ミクロゲル、ポリシリケートおよびポリシリケートミクロゲルとも呼ばれ、これらはすべて本明細書で使用されるポリケイ酸の語に包含される。この種類のアルミニウム含有化合物は、通常、ポリアルミノシリケートおよびポリアルミノシリケートミクロゲルとも呼ばれ、これらは双方とも本明細書で使用されるアルミニウム修飾コロイドシリカおよびアルミニウムシリケートの語に包含される。
【0039】
スメクタイトの種類の好適なアニオン性粘土の例は、モンモリロナイト/ベントナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ラポナイトを含み、好ましくはベントナイトである。好適なアニオン性ベントナイト粘土の例は、米国特許第4,753,710号、第5,071,512号および第5,607,552号に開示されたものを含み、これによってこれらの内容は引用により本明細書に取り込まれる。
【0040】
好適なカチオン性凝集剤(くず捕捉剤および固定剤とも呼ばれる。)の例は、水溶性有機ポリマー凝集剤および無機凝集剤を含む。カチオン性凝集剤は、単独でまたは一緒に使用されることができる。すなわち、ポリマー凝集剤が無機凝集剤と組み合わせて使用されることができる。好適な水溶性有機ポリマーカチオン性凝集剤の例は、カチオン性のポリアミン、ポリアミドアミン、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド縮合ポリマーおよび水溶性エチレン性不飽和モノマーまたはカチオン性モノマー50〜100モル%と他のモノマー0〜50モル%とから構成されているモノマーブレンドのポリマーを含む。カチオン性モノマーの量は、普通、少なくとも80モル%、好適には100%である。好適なエチレン性不飽和カチオン性モノマーの例は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、およびジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、好ましくは4級の形をしたもの、およびジアリルジアルキルアンモニウムクロライド、たとえばジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)、好ましくはDADMACのホモポリマーおよびコポリマーを含む。有機ポリマーカチオン性凝集剤は、普通、1,000〜700,000、好適には10,000〜500,000、の範囲の重量平均分子量を有する。好適な無機凝集剤の例は、アルミニウム化合物、たとえばミョウバンおよびポリアルミニウム化合物、たとえばポリアルミニウムクロライド、ポリアルミニウムサルフェート、ポリアルミニウムシリケートサルフェートおよびこれらの混合物を含む。
【0041】
濾水性・歩留り向上剤として使用されることができる他の有機ポリマーの例は、上述の種類のポリマーを含み、ただし1以上の芳香族基がポリマー中に存在することは必要ない。この種類の好適な有機ポリマーの例は、アニオン性、両性およびカチオン性多糖、たとえばグアーガムおよびデンプン、アニオン性、両性およびカチオン性ビニル付加ポリマー、例としてアクリルアミドに基づいたポリマー、たとえば本質的に直鎖状、分枝状および架橋状アニオン性およびカチオン性のアクリルアミドに基づいたポリマー、好ましくはカチオンデンプンならびにカチオン性およびアニオン性ポリアクリルアミドを含む。
【0042】
本発明に従うと、セルロース製品は、好ましくは脱水前に紙料に添加される疎水性サイズ剤でおよび/またはセルロース製品の表面に施与される疎水性サイズ剤で、サイズ処理され、好ましくは少なくともストック(紙料)サイズ処理される。多層セルロース製品では、熱可塑性ミクロスフェアと芳香族ポリマーとを含有する1以上の層が、好ましくはサイズ処理される。サイズ処理された本発明に従うセルロース製品は、水性液体の浸透に対する抵抗の増加、特にエッジウィック抵抗の増加を示す。好まれるサイズ剤は、セルロースと反応性であるサイズ剤、たとえばアルキルもしくはアルケニルケテンダイマー(AKD)のようなケテンダイマーまたはマルチマー、無水アルキルまたはアルケニルコハク酸(ASA)のような無水コハク酸、およびこれらの混合物を包含する。他の有用なサイズ剤は、セルロースと非反応性であるサイズ剤、たとえばロジン、デンプンおよび他のポリマー状サイズ剤、たとえばスチレンと無水マレイン酸、アクリル酸およびそのアルキルエステル、アクリルアミド等のようなビニルモノマーとのコポリマーを包含する。セルロース製品中の異なった層に、同じまたは異なったサイズ剤が使用されることができる。たとえば、1以上の層にAKDまたはASAを、および1以上の他の層にロジンを使用することが可能である。
【0043】
好まれるケテンダイマーは、一般式(II)

を有し、この式で、RおよびRは同じまたは異なった、飽和または不飽和の炭化水素基、たとえばアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表す。炭化水素基は分枝状または直鎖状であることができ、好ましくは6〜36の炭素原子、最も好ましくは12〜20の炭素原子を有する。炭化水素基の例は、分枝状および直鎖状のオクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、フェニル、ベンジル、ベータナフチル、シクロヘキシルおよびヘキサデシル基を含む。炭化水素基に応じて、ケテンダイマーは室温(25℃)で固形または液状であることができる。好まれるサイズ剤およびその配合物の例は、米国特許第5,969,011号、第6,165,259号、第6,306,255号および第6,846,384号に開示されたものを含む。
【0044】
本発明に従うと、セルロース製品は、好ましくは脱水の前に紙料に添加される湿潤紙力増強剤を含んでいる。好適な湿潤紙力増強剤は、ポリアミンエピハロヒドリン、ポリアミドエピハロヒドリン、ポリアミノアミドエピハロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド、尿素メラミン/ホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、ポリアクリルアミドグリオキサル縮合物、ポリビニルアミン、ポリウレタン、ポリイソシアネート、およびこれらの混合物、である樹脂を包含し、これらのうちポリアミノアミドエピクロロヒドリンが特に好まれる。
【0045】
紙または板紙を製造するときに、少なくとも1のサイズ剤、好ましくはケテンダイマー、および湿潤紙力増強剤、好ましくはポリアミノアミドエピハロヒドリンが紙料に添加されることが特に好まれる。
【0046】
セルロース製品は、製紙に普通に使用される他の添加剤も含有することができ、これらは脱水の前にセルロース懸濁物に添加される。このような添加剤は、1以上のフィラー、例として鉱物フィラー、たとえばカオリン、陶土、二酸化チタン、石こう、タルク、白亜、大理石粉末、炭酸カルシウム粉末および沈降炭酸カルシウムを包含することができる。他の普通に使用される添加剤は、染料、蛍光増白剤等を包含することができる。
【0047】
本発明に従うと、セルロース製品、たとえば単層および多層の紙および板紙グレードは、さらなる処理段階に付されることができる。好適な処理段階の例は、コーティング、たとえばデンプンコーティングおよび顔料コーティング、印刷および裁断を含む。したがって、本発明の好適なセルロース製品の例は、コーティングされた板紙、たとえばデンプンおよび/または顔料をコーティングされそして印刷された板紙を含む。
【0048】
熱可塑性ミクロスフェア、アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーおよび任意的な他の添加剤、たとえばシリカ質物質、凝集剤、他の有機ポリマー、サイズ剤ならびに湿潤紙力増強剤が、慣用の様式でかつ任意の順番でセルロース懸濁物に添加されることができる。たとえ逆の順番または添加もまた採用されることができるとしても、アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーを好ましくは添加する前に、かつ、シリカ質物質、サイズ剤および湿潤紙力増強剤が使用されるならば好ましくはこれらを添加する前に、熱可塑性ミクロスフェアをセルロース懸濁物に添加することが好まれる。シリカ質物質を使用するときには、該シリカ質物質を添加する前にまたはそれと同時に、アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーを懸濁物に添加することが好まれる。さらに、ポンプ輸送、混合、洗浄等から選択されることができるせん断段階の前にカチオン性ポリマーを添加し、かつ、このせん断段階の後にシリカ質物質を添加することが好まれる。カチオン性凝集剤を使用するときには、これは好ましくはプロセスの早い段階で、アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーおよびシリカ質物質が使用されるならばこれらを好ましくは導入する前に、セルロース懸濁物中に導入される。サイズ剤を使用するときには、これは好ましくはプロセスの早い段階で、たとえば熱可塑性ミクロスフェアを添加する前またはその後で、セルロース懸濁物中に導入される。湿潤紙力増強剤を使用するときには、これは好ましくはプロセスの早い段階で、通常、サイズ剤を添加する前、かつ、熱可塑性ミクロスフェアを添加する前かあるいはその後で、セルロース懸濁物中に導入される。
【0049】
本発明に従うと、熱可塑性ミクロスフェア、アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーおよび任意的な他の添加剤は、セルロース懸濁物に添加され、そして、とりわけ、添加剤の種類および数、セルロース懸濁物の種類、フィラーの含有量、フィラーの種類、添加の場所等に応じて広い限界内で変えられることができる量でセルロース製品中に存在することができる。熱可塑性ミクロスフェアの量は、乾燥セルロース懸濁物または生成物トン当たり、好適には約1〜約100、好ましくは約1〜約50、最も好ましくは約4〜約40kgである。アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーの量は、乾燥セルロース懸濁物または生成物トン当たり、好適には約0.01〜約30、好ましくは約0.1〜約5kgである。使用されるならば、シリカ質物質の量は、乾燥セルロース懸濁物または生成物トン当たり、好適には約0.01〜約10、好ましくは約0.1〜約5kgである。使用されるならば、カチオン性凝集剤の量は、乾燥セルロース懸濁物または生成物トン当たり、好適には約0.01〜約30、好ましくは約1〜約20kgである。使用されるならば、他の有機ポリマーの量は、乾燥セルロース懸濁物または生成物トン当たり、好適には約0.01〜約30、好ましくは約0.1〜約5kgである。使用されるならば、サイズ剤の量は、乾燥セルロース懸濁物または生成物トン当たり、好適には約0.1〜約10、好ましくは約0.3〜約5kgである。使用されるならば、湿潤紙力増強剤の量は、乾燥セルロース懸濁物または生成物トン当たり、好ましくは約0.1〜約10、好ましくは約0.5〜約5kgである。
【0050】
本発明は以下の実施例においてさらに例示されるが、該実施例は同を限定しようとするものではない。部および%は、他様に述べられない限り、それぞれ重量部および重量%に関する。
【実施例1】
【0051】
以下の製品が実施例において使用された。
MS1: 平均粒子サイズ16〜24μmを有する膨張されていないミクロスフェア(Expancel(商標)820SL80)
MS2: 平均粒子サイズ6〜9μmを有する膨張されていないミクロスフェア(Expancel(商標)461WU20)
MS3: 平均粒子サイズ20〜30μmを有する予め部分的に膨張されたミクロスフェア(Expancel(商標)461WE20)
PL1: アクリルアミド(90モル%)およびアクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(10モル%)の重合によって調製され、重量平均分子量約6百万およびカチオン電荷約1.2ミリ当量/gを有する、アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマー
PL2: アクリルアミド(90モル%)およびアクリルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(10モル%)の重合によって調製され、重量平均分子量約6百万およびカチオン電荷約1.2ミリ当量/gを有する、アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマー
PL3: アクリルアミド(90モル%)およびアクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(10モル%)の重合によって調製され、重量平均分子量約1百万およびカチオン電荷約1.2ミリ当量/gを有する、アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマー
PL4: アクリルアミド(90モル%)およびアクリルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(10モル%)の重合によって調製され、重量平均分子量約1百万およびカチオン電荷約1.2ミリ当量/gを有する、アクリルアミドに基づいたカチオン性ポリマー

NP1:S値<35を有し、比表面積約700m/gを有するシリカベース粒子を含有する、アルミニウムで修飾されたコロイドシリカゾルの形態をした、アニオン性無機質のケイ酸縮合ポリマー

ST1: 2,3−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドで0.042のD.S.まで修飾された、カチオンデンプンに基づいたバイオポリマーであって、約0.28ミリ当量/gのカチオン電荷密度を有するもの

SA1:PL3で安定化されたサイズ剤AKD
【実施例2】
【0052】
約200gsm(g/m)の坪量を有する、液体包装板紙の中央層がシートフォーマーPFIで製造された。試験で使用された紙料は、100%晒針葉樹クラフト繊維に基づいていた。紙料稠度は1.8%であった。電導度は0.2mS/cmであった。
【0053】
紙料への添加は以下の(秒単位の)時間に行われた。
○ 0秒間、ミクロスフェアExpancel(商標)、MS1
○ 15秒間、カチオン性ポリマー、PL
○ 30秒間、アニオン性シリカゾル、NP1
○ 45秒間、脱水
【0054】
板紙シートは搾水されそして乾燥された。ミクロスフェアMSの膨張を起こさせるために、120℃のシリンダードライヤーが使用された。
【0055】
デンマーク国、Andersen & Sorensen社によって納入されたBendtsen多孔率試験機モデル5によって、多孔率が測定された。この多孔率試験機の単位は空気の「ml/分」である。[cm/kg]の単位で測定される比容積は、厚さ[μm]を坪量[g/cm]で割ることによって計算された。スウェーデン国、Lorentzen & Wettre社によって納入されたL&W試験機タイプ5102を用いて、厚さが測定され、また標準定規を使用して、紙または板紙サンプルについての所定の面積[m]における重量[g]を求めることによって坪量が測定された。
【0056】
表1は、様々な添加レベルにおける、乾燥紙料系当たりの乾燥生成物として計算された多孔率および比容積の測定結果を示し、ただしシリカに基づいた粒子はSiOとして計算され乾燥紙料系基準であった。
【0057】
試験番号1〜5は比較(参照)のために使用された添加剤を用いる方法を示し、また、試験番号6〜8は本発明に従う方法を示す。
【表1】

【0058】
表1から判るように、本発明に従うPL2およびPL4を使用することによって、PL1およびPL3を使用するときと比較して相対的に低い多孔率において、比容積が増加した。
【実施例3】
【0059】
CaClの添加によって電導度が3.0mS/cmに調整されたことを除いて、実施例2の一般的方法に従って、液体包装板紙の中央層がシートフォーマーPFIで製造された。
【0060】
表2は結果を示し、そこでは試験番号1〜2は比較(参照)のために使用された添加剤を用いる方法を示し、また試験番号3は本発明に従う方法を示す。
【表2】

【0061】
表2から判るように、本発明は、改良された(より低い)多孔率を有するセルロース製品をもたらした。
【実施例4】
【0062】
実験用抄紙機(XPM)において、約120gsm(g/m)の坪量を有する液体包装板紙の中央層が製造された。試験で使用された紙料は、100%未晒化学熱機械パルプ(CTMP)に基づいていた。pHは8.0であった。
【0063】
紙料への添加は以下の順番で行われた。
○ カチオンデンプン1、SP1、50%
○ ミクロスフェアExpancel(商標)、MS
○ カチオンデンプン2、ST1、50%
○ サイズ剤AKD、SA1
○ カチオン性ポリマー、PL
○ アニオン性シリカゾル、NP1
【0064】
紙ウェブサンプルは、XPM(最大乾燥温度100℃)を出て行くときには既に乾燥されていた。ミクロスフェアはシリンダー乾燥機中で140℃において膨張された。
【0065】
表3は結果を示し、そこでは試験番号1〜2は比較(参照)のために使用された添加剤を用いる方法を示し、また試験番号3〜4は本発明に従う方法を示す。
【表3】

【0066】
表3から判るとおり、本発明は、改良された(より低い)多孔率を有するセルロース製品を提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを含有するセルロース製品。
【請求項2】
(i)セルロース繊維を含有する水性懸濁物を用意する段階、
(ii)該懸濁物に熱可塑性ミクロスフェアとアクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーとを添加する段階、および
(iii)得られた懸濁物を脱水する段階
を含む、セルロース製品を製造する方法。
【請求項3】
熱可塑性ミクロスフェアが膨張されている、請求項1に従うセルロース製品または請求項2に従う方法。
【請求項4】
熱可塑性ミクロスフェアが膨張されておらずかつ熱膨張可能である、請求項1に従うセルロース製品または請求項2に従う方法。
【請求項5】
アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーが水溶性である、請求項1、3および4のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜4のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーがカチオン性である、請求項1および3〜5のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜5のいずれか1項に従う方法。
【請求項7】
アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーが両性である、請求項1および3〜5のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜5のいずれか1項に従う方法。
【請求項8】
アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーが4級アンモニウム基を有する、請求項1および3〜7のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜7のいずれか1項に従う方法。
【請求項9】
アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーが、一般構造式(I)

(この式で、RはHまたはCHであり;RおよびRはそれぞれ、H、または1〜3の炭素原子を有するアルキル基であり;AはOまたはNHであり;Bは2〜8の炭素原子を有するアルキルもしくはアルキレン基、またはヒドロキシプロピレン基であり;Qはベンジル基であり;ならびにXはアニオン性対イオンである。)によって表されるカチオン性芳香族モノマーまたはカチオン性芳香族モノマーを含んでいるモノマー混合物を重合することによって得られたものである、請求項1および3〜8のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜8のいずれか1項に従う方法。
【請求項10】
アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーがアニオン性である、請求項1および3〜5のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜5のいずれか1項に従う方法。
【請求項11】
アクリルアミドに基づいた荷電芳香族ポリマーが、500,000超の重量平均分子量を有する、請求項1および3〜10のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項12】
セルロース製品が紙または板紙である、請求項1および3〜11のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜11のいずれか1項に従う方法。
【請求項13】
セルロース懸濁物に添加されたまたはセルロース製品の表面に施与されたサイズ剤が、セルロース製品中にさらに存在する、請求項1および3〜12のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜12のいずれか1項に従う方法。
【請求項14】
シリカ質物質が、セルロース製品中にさらに存在し、またはセルロース懸濁物にさらに添加される、請求項1および3〜13のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜13のいずれか1項に従う方法。
【請求項15】
湿潤紙力増強剤が、セルロース製品中にさらに存在し、またはセルロース懸濁物にさらに添加される、請求項1および3〜14のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜14のいずれか1項に従う方法。
【請求項16】
セルロース製品が多層の板紙である、請求項1および3〜15のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜15のいずれか1項に従う方法。
【請求項17】
セルロース製品が、乾燥物質当たりセルロース繊維少なくとも50重量%を含有している、請求項1および3〜16のいずれか1項に従うセルロース製品または請求項2〜16のいずれか1項に従う方法。
【請求項18】
請求項1および3〜17のいずれか1項に従うセルロース製品を、液体包装板紙として使用する方法。

【公表番号】特表2010−511797(P2010−511797A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539215(P2009−539215)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050922
【国際公開番号】WO2008/066488
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】