説明

セル重複検出装置、制御局装置、移動局装置及び無線通信制御方法

【課題】セル間干渉の回避もしくは軽減の対象として適切なセルの組合せを選択することに寄与する。
【解決手段】複数の基地局の各々に対して移動局との間の通信用の周波数チャネルを割り当てる無線通信制御方法であって、一移動局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する過程(S3)と、検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定する過程(S4)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル重複検出装置、制御局装置、移動局装置及び無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線接続サービスにおいて広域をカバーする広域セル方式の無線通信システムが知られている。広域セル方式の無線通信システムでは、少数の基地局で広域の通信エリアを実現できる反面、局所的な電波の不感地帯が散在する可能性がある、又、1基地局当たりで収容するユーザ数が多く、基地局の処理能力がボトルネックとなる可能性がある、などの問題がある。これらの問題に対処するために基地局数を増加させることが考えられるが、広域セル方式の基地局装置は高コストである点、又、基地局の新規設置時において干渉増大の抑制のための綿密な置局設計が必要とされる点、などから柔軟な対応が困難である。
【0003】
そのような状況下において、広域セルに比べてセルサイズが極小であるピコセルを用いた無線通信システムが検討されている。ピコセル方式の無線通信システムでは、基地局装置が広域セル方式に比べて安価であるので、基地局装置の増加にも比較的対応がしやすい。また、ピコセル方式によれば、適切に基地局の配置を行えば、周波数利用効率の向上が望めるという利点もある。但し、広域セル方式と同様に、干渉増大の抑制のための綿密な置局設計を行わなければ、周波数チャネルが基地局間で互いに干渉し、所望の伝送性能が得られない事態が発生し得る。しかし、ピコセル方式の基地局は簡易に設置することができることから、基地局の設置自由度が大きいことがピコセル方式の利点でもあり、綿密な置局設計を行って設置者の意向に反して指定の場所に基地局を設置するよう強制することは本望ではない。このため、できるだけ任意の場所に基地局を設置できるように置局設計は簡易化し、その分、置局後の基地局間で生じる周波数チャネルの干渉を回避もしくは軽減する方が好ましい。
【0004】
また、将来の移動通信に向けては、高速大容量通信の要求に伴い、通信帯域の広帯域化が進み、また、使用される無線周波数も高周波数帯に移行することが予想される。その広帯域化及び高周波数帯への移行の際、無線基地局の送信電力の肥大化を抑制するためにはセルサイズの縮小化が必要になり、この結果として電波不感地帯が増加する可能性がある。そこで、電波不感地帯を補完する一手法として、ピコセルの活用があり、ピコセルで局所的に面的にカバーすることが考えられる。また、ピコセルを形成する簡易的な構成の基地局を用いることによりビットコストを低減することが可能になる。
【0005】
セルラシステムにおける従来のセル設計技術では、例えば非特許文献1に記載されるように、セル形状を三角形、四角形、六角形などの多角形で近似することを想定している。そのように想定した環境下における従来の周波数チャネル割当て方法としては、例えば特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1記載の方法では、多角形の形状を想定したセルを間断なく配置した環境において、セル間の干渉をトラヒック量等から推定し、複数のセル間における干渉が大きい場合には同一周波数帯域が割り当てられるセルの距離間隔を大きくし、逆に干渉が小さい場合には同一周波数帯域が割り当てられるセルの距離間隔を小さくしている。
【非特許文献1】奥村・進士監修、「移動通信の基礎」、第8章、(社)電子情報通信学会
【特許文献1】特開2005−27189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ピコセルシステムでは従来の多角形セルが規則的に並ぶゾーン構成を想定した置局設計の適用は困難であり、もし十分な置局設計が為されなかった場合には、重複したセル間の干渉により、通信品質の劣化が生じる恐れがある。そのため、ピコセルシステムに適合し、セル間干渉を回避もしくは軽減する手法が要望される。その一手法として、
(1)置局設計は出来る限り簡略化して置局自由度を確保し、
(2)基地局設置後に自動的にセルの重複状態を検出し、
(3)その検出したセルの重複状態に基づき、各基地局に対する使用周波数チャネルの割り当てを行うことにより、セル間干渉を回避もしくは軽減する、
ことが考えられる。
【0007】
ここで、セル間干渉の回避もしくは軽減の対象となるセルの組合せの数が多くなればなるほど、周波数チャネル割り当て時の制約が大きくなり、使用可能な周波数チャネルの不足、周波数チャネル割り当て処理の複雑化、処理時間の増大等の問題につながる。このことから、セル間干渉の回避もしくは軽減の対象となるセルの組合せは、適切に選択されることが肝要である。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、セル間干渉の回避もしくは軽減の対象として適切なセルの組合せを選択することに寄与するセル重複検出装置、制御局装置、移動局装置及び無線通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るセル重複検出装置は、基地局からの送信電波により形成されるセルの重複を検出するセル重複検出装置であり、一移動局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する受信強度検出手段と、前記検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定するセル重複判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るセル重複検出装置においては、前記セル重複判定手段は、前記検出された受信強度の順位に基づいてセルを選択し、選択されたセルを含むセルの重複の組合せのみを通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複として判定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るセル重複検出装置においては、前記セル重複判定手段は、最大受信強度となる基地局のセルを唯一選択し、当該セルを含むセルの重複の組合せのみを通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複として判定することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るセル重複検出装置においては、前記セル重複判定手段は、前記検出された受信強度を閾値判定してセルを選択し、選択されたセルを含むセルの重複の組合せのみを通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複として判定することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るセル重複検出装置においては、前記閾値は、基地局と移動局の間の無線通信の開始条件を満足することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るセル重複検出装置においては、前記セル重複判定手段は、前記重複の組合せの一方のセルと他のセルとの前記検出された受信強度の差を表す評価値を算出することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るセル重複検出装置においては、前記セル重複判定手段は、前記評価値に基づき、重複の組合せのもう一方のセルを選択することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る制御局装置は、複数の基地局の各々に対して移動局との間の通信用の周波数チャネルを割り当てる制御局装置において、一移動局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度の情報を受信する手段と、前記受信された受信強度の情報に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定するセル重複判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る移動局装置は、基地局との間で周波数チャネルを用いた通信を行う移動局装置において、自局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する受信強度検出手段と、前記検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定するセル重複判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る移動局装置は、基地局との間で周波数チャネルを用いた通信を行う移動局装置において、自局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する受信強度検出手段と、前記検出された受信強度の情報を制御局装置に送信する手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る無線通信制御方法は、複数の基地局の各々に対して移動局との間の通信用の周波数チャネルを割り当てる無線通信制御方法であって、一移動局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する過程と、前記検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定する過程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、セル間干渉の回避もしくは軽減の対象として適切なセルの組合せを選択することに寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本発明が適用される無線通信システムの構成例を示すブロック図である。図1において、集中制御局1は、各無線基地局2に通信回線を介して接続されている。各無線基地局2は、それぞれの無線接続サービスエリアであるセル100を形成している。移動局3は、在圏しているセル100の無線基地局2と無線接続することができる。
【0023】
図1の例では3つのセル100は互いに重複して配置されている。このため、各無線基地局2のセル間で周波数チャネルの干渉が生じる可能性があり、干渉対策を講じることが望ましい。そこで、本実施形態では、集中制御局1が周波数チャネルの割当を調整し、各無線基地局2のセル間で生じ得る周波数チャネルの干渉を回避もしくは軽減することを図る。
【0024】
以下、図1の無線通信システムを例に挙げて、本発明の各実施形態について詳細に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態に係る無線通信制御処理の手順を示すシーケンス図である。
図2において、まず、集中制御局1は、セル間重複状況の調査開始を各移動局3に通知する(ステップS1)。この通知は、無線基地局2を介して各移動局3に送信される。
【0026】
移動局3は、その通知を受信すると(ステップS2)、受信可能な電波の検出処理を開始する(ステップS3)。その受信可能な電波の検出処理では、自局で受信される各無線基地局2からの送信電波の受信強度を検出する。受信強度としては、例えば、受信信号強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)が利用可能である。あるいは、受信電力を受信強度として利用してもよい。
【0027】
次いで、移動局3は、セルの重複している無線基地局2の組合せ毎の情報を抽出する(ステップS4)。その情報抽出処理では、ステップS3で検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定する。この判定結果から、セルの重複している無線基地局2の組合せの情報を得る。なお、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定する方法については、後述する。
【0028】
次いで、移動局3は、ステップS4で抽出されたセル間重複情報を集中制御局1に報告する(ステップS5)。この報告は、無線基地局2を介して集中制御局1に送信される。
【0029】
集中制御局1は、各移動局からの報告を受信し、セル間重複状況の取りまとめ処理を行う。その取りまとめ処理では、例えば、無線基地局2の組合せ毎に、各移動局3から報告された情報を表形式等で整理する。また、データベース化してもよい。これにより、どの無線基地局2の組合せでセルが重複しているのかの情報を容易に活用することができるようになる。
【0030】
集中制御局1は、どの無線基地局2の組合せでセルが重複しているのかの情報を活用し、各無線基地局2のセル間で生じ得る周波数チャネルの干渉を回避もしくは軽減するように、各無線基地局2に対する周波数チャネルの割り当てを調整する。
【0031】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態に係る無線通信制御処理の手順を示すシーケンス図である。図3において、図2の各ステップに対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
第2実施形態は、上述の第1実施形態とほぼ同様であるが、集中制御局1と移動局3の処理分担が一部異なっている。具体的には、第2実施形態では、ステップS2とS3は移動局3で行うが、ステップS4は集中制御局1で行うようにしている。
【0032】
図3に示されるように、ステップS1〜S3までは、上述の図2と同様である。移動局3は、ステップS3での受信強度検出結果の情報を、無線基地局2を介して集中制御局1に報告する(ステップS10)。集中制御局1は、その報告された情報に基づき、上述のステップS4の処理を行う。
【0033】
次に、図2、図3のステップS4におけるセル重複判定方法を、各実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0034】
図4は、本発明に係るセル重複判定方法の実施例1を説明するための図である説明図である。
図4において、受信可能局リスト10は、図2、図3のステップS3での受信強度検出結果を表している。図4の受信可能局リスト10には、受信できた電波の送信元の無線基地局(BS)名とその受信電波のRSSIの組が記載されている。実施例1では、受信強度検出結果から、最大受信強度の無線基地局2を、セルの重複している無線基地局2の組合せの一方に選択する。そして、その選択された無線基地局2と、受信強度検出結果に含まれる他の無線基地局との各々の組合せが、セルの重複している無線基地局2の組合せになる。
【0035】
図4の例の場合、受信可能局リスト10において、最大受信強度の無線基地局2は「BS2」である。このため、セルの重複している無線基地局2の組合せは、図4のセル重複組合せリスト20に示されるように、「BS2」と「BS1」、「BS2」と「BS3」の2通りの組合せとなる。
【0036】
本実施例1では、受信強度検出結果に基づき、最大受信強度の無線基地局2のセルと、その他の無線基地局2のセルとの各組合せが、重複しているセルの組合せとして採用される。言い換えれば、最大受信強度の無線基地局2のセルを含まない組合せは、重複しているセルの組合せとして採用されない。これは、移動局3では、最大受信強度の無線基地局2との間で無線通信を行う可能性が最も高いことによる。つまり、最大受信強度ではない無線基地局2と移動局3の間では、無線通信が行われる可能性が低いので、最大受信強度ではない無線基地局2同士のセルの組合せにおいては、周波数チャネルの干渉が問題になる可能性が低い。従って、最大受信強度ではない無線基地局2同士のセルの組合せは、実際には重複していたとしても、通信品質に実質的に悪影響を及ぼす恐れは少なく、冗長なものとみなせるので、セル重複検出結果から除外する。これにより、通信品質に実質的に悪影響を及ぼす可能性の高いセル組合せから成るセル重複検出結果が得られる。このセル重複検出結果は、各無線基地局2に対する周波数チャネルの割り当てにおいて、周波数チャネルの干渉を回避もしくは軽減する対象にするべきセル組合せから成るものであって、適切なものである。
【0037】
また、本実施例1では、そのセル重複検出結果に含まれる無線基地局2の各組合せについて、受信強度の差を表す評価値を算出する。その算出結果が図4のセル重複組合せリスト20に記載されている。図4のセル重複組合せリスト20には、無線基地局2の組合せ毎に、その評価値として、RSSIの差の絶対値が記載されている。そして、その評価値が高いほど、つまり、受信強度の差が大きいほど、セル間干渉の影響は小さいと判断できる。このため、評価値が高い組み合わせについては、周波数チャネルの干渉を回避もしくは軽減する対象から除外することが可能である。集中制御局1は、セル重複組合せリスト20を周波数チャネルの割り当てに利用する。
【0038】
なお、受信強度検出結果から、受信強度の順位に基づき、重複の組合せの一方のセルを選択するようにしてもよい。例えば、上位2番目までの無線基地局2をそれぞれ、セルの重複している無線基地局2の組合せの一方の無線基地局2に選択してもよい。
【実施例2】
【0039】
図5は、本発明に係るセル重複判定方法の実施例2を説明するための図である説明図である。
実施例2では、受信強度検出結果から、受信強度を閾値判定して、セルの重複している無線基地局2の組合せの一方を選択する。閾値としては、無線基地局2と移動局3の間の無線通信の開始条件を満足する受信強度の値が好ましい。そして、その選択された無線基地局2と、受信強度検出結果に含まれる他の無線基地局との各々の組合せが、セルの重複している無線基地局2の組合せになる。
【0040】
図5の例の場合、受信可能局リスト10において、閾値「−70」を用いた閾値判定により、該閾値以上の受信強度の無線基地局2は「BS3」と「BS4」である。このため、セルの重複している無線基地局2の組合せは、図5のセル重複組合せリスト20に示されるように、「BS3」と「BS1」、「BS2」、「BS4」の各組合せと、「BS4」と「BS1」、「BS2」の各組合せとの合計5通りの組合せとなる。
【0041】
本実施例2では、受信強度検出結果に基づき、閾値以上の受信強度の無線基地局2のセルと、その他の無線基地局2のセルとの各組合せが、重複しているセルの組合せとして採用される。言い換えれば、閾値以上の受信強度の無線基地局2のセルを含まない組合せは、重複しているセルの組合せとして採用されない。これは、移動局3では、一定以上の受信強度の無線基地局2と無線通信を行う可能性が高いことによる。つまり、一定以上の受信強度が得られない無線基地局2と移動局3の間では、無線通信が行われる可能性が低いので、一定以上の受信強度が得られない無線基地局2同士のセルの組合せにおいては、周波数チャネルの干渉が問題になる可能性が低い。従って、一定以上の受信強度が得られない無線基地局2同士のセルの組合せは、実際には重複していたとしても、通信品質に実質的に悪影響を及ぼす恐れは少なく、冗長なものとみなせるので、セル重複検出結果から除外する。これにより、通信品質に実質的に悪影響を及ぼす可能性の高いセルの組合せから成る、適切なセル重複検出結果が得られる。
【0042】
また、本実施例1と同様に、セル重複検出結果に含まれる無線基地局2の各組合せについて、受信強度の差を表す評価値を算出する。その算出結果が図5のセル重複組合せリスト20に記載されている。
【実施例3】
【0043】
図6は、本発明に係るセル重複判定方法の実施例3を説明するための図である説明図である。
実施例3では、先ず、実施例1と同様に、受信強度検出結果から、最大受信強度の無線基地局2を、セルの重複している無線基地局2の組合せの一方に選択する。
【0044】
次いで、その選択された無線基地局2と組み合わせるもう一方の無線基地局2は、上記「受信強度の差を表す評価値」を利用した選別により決定する。具体的な手順としては、先ず、最大受信強度の無線基地局2と他の無線基地局2の各組合せについて、それぞれ評価値を算出する。そして、各評価値を閾値判定し、閾値以下の組合せを採用する。閾値としては、セル間干渉の影響が、通信品質上、許容できる範囲内となる値が好ましい。さらには、処理するデータの冗長を少なくするために、できる限り小さい値を閾値に用いることがより好ましい。
【0045】
図6の例の場合、受信可能局リスト10において、最大受信強度の無線基地局2は「BS3」である。このため、「BS3」と他の「BS1,2,4」の各組合せについて、それぞれ評価値を算出して閾値「12」と比較し、閾値以下の組合せを採用する。その結果、セルの重複している無線基地局2の組合せは、図6のセル重複組合せリスト20に示されるように、「BS3」と「BS2」、「BS3」と「BS4」の2通りの組合せとなる。
【0046】
本実施例3では、先ず、最大受信強度である無線基地局2が、移動局3との無線通信が行われる可能性が最も高いことから、セルの重複している無線基地局2の組合せの一方に選択される。さらに、その組合せ相手としては、その組合せの「受信強度の差を表す評価値」が一定以下になるものが選択される。ここで、一定以下の評価値である組合せは、セル間干渉の影響が通信品質に実質的に悪影響を及ぼす可能性が高いものである。言い換えれば、評価値が高く、つまり、受信強度の差が大きく、セル間干渉の影響が通信品質に実質的に悪影響を及ぼす可能性が低いものは、セル重複検出結果から除外される。これにより、通信品質に実質的に悪影響を及ぼす可能性の高いセルの組合せから成る、適切なセル重複検出結果が得られる。
【実施例4】
【0047】
図7は、本発明に係るセル重複判定方法の実施例4を説明するための図である説明図である。
実施例4では、先ず、実施例2と同様に、受信強度検出結果から、受信強度を閾値判定して、セルの重複している無線基地局2の組合せの一方を選択する。
【0048】
次いで、その選択された無線基地局2と組み合わせるもう一方の無線基地局2は、上記「受信強度の差を表す評価値」を利用した選別により決定する。具体的な手順としては、先ず、閾値判定による選択結果の無線基地局2と他の無線基地局2の各組合せについて、それぞれ評価値を算出する。そして、各評価値を閾値判定し、閾値以下の組合せを採用する。
【0049】
図7の例の場合、受信可能局リスト10において、閾値「−70」を用いた閾値判定により、該閾値以上の受信強度の無線基地局2は「BS3」と「BS4」である。このため、「BS3,4」と他の「BS1,2」の各組合せについて、それぞれ評価値を算出して閾値「12」と比較し、閾値以下の組合せを採用する。その結果、セルの重複している無線基地局2の組合せは、図7のセル重複組合せリスト20に示されるように、「BS1」と「BS4」、「BS2」と「BS3」、「BS2」と「BS4」、「BS3」と「BS4」の4通りの組合せとなる。
【0050】
本実施例4では、先ず、閾値以上の受信強度の無線基地局2が、移動局3との無線通信が行われる可能性が高いことから、セルの重複している無線基地局2の組合せの一方に選択される。さらに、その組合せ相手としては、実施例3と同様の方法で選択される。これにより、通信品質に実質的に悪影響を及ぼす可能性の高いセルの組合せから成る、適切なセル重複検出結果が得られる。
【0051】
上述したように本実施形態によれば、複数の無線基地局からの送信電波が受信されたからといって、単純に、それら送信基地局のセルが全て重複しているとは検出せずに、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすものだけに限定している。これにより、そのセル重複検出結果から、セル間干渉の回避もしくは軽減の対象として適切なセルの組合せを選択することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0053】
なお、本発明は、ピコセル方式など、各種セル方式の無線通信システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明が適用される無線通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る無線通信制御処理の手順を示すシーケンス図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る無線通信制御処理の手順を示すシーケンス図である。
【図4】本発明に係るセル重複判定方法の実施例1を説明するための図である説明図である。
【図5】本発明に係るセル重複判定方法の実施例2を説明するための図である説明図である。
【図6】本発明に係るセル重複判定方法の実施例3を説明するための図である説明図である。
【図7】本発明に係るセル重複判定方法の実施例4を説明するための図である説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1…集中制御局、2…無線基地局、3…移動局、10…受信可能局リスト、20…セル重複組合せリスト、100…セル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局からの送信電波により形成されるセルの重複を検出するセル重複検出装置であり、
一移動局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する受信強度検出手段と、
前記検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定するセル重複判定手段と、
を備えたことを特徴とするセル重複検出装置。
【請求項2】
前記セル重複判定手段は、前記検出された受信強度の順位に基づいてセルを選択し、選択されたセルを含むセルの重複の組合せのみを通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複として判定することを特徴とする請求項1に記載のセル重複検出装置。
【請求項3】
前記セル重複判定手段は、最大受信強度となる基地局のセルを唯一選択し、当該セルを含むセルの重複の組合せのみを通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複として判定することを特徴とする請求項2に記載のセル重複検出装置。
【請求項4】
前記セル重複判定手段は、前記検出された受信強度を閾値判定してセルを選択し、選択されたセルを含むセルの重複の組合せのみを通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複として判定することを特徴とする請求項1に記載のセル重複検出装置。
【請求項5】
前記閾値は、基地局と移動局の間の無線通信の開始条件を満足することを特徴とする請求項4に記載のセル重複検出装置。
【請求項6】
前記セル重複判定手段は、前記重複の組合せの一方のセルと他のセルとの前記検出された受信強度の差を表す評価値を算出することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかの項に記載のセル重複検出装置。
【請求項7】
前記セル重複判定手段は、前記評価値に基づき、重複の組合せのもう一方のセルを選択することを特徴とする請求項6に記載のセル重複検出装置。
【請求項8】
複数の基地局の各々に対して移動局との間の通信用の周波数チャネルを割り当てる制御局装置において、
一移動局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度の情報を受信する手段と、
前記受信された受信強度の情報に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定するセル重複判定手段と、
を備えたことを特徴とする制御局装置。
【請求項9】
基地局との間で周波数チャネルを用いた通信を行う移動局装置において、
自局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する受信強度検出手段と、
前記検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定するセル重複判定手段と、
を備えたことを特徴とする移動局装置。
【請求項10】
基地局との間で周波数チャネルを用いた通信を行う移動局装置において、
自局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する受信強度検出手段と、
前記検出された受信強度の情報を制御局装置に送信する手段と、
を備えたことを特徴とする移動局装置。
【請求項11】
複数の基地局の各々に対して移動局との間の通信用の周波数チャネルを割り当てる無線通信制御方法であって、
一移動局で受信される各基地局からの送信電波の受信強度を検出する過程と、
前記検出された受信強度に基づき、通信品質に実質的に悪影響を及ぼすセルの重複を判定する過程と、
を含むことを特徴とする無線通信制御方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate