説明

セルロース誘導体

【課題】機能性分子が導入されたセルロース誘導体およびその中間体、並びにそれらの製造方法の提供。
【解決手段】6位水酸基が選択的にハロゲン化されたセルロース誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性分子が導入されたセルロース誘導体およびその中間体、並びにそれらの製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
機能性分子が導入されたセルロース誘導体を合成するために従来用いられていた手法は、(1)セルロースを原料に用いた直接修飾法(ダイレクト修飾法)、および(2)有機化学的に合成したグルコースモノマーを糖加水分解酵素の逆反応を利用して重合することでセルロース誘導体を得る手法(ボトムアップ法)、の二種類であった。
【0003】
(1)の手法は、セルロース水酸基の求核性を利用し、各種求電子試薬との反応によってセルロースを化学修飾して様々な機能性基を導入する方法である。この手法のメリットは多段の合成スキームを要さずに機能性基を導入できることである。一方、合成した機能性セルロース誘導体の構造が不明確なことが主要なデメリットとしてあげられる。これはセルロースの分子内に含まれる水酸基の求核性が非常に似通っており、特定の位置の水酸基のみを選択的に反応させることは不可能であることに起因している。例えば、セルロースに対して水溶性を付与するために盛んに用いられているヒドロキシプロピル化においては、2位、3位、および6位の水酸基がランダムに修飾されたセルロース誘導体しか得られない。また、近年キラル物質分割カラムとして利用されているセルロースのフェニルカルバメート誘導体でも、セルロース骨格内のフェニルカルバメートの置換位置はランダムである(特許文献1)。ランダム修飾されたセルロースは、グルコース繰り返し単位毎の構造が不明確であり、どのようなグルコース単位がどのように連結しているかなどの詳細な構造情報を得ることが不可能である。また、セルロースを骨格とした疎水性ポリマーの合成と自己集合挙動について報告した文献(非特許文献1)では、セルロースに疎水性基を導入するために、セルロースとオクタン酸クロライドを反応させているが、ここでもオクタン酸エステルの導入位置はランダムである。つまりオクタン酸エステルの導入位置は主として6位ではあるものの、その他にも2位や3位に対する導入もランダムに同時に起こってしまうことから、得られるセルロース誘導体の構造も結果として不明確である。
【0004】
前段の諸問題点を解決するため、(2)で示す「化学酵素的合成方法」が研究されるようになってきた。この手法は特定部位に機能性基を有するグルコースモノマーを有機化学的に合成し、このグルコースモノマーを糖加水分解酵素の逆反応の基質として用いることにより、構造が明確かつ任意の位置に機能性基を導入したセルロース誘導体を得る手法である。この手法は構造の明確なセルロース誘導体を得ることができるというメリットはあるものの、モノマーであるグルコース誘導体を有機化学的に得るのに多段の合成ステップを要し、有機合成化学に特化した一部の研究室でしか研究に携わることができない等のデメリットもある。また、酵素を用いて重合反応を行うことから、酵素の基質とならないモノマー構造では重合自体を行うことができないデメリットもある。酵素の基質選択性は概して厳密なため、機能性基として大きな置換基を導入することはできない。本手法によって導入可能な置換基としてはメトキシ基など極小さな置換基に限定されており、アジド基程度の大きさの置換基でさえ導入が困難である。メトキシ基などに代表されるような極小さな置換基は疎水性などの基本的機能の他は、生理活性や光感受性などの「機能性」をほとんど有しておらず、セルロースを骨格とする機能性マテリアルの開発のための普遍的かつ一般的手法として利用するには極めて難点が多い。
【0005】
このように、(1)および(2)の方法における現状を鑑みると、セルロースの特定の水酸基に対し、完全なる位置選択性と高収率をもって、親水性や疎水性等の性質、サイズ、含有置換基等にかかわらず多様な機能性基を自在にかつ簡便に導入する一般的かつ普遍的な手法の開発が急務である。
【0006】
ところで、セルロースのハロゲン化については、これまでにも研究がなされているが(非特許文献2)、セルロースの6位水酸基のみを選択的にハロゲン化する方法については報告されていない。
【特許文献1】:WO2004/086029号公報
【非特許文献1】Y. Wei and F. Cheng, Carbohydrate Polymer 2007, 68, 734-739
【非特許文献2】K. Furuhata et al., Carbohydrate Polymers 1995, 26, 25-29
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、均質セルロース溶液に、トリフェニルホスフィンと四臭化炭素とを反応させることにより、セルロース分子内に存在する多数の水酸基のうち、2位および3位の水酸基は置換されず、6位の水酸基のみが特異的にブロモ基に置換されたセルロース誘導体を製造できることを見出した(実施例1)。本発明は、この知見に基づくものである。
【0008】
本発明は、機能性分子が導入されたセルロース誘導体およびその中間体、並びにそれらの製造方法の提供を目的とする。本発明はまた、機能性分子をセルロースへ導入する方法の提供を目的とする。
【0009】
本発明によれば、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体(以下、「本発明によるセルロース誘導体」ということがある)が提供される:
【化1】

[式中、X基は、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、水酸基、ハロゲン基、アジド基、または基−T−(CH−Z―R―Z−A(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、ZおよびZは、同一または異なっていてもよく、単結合、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、アミド基、またはカルボニル基を表し、Rは、単結合;飽和もしくは不飽和の5〜7員の単環式炭素環もしくは複素環;または飽和もしく不飽和の9〜12員の二環式炭素環もしくは複素環を表し、Aは、糖またはその誘導体;ポルフィリン様大環状化合物;多環芳香族炭化水素またはその誘導体;およびフェロセンまたはその誘導体からなる群から選択される機能性分子の残基を表し、mは0〜6の整数を表す)を表し、
nは、2〜10000の整数を表し、
ただし、X基がすべて水酸基である場合を除く]。
【0010】
本発明によれば、本発明によるセルロース誘導体の製造方法であって、
(i)均質セルロース溶液に、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンと四ハロゲン化炭素とを反応させる工程
を含んでなり、必要であれば、
(ii)工程(i)で得られたセルロース誘導体のハロゲン基をアジド化する工程、さらに必要であれば、(iii)工程(ii)で得られたセルロース誘導体とHC≡C−Q[ここで、Qは、基−(CH−Z―R―Z−Aを表す(ここで、Z、Z、R、Aおよびmは請求項1で定義された内容と同義である)]とを反応させる工程
を含んでなる、方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースと末端アルキンを有する機能性分子とを反応させることを含んでなる、セルロースに機能性分子を導入する方法が提供される。
【0012】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースを用いて行われるアジド基と末端アルキンとのカップリングは、いかなる他種官能基共存条件下であっても定量的かつ化学選択的に進行する点で有利である。また、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースを用いることにより、機能性分子の導入位置がセルロースの6位に限定されることから、合成される機能性セルロース誘導体の構造が明確である点で有利である。さらに、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、−ジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性有機溶媒に易溶である点で有利である。以上のことから、本発明による新規セルロース誘導体は、セルロースの6位に選択的に様々な機能性基を導入して様々な機能性セルロース誘導体を開発するための、重要かつ有用な「鍵マテリアル」として多岐にわたる活用が可能であり、バイオ、電気、光など様々な分野において、セルロースを利用した低環境負荷材料の開発に多大に寄与することが期待される。
【発明の具体的な説明】
【0013】
本願明細書において、「飽和または不飽和の5〜7員の単環式炭素環」は、飽和または不飽和の炭素数5〜7の単環式炭素環を意味する。例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、フェニル等が挙げられる。
【0014】
本願明細書において、「飽和または不飽和の5〜7員の単環式複素環」は、1〜3個の異種原子を含有していてもよい、飽和または不飽和の5〜7員の単環式複素環を意味する。異種原子は、同一または異なっていてもよく、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選択される。例えば、ピリジル、フラニル、ピペリジル、ピリミジル、イミダゾル、チエニル、チオフェニル、イソキサゾイル、1,2,3−オキサジアゾイル、フラザニル、1,2,3−トリアゾイル、1,2,4−トリアゾイル、ピリダジル、ピロリニル、ピロニル、モルホニル、トリアジニル等が挙げられる。
【0015】
本願明細書において、「飽和または不飽和の9〜12員の二環式炭素環」としては、例えば、ナフタレニル、ナフチル、インデニル等が挙げられる。
【0016】
本願明細書において、「飽和または不飽和の9〜12員の二環式複素環」は、1〜5個の異種原子を含有していてもよい、飽和または不飽和の9〜12員の二環式複素環を意味する。異種原子は、同一または異なっていてもよく、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選択される。例えば、インドリル、キノリニル、キナゾリニル、1,3−ベンゾジオキソール、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリニル、ナフチリジニル、ベンゾイミダゾリニル、ベンゾチアゾリニル、ベンゾオキサゾリニル、3,4−メチレンジオキシフェニル等が挙げられる。
【0017】
本願明細書において、「C1−4アルキル基」は、基が直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、i−ブチル基、s‐ブチル基、t‐ブチル基等が挙げられる。
【0018】
本願明細書において、「C1−4アルコキシ基」は、基が直鎖または分岐鎖のアルコキシ基を意味する。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、i−プロポキシ基、n‐ブトキシ基、i−ブトキシ基、s‐ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0019】
本願明細書において、「C1−30アシル基」は、基が直鎖または分岐鎖のアシル基を意味する。好ましくは、C1−4アシル基である。例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等が挙げられる。
【0020】
本願明細書において、「ポリエチレングリコール基」は、−CHCH(OCHCH)n―OHで表される基(ここで、nは1〜100の整数を表す)を意味する。nは、好ましくは、1〜50である。
【0021】
本願明細書において、「4級アミン基」は、−N(−R)(−R)(−R)で表される基(ここで、R、R、Rは、同一または異なっていてもよく、C1−6アルキル基から選択される)を意味する。例えば、トリエチルアンモニウム基である。
【0022】
本発明によるセルロース誘導体は、式(I)で表される繰り返し単位からなり、例えば、式(II)で表すことができる:
【化2】

【0023】
本発明によるセルロース誘導体としては、例えば、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロース、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロース、本発明による機能性セルロース誘導体が挙げられる。
【0024】
[6−ハロ−6−デオキシセルロース]
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、セルロースの2位と3位の水酸基は置換されず、6位の水酸基の一部または全部が選択的にハロゲン化されたセルロース誘導体である。本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、6位水酸基のみが選択的にハロゲン化されていることから、S2反応を利用して該ハロゲン基をアジド化しても主鎖セルロース構造が維持される。よって、本発明による6−ハロ−6デオキシセルロースを用いることにより、機能性セルロース誘導体の中間体として有用な6−アジド−6−デオキシセルロースを合成することができる。
【0025】
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、ハロゲン基または水酸基であり;ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基であり;nが、2〜10000である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
【0026】
式(I)において、X基は、ハロゲン基または水酸基であり、好ましくは、ハロゲン基である。
【0027】
ハロゲン基としては、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、フルオロ基等が挙げられるが、好ましくは、ブロモ基である。
【0028】
式(I)において、ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度は、該ハロゲン基をアジド化し、続いて本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは、0.5〜1であり、より好ましくは、0.8〜1であり、最も好ましくは、0.9〜1である。
【0029】
本願明細書において、「置換度」とは、セルロース誘導体に存在するすべての6位水酸基のうち、目的の置換基で置換された水酸基の割合を意味し、例えば、核磁気共鳴法や、酸加水分解後のHPLC分析を行うことで測定することができる。
【0030】
式(I)において、X基におけるハロゲン基の割合は、該ハロゲン基をアジド化し、続いて本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン基の数を、水酸基の数より多くすることができる。
【0031】
式(I)において、nは、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
【0032】
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースの数平均分子量は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されず、6位に存在する置換基や該置換基の置換度によって異なるが、例えば、360〜2,900,000であり、好ましくは、360〜1,500,000であり、より好ましくは、360〜290,000であり、さらに好ましくは、910〜150,000であり、さらにより好ましくは、1,800〜120,000であり、最も好ましくは、9,100〜87,000である。
【0033】
本願明細書において、「数平均分子量」とは、高分子(セルロース)の平均的な分子量としてその分子数に基づいて算出された分子量を意味し、例えば、ゲル濾過法や、動的光散乱法等を行うことで測定することができる。
【0034】
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースの重合度は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
【0035】
本願明細書において、「重合度」とは、重合体(セルロース)を構成する繰り返し単位の数を意味し、数平均分子量と繰り返し単位あたりの分子量に基づいて算出することができる。例えば、ゲル濾過法や、動的光散乱法等を行うことで測定することができる。
【0036】
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースの好ましい態様は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、ハロゲン基または水酸基であり;ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度が0より大きく1以下であり、残部は水酸基であり;nが、5〜500である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
【0037】
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのより好ましい態様は、6−ブロモ−6−デオキシセルロースであって、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、ブロモ基または水酸基であり;ブロモ基の繰り返し単位当たりの置換度が0より大きく1以下であり、残部は水酸基であり;nが、5〜500である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
【0038】
本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースは、(i)均質セルロース溶液に、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンと四ハロゲン化炭素とを反応させる工程、を含んでなる方法により製造することができる。
【0039】
工程(i)の概要は、スキーム1に示す。
スキーム1
【化3】

【0040】
ここで「均質セルロース溶液」は、セルロースを溶媒に均一に溶解させることにより得ることができる。
【0041】
本発明に用いられるセルロースのグルコース重合度は、セルロースが溶媒に均一に溶解されれば特に限定されず、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
【0042】
目的の重合度を有するセルロースは、市販されたものを入手することもできるし、公知の方法に従ってセルロースを断片化することにより得ることもできる(S. Elazzouzi-Hafraoui et al., Biomacromolecules 2008, 9, 57-65、A. Orozco et al., Process Safety and Environmental Protection 2007, 85, 446-449)。
【0043】
セルロースを溶解させるのに使用可能な溶媒としては、例えば、−ジメチルアセトアミド、−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、−メチルピロリドン等の極性溶媒が挙げられるが、好ましくは、−ジメチルアセトアミドである。
【0044】
セルロースを溶媒に均一に溶解させるために溶解補助剤を用いることもできる。
【0045】
溶解補助剤としては、塩化リチウム、フッ化リチウム等のハロゲン化リチウムが挙げられるが、好ましくは、塩化リチウムである。
【0046】
溶媒の量は、セルロースを均一に溶解することができれば特に限定されないが、例えば、セルロース1gに対して50〜500ml、好ましくは60〜100mlで添加することができる。
【0047】
溶解補助剤の量は、セルロースを均一に溶解することができれば特に限定されないが、例えば、セルロース1gに対して2〜10g、好ましくは3〜5gで添加することができる。
【0048】
セルロースを溶媒に溶解させる工程は、例えば、セルロースに溶媒と、場合によっては溶媒補助剤とを混合し、これを加熱攪拌に供することにより実施することができる。
【0049】
溶解時間は、セルロースを均一に溶解することができればよく、例えば、0.5〜170時間であるが、好ましくは、3〜50時間である。
【0050】
溶解温度は、セルロースを均一に溶解することができればよく、例えば、40〜120℃であるが、好ましくは、60〜100℃である。
【0051】
セルロースが溶媒に均一に溶解されたか否かは、目視による溶液の濁度判定により判定することができる。例えば、溶液が均質に透明である場合に、セルロースが溶媒に均一に溶解されたと判定することができる。
【0052】
工程(i)において、均質セルロース溶液と、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程は、例えば、均質セルロース溶液と、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを接触させ、これを磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、磁気攪拌である。
【0053】
トリフェニルホスフィンは、1以上のC1−4アルキル基(好ましくは、メチル基)またはC1−4アルコキシ基(好ましくは、メトキシ基)で置換されてもよいが、好ましくは、非置換である。
【0054】
1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンの量は、セルロースの6位水酸基のみを活性化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、均質セルロース溶液中のセルロース1gに対して、0.1〜20g、好ましくは、3〜10gで添加することができる。
【0055】
反応時間は、セルロースの6位水酸基のみを活性化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0.08〜24時間であるが、好ましくは、0.5〜10時間、より好ましくは、1〜6時間、さらに好ましくは3〜5時間である。
【0056】
反応温度は、セルロースの6位水酸基のみを活性化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0〜150℃であるが、好ましくは、0〜100℃、より好ましくは、0〜50℃、さらに好ましくは、15〜40℃である。
【0057】
工程(i)において、均質セルロース溶液と四ハロゲン化炭素とを反応させる工程は、例えば、均質セルロース溶液と四臭化炭素とを接触させ、これを磁気攪拌、機械攪拌、手動攪拌、振とう攪拌等に供することにより実施することができるが、好ましくは、磁気攪拌である。
【0058】
四ハロゲン化炭素としては、四臭化炭素、四塩素化炭素、四フッ化炭素、四ヨード化炭素等が挙げられるが、好ましくは、四臭化炭素である。
【0059】
四ハロゲン化炭素の量は、6位水酸基のみをハロゲン化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、均質セルロース溶液中のセルロース1gに対して、0.1〜20g、好ましくは3〜6gで添加することができる。
【0060】
反応時間は、6位水酸基のみをハロゲン化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0.08〜170時間であるが、好ましくは、1〜50時間、より好ましくは23〜25時間である。
【0061】
反応温度は、6位水酸基のみをハロゲン化することができれば特に限定されず、6位水酸基が目的の置換度でハロゲン基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0〜150℃であるが、好ましくは、5〜100℃、より好ましくは55〜65℃である。
【0062】
工程(i)において、均質セルロース溶液にC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンを反応させる工程と、均質セルロース溶液に四ハロゲン化炭素を反応させる工程とは、それぞれ別々行ってもよいし、同時に行ってもよいが、均質セルロース溶液に、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンを反応させた後、四ハロゲン化炭素を反応させることが好ましい。
【0063】
本発明による6−ハロ−6デオキシセルロースの製造方法の好ましい態様によれば、
(i−1)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程;および
(i−2)(i−1)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素を反応させる工程、
を含んでなる製造方法である。
【0064】
本発明による6−ハロ−6デオキシセルロースの製造方法のより好ましい態様によれば、
(i−1’)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応時間3〜5時間、反応温度15〜40℃で反応させる工程;および
(i−2’)(i−1’)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素とを反応時間23〜25時間、反応温度55〜65℃で反応させる工程、
を含んでなる製造方法である。
【0065】
[6−アジド−6−デオキシセルロース]
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、セルロースの6位水酸基の一部または全部が選択的にアジド化されたセルロース誘導体である。
【0066】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、末端アルキン基を有する機能性分子と反応し、セルロースに機能性分子を導入することができる。
【0067】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、6位水酸基が選択的にアジド化されていることから、機能性分子が導入される位置が明確であるため、構造が明確なセルロース誘導体を得ることができる。また、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性有機溶媒に易溶である。
【0068】
よって、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースを用いることにより、反応条件(溶媒など)や共存官能基に影響されない普遍的な反応を用いて、いかなる機能性基でもセルロースの6位に導入可能な普遍的方法を確立することができる。
【0069】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、アジド基、水酸基、またはハロゲン基であり;アジド基の繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基またはハロゲン基であり;nが、2〜10000である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
【0070】
式(I)において、X基は、アジド基、水酸基、またはハロゲン基であるが、好ましくは、アジド基または水酸基であり、より好ましくは、アジド基である。
【0071】
式(I)において、アジド基の繰り返し単位当たりの置換度は、アジド基が末端アルキルとカップリングすることができれば特に限定されないが、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは、0.01〜1であり、より好ましくは、0.5〜1であり、さらにより好ましくは、0.8〜1であり、最も好ましくは、0.9〜1である。
【0072】
式(I)において、ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度は、アジド基と末端アルキルとがカップリングすることができれば特に限定されないが、例えば、0〜1であり、好ましくは、0〜0.5であり、より好ましくは、0〜0.1である。
【0073】
式(I)において、X基における、アジド基、水酸基、およびハロゲン基の割合は、アジド基と末端アルキルとがカップリングすることができれば特に限定されないが、例えば、アジド基の数を、水酸基の数とハロゲン基の数との和より多くすることができる。水酸基およびハロゲン基の割合は、使用目的に応じて適宜決定することができるが、例えば、水溶性を高めることを目的として、水酸基の数をハロゲン基の数より多くすることができる。
【0074】
式(I)において、nは、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
【0075】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの数平均分子量は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されず、6位の置換基や置換基の置換度によって異なるが、例えば、370〜1,900,000であり、好ましくは、370〜940,000であり、より好ましくは、370〜190,000であり、さらに好ましくは、940〜94,000であり、さらにより好ましくは、1,900〜75,000であり、最も好ましくは、9,400〜56,000である。
【0076】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの重合度は、本発明による機能性セルロース誘導体を合成することができれば特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
【0077】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの好ましい態様は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なって、アジド基、水酸基、またはハロゲン基であり;アジド基の繰り返し単位当たりの置換度が0より大きく1以下であり、残部は水酸基またはハロゲン基であり;nが、5〜500である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
【0078】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースは、(ii)工程(i)で得られたセルロース誘導体(すなわち、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロース)のハロゲン基をアジド化する工程、により得ることができる。
【0079】
工程(ii)の概要は、スキーム2に示す。
スキーム2
【化4】

【0080】
ここで、「アジド化する工程」は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースを溶媒に溶解し、得られた溶解液とアジ化ナトリウムを反応させることにより実施することができる。
【0081】
アジ化ナトリウムの量は、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのハロゲン基の一部または全部をアジド化することができれば特に限定されないが、ハロゲン基が目的の置換度でアジド基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、6−ハロゲン6−デオキシセルロース1gに対して、0.5〜5g、好ましくは2〜3gで添加することができる。
【0082】
反応時間は、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのハロゲン基の一部または全部をアジド化することができれば特に限定されず、ハロゲン基が目的の置換度でアジド基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、0.5〜170時間であるが、好ましくは、2〜100時間、より好ましくは40〜60時間である。
【0083】
反応温度は、本発明による6−ハロ−6−デオキシセルロースのハロゲン基の一部または全部をアジド化することができれば特に限定されず、ハロゲン基が目的の置換度でアジド基に置換されるように適宜調整することができる。例えば、30〜140℃であるが、好ましくは、50〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
【0084】
本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースの製造方法の好ましい態様は、
(i−1)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程;
(i−2)工程(i−1)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素とを反応させる工程;および
(ii)工程(i−2)で得られたセルロース誘導体のハロゲン基をアジド化する工程
を含んでなる方法である。
【0085】
[機能性セルロース誘導体]
本発明による機能性セルロース誘導体は、セルロースの6位の一部または全部に選択的に機能性分子が導入されたセルロース誘導体である。
【0086】
本発明による機能性セルロース誘導体は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−(CH−Z―R―Z−A、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;基−T−(CH−Z―R―Z−Aの繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;nが、2〜10000である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
【0087】
式(I)において、X基は、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−(CH−Z―R―Z−A、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり、好ましくは、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−(CH−Z―R―Z−Aまたは水酸基であり、より好ましくは、基−T−(CH−Z―R―Z−Aである。
【0088】
式(I)において、基−T−(CH−Z―R―Z−Aの繰り返し単位当たりの置換度は、特に限定されないが、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは、0.01〜1であり、より好ましくは、0.5〜1であり、さらにより好ましくは、0.8〜1であり、最も好ましくは、0.9〜1である。
【0089】
式(I)において、ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度は、特に限定されないが、例えば、0〜0.9であり、好ましくは、0〜0.5であり、より好ましくは、0〜0.1である。
【0090】
式(I)において、アジド基の繰り返し単位当たりの置換度は、特に限定されないが、例えば、0〜0.9であり、好ましくは、0〜0.5であり、より好ましくは、0〜0.1である。
【0091】
式(I)において、X基における、基−T−(CH−Z―R―Z−A、水酸基、ハロゲン基、およびアジド基の割合は、特に限定されないが、例えば、基−T−(CH−Z―R―Z−Aの数は、水酸基の数とハロゲン基の数とアジド基の数との和より多くすることができる。水酸基、ハロゲン基、およびアジド基の割合、使用目的に応じて適宜決定することができるが、例えば、水溶性を高めることを目的として、水酸基の数をハロゲン基の数とアジド基の数との和より多くすることができる。
【0092】
式(I)において、nは、特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
【0093】
本発明による機能性セルロース誘導体の数平均分子量は、特に限定されないが、例えば、480〜17,000,000であり、好ましくは、480〜8,200,000であり、より好ましくは、480〜1,700,000であり、さらに好ましくは、1,200〜820,000であり、さらにより好ましくは、2,400〜660,000であり、最も好ましくは、12,000〜500,000である。
【0094】
本発明による機能性セルロース誘導体の重合度は、特に限定されないが、例えば、2〜10000であり、好ましくは、2〜5000であり、より好ましくは、2〜1000であり、さらに好ましくは、5〜500であり、さらにより好ましくは、50〜500であり、特に好ましくは、100〜500であり、最も好ましくは、100〜300である。
【0095】
式(I)において、A基は、セルロースに導入する機能性分子の残基である。
セルロースに導入する機能性分子は、目的に応じて適宜選択することができ、アジド基とアルキン基とのカップリング反応によりセルロースに導入することができれば特に限定されないが、例えば、糖またはその誘導体;ポルフィリン様大環状化合物;多環芳香族炭化水素またはその誘導体;フェロセンまたはその誘導体等が挙げられる。
【0096】
糖としては、例えば、単糖、オリゴ糖、多糖、シアロオリゴ等が挙げられるが、好ましくは、オリゴ糖類である。
オリゴ糖と糖認識タンパク質(レクチン)との特異的な相互作用は、細胞接着やガン転移、さらには細胞に対するウィルス感染の初期過程に深く関与していることが知られている。これまでに、オリゴ糖を共有結合的に導入した人工物質群はガン転移やウィルス感染の抑制剤などとして広く研究・応用されている。特に高分子主鎖に多数のオリゴ糖鎖を共有結合させた「人工糖鎖高分子」は、非常に強くレクチンと相互作用することから、有望なバイオマテリアルとして注目を集めている。従って、機能性分子としてオリゴ糖鎖を導入したセルロース誘導体は、「人工糖鎖高分子」としての高いレクチン認識能に加え、セルロース主鎖由来の生分解性を併せ持つ新素材として期待される。
【0097】
単糖としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース等が挙げられる。
【0098】
オリゴ糖としては、例えば、ラクトース、セロビオース、マルトース等の二糖、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン糖のシクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン類等のシクロデキストリン誘導体等が挙げられる。
【0099】
多糖としては、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キチン、キトサン等が挙げられる。
【0100】
シアロオリゴ糖としては、GM1、SLe等が挙げられる。例えば、GM1が導入されたセルロース誘導体は、インフルエンザウィルスの吸着剤として利用することができる。また、SLeが導入されたセルロース誘導体は、抗炎症剤やガン転移抑制剤として利用することができる。
【0101】
糖の誘導体としては、例えば、C1−30アシル基、硫酸基、リン酸基、ポリエチレングリコール基からなる群から選択される置換基で置換された糖が挙げられる。
【0102】
ポルフィリン様大環状化合物は、ポルフィリン様の大環状構造を有していれば特に限定されず、例えば、硫酸基、リン酸基、ポリエチレングリコール基、4級アミン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよいポルフィリン、フタロシアニン等が挙げられる。例えば、ポルフィリンをセルロースに導入すると、セルロースを鋳型にしてポルフィリンが層状に積層した構造が得ることができ、これを人工光合成システム開発として利用することができる。
【0103】
多環芳香族炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、ピレン、アントラセン等が挙げられる。多環芳香族炭化水素の誘導体としては、例えば、硫酸基、リン酸基、ポリエチレングリコール基、4級アミン基からなる群から選択される置換基で置換された多環芳香族炭化水素等が挙げられる。例えば、ピレンが導入されたセルロース誘導体は、蛍光性高分子として利用することができる。
【0104】
フェロセンの誘導体は、フェロセン骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、硫酸基、リン酸基、ポリエチレングリコール基、4級アミン基からなる群から選択される置換基で置換されたフェロセンが挙げられる。例えば、フェロセンが導入されたセルロース誘導体は、レドックス性高分子として利用することができる。
【0105】
本発明による機能性セルロース誘導体において、機能性分子は、スペーサー基を介してセルロースに導入することができる。スペーサー基は、機能性分子をセルロースに導入することができれば化学構造は特に限定されないが、例えば、基−(CH−Z―R―Z−で表すことができる。
【0106】
式(I)において、Zは、好ましくは、アミド基、酸素原子、硫黄原子および単結合からなる群から選択される。
【0107】
式(I)において、Zは、好ましくは、アミド基、酸素原子、または硫黄原子である。
【0108】
式(I)において、Rは、好ましくは、フェニル基または単結合である。
【0109】
式(I)において、mは、好ましくは、0〜6の整数である。
【0110】
本発明において、スペーサー基の具体的な例としては、以下の構造が挙げられる。
【化5】

(ここで、mは0〜6である。)
【0111】
式(I)において、Tが表すトリアゾールは、1,2,3−トリアゾールであり、例えば、式(III)で表すことができる。
【化6】

【0112】
本発明による機能性セルロース誘導体の好ましい態様は、X基が、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−(CH−Z―R―Z−A(ここで、Tがトリアゾール基の残基であり、Zが、アミド基、酸素原子、硫黄原子、または単結合であり;Zが、アミド基、酸素原子、または硫黄原子であり;Rが、フェニル基または単結合であり;Aが、単糖、オリゴ糖、多糖、シアロオリゴ糖からなる群から選択される糖の残基であり;mが0〜6の整数である)、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;基−T−(CH−Z―R―Z−Aの繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;nが、5〜500である、式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体である。
【0113】
本発明による機能性セルロース誘導体は、(iii)工程(ii)で得られたセルロース誘導体(すなわち、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロース)とHC≡C−Q[ここで、Qは、基−(CH−Z―R―Z−Aを表す(ここで、Z、Z、R、Aおよびmは上記で定義された内容と同義である)]とを反応させる工程、を含んでなる方法により製造することができる。
【0114】
工程(iii)の概要は、スキーム3に示す。
スキーム3
【化7】

(Z、Z、R、Aおよびmは上記で定義された内容と同義である)
【0115】
ここで「反応させる」とは、カップリング反応を行うことを意味する。
【0116】
本願明細書において、「カップリング反応」とは、末端アルキンを有する分子とアジド基を有する分子との、Cu存在下での環化付加反応を意味する(L.V.Lee, M.L.Mitchel, S-J.Huang, V.V.Fokin, K.B.Sharpless, and C.-H.Wong, J.Am.Chem.Soc., 125, 9588(2003)、C.W.Tornoe, C.Christensen, and M.Meldal, J.Org, Chem., 67, 3057(2002))。
【0117】
この反応は、(1)いかなる共存官能基の影響も受けずに非常に化学選択的に進行する。また、(2)副反応なく定量的に進行する。さらに、(3)DMSO等の極性有機溶媒中でも進行する。
【0118】
従って、この反応を利用することにより、極めて容易にかつ効率的に、セルロースの6位に選択的に機能性分子を導入することができる。また、様々な構造を有する分子(例えば、親水性/疎水性・イオン性/非イオン性等)に対して良溶媒である極性有機溶媒を使用することができることから、セルロースに導入する機能性分子に制限がないことが予想できる。さらに、実施例によれば、嵩高いラクトースのような分子を導入することができることから、導入する機能性分子のサイズにたいする制限もないことが容易に推測できる。
【0119】
本発明において実施される「カップリング反応」は、公知の方法に従って行うことができる(M.C.Bryan, F.Fazio, H.-K.Lee, C.-Y.Huang, A.Chang, M.D.Best, D.A.Calarese, O.Blixt, J.C.Paulson, D.Burton, L.A.Wilson, and C.-H.Wong, J.Am.Chem.Soc., 126, 8640(2004)、B.Helms, J.L.Mynar, C.J.Hawker, and J.M.Frechet, J.Am.Chem.Soc., 126, 15020(2004)、J.A.Opsteen and J.C.M.van Hest, Chem. Commun., 35, 57(2005))。当業者であれば、好適な反応条件を適宜決定することができる。
【0120】
HC≡C−Qで表される化合物は、セルロースに導入する機能性分子と、スペーサー基がそれぞれ決定されれば、公知の合成方法や三重結合の導入方法に従って、容易に合成することができる。
【0121】
本発明による機能性セルロース誘導体の製造方法の好ましい態様は、
(i−1)均質セルロース溶液とC1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンとを反応させる工程;
(i−2)工程(i−1)で得られた反応溶液と四ハロゲン化炭素とを反応させる工程;
(ii)工程(i−2)で得られたセルロース誘導体のハロゲン基をアジド化する工程;および
(iii)工程(ii)で得られたセルロース誘導体のハロゲン基とHC≡C−Q[ここで、Qは、基−(CH−Z―R―Z−Aを表す(ここで、Z、Z、R、Aおよびmは上記で定義された内容と同義である)]とを反応させる工程
を含んでなる方法である。
【0122】
本発明によれば、本発明による6−アジド−6−デオキシセルロースと末端アルキンを有する機能性分子とを反応させることを含んでなる、セルロースに機能性分子を導入する方法が提供される。
「末端アルキンを有する機能性分子」は、公知の方法に従って、目的の機能性分子を、場合によっては、スペーサー基を介して、末端アルキン修飾することにより作製することができる。
ここで「末端アルキンを有する機能性分子」は、末端アルキンを有する機能性分子であって、アジド基を有する化合物とカップリング反応を起こすことができれば特に限定されないが、例えば、HC≡C−Q[ここで、Qは、基−(CH−Z―R―Z−Aを表す(ここで、Z、Z、R、Aおよびmは上記で定義された内容と同義である)]である。例えば、1−プロパルギル−グリコシド、プロパルギルアミドフェロセン等が挙げられ、好ましくは、1−プロパルギル−グリコシドである。
【実施例】
【0123】
以下、実施例を示してこの出願の発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0124】
実施例1:6−アジド−6−デオキシセルロースの製造
(1)6−ブロモ−6−デオキシセルロースの製造
セルロース(FMC BioPolymer社製、商品名Avicel、重合度280程度)2.05gを、窒素雰囲気下、塩化リチウム存在下で、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)150ml中で80℃にて加熱攪拌し、均一溶解させた。溶液の温度が室温程度になるまで放冷したのち、反応溶液に、DMAc40mlに溶解させたトリフェニルホスフィン12.2gを加え、室温にて4時間磁気攪拌した。さらにDMAc10mlに溶解させた四臭化炭素10.5gを加えた後、60℃にて24時間磁気攪拌した。反応溶液に水を加えて再沈殿を行い、遠心分離によって沈殿物を回収したのち、沈殿をメタノールで洗浄することでブロモ化セルロース(6−ブロモ−6−デオキシセルロース:Cel−Br)を得た。
13C NMRスペクトル(300MHz,DMSO−d,60℃):101.82,79.84,73.60,73.38,72.78,44.24
【0125】
13C NMRスペクトル測定の結果、多糖の6位水酸基(−−OH)に該当するピークが消失し、ブロモメチル基(−−Br)由来のピークが新たに観測されたことから、セルロースの6位水酸基が全てブロモ化されたことが示された。また、6位炭素以外のセルロース炭素ピークに、ブロモ化による明確な化学シフト値の変化は認められなかった。
【0126】
以上の結果から、水酸基のブロモ化が6位特異的に、置換度が1で進行したことが示された。
【0127】
(2)6−アジド−6−デオキシセルロースの製造
実施例1(1)で得られた6−ブロモ−6−デオキシセルロース2gをDMAc150mlに溶解させ、アジ化ナトリウム5.05gとともに85℃にて磁気攪拌することでブロモ基からアジド基への変換を行った。DMAcを溶媒として反応を進行させると、反応の進行に伴い生成物の沈殿が生じた。これは一部の6位がアジド化されたセルロース誘導体がDMAcに難溶であるためと考えられる。そこで、反応溶液にジメチルスルホキシド(DMSO)を適時添加することにより、反応溶液を均一に保ったままアジド化を完遂させた。42時間の加熱攪拌が終了した後、反応溶液を大量の水に加えて再沈殿を行い、その後遠心分離を行った。得られた沈殿をメタノールで洗浄することによりアジド化セルロース(6−アジド−6−デオキシセルロース:Cel−N)を得た。
IRスペクトル(KBr、cm−1):2101
13C NMRスペクトル(300MHz,DMSO−d,60℃):101.76,79.00,73.62,72.69,72.63,50.66
【0128】
赤外吸収(IR)スペクトル測定の結果、2100cm−1付近にアジド基由来の吸収が確認でき、セルロースへのアジド基の導入が確認された(図1)。
【0129】
また、13C NMRスペクトル測定の結果、多糖の6位水酸基(−−OH)やブロモメチル基(−−Br)由来のピークは全く観測されない一方で、新たにアジドメチル基(−−N)のピークの出現が観測されたことから、セルロースの6位水酸基が全てアジド化されたことが示された(図2)。また、6位炭素以外のセルロース炭素ピークに化学シフト値の変化は認められなかった(図2)。
【0130】
以上の結果から、ブロモ基のアジド化が6位特異的に、置換度が1で進行したことが示された。また、得られたアジド化セルロースの13C NMRは非常に単純で、主要なピーク(図2の黒丸)は6本しか観測されなかった。このことは、6位水酸基のみが位置特異的にアジド化されたセルロース誘導体が得られたことを示している。
【0131】
実施例2:ラクトース導入セルロースの製造の製造
(1)末端アルキンを有するラクトース誘導体の合成
セルロースに導入するラクトース誘導体として、末端アルキンを有するラクトース誘導体の合成を行った。
【0132】
ラクトースを出発原料として、ピリジン中無水酢酸を作用させることで水酸基のアセチル化を行った。次いで臭化水素を作用させることで還元末端のブロモ化を行ってラクトシルブロミドを得た。得られたラクトシルブロミドをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中、70℃でアジ化ナトリウムと処理することでブロモ基からアジド基への変換を行い、次いでテトラヒドロフラン(THF)中、パラジウムカーボン存在下で水素と接触させることにより、アジド基からアミノ基への変換を行った。得られたアミノ化ラクトースを4−プロパルギルオキシ安息香酸クロライドとアミドカップリングさせ、その後アセチル基を脱保護することによりp−(2’’−プロパルギルオキシ)−フェニルカルボニルアミド−β−ラクトシドを合成した。
【化8】

【0133】
(2)ラクトースのセルロースへの導入
実施例1で得られた6−アジド−6−デオキシセルロース(20mg)をサンプル瓶に入れ、そこにDMSO(200ml)を加えた後、60℃にて一晩インキュベーションして6−アジド−6−デオキシセルロースを完全溶解させた。この反応溶液に実施例2(1)で得られたp−(2’’−プロパルギルオキシ)−フェニルカルボニルアミド−β−ラクトシド(200mg)、CuBr(2mg)、アスコルビン酸(6mg)およびプロピルアミン(10ml)を加え、室温にて一晩静置した。
【化9】

反応終了後、反応溶液に水を加えて希釈し、その後透析(MWCO8000、水)を行うことにより精製を行った。得られた水溶液を凍結乾燥することにより、淡黄色粉末としてラクトース導入セルロースを得た(収率49%)。
IRスペクトル(ATR、cm−1):3102
13C NMRスペクトル(300MHz,DMSO−d,60℃):166.08,160.45,142.04,129.28,129.17,126.48,114.18,114.08,103.55,80.47,80.05,76.46,75.63,75.38,73.15,71.64,70.55,68.07,60.50,60.36
【0134】
IRスペクトル測定の結果、2100cm−1付近のアジド基由来の吸収が消失しており、セルロースへのアジド基の導入が確認できた(図3)。
【0135】
また、13C NMRスペクトル測定の結果、アジドメチル基(−−N)由来のピークが全く観測されない一方で、1,4−トリアゾール基に由来するピークの出現が観測された(図4)。また、ラクトース導入セルロースの13C NMRスペクトルは、原料である6−アジド−6−デオキシセルロースとp−(2’’−プロパルギルオキシ)−フェニルカルボニルアミド−β−ラクトシドの13C NMRスペクトルの重ね合わせと一致し、全ピークが容易に帰属可能であり、またそれ以外の帰属不可能なピークは全く確認されなかった。
【0136】
以上の結果から、セルロースの全ての6位に1,4−トリアゾールを介してラクトースが導入されたラクトース導入セルロース(置換度1)が合成されたことが確認できた。
【0137】
実施例3:蛍光滴定法によるラクトース導入セルロースとレクチンとの結合能評価
実施例2で得られたラクトース導入セルロースにラクトース由来の機能が付与されたことを確認するため、蛍光標識レクチンを用いた蛍光滴定法(T. Hasegawa et al., Chem. Commun., 2004, 382-383)により、ラクトース導入セルロースのレクチン認識能を評価した。
【0138】
ラクトース認識レクチンであるRCA120(VECTOR LABORATORIES社製)を蛍光性色素であるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識し(FITC−RCA120)、トリスバッファー(pH7.2,[CaCl]および[MnCl]=100mM)に溶解した。これに実施例2で得られたラクトース導入セルロースを添加したところ、FITC−RCA120由来の蛍光強度の減少が見られ、両者の相互作用を確認できた(図5(a))。添加したラクトース導入セルロースの濃度に対するFITC−RCA120の蛍光強度をプロットし、そのカーブフィッティングより結合の強さを算出したところ、その解離定数(K)は1.46×10−7Mとなり、両者が非常に強く相互作用していることが明らかとなった(図5(b))。
【0139】
同様の実験をマンノース認識レクチンであるConAを用いて行ったところ、FITC−ConAの蛍光強度はラクトース導入セルロース添加による減少が認められなかった(図5(b))。
【0140】
以上の結果から、ラクトースの導入により、実施例2で得られたセルロース誘導体は特異的なレクチン認識能が付与されたことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は、6−アジド−6−デオキシセルロースのIRスペクトル(ATR測定)の結果を示した図である。
【図2】図2は、6−アジド−6−デオキシセルロースの13C NMRスペクトルの結果を示した図である。
【図3】図3は、ラクトース導入セルロースのIRスペクトル(ATR測定)の結果を示した図である。
【図4】図4は、ラクトース導入セルロースの13C NMRスペクトルの結果を示した図である。
【図5】図5は、蛍光滴定法によるラクトース導入セルロースとレクチンとの結合能評価の結果を示した図である。(a)ラクトース導入セルロースの添加によるFITC−RCA120の蛍光スペクトル変化。(b)そのラクトース導入セルロース濃度に対する依存性。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される繰り返し単位からなるセルロース誘導体:
【化1】

[式中、X基は、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、水酸基、ハロゲン基、アジド基、または基−T−(CH−Z―R―Z−A(ここで、Tはトリアゾール基の残基を表し、ZおよびZは、同一または異なっていてもよく、単結合、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、アミド基、またはカルボニル基を表し、Rは、単結合;飽和もしくは不飽和の5〜7員の単環式炭素環もしくは複素環;または飽和もしく不飽和の9〜12員の二環式炭素環もしくは複素環を表し、Aは、糖またはその誘導体;ポルフィリン様大環状化合物;多環芳香族炭化水素またはその誘導体;およびフェロセンまたはその誘導体からなる群から選択される機能性分子の残基を表し、mは0〜6の整数を表す)を表し、
nは、2〜10000の整数を表し、
ただし、X基がすべて水酸基である場合を除く]。
【請求項2】
X基が、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、ハロゲン基または水酸基であり;ハロゲン基の繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基であり;nが、2〜10000である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
【請求項3】
nが、5〜500である、請求項2に記載のセルロース誘導体。
【請求項4】
X基が、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、アジド基、水酸基、またはハロゲン基であり;アジド基の繰り返し単位当たりの置換度が、0より大きく1以下であり、残部は水酸基またはハロゲン基であり;nが、2〜10000である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
【請求項5】
nが、5〜500である、請求項4に記載のセルロース誘導体。
【請求項6】
X基が、繰り返し単位間で同一または異なっていてもよく、基−T−(CH−Z―R―Z−A(ここで、T、Z、Z、R、Aおよびmは請求項1で定義された内容と同義である)、水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;基−T−(CH−Z―R―Z−Aで表される基の繰り返し単位当たりの置換度が0より大きく1以下であり、残部は水酸基、ハロゲン基、またはアジド基であり;nが、2〜10000である、請求項1に記載のセルロース誘導体。
【請求項7】
nが、5〜500である、請求項6に記載のセルロース誘導体。
【請求項8】
が、アミド基、酸素原子、硫黄原子、または単結合である、請求項6に記載のセルロース誘導体。
【請求項9】
が、アミド基、酸素原子、または硫黄原子である、請求項6に記載のセルロース誘導体。
【請求項10】
Rが、フェニル基または単結合である、請求項6に記載のセルロース誘導体。
【請求項11】
Aが、単糖、オリゴ糖、多糖、シアロオリゴ糖からなる群から選択される糖またはその誘導体;ポルフィリンもしくはフタロシアニンまたはそれらの誘導体;フェロセンまたはその誘導体;あるいはピレンもしくはアントラセンまたはそれらの誘導体;の残基を表す、請求項6に記載のセルロース誘導体。
【請求項12】
Aが、単糖、オリゴ糖、多糖、シアロオリゴ糖からなる群から選択される糖の残基である、請求項11に記載のセルロース誘導体。
【請求項13】
mが、0〜6の整数である、請求項6に記載のセルロース誘導体。
【請求項14】
が、アミド基、酸素原子、硫黄原子、または単結合であり;Zが、アミド基、酸素原子、または硫黄原子であり;Rが、フェニル基または単結合であり;Aが、単糖、オリゴ糖、多糖、シアロオリゴ糖からなる群から選択される糖の残基であり;mが0〜6の整数であり;nが、5〜500である、請求項6に記載のセルロース誘導体。
【請求項15】
請求項1に記載のセルロース誘導体の製造方法であって、
(i)均質セルロース溶液に、C1−4アルキル基またはC1−4アルコキシ基で置換されていてもよいトリフェニルホスフィンと四ハロゲン化炭素とを反応させる工程
を含んでなり、必要であれば、
(ii)工程(i)で得られたセルロース誘導体のハロゲン基をアジド化する工程、さらに必要であれば、(iii)工程(ii)で得られたセルロース誘導体とHC≡C−Q[ここで、Qは、基−(CH−Z―R―Z−Aを表す(ここで、Z、Z、R、Aおよびmは請求項1で定義された内容と同義である)]とを反応させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項16】
請求項4または5に記載のセルロース誘導体と末端アルキンを有する機能性分子とを反応させることを含んでなる、セルロースに機能性分子を導入する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−1397(P2010−1397A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162015(P2008−162015)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】